タイトル: | 特許公報(B2)_神経細胞の保護のためのウチワサボテン抽出物又はそれから分離した化合物を用いた医薬組成物 |
出願番号: | 2003539668 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 36/18,A61K 31/353,A61P 9/10,A61P 25/16,A61P 25/28 |
リ ヨン ソプ パク ホクン ジン チャンベ キム ヒョン ジャ チョ ジョンスク パク ミジョン ソン ユンソン JP 4418675 特許公報(B2) 20091204 2003539668 20021029 神経細胞の保護のためのウチワサボテン抽出物又はそれから分離した化合物を用いた医薬組成物 コレア インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー 504173275 前田 弘 100077931 小山 廣毅 100094134 竹内 宏 100110939 嶋田 高久 100110940 竹内 祐二 100113262 今江 克実 100115059 藤田 篤史 100115691 二宮 克也 100117581 原田 智雄 100117710 井関 勝守 100121728 リ ヨン ソプ パク ホクン ジン チャンベ キム ヒョン ジャ チョ ジョンスク パク ミジョン ソン ユンソン KR 2001/66810 20011029 20100217 A61K 36/18 20060101AFI20100128BHJP A61K 31/353 20060101ALI20100128BHJP A61P 9/10 20060101ALI20100128BHJP A61P 25/16 20060101ALI20100128BHJP A61P 25/28 20060101ALI20100128BHJP JPA61K35/78 CA61K31/353A61P9/10A61P9/10 103A61P25/16A61P25/28 A61K 36/18 A61K 31/353 CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) Han Y N et al,Monoamine oxidase B inhibitors from the fruits of Opuntia ficus-indica var. saboten,Archives of pharmacal research,2001年 1月,Vol.24,No.1,pp. 51-54 Wei,Myung-Bok,Protective effects of Opuntia ficus-indica and Saururus chinensis of free radical-induced neuronal injury in mouse cortical cell cultures, Yakhak Hoechi ,2000年,Vol.44,No.6,pp.613-619 Jeong,Sei Joon et al,Flavonoids from the fruits of Opuntia ficus-indica var. saboten,Saengyak Hakhoechi ,1999年,Vol.30,No.1,pp.84-86 Qiu,Yingkun et al, Study on chemical constituents of stems of Opuntia dillenii,Shenyang Yaoke Daxue Xuebao ,2000年,Vol.17,No.4,pp.267-268 Laekeman, Gert M. et al,Cardiovascular effects of 3-methylquercetin,Planta Medica ,1986年,No.6,pp.433-437 Ishige, K.et al ,Flavonoids protect neuronal cells from oxidative stress by three distinct mechanisms, Free Radical Biology & Medicine ,2001年,Vol.30,No.4,pp.433-446 Schroeter, H.,Phenolic antioxidants attenuate neuronal cell death following uptake of oxidized low-density lipoprotein,Free Radical Biology & Medicine ,2000年,VOl.29,No.12,pp.1222-1233 Cimanga, K. et al,Radical scavenging and xanthine oxidase inhibitory activity of phenolic compounds from Bridelia ferruginea stem bark,Journal of Pharmacy and Pharmacology ,2001年,Vol.53,No.5,pp.757-761,(Compond 1,Table 1) Hu, J. 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Neurobiol. 48:1Choi著、1988年発行、Neuron 1:623Trejo-Gonzalezら著、1996年発行、J. Ethnopharmacol. 55:27-33Ahn著、1998発行、Illustrated book of Korean medicinal herbs. Kyohaksa, 497Galatiら著、2001年発行、J. Ethnopharmacol. 