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タイトル:特許公報(B2)_アミノスチルベン誘導体の製造方法
出願番号:2003506849
年次:2009
IPC分類:C07C 213/02,C07C 217/84,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

山本 崇 松枝 裕之 内藤 雅樹 新井 勲 谷田貝 正宣 JP 4222206 特許公報(B2) 20081128 2003506849 20020620 アミノスチルベン誘導体の製造方法 味の素株式会社 000000066 加藤 朝道 100080816 三宅 俊男 100116528 石田 康昌 100080229 山本 崇 松枝 裕之 内藤 雅樹 新井 勲 谷田貝 正宣 JP 2001190117 20010622 20090212 C07C 213/02 20060101AFI20090122BHJP C07C 217/84 20060101ALI20090122BHJP C07B 61/00 20060101ALN20090122BHJP JPC07C213/02C07C217/84C07B61/00 300 C07C 213/02 C07C 217/84 C07B 61/00 特表2001−527533(JP,A) 特開平07−228558(JP,A) OHSUMI, K.,J. MED. CHEM.,1998年,V41,P3022-3032 GOWDA, D. C.,SYNTHETIC COMMUNICATIONS,2000年,V30N20,P3639-3644 VARIYAR, P. S.,INDIAN J. CHEM.,1995年,V 34B N10,P911-913 10 JP2002006174 20020620 WO2003000645 20030103 11 20050127 松澤 優子 技術分野本発明は、制癌剤の有効成分又はその製造中間体として重要なアミノスチルベン誘導体の新規製造方法に関し、目的とするアミノスチルベン誘導体を効率よくかつ工業的に簡便に製造する方法を提供する。背景技術シススチルベンを基本骨格とするコンブレタスタチン類は強い有糸分裂阻害活性と細胞毒性を有し、その誘導体を有効成分として使用する制癌剤の開発が検討されている。中でも、下記一般式(3)及び(4)で示される化合物については、毒性が低く治療効果の高い(特開平7−228558号及び特開平8−301831号公報参照。)ところから、制癌剤としての開発が期待されている。上記式(3)及び(4)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を、Xは水素原子又はニトリル基を、Yは炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン原子を、及びZはアミノ酸アシル基を、それぞれ表す。これ等一般式(3)又は(4)で示される化合物は、フェニル基のベンゼン環上にアミノ基又は置換アミノ基を有することが特徴であるが、その製造方法としてはニトロ基を還元してアミノ基へと変換する方法が提案されており、例えば亜鉛−酢酸による還元法(特開平7−228558号公報参照。)、亜ジチオン酸ナトリウムによる還元法(Bioorganic and Medicinal Chemistry,第8巻、2000年、2417ページ参照。)等が報告されている。しかしながら、亜鉛−酢酸法では反応の基質であるニトロ化合物に対して極めて大過剰の亜鉛を必要とし、結果として大量の亜鉛が廃棄物となり、更にそれが発熱分解性を有する等、工業化において環境面、安全面で多々問題がある。また、亜ジチオン酸ナトリウム法でも大過剰の亜ジチオン酸ナトリウムを用いており、収率も十分ではない。廃棄物の少ない製造プロセスを構築するためには化学量論的反応、更に好ましくは触媒的反応が望まれる。しかしながら、特に触媒的還元反応の条件においては炭素−炭素二重結合の一重結合への還元、或いは炭素−炭素二重結合のシス−トランス異性化が生じ易く、二重結合に影響を与えることなくニトロ基のみを選択的に還元することは容易ではない。即ち、ニトロスチルベン誘導体から触媒反応によりアミノスチルベン誘導体を得る例としては、二重結合の立体化学についての記載が無いものが多いが、酸化白金触媒を用いる水素添加法(J.Am.Chem.Soc.,1940年,62巻,1211ページ参照。)、白金−炭素を用いる水素添加法(特開平6−172295号公報参照。)等が報告されている。これ等の方法について、本発明で出発物質として使用する化合物への適用性を本発明者等が調査した結果では、目的とする化合物は痕跡量しか生成せず、主として二重結合の異性化と還元反応が優先的に進行し、これ等の方法が工業的には有効でないことが確認されている(後述の比較例参照。)。このような状況下に、前記ニトロスチルベン誘導体のニトロ基のみを選択的に効率よくアミノ化する方法が求められている。発明が解決しようとする課題本発明は、ニトロスチルベン誘導体を還元してアミノスチルベン誘導体へと変換する工程において、廃棄物が少なく、かつ選択性の高いニトロ基の選択的な還元法を開発し、その結果、制癌剤の有効成分或いはその製造中間体として重要なアミノスチルベン誘導体を工業的に有利に製造する方法を提供することをその課題とする。