タイトル: | 特許公報(B2)_食後過血糖改善剤 |
出願番号: | 2003516538 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 31/785,A61K 31/4015,A61K 31/18,A61P 3/10 |
大庭 建三 JP 4353414 特許公報(B2) 20090807 2003516538 20020729 食後過血糖改善剤 田辺三菱製薬株式会社 000002956 大庭 建三 JP 2001229087 20010730 20091028 A61K 31/785 20060101AFI20091008BHJP A61K 31/4015 20060101ALI20091008BHJP A61K 31/18 20060101ALI20091008BHJP A61P 3/10 20060101ALI20091008BHJP JPA61K31/785A61K31/4015A61K31/18A61P3/10 A61K 31/00-33/44 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 米国特許第05468727(US,A) 国際公開第01/025291(WO,A1) 特開平04−282324(JP,A) 特開平09−295941(JP,A) 特表平09−504782(JP,A) 特表平10−501842(JP,A) 国際公開第00/003742(WO,A1) 国際公開第00/027401(WO,A1) 坂上元祥他,最新の糖尿病の薬物治療,医学のあゆみ,2001年 4月,Vol.197, No.1,pp103-108 10 JP2002007655 20020729 WO2003011308 20030213 8 20050715 小堀 麻子 技術分野本発明は、薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂を含有する食後過血糖改善剤に存する。背景技術コレスチミド(商品名:コレバイン、三菱ウェルファーマ株式会社)やコレスチラミンレジン(ブリストル・マイヤーズスクイブ社)に代表されるような、コレステロール低下剤として知られる陰イオン交換樹脂に関しては、これまで一定期間投与した後の血糖低下に関する報告はあったが明確な効果が認められておらず、その作用機序についても明らかにされていない。現在、食後過血糖改善剤としてα−グルコシダーゼ阻害剤であるアカルボース(商品名:グルコバイ、バイエル薬品)およびボグリボース(商品名:ベイスン、武田薬品)が知られているが、これらはインスリン分泌作用は有さない。また、鼓腸、放屁増加などの副作用が比較的頻繁に発現する。さらに、非吸収性のコレバインに代表されるような陰イオン交換樹脂と比較して、前述のグルコバイには禁忌が4つ存在するなど、対象患者に注意が必要である。一方、薬学的に許容される陰イオン交換樹脂において、2型糖尿病を合併した高コレステロール血症患者における血糖日内変動に対する影響において、明確に食後の血糖上昇抑制作用を示すことに関しては、本願発明者の知る限りこれまで一切報告されていない。発明の開示本発明の目的は、薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂を含有する食後過血糖改善剤を提供することである。本発明者らは、上記した課題を達成すべく鋭意研究した結果、コレステロール低下剤として知られているコレスチミド(2−メチルイミダゾール−エピクロロヒドリン共重合体)が、2型糖尿病を合併した高コレステロール血症患者におけるコレスチミドの血糖日内変動に対する影響の検討において、明確な食後の血糖上昇抑制作用を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明の第一の要旨は、薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂を含有する食後過血糖改善剤、及び、薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂を含有する食後血糖上昇抑制剤に存する。本発明の第二の要旨として、薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂を有効成分として含有する糖尿病の予防または治療用の医薬組成物が挙げられ、好ましくは、食後の過血糖を改善すること;食後の血糖上昇を抑制すること;糖尿病が2型糖尿病であること、及び、糖尿病が高コレステロール血症の患者の合併症としての糖尿病であることが好ましい態様として挙げられる。