76:1-9イ・ナムホら著、2000年発行、生薬学会誌31:412 したがって、本発明の目的は、抗酸化作用および神経細胞保護活性を示すウチワサボテン抽出物またはそれから分離した化合物の虚血性疾患、脳神経系疾患または心血管系疾患の予防および治療のための用途を提供することである。 本発明の一実施態様によって、本発明では、抗酸化作用および神経細胞保護活性を示すウチワサボテンの酢酸エチル抽出物が提供される。 また、本発明では、前記ウチワサボテンの酢酸エチル抽出物から分離した抗酸化作用および神経細胞保護活性を示す化合物およびその分離方法が提供される。 また、本発明では、ウチワサボテンの酢酸エチル抽出物またはそれから分離した活性化合物を有効成分として含有する虚血性疾患、脳神経系疾患若しくは心血管系疾患の予防又は治療用医薬組成物が提供される。 さらに、本発明では、ウチワサボテンの酢酸エチル抽出物またはそれから分離した活性化合物を虚血性疾患、脳神経系疾患若しくは心血管系疾患の予防又は治療のために用いる用途が提供される。 以下、本発明をさらに詳細に説明する。 本発明は、ウチワサボテン(Opuntia ficus-indica)の酢酸エチル抽出物、またはそれから分離した下記式1〜3のケンフェロール(kaempferol)、ジヒドロクエルセチン(dihydroquercetin)およびクエルセチン3−メチルエーテル(quercetin 3-methyl ether)、これらの薬剤学的に許容可能な塩、水和物、溶媒化物、立体異性体およびこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つを含む、虚血性疾患、脳神経系疾患または心血管系疾患の予防および治療用医薬組成物を提供する。 前記式1〜3の化合物は、その構造内に不斎炭素中心を有していてもよいので、個々のエナンチオマーまたは部分立体異性体の形態で存在してもよく、ラセミ体を含むこれらの混合物でも存在してもよく、このような異性体またはこれらの混合物もまた本発明の範囲に含まれる。 本発明による化合物はまた、薬剤学的に許容可能な塩を形成してもよい。このような薬剤学的に許容可能な塩には、アルカリ金属水酸化物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ金属重炭酸塩(例:重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム)、アルカリ金属炭酸塩(例:炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム)などのような無機塩基と第1級、第2級、第3級アミンアミノ酸のような有機塩基が含まれる。 また、本発明の化合物は、溶媒化物、特に水和物の形態でもよい。水和は、前記化合物を分離する間に起こるか、または化合物の吸湿性によって時間が経過するにつれて起こり得る。 神経細胞保護活性を有する本発明のウチワサボテン抽出物はウチワサボテンの茎、果実または蒸熟して乾燥した果実を酢酸エチルで抽出して得られ、たとえば、下記のような方法で製造できる。すなわち、ウチワサボテンの茎、果実または蒸熟して乾燥した果実を細かく切断してそのまま使用するか、冷凍乾燥した後、メタノール(MeOH)またはエタノールのような低級アルコール、60%以上のアルコール水溶液およびアセトンなどの抽出溶媒を原料1kg当たり0.1〜10L、好ましくは0.5〜7Lの量で加え、室温で4〜5日間放置する。この過程は、必要に応じて3回以上繰り返してもよい。得られた抽出物を濾過および減圧留去してアルコール抽出物を得る。アルコール抽出物1kg当たり0.1〜10L、好ましくは水1〜4Lを加えた後、酢酸エチル(EtOAc)0.1〜5L、好ましくは0.5〜2Lで十分に抽出して酢酸エチル抽出物が得られる。ウチワサボテンの茎、果実または蒸熟して乾燥した果実を直接酢酸エチルで抽出しても類似する組成を有する抽出物が得られる。 このようにして得られた抽出物の抗酸化作用を調査するために、DPPH(1,1- diphenyl-2-picrylhydrazyl)方法でラジカル消去作用を確認した結果、ウチワサボテンの茎、果実および加工した果実の各酢酸エチル抽出物が類似する程度の優れた効果を示す。また、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ−誘発神経毒性抑制効果と過酸化水素−誘発神経毒性抑制効果をそれぞれ調査した結果、ウチワサボテンの各部位の酢酸エチル抽出物、特に、ウチワサボテンの茎と加工した果実の酢酸エチル分画物がメタノール、ブタノールなどのアルコール溶媒を用いた抽出物およびジクロロメタンなどの他の有機溶媒を用いた抽出物に比べて著しく優れた効果を示す。 このように、ウチワサボテンの抽出物をアルツハイマー病、脳卒中、パーキンソン病のような脳神経疾患による脳神経細胞の損傷の予防および治療と心臓虚血による心筋の損傷を防止することによって心筋梗塞の予防および治療を目的に使用する場合には、ウチワサボテンの酢酸エチル抽出物がメタノールのようなアルコール抽出物よりも効果的な薬理作用を示す。 前記で得られたウチワサボテンの酢酸エチル抽出物に対して、シリカゲル、セファデックス、RP−18、ポリアミド、トヨパール(Toyopearl)またはXAD樹脂などの充填剤を用いたカラムクロマトグラフィーを行うことによって、脳神経細胞の保護効能を示す成分を分離および精製できる。カラムクロマトグラフィーは、必要に応じて適切な充填剤を選択して数回行ってもよいが、特にセファデックス、RP−18またはシリカゲルを充填剤として用いるカラムクロマトグラフィーを適宜組合せて行うことが最も好ましい。 前記のカラムクロマトグラフィー過程を通じてウチワサボテンの酢酸エチル抽出物から3−オキソ−α−イオノールβ−D−グルコシド、ケンフェロール、ジヒドロケンフェロール、ケンフェロール3−メチルエーテル、クエルセチン、ジヒドロクエルセチン、クエルセチン3−メチルエーテルなど1種のテルペンと6種以上のフラボノイド化合物を分離でき、このうち、3−オキソ−α−イオノールβ−D−グルコシド、クエルセチン3−メチルエーテル、ケンフェロール3−メチルエーテルなどの3種は本発明者によってウチワサボテンから初めて分離された。 