発明の開示本発明者等は、上記課題を解決すべく亜鉛−酢酸法に代わるニトロ基の還元法、特に触媒的還元法を多数検討した結果、貴金属触媒を用い、ギ酸や、ギ酸塩を水素供与体とする還元反応が高い選択性を与えることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに到った。即ち、本発明は、貴金属触媒の存在下に、下記一般式(1)で示されるニトロスチルベン誘導体と、ギ酸及び/又はギ酸塩とを反応させる工程を含むことに特徴を有する、下記一般式(2)で示されるアミノスチルベン誘導体の製造方法に存する。尚、アミノスチルベン誘導体は塩の形態でもよい。上記式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、OR4、NO2及びNH2のベンゼン環上の結合位置は任意であることを表す。上記式において、好ましくはR1、R2、R3及びR4の少なくとも一つがメチル基を表し、より好ましくはR1、R2、R3及びR4の全てがメチル基を表す誘導体が好適に使用される。OR4、NO2及びNH2のベンゼン環上の結合位置は任意であることを表しているが、前記式(1)で示される誘導体のニトロ基が当該反応により、アミノ基に還元されるので、前記式(2)で示される誘導体中ベンゼン環上のアミノ基の位置は前記式(1)で示される誘導体中ベンゼン環上のニトロ基の位置に対応している。同様に、OR4のベンゼン環上の位置についても、反応の前後でその位置は変化しないので、反応前の式(1)と反応後の式(2)の誘導体中ベンゼン環上で置換ビニル基の結合位置に対し同じ位置に結合していることになる。置換ビニル基の結合位置に対して、ベンゼン環上OR4が4位に、NO2が3位に結合する誘導体について前記本発明を適用するのが好適である。この場合、製造されるものは前記式(2)において置換ビニル基の結合位置に対して、ベンゼン環上OR4が4位に、NH2が3位に結合する誘導体が製造される。貴金属触媒としては、白金触媒(例えば、白金−炭素等)やパラジウム触媒(例えば、パラジウム−炭素等)が好適である。還元反応において水素供与体としてギ酸、或いはギ酸塩が採用されるが、ギ酸アンモニウム等のギ酸塩がより好ましい。当該反応においてアミノスチルベン誘導体を遊離体の形態で製造し、これを目的物質として分離することもできるし、必要により遊離体を更に造塩工程に付してアミノスチルベン誘導体の塩を製造して、これを目的物質として取得することもできる。従って、このような造塩工程或いは脱塩工程、更には単離工程や精製工程、或いはこれ等複数の工程に付して、工業的に必要な製品を取得する方法を付加しても、前記本発明の特徴部分である還元反応工程を含む限り、また本発明の目的や効果を阻害しない限り、前記付加工程を併せて本発明に含めることができる。本発明において、特に代表的な反応形態として下記方法を挙げることができる。イ. 白金触媒の存在下に、(Z)−3,4,4’,5−テトラメトキシ−3’−ニトロスチルベンとギ酸塩とを反応させた後、(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリン又はその塩を製造する方法。ロ. パラジウム触媒の存在下に、(Z)−3,4,4’,5−テトラメトキシ−3’−ニトロスチルベンとギ酸塩とを反応させた後、(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリン又はその塩を製造する方法。遊離体や塩の製造には、通常の脱塩工程や造塩工程を利用することができる。発明の実施の形態以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明において、ニトロ基の還元反応に使用する出発物質としては、前記一般式(1)で示される特定のニトロスチルベン誘導体が使用される。前記一般式(1)で示されるニトロスチルベン誘導体の製造は特に困難は無く、従来技術(例えば、特開平7−228558号公報参照。)を利用してその誘導体を容易に製造することができる。例えば、その製造方法として下記の工程を挙げることができる。前記式(1)及び(2)中、並びに上記式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表すが、これ等の置換基としてできるだけメチル基を選択するのが好ましく、特にR1〜R4全てがメチル基である誘導体が好適である。置換ビニル基の結合位置に対して、ベンゼン環上OR4が4位に、NO2が3位に結合する誘導体を出発物質に使用するのが好適である。この場合、本発明における還元反応後に製造されるものは前記一般式(2)において置換ビニル基の結合位置に対して、ベンゼン環上OR4が4位に、NH2が3位に結合する誘導体である。本発明において使用する貴金属触媒としては特に制限は無い。還元性の触媒として知られている貴金属を含む触媒や今後開発される還元性の貴金属触媒でも採用可能である。例えば、白金触媒、パラジウム触媒、ルテニウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられる。更に詳しくは、白金触媒にあっては白金−炭素(Pt−C)、白金−アルミナ、酸化白金、白金ブラック等、パラジウム触媒にあってはパラジウム−炭素(Pd−C)、パラジウム−アルミナ、パラジウム−炭酸カルシウム、パラジウム−硫酸バリウム、水酸化パラジウム−炭素、パラジウムブラック等、ルテニウム触媒にあってはルテニウム−炭素(Ru−C)、ルテニウム−アルミナ等、ロジウム触媒にあってはロジウム−炭素、ロジウム−アルミナ等が挙げられる。