タイトル: | 特許公報(B2)_セファロスポリン化合物を含む処方物ならびにイヌおよびネコにおける細菌感染の治療におけるその使用 |
出願番号: | 2003546936 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 31/546,A61K 9/08,A61K 9/19,A61K 47/14,A61P 13/02,A61P 17/00,A61P 31/04 |
ロジャー・ネルソン・キムブル レヌカ・デヴィ・レディ イヴゲニー・ユーレヴィッチ・シャラーエフ サイモン・エドワード・ブランチフラワー ブライアン・スコット・ブロンク JP 4689959 特許公報(B2) 20110225 2003546936 20021113 セファロスポリン化合物を含む処方物ならびにイヌおよびネコにおける細菌感染の治療におけるその使用 ファイザー・プロダクツ・インク 397067152 室伏 良信 100096666 ▲高▼橋 宏次 100131934 宮澤 純子 100137040 四本 能尚 100133927 ロジャー・ネルソン・キムブル レヌカ・デヴィ・レディ イヴゲニー・ユーレヴィッチ・シャラーエフ サイモン・エドワード・ブランチフラワー ブライアン・スコット・ブロンク US 60/338,536 20011130 US 60/398,932 20020726 20110601 A61K 31/546 20060101AFI20110512BHJP A61K 9/08 20060101ALI20110512BHJP A61K 9/19 20060101ALI20110512BHJP A61K 47/14 20060101ALI20110512BHJP A61P 13/02 20060101ALI20110512BHJP A61P 17/00 20060101ALI20110512BHJP A61P 31/04 20060101ALI20110512BHJP JPA61K31/546A61K9/08A61K9/19A61K47/14A61P13/02 105A61P17/00 171A61P31/04 171 A61K 31/00 A61K 9/00 A61K 47/00 CAplus/REGISTRY(STN) 特許第2851428(JP,B2) 国際公開第00/025802(WO,A1) 特開平03−093717(JP,A) 特開昭61−172871(JP,A) 特開平07−206713(JP,A) 特表2001−503374(JP,A) 特開2001−199889(JP,A) 国際公開第01/058444(WO,A1) 3 IB2002004743 20021113 WO2003045435 20030605 2005511642 20050428 23 20051111 伊藤 基章 本発明は、セファロスポリン化合物の抗菌性アルカリ金属塩、すなわちM+がカチオンNa+、K+またはLi+である化合物I(以下、「化合物I」という)を含有する安定な凍結乾燥した処方物に関する。特に、本発明は、M+がNa+である化合物I、すなわち(6R,7R)−7−[[(2Z)−(2−アミノ−4−チアゾリル)(メトキシイミノ)アセチル]アミノ]−8−オキソ−3−[(2S)−テトラヒドロ−2−フラニル]−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−2−カルボン酸の一ナトリウム塩の、安定な凍結乾燥した処方物に関する。本発明はまた化合物Iの水性の処方物に関する。 本発明はまた、式Iの化合物を投与することによる、イヌおよびネコの細菌感染の治療方法に向けられる。 セファロスポリンは広く用いられており、そして治療上重要な抗生物質である。式Iの化合物は広域スペクトルのセファロスポリン抗菌剤であり、従って動物の細菌感染の治療に有用である。(米国特許第6,020,329号、第1欄、第13〜14行)。特に、化合物Iは、皮膚、軟組織、歯周膜および尿路の細菌感染の治療に対する適応症を有するイヌおよびネコを標的としている。 M+がNa+である化合物Iおよびその調製物は、米国特許第6,001,997号、6,020,329号および6,077,952号に開示されている。上記特許の本文および本明細書で引用する他の全ての文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。 しかしながら、セファロスポリン処方物は一般的に不安定であり、そして特にpHの調節、結晶化、凍結乾燥、および糖のような安定剤の添加を包含し、安定性を高めるための種々の異なる方法がある。 セファロスポリンは一定のpH範囲内で幾分安定化できる。最適pH範囲は広く変動し、そして異なるクラスのセファロスポリンについては予測できず、実験および安定性試験を必要とする。例えば、Nassarら、米国特許第5,401,842号は、オルトリン酸三ナトリウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、N−メチル−グルカミンおよびL(+)アルギニンを用いてpH3.5〜7.0に緩衝した結晶性セフェピム(cefepime)塩の処方物を開示した。 K.A.Connersらは、セファロンチンがpH2〜8の広い安定性範囲を有することを開示した。しかしながら、セファラジンはもっと酸性のpH1〜5で安定化する。セホタキシムの安定性はpH3〜7の範囲で得られる(K. A. Connersら,Chemical Stability of Pharmaceuticals, John Wiley & Sons, New York, 1986, p305)。 若干の場合、セファロスポリン処方物は結晶化および凍結乾燥によって安定化された。例えば、Gotschi、米国特許第5,138,066号は、非経口的投与のための処方物を、水または等張性食塩水のような製薬担体で希釈するための凍結乾燥物または乾燥粉末として記載している。 Bornsteinら、米国特許第4,002,748号は、一定の凍結乾燥技術を利用して、本質的に無定形(非晶質)のセファゾリンを製造する方法を開示しており、その一方で、Daugherty、EP 0327364は、1−カルバセファロスポリンの結晶性溶媒和物の処方物を製造する凍結乾燥方法を記載している。 