前記化合物のうち、ケンフェロール、クエルセチン、ジヒドロクエルセチン、クエルセチン3−メチルエーテルはキサンチン/キサンチンオキシダーゼによって誘発された神経細胞の損傷だけでなく、過酸化水素によって誘発された神経細胞の損傷を効果的に抑制し、優れたDPPHラジカル消去能力を示す。キサンチン/キサンチンオキシダーゼまたは過酸化水素によって誘発された神経細胞の損傷抑制効果はクエルセチン3−メチルエーテルが最も強く、その次がクエルセチン、ジヒドロクエルセチン、ケンフェロールの順である。したがって、本発明のウチワサボテンの酢酸エチル分画がキサンチン/キサンチンオキシダーゼまたは過酸化水素によって誘発された神経細胞の損傷を抑制するのに重要な作用をする有効活性成分がケンフェロール、クエルセチン、ジヒドロクエルセチンおよびクエルセチン3−メチルエーテルであることが確認された。 また、ジヒドロクエルセチンとクエルセチン3−メチルエーテルはキサンチン/キサンチンオキシダーゼによって生成されるスーパーオキシドラジカルを消去する効能に優れ、NMDAの活性化によって誘発される神経細胞の損傷を抑制する効能を示す。特に、クエルセチン3−メチルエーテルは成長因子の除去によってもたらされる神経毒性(Growth factor withdrawal apoptotoic cytotoxicity)試験においても優れた神経細胞保護効能を示すだけでなく、脳卒中の臨床と非常に類似する虚血性脳損傷実験動物モデルにおいても優れた脳神経保護効能を示す。したがって、ジヒドロクエルセチンおよびクエルセチン3−メチルエーテルは、脳卒中およびアルツハイマー病のような各種の退行性神経疾患と心筋梗塞のような心臓虚血の予防および治療剤として優れた効果を示すことができる。 したがって、本発明のケンフェロール、ジヒドロクエルセチン、クエルセチン3−メチルエーテルまたはそれを含むウチワサボテンの酢酸エチル抽出物は、脳卒中、脳震盪、アルツハイマー病、パーキンソン病のような脳神経疾患による脳神経細胞損傷の治療および予防、虚血による神経細胞と組織損傷の予防および治療、特に脳神経細胞および脳組織損傷の予防および治療、または虚血性心筋梗塞症のような虚血によるその他の心血管系細胞損傷の予防および治療に有用であり、脳神経保護剤または心臓保護剤として適用できる。 本発明の医薬剤形は、通常の方法に従って製造することができる。剤形の製造において、活性成分を担体とともに混合または希釈するか、カプセル、におい袋(sachet)またはその他容器形態の担体に封入することが好ましい。したがって、本発明による剤形は、錠剤、丸剤、粉末、におい袋、エリキシル、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エーロゾル、軟質または硬質ゼラチンカプセル、注射用溶液または懸濁液、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤などの形態であり得る。 適切な担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラル油などを挙げることができる。剤形は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含むことができる。本発明の組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、遅速または遅延放出を提供するために当業界で公知の方法を用いて剤形化することができる。 さらに、本発明の医薬剤形は、経口、経皮、皮下、静脈または筋肉内投与を含む種々の経路を通じて投与され得る。本発明のウチワサボテン酢酸エチル抽出物またはそれから分離したケンフェロール、ジヒドロクエルセチンまたはクエルセチン3−メチルエーテルを臨床の目的で投与する際、一回または数回にわけて成人に投与する総一日容量は通常約10〜50,000mg、好ましくは50〜1,000mgの範囲であり、筋肉内または静脈内投与時、通常一日約10〜5,000mg、好ましくは150〜3,000mgの範囲であれば十分であるが、一部疾患によってさらに高いか、さらに低い投与量が求められることもある。また、特定患者に対する特異容量の水準は、使用される特定化合物、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率、薬剤混合および疾患の重症度によって変化し得る。 また、本発明の化合物を臨床的に投与して目的とする虚血性疾患の治療効果を得ようとする場合、ウチワサボテンから分離した活性化合物は公知の神経保護剤から選ばれた1種以上の成分と混合して同時に投与できる。このような方式で本発明の化合物と混合して投与できる薬剤は、グルタチオンの濃度を増加させるためのN−アセチルシステイン(N-acetylcysteine)、カルシウム拮抗剤であるニモジピン(nimodipine)、抗酸化剤であるビタミンCおよびビタミンE、血栓溶解剤である組織プラスミノゲン活性化剤(tissue plasminogen activator)、その他の脳神経および心臓血管保護用薬物などを挙げることができる。 しかし、虚血性疾患の治療を目的とする本発明に係る化合物含有製剤は上述のものに限定されるものではなく、虚血による神経細胞と組織損傷の治療、特に脳神経細胞および脳組織損傷の治療および予防、あるいは虚血によるその他の心血管系細胞損傷の予防および治療に有用な製剤であればいずれも含み得る。(実施例) 以下、本発明を下記実施例によってさらに詳細に説明する。ただし、これらは本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を制限しない。 