なお、上記で挙げたいずれの要旨においても、薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂が、コレスチミド、コレスチラミンレジン、コレスチポール、塩酸セベラメル及び塩酸コレセベラムから選ばれること;薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂が、エピクロロヒドリン誘導体とアミン類の重合反応にて合成される陰イオン交換樹脂であることが好ましい態様として挙げられ、特に好ましい態様として、薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂が、コレスチミドであることが挙げられる。また、上記で挙げたいずれの要旨においても、スルホニル尿素薬を、同時に、別々に、または、経時的に使用することが、好ましい態様として挙げられる。また本発明の第三の要旨として、薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂を用いた食後の過血糖を改善する方法、及び、薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂を用いた食後の血糖上昇を抑制する方法が挙げられる。発明を実施するための最良の形態以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明において、薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂とは、医薬品として投与可能な陰イオン交換樹脂であり、以下の実施例に示すように、当該陰イオン交換樹脂を投与した患者の血糖日内変動を検討した際に、食後の血糖上昇抑制作用を示すものであれば特に限定はされない。その一例としては、コレスチミド(2−メチルイミダゾール−エピクロロヒドリン共重合体)が最も好ましいものとして挙げられる。コレスチミドは、不規則に入り乱れた複雑な立体構造を有するが、下記式(I)の基本構造で示され、また、その構造は部分的には下記式(II)で示され、エピクロロヒドリン誘導体とイミダゾール誘導体に代表されるアミン類の重合反応、すなわち、特開昭60−209523号公報に記載の製造方法によって得られる。その他の好ましい陰イオン交換樹脂としては、前述のコレスチラミンレジンやコレスチポール((クロロメチル)オキシランを付加したN−(2−アミノエチル)−N’−[2−[(2−アミノ−エチル)アミノ]エチル]−1,2−エタンジアミン重合体)等が挙げられ、これらはシグマ社から市販されている。なお、コレスチラミンレジンは4級アンモニウム基を付加したスチレン−ジビニルベンゼン共重合体を含む強塩基性陰イオン交換樹脂で、その基本構造は下記式(III)で表される。また、塩酸セベラメルの基本構造は下記式で表され、米国特許第5496545号公報に記載の方法、またはそれに準ずる方法により製造することができる。塩酸コレセベラムの基本構造は下記式で表され、米国特許第5607669号公報に記載の方法、またはそれに準ずる方法により製造することができる。なお、その他、特表平9−504782号、9−500368号、10−501264号、10−501842号、11−507093号、11−512074号及び5−512332号、並びに、特開平8−208750号、9−202732号、10−114661号及び11−228449号各号公報等に記載の陰イオン交換樹脂も、本発明の要旨を超えない限り、本発明において使用することができる。本発明の食後過血糖改善剤は、有効成分である上記化合物それ自体を用いてもよいが、汎用の製剤用添加物を用いて上記有効成分を含む医薬組成物を製造して用いることが好ましい。このような医薬組成物としては、錠剤、カプセル剤、細粒剤、丸剤、トローチ剤、液剤等を挙げることができ、これらは経口的(舌下投与を含む)に投与される。経口用の医薬組成物は、混合、充填または打錠等の従来汎用の方法により製造することができる。また反復配合操作を用いて、多量の充填剤を使用した医薬組成物中に有効成分を分布させてもよい。例えば、経口投与に用いられる錠剤またはカプセル剤は単位投与物として提供されることが好ましく、結合剤、充填剤、希釈剤、打錠剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香味剤および湿潤剤等の通常使用される製剤用担体を含有していてもよい。