| タイトル: | 特許公報(B2)_硫化剤を用いた重金属含有排水の処理方法および処理装置 |
| 出願番号: | 2003524920 |
| 年次: | 2010 |
| IPC分類: | C02F 1/62,B01D 19/00,C02F 1/20,G01N 27/416,G01N 27/42 |
松浪 豊和 大西 彬聰 JP 4565838 特許公報(B2) 20100813 2003524920 20020829 硫化剤を用いた重金属含有排水の処理方法および処理装置 株式会社アクアテック 501344821 原田 洋平 100100000 森本 義弘 100068087 松浪 豊和 大西 彬聰 JP 2001266478 20010903 20101020 C02F 1/62 20060101AFI20100930BHJP B01D 19/00 20060101ALI20100930BHJP C02F 1/20 20060101ALI20100930BHJP G01N 27/416 20060101ALI20100930BHJP G01N 27/42 20060101ALI20100930BHJP JPC02F1/62 ZB01D19/00 FC02F1/20 AG01N27/46 353ZG01N27/42 G C02F 1/00-1/78 C22B 3/00-3/46 特開昭48−096446(JP,A) 特開昭49−061956(JP,A) 特開昭51−141775(JP,A) 米国特許第04503017(US,A) 米国特許第04432880(US,A) 特開平6−79289(JP,A) 7 JP2002008769 20020829 WO2003020647 20030313 21 20050803 小久保 勝伊 【0001】技術分野 本発明は、硫化剤を用いて重金属含有排水を処理するための方法および装置に関する。背景技術 めっき、金属表面処理、電池製造、プリント基板製造、半導体製造、焼却灰処理、金属汚染土壌改良などの工程から出る重金属イオン含有排水は、無処理で環境に排出すると、水質環境や土壌の汚染などを引き起し、生態や人間の健康にも悪影響を及ぼす。そのため、たとえば日本国においては、公共水域や下水道への排出の際の基準が定められている。【0002】 重金属の中でも、価値の高い金Au、白金Pt、パラジウムPd、銀Agなどの貴金属は、リサイクルの採算が採れるため、様々な方法でできる限り回収されている。【0003】 一方、鉄やアルミニウムなど低価格の金属は、スクラップのように純金属に近い固形のものはリサイクルの対象にはなるが、イオンの形で排水に含まれるような場合は、リサイクルするには採算が合わず、何らかの方法で固形物(スラッジ)に変えて、埋立地などに投棄されている。【0004】 鉄やアルミニウムよりは多少とも高価ではあるが、貴金属に較べてはさほど価値が高くない重金属類については、固形金属スクラップはリサイクルされるが、イオンの形で排水に含まれるような場合は、現状ではやはりほとんどの場合何らかの化学処理を加えて排水から分離され、スラッジとして投棄されている。その重金属とは、銅Cu、亜鉛Zn、錫Sn、ニッケルNi、鉛Pb、カドミウムCdなどである。【0005】 排水中のこれらの重金属がリサイクルの対象とならず、スラッジとして投棄されている理由は、従来行われている排水処理方法で得られるスラッジが、含水率が高いうえ、目的の重金属以外の物質(雑塩、異種金属化合物等)が多く含まれていて、目的の金属の純度が低いからである。このようなスラッジから特定の重金属をリサイクルするためには、製錬工程の前に何らかの前処理工程などが必要となり、このために採算が合わないことになる。【0006】 重金属を含有する配水を処理するための方法として、水酸化物法と硫化物法とが知られている。以下、両者の比較を説明する。(水酸化物法) 重金属を含有した排水を処理する水酸化物法(アルカリ法)においては、重金属を含む(一般に酸性の)排水に、苛性ソーダや消石灰などのアルカリ剤を加えて中和し、重金属イオンと水酸化イオンが反応して生成する重金属の水酸化物を主成分とする固形物をろ過、脱水して、排水中から除去する。【0007】 この反応は、特に毒性を呈する物質が排水に含まれていなければ、特別難しい反応ではなく、操作も簡単で、安全性も高いため、これまで、ほとんどの重金属含有排水は、この方法で処理されている。その反応式は、次の「反応式1」の通りである。【0008】 M+++2OH− → M(OH)2・(H2O)n↓・・・反応式1 *:・(H2O)nは重金属水酸化物一分子当りのn分子の結晶水を表し、↓は固形物の沈殿を表す。<水酸化物法の長所> この反応は単なる中和反応であり、例えばシアン化合物などの特別な毒性の物質が含まれていなければ、難しい反応ではなく、操作も簡単で、安全性も高い。【0009】 用いるアルカリ剤は高価な薬品ではなく、処理費用は特別高価ではない。 ただし、水酸化物法には以上のような長所があるものの、一方で以下のような欠点がある。<水酸化物法の欠点> 原理的な問題として、この反応で生成する水酸化物M(OH)2の溶解度は十分に低いものではなく、この処理法だけでは処理後の排水に重金属イオンがある程度残留する。このため、いくつかの国においては、排出基準に適合しない場合がある。この欠点を補う目的で、残留重金属濃度をさらに下げるための仕上げ処理として、通常、キレート剤の使用や硫化剤の混入など、別の追加的対策を必要とする場合が多い。【0010】 めっき工程では、めっき反応を効率よく進行させるため、金属錯体を形成する錯化剤を用いることが多い。しかし、錯化剤が混在する重金属排水の場合は、錯化剤が水酸化物の生成を妨害する働きを有するため、水酸化物法だけでは重金属を十分捕捉できない。この結果、処理後排水中に重金属イオンが多く残留し、上記の溶解度が低くないという欠点をさらに助長するので、キレート剤の使用や硫化剤の混入など、上記と同様の追加的対策をよりいっそう必要とすることになる。【0011】 水酸化物法で発生するスラッジは、上述の反応式1のように水酸化物が結晶水を持つこととも関連して、含水率が高く、また目的とする重金属以外の塩類などの物質がスラッジ中に多く含まれる。このため、スラッジの発生量が増えるだけでなく、目的の重金属の含有率が低いため、リサイクルの採算性が悪く、有価性の金属が含まれているにも関わらず、実際にはほとんどが埋立地などに投棄処分されている。【0012】 水酸化物法では、処理液中に混在する複数の重金属がすべて混合状態のまま水酸化物になるため、個別金属種を分離回収することができない。目的とする重金属に対して異種の金属が混入する場合は、スラッジ中の特定金属のリサイクルはそれだけ難しくなる。(硫化物法) 以上述べた水酸化物法に対して、反応槽内で重金属含有排水に硫化剤(硫化ソーダNa2S又は水硫化ソーダNaHSなど)を添加して、下記の反応式2によって生成する重金属硫化物を沈殿させ、固液分離する硫化物法がある。【0013】 硫化物法は、後述する欠点のため従来は主な処理法としては用いられていない。