参照例1:DPPHラジカル消去能の測定試験物質の抗酸化活性度はブロイスの方法(Blois, Nature 181:1199, 1958)を変形して電子供与能(Electron donating ability, EDA)で測定した。すなわち、試験物質を99.9%エタノールに溶解した後、一連の濃度変化を与えて適正濃度に希釈した。前記溶液10μLを100μM DPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)溶液(99.9%エタノールに溶解)190μLと混合し、5秒間攪拌して37℃で30分間反応させた。反応が終了すると、515nmで吸光度を測定して対照群に対する吸光度の減少比率として電子供与能を計算し、それから50%抑制効果を示す濃度(IC50)を求めた。 参照例2:スーパーオキシド陰イオンラジカル消去能の測定 キサンチン(Xanthine)とキサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase, XOD)の反応によって生成されるスーパーオキシド陰イオン(superoxide anion)の生成を抑制する効能を評価するために、トーダら(Toda, et al., Planta, Med. 57:8, 1991)の方法を下記のように行った。 具体的に、0.1mMキサンチン、0.1mM EDTA、50μg/mLウシ血清アルブミン(Bovine serum albumin, BSA)、25mMニトロブルー・テトラゾリウム(Nitroblue tetrazolium, NBT)と40mM Na2CO3溶液、各濃度別に希釈した試験化合物溶液、そして7×10-3単位XODを混合して最終体積が200μLの溶液を製造した後25℃で20分間反応させた。前記反応溶液に6mM CuCl2 6.6μLを添加して反応を中止した後、560nmで吸光度を測定し、生成されたホルマザン(formazan)の量を決定した。それから対照群に対する吸光度の減少比率としてスーパーオキシド陰イオン生成抑制効果を計算して50%抑制効果を示す濃度(IC50)を求めた。 参照例3:ラットの大脳皮質神経細胞の一次培養 スプラーグ・ドーリーラット胎子の大脳から分離した神経細胞の培養はチョら(Life Sci. 68:1567, 2001)の方法に従って行った。すなわち、16〜18日齢のスプラーグ・ドーリーラット胎子の大脳皮質部分を分離した後、解剖顕微鏡を用いて脳髄膜を除去した。これから得られた組織を25mMブドウ糖、5%ウシ胎児血清、5%馬血清、2mM L−グルタミンを含有する培地(MEM, Gibco BRL)でパスツールピペットを用いて単一細胞に分離した。分離した細胞をポリリジン(poly-L-lysine)とラミニンでコーティングされた24ウェル(well)細胞培養容器にウェル当たり4〜5×105細胞の密度で移植した後、37℃培養器で95%O2/5%CO2を保ちながら培養した。一週間当たり2回培養液の一部を交換し、移植後7〜9日目に10μMサイトシンアラビノサイド(cytosine arabinoside)を24〜72時間処理して神経細胞以外の細胞成長を抑制した。培養細胞は移植後10〜14日後に実験に用いた。 参照例4:酸化的ストレスによる神経細胞の損傷誘発 培養した大脳皮質の神経細胞をHEPES−調節された塩溶液(HCSS)で3回洗浄した後、キサンチン(0.5mM)およびキサンチンオキシダーゼ(10mU/mL)を含有する無血清培地(serum-free MEM;25mMブドウ糖、2mMグルタミンを添加したMEM)で10分間処理してスーパーオキシド陰イオンラジカルによる細胞損傷を誘発した。これをさらにHCSSで洗浄し、無血清MEMに培養液を交換して37℃培養器で95%O2/5%CO2を保ちながら20〜24時間培養した。過酸化水素による神経細胞の損傷は培養細胞を洗浄した後100μM過酸化水素を含有するHCSSで5分間処理した後、さらに洗浄し、無血清MEMに培養液を交換して20〜24時間培養して誘発した。このように損傷が誘発された神経細胞を様々な濃度の試験物質で1時間前処理した後、損傷誘発物質と試験物質を同時に加えて前記のように20〜24時間培養した後損傷の程度を下記参照例5に示すように測定した。 参照例5:神経細胞の損傷測定 参照例4の方法に従って処理して培養した神経細胞を位相差顕微鏡を用いて形態学的に損傷の程度を評価するか、培養液の上層に遊離されるラクテートデヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase, LDH)の量をピルベート(Sigma)を基質として測定した。酸化的神経損傷に対する試験物質の抑制効果は損傷を誘発しなかった対照群におけるLDHに対する百分率で表示した。実験結果は1回2群ずつ2〜4回繰り返して得たデータを平均して示し、50%抑制効果を示す濃度(IC50)はプリズム(Prism; Graphpad software Inc., USA)を用いた非線形回帰分析で計算した。 参照例6:神経毒性実験のためのラットの脳海馬細胞と皮質細胞の培養 ラットの脳組織のうち、海馬(hippocampus)と皮質部位は妊娠してから17日経過したSDラットの胎児の脳から顕微鏡の下で摘出した。摘出した海馬と皮質は各々の細胞から分離されるようにピペットで細かく粉砕した後、粉砕物を遠心分離して得られた細胞のみをポリリジン(poly-L-lysine)がコーティングされた96ウエルプレートに分株した。この際、各ウエル当たりの海馬細胞は2.5×104細胞、皮質細胞は5×104細胞になるように各々添加した。各ウエルにB−27補充栄養液(Life technologies)2%、グルタメート25M、グルタミン0.5mMを含むニューロバサル(Neurobasal ;Life technologies)培養液200μLを添加した後、37℃で培養した。72時間後グルタメートを欠く混合培養液で培養液を交換した後引き続き培養した。