若干のセファロスポリンは種々の異なる糖の添加によって安定化できる。しかしながら、ある糖が特定のセファロスポリンを安定化するかどうかは予測できない。さらに、最適安定性を得るための糖とセファロスポリンとの比も予測できない。例えば、Shamblinらは、ショ糖と共に凍結乾燥したときに、無定形セフォキシチンナトリウムの安定性が2倍だけ改善されたことを開示している。しかしながら、トレハロースと共に凍結乾燥したときに、セフォキシチンの安定性は影響されなかった。S. L. Shamblin, B. C. Hancock, M. J. Pikal, The Chemical Stability of Amorphous Cefoxitin Sodium in the Presence of Glassy Stabilizers, AAPS Pharm. Sci. Vol. I, Issue 4, 1999。 同様に、Shimaら、EP 0134568B1は、糖(グルコース、フルクトースまたはマルトース)または無機酸もしくはカルボン酸のアルカリ金属塩が、特定の凍結乾燥したセファロスポリンを0.01:1〜0.5:1の安定剤:セファロスポリンの重量比で安定化したことを開示している。しかしながら、マンニトールは記載されたセファロスポン化合物の安定化に有効ではなかった。 同様に、Almarssonら、Tetrahedron 56(2000)6877−6855は、ショ糖がベータ−ラクタム化合物の化学的安定性を0.1:1〜0.5:1のショ糖/薬剤の比で改善したことを開示している。 Yoshioka,Yら、Pharm.Res.17(2000)、925−929は、200:1のデキストラン/セファロチンの比でデキストランが存在する場合のセファロチンの安定性を開示している。 逆に、Hiraiら、米国特許第4,418,058号は、種々の異なる糖または糖アルコールの1:1を超える過剰量が、セファロスポリンの化学的安定性に有害に作用したことを開示している。しかしながら、糖または糖アルコールの添加量が0.1〜1の糖/セファロスポリンであった場合に良好な結果が得られた。 その結果、特定の糖を特定のセファロスポリンに添加すると安定性が得られるかどうかは、当業者であろうとも、一般的に予測することができない。さらに、糖:セファロスポリンの最適比も極めて変動しやすく、かつ実験しないことには予測できない。そのうえ、上記で論じたように、特定のセファロスポリンのための安定性の最適pH範囲も、予測できない。 化合物Iの投与方法は非経口的投与による。他の投与方式は経口および局所投与を包含する。(米国特許第6,020,329号、第15欄、第1〜2行)。化合物Iは、固体および水溶液の両者として不安定である。さらに、化合物Iは吸湿性である。その結果、化合物Iを安定化するための処方物および方法は、当技術に有用なものを追加することになるであろう。 第一の態様において、本発明は、組成物が5.0〜8.0の範囲のpHを有する、式Iの化合物(式中、M+はNa+、K+またはLi+である)、および水性希釈剤を含む、医薬組成物を提供する。 好ましい実施態様において、式Iの化合物は、無定形の(6R,7R)−7−[[(2Z)−(2−アミノ−4−チアゾリル)(メトキシイミノ)アセチル]アミノ]−8−オキソ−3−[(2S)−テトラヒドロ−2−フラニル]−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−2−カルボン酸の一ナトリウム塩である。 好ましい実施態様において、M+はNa+であり、そしてpHは6.0〜7.5である。 好ましい実施態様において、医薬組成物は製薬上許容される緩衝剤をさらに含む。 より好ましい実施態様において、緩衝剤は炭酸塩、リン酸塩、クエン酸塩または酢酸塩であり、そしてpHは6.0〜7.5の範囲内にある。 好ましい実施態様において、医薬組成物は製薬上許容される増量剤をさらに含む。 より好ましい実施態様において、増量剤は糖、多価アルコール、アミノ酸、重合体、多糖または無機塩から選択される。 好ましい実施態様において、糖はグルコース、マルトース、ショ糖およびラクトースから選択され;多価アルコールはソルビトールまたはマンニトールであり;アミノ酸はグリシンであり;重合体はポリビニルピロリドンであり;多糖はデキストランであり;そして無機塩はリン酸ナトリウムもしくはカリウムまたは塩化ナトリウムである。 好ましい実施態様において、組成物は1.0を超えて100未満の増量剤/式Iの化合物の比を有する。 好ましい実施態様において、上記の比が1超えて10未満である。 より好ましい実施態様において、増量剤はショ糖であり、そして組成物は3のショ糖/式Iの化合物の比を有する。 別の態様において、本発明は、式Iの化合物(式中、M+はNa+、K+またはLi+である)、水性希釈剤および製薬上許容される増量剤を含む医薬組成物に向けられる。 好ましい実施態様において、増量剤は糖、多価アルコール、アミノ酸、重合体、多糖または無機塩から選択される。 より好ましい実施態様において、糖はグルコース、マルトース、ショ糖またはラクトースから選択され;多価アルコールはソルビトールまたはマンニトールであり;アミノ酸はグリシンであり;重合体はポリビニルピロリドンであり;多糖はデキストランであり;そして無機塩はリン酸ナトリウムもしくはカリウムまたは塩化ナトリウムである。 別の実施態様において、組成物は1を超えて10未満の増量剤/式Iの化合物の比を有する。 好ましい実施態様において、M+はNa+であり、そして増量剤はショ糖であり、ここで、組成物は3のショ糖/式Iの化合物の比を有する。 好ましい実施態様において、医薬組成物は製薬上許容される緩衝剤をさらに含む。 好ましい実施態様において、医薬組成物は製薬上許容される保存剤をさらに含む。 より好ましい実施態様において、保存剤はメチルパラベン、プロピルパラベン、m−クレゾール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムまたはベンジルアルコール、またはその2種またはそれ以上の組み合わせである。 より好ましい実施態様において、保存剤は、(a)メチルパラベン、プロピルパラベンおよびベンジルアルコール;または(b)メチルパラベンおよびm−クレゾールの何れか一方の組み合わせである。 