わずかに、水酸化物法の処理において残留重金属イオン濃度が十分低くならない場合の仕上げ処理として、補助的に用いられている。【0014】 M+++S−− → MS↓ ・・・・・・・・・・反応式2 この方法は、上述のように、また後記において詳細に説明するように、欠点を有するにもかかわらず、以下の各点で本来優れた方法であると言える。<硫化物法の長所> 重金属硫化物の溶解度は水酸化物に比して格段に小さく、処理後(固液分離後)の排水に残留する重金属の濃度は極めて低くなる。このため、残留重金属イオン濃度を下げるための追加的対策が不要であり、残留重金属イオンの濃度を十分低くするための処理(高度処理)の方法として原理的に有利である。【0015】 この反応に用いる硫化剤は、元々石油の脱硫工程で副次的に生成する硫化ソーダNa2Sまたは水硫化ソーダNaHSなどであり、アルカリ剤よりは高価ではあるものの、特別高価なものではない。【0016】 この処理法で得られる重金属硫化物を含むスラッジは、硫化物の本来の特性として、含水率が低く、また塩類などの不純物の混入も少なく、結果として水酸化物の場合より重金属含有率が高い(目的の重金属の含有率が高い)。【0017】 また重金属硫化物は、重金属製錬における原料(鉱石)の一種である硫化鉱と成分が同じであることから、上記の費用面の利点と併せて製錬所でのリサイクルが容易である。【0018】 重金属硫化物は、イオン化して水に溶解せずに固体として存在できるpH領域が、重金属の種類によって異なる。この特性をうまく利用すれば、処理水中に複数の金属種が混在していても、混在する金属の種類によっては、金属種別に分離回収することができる場合がある。【0019】 分離回収の実際の操作としては、反応中の酸性度(pH)を目的金属に適した範囲に調整して、硫化反応と沈殿ろ過の操作を繰り返すことによって、複数の異種金属イオンが混在する排水から、個別金属ごとに硫化物沈殿を分離回収できる。【0020】 このようにして個別金属ごとに分離回収できれば、混合金属スラッジの場合よりも、リサイクルにとっては有利になる。 以上のような硫化物法の原理的な長所にも関わらず、従来の硫化物法には以下の欠点があり、重金属排水処理の主要な方法としては採用されていない。この方法が実際に採用されていたのは、上記のように水酸化物法で重金属イオンを十分捕捉できない場合の仕上げ処理としてである。<硫化物法の欠点> 重金属イオンの量に対して適量の硫化剤を供給するための適切な制御法がない。もし硫化剤の供給量が重金属に対する適量より少なければ、重金属イオンが硫化物として十分捕捉されず、処理後の排水中に残留する重金属イオン濃度が高くなり、処理の目的は達成されない。また反対に硫化剤の供給が過剰になれば、硫化水素ガスの発生や、沈殿物(重金属硫化物)の再溶解およびコロイド化などの、致命的な問題が発生する。理論的には、予め重金属イオンの濃度を知って、それに対応する化学当量の硫化剤を添加すればよいが、その方法は量や濃度が変動する実際の排水に対する工業的処理法としては現実的ではない。そこで従来の実際的方法は、硫化剤をやや過剰になるように適当に添加し、過剰添加によって起こる問題を別の方法で解決するというものである。【0021】 酸性排水に硫化剤を過剰に添加することによって発生する硫化水素ガスは、悪臭があるだけでなく、人体に有毒であり、硫化水素ガスの過剰発生を避ける方法がなければ、硫化物法は、重金属含有排水の処理法としては有用かつ有力な方法にはなり得ない。【0022】 硫化水素ガスの発生は、下記の反応式3のように、硫化物イオンS−−と水素イオンH+との反応であり、酸性度が強い(水素イオンが多い)状態で発生し易く、水素イオンが少ないアルカリ性になるに従って発生しにくくなる。【0023】 2H++S−− → H2S↑ ・・・・・・・反応式3 *:↑は液中で発生したガスの気中への放散を表す。 硫化剤の供給が過剰になると、硫化水素ガスが発生するだけでなく、過剰の硫化物イオンと重金属硫化物が反応して多硫化物が生成する(反応式4)。多硫化物は溶解度積が大きいためにこの反応が起こると沈殿物が再溶解するという問題が発生し、排水から重金属を除去するという処理の目的が達成できなくなる。また沈殿物がコロイド化して、凝集性およびろ過性が悪くなり、固液分離が困難になる。【0024】 nMS+mS → MnSm−2(m−n)・・・・・・・ 反応式4 上記硫化水素ガスの発生の欠点と多硫化物の発生による沈殿物の再溶解あるいはコロイド化の欠点とを補う方法(硫化剤の過剰添加によって起こる有毒悪臭の硫化水素ガスの発生や、沈殿物の再溶解、コロイド化などの問題に対応する方法)として、AlイオンやFeイオンなどの多価金属化合物を多量に加えることが行われている。その結果として、元の重金属に比べて多量のスラッジが発生するとともに、スラッジ中の目的の重金属の含有率が低くなり、リサイクルができない原因となっている。発明の開示 本発明(改良硫化物法)は、公知のほとんどの場合に行われている重金属含有排水の処理法としての水酸化物法と、その補助的処理法として行われている従来の硫化物法との比較の中から、従来の硫化物法の欠点を根本的に改良して、硫化物法の本来の長所を生かそうとするものである。【0025】 詳細には、本発明は、上述の公知技術に関わる硫化物処理法の欠点を解消することができる硫化剤の添加制御技術を提供することによって、反応槽内に過剰の硫化剤が残留することを極力避け、かつ処理後の排水の金属イオン濃度を十分に低くすることを目的とする。【0026】 また、こうして適量反応で精製した金属硫化物沈殿に対して、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、キチン系等の適切な凝集剤を凝結剤として用いることにより、公知の技術では固液分離が困難であった金属硫化物沈殿の沈降性、ろ過性及び脱水性を改善し、含水率が低く、重金属含有率の高いスラッジを得、スラッジの発生量を抑制するだけでなく、重金属のリサイクルを容易にすることを目的とする。【0027】 さらに本発明は、公知の硫化物法において硫化水素ガスの発生を防止するためにAlイオン、Feイオン等の多価金属化合物を用いる場合に、処理対象の金属に比して多量のスラッジを発生させていることに対し、これらの多価金属化合物を添加しない方法を提供することで、スラッジの発生量を抑制し、スラッジ中の目的金属の純度を上げて、リサイクルが容易なスラッジを得ることを目的とする。【0028】 また、2種以上の重金属が混在する排水から、混在金属種と分離の必要度などの条件に応じて、可能な場合にはそれらを個別重金属の硫化物として分離回収することも目的とする。【0029】 さらに、反応中に発生し、ガスモニタリングのために採取する硫化水素ガスとその余剰分を大気中に直接放出せず、したがって、外部環境に硫化水素ガスがほぼ排出しないようにすることも、本発明の環境対策の目的とする。