タイトル: | 特許公報(B2)_ヒト膣において共生生物として使用するための乳酸産生菌 |
出願番号: | 2003540333 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12N 1/20,A61F 5/44,A61F 13/20,A61K 35/74,A61P 15/02,A61P 31/04,A61P 13/02 |
サムエルソン、カロリーナ クヴァンタ、エンドレ ウェイナー、ジィファー、アナ JP 4223955 特許公報(B2) 20081128 2003540333 20020919 ヒト膣において共生生物として使用するための乳酸産生菌 エレン・アクチボラゲット 500291304 Ellen AB 浅村 皓 100066692 浅村 肇 100072040 池田 幸弘 100102897 梶原 斎子 100097870 サムエルソン、カロリーナ クヴァンタ、エンドレ ウェイナー、ジィファー、アナ SE 0103127-7 20010920 20090212 C12N 1/20 20060101AFI20090122BHJP A61F 5/44 20060101ALI20090122BHJP A61F 13/20 20060101ALI20090122BHJP A61K 35/74 20060101ALI20090122BHJP A61P 15/02 20060101ALI20090122BHJP A61P 31/04 20060101ALI20090122BHJP A61P 13/02 20060101ALI20090122BHJP JPC12N1/20 AA61F5/44 HA61F13/20 338A61K35/74 AA61P15/02A61P31/04A61P13/02 C12N 1/20 A61F 5/44 A61F 13/20 A61K 35/74 A61P 13/02 A61P 15/02 A61P 31/04 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) PubMed 特開平11−322621(JP,A) 国際公開第92/13577(WO,A1) 国際公開第00/35465(WO,A2) 米国特許第6093394(US,A) 米国特許第6180100(US,B1) 13 LMG P-20560 LMG P-20561 LMG P-20562 LMG P-20558 LMG P-20559 SE2002001704 20020919 WO2003038068 20030508 2005507256 20050317 26 20050513 森井 隆信 本発明は、乳酸産生菌及びそれらの使用法に関する。 ヒト膣の正常な微生物フローラは、慣習的にデーデルライン桿菌と呼ばれてきた乳酸産生菌を含んでいる。 このような乳酸産生菌は、グリコーゲン及び/又はグルコースなどの様々な糖の発酵によって乳酸を産生する胞子非形成グラム陽性菌に関する。 乳酸産生菌は、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ペジオコッカス(Pediococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、及びエンテロコッカス(Enterococcus)属の細菌を含む。 乳酸産生菌は、それらの代謝経路によってホモ型発酵菌及びヘテロ型発酵菌に分けることができる。ホモ型発酵菌(例えばラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus))は、乳酸だけを産生するが、ヘテロ型発酵菌は、例えば、二酸化炭素、エタノール又は酢酸も産生する。 ラクトバチルス(Lactobacillus)属は、表現型的に不均一な通性嫌気性、カタラーゼ陰性、棒状乳酸産生菌のグループである。50種を超える様々な菌種が知られており、これらの菌種は、一般にグアニン(G)及びシトシン(C)含量が約33〜53%と低いDNAを有している。GC含量は、菌種内で一定である。ラクトバチルス属(Lactobacillus)のいくつかの菌種がヒト、例えば、口腔、腸管及び膣内に見いだされる。膣内に存在するラクトバチルス属(Lactobacillus)の菌種は、例えば、ラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルスファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルスガッセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルスクリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルスカセイ(Lactobacillus casei)(亜種rhamnosus)、及びラクトバチルスジェンセニー(Lactobacillus jensenii)である。 ペジオコッカス(Pediococcus)属は、表現型的に、グラム陽性、カタラーゼ陰性、通性嫌気性、酸素耐性、円形(直径約0.6〜1.0μm)、非病原性、乳酸産生菌のグループである。 健康で妊娠可能な女性(約15〜60歳)は、主に前記の酪酸産生の結果、月経と月経の間に膣内で約3.8〜4.2のpHを示す。酸性環境は、例えば、大腸内に存在するガルドネレラバギナリス(Gardnerella vaginalis)、モビルンカス属(Mobiluncus)、バクテロイデス属(Bacteroides)、プレボテラ属(Prevotella)及び大腸菌(Eschericha coli)などの菌が膣に定着することを防ぐ。 健康な女性の泌尿生殖管の皮膚及び泌尿生殖器粘膜は、ラクトバチルス属(Lactobacillus)の様々な菌種などの有益でかつ/又は共生の微生物の特定のフローラを受け入れる。しかしながら、泌尿生殖管には、病原性微生物がコロニーを形成することもある。望ましくない微生物のコロニー形成は、性感染の結果ということがあり、自然に起きることもあり、又は正常な微生物フローラの撹乱の結果ということもある。正常の微生物フローラの撹乱は、例えば、特定の抗生物質治療後に発生することが知られている。 したがって、膣内などの女性泌尿生殖管の微生物フローラは、酵母(カンジダアルビナンクス(Candida albinancs))、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、及びクラミジアトラコマチス(Chlamydia trachomatis)などの微生物感染、並びに細菌性膣炎(ガルドネレラバギナリス(Gardnerella vaginalis)及びモビルンカス属(Mobiluncus)の蔓延増加が特徴)、抗生物質による治療又は他のしばしばある複雑な原因によって撹乱され変化を受けることがある。 月経及び性交中、膣内のpHは、それぞれ血液及び精液が加わることによって上昇する。これらの体液は、多くのタンパク質を含み、細菌(例えば、ガルドネレラバギナリス(Gardnerella vaginalis)及びモビルンカス属(Mobiluncus))によって消化され、これらの細菌は、前述のようにpHが上昇する条件下で膣内に定着することがある。