別の実施態様において、医薬組成物はクエン酸塩緩衝剤を含む。 別の態様において、本発明は、式Iの化合物(式中、M+はNa+である)を含み、選択自由な製薬上許容される緩衝剤、選択自由な製薬上許容される保存剤、選択自由な製薬上許容される増量剤、および水性希釈剤をさらに含み、ここで、組成物が6.0〜7.5のpHを有する、医薬組成物に向けられる。 好ましい実施態様において、緩衝剤はクエン酸塩であり;保存剤はメチルパラベン、プロピルパラベン、m−クレゾール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムまたはベンジルアルコール、またはその2種またはそれ以上の組み合わせであり;そして選択自由な増量剤はショ糖である。 好ましい実施態様において、医薬組成物は、上記の医薬組成物の凍結乾燥により製造された式Iの化合物を含む。 別の態様において、本発明は、 a)式Iの化合物を含む凍結乾燥した医薬組成物の治療有効量; b)水性の製薬上許容される希釈剤;および c)組成物(1)および希釈剤(2)を入れるための第一および第二の容器手段(ここで、第一容器は第二容器から希釈剤を受け入れるために適合している)を含むキットに向けられる。 別の態様において、本発明は、イヌおよびネコにおける細菌感染に起因する状態の治療または予防に有効である式Iの化合物の治療有効量を投与することを含む、上記状態を治療または予防する方法に向けられる。 別の態様において、本発明は、上記の組成物の治療有効量を投与することを含む、イヌおよびネコにおける細菌感染に起因する状態を治療または予防する方法に向けられる。 一つの実施態様において、状態は皮膚、軟組織または尿路の感染である。 別の実施態様において、状態または感染はグラム陽性菌またはグラム陰性菌に起因するか、またはそれらが合併したものである。 本明細書で用いられる「約」という用語は、指定した上限および下限のpH単位より0.5だけ上または下のpHと定義される。 「水性の製薬上許容される希釈剤」という用語は、水、または本発明の組成物の製造に用いられる1種または2種以上の製薬上許容される賦形剤を含有する他の製薬上許容される水溶液(例えば、塩化ナトリウムの等張性溶液、エタノールまたはリン酸塩を含む注射用水、酢酸塩またはクエン酸塩を含む緩衝液、およびベンジルアルコールを含む注射用水)を意味する。 本明細書で用いられる「Na+」という用語は、ナトリウムカチオンと定義される。 本明細書で用いられる[K+]という用語は、カリウムカチオンと定義される。 本明細書で用いられる[Li+]という用語は、リチウムカチオンと定義される。 本明細書で用いられる「組成物」という用語は、特に、(1)化合物Iを含有する溶液、または(2)このような溶液を凍結乾燥した乾燥状態の残留物を包含する。溶液は、溶解した化合物Iの安定化を補助し、そして/または溶液(1)の凍結乾燥後に生じた凍結乾燥物を再構築する際の再溶解を促進する、1種または2種以上の選択自由な作用物質を含有することができる。このような選択自由な作用物質は、特に、本明細書でさらに開示する増量剤、保存剤および緩衝剤を包含する。 「化合物I」という用語は、M+がNa+、K+またはLi+である化合物Iの製薬上許容されるアルカリ金属塩に限られ、そして特に、M+がNa+である化合物I、すなわち(6R,7R)−7−[[(2Z)−(2−アミノ−4−チアゾリル)(メトキシイミノ)アセチル]アミノ]−8−オキソ−3−[(2S)−テトラヒドロ−2−フラニル]−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−2−カルボン酸の一ナトリウム塩を包含する。 「凍結乾燥」という用語は、当技術で公知の、組成物をフリーズドライする方法を意味する。「凍結乾燥した」または「フリーズドライした」は、本明細書で同義語として用いられる。 「製薬上の」または「製薬上」などの用語は、ヒトおよび獣医学の分野の両方における適用を指すことを意味する。 化合物Iは、哺乳類、特にイヌおよびネコを標的とした広域スペクトルのセファロスポリンである。M+がNa+である(以下、「ナトリウム塩」という)化合物Iの製造は、米国特許第6,001,997号、6,020,329号、6,077,952号ならびにEP 1178049A1に記載されており;それらの全体は参照により本明細書に組み入れられる。式Iの化合物のK+およびLi+塩は、化合物Iのナトリウム塩の製造に記載されたようにして、ただし適切のK+またはLi+塩に置き換えて、当業者が製造することができる。 本発明の抗生化合物は、グラム陰性微生物(例えば大腸菌)およびグラム陽性微生物(例えば黄色ブドウ球菌)の両方を包含する広範囲の微生物に対して活性である(米国特許第6,020,329号、第17欄、第28〜31行)。化合物Iは、特に皮膚、軟組織および尿路の細菌感染の治療に使用できる。例えば、グラム陽性菌および/またはグラム陰性菌に起因するか、またはそれらが合併した状態または感染は、以下のものである:ブドウ球菌属の種(スタフィロコッカス・インターメディウス、黄色ブドウ球菌)、大腸菌、レンサ球菌属の種(ベータ溶血性レンサ球菌属の種)、パスツレラ・ムルトシダ、バクテリオデス属の種、フゾバクテリウム属の種、ポリフィロモナス属の種、プレボテラ属の種、ペプトレンサ球菌属の種およびクロストリジウム属の種による感染に関連するイヌ肺炎、ネコ肺炎、イヌ膿皮症、ネコ膿皮症、パスツレラ症、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、扁桃炎および乳突炎;黄色ブドウ球菌、スタフィロコッカス・インターメディウス、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、溶血性ブドウ球菌、レンサ球菌属の種、C〜F群レンサ球菌(微小コロニーレンサ球菌)、ビリダンスレンサ球菌による感染に関連する非合併症の皮膚および軟組織感染、膿瘍、骨髄炎および産褥熱;ブドウ球菌属の種又は大腸菌による感染に関連する非合併症の急性尿路感染;ビリダンスレンサ球菌による感染に関連する歯牙発生感染;大腸菌による感染に関連するイヌおよびネコの尿路感染;表皮ブドウ球菌、スタフィロコッカス・インターメディウス、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌又はパスツレラ・ムルトシダによる感染に関連するイヌおよびネコの皮膚および軟組織感染;アルカリゲネス属の種、バクテロイデス属の種、クロストリジウム属の種、エンテロバクター属の種、ユウバクテリウム属、ペプトレンサ球菌属、ポリフィロモナス属またはプレボテラ属による感染に関連するイヌおよびネコの口腔感染。 