【0030】 この目的を達成するため本発明の硫化剤を用いた重金属含有排水の処理方法は、重金属含有排水に硫化剤を添加して硫化処理するに際し、前記排水から発生する硫化水素ガスの濃度を検出しながら、硫化水素ガスの検出濃度が、0ppmを越えかつ前記重金属の液中反応終了点に対応する硫化水素ガス濃度以下となるように、前記硫化水素ガスの検出濃度にもとづいて、前記重金属含有排水に添加する硫化剤の添加量を制御することを特徴とする。【0031】 また本発明の硫化剤を用いた重金属含有排水の処理方法は、前記排水から発生する硫化水素ガスを空気により希釈したうえで、その硫化水素ガス濃度を硫化水素ガスモニタによって検出する。【0032】 また本発明の硫化剤を用いた重金属含有排水の処理方法は、硫化処理により生成した重金属硫化物に凝結剤を適用する。 また本発明の硫化剤を用いた重金属含有排水の処理方法は、硫化処理後の排水に酸性条件でストリッピングを施すことで、未反応硫化剤を硫化水素ガス化させる。【0033】 また本発明の硫化剤を用いた重金属含有排水の処理方法は、発生した硫化水素ガスを捕集して回収する。 本発明の、複数の異種金属イオンが混在する排水から、個々の金属をそれぞれ分離回収する方法は、排水の酸性度を分離回収しようとする金属に対応した適当範囲に調整して、上記の処理方法のいずれかによってその金属の硫化反応を行い、生成した金属硫化物の沈殿ろ過を行うことを、各金属ごとに繰り返す。【0034】 本発明の硫化剤を用いた重金属含有排水の処理装置は、前記排水から発生する硫化水素ガスの濃度を検出する硫化水素ガスモニタと、前記重金属含有排水に硫化剤を添加する手段とを有し、前記硫化剤の添加手段は、前記硫化水素ガスモニタによる硫化水素ガスの検出濃度が、0ppmを越えかつ前記重金属の液中反応終了点に対応する硫化水素ガス濃度以下となるように、前記硫化水素ガスの検出濃度にもとづいて、前記重金属含有排水に添加する硫化剤の添加量を制御可能に構成されている。【0035】 本発明にもとづく、改良された硫化物法には、主に次の4つの技術的価値があるものと考えられる。 (1)硫化水素ガスの発生を抑制する正確な反応制御方法としての価値 重金属と硫化剤との反応を過不足無く進行させながら、反応中に発生する硫化水素ガスの量を最小限に抑えることができ、かつガスモニタリングの余剰ガスを回収・リサイクルすることができる。【0036】 (2)重金属排水の高度処理法としての価値 処理後の排水の残留重金属濃度を、公知の水酸化物法や硫化物法に比べてより低く抑えることができる。【0037】 (3)スラッジの発生量を抑える方法としての価値 従来法に比してスラッジの含水率が低く、不純物が少なく、結果としてスラッジ発生量すなわち処分量が減る。【0038】 (4)有価重金属の回収法としての価値 比較的純度の高い金属硫化物が得られ、有価重金属のリサイクルが容易になる。図面の簡単な説明 図1は硫化物の添加量と沈殿物の生成量および硫化水素ガスの発生量との関係を示すグラフ、 図2はPb++を含有する被処理液に硫化物を添加していったときの反応の様子を示すグラフ、 図3は各種金属硫化物が安定に存在することができるpH領域を示すグラフ、 図4は本発明にもとづく連続処理式の重金属含有排水の処理装置の構成例を示すブロック図、 図5は本発明にもとづきPbイオンを含む排水を処理したときのデータをグラフ化した図、 図6は本発明にもとづきCuイオンを含む排水を処理したときのデータをグラフ化した図、 図7は本発明にもとづきNiイオンを含む排水を処理したときのデータをグラフ化した図、 図8は本発明にもとづきZnとNiとの混合液から両者を分離処理したときのデータをグラフ化した図、 図9は本発明にもとづきPbイオンを含む排水を回分処理したときのデータをグラフ化した図、そして 図10は本発明にもとづきPbイオンを含む排水を連続処理したときのデータをグラフ化した図である。発明を実施するための形態(本発明の基本原理) 本発明の改良硫化物法における反応と硫化剤の供給制御とのおおよその原理は、以下のとおりである(図1参照)。【0039】 処理液中の重金属イオンM++は、上述しかつ下記に再掲する反応式2に示すように、硫化剤として供給される硫化物イオンS−−と反応して重金属硫化物MSの固形物を生成する。【0040】 M+++S−− → MS↓ ・・・・・・・・・・反応式2図1には、硫化物の添加量が増大するにつれて沈殿物の生成量が増加する様子が示されている。この反応が進行して処理液中の重金属イオンが消費されても(反応式2の重金属イオンと硫化物イオンの反応が終わっても)なお硫化剤を供給し続けると、硫化物イオンが過剰になり、酸性条件下では、上述しかつ下記に再掲する反応式3の硫化物イオンS−−と水素イオンH+との反応が始まる。【0041】 2H++S−− → H2S↑ ・・・・・・・反応式3しかし液中に重金属イオンが存在する間は反応式2の反応が優先し、式3の反応によるガス発生は起こらない。【0042】 式3の反応の結果、硫化水素ガスH2Sが、反応液中で発生し、次いで反応液上部の気中に出てくる。図1においては、硫化水素ガスが発生し始める時点をG点で示す。本発明によれば、こうして気中に初めて出てくる微量の硫化水素ガスを、硫化水素ガスモニターで検出する。そして、式2の反応ができるだけ進行して残留重金属イオン濃度が小さくなり、かつ式3の反応がなるべく起こらないように、硫化剤の添加を制御する。【0043】 硫化剤の供給が不足すれば、式2の反応が十分に進まず、図1におけるG点よりも遥かに左側の状態となって、処理の目的である実質的な重金属イオンの除去が達成できない。反対に硫化剤の供給が過剰になると、式3の反応が過剰に起こって、図1におけるG点よりも遥かに右側の状態となる。すると、有毒悪臭の硫化水素ガスが発生するだけでなく、上述しかつ下記に再掲する式4の過剰の硫化物イオンと重金属硫化物との反応により多硫化物(イオン)が生成し、このため沈殿物がコロイド化して凝集性が悪くなるとともに、多硫化物は溶解度積が大きいために沈殿物が再溶解するという問題が発生し、処理の目的が達成できなくなる。【0044】 nMS+mS → MnSm−2(m−n)・・・・・・・ 反応式4 公知の硫化物法では、硫化剤の供給に関する適切な制御法がないため、前述のように、硫化剤をある程度過剰に添加している。そして、それによって起こる上記の問題を回避するために、AlイオンやFeイオンなどの多価金属化合物を多量に加えている。その結果として、加えた多価金属化合物などを含んだ多量のスラッジが発生する。すると、スラッジ中における目的の重金属の含有率が低くなり、リサイクルが著しく困難になる。【0045】 本発明は、単純に表現すると、微量の硫化水素ガスの発生を、硫化剤のごくわずかな過剰状態と位置づけ、ガスが発生すればそこが重金属イオンと硫化物イオンの反応の終点とみなし、それ以上の硫化剤の供給を止めて、過剰反応を抑制するものである。それによって、重金属イオンを不足なく十分に除去するとともに、問題となるほどの硫化水素ガスの過剰発生を抑制し、また多硫化物の生成による沈殿物の再溶解やコロイド化による固液分離の障碍を防ぐことができる。