次いで、アミン(例えば、プトレシン及びカダセリン(cadacerine))などの分解産物が産生する。pHが上昇すると、これらのアミンは揮発性になり、「魚くさい」臭いを呈する。さらに、このような女性は、膣帯下の増加及び刺激感を訴えることが多い。この状態は、細菌性膣炎(BV)と呼ばれ、刺激感及び臭いのある膣帯下量の増加を伴う最も一般的な状態である(Morris、M;Nicoll、A;Simms、I;Wilson、J;Catchpole、M、細菌性膣炎(Bacterial vaginosis):公衆衛生レビュー、British Journal of Obstetrics and Gynaecology、108巻(第5号):439〜450ページ、2001年5月を参照)。 細菌性膣炎は、ガルドネレラバギナリス(Gardnerella vaginalis)、バクテロイデス属(Bacteroides)、モビルンカス属(Mobiluncus)、プレボテラビビア(Prevotella bivia)、及びマイコプラズマホミニス(Mycoplasma hominis)などの望ましくない様々な菌種によって置き換えられて膣の乳酸産生菌が失われた結果と考えられている。 細菌性膣炎(BV)を診断する方法は、Amsel Criteriaによって記述される。第一に、膣帯下のpHを測定する。BV女性の約90%では、pHが4.5以上に上昇する。第二に、10%KOHを膣帯下に加えた場合、BV女性の約70%では「魚くさい」臭いが放出されるはずである。第三に、小さな球桿菌で覆われた扁平上皮細胞(クルーセル)の存在が湿式マウント法(wet mount)で観察される。BVのもう一つの信頼できる検査は、膣液の直接グラム染色である。BV用のグラム染色を解釈するための標準化された方法は、Nugent他によって示された(実施例1を参照)。 乳酸産生菌が泌尿生殖器感染に伴う多くの病原体の増殖を阻害しかつ/又は病原性を低下させる能力を有することが知られている(例えば、Redondo−Lopez、V;Cook、R L;Sobel、J D、膣の細菌ミクロフローラの制御及び維持におけるラクトバチルス属の新たな役割(Emerging role of lactobacillus in the control and maintenance of the vaginal bacterial microflora)、Reviews of infectious diseases、12巻、第5号、1990年9月〜10月、及びBoris、S;Barbes、C、膣病原体集団の制御におけるラクトバチルス属が果たす役割(Role played by lactobacilli in controlling the population of vaginal pathogens)、Microbes and Infection、2巻、543〜546ページ、2000年を参照)。 また、前記病原体に対する乳酸産生菌の拮抗的特性は、少なくとも一部は、乳酸、過酸化水素、バクテリオシンなどの様々な拮抗性物質を産生するそれらの細菌の能力によって示されることも知られている。 健康な膣は、108〜109cfu(=コロニー形成単位)の乳酸産生菌を受け入れると推定される。このフローラの組成は、その女性が特定のどの菌株を母親から受け継いだか、及び/又はどの菌株がその女性の消化管から泌尿生殖管に移動したかの結果である。 従来技術は、生きた乳酸産生菌を含む懸濁剤、坐剤及びゼラチンカプセルなどの製剤について記載している。このような製剤は、例えば、US5 466 463及びWO9 309 793に開示されている。 さらに、女性の泌尿生殖管内で正常な微生物フローラを維持する目的でタンポン及び生理用ナプキンなどの吸収性の物品に乳酸産生菌を含浸し、それによって泌尿生殖器感染を予防し、又は女性の泌尿生殖管内で正常な微生物フローラを再生する方法が知られている。このような製品は、EP0 594 628及びスウェーデン特許出願0003544−4に開示されている。 しかしながら、前述の効果を得るためには、尿路病原体阻害性乳酸産生菌がin vivoで現実にコロニーを形成して定着し、膣投与により2回以上の月経周期にわたって膣内に実際にとどまることが重要である。 細菌株が膣内でコロニーを形成するか否かは、特定の細菌株の付着性並びに膣のホルモン、栄養及び酸性状態に左右される。また、進行中の性器感染又は抗生物質による治療も、導入された菌株が膣にコロニーを形成する能力に影響を及ぼすはずである。 また、月経周期も付着性に影響を与え、最大の付着は、排卵の前及び月経の前に生じる(US6,180,100及びChan他、Journal of Urology、1984年5月)。したがって、投与された乳酸産生菌が膣内でコロニーを形成して定着するのに最も困難な時間は、月経中である。 In vivoにおける乳酸産生菌のコロニー形成及び定着に関しては、臨床結果とin vitroにおける分析結果の解釈から想定される細菌の挙動との間にかなりの差異が存在する可能性がある。膣内では様々な細菌種間で相互作用が生じ、この相互作用パターンを実験室で再現することが困難であることはよく知られている。したがって、たとえある細菌種がin vitroにおいて有望な結果を示したとしても、in vivoでは定着せず、望ましい治療効果、すなわち泌尿生殖管の微生物感染を予防し、その影響を軽減し、かつ/又は治療するという効果が得られない可能性がある。 さらに、大量生産において繰り返される培養とin vivoにおける長期間の双方で細菌が遺伝子プロフィールの安定性を示すことが極めて重要である。 望ましい治療効果を提供する許容可能な消費生産物を製造するために満たさなければならないもう一つの基準は、細菌の凍結乾燥及び凍結乾燥細菌の保存(すなわち有効期間)に対する細菌生存度の保存である。 本発明は、ラクトバチルス(Lactobacillus)属及びペジオコッカス(Pediococcus)属の新規分離細菌株であって、細菌株のうち少なくとも一種類が、月経中であっても、膣投与によりヒト膣内でコロニーを形成し定着する能力を有する細菌株を開示する。投与時から少なくとも2月経周期経過後に、尚膣内に存在する場合、その菌が定着したと見なす。 本発明による細菌株は、月経中に定着する能力を示し、例えば、前記細菌を含浸させたタンポンを用いて細菌を容易に投与することができることが利点である。 定着した前記菌株の乳酸産生菌は、泌尿生殖管の微生物感染、特に細菌性膣炎を予防し、その影響を軽減し、かつ/又は治療する。これらの治療効果を得るためには、投与によって細菌が現実に定着し、数回の月経後であっても依然として膣内に存在することが不可欠である。 