式Iの化合物、ならびに米国特許第6,001,997号、6,020,329号および6,077,952号に記載の化合物は、特に、匹敵する抗生物質を考慮して、イヌおよびネコにおいて予想外に長い半減期を示すことを確認した。例えば、表1に、マウス、ラット、イヌおよびネコのような異なる哺乳類における周知の抗生物質およびそれら個々の半減期をリストする。 式Iの化合物を包含する多数のセファロスポリン誘導体は、国際特許出願公開番号WO 92/01696およびBastesonらのThe Journal of Antibiotics、1994年2月、第47巻、2号、253−256頁に開示された。種々のマウスのデータも後者の論文に開示されている。これらの刊行物の両者はそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。 特に、式IIの化合物を投与したのち、マウスおよびラットにおける半減期は、経口投与後にそれぞれ2.2および3.9時間と決定された。しかしながら、意外にも、イヌおよびネコにおける半減期は、両方の場合に、下記の表IIに示すように劇的に増加した。実験の詳細a.薬物動態実験1:静脈内イヌ 雄イヌに化合物Iの水溶液を静脈内に投与した。投与後28日までの時点で血漿をサンプリングした。血漿サンプルを抽出し、下記のようにバイオアッセイおよびHPLCの両方によりアッセイして濃度を決定した: 血漿(またはスパイクしたイヌ血漿の標準物)1mLを塩酸で3未満のpHに酸性化し、次いで酢酸エチル26mLと共に振盪した。遠心により層を分離した。有機層22mLを新しい容器に移し、2.0mLの0.1Mリン酸塩緩衝液、pH7.0を加えた。振盪して遠心したのち、水相を回収し、アッセイした。処理に続いて、サンプル(および標準物)を、M.luteusを接種した大きなプレート(200mLのMueller Hinton寒天)上で、ホール−イン−ザ−プレート微生物学的バイオアッセイによりアッセイした。また、サンプルをHPLCによりアッセイした(μBondpak−C18カラム、アセトニトリル−0.05M酢酸ナトリウムpH5.0、15:85で溶出、256nmでUV検出)。二つのアッセイ方法間に良好な一致が得られ、標準的薬物動態方法を用いてバイオアッセイ結果から半減期を計算した。実験2:皮下イヌ 2匹のイヌに式Iの化合物を皮下注射により投与した。投与後28日までの時点で血漿をサンプリングした。血漿サンプルおよび適切な標準物を、等体積のアセトニトリルの添加および遠心(3000r.p.m.で10分間)による脱タンパク質によって調製した。上澄み液を特異的HPLC法によりアッセイして濃度を決定した(μBondpak−C18カラム、アセトニトリル−0.05M酢酸ナトリウムpH5.0、15:85で、1.0mL/分で溶出、256nmでUV検出)。プログラムPCNONLINを用いて薬物動態パラメーターを計算した。実験3:経口イヌ 6匹のイヌに化合物IIのピバロイルメチル−エステルプロドラッグを経口投与し、生じた血漿濃度をバイオアッセイおよびHPLCの両方により決定した。投与に続いて、血漿を696時間(29日)までサンプリングした。血漿サンプルおよび適切な標準物(1mL)を、最初に塩酸で3.0未満のpHに酸性化し、次いで酢酸エチル30mLと共に振盪した。遠心により層を分離し、次いで有機層25mLを除去した。この酢酸エチル層に2mLの0.1Mリン酸塩緩衝液pH7.0を加え、振盪して逆抽出を行った。層を分離させたのち、水相を除去し、アッセイに用いた。処理に続いて、サンプル(および標準物)を、M.luteusを接種した大きなプレート(200mLのMueller Hinton寒天)上で、ホール−イン−ザ−プレート微生物学的バイオアッセイによりアッセイした。また、サンプルをHPLCによりアッセイした(μBondpak−C18カラム、アセトニトリル−0.05M酢酸ナトリウムpH5.0、15:85で、1.5mL/分で溶出、256nmでUV検出)。二つのアッセイ方法間に良好な一致が存在し(r=0.9716)、バイオアッセイデータから半減期を計算した。実験4:皮下ネコ 4匹のネコに化合物Iの皮下注射により8mg/kgで投与した。投与後35日まで時間間隔をおいて血液サンプルを採取し、血漿をアッセイしてHPLC/MS/MSにより相当する遊離酸の濃度を決定した。血漿サンプル(100mL)をリコートに分けて遠心管に入れ、次いでアセトニトリル400mLを加えた。回転(60秒間)および遠心(20,800×gで10分間)に続いて、上澄み液0.450mLを清浄な遠心管に移し、N2中で約50℃において蒸発乾固した。乾燥サンプルを移動相(15/85v/vのアセトニトリル/10mM HCO2H4、pH3.0)0.100mL中で再構築し、1分間回転し、3,000rpmで2分間遠心し、自動サンプラーバイアルに移した。血漿の単一複製物を、LC−MS/MSにより化合物の濃度について分析した。サンプル分析は、SCIEX API 365または3000 HPLC/MS/MS装置を用いて行った。カラム流出液を4500Vに設定したTurbo−イオンスプレー源に接続した。衝突ガスを値3に設定した。陽イオンをイオンスプレー源で発生させ、オリフィスを通してサンプリングして4極質量フィルターに入れた。質量分光計を調節して、前駆体および生成物のイオンを次のように監視した:m/z 454.4 −> m/z 241.0。薬物動態プログラムWINNONLIN バージョン2.1を用いて半減期を計算し、8.39+/−0.97日であると決定した。b.効力 実験で誘導した皮膚感染モデル研究において、6匹のイヌのうち5匹は、8mg/kgの化合物Iを1回投与したのち15日で、スタフィロコッカス・インターメディウスの完全クリアランスを有していた。 