(本発明の反応制御の詳細) 本発明の反応制御の仕組みをもう少し詳細に説明すると、以下のようである(図2参照)。【0046】 まず、図2について詳細に説明する。この図2は、本発明者らによる実験の結果であって、Pb++を含有する被処理液に硫化物を添加していったときの反応の様子を示すものである。ここで、横軸は図1と同様に硫化物添加量である。縦軸は、硫化物の添加とともに減少する被処理液中のPb++濃度と、硫化物の添加とともに増加する被処理液中のS−−濃度と、硫化物の添加にもとづき発生する硫化水素ガスH2S濃度とを表す。【0047】 図示のように、スタート時Aに200ppmであったPb++濃度は、硫化物の添加とともに減少している。反応当量点Bでは、実際にはまだ0.60ppmのPb++が残っており、このB点を越えると、被処理液中にS−−が発生する。さらに硫化物を添加していくと、C点で硫化水素ガスH2Sが発生し始める。このC点において、Pb++濃度は0.13ppm、S−−濃度は6.50ppmである。D点は液中反応終了点で、Pb++濃度は0.00ppmとなる。このとき、S−−濃度は6.51ppm、硫化水素ガスH2Sは240ppmである。【0048】 図2から判るように、硫化剤(硫化物イオンS−−)と重金属イオン(M++)の反応を、処理目標が十分達成される(残留重金属イオン濃度が十分低くなる)まで進行させるためには、実際には、槽内に残留する硫化剤濃度をわずかに過剰に保たなければならず、かつまたある限度を超えない範囲に制御しなければならない(ほぼ、図2におけるC点とD点との間の範囲が該当)。【0049】 本発明者らの知見によれば、図2に示すように、硫化剤濃度がわずかに過剰でなければ、重金属イオンが幾分か残留し、処理の目的が十分達成できないケースが起こる。【0050】 また反対に、硫化剤濃度が適正な限度を超えて過剰になれば、有毒でしかも悪臭を有する硫化水素ガスが多量に発生して、周辺環境への悪影響を引き起こすることになるとともに、多硫化物の生成が固液分離に不都合を生じることにもなる。【0051】 このような、重金属イオンと十分に反応する硫化物イオンの適正濃度範囲に対応して、被処理液中から反応槽上部に放散される硫化水素ガスの気中濃度は、重金属の種類や、残留重金属の処理目標濃度などの反応条件によって、実験的に定められるべきものである。ここでは、反応液中の硫化物イオンS−−の適正濃度に対応する反応槽上部気中の硫化水素ガスH2S濃度を、「制御された硫化水素ガス濃度」と称する。【0052】 このような制御を行うために、放散された硫化水素ガスの気中濃度をモニターする硫化水素ガスモニターを設け、そのモニター結果にもとづいて、硫化物の添加量を調節する。このための硫化水素ガスモニターは、鋭敏な感度を有し、たとえば50ppm以下の濃度のレンジで硫化水素ガスを検知できるように設計されているものを用いる(50ppm超のものでも検出できるが、測定レンジ外であるため、濃度を正確に把握しづらい)。実際には、モニターの性能維持のためにも、また万一モニタリングガスが漏れた場合のためにも、できればレンジの下限に近い領域(たとえば日本国における大気環境基準の限度の10ppm以下のあたり)でモニタリングすることが望ましい。【0053】 なお、図2に示すように、残留重金属イオン濃度が十分低くなるC点とD点との間では、硫化水素ガス濃度が変動するとともに、被処理液中の硫化物イオンS−−の濃度も変動する。しかし、硫化物イオンS−−の変動率がわずかであり、図2の場合ではC点で6.50ppm、D点で6.51ppmと、ほとんど差がない。したがって、この硫化物イオンS−−の濃度をモニタリングの対象としても、実効的なモニタリングは不可能である。【0054】 前述の制御硫化水素ガス濃度は、実験的に定められるものであり、対象重金属やその処理前のイオン濃度及び処理後の目標残留濃度などの条件によって異なる。本発明者らの知見によれば、Cu、Zn、Fe、Niなどについての実験結果から、240ppm以下のいずれかに設定することが妥当である(図2参照)。【0055】 ガスモニタリングは、反応槽の内部における被処理液よりも上側の気体をブロワーで減圧吸引して行う。その場合に、吸引ガス量に応じて、反応槽外から入る外部空気によって硫化水素ガスが希釈される。実際には、制御硫化水素ガス濃度と硫化水素ガスセンサーの感度とを勘案して、流量計を調節することにより、この希釈率を設定する。【0056】 本発明者らの実験による結果から、実際の希釈率は10〜50倍の範囲がよいことが判明している。詳細には、反応液中の硫化物イオンS−−の濃度と、反応槽上部気中の硫化水素ガスH2Sの濃度とには、一定の対応関係がある。ここでは、反応液中の硫化物イオンS−−の適正濃度に対応する反応槽上部気中の硫化水素ガスH2Sの濃度を、上述のように「制御された硫化水素ガス濃度」と称する。本発明者らの実験によると、この制御硫化水素ガス濃度は、240ppm以下の範囲が妥当である。そして、この硫化水素ガスが外部空気によって10〜50倍程度に希釈されるため、モニタリング気中での硫化水素ガスH2S濃度を10ppm未満で検知できるように調整することが必要である。【0057】 図2に示すように、重金属イオン濃度が十分に低下したC〜Dの範囲においては、液中に、未反応の硫化剤が硫化物イオンS−−の形で残存する。そこで、酸性条件のもとで液中に空気をふきこんでストリッピングを行い、未反応の硫化剤を硫化水素ガスH2Sの形でガス化させる。ストリッピングにより硫化水素ガスH2Sを発生させることで、液中の水素イオン濃度が減少し、pHが上昇する。この処理においては、被処理液の100倍程度の体積の空気による曝気を行うと、大部分の硫化イオンは液中から除去される。【0058】 ガス化した硫化水素は、前述の硫化剤の添加により被処理液から発生した硫化水素やモニタリングに供された硫化水素とともに、スクラバーに送られ、たとえば苛性ソーダ水溶液などのアルカリ液によって捕集され、硫化ソーダ溶液の形となって回収され、再利用に供される。(本発明の制御方法の適用範囲) 但し、硫化水素ガスが発生する式3の反応は、反応液中に硫化物イオンが過剰に存在しても、水素イオンが十分存在しないと起こりにくい(酸性下では起こるがアルカリ性下では起こりにくい)。実際のところ、pHが7を超えると発生しにくくなり、pHが8を超えるとほとんど発生しなくなる。アルカリ領域では、硫化水素ガスが発生しにくいため、本発明の制御方法を用いても硫化剤の過剰添加を制御できず、硫化水素ガスはほとんど発生しないものの、多硫化物の生成やコロイド化を防止することができない。【0059】 従ってこの原理による本発明の反応制御方法は、基本的に酸性から中性の領域までの範囲で有効であるといえる。特に、Cu、Cd、Pb、Sn、Znなどの重金属を含む排水の処理に有効である。【0060】 図3は、各種金属硫化物が安定に存在することができるpH領域を示すものである。