前記細菌株は、2001年6月14日、ベルギーにあるBCCM/LMG(Belgian Coordinated Collections of Microorganisms/Laboratorium voor Microbioligie−Bacterienverzammeling、Universiteit Gent)でブダペスト条約(Budapest Agreement)に従って寄託されており、番号LMG P−20560で寄託され、出願人によりLN40と表示されるラクトバチルスガッセリ(Lactobacillus gasseri)の菌株、番号LMG P−20562で寄託され、出願人によりLN113と表示されるラクトバチルスカセイ(Lactobacillus casei)亜種ラムノーサス(rhamnosus)の菌株、番号LMG P−20561で寄託され、出願人によりLN99と表示されるラクトバチルスファーメンタム(Lactobacillus fermentum)の菌株、番号LMG P−20558で寄託され、出願人によりLN01と表示されるラクトバチルスクリスパタス(Lactobacillus crispatus)の菌株、番号LMG P−20559で寄託され、出願人によりLN23と表示されるペジオコッカスアシジラクティシー(Pediococcus acidilactici)の菌株、又は本質的に対応する表現型及び/又は遺伝子型の特徴を有するそれらの変異株を含む。 さらに、本発明は、ヒト膣内でコロニーを形成して定着する能力を有するラクトバチルス(Lactobacillus)属及びペジオコッカス(Pediococcus)属の細菌株を分離する方法であって、 a)膣の微生物フローラが正常で健康である女性の膣管から膣液などの細菌サンプルを集め、 b)ステップa)の膣サンプルから乳酸産生菌を選択し、 c)ステップb)の乳酸産生菌を適切な栄養培地中in vitroにおいて純粋培養し、少なくとも1種類の分離細菌株を得る、 d)月経中の女性(前記女性は、撹乱した膣の微生物フローラを示す)への細菌株の膣投与によりコロニーを形成して定着する能力に関してステップc)の少なくとも1種類の純粋培養細菌株及び/又はステップc)の少なくとも2種類の細菌株の組合せを評価し(1種類又は複数の細菌株が、投与時から少なくとも2回の月経周期後に依然として膣内に存在する場合に、前記の1種類又は複数の細菌株が定着していると見なされる)、 e)膣内でコロニーを形成して定着する前記能力を示すステップd)の少なくとも1種類の細菌株を選択する方法について記載する。 ステップc)の少なくとも1種類の純粋培養細菌株及び/又はステップc)の少なくとも2種類の細菌株の組合せを凍結乾燥することが好ましい。 さらに、この菌株/これらの菌株は、凍結乾燥に対する細菌生存度及び長い保存期間にわたる凍結乾燥細菌の生存度の安定性に関して評価し、選択することが好ましい(前記細菌生存度は、凍結乾燥及び少なくとも12ヶ月間の約−18℃における凍結乾燥細菌の保存によって細菌の少なくとも40%が保存された生存度を有する場合に安定であると見なされる)。 さらに、この菌株/これらの菌株は、繰り返される培養及びin vivoにおける膣投与による遺伝的安定性に関して評価し、選択することが好ましい(前記細菌は、少なくとも12ヶ月間、in vivoにおいて遺伝子プロフィールが保存される場合に遺伝的に安定であると見なされる)。 また、本発明は、月経中にヒト膣内でコロニーを形成して定着する能力を有するラクトバチルス(Lactobacillus)属及びペジオコッカス(Pediococcus)属の細菌株も開示する(菌株は、前述の方法に従って分離することができる)。そのような細菌株は、番号LMG P−20560で寄託され、出願人によりLN40と表示されるラクトバチルスガッセリ(Lactobacillus gasseri)の菌株、番号LMG P−20562で寄託され、出願人によりLN113と表示されるラクトバチルスカセイ(Lactobacillus casei)亜種ラムノーサス(rhamnosus)の菌株、番号LMG P−20561で寄託され、出願人によりLN99と表示されるラクトバチルスファーメンタム(Lactobacillus fermentum)の菌株、番号LMG P−20558で寄託され、出願人によりLN01と表示されるラクトバチルスクリスパタス(Lactobacillus crispatus)の菌株、及び番号LMG P−20559で寄託され出願人によりLN23と表示されるペジオコッカスアシジラクティシー(Pediococcus acidilactici)の菌株、又は本質的に対応する表現型及び/又は遺伝子型の特徴を有するそれらの変異株である。 さらに、本発明は、前記細菌株(LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23)のうち少なくとも1種類を含み、泌尿生殖管の感染を予防及び/又は治療するための組成物について記載する。 組成物は、前記菌株すべて、すなわち菌株LN40、菌株LN113、菌株LN99、菌株LN01、及び菌株LN23を含むことが好ましい。 当技術分野では、様々な細菌の組合せが細菌の世代時間を短縮し、より速い細菌増殖をもたらすことが知られている。さらに、乳酸産生菌の異なる菌種は異なる発酵パターン及び特徴を有しているため、様々な細菌種の組合せを使用することが好ましい。 本発明による前記菌株すべて、すなわちLN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23の組合せは、単独で投与された各々の前記菌株に比べ、より優れた尿路病原体の阻害を示す。 組成物は、坐剤、カプセル、丸剤、錠剤、懸濁剤、スプレー、ゲル、クリーム、粉末、又は任意の他の膣挿入の形態などの膣投与用に製剤化することが好ましい。 さらに、本発明は、前記細菌株(LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23)のうち少なくとも1種類を含み、泌尿生殖管の感染を予防及び/又は治療するための女性用吸収性製品(例えば、タンポン、生理用ナプキン、パンティーライナー)、おむつ、及び尿漏れガードなどの生理用品について記載する。 生理用品は、組成物に関して前述と同一の理由で、前記菌株すべて、すなわち菌株LN40、菌株LN113、菌株LN99、菌株LN01、及び菌株LN23を含むことが好ましい。 生理用品は、タンポンであることが好ましい。 さらに、本発明は、泌尿生殖管の感染、好ましくは膣における細菌性膣炎又はその他の細菌性疾患を予防及び/又は治療するための組成物又は生理用品を製造するための前記細菌株(LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23)のうち少なくとも1種類の使用法について記載する。 さらに、本発明は、泌尿生殖管の感染、好ましくは膣における細菌性膣炎又はその他の細菌性疾患を予防及び/又は治療するための方法であって、微生物感染を予防し、その影響を軽減し、かつ/又は治療するために前記細菌株(LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23)のうち少なくとも1種類を治療有効量で膣投与する方法について記載する。 本発明の他の特徴及び利点は、以下の本発明の詳細な説明から明らかになるはずである。 本発明で使用する用語「乳酸産生菌」は、発酵によって乳酸を産生する細菌を意味する。 