別の研究において、健康なイヌに8mg/kgの化合物Iを1回投与したのち、未治療のコントロール動物と比較して、4週間に病原性ブドウ球菌の集団が有意に減少した。 実験でネコに誘導した膿瘍モデル研究において、8mg/kgの化合物Iを1回投与したのち14日で、パスツレラ・ムルトシダ、クロストリジウム・パーフリンゲンスおよびバクテリオデス・フラギリスの細菌数が実質的に減少した。 上記の半減期の結果は、式Iの化合物の効力と相俟って、注射(筋肉内、皮下または静脈内)で与えて、約4〜12mg/kgの化合物I(例えば式Iの化合物のNa塩)と等価量をネコまたはイヌに1回投与すると、有効濃度を7〜21日間、有利に与えることを実証している。これは、獣医開業医にとって、そしてネコおよびイヌ所有者にとっても同様に、新規かつ極めて便利な治療方式である。 しかしながら、化合物Iは固体および液体の両者として不安定であることが確認されている。可能な処方物を評価する際に、安定性実験を行った。本明細書で用いられるように、「安定な」または「安定化した」は、化合物Iの分解が約10%未満またはそれと等しいことを意味する。 多くのセファロスポリンを結晶化によって安定化することができるが、化合物Iは、特に商業的規模での結晶化技術によっては処理できないことが確認されている。その結果、化合物Iは無定形状態にあり、かつ吸湿性である。化合物Iの最適な長期安定性を、低い残留水分含有量で達成できることを確認した。従って、式Iの処方物の凍結乾燥が好ましい安定性を与える。 本発明に関して、これまで長期貯蔵の目標を妨げた固有の安定性の問題を克服して、化合物Iの安定な処方物を開発した。化合物Iを水性の製薬上許容される希釈剤と共に、pHが約5.0〜約8.0の範囲になるように処方することによって、化合物Iを安定化でき、かつ注射可能な調製物に処方できることを確認した。 例えば、化合物Iのナトリウム塩の治療有効量を水性の製薬上許容される希釈剤に溶解し、そして必要に応じ、pHを約5.0〜約8.0の範囲内に調節することによって、処方物を調製する。別法として、化合物Iの遊離酸形態(すなわち、塩の代わりにカルボキシレート)を出発材料として用いることができる。遊離酸の懸濁液または溶液を、例えば水酸化ナトリウムで滴定し、化合物Iのナトリウム塩を形成することができる。pHの調節は上記のように行うことができる。 生成した溶液のアリコート(その量は、最終的に望まれる再構築した化合物Iの濃度に依存する)を透明化し、そして滅菌濾過し、そして凍結乾燥にとって適切な容器(例えばバイアル)に無菌的に移し、そしてリオストッパー(lyo-stopper)で部分的に栓をする。以下に記載するように、処方物を冷却して凍結し、当技術で本来普通の方法で凍結乾燥に付し、そして密栓して、安定な乾燥状態の凍結乾燥物の処方物を形成する。好ましい実施態様において、組成物は、凍結乾燥物の重量に基づいて、1重量%未満の低い残留水分含有量を有する。より好ましい実施態様において、組成物は0.5重量%未満の残留水分レベルを有する。 本明細書で用いるように、用量単位のための「治療有効量」は、典型的には、約50〜約500mgの活性成分であってよい。(米国特許第6,020,329号;第16欄第3行)。しかしながら、用量は、治療すべき動物の種、変種など、感染の重症度および型、および動物の体重に応じて変動しうる。従って、体重に基づいて、活性成分の典型的な用量範囲は、動物の体重1kg当たり約0.01〜約100mgであってよい。好ましくは、この範囲は体重1kg当たり約1〜約20mg、より好ましくは体重1kg当たり約4〜約12mgである。(PCS 10965;第7頁、第7〜11行)。 獣医開業医または当業者は、特定の個々の患者に適する用量(これは、特定の患者の種、年齢、体重および応答、ならびに関連する細菌の種によって変動しうる)を決定できるであろう。上記の用量は平均的な場合の例示である。従って、上記のファクターに応じて、より高いかまたはより低い用量は正当化でき、そして本発明の範囲内にある。 式Iの化合物は、単独で、または疾患の治療もしくは予防または症状の軽減もしくは抑制に用いられる1種または2種以上の作用物質との組み合わせの何れかで投与することができる。このような作用物質の例(これらは説明として提供されるものであって、限定と解釈されてはならない)は、駆虫、例えばフィプロニル、ルフェニュロン、イミダクロプリドのようなアリールピラゾール類、アベルメクチン類(例えばアバメクチン、イベルメクチン、ドラメクチン、セラメクチン)、ミルベマイシン類、有機ホスフェート類、ピレトロイド類;抗ヒスタミン剤、例えばクロルフェニラミン、トリメプラジン、ジフェンヒドラミン、ドキシルアミン;抗真菌剤、例えばフルコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、グリセオフルビン、アンホテリシンB;抗菌剤、例えばエンロフラキサシン、マルボフロキサシン、アンピシリン、アモキシシリン;抗炎症剤、例えばプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、カルプロフェン、ケトプロフェン;ステロイドおよび他の止痒剤、;ダイエット用サプリメント、例えばガンマ−リノレン酸;および皮膚軟化剤を包含する。それ故に、本発明はさらに、疾患または状態の本発明に係る疾患または状態の治療に、同時に、別個にまたは逐次に使用するための組み合わせ調製物としての、式(I)の化合物および上記リストから選択される1種または2種以上の化合物の使用などを提供する。 処方物の組成物は、場合により、その存在が急速溶解性のフリーズドライした生成物を与えるか、または処方物の貯蔵時間を延長するのに役立ちうる当技術で公知の補助成分、例えば緩衝剤、増量剤、希釈剤、補助溶剤、溶剤、保存剤、キレート化剤、酸化防止剤、等張調節剤を含有することができる。 可能な溶剤および補助溶剤の例はエタノールである。キレート化剤の例はエチレンジアミン四酢酸である。酸化防止剤の例はアスコルビン酸である。等張性調節剤の例はデキストロースである。さらに、式Iの化合物は本発明の組成物中の単独治療剤であってよく、または他の抗生物質もしくはβ−ラクタマーゼ阻害剤との組み合わせを用いることができる。