神経毒性実験は7〜10日後に行った。 参照例7:NMDAに惹起された神経毒性に対する脳細胞保護活性 参照例6で製造された培養細胞にNMDA(Sigma)100μMで2時間処理して脳細胞損傷を誘発した。試験物質は与えられた濃度でNMDAとともに処理した後除去せずに実験期間(2時間)の間残存させた。NMDA処理後24時間後にLDH測定用キット(Boehringer Mannheim)を用いて培養液で遊離されたLDHの量を測定した。 参照例8:成長因子除去に惹起された神経毒性に対する脳細胞保護活性 参照例6で培養した脳細胞をDMEM培養液にB27補充栄養液を2%含む培養液を用いて培養し、B−27を除去したDMEMに交換して栄養不足による細胞死を誘導した。24時間後細胞壊死によって遊離されたLDHの量をLDH測定用キット(Boehringer Mannheim)で測定して細胞死の程度を定量した。 参照例9:中大脳動脈閉塞(middle cerebral artery occlusion, MCAO)および再灌流による一時的局所虚血性脳損傷ラットモデルの製作 体重250〜300gの雄性スプラーグ・ドーリー系ラット(Sprague-Dawley,大韓実験動物センター)を実験動物として用いた。手術は実験当日に70%亜酸化窒素(N2O)と30%酸素(O2)をキャリアガスとして用いる1.5%イソフルラン(isoflurane,中外製薬のフォーラン液(登録商標))の吸入麻酔下で保温パッドと保温ランプを用いて実験動物の体温を約37±0.5℃に保持しながらナガサワとコグレ(Nagasawa and Kogure, Stroke 20:1037, 1989)の方法に準じて行った。 具体的に、イソフルランの吸入麻酔の下で、首の正中線に沿って頸部を切開し、迷走神経に損傷を与えないように注意しながら、右側総頚動脈、内頚動脈、そして外頚動脈を注意深く分離した。総頚動脈と外頚動脈は結紮し、内外頚動脈の分岐点から内頚動脈内に17mmのプローブを挿入して挿入部位のちょうど上側を結紮することによって、中大脳動脈の基底部を閉塞した。プローブはまず4−0ナイロン縫合糸(Nitcho Kogyo Co., Ltd., Japan)の一端を熱によって球状に作り、その部分を除いて17mmに切断した。その後、他の一端をシリコーン(Bayer Dental, Xantopren)と硬化剤(Optosil-Xantopren Activator, Bayer Dental)を混合した溶液に約7〜9mm程度浸漬して被覆し、この際、厚さは0.3〜0.4mmになるようにした。脳虚血を誘発してから約25〜30分頃後に手術したラットの神経学的欠損を測定して症状を示すラットのみを虚血群に含ませた。神経学的欠損は主に空中でラットの尻尾を完全に持ち上げたとき左側前足の屈曲が起こるかと、尻尾を上に持ち上げたとき、または自発的に、右側に回転する症状が起こるかを観察して評価した。120分間一時的に中大脳動脈を閉塞した後さらにイソフルランの吸入麻酔の下で縫合部位を切開して球状のプローブの端部をさらに10mm程度抜き出してこれを再灌流させ、一時的局所脳虚血ラットモデルを製作した。その後、また手術部位を縫合し、約1日後神経学的欠損を測定し、犠牲させて摘出した脳組織に対して組織学的染色法を行った。 賦形剤(vehicle)である0.9%生理食塩水(1mL/kg)、または10mg/kg容量のクエルセチン、クエルセチン3−メチルエーテル、またはジヒドロクエルセチンを虚血誘発後30分に腹腔内に投与した。 実施例1:ウチワサボテンの果実抽出物の製造および神経細胞保護効果の確認 新鮮なウチワサボテンの果実(韓国の済州道産、京東市場から購入)を細かく切り、種を除去した後得られた果実7.8kgをメタノール40Lに浸漬して室温で4〜5日間抽出した後濾過した。3回にわたって抽出したメタノール溶液を40℃でロータリーエバポレータで濃縮してメタノール抽出物を得た。ウチワサボテン果実のメタノール抽出物498gを水1Lに懸濁した後ジクロロメタン(CH2Cl2,600mL×3)で抽出し、水層を酢酸エチル(EtOAc,600mL×3)で抽出した。。前記水層をさらにブタノール(BuOH,600mL×3)で十分抽出して各々の溶媒分画に分けた。分けられた分画に対して参照例1〜5の方法を用いてDPPHラジカル消去能、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ−誘発神経毒性抑制効果、過酸化水素誘発神経毒性抑制効果を各々測定した。 その結果、図1および2と下記表1から分かるように、ウチワサボテン果実のメタノール抽出物(GM)、ジクロロメタン分画(GD)、ブタノール分画(GB)、水分画(GH)はラジカル消去能およびキサンチン/キサンチンオキシダーゼまたは過酸化水素誘発神経毒性抑制効能をほとんど示さなかった。反面、酢酸エチル分画(GE)はラジカル消去能が60.0μg/mLのIC50値を示し、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ−誘発神経毒性抑制効能が67.7μg/mL、過酸化水素−誘発神経毒性抑制効能が115.9μg/mLであるIC50値を示した。これから、ウチワサボテン果実の酢酸エチル抽出物が顕著な神経細胞保護効果を示し、脳卒中またはアルツハイマー疾患の治療に有用に使用できることを確認した。 実施例2:ウチワサボテンの加工果実抽出物の製造および神経細胞保護効果の確認 ウチワサボテンを蒸熟して乾燥して粉砕加工した果実(韓国の済州道産、京東市場から購入)15kgをメタノール20Lに浸漬し、室温で4〜5日間抽出した後濾過した。メタノール溶液は40℃でロータリーエバポレータで濃縮してメタノール抽出物416.0gを得た。このうち、メタノール抽出物412gを水1.5Lに懸濁した後ジクロロメタン(800mL×3)で抽出し、水層を酢酸エチル(800mL×3)で抽出した。