この図3から、金属硫化物が重金属イオンと硫化物イオンに電離せず(電解質として水に溶解せず)に、固体で安定に存在できるpH(酸性度)の領域が、アルカリ側に寄っている重金属、例えばマンガンなどについては、本発明の方法は適用できず、ニッケルについても微妙な位置にある。【0061】 実際に、ニッケル含有排水については、排水中のニッケルイオン残留濃度を十分低く(例えば数ppm以下に)することは、本発明の方式では難しい。特に、アンモニアが混入しており、アルカリ側でこれがガス化する場合などにおいては、臭気の発生を抑えるために、pHを低目(7.5以下)に調整して反応を実施せざるを得ない。その場合は、処理後のニッケルイオン濃度は、十分に低くはならない。【0062】 しかし、低目のpH調整下での反応で残留重金属イオン濃度が十分低くならず、排水処理の方法としては十分目的が達成されなくても、無電解ニッケルめっき排水のように、数千ppmの濃厚な排水からは、実際上ニッケルイオンがほとんど99%に近いレベルで回収できることから、本発明の方法は、高度処理ではなく、重金属を回収する方法と位置づければ、優れた方法であると考えられる。(排水中に混在する重金属の分離回収) 重金属の種類によっては、その重金属を、複数の重金属イオンが混在する排水から、個別金属の硫化物として分離回収することができる(図3参照)。【0063】 この原理は、金属硫化物が重金属イオンと硫化物イオンに電離せず(電解質として水に溶解せず)に、固体で安定に存在できるpH(酸性度)の領域が、重金属の種類によって異なることにある。【0064】 この原理は公知の事実であるが、pHのある程度正確な制御と、本発明の硫化剤添加の正確な制御があって初めて、実際に2種以上の重金属の分離が可能になるものである。【0065】 図3の例では、最も酸性側で硫化物沈殿を形成するのが、銅Cuであり、順次カドミウムCd、鉛Pb、錫Sn、亜鉛Zn、コバルトCo、ニッケルNiなどの順になっている。この図で、左右に間隔が十分離れている重金属元素同士は分離し易く、間隔が近い元素同士は分離しにくい。【0066】 実際には、まず、より酸性側の重金属に焦点を合わせて、排水を適当なpHに調整し、硫化剤を添加して、上述の本発明の方法によって目的の重金属の硫化物沈殿を精度良く生成させる。そして、生成した沈殿物をろ過・分離し、次いで前の操作でのろ液中に残存する次の重金属について同様の操作を繰り返すことにより、2種以上の混合重金属をそれぞれの硫化物として分離できる。【0067】 この操作は、一つの反応槽で、逐次前段階のろ液を反応槽に戻して、繰り返して実施することもできるし、また同様の反応槽を直列につないで順次同様の操作を繰り返すことによっても実施できる。【0068】 本発明者らによる実際のめっき排水についての実験の事例から、以下のことが判明している。(1)銅イオンと他の重金属イオンとを含む排水からは、先ずpHを1.5から2.0に調整して、硫化物を生成させることによって、ほぼ他の金属が混在しない状態で銅硫化物を得ることができる。(2)亜鉛イオンとニッケルイオンとの混合排水の場合、pH=5.5で第1段階の操作(硫化物生成、ろ過・分離)を実施し、濾液についてpH=7.0で第2段階の操作を実施することにより、ニッケル硫化物が若干混入する亜鉛硫化物と、亜鉛硫化物がほとんど混入しないニッケル硫化物を得ることができる(詳細は後述)。(3)鉛イオンの除去においては、pH=4.0付近で反応させることが最適と判断される(詳細は後述)。(4)以上から、銅、鉛、ニッケルの3種金属イオンの混合液から、逐次pH=2、4、8に調整して同様の操作を順次繰り返すことにより、銅、鉛、ニッケルをそれぞれの硫化物として除去することができる。(連続式処理と回分式処理における制御方法の相違) 本発明による重金属含有排水の処理は、連続式処理と回分式処理のいずれでも実施可能である。【0069】 連続式処理においては、反応槽で重金属と硫化剤を反応させつつ、オーバーフローする処理液は自動的に凝結槽に送り、そこで凝結剤を添加し、次いで沈降槽に送る。このオーバーフロー液に未反応の重金属イオンが残留したままの状態で凝結槽に送ると、最終ろ液にも重金属イオンが残ることになり、処理の目的は十分達成されない。従って、反応槽内で重金属イオンと硫化物イオンの反応が常に十分に進行している状態を維持しなければならない。そのためには、反応槽内で硫化物イオンが常にわずかに過剰であることが必要であり、それに対応して微量の硫化水素ガスが常に発生するように硫化剤の添加を制御しなければならない。【0070】 実際には、硫化水素ガスが常に微量発生し、反応を十分進行させながら、かつ硫化剤が過剰にならないよう、次のような操作を行う。(a)最初の反応槽内の処理原液に対しては、硫化水素ガスが検出されるまで硫化剤を添加する。(b)硫化水素ガスが検出され始めると、処理原液を断続的に反応槽に追加供給しながら、硫化剤の供給を止めたり供給量を制限したりして、硫化水素ガスが常に発生しながら、かつ制御硫化水素ガス濃度の範囲内に収まるように制御し続ける。【0071】 図4は、本発明にもとづく連続処理式の重金属含有排水の処理装置の構成例を示すブロック図である。ここで、11は原水槽で、原水すなわち被処理液12が貯留されている。原水槽11には反応槽13が接続され、反応槽13には凝結槽14が接続され、凝結槽14には沈降槽15が接続されている。16は、沈降槽15で沈降した沈降物17を脱水およびろ過するための脱水およびろ過機である。沈降槽15には、中和槽等18が接続されている。反応槽13にはpHセンサ19が設けられており、その検出結果にもとづいてpH調整剤20を反応槽13の内部に供給できるように構成されている。【0072】 反応槽13と凝結槽14と沈降槽15とには、被処理液よりも上側に存在する気体をブロワ21によって減圧吸引させるためのモニタガス路22が接続され、このモニタガス路22は硫化水素ガスモニタ23に接続されている。ブロワ21と硫化水素ガスモニタ23からの排気路24は、排ガス処理装置25を介したうえで、大気に開放されている。【0073】 本発明にもとづき、反応槽13へは、硫化水素ガスモニタ23からの指示によって硫化剤26を供給できるように構成されている。凝結槽14には、凝結剤27を供給できるように構成されている。【0074】 このような構成において、反応槽13においては、pH調整剤20の供給により図3にもとづき被処理液のpHが調整され、硫化剤26の供給により、金属硫化物が沈殿される。このとき、本発明にもとづき、硫化水素ガスモニタ23によって硫化水素ガスの濃度を検出することで、硫化水素ガスの発生を極力抑えるようにする。沈殿した金属硫化物を含む被処理液は、凝結槽14で凝結剤27の供給を受けることで、含有する金属硫化物が凝結し、その凝結物は、被処理液12とともに沈降槽15に供給されて沈降する。沈降物17は、槽外に取り出されて、脱水およびろ過機16によって脱水およびろ過され、その結果物としての脱水ケーキが生じる。【0075】 本発明によれば、この重金属の硫化物を含む脱水ケーキは、図示のように金属精錬および精製所である山元へ還元して、乾式精錬などによって効率良く元の金属に再生することができる。