(米国特許第6,020,329号、第16欄、第15〜18行)。 典型的な広い安定性pH範囲を有する大部分のセファロスポリンとは異なり、種々の緩衝剤を含むか含まない化合物Iの処方物は、約5.0〜約8.0のpHの比較的に狭い安定性範囲を有することを確認した。特に、そして好ましい実施態様において、最適な溶液および固体状態の安定性は、約6.0〜約7.5のpHで得られる。pHの調節は、例えば水酸化ナトリウムの10%溶液または塩酸で所望のpH範囲まで滴定するか、または適切な緩衝剤の使用によって行うことができる。典型的な緩衝剤は、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、炭酸塩およびグリシンを包含する。好ましい実施形態において、リン酸塩が緩衝剤として用いられる。より好ましい実施形態において、クエン酸塩が緩衝剤として用いられる。 本発明で使用するのに適する水溶性増量剤は、凍結乾燥に典型的には用いられる製薬上許容される不活性固体材料の何れであってもよい。増量剤は安定性を改善でき、および/またはいっそう急速に溶解するフリーズドライした生成物を与えることができる。このような増量剤は、例えば、グルコース、マルトース、ショ糖およびラクトースのような糖;ソルビトールおよびマンニトールのような多価アルコール;グリシンのようなアミノ酸;ポリビニルピロリドンのような重合体;デキストランのような多糖;リン酸ナトリウムもしくはカリウムまたは塩化ナトリウムのような一定の無機塩を包含する。 本発明の組成物に用いられる増量剤の重量と化合物Iの重量との比は、用いられる増量剤に応じて、一般的に約0.01〜約100の範囲内にあるべきである。好ましい実施態様において、ポリヒドロキシ化合物が選択される増量剤である。より好ましい実施態様において、ショ糖が増量剤であり、そしてそれと共に凍結乾燥したときに化合物Iのナトリウム塩を安定化することを見出した。 しかしながら、ショ糖/化合物Iの最適比は、実験を行わずには予測できなかった。例えば、ショ糖を添加しない処方物と比較して、比較的に少量のショ糖(例えば0.4のショ糖/化合物Iのナトリウム塩の比)が、化合物Iのナトリウム塩の分解度を増大することを確認した。他方において、1のショ糖/化合物Iのナトリウム塩の比は、ショ糖を添加しなかった処方物と同様の安定性を示した。しかしながら、1.0を超える比は化合物Iのナトリウム塩の処方物の安定性を増大した。好ましい実施態様において、ショ糖/化合物Iのナトリウム塩の比は、1.0を超えて約10までの範囲にある。よりいっそう好ましい実施態様において、ショ糖/化合物Iのナトリウム塩の比は、約3である。 より高いショ糖/化合物の比を用いることができる。しかしながら、高いショ糖濃度は、再構築した溶液のシリンジ処理に大きな影響を与える高度濃縮溶液の粘度に関する実際上の理由によって制限される。さらに、高いショ糖濃度は、注射可能な調製物に対して注射部位の不耐性を生じさせることがある。たいていは、25〜30mPa*s(ミリパスカル*秒、ここで、「*」は「を積算した」と定義される)の粘度は、製薬工業における注射可能な調製物に対する上限と考えることができる。これは、40℃でおよそ最高60%ショ糖溶液と言い換えられる。(M. Mathlouthi, J. Genotelle, in:M. Mathlouthi, Sucrose. Properties and Applications, Blackie Academic & Professional, London, 1995, p.137)。例えば、溶液中の化合物Iの濃度が6重量%であるならば、許容されるのショ糖/化合物Iの比は10:1であろう。化合物Iの濃度が3%であるならば、許容されるのショ糖/化合物Iの比は20:1であろう。これらは多くの可能な比のうち、二つだけの例である。 抗菌性保存剤は、微生物汚染を防止するために医薬処方物にしばしば添加される。本明細書で用いられるように、「保存剤」という語は、感染または医薬生成物の分解の危険性をもたらすであろう微生物の成長を防止または抑制するために添加される化合物または化合物の組み合わせを意味する。一般的に、得られる効力のレベルは、保存剤の化学構造、その濃度、および医薬生成物の物理的および化学的特性(特にpH)によって変動する。パックのデザイン、および生成物を貯蔵する温度もまた、存在する任意の抗菌性保存剤の活性レベルに影響を与えるだろう。有用な保存剤は、m−安息香酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、パラヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、フェノール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、m−クレゾールおよびクロロクレゾールを包含しうる。上記の保存剤の混合物も使用できる。 本発明において、抗菌性保存剤を含有する化合物Iの処方物は、抗菌有効性のための米国薬局方(以下、「USP」という)基準を満たすのに効果的であった。特に、次の保存剤:例えばメチルパラベン、プロピルパラベン、m−クレゾールおよびベンジルアルコールの種々の処方物は、USP基準を満たすことが判った。しかしながら、抗菌有効性のための欧州薬局方(以下、「EP」という)基準を満たすためには、他の保存剤がより適切であった(例えば、塩化ベンゼトニウム、および幾つかの保存剤の組み合わせ、例えば一つの組み合わせとしては、メチルパラベン、プロピルパラベンおよびベンジルアルコール、そして別の組み合わせとしては、メチルパラベンおよびm−クレゾール)。 化合物Iの処方物は、乾燥により、好ましくは当技術で公知の凍結乾燥により単離できる。通常、凍結乾燥物の処方物は、アンプル凍結乾燥、バイアル凍結乾燥、トレー凍結乾燥などの従来法を用いて、処方物をゼロ以下の温度で冷却して凍結することによって製造される。次いで凍結した材料を、真空中で、溶液中に溶剤として最初に含まれていた水分の昇華によって乾燥し、こうして、凍結乾燥した固体ケーキが残る。従って、例えば、上記の賦形剤、化合物I、または化合物Iの製薬上許容される塩を、適量の注射用水中に撹拌下に連続的に溶解する。