前記水層をさらにブタノール(800mL×3)で十分抽出して各々の溶媒分画に分けた。分けられた分画に対して参照例1〜5の方法を用いてDPPHラジカル消去能、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ−誘発神経毒性抑制効果、過酸化水素誘発神経毒性抑制効果を各々測定した。 その結果、下記表1から分かるように、ウチワサボテンの加工した果実の場合は水分画(SH)を除いて全体的に活性を示した。特に、酢酸エチル分画(SE)はラジカル消去能が58.0μg/mL、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ−誘発神経毒性抑制効能が22.2μg/mL、過酸化水素−誘発神経毒性抑制効能が21.2μg/mLのIC50値を各々示し、顕著な神経細胞保護効果を示すので、脳卒中またはアルツハイマー疾患の治療に有用であることが明らかになった。 実施例3:ウチワサボテン茎抽出物の製造および神経細胞保護効果の確認 ウチワサボテンの新鮮な茎(韓国の済州道産、京東市場から購入)32.6kgをメタノール20Lに浸漬し、室温で4〜5日間抽出した後濾過した。3回にわたって抽出したメタノール溶液を40℃でロータリーエバポレータで濃縮して各々のメタノール抽出物を得た。ウチワサボテン茎のメタノール抽出物819.9gを水1Lに懸濁した後、ジクロロメタン(600mL×3)で抽出し、水層を酢酸エチル(600mL×3)で抽出した。前記水層をさらにブタノール(600mL×3)で十分抽出して各々の溶媒分画に分けた。分けられた分画に対して参照例1〜3の方法を用いてDPPHラジカル消去能、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ−誘発神経毒性抑制効果、過酸化水素誘発神経毒性抑制効果を各々測定した。 その結果、図3および4と下記表1から分かるように、ウチワサボテン茎のメタノール抽出物(FH)、ジクロロメタン分画(FD)、ブタノール分画(FB)、水分画(FH)はラジカル消去能、キサンチン/キサンチンオキシダーゼまたは過酸化水素誘発神経毒性抑制効能をほとんど示さなかった。反面、酢酸エチル分画(FE)はラジカル消去能が60μg/mL、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ−誘発神経毒性抑制効能が15.2μg/mL、過酸化水素誘発神経毒性抑制効能が17.5μg/mLのIC50値を示し、顕著な神経細胞保護効果を示した。また、ウチワサボテン茎の酢酸エチル分画(FE)のラジカル消去能、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ−誘発神経毒性抑制効能、および酸化水素誘発神経毒性抑制効能はウチワサボテンの加工果実の酢酸エチル分画(SE)と類似し、ウチワサボテン果実の酢酸エチル分画(GE)よりは格段と優れた。このような結果から、ウチワサボテン茎または加工した果実の酢酸エチル分画は優れた抗酸化効果および酸化的損傷(oxidative injury)に対する神経細胞保護効能に優れるので、脳卒中、脳震盪、アルツハイマーまたはパーキンソン病のような脳神経系疾患の治療に有用であることが明らかになった。 前記実施例1〜3で得られた各抽出物分画のラジカル消去能、キサンチン/キサンチンオキシダーゼまたは過酸化水素誘発神経毒性抑制効果を下記表1にまとめる。 実施例4:ウチワサボテンの酢酸エチル分画から脳神経細胞保護成分の分離 ウチワサボテンの果実、加工した果実、茎のいずれも酢酸エチル分画の神経細胞保護活性が最も強く示されたので、これらの分画から脳神経細胞保護効能を示す成分を分離してその構造を同定しようとした。<4−1>ウチワサボテン茎の酢酸エチル分画から脳神経細胞保護成分の分離 ウチワサボテン茎の酢酸エチル分画4.98gを、展開溶媒としてメタノールを用い、固定相としてセファデックス(Cat. No. LH-20-100, Sigma)を用いるカラムクロマトグラフィー(4×5cm)を行って分離した。得られた分画を順相シリカゲルTLC(展開溶媒としてジクロロメタン:メタノール=5:1を使用)と逆相シリカゲルTLC(展開溶媒として水:メタノール=40:60を使用)を用いて観察した後、類似する極性を有する化合物同士集めて17個の亜分画(亜分画1〜17)に分けた。このうち、極性の低い分画である亜分画12を逆相カラムクロマトグラフィー(LiChroprep RP-18, 40〜63μm, 2.5×35cm,Cat. No. 13900, Merck)を行って精製した。溶出液は40%メタノールから始まり、60%メタノールまで次第に極性を高めながら行って極性によって12個の亜分画(亜分画12A〜12L)に分けた。このうち、純粋な化合物が重点的に存在する化合物分画である2番目の分画12Bを、メタノールを展開溶媒として用いたセファデックスカラムクロマトグラフィー(2.5×35cm)を行って3−オキソ−α−イオノールβ−D−グルコシド(90mg)を得た。中間程度の極性を示す5番目の亜分画(12E)は純粋な化合物としてジヒドロケンフェロール(30.7mg)が得られた。亜分画12Cからメタノールを展開溶媒として用いたセファデックスカラムクロマトグラフィー(2.5×35cm)を行ってジヒドロクエルセチン(77.5mg)を得た。また、亜分画12Iからは前記と同じ条件を用いたセファデックスカラムクロマトグラフィーと50%メタノールを用いた逆相カラムクロマトグラフィー(lichroprep RP-18, 40〜63μm, 2×35cm, Cat. No. 13900, Merck)を順次行ってクエルセチン3−メチルエーテル(59.3mg)を得た。最も遅く溶出された分画である亜分画12Kからはメタノールを展開溶媒としてセファデックスカラムクロマトグラフィーを行い、これをさらに逆相シリカゲルTLC(10×10cm×0.25mm, Cat. No. 15423, Merck, 50% MeOH)を用いてUVランプで単一化合物としてみられる化合物を分取してケンフェロール3−メチルエーテル(5.2mg)を得た。 