貴金属触媒の中では、白金触媒及びパラジウム触媒が好ましく、白金触媒の中では白金−炭素が、またパラジウム触媒の中ではパラジウム−炭素が、それぞれ好ましい。貴金属触媒の使用量については、出発物質のニトロスチルベン誘導体に対して、使用される貴金属触媒を好ましくは概ね0.1〜10モル%、より好ましくは概ね0.2〜5モル%、更に好ましくは概ね0.3〜3モル%の範囲で用いることができる。出発物質中に、ニトロ基を有する不純物、例えば前記出発物質の異性体が混入しているような場合、不純物のニトロ基も還元されるので、この不純物の還元反応も考慮してその使用量を決めることが望ましい。例えば、前記出発物質に加えてニトロ基を含有する誘導体全量に対して、前記数値範囲の触媒を使用することができる。本発明において、還元反応における水素供与体としてはギ酸及び/又はギ酸塩が用いられる。ギ酸塩としてはギ酸アンモニウム、ギ酸ナトリウム等が好適に挙げられるが、ギ酸と塩基成分を用いて反応系中でギ酸塩を生成させることもできるし、ギ酸とギ酸塩の混合物を使用することもできる。更に、ギ酸塩についても、単独塩のみならず複数種の混合塩の形で使用することもできる。水素供与体として使用されるギ酸及び/又はその塩の使用量については、出発物質の前記ニトロスチルベン誘導体に対してギ酸及び/又はその塩を好ましくは概ね200〜700モル%、より好ましくは概ね220〜500モル%、更に好ましくは概ね250〜400モル%の範囲で用いることができるが、ニトロ体の残留及び副反応を抑制するためには300モル%程度(250〜350モル%程度)の使用が好ましい。前記の如く、前記出発物質中にニトロ基を含有する不純物が混入するような場合には、これ等不純物の量を考慮して前記ギ酸塩等の使用量を決定することが望ましい。本発明において還元反応は溶媒中で行なわれるが、使用する溶媒としてはメタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等酢酸エステル類やその他のエステル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、及び水が挙げられ、またそれ等複数種による混合溶媒を用いることもできる。還元反応に使用する温度の範囲については、概ね0℃から反応混合物の沸騰温度の間で行なわれるが、好ましくは10〜50℃程度、より好ましくは20〜45℃程度の範囲で行われる。本発明においては、必須ではないが、還元反応をより効果的に進行させるため、或いは副反応を抑制するために、添加物を用いることができる。添加物としては、例えば、アミン、アンモニア、無機塩基等、各種の塩基類が挙げられる。還元反応で得られたアミノスチルベン誘導体は、触媒を分離した後、抽出、晶析、クロマトグラフィー等の通常の方法で精製し、取り上げることができる。また、酸との塩の形で取り上げることもできる。或いは、アミノスチルベン誘導体を中間体として用いて、更に反応を続ける場合においては、これを単離することなくそのまま或いは一部精製して次の工程に用いることも可能である。本発明においては、前記ニトロ基の選択的還元反応に特徴を有しているので、この反応を経由して得られ、前記式(2)で示される目的物質又はその塩を含むものであれば、溶液、混合物、精製物等何れの形態であっても、全て本発明で生産又は製造されたものに該当する。塩の形態で精製する場合には、通常の造塩工程を利用して目的とする塩を製造し、これを分離すればよい。また、塩の形態で製造された後、更に通常の脱塩工程を利用して遊離体の形態で目的物質を取得することもでき、このような方法も、前記還元反応に併せると全て本発明に含まれる。好適な実施の形態以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれ等実施例に限定されるものではない。(実施例1)(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリンの合成下記式(5)で示される(Z)−3,4,4’,5−テトラメトキシ−3’−ニトロスチルベン(「原料5」とも称する。)(8.63g,25.0mmol)をアセトニトリル(100mL)に溶解して、ギ酸アンモニウム(5.21g,82.6mmol,前記ニトロスチルベン誘導体(原料5)に対して330モル%)と5%白金−炭素(60.91%含水,4.99g,白金として0.50mmol)を加え、アルゴン雰囲気下30℃で20.5時間反応を行った。反応終了後、触媒と不溶物を濾別した後、得られた濾液について高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量分析を行った。目的物の(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリン(下記式(6)で示され、「目的物6」とも称する。)(6.49g,20.6mmol,82%)、副生成物の(E)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリン(下記式(7)で示され、「副生成物7」とも称する。)