錠剤は、当業界において周知の方法に従って、例えばコーティング剤を用いてコーティング錠としてもよい。好ましい充填剤としては、セルロース、マンニトール、ラクトース等を挙げることができ、崩壊剤であるでん粉、ポリビニルピロリドン、ナトリウムでん粉グリコラート等のでん粉誘導体等や、滑沢剤であるラウリル硫酸ナトリウム等を製剤用添加物として用いることができる。経口用の液剤形態の医薬組成物は、例えば、水性または油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ剤もしくはエリキシル剤等の医薬組成物、あるいは使用前に水または適当な媒体により再溶解され得る乾燥医薬組成物として提供される。このような液剤には、通常の添加剤、例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルまたは水素化食用脂肪のような沈殿防止剤;レシチン、ソルビタンモノオレエート、アラビアゴムのような乳化剤;アーモンド油、精留ココナッツ油、グリセリンエステル等の油状エステル;プロピレングリコール、エチルアルコールのような(食用油も包含し得る)非水性媒体;p−ヒドロキシ安息香酸のメチルエステル、エチルエステル若しくはプロピルエステル、またはソルビン酸のような保存剤、および必要に応じて通常の香味剤または着色剤などを配合することができる。上記経口用の医薬組成物、例えば錠剤、カプセル剤、細粒剤等の場合は、通常5〜95%重量、好ましくは25〜90%重量の有効成分を含有する。なお、コレスチミドは三菱ウェルファーマ(株)より商品名コレバインとして市販されており、本発明においてはコレバインをそのまま使用しても良い。本発明の食後過血糖改善剤の投与量は、使用する有効成分、患者の年齢、健康状態、体重、疾患の重篤度、同時に行う治療・処置の種類や頻度、所望の効果の性質等により適宜決定すればよい。一般的には、コレスチミドを例にすると、成人1日あたりの投与量を、有効成分量として1〜60gとして、1日あたり1回ないしは数回投与すればよい。本発明においては、上記で挙げた薬学的に許容される陰イオン交換樹脂と、スルホニル尿素薬を、同時に、別々に、または、経時的に使用することが可能である。すなわち、上記で挙げた薬学的に許容される陰イオン交換樹脂を有効成分とする医薬と、スルホニル尿素薬とを、それぞれ患者の年齢、病態、性別、症状等により適宜増減して決定した投与量に基づいて、一つの医薬組成物として投与することも可能であるし、それぞれ別々の医薬組成物として投与することも可能である。別々の医薬組成物として投与する場合には、それぞれ同じか、または、異なる投与形態で、同時に投与することも可能であるし、それぞれ同じか、または異なる投与形態で、同じ日に時間をずらして、あるいは、患者の年齢、病態、性別、症状等に併せて数日間、数週間または数ヶ月にわたり所定間隔で投与することも可能である。本発明において使用されるスルホニル尿素薬としては、特に限定はされないが、具体的には、後述の実施例で示した程度の血糖上昇抑制作用を有するものが挙げられ、例えば、トルブタミド(商品名:ヂアベトース/日本医薬品工業、ジアベン/中外製薬、など)、グリメピリド(商品名:アマリール/アベンティス)、グリクラジド(商品名:グリミクロン/大日本製薬)、グリベンクラミド(商品名:オイグルコン/日本ロシュ、山之内製薬、など)等が挙げられる。これらのスルホニル尿素薬は、試薬として市販されているものを使用してもよいし、すでに医薬品として上市されている場合には、それを用いてもよい。実施例以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下で使用したコレスチミドは、三菱ウェルファーマ(株)より市販されているコレバイン顆粒70%を使用した。実施例1(対象及び方法)2型糖尿病を合併した高コレステロール血症患者であって、カロリーコントロールが厳格に行われ、血清脂質値及び血糖値が把握されている入院患者(成人、性別不問)を対象に、コレスチミド投与による血清脂質及び血糖日内変動に及ぼす影響について、その投与前後において、同一症例で比較検討した。血糖日内変動は計10ポイントにおいて実施した。各測定ポイントは「朝食前(8時)、朝食後2時間(10時)、昼食前(12時)、昼食後2時間(14時)、夕食前(18時)、夕食後2時間(20時)、0時、3時、6時及び翌朝8時」とした。試験スケジュールについては、以下のとおりとした。