また、前記で酢酸エチル分画をセファデックスカラムおよびTLCで分離して得られた分画のうち、極性の低い分画15をセファデックスゲルカラムクロマトグラフィー(2.0×30cm,メタノール)と逆相シリカゲルTLC(10×10cm×0.25mm,Cat. No. 15423, Merck,60%MeOH)で分離してケンフェロール(10mg)とクエルセチン(10mg)を得た。<4−2>ウチワサボテンの果実および加工した果実の酢酸エチル分画から脳神経細胞保護成分の分離 ウチワサボテン果実の酢酸エチル分画1.82gを、セファデックスを用いたカラムクロマトグラフィー(4.0×26.5cm,メタノール)を行って分離した。得られた分画を順相シリカゲルTLCと逆相シリカゲルTLCを並行して展開溶媒の極性を変えながら展開し、類似する極性を有する化合物同士集めて13個の亜分画(亜分画1〜13)に分けた。亜分画11からは2.4mgのケンフェロールを、亜分画12からは3.6mgのクエルセチンが得られた。亜分画8はシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(2×30cm)を行って分離した。この際、ジクロロメタンとメタノール(20/1)の混合溶媒を展開溶媒として用いて次第に極性を高めながらカラムを溶出させてジヒドロケンフェロール(6.1mg)を得た。亜分画9はシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(1×18.5cm)を行って分離した。この際、ジクロロメタンとメタノール(20/1)の混合溶媒を展開溶媒として用いて次第に極性を高めながらカラムを溶出させてジヒドロクエルセチン(2.2mg)、ケンフェロール3−メチルエーテル(0.6mg)、クエルセチン3−メチルエーテル(3.0mg)を各々純粋に分離した。ウチワサボテンの加工した果実の酢酸エチル分画から成分を分離した結果、ウチワサボテンの果実と同様に、3−オキソ−α−イオノールβ−D−グルコシドは分離されず、他の成分は含量の差はあったが、すべて分離できた。 実施例5:脳神経細胞保護成分の構造決定 前記実施例4で得られた各成分に対する1H−NMR(300MHz)と13C−NMR(75MHz)スペクトルを測定し、各ピークの化学シフト値(chemical shift)を残留溶媒であるメタノールの化学シフト値(3.3ppm,49.8ppm)に対する相対値で示した。1H−NMR(300MHz)、13C−NMR(75MHz)および13C−1H相関関係スペクトルデータを各々下記表2および3に示す。 分析結果、本発明においてウチワサボテンの酢酸エチル抽出物から分離したケンフェロールの全体的な構造は公知のケンフェロールの構造(Okuyamaら, Chem. Pharm. Bull. 26:3071, 1978)と、クエルセチンは公知のクエルセチンの構造(Grandeら, Planta Medica, 51:414, 1985)と、ジヒドロケンフェロールは公知のジヒドロケンフェロールの構造(Shenら, Phytochemistry 24:155, 1985)と、ジヒドロクエルセチンは公知のジヒドロクエルセチンの構造(Nonakaら, Chem. Pharm. Bull. 35:1105, 1987)と、ケンフェロール3−メチルエーテルは公知のケンフェロール3−メチルエーテルの構造(Grandeら, Planta Medica. 51:414, 1985)と、クエルセチン3−メチルエーテルは公知のクエルセチン3−メチルエーテルの構造(Barberaら, Phytochemistry 25:2357, 1986)と、そして3−オキソ−α−イオノールβ−D−グルコシドは公知の3−オキソ−α−イオノールβ−D−グルコシドの構造(Pabstら, Phytochemistry 31:1649, 1992)とよく一致することが確認できた。 実施例6:ウチワサボテンの果実、加工した果実および茎から分離した成分の抗酸化作用および脳神経細胞保護効果の確認 前記で分離・同定された活性成分に対して参照例1〜8の方法を用いてDPPHラジカル消去能、スーパーオキシド陰イオンラジカル消去能、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ−誘発神経毒性抑制効果、過酸化水素誘発神経毒性抑制効果、NMDA活性化による神経毒性抑制効果、成長因子除去による細胞死滅に対する神経毒性抑制効果を各々測定した。 その結果、分離された化合物のうち、クエルセチン、ジヒドロクエルセチンおよびクエルセチン3−メチルエーテルはDPPHラジカル消去能に優れ、ジヒドロクエルセチンとクエルセチン3−メチルエーテルはキサンチン/キサンチンオキシダーゼによって生成されるスーパーオキシド陰イオンラジカル消去能に優れた(表4)。下記表5と図5および6に示されているように、ケンフェロール、クエルセチン、ジヒドロクエルセチンおよびクエルセチン3−メチルエーテルはキサンチン/キサンチンオキシダーゼによって誘発された神経細胞の損傷だけでなく、過酸化水素によって誘発された神経細胞の損傷を最も強力に抑制することが示された。また、ジヒドロクエルセチンとクエルセチン3−メチルエーテルはNMDA活性化による神経毒性抑制効果に優れ、特にクエルセチン3−メチルエーテルは成長因子の除去によってもたらされる細胞死滅による神経毒性抑制効果もまた優れた。 実施例7:クエルセチン3−メチルエーテルの神経細胞保護効果の測定 120分間の一時的局所脳虚血ラットモデルにおいて、虚血誘発後再灌流によって誘発される脳損傷を評価するためにTTC(2,3,5-triphenyltetrazolium chloride)染色(Bederson et al., Stroke 17:1304, 1986)を行った。