本発明で使用する用語「治療有効量」は、望ましい治療効果につながる量である。 望ましい治療効果は、膣における細菌性膣炎又はその他の細菌性疾患などの泌尿生殖管の感染の予防及び/又は治療である。 本発明で使用する用語「分離細菌株」は、菌株が、前記菌株を含む培養液中in vitroにおいて培養されることを意味する。 本発明で使用する用語「細菌サンプル」は、細菌を含むサンプルを意味する。サンプルは、例えば、膣液/膣帯下であってもよい。 本発明で使用する用語「正常で健康な膣の微生物フローラ」は、女性が膣愁訴を訴えることがなく、膣サンプルをグラム染色すると、Nugent他によって示された方法(実施例1を参照)に従って総スコア0〜3が得られることを意味する。 本発明で使用する用語「撹乱した膣の微生物フローラ」は、女性が、膣帯下の増加及び/又は「魚のような」膣の臭いなどの多少の膣愁訴を訴えることを意味する。さらに、膣サンプルをグラム染色すると、Nugent他によって示された方法(実施例1を参照)に従って少なくとも4、特に7以上の総スコアが得られることを意味する。 本発明で使用する用語「適切な栄養培地」は、LABブロス又はMRSブロスなどの、細菌が培養される培地を意味する。 本発明で使用する用語「生理用品」は、タンポン(デジタル(digital)タンポンとアプリケータ付きタンポンの双方)、生理用ナプキン、パンティーライナー、おむつ、尿漏れガードなどを意味する。 本発明は、ラクトバチルス(Lactobacillus)属及びペジオコッカス(Pediococcus)属の新規分離菌株であって、細菌株のうち少なくとも一種類が、月経中であっても、膣投与によりヒト膣内でコロニーを形成し定着する能力を有する菌株を開示する。細菌が、投与時から少なくとも2回の月経周期後に依然として膣内に存在する場合に、細菌が定着していると見なされる 前記細菌株は、2001年6月14日、ベルギーにあるBCCM(Belgian Coordinated Collections of Microorganisms)でブダペスト条約(Budapest Agreement)に従って寄託されており、番号LMG P−20560で寄託され、出願人によりLN40と表示されるラクトバチルスガッセリ(Lactobacillus gasseri)の菌株、番号LMG P−20562で寄託され、出願人によりLN113と表示されるラクトバチルスカセイ(Lactobacillus casei)亜種ラムノーサス(rhamnosus)の菌株、番号LMG P−20561で寄託され、出願人によりLN99と表示されるラクトバチルスファーメンタム(Lactobacillus fermentum)の菌株、番号LMG P−20558で寄託され、出願人によりLN01と表示されるラクトバチルスクリスパタス(Lactobacillus crispatus)の菌株、及び番号LMG P−20559で寄託され出願人によりLN23と表示されるペジオコッカスアシジラクティシー(Pediococcus acidilactici)の菌株、又は本質的に対応する表現型及び/又は遺伝子型の特徴を有するそれらの変異株を含む。 さらに、本発明は、ヒト膣内でコロニーを形成して定着する能力を有するラクトバチルス(Lactobacillus)属及びペジオコッカス(Pediococcus)属の細菌株を分離するための方法であって、 a)膣の微生物フローラが正常で健康である女性の膣管から膣液などの細菌サンプルを集め、 b)ステップa)の膣サンプルから乳酸産生菌を選択し、 c)ステップb)の乳酸産生菌を適切な栄養培地中in vitroにおいて純粋培養し、少なくとも1種類の分離細菌株を得る、 d)月経中の女性(前記女性は、撹乱した膣の微生物フローラを示す)への細菌株の膣投与によりコロニーを形成して定着する能力に関してステップc)の少なくとも1種類の純粋培養細菌株及び/又はステップc)の少なくとも2種類の細菌株の組合せを評価し(1種類又は複数の細菌株が、投与時から少なくとも2回の月経周期後に依然として膣内に存在する場合に、前記の1種類又は複数の細菌株が定着していると見なされる)、 e)膣内でコロニーを形成して定着する前記能力を示すステップd)の少なくとも1種類の細菌株を選択する方法について記載する。 ステップc)の少なくとも1種類の純粋培養細菌株及び/又はステップc)の少なくとも2種類の細菌株の組合せを凍結乾燥することが好ましい。 必要量の細菌が凍結乾燥後も生存し、保存しても生存度を維持しなければならない。さらに、例えば、組成物及び/又は商業販売用の生理用品中に製剤化される必要量の凍結乾燥細菌は、室温における保存に対して生存度を維持しなければならない。 したがって、前記の1種又は複数の菌株は、凍結乾燥に対する細菌生存度及び長い保存期間にわたる凍結乾燥細菌の生存度の安定性に関して評価し、選択することが好ましい(前記細菌生存度は、凍結乾燥及び少なくとも12ヶ月間の約−18℃における凍結乾燥細菌の保存によって細菌の少なくとも40%が保存された生存度を有する場合に安定であると見なされる)。 さらに、油などの何らかの保存マトリックス中に製剤化され組成物及び/又は生理用品に封入された凍結乾燥細菌のうち少なくとも1%は、室温における少なくとも12ヶ月間、生存度を維持しなければならない。 さらに、重要な特徴は、大量生産において繰り返される培養に対する、並びに例えば組成物及び生理用品の製造プロセス中の細菌遺伝子プロフィールの安定性である。細菌は、すくなくとも10回繰り返される培養に対して遺伝子プロフィールを維持することが好ましい。さらに、細菌は、少なくとも12ヶ月などの、投与後の長期間in vivoにおいて遺伝子安定性を示さなければならない。したがって、前記の1種又は複数の菌株は、in vivoにおける膣投与による遺伝的安定性に関して評価し、選択することが好ましい(前記細菌は、少なくとも12ヶ月間、in vivoにおいて遺伝子プロフィールが保存される場合に遺伝的に安定であると見なされる)。さらに、細菌の増殖及び世代時間も重要である。膣投与された凍結乾燥細菌は、投与時から少なくとも4時間以内に増殖を開始しなければならない。世代時間は、2時間未満でなくてはならない。 また、本発明は、月経中にヒト膣内でコロニーを形成して定着する能力を有するラクトバチルス(Lactobacillus)属及びペジオコッカス(Pediococcus)属の細菌株も開示する(菌株は、前述の方法に従って分離することができる)。そのような細菌株は、番号LMG P−20560で寄託され、出願人によりLN40と表示されるラクトバチルスガッセリ(Lactobacillus gasseri)の菌株、番号LMG P−20562で寄託され、出願人によりLN113と表示されるラクトバチルスカセイ(Lactobacillus casei)亜種ラムノーサス(rhamnosus)の菌株、番号LMG P−20561で寄託され、出願人によりLN99と表示されるラクトバチルスファーメンタム(Lactobacillus fermentum)の菌株、番号LMG P−20558で寄託され、出願人によりLN01と表示されるラクトバチルスクリスパタス(Lactobacillus crispatus)の菌株、及び番号LMG P−20559で寄託され出願人によりLN23と表示されるペジオコッカスアシジラクティシー(Pediococcus acidilactici)の菌株、又は本質的に対応する表現型及び/又は遺伝子型の特徴を有するそれらの変異株であることが好ましい。 