(0.39g,1.24mmol,5.0%)及び副生成物の2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エチル]アニリン(下記式(8)で示され、「副生成物8」とも称する。)(0.34g,1.07mmol,4.3%)が生成していることが確認された。副生成物の2−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エタン(下記式(9)で示され、「副生成物9」とも称する。)の生成は認められなかった。(実施例2)(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリンの合成実施例1と同じ方法、但しギ酸アンモニウムの量を出発物質のニトロスチルベン誘導体(5)(原料5)に対して300モル%に変更して19.5時間反応を行った。反応終了後に、触媒と不溶物を濾別した濾液についてHPLCにて定量分析を行った結果、10%の原料5が残留していたが、生成物の収率については、目的物6(前記式(6)で示されるアミノスチルベン誘導体)が82%であり、副生成物7、副生成物8及び副生成物9がそれぞれ1.2%、1.5%及び1.8%であった。(実施例3)(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリンの合成前記式(5)で示される(Z)−3,4,4’,5−テトラメトキシ−3’−ニトロスチルベン(原料5)(但し、トランス異性体を14%含む,計5.0g,14.5mmol)をアセトニトリル(58mL)に溶解して、ギ酸アンモニウム(95%,2.88g,43.4mmol,前記ニトロスチルベン誘導体(原料5)とそのトランス異性体の合計に対して300モル%)と10%パラジウム−炭素(51.3%含水,637mg,パラジウムとして0.29mmol)を加え、30℃で24時間反応を行った。反応終了後に、反応液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析したところ、目的物(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリン(目的物6;前記式(6)で示される。)、副生成物(E)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリン(副生成物7;前記式(7)で示される。)、2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エチル]アニリン(副生成物8;前記式(8)で示される。)、2−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エタン(副生成物9;前記式(9)で示される)、出発物質のニトロスチルベン誘導体(原料5;前記式(5)で示される。)、及び原料5のトランス異性体の、検出波長242nmにおけるピーク面積はそれぞれ69%、14%、1.4%、0.6%、12%、及び1.9%であった。用いた出発物質に14%のトランス異性体が含まれていたことを考慮すると、反応中に生じたシス体からトランス体への異性化は僅かであることが分かった。(実施例4)(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリンの合成前記式(5)で示される(Z)−3,4,4’,5−テトラメトキシ−3’−ニトロスチルベン(原料5)(但し、トランス異性体を14%含む,計5.0g,14.5mmol)をアセトニトリル(58mL)に溶解して、10%パラジウム−炭素(51.3%含水,633mg,パラジウムとして0.29mmol)、アンモニア水(29%,0.85g,14.5mmol)、及びギ酸アンモニウム(95%,2.88g,43.4mmol、前記ニトロスチルベン誘導体(原料5)とそのトランス異性体の合計に対して300モル%)を加え、30℃で28時間反応を行った。反応終了後に、触媒と不溶物を濾別した後、濾液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析したところ、目的物(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリン(目的物6;前記式(6)で示される。)、副生成物(E)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリン(副生成物7;前記式(7)で示される。)、2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エチル]アニリン(副生成物8;前記式(8)で示される。)、2−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エタン(副生成物9;前記式(9)で示される。)、出発物質のニトロスチルベン誘導体(原料5)、及び原料5のトランス異性体の、検出波長242nmにおけるピーク面積はそれぞれ72%、13%、1.3%、0.6%、11%、及び1.6%であった。用いた出発物質に14%のトランス異性体が含まれていたことを考慮すると、反応中に生じたシス体からトランス体への異性化は僅かであることが分かった。