【0076】 ブロワ21および硫化水素ガスモニタ23から排出される排ガスは、硫化水素ガスを含むが、この硫化水素ガスは排ガス処理装置25によってソーダ分を含む捕集液として捕集され、その捕集液は硫化ソーダとして再利用される。【0077】 上述の連続式運転に対して、回分式運転の場合は、理論的には制御操作は簡単になる。 詳細には、反応槽内の処理原液に硫化剤を添加し、硫化水素ガスが発生した時点で硫化剤の供給を止め、反応を終える。その後反応槽に凝結剤を加え、沈殿の沈降を待ってろ過・脱水の操作に移る。【0078】 しかしながら、硫化剤としてNa2Sを用いた下記の反応式5のような重金属イオンと硫化剤の反応は、瞬間的に起こるものではなく、一定の時間を要するものと考えられる。【0079】 M+++Na2S → MS↓+2Na+ ・・・・・ 反応式5 従って、回分式運転における重金属イオンと硫化物イオンの反応の場合も、反応を速やかに進行させ、反応時間(反応終点に至るまでの時間)をなるべく短縮するためには、反応途中においても反応槽内の硫化物イオンの濃度はわずかでも過剰になっている方が望ましい。【0080】 以上のことから、本発明にもとづく実際の処理では、連続式処理であっても回分式処理であっても、反応中には常に硫化水素ガスが微量に発生し、その気中濃度が制御硫化水素ガス濃度以下になるような制御機能が働くことになる。(本発明の「改良硫化物法」の特長) 本発明の改良硫化物法は、反応槽内にて重金属含有排水に硫化剤を添加して排水処理を行う方法(硫化物法)において、技術の原理から装置化における工夫に至るまでの次の7点を特長とする処理方法である。(1)硫化水素ガスモニターによる正確な反応制御 公知の硫化物法においては、硫化剤の供給量を制御する適切な方法がなかったため、硫化剤の過剰供給による、有毒でしかも悪臭を有する硫化水素ガスの発生や、沈殿物(重金属硫化物)の再溶解、コロイド化などの問題がある。【0081】 これに対し、本発明の方法においては、反応中に発生する微量の硫化水素ガスを硫化水素ガスモニターによって検知することで、硫化剤の供給が過剰にならないように、正確に反応を制御することができる。【0082】 実際には、発生ガス濃度を適正な範囲に抑えるように硫化剤の供給を調整すること(硫化剤供給ポンプを制御すること)を通じて、それと一定の関係で対応する反応液中の硫化物イオンの濃度を適正に保つ。これによって、反応を十分に進行させながら、多量の硫化水素ガスの発生と、沈殿物の再溶解と、コロイド化という、処理を困難にさせる問題を避けることができる。(2)凝結剤による良好な沈殿 公知の硫化物法では、生成する重金属硫化物は、硫化剤が過剰に添加されることが原因となって、多硫化金属が生成し、固形物粒子がコロイド化する。このため沈殿の沈降性、ろ過性、脱水性が悪くなり、固液分離が困難で、処理の目的を達成することが難しい。【0083】 これに対して、本発明においては、(1)の重金属イオンと硫化剤のほぼ適量な反応の結果得られる重金属硫化物に、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、キチン系等の適切な凝集剤を凝結剤として用いることにより、沈降性、ろ過性、脱水性が顕著に良好な沈殿が得られる。このため、固液分離が容易であり、処理の目的が容易に達成される。(3)含水率が低く、重金属含有率が高いスラッジ 公知の水酸化物法(アルカリ法)は、重金属イオンを含む排水の処理法として最も手軽で安全な方法であり、ほとんどの重金属含有排水はこの方法で処理されている。しかし、発生するスラッジの含水率が高く、また目的とする重金属以外の物質がスラッジ中に多く含まれる。このため、スラッジの処分量が増えるだけでなく、目的とする重金属の含有量が低いため、リサイクルの採算性が悪く、有価性の高い金属が含まれているにも関わらず、実際はほとんどが埋立地などに投棄処分されている。【0084】 これに対して、本発明においては、上記の特長(1)(2)により、含水率が十分低く、かつ目的とする重金属の含有率が十分高いスラッジが得られる。このため、スラッジの処分量が大幅に減るだけでなく、スラッジを重金属資源としてリサイクルする場合の採算性において有利になり、有価物として売却益が得られる場合もある。(4)混合金属の分離回収 水酸化物法では、複数の異種金属イオンが混在する排水から、個々の金属をそれぞれ分離回収することは、実際上できない。【0085】 これに対して本発明の硫化物法においては、混在する金属の種類によっては、反応中の酸性度(pH)を適当な範囲に調整して、硫化反応と沈殿ろ過とを繰り返すことによって、複数の異種金属イオンが混在する排水から、個別の金属ごとに硫化物沈殿として分離回収を行うことができる。【0086】 個別金属を硫化物として分離回収できれば、混合状態のスラッジよりも、リサイクルにとっては有利になる。混合状態の場合より不純物が少なくなることにより、リサイクル資源として製錬所に還元(山元還元)する場合の価値が上がる(引取価格を決める場合のマイナス要因となるペナルティーが少なくなる)。(5)錯化剤の影響がなく、高度処理が容易 めっき工程で一般に用いられるいろいろな錯化剤は、重金属イオンを錯体の形で溶解させる作用を持つ。公知の水酸化物法の場合は、この錯体中の重金属を水酸化物の形で捕捉できず、処理後も重金属残留濃度は十分低くならない。これに対して硫化物法では、多くの場合に錯体の影響を受けにくく、処理後の重金属残留濃度は十分低くなる。【0087】 このため、公知の技術においては、水酸化法で十分に処理できない排水の仕上げ処理として、また錯化剤の悪影響を避けるための方法として、硫化物法が追加的に行われている。しかし、その場合においても適量での反応を起こさせる制御法がないため、硫化物を任意に過剰に混和し、それによって起こる有毒悪臭の硫化水素ガスの発生や沈殿物の再溶解、コロイド化などの問題を解決するために、多量のAlイオンやFeイオンなどの多価金属化合物を多量に加えている。その結果として、加えた多価金属化合物を含む多量のスラッジが発生するとともに、スラッジ中の目的の重金属の含有率が低くなり、リサイクルができない原因となっている。【0088】 これに対して、本発明の改良硫化物法においては、沈殿には凝結剤以外の余分の物質を加える必要がないため、結果としてスラッジの量が少なくてすむだけでなく、目的の重金属の含有率の高いスラッジが得られ、リサイクル利用にも有利になる。(6)ガスモニタリングによる硫化剤添加制御 本発明においては、反応中に発生する発生硫化水素ガスを硫化水素ガスモニターを用いてモニタリングすることによって硫化剤の供給制御を適正に行うことが、最も重要な要素技術である。【0089】 (1)で述べたように、重金属イオンと硫化物イオンの反応を処理目的に適合するように十分に進行させ、かつ硫化剤が過剰にならないようにするためには、反応液中の硫化物イオンの濃度をごく僅かに過剰気味の「適正な」値に保つ必要がある。