ラクトバチルス属(Lactobacillus)及びペジオコッカス属(Pediococcus)菌株の分離及び評価 ヒト膣内でコロニーを形成して定着する能力を有するラクトバチルス(Lactobacillus)属及びペジオコッカス(Pediococcus)属の細菌株は、以下のステップに従って分離した。 −膣の微生物フローラが正常で健康である女性の膣管から膣液を集めた。 −前記の液の塗布標本を、乳酸産生菌に選択的なMRS寒天上に置くことにより、膣液から乳酸産生菌(約25種類の異なる菌株)を選択した(単一コロニーを採取し、純粋な対照用としてMRS寒天上に播種した)。 −次いで、乳酸産生菌を適切な栄養培地中in vitroにおいて、適切な条件下(pH、温度など)で純粋培養し、分離細菌株を得た。 −その後、月経中の女性(前記女性は、撹乱した膣の微生物フローラを示す)への細菌株の膣投与によりコロニーを形成して定着する能力に関して純粋培養細菌株を評価した。 LN40は、約37℃において微好気的にLABブロス(約pH6.5)中で純粋培養した。 LN113は、約37℃において微好気的にMRSブロス(約pH6.5)中で純粋培養した。 LN99は、約37℃において微好気的にLABブロス(約pH6.5)中で純粋培養した。 LN01は、約37℃において嫌気的にMRSブロス(約pH6.5)中で純粋培養した。 LN23は、約37℃において微好気的にMRSブロス(約pH6.5)中で純粋培養した。 純粋培養細菌株は、まず世代時間に関して評価した。30分未満の世代時間を示した細菌株(約15種類の異なる菌株)を選択した。これらの選択菌株は、in vitroにおいていくつかの微生物の増殖を阻害する能力に基づいてスクリーニングした(データは示さず)。最初に、表皮ブドウ球菌(Staphilococcus epidemidis)(2種類の異なる菌株)、エンテロコッカスクロアセ(Enterococcus cloace)、大腸菌(Eschericha coli)、セラチアマルセサス(Serratia marcesus)、ミクロコッカスリソデイクチカス(Micrococcus lysodeicticus)、及びカンジダアルビカンス(Candida albicans)の増殖を阻害する能力を評価した。8種類の異なる細菌株(ラクトバチルス(Lactobacillus)属の7菌株及びペジオコッカス(Pediococcus)属の1菌株)がこの能力を示したので選択した。これらの8菌株をさらに、尿路病原体ガルダーネラバギナリス(Gardernella vaginalis)の増殖を阻害する能力に関して評価した。最良の菌株(すなわち、撹乱した膣の微生物フローラでコロニーを形成する最高の能力を有する菌株)は、LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23であった。 これらの菌株をさらに、臨床試験によって評価した(投与時(細菌の投与は、最初の月経中に開始した)から少なくとも2回の月経周期後に依然として膣内に存在する場合に、細菌株が定着していると見なした)。膣でコロニーを形成して定着する前記能力を示した細菌株(LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23)を選択した。 さらに、凍結乾燥に対する細菌生存度及び長い保存期間にわたる凍結乾燥細菌の生存度(有効期間)の安定性、繰り返される培養及びin vivoにおける遺伝子プロフィールの保存、及び細菌増殖プロセスを評価した。 膣投与による乳酸産生菌のコロニー形成及び定着 15名のBV患者(細菌性膣炎と診断された女性)について検討した。15名の患者はすべて、クリンダマイシン膣坐剤(Dalacin(登録商標)2%膣坐剤、Pharmacia製)により3日間治療した。その後、二重盲検プラセボ対照部分と併せて治療を続行し、6名の患者は、抗生物質による治療後、最初の月経期間中に菌株LN01、LN23、LN99、LN113、及びLN40の凍結乾燥細菌約103cfuを含むタンポンを使用した。他の9名の患者は、乳酸産生菌なしに従来のタンポンを使用した。第2月経期間中、15名の患者すべては乳酸産生菌なしに従来のタンポンを使用し、この月経から数日後に膣サンプルを採取した。 膣サンプルをグラム染色した。Nugent他によって示された標準化されたグラム染色法では、特定の細菌形態型の有無を分析する。形態型は、ラクトバチルス属(Lactobacillus)形態型の大きなグラム陽性桿菌;ガルドネレラ属(Gardnerella)形態型と呼ばれるより小さなグラム不定桿菌(Variable bacilli);及び湾曲(curved)桿菌である。膣液中に存在する生物体を数量化し、スコアに換えた(表1を参照)。 コード0〜4+は、1油浸視野当たりのその形態型を持つ生物体の平均数に基づき、1+は1個未満、2+は、1〜4個、3+は、5〜30個、4+は、30個以上が存在する。3種類すべての形態型についてスコアを集約することにより総スコアが得られる。総スコアは、以下のように解釈する。0〜3、正常;4〜6、中間;及び≧7、BV。 乳酸産生菌を含むタンポンを使用した6名の患者では細菌性膣炎は検出されなかった。さらに、この結果は、乳酸産生菌が第2月経周期後にも依然として膣内に存在することを示している。 さらに、これらの結果は、本発明による細菌株の月経中の完全な膣内コロニー形成及び定着には比較的少数の投与細菌(約103cfu)で十分であることを示している。 さらに、本発明による細菌株は、膣粘膜に対する優れた付着性を有している。 膣投与による乳酸産生菌のコロニー形成及び定着 膣愁訴のない4名の健康な女性は、月1回の月経中に、菌株LN01、LN23、LN99、LN113、及びLN40の凍結乾燥細菌約103cfuを含むタンポンを12〜18ヶ月間使用した。 前記試験期間後に、各々の女性から得た膣サンプルを評価した。実施例10に記載のRAPD(ランダム増幅多型DNA)を用い、サンプル中に見いだされたラクトバチルス属(Lactobacillus)及びペジオコッカス属(Pediococcus)菌株を同定した。 LN01及びLN113は、前記女性から得た膣サンプルのうち2つで同定された。 LN40は、前記女性から得た膣サンプルのうち1つで同定された。 LN23及びLN99は、前記女性から得た膣サンプルのいずれにおいても同定されなかった。 これらの結果を説明すると、前記細菌プールを、膣pHが正常で健康な膣フローラを示す女性に投与した場合、LN23は実質的に増殖しないことになる。しかしながら、前記細菌プールを、撹乱した膣の微生物フローラを示す女性に投与した場合、LN23が最初に定着し、他の細菌株(LN01、LN113、LN40、及びLN99)が増殖するのに都合の良い環境を提供するはずである。 