中大脳動脈閉塞後約1日が経過した後断頭台を用いてラットを犠牲させ、迅速に脳を摘出した。脳冠側切片は脳鋳型(ASI Instruments, Warren, MI, USA)を用いて前頭極から1mmになる地点から2mmの厚さで連続的に切断して準備した。これらの切片の各々に0.9%生理食塩水で製造された2%TTC溶液を加え、37℃で60分間培養して染色した。TTCで染色された脳切片を10%リン酸緩衝ホルマリン(phosphate-buffered formalin)溶液で固定した後、各切片の裏面イメージをCCDカメラ付きのコンピュータを用いて獲得した。これから濃い赤色で染色されなかった、梗塞が起こった大脳皮質および線条体地域の面積(mm3)は映像分析用ソフトウェア(Optimas, Edmonds, WA, USA)を用いて測定し、梗塞容積(mm3)は切片の梗塞面積の総合計に切片の厚さをかけることによって計算した。この際、総梗塞容積は大脳皮質および線条体地域の各々における梗塞容積の合計として示した。一方、腫脹の効果を補完するために矯正梗塞容積を計算したが、各切片において矯正総梗塞面積は虚血の対側(左側)大脳半球の総面積から虚血の同側(右側)大脳半球の正常組織の面積を引くことによって計算し、矯正総梗塞容積は矯正総梗塞面積から前記のような方式で計算した。 また、虚血が誘発された大脳半球の腫脹率を下記式1によって算出した。 その結果、クエルセチン3−メチルエーテルが虚血誘発してから30分後に10mg/kgの容量で腹腔内に投与された群においては大脳皮質の梗塞容積および総梗塞容積、矯正総梗塞容積および腫脹率のいずれにおいて生理食塩水を投与した対照群に比べて各々55.3、49.6、45.6および54.7%の有意義な減少を示すことによって、明らかな神経細胞保護効果を示した。このようなすべての結果を下記表6にまとめる。 実施例8:クエルセチン3−メチルエーテルの神経行動学的回復効果の測定 前記実施例7と同様な方法で処理したラットの神経行動学的回復効果をレルトン(Relton)らの神経行動学的点数(neurological score)測定法(Stroke 28:1430, 1997)に従って下記のように測定した。 具体的に、前足屈曲(forelimb flexion、ラットの尻尾を取って空中に完全に持ち上げたときの左側前足の屈曲)、前足屈曲期間(duration of forelimb flexion、10秒までの測定期間の間の前足屈曲期間)および動きの対称(ラットの尻尾を取って後足を空中に置いたまま前足のみで歩かせたときの動きの対称)を検査項目として各反応によって下記表7に示すような点数を与えた。 前記表7によって与えられた各検査項目の点数をすべて合計して各投与群の最終的な神経行動学的点数を下記表8(実験値は平均値±標準誤差で示す)に示し、これを図12にグラフとして示す。ここで、10点は正常の状態、すなわち、神経学的欠損が全くないことを意味し、点数が小さいほど神経学的欠損が大きく示されることを意味する。 前記表8および図12に示されているように、クエルセチン3−メチルエーテルを投与した群は、対照群に比べて神経行動学的点数が有意義に増加することによって神経行動学的回復効果を示すことが分かる。ウチワサボテンの果実分画のキサンチン/キサンチンオキシダーゼ−誘発神経毒性抑制効果を示すグラフ図。ウチワサボテンの果実分画の過酸化水素−誘発神経毒性抑制効果を示すグラフ図。ウチワサボテンの茎分画のキサンチン/キサンチンオキシダーゼ−誘発神経毒性抑制効果を示すグラフ図。ウチワサボテンの茎分画の過酸化水素−誘発神経毒性抑制効果を示すグラフ図。ウチワサボテンの酢酸エチル分画から分離した成分のキサンチン/キサンチンオキシダーゼ−誘発神経毒性抑制効果を示すグラフ図。ウチワサボテンの酢酸エチル分画から分離した成分の過酸化水素誘発神経毒性抑制効果を示すグラフ図。ウチワサボテンの酢酸エチル分画から分離した成分のDPPHラジカル消去能を示すグラフ図。ウチワサボテンの酢酸エチル分画から分離した成分のキサンチン/キサンチンオキシダーゼによって生成されるスーパーオキシドラジカル消去能を示すグラフ図。クエルセチン、クエルセチン3−メチルエーテルおよびジヒドロクエルセチンの大脳皮質、線条体および総梗塞容積に対する効果を示すグラフ図。クエルセチン、クエルセチン3−メチルエーテルおよびジヒドロクエルセチンの矯正総梗塞容積に対する効果を示すグラフ図。クエルセチン、クエルセチン3−メチルエーテルおよびジヒドロクエルセチンの腫脹率に対する効果を示すグラフ図。クエルセチン、クエルセチン3−メチルエーテルおよびジヒドロクエルセチンの神経行動学的回復に対する効果を示すグラフ図。 ウチワサボテンのアルコール抽出物を酢酸エチルで抽出して得た酢酸エチル抽出物から分離したケンフェロール、ジヒドロクエルセチンおよびクエルセチン3−メチルエーテルを含有することを特徴とする脳卒中、脳震盪、アルツハイマー病、パーキンソン病、心筋梗塞若しくは脳梗塞の予防又は治療用医薬組成物。 ウチワサボテンの酢酸エチル抽出物がウチワサボテンの茎、果実または加工した果実の抽出物であることを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。 ウチワサボテンの酢酸エチル抽出物が1)ウチワサボテンの茎、果実または加工した果実1kg当たりアルコール溶媒0.1〜10Lを添加し、室温で4〜5日間放置する段階;2)段階1)から得られた抽出物を濾過および減圧留去してアルコール抽出物を得る段階;および3)アルコール抽出物1kg当たり0.1〜10Lの水を加えた後、酢酸エチル(EtOAc)0.5〜2Lで抽出して得られることを特徴とする請求項2記載の医薬組成物。 段階1)のアルコール溶媒が、低級アルコール、60%以上のアルコール水溶液およびアセトンからなる群から選ばれることを特徴とする請求項3記載の医薬組成物。