【0090】 反応液中の硫化物イオン濃度と、反応槽上部の気中の硫化水素ガス濃度との間には、実験的に定められる一定の関係があり、気中の硫化水素ガス濃度(制御硫化水素ガス濃度)を制御できれば、液中の硫化物イオンの濃度を制御できる。【0091】 発生する硫化水素ガスのモニタリングは、反応槽上部の気中の硫化水素ガスを減圧状態で吸引して、モニターの検知管に導入して行う。減圧状態で吸引するため、外部の空気が混入し、硫化水素ガスが混入空気によって希釈される。希釈された結果の硫化水素ガス濃度が硫化水素ガスモニターの感度の適度な範囲に収まるように、流量計を用いて外部空気による希釈率(混合率)を調整する。(7)硫化水素ガスの捕集と再利用 吸引した硫化水素ガスの一部はモニタリング用にバイパスされるが、残りは余剰ガスとなる。本発明の装置においては、この余剰ガスとモニタリング後のガスを併せて、外部に直接放散するのではなく、適当な大きさのスクラバーを通してアルカリ液(苛性ソーダ水溶液)で捕集し、この液(硫化ソーダ溶液)を硫化剤タンクに戻して再利用する。【0092】 減圧状態でガスモニタリングを行うことは、硫化水素ガスを外部に漏らさず、これをほぼ完全に回収して再利用するための工夫の一つである。実施例(実施例1) 図4に示す連続処理装置を用い、反応槽13において、200mg/リットルのPbイオンを含む鉛標準排水(2リットル)のpHを3.5に調整した。そして、このpH調整された排水に、硫化剤としての硫化ソーダNa2Sを、1.1mg/分の割合で一定量を連続添加して、硫化物処理を行った。硫化水素ガスは、希釈率12倍で希釈したうえでモニタした。その結果を図5に示す。図5において、横軸は硫化水素ガス濃度を対数目盛で示し、縦軸は残留Pb濃度と残留硫化物濃度とを表す。【0093】 図5において、被処理液中には上記のように当初200mg/リットルのPbイオンが含まれていたが、硫化水素ガスが30ppmで検出されたときには被処理液中の残留Pbイオン濃度は0.09mg/リットルまで大幅に低下していた。【0094】 また、このとき、残留硫化物濃度は4.00mg/リットル(総量で8mg)であり、これは総量で400mgのPbを前述の反応式2にもとづいて反応させる化学量論量の1/8であった。したがって、処理後の液中に残存する硫化物の量は非常に少なかった。【0095】 さらに硫化ソーダNa2Sの添加を続けて、図示のように検出される硫化水素ガスの濃度が増大した場合には、それにつれて残留Pbイオン濃度も低下し、硫化水素ガスの濃度が240ppmになったときに残留Pbイオン濃度は0ppmになった。(実施例2) 実施例1と同様に図4に示す連続処理装置を用いて、200mg/リットルのCuイオンを含む銅標準排水(2リットル)のpHを1.6に調整した。そして、このpH調整された排水に、硫化ソーダNa2Sを、1.1mg/分の割合で一定量を連続添加して、硫化物処理を行った。硫化水素ガスは、希釈率12倍で希釈したうえでモニタした。その結果を図6に示す。【0096】 図6において、被処理液中には上記のように当初200mg/リットルのCuイオンが含まれていたが、硫化水素ガスが30ppmで検出されたときには被処理液中の残留Cuイオン濃度は4.0mg/リットルまで大幅に低下していた。また、このときの残留硫化物濃度は19.5mg/リットルで、これは化学量論量の1/5.2であった。したがって、処理後の液中に残存する硫化物の量は非常に少なかった。【0097】 さらに硫化ソーダNa2Sの添加を続けて、図示のように検出される硫化水素ガスの濃度が増大した場合には、それにつれて残留Cuイオン濃度も低下し、硫化水素ガスの濃度が120ppmになったときに残留Cuイオン濃度は0ppmになった。(実施例3) 実施例1と同様に図4に示す連続処理装置を用いて、200mg/リットルのNiイオンを含むニッケル含有排水(2リットル)のpHを8.5に調整した。そして、このpH調整された排水に、同様に硫化ソーダNa2Sを、1.1mg/分の割合で一定量を連続添加して、硫化物処理を行った。硫化水素ガスは、同様に希釈率12倍で希釈したうえでモニタした。その結果を図7に示す。【0098】 図示のように、硫化水素ガス濃度が90ppmのときに残留Ni濃度が3mg/リットルまで低下した。なお、硫化水素ガス濃度が90ppmから120ppm、180ppmに増加したときには残留Ni濃度が増加しているが、これは過硫化ニッケルが生成して再度溶解したためであると考えられる。(実施例4) 次に、亜鉛ZnとニッケルNiとの混合液から両者を分離することに関する実施例について説明する。このような混合液として、たとえば亜鉛を含有した無電解ニッケルめっき液が例示される。【0099】 図8は、Znの初期濃度が3500mg/リットル、Niの初期濃度が500mg/リットルの排水を、本発明にもとづき処理したときの結果を示す。この図8に示す実験結果によれば、pHを5.5に調整して硫化物を生成させると、10分後にZnは6.2mg/リットルの残存濃度まで除去され、その分のZnSが発生する。なお、このようにZnが減少した後も余剰硫化物が添加され続けると、それにつれてNiも除去されるため、最適反応時間は30分程度と考えられる。Znの残存濃度に対し、上述の10分後の時点において、Niの残存濃度は2000mg/リットル程度までしか低下しない。換言すると、pHを5.5に調整した場合には、硫化剤を添加してもNiSはあまり生成されない。【0100】 図8の実験に用いた排水の場合は、第1反応としてpH5.5で反応させたときに生成する硫化物は、たとえば反応時間30分において、ZnSの生成量は955mg/リットルであり、その時のNiSの生成量は564mg/リットルであり、その場合にZnに対するNiの不純率は、564/(955+564)=37.1%となる。そして、その後に第2反応としてpH7.0で反応させたときには、ZnSの生成量は8.9mg/リットルであり、その時のNiSの発生量は2905mg/リットルとなる。【0101】 その結果、この第2反応により得られる硫化物はNiSに対するZnSの不純率は0.31%にしかならず、ZnSの混入率との関係においては純度が99%を越えて高いNiSを得ることができる。ZnSは、第1反応において不純率37.1%と、あまり高純度のものは得られないが、一般にZnよりもNiの方が高価であるため、ZnSの純度を少々犠牲にしても高純度のNiSが得られる方が経済的な効果が大きくなる。【0102】 これに対し、次に、第1反応としてpH6.0で反応させた後に、第2反応としてpH7.0で反応させる場合について説明する。この場合において、第1反応としてたとえばpH6.0で30分反応させて、ほとんどZnを取り除いたときには、ZnSは969mg/リットル生成されるが、このときにNiSは3316mg/リットルも生成される。この場合は、ZnSに対するNiSの不純率は77.1%まで大幅に増加する。【0103】 次に第2反応でさらにpH7.0で同様に30分運転した場合には、ZnSの生成量は0.1mg/リットルまで低下し、NiSの生成量は1325mg/リットルとなる。