また、注目すべきことに、特定の菌株、及び/又は菌株の特定な組合せが女性の膣内に定着しかつ増殖する適合性に関して、個体差が存在する。 各膣サンプルにおいて、本発明による前記細菌株のうち少なくとも1種類が同定された。 細菌株LN40、LN113、LN99、及びLN23についての凍結乾燥及び長期間の保存(有効期限)による生存度の安定性 凍結乾燥細菌株LN40、LN113、LN99、及びLN23は、約−18℃における長い保存期間にわたる生存度の安定性に関して評価した。 表3に示す結果は、細菌の少なくとも40%が、−18℃において12ヶ月後にも依然として生存可能であることを示している。さらに、少なくとも10〜20%の細菌は、−18℃において78ヶ月後にも依然として生存可能である。 さらに、API 50CHに従ってこれらの細菌を分析し、この分析から得られた結果は、菌株LN40、LN113、LN99、LN23、及びLN01が、−18℃における凍結乾燥形態での保存で少なくとも78ヶ月間、遺伝子プロフィールを保存することを示していた。 凍結乾燥細菌(LN40、LN113、LN99、及びLN23)をAkosoft(登録商標)36(Karlshamns AB製)中に分散し、それぞれ約8℃及び22℃における長い保存期間にわたる生存度の安定性(有効期間)に関して評価した。 表4に示す結果は、細菌の少なくとも45〜50%が、8℃において12ヶ月後に依然として生存可能であることを示している。さらに、約4%の細菌は、室温、すなわち22℃において12ヶ月後に依然として生存可能である。 同様の結果は、LN01を含む本発明による細菌株すべてを含む凍結乾燥細菌プールついても得られた。実施例4:菌株LN40、LN113、LN99、LN01及びLN23についての繰り返される培養に対する遺伝子プロフィールの保存 細菌株(LN40、LN113、LN99、LN01及びLN23)を繰り返し10回培養し、その後API 50CHについて評価した。各細菌株の発酵パターン(実施例9を参照)は、繰り返された培養後に保存されていた。したがって、この結果は、前記細菌株が、繰り返される培養により遺伝子プロフィールを保存することを示した。 菌株LN40、LN99、LN113、LN23及びLN01細菌増殖プロセス 前記の望ましい治療効果を得るためには、膣投与した凍結乾燥細菌が投与時から少なくとも4時間以内に膣内で増殖し始めなければならない。 無菌MRSブロスに添加された凍結乾燥細菌(LN40、LN113、LN99、LN23、及びLN01)について620nmで吸光度(光学密度、OD)を測定した。2タイプの実験(図1a及び1bを参照)を行った。 a)MRSブロス3mlに凍結乾燥細菌0.01gを加え、この分散液100μlを別のMRSブロス3mlで希釈する。 b)約0.100の吸光度をもたらす量で、MRSブロスに凍結乾燥細菌を加えた。 上記細菌分散液の入ったキュベットを37℃に置き、15分ごとに10.5時間、吸光度を測定した。 図1a及び1bに示すように、各細菌株の細菌増殖(それぞれ、LN40、LN113、LN99、LN23、及びLN01)は速く、すべての細菌株が少なくとも2時間以内に増殖を始めた。 さらに、各細菌株の世代時間は、約20〜25分であった。したがって、細菌は尿路病原体より速く増殖し、このことは、細菌の本明細書に記載の使用法に鑑みて極めて都合良い。 さらに、当技術分野では、様々な細菌の組合せが細菌の世代時間を短縮し、より速い細菌増殖をもたらすことが知られている。さらに、乳酸産生菌の異なる菌種は異なる発酵パターン及び特徴を有しているため、様々な細菌種の組合せを使用することが好ましい。 注目すべきことに、凍結乾燥LN40、LN99、LN113、LN23、及びLN01の組合せは、各細菌株に必要な時間より少なくとも25%速い1.5時間以内に増殖をし始める。 尿路病原体の増殖を阻害する能力 この実施例の目的は、LN40、LN113、LN99、LN23、及びLN01の細菌プールが、尿路病原体の増殖を阻害することに関して、単独で投与された各々の細菌に比べてより有効であることを示すことである。 試験すべき乳酸産生菌は、MRS寒天などの溶けた無菌緩衝化寒天培地へ均一に添加した。得られた混合物をペトリ皿(直径90mm)1に注加し、図3に示すように、寒天混合物2が皿の片側においては皿の底から約1mm、皿の反対側においては約11mmとなるように皿を傾けた。 尿路病原体は、VRB(Violet Red Bile)寒天などの溶けた無菌緩衝化寒天培地へ均一に添加した。この混合物を、図3に示すように、前記乳酸菌を含む前述の固化した寒天の上に注加し、この寒天混合物3も固化させた。 その後、乳酸菌及び尿路病原体を37℃において約24時間インキュベートした。すると、図4に示すように、2つの異なるゾーン4及び5が上記の皿1に認められた。第一のゾーン4では、尿路病原体が増殖できていた。第二のゾーン5では、乳酸菌が尿路病原体の増殖を阻害した。 乳酸菌が尿路病原体を阻害する能力は、第二のゾーン5、すなわち阻害された増殖ゾーン5の長さLを測定することにより数量化することができる。 この実験では、腸管病原体の大腸菌(E coli)(EPEC)菌株を用いた。 阻害された増殖ゾーンの長さLは、細菌株LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23の各々の場合に8から22mmまでの範囲内にあった。 しかしながら、LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23を含む細菌プールでは、阻害された増殖ゾーンの長さLは32〜34mmであった。 すなわち、細菌株LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23のすべてを含む細菌プールは、大腸菌(E coli)などの尿路病原体の増殖を阻害することに関して、単独で使用された各細菌株に比べてより効果的である。したがって、本発明による前記細菌株の組合せを用いることが好ましい。 菌株LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23の特徴付け表現型及び遺伝子型の方法により細菌の特徴を明らかにした。 菌株LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23の微生物学的特徴付け 菌株(LN40、LN113、LN99、LN23、及びLN01)は、細胞形態学、グラム染色、オキシダーゼ及びカタラーゼ反応に関して特徴を明らかにした。 菌株LN40は、グラム陽性、カタラーゼ陰性、オキシダーゼ陰性、胞子非形成、棒状(約0.9μm×3〜10μm)細菌からなり、単一細胞として又は対で存在した。 菌株LN99は、グラム陽性、カタラーゼ陰性、オキシダーゼ陰性、胞子非形成、棒状(約0.9μm×1.5〜2.0μm)細菌からなり、単一細胞として存在した。 菌株LN113は、グラム陽性、カタラーゼ陰性、オキシダーゼ陰性、胞子非形成、棒状(約0.9μm×2μm)細菌からなり、単一細胞として又は対で存在した。 