次いで、さらに水を加えて所望の最終体積にする。生成した溶液を透明化し、滅菌濾過し、そして所望容量の滅菌容器(例えばバイアル)中に無菌的に分配する。次いで、溶液をフリーズドライし、そしてバイアルを従来の手順で密栓する。 凍結乾燥した薬剤生成物は、無定形の化合物I、より好ましくはそのナトリウム塩である。生成物の溶液が必要な場合には、乾燥処方物を注射用水、静菌注射用水または別の製薬上許容される希釈剤(例えば塩化ナトリウムの等張性溶液、エタノールまたはクエン酸塩緩衝剤を含む注射用水、およびベンジルアルコールを含む静菌注射用水)に、患者に非経口的に投与するために必要な濃度の溶液を生じさせるのに十分な量で溶解することによって再構築できる。 化合物Iの量は、この化合物が、米国特許第6,001,997号、6,020,329号および6,077,952号に記載された所望の治療効果を与えるように投与できる。本発明の注射可能な再構築溶液は、種々の可能な投与計画に従って投与することができる。 本発明の有利な効果を確認するために、化合物Iのナトリウム塩を凍結乾燥した注射可能な調製物に処方し、そして処方物の安定性を測定した。 下記の実施例は、本発明の特定の実施態様を説明することを意図するものであって、請求項を含めて、本明細書を限定することを決して意図するものではない。A.凍結乾燥した注射可能な処方物のpH調節による安定化 表3〜6に記載する処方物は、緩衝した組成物および非緩衝の組成物の双方の不安定性が、約5.0〜約8.0のpH範囲外では増大することを示している。以下の表3および4に示すように、化合物Iのナトリウム塩を、脱イオン水またはクエン酸緩衝溶液の何れかに50mg/mLの濃度で溶解した。 処方物1〜5の場合、化合物Iのナトリウム塩を溶解したのち、10%溶液塩酸でpHを調節した(表3)。処方物6〜13の場合、クエン酸塩を用いて緩衝液を調製し、これに化合物Iのナトリウム塩を溶解したときに10%塩化ナトリウム溶液で調節した(表4)。化合物Iのナトリウム塩の溶液の1mLアリコートを10mLバイアルに充填し、FTS動的凍結乾燥機(FTS Systems, Stone Ridge, New York)を用いて凍結乾燥した。凍結乾燥中に、2段階凍結プロトコール(−25℃および−40℃で)を用いて組成物を凍結し、続いて、第一乾燥を−27℃で約22時間行い、次いで第二乾燥を温度が0℃、25℃および50℃に上昇する段階で行った。第一および第二乾燥中の圧力を60ミリトルに設定した。 溶液調製手順を下記に示す。 サンプルを40℃で12週間貯蔵した。次いで、逆相高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)により、256nmに設定した紫外線(「UV」)検出器およびKromasil C4カラム(MetaChem Technologies Inc., Torrance, CA)を備えたWaters(Milford,MA)HPLC装置を用いて、化合物Iの残留量を測定した。勾配法には、9:1v/v比の0.025Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5:アセトニトリルの溶液からなる移動相A、および4:6v/v比の0.025Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5:アセトニトリルの溶液からなる移動相Bを利用した。 分解の結果を、化合物Iの初期純度の百分率(%)として、表5および6に報告する。制御した25℃の室温(すなわち、典型的な棚貯蔵条件)で18ヶ月貯蔵したのちの処方物の分解を、10kcal/molの活性化エネルギーによる擬ゼロ次元モデルおよびArrheniusの式を用いて計算した(例えば、K. A. Connors, Chemical Kinetics, 1990, VCH Publishers, Inc., New York)。この活性化エネルギーにおいて、40℃での分解速度定数(k40)は2.27*k25に等しい(k25は25℃での分解速度定数である)。当業者は、他の非晶質セファロスポリン化合物についてPikalらが報告したデータ(k40=2.2*k25)に基づいて、この仮定が合理的であることを理解するであろう(M. J. Pikal, K. M. Dellerman, Stability testing of pharmaceuticals by high-sensitivity isothermal calorimetry at 25℃:cephalosporins in the solid and aqueous solution states, Int. J. Pharm. 50(1989)233-252)。 表5に示すように、処方物4および5(それぞれpH5.1および6.0、表3から)は、許容される長期安定性を有していた(すなわち、25℃で18ヶ月後の分解は10%未満である)。しかしながら、4.1未満またはそれと等しいpHを有する処方物は、製薬工業において医薬生成物にとって典型的に許容されない10%を超える分解を示した。しかしながら、表4に示すように、クエン酸塩緩衝剤を利用した処方物の最適安定性は、約6.0〜約7.0のpHであった。 凍結乾燥した処方物の上記の安定性研究のための溶液を調製する例には、下記のとおり特定の濃縮物を用いた:実施例1pHを調節しない処方物 化合物Iのナトリウム塩1.0453gを脱イオン水20.0mLに溶解した。生成した溶液の1mLアリコートを10mLバイアルに移し、リオストッパーで部分的に栓をし、上記のように凍結乾燥し、そして密栓した。実施例2HClでpHを調節した処方物 化合物Iのナトリウム塩0.5085gを脱イオン水10.0mLに溶解した。この溶液を0.1N塩酸でpH3.87まで滴定した。生成した溶液の1mLアリコートを10mLバイアルに移し、リオストッパーで部分的に栓をし、上記のように凍結乾燥し、そして密栓した。実施例3クエン酸塩緩衝液でpHを調節した処方物 化合物Iのナトリウム塩0.6gをpH6.0の0.05Mクエン酸塩緩衝液12mLに溶解した。生成した溶液を濾過し、1mLアリコートを10mLバイアルに移し、リオストッパーで部分的に栓をし、上記のように凍結乾燥し、そして密栓した。