この第2反応ではNiSに対するZnSの不純率は0.0081%まで低下する。【0104】 しかしながら、このように第2反応で得られるNiSの純度がきわめて高くなるにもかかわらず、その生成量は1325mg/リットルと第1反応の3316mg/リットルの半分以下にしかならない。換言すると、原水に含まれていたニッケルのうち、高純度で硫化物化されるものは、全体の三分の一程度にとどまる。しかも、前述のように第1反応で生成されるZnSは不純率が高い。【0105】 したがって、このように第1反応としてpH6.0で反応させた後に、第2反応としてpH7.0で反応させるのは、決して効率の良いものではない。 これに対し、前述のように第1反応としてpH5.5で反応させた後に、第2反応としてpH7.0で反応させると、pH5.5における第1反応では、NiはほとんどがNiSにならず、ZnはほとんどがZnSになって除去される。そして、その後のpH7.0での第2反応においては、Znがほとんど存在しないことから、Niがもっぱら硫化物NiSとなる。よって、この反応プロセスを選択することが最良の方法であると考えることができる。(実施例5) Pbを含む排水からPbSを生成することによりPbを除去するための他の実施例について説明する。【0106】 図9は、回分処理の際に硫化剤を添加して反応させるときの被処理排水のpHと残留Pb濃度との関係を示す実験データをグラフ化したものである。この図9から明らかなように、pHの上昇に伴い残存Pbが増加するという結果が得られた。これは、Pbが両性金属であって、硫化物との反応時にもわずかに水酸化鉛が生成し、pHの上昇に伴いその溶解度が増大したためであると考えることができた。【0107】 図9に示すように、制御硫化水素ガス濃度が120ppmの場合において、初期Pb濃度が64mg/リットルのときに回分処理を行うと、被処理排水のpHが3.5〜4.5のときに、残存Pb濃度は0.05mg/リットル以下となった。【0108】 図10は、連続処理時における被処理排水のpHと残留Pb濃度との関係を示す実験データをグラフ化したものである。図10より明らかなように、制御硫化水素ガス濃度が60ppmの場合は、反応させるときの被処理排水のpHと残留Pb濃度との間には直線的な関係が見られ、pH=4.0のときに残存Pb濃度は0.01mg/リットル以下となった。【0109】 一方、制御硫化水素ガス濃度が30ppmの場合は、pH=5.0までは60ppmの場合と同様に残存Pb濃度が徐々に減少する傾向を示したが、pH=5.0を越えると反対に増加に転じ、pH=6.0の場合は残存Pb濃度は1mg/リットル以上となった。【0110】 このことは前述の回分式の処理の場合にも見られたことであるが、制御硫化水素ガス濃度が低い場合には、水酸化鉛が生成しやすいことと、Pbが両性金属と同様の性質を有していることにもとづきpHの上昇に伴ってPbの溶解度が増大したこととによって、図示のように残存Pb濃度が高くなったと思われる。【0111】 以上の回分処理および連続処理についての実験の結果より、制御硫化水素ガス濃度は最低でも60ppm以上必要であり、被処理排水のpHは4.0付近が最適であると考えることができる。なお、図2は、このようにpHを4.0として処理したときの結果を示すものである。(実施例6) 本発明の方法により生成される硫化物スラッジの含水率と重金属含有率との分析例について説明する。【0112】 NiSのスラッジでは、含水率は52〜57質量%、ドライベースでのNi含有率は40〜45質量%、ウエットベースでのNi含有率は19〜20質量%であった。【0113】 Pbのスラッジでは、、含水率は50〜60質量%、ドライベースでのPb含有率は53質量%、ウエットベースでのPb含有率は23〜24質量%であった。【0114】 公知の水酸化物法においては、一般に水酸化金属スラッジの含水率は80質量%程度、良くて75%質量程度である。またウエットベースでの重金属含有率は、金属によって異なるが、10%に満たないレベルであるのが普通である。【0115】 これに対し本発明の方法によれば、たとえばPbの場合には、上述のように、含水率を50〜60%まで低下させることができ、しかもウエットベースでのPb含有率を23〜24%まで高めることができる。【0116】 ドライベースでのPb含有率は53%であったが、硫化物スラッジが全量PbSとなっていれば、その理論値としてのPbの含有率は86%になる。この理論値との違いは、他の無機塩類(たとえば硫化ナトリウム)の混入によるものと考えられる。しかしながら、一般に50%以上含有していれば有価物となるため、本発明の方法によるPbの硫化物スラッジは有効に再資源化することが可能である。 重金属含有排水に硫化剤を添加して硫化処理するに際し、前記重金属含有排水から発生する硫化水素ガスの濃度を検出しながら、硫化水素ガスの検出濃度が、0ppmを越えかつ前記重金属の液中反応終了点に対応する硫化水素ガス濃度以下となるように、前記硫化水素ガスの検出濃度にもとづいて、前記重金属含有排水に添加する硫化剤の添加量を制御することを特徴とする硫化剤を用いた重金属含有排水の処理方法。 排水から発生する硫化水素ガスを空気により希釈したうえで、その硫化水素ガス濃度を硫化水素ガスモニタによって検出することを特徴とする請求項1記載の硫化剤を用いた重金属含有排水の処理方法。 硫化処理により生成した重金属硫化物に凝結剤を適用することを特徴とする請求項1または2記載の硫化剤を用いた重金属含有排水の処理方法。 硫化処理後の排水に酸性条件でストリッピングを施すことで、未反応硫化剤を硫化水素ガス化させることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の硫化剤を用いた重金属含有排水の処理方法。 発生した硫化水素ガスを捕集して回収することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の硫化剤を用いた重金属含有排水の処理方法。 複数の異種金属イオンが混在する排水から、個々の金属をそれぞれ分離回収する方法であって、排水の酸性度を分離回収しようとする金属に対応した適当範囲に調整して、請求項1から5までのいずれか1項に記載の処理方法によってその金属の硫化反応を行い、生成した金属硫化物の沈殿ろ過を行うことを、各金属ごとに繰り返すことを特徴とする重金属の回収方法。 重金属含有排水に硫化剤を添加して硫化処理するための処理装置であって、前記排水から発生する硫化水素ガスの濃度を検出する硫化水素ガスモニタと、前記重金属含有排水に硫化剤を添加する手段とを有し、前記硫化剤の添加手段は、前記硫化水素ガスモニタによる硫化水素ガスの検出濃度が、0ppmを越えかつ前記重金属の液中反応終了点に対応する硫化水素ガス濃度以下となるように、前記硫化水素ガスの検出濃度にもとづいて、前記重金属含有排水に添加する硫化剤の添加量を制御可能に構成されていることを特徴とする硫化剤を用いた重金属含有排水の処理装置。