菌株LN01は、グラム陽性、カタラーゼ陰性、オキシダーゼ陰性、胞子非形成、まっすぐな又は僅かに曲がった棒状(約0.8〜1.6μm×2.3〜11μm)細菌からなり、単一細胞として又は対で存在した。 菌株LN23は、グラム陽性、カタラーゼ陰性、オキシダーゼ陰性、胞子非形成、円形(直径約1μm)細菌からなり、単一細胞として又は対で存在した。 菌株LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23のSDS−PAGE及びクラスター分析 培養液は、嫌気性条件下37℃において24時間、MRS寒天(Oxoid CM361)上で増殖させた。細胞抽出物の調製及びタンパク質ゲル電気泳動(SDS−PAGE)は、Research Group of Laboratory for Microbiology、University Ghentによって確立されたプロトコル(Pot、B、Vandamme、P、Kersters、K、生物体全体のタンパク質フィンガープリントの電気泳動分析(Analysis of electrophoretic whole−organism protein fingerprints)、Chemical Methods in Prokaryotic Systematics、M、Goodfellow、及びA G、O’Donell(編)、J Wiley & Sons、Chichester(1994年))に準拠してBCCM(商標)/LMGで行った。 正規化されデジタル化されたタンパク質パターンを数値的に分析し、LN40、LN113、LN99、及びLN23に関するBCCMデータベース(1999年12月)中の基準プロフィールによりクラスター化した。LN01を分析し、CCUGデータベース(2001年1月)中の基準プロフィールによりクラスター化した。 菌株LN40は、菌種ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)又はラクトバチルスガッセリ(Lactobacillus gasseri)に属することが判明した。 菌株LN99は、菌種ラクトバチルスファーメンタム(Lactobacillus fermentum)に属することが判明した。 菌株LN113は、菌種ラクトバチルスカセイ(Lactobacillus casei)亜種ラムノーサス(rhamnosus)に属することが判明した。 菌株LN23は、菌種ペジオコッカスアシジラクティシー(Pediococcus acidilactici)に属することが判明した。 菌株LN01は、菌種ラクトバチルスクリスパタス(Lactobacillus crispatus)に属することが判明した。 API50CH及びAPIrapidID32strepを用いる菌株LN40、LN113、LN99、LN23、及びLN01の特徴付け 菌株(LN40、LN113、LN99、LN23及びLN01)が様々な炭水化物を発酵する能力を表5に示す。この試験は、製造者の取扱説明書に従い、API 50CH及びAPI rapid ID32strepにより37℃において行った。API 50CHとAPI rapid ID32strep間で異なる結果については、API 50CHがより信頼性があると考えられる。 得られた発酵パターンをCCUGデータベース中で検索した。各菌株について得られた最高のデータベーススコアは、前記菌株がそれぞれどの細菌種に属しているかに関する前述の分析(SDS−PAGE/クラスター分析)から得られた結果を裏付けた。 さらに、ラムノースとの反応は、菌株LN113が菌種ラクトバチルスカセイ(Lactobacillus casei)亜種ラムノーサス(rhamnosus)に属していることを裏付けた。 しかしながら、LN40、LN99、LN113、LN23及びLN01のそれぞれと、各細菌種の基準株(それぞれCCUG31451T、CCUG30138T、CCUG21452T、CCUG32235T、及びCCUG44117T)との比較は、発酵パターンに関してすべての菌株(LN40、LN113、LN99、LN23、及びLN01)で著しい違いを示した。 表5では、1は、反応が起こらないことを示し、2は、漠然とした反応の発生を示し、3は、反応の発生を示し、4は、強い反応の発生を示し、5は、極めて強い反応の発生を示す。 ランダム増幅多型DNAを用いる細菌株LN40、LN113、LN99、LN23、及びLN01の特徴付け さらに、細菌株をRAPD(ランダム増幅多型DNA)で分析した。この技法は、例えば、Willians、J G、他、Nucl Acids Res、18巻、6531ページ(1990年)によって報告され、菌株の多様性を検出するためばかりでなく、遺伝子地図、集団解析、疫学のため、並びに分類学的及び系統学的関係を分析するためにこれまで使用されてきた(Welsh、J、他、PCR2:A Practical Approach、McPherson、M J、Hames、B D、及びTaylor、G R、編、第11章、IRL Press(1995年))。 菌株特異的産物の再現可能なアレイは、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)における厳密性の低い条件下で短いオリゴヌクレオチドプライマー(5’ACGCGCAAC 3’)を用いて作成した。その後、得られたアレイをゲル電気泳動により分析し、同一の処理を受けた各菌株の基準株と比較した。 この分析から得られた結果を図2に要約する。 レーン1は、ラクトバチルスファーメンタム(L fermentum)、ATCC14931Tであり、 レーン2は、LN99であり、 レーン3は、ラクトバチルスクリスパタス(L crispatus)、CCUG44117Tであり、 レーン4は、LN01であり、 レーン5は、100bpモル重量のマーカーであり、 レーン6は、LN23であり、 レーン7は、LN40であり、 レーン8は、ラクトバチルスガッセリ(L gasseri)、ATCC19992Tであり、 レーン9は、LN113であり、 レーン10は、ラクトバチルスカセイ(L casei)、ATCC4646Tである。 図2では、本発明による細菌株(LN40、LN113、LN99、LN23、及びLN01)とそれぞれの基準株との間の大きな違いを認めることができる。 また、本発明は、前記細菌株(LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23)のうち少なくとも1種類を含み、泌尿生殖管の感染を予防及び/又は治療するための組成物に関する。 組成物は、前記菌株すべて、すなわち菌株LN40、菌株LN113、菌株LN99、菌株LN01、及び菌株LN23を含むことが好ましい。 組成物は、坐剤、カプセル、丸剤、錠剤、懸濁剤、スプレー、ゲル、クリーム、粉末、又は任意の他の膣挿入の形態などの膣投与用に製剤化することが好ましく、当技術分野で使用される従来の薬剤賦形剤を含むことができる。さらに、本発明は、前記細菌株(LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23)のうち少なくとも1種類を含み、泌尿生殖管の感染を予防及び/又は治療するための女性用吸収性製品(例えば、タンポン、生理用ナプキン、パンティーライナー他)、おむつ、及び尿漏れガードなどの生理用品について記載する。 