(1)観察期:入院後2週間観察期において、血清脂質値、血糖値、体重等が安定していることを確認した。(2)治療期:コレスチミド投与後2週間コレスチミドを2週間継続投与中の患者に対して、血清脂質値及び血糖日内変動について、観察期と比較した。(試験薬及び用法・用量)コレスチミドとして1回1.5gを1日2回、朝・夕食前に服用した。(食事療法及び併用薬剤)観察期・治療期を通じて、指示カロリーは一定(標準体重1kgあたり25〜30kcal)とした。既にコレスチミド以外の高脂血症治療薬(HMG−CoA還元酵素阻害薬、フィブラート系薬剤、プロブコール(一般名、商品名:ロレルコ(大塚)、シンレスタール(第一製薬))等)が投与されている場合、観察期・治療期を通じてその用法・用量を変更せずに投与継続し、またこれらの薬剤を新たに追加投与しないこととした。血清脂質値に影響を与える可能性のある薬剤は、観察期・治療期を通じて用法・用量を変更しないこととした。血糖値に影響を与える可能性のある薬剤(α−グルコシダーゼ阻害薬、インスリン抵抗性改善薬)は、原則として投与しないこととした。但し、スルホニル尿素薬については,既に投与されている場合、観察期・治療期を通じてその用法・用量を変更せずに投与継続することとした。その他の薬剤においても、観察期・治療期を通じて可能な限り用法・用量を変更しないこととした。(結果)対象患者及びその結果を以下に示す。なお、以下で示すTCは総コレステロール値を、HDL−CはHDL−コレステロール値を、TGはトリグリセリド値を示し、矢印の前後はコレスチミド投与前後の各々の値を示し、いずれも単位はmg/dLである。なお、すべての図において、◆はコレスチミド投与前の血糖値を、△はコレスチミド投与後の血糖値を示し、横軸は測定ポイント(採血時刻)を、縦軸は血糖値(mg/dL)を示す。ケース1:75才男性、トルブタミド(一般名:500mg/日投与)TC 210→152、TG 74→75血糖値日内変動を第1図に示す。ケース2:63才男性、食事療法のみTC 204→142、HDL−C 38→33、TG 221→146血糖値日内変動を第2図に示す。ケース3:78才男性、食事療法のみTC 188→155、HDL−C 44→40、TG 176→168血糖値日内変動を第3図に示す。ケース4:73才男性、グリメピリド(一般名:1mg/日投与)TC 242→198、HDL−C 66→66、TG 100→84血糖値日内変動を第4図に示す。上記の結果のうち、ケース2及びケース3の結果より、コレスチミド単独投与により、食後の血糖上昇が抑制されることが明らかである。また、ケース1及びケース4の結果より、コレスチミドとスルホニル尿素薬を併用することによっても、食後の血糖上昇が抑制されることが明らかである。産業上の利用分野本発明によると、食後の血糖上昇抑制作用を明確に示す薬剤が得られる。さらに、本発明の薬剤は、スルホニル尿素薬との併用によっても、食後の血糖上昇抑制作用を示す。なお、本出願は、日本特許出願 特願2001−229087号を優先権主張して出願されたものである。また、本明細書中で引用された特許(公開)公報、文献等はすべて、それぞれ単独で、または、それぞれ組合せて、本発明の参照として使用される。【図面の簡単な説明】第1図は、実施例1中ケース1の血糖日内変動を示す図である。第2図は、実施例1中ケース2の血糖日内変動を示す図である。第3図は、実施例1中ケース3の血糖日内変動を示す図である。第4図は、実施例1中ケース4の血糖日内変動を示す図である。 コレスチミドを含有する食後過血糖改善剤。 スルホニル尿素薬を、同時に、別々に、または、経時的に使用することを特徴とする請求項1に記載の食後過血糖改善剤。 コレスチミドを含有する食後血糖上昇抑制剤。 スルホニル尿素薬を、同時に、別々に、または、経時的に使用することを特徴とする請求項3に記載の食後血糖上昇抑制剤。 コレスチミドを有効成分として含有する糖尿病の予防または治療用の医薬組成物。 糖尿病の予防または治療が食後の過血糖を改善することである請求項5に記載の医薬組成物。 糖尿病の予防または治療が食後の血糖上昇を抑制することである請求項5に記載の医薬組成物。 糖尿病が、2型糖尿病である請求項5から7のいずれかに記載の医薬組成物。 糖尿病が、高コレステロール血症の患者の合併症としての糖尿病である請求項5から8のいずれかに記載の医薬組成物。 スルホニル尿素薬を、同時に、別々に、または、経時的に使用することを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の医薬組成物。