B.化合物Iのナトリウム塩の凍結乾燥した処方物の増量剤による安定化 各実験において、異なるショ糖/化合物Iのナトリウム塩の比(表7)の、化合物Iのナトリウム塩およびショ糖の処方物を、上記のように標準的な工業的手順に従って凍結乾燥した。処方物15〜18および19〜22は、品質管理再現性の目的で独立して調製した。処方物19〜22の安定性の測定値は12週間でだけ得た。 サンプルを40℃で12週間まで貯蔵した。逆相HPLCにより、上記のように勾配溶剤法を用いて、化合物Iの残留量を測定し、そして残留する化合物Iの百分率(%)として報告した。結果は、表8に示すように、ショ糖を3:1(ショ糖/化合物Iのナトリウム塩)の比で添加すると、安定性を改善したことを示している。2:5ショ糖のより低いショ糖/化合物Iのナトリウム塩の比は、あまり望ましくなかった。1:1の比を有する処方物の安定性は、ショ糖を添加しない処方物と同様であった。 凍結乾燥した処方物の上記の安定性研究のための溶液を調製する例は、下記のとおりである:実施例4ショ糖を含む処方物 化合物Iのナトリウム塩0.4818gおよびショ糖0.1964gを脱イオン水10.0mLに溶解した。生成した溶液を1mLアリコートで10mLバイアルに充填し、リオストッパーで部分的に栓をし、上記のように凍結乾燥した。凍結乾燥サイクルが終了したとき、バイアルを密栓した。C.保存剤 一般的に、化合物Iの処方物を含めて、セファロスポリン処方物には、保存剤は必要でない。しかしながら、単一用量容器に対して多用量容器で貯蔵される処方物は、インビトロでの抗菌有効性を満足させるために、保存剤の添加を必要とする。以下の実施例により調製した種々の処方物を、インビトロでの抗菌活性について試験した。抗菌有効性試験(AET)を、欧州薬局方(EP)手順(European Pharmacopoeia, 3d edition, Supplement 201, Counsil of Europe, Strasbourg)および米国薬局方(USP)手順(U. S. Pharmacopeia, and National Formulary USP24 NF19, 2000, United States Pharmacopeia Convention Inc., Rockville, MD)に従って行った。保存剤および化合物Iのナトリウム塩を含有する処方物の有効性を、下記の実施例に示す:実施例5化合物Iのナトリウム塩およびメチルパラベン(1.8mg/mL)のAET 化合物Iのナトリウム塩(80mg/mL)およびメチルパラベン(1.8mg/mL)を20mMクエン酸塩緩衝液中に含有する溶液について、AETを行った。AETの結果を表9に示す。この処方物は、全ての微生物に対してUSP基準を満たした(許容基準については表14参照)。さらに、この処方物は、6および24時間の時点での黄色ブドウ球菌を除き、全ての微生物に対して基準Aを満たした。実施例6化合物Iのナトリウム塩、メチルパラベン(1.8mg/mL)およびプロピルパラベン(0.2mg/mL)のAET 化合物Iのナトリウム塩(80mg/mL)、メチルパラベン(1.8mg/mL)およびプロピルパラベン(0.2mg/mL)を20mMクエン酸塩緩衝液中に含有する溶液について、EPおよびUSP手順に従ってAETを行った。AETの結果を表10に示す。この処方物は、全ての微生物に対してUSP基準を満たした(許容基準については表14参照)。さらに、この処方物は、6および24時間の時点での黄色ブドウ球菌を除き、全ての微生物に対してEP基準Aを満たした。実施例7化合物Iのナトリウム塩およびm−クレゾール(3mg/mL)のAET m−クレゾール3mg/mLを含有する静菌水で、化合物Iのナトリウム塩の凍結乾燥ケーキを再構築することにより調製した、化合物Iのナトリウム塩(80mg/mL)およびm−クレゾール(3mg/mL)の溶液について、EPおよびUSP手順に従ってAETを行った。AETの結果を表11に示す。この処方物は、全ての微生物に対してUSP基準を満たした(許容基準については表14参照)。さらに、この処方物は、6時間の時点での黄色ブドウ球菌を除き、全ての微生物に対してEP基準Aを満たした。実施例8化合物Iのナトリウム塩、メチルパラベン、プロピルパラベンおよびベンジルアルコールのAET ベンジルアルコール少なくとも9mg/mLを含有する注射用静菌水で、化合物Iのナトリウム塩、メチルパラベンおよびプロピルパラベンの凍結乾燥ケーキを再構築することにより調製した、化合物Iのナトリウム塩(80mg/mL)、メチルパラベン(1.8mg/mL)、プロピルパラベン(0.2mg/mL)およびベンジルアルコール(8.6mg/mL)及び20mMのクエン酸塩緩衝剤の溶液について、EPおよびUSP手順に従ってAETを行った。メチルパラベンおよびプロピルパラベンは凍結乾燥ケーキに含ませたが、ベンジルアルコールは注射用静菌水と共に加えた。AETの結果を表12に示す。この処方物は、全ての微生物に対してUSP基準を満たした(許容基準については表14参照)。さらに、この処方物は、全ての微生物に対してEP基準Aを満たした。実施例9化合物Iのナトリウム塩、m−クレゾールおよびメチルパラベンのAEP メチルパラベンおよびm−クレゾールを含有する注射用静菌水で、化合物Iのナトリウム塩の凍結乾燥ケーキを再構築することにより調製した、化合物Iのナトリウム塩(80mg/mL)、メチルパラベン(1.8mg/mL)およびm−クレゾール(3mg/mL)の溶液について、EP手順に従ってAETを行った。AETの結果を表13に示す。この処方物は、黄色ブドウ球菌に対してEP基準Aを満たした(許容基準については表14参照)。 式I:(式中、M+はNa+である)の化合物および製薬上許容される保存剤を含む注射用凍結乾燥医薬組成物であって、凍結乾燥前の水性組成物が6.0〜7.5の範囲のpHを有し、保存剤がメチルパラベン、プロピルパラベン、またはその組み合わせである、医薬組成物。 選択自由な製薬上許容される緩衝剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。 イヌおよびネコにおける細菌感染に起因する状態の治療または予防のための請求項1に記載の医薬組成物。