生理用品は、前記菌株すべて、すなわち菌株LN40、菌株LN113、菌株LN99、菌株LN01、及び菌株LN23を含むことが好ましい。 生理用品は、タンポンであることが好ましい。 さらに、本発明は、泌尿生殖管の感染、好ましくは膣における細菌性膣炎又はその他の細菌性疾患を予防及び/又は治療するための組成物又は生理用品を製造するための前記細菌株(LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23)のうち少なくとも1種類の使用法について記載する。 さらに、本発明は、泌尿生殖管の感染、好ましくは膣における細菌性膣炎又はその他の細菌性疾患を予防及び/又は治療するための方法であって、微生物感染を予防し、その影響を軽減し、かつ/又は治療するために前記細菌株(LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23)のうち少なくとも1種類を治療有効量で膣投与する方法について記載する。細菌株は、膣製剤及び/又は生理用品を用いて投与することが好ましく、タンポンを用いることが最も好ましい。 要約すれば、細菌株LN40、LN113、LN99、LN01、及びLN23は、以下に関して優れた特性を示す。 −尿路病原体の増殖(速い細菌増殖を含む)を阻害する能力 −月経中であっても、膣投与によりin vivoにおいてコロニー形成し定着する能力 −凍結乾燥による、又は長い保存期間(有効期限)にわたる細菌生存度の安定性、及び −繰り返される培養及びin vivoにおける遺伝子プロフィールの保存。 さらに、これらの細菌株は、経済的側面から見ても都合が良い。 要するに、これらの特性は、本発明による細菌株が、泌尿生殖管の微生物感染を予防し、その影響を軽減し、かつ/又は治療するための前記菌株を含む(組成物又は生理用品などの)消費生産物の工業的大量生産に極めて適していることを意味している。 本発明について詳細にかつ本発明の特定の実施形態を参照しながら述べてきたが、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく様々な変更及び修正形態を実施できることは当業者にとって明らかであろう。a,bはそれぞれ、細菌株LN40、LN99、LN113、及びLN23の増殖プロセスを示す図である。RAPD及びゲル電気泳動を用い、生成された菌株特異的産物についてゲルの画面を示す図である。菌株LN40、LN99、LN113、LN01、及びLN23はそれぞれ、それぞれの細菌種の基準株と比較されている。実施例6で用いた実験設定を示す図である。実施例6で用いた実験設定を示す図である。 番号LMG P−20560で寄託された、ラクトバチルスガッセリ(Lactobacillus gasseri)の菌株LN40、番号LMG P−20562で寄託された、ラクトバチルスカセイ(Lactobacillus casei)亜種ラムノーサス(rhamnosus)の菌株LN113、番号LMG P−20561で寄託された、ラクトバチルスファーメンタム(Lactobacillus fermentum)の菌株LN99、番号LMG P−20558で寄託された、ラクトバチルスクリスパタス(Lactobacillus crispatus)の菌株LN01、及び番号LMG P−20559で寄託された、ペジオコッカスアシジラクティシー(Pediococcus acidilactici)の菌株LN23、又は本質的に対応する表現型及び/又は遺伝子型の特徴を有するそれらの変異株からなる群から選択されることを特徴とし、月経中であっても、膣投与によりヒト膣内でコロニーを形成し定着する能力を有するラクトバチルス(Lactobacillus)属又はペジオコッカス(Pediococcus)属の分離細菌株(1種類又は複数の細菌株が、投与時から少なくとも2回の月経周期後に依然として膣内に存在する場合に、前記の1種類又は複数の細菌株が定着する能力を有すると見なされる)。 ヒト膣内で、月経中であっても、コロニーを形成して定着する能力を有するラクトバチルス(Lactobacillus)属又はペジオコッカス(Pediococcus)属の細菌株を分離する方法であって、 a)膣の微生物フローラが正常で健康である女性の膣管から得られた細菌サンプルから乳酸産生菌を選択するステップと、 b)ステップa)の乳酸産生菌を適切な栄養培地中in vitroにおいて純粋培養し、少なくとも1種類の分離細菌株を得るステップと、 c)月経中の女性(前記女性は、撹乱した膣の微生物フローラを示す)への細菌株の膣投与によりコロニーを形成して定着する能力に関して、ステップb)の少なくとも1種類の純粋培養細菌株、及び/又はステップb)の少なくとも2種類の細菌株の組合せを評価するステップ(1種類又は複数の細菌株が、投与時から少なくとも2回の月経周期後に依然として膣内に存在する場合に、前記の1種類又は複数の細菌株が定着していると見なされる)と、 d)膣内でコロニーを形成して定着する前記能力を示すステップc)の少なくとも1種類の細菌株を選択するステップ とを含む、方法。 ステップb)の少なくとも1種類の純粋培養細菌株、及び/又はステップb)の少なくとも2種類の細菌株の組合せを凍結乾燥するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。 ステップb)の少なくとも1種類の純粋培養細菌株、及び/又はステップb)の少なくとも2種類の細菌株の組合せを、凍結乾燥に対する細菌生存度及び長い保存期間にわたる凍結乾燥細菌の生存度の安定性に関して評価し、選択するステップ(前記細菌生存度は、凍結乾燥及び少なくとも12ヶ月間の−18℃における凍結乾燥細菌の保存によって、細菌の少なくとも40%が保存された生存度を有する場合に安定であると見なされる)をさらに含む、請求項3に記載の方法。 ステップb)の少なくとも1種類の純粋培養細菌株、及び/又はステップb)の少なくとも2種類の細菌株の組合せを、繰り返される培養に対する遺伝子安定性に関して評価し、選択するステップをさらに含む、請求項3又は4に記載の方法。 請求項1に記載の細菌株のうち少なくとも1種類を含む、泌尿生殖管の感染を予防及び/又は治療するための組成物。 膣投与のために製剤化された請求項6に記載の組成物。 請求項1に記載の細菌株のうち少なくとも1種類を含む、泌尿生殖管の感染を予防及び/又は治療するための生理用品。 タンポンの形態である請求項8に記載の生理用品。 泌尿生殖管の感染を予防及び/又は治療するための組成物又は生理用品の製造のための、請求項1に記載の細菌株のうち少なくとも1種類の使用。 膣における細菌性膣炎又はその他の細菌性疾患を予防及び/又は治療するための請求項10に記載の使用。 膣における細菌性膣炎又はその他の細菌性疾患を予防及び/又は治療するための請求項6又は7に記載の組成物。 膣における細菌性膣炎又はその他の細菌性疾患を予防及び/又は治療するための請求項8又は9に記載の生理用品。