(実施例5)(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリンの合成前記式(5)で示される(Z)−3,4,4’,5−テトラメトキシ−3’−ニトロスチルベン(原料5)(173mg,0.50mmol)に、10%パラジウム−炭素(52.4%含水,25.8mg,パラジウムとして0.01mmol)、ギ酸アンモニウム(95%,232mg,3.5mmol,前記出発物質のニトロスチルベン誘導体(原料5)に対して700モル%)、酢酸エチル(7.5mL)及びピリジン(0.79mg,0.01mmol)を加え、43℃で5時間反応を行った。反応終了後に、反応液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析したところ、目的物(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリン(目的物6;前記式(6)で示される。)、副生成物(E)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリン(副生成物7;前記式(7)で示される。)、2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エチル]アニリン(副生成物8;前記式(8)で示される。)、2−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エタン(副生成物9;前記式(9)で示される。)、前記出発物質のニトロスチルベン誘導体(原料5)、及び原料5のトランス異性体の、検出波長242nmにおけるピーク面積はそれぞれ74%、7.7%、7.1%、6.4%、3.6%、及び0.1%であった。(実施例6)(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリンの合成前記式(5)で示される(Z)−3,4,4’,5−テトラメトキシ−3’−ニトロスチルベン(原料5)(8.63g,25.0mmol)をアセトニトリル(100mL)に溶解して、ギ酸アンモニウム(5.21g,82.6mmol,前記ニトロスチルベン誘導体(原料5)に対して330モル%)、5%白金−炭素(60.91%含水,4.99g,白金として0.50mmol)及びアンモニア水(28%,1.69mL,25mmol)を加え、アルゴン雰囲気下で30℃で23時間反応させた。反応終了後に、触媒と不容物を濾別した後、濾液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量分析した。目的物(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリン(目的物6;前記式(6)で示される。)(6.52g,20.7mmol,83%)、副生成物(E)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリン(副生成物7;前記式(7)で示される。)(0.55g,1.73mmol,6.9%)、及び副生成物2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エチル]アニリン(副生成物8;前記式(8)で示される。)(0.52g,1.63mmol,6.5%)が生成していることが確認された。副生成物2−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−1−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エタン(副生成物9;前記式(9)で示される。)の生成は認められなかった。(比較例1〜4)本発明との比較のために、従来法として先行文献に記載の触媒系や還元条件、及び一般的な触媒的還元条件を用いて、同様に実験を行ない比較例1〜4を得た。前記実施例及び比較例で得られた結果を、下記表1に示した。この表1の結果から明らかなように、本発明方法では、還元反応が効率よく進行し目的とする誘導体が好収率で生成することが分かった。これに対し、従来法では還元反応があまり進行しない(比較例4参照。)か、或いは副生成物が大量に生成する(比較例1〜3)という結果が得られた。尚、表1の記載に関して、詳細は次の通りである。・原料5:前記式(5)で示されるニトロスチルベン誘導体;・モル%値は原料(出発物質の全量、前記式(5)で示されるニトロスチルベン誘導体及びそのトランス異性体を含む全量、従って、当該トランス異性体を含まない場合には前記式(5)で示されるニトロスチルベン誘導体の量)を基準とする;・原料の異性体:原料5のトランス異性体であり、前記式5で示されるニトロスチルベン誘導体の異性体;・MeCN:アセトニトリル;MeOH:メタノール;AcOEt:酢酸エチル;・*1:検出波長は242nm;括弧内の数値は前記原料に対する収率(%);・*2:記載以外の副生成物(21面積%)を生成;・*3:特開平6−172295号公報と類似の条件を使用;・*4:J.Am.Chem.Soc.,1940年,62巻,1211ページと類似の条件を使用;・*5:14%のトランス異性体を含む原料を使用;・*6:20%のトランス異性体を含む原料を使用。発明の効果本発明によれば、工業的生産において環境面、安全面で有利な方法で、前記制癌剤の有効成分又はその製造中間体として重要な特定のアミノスチルベン誘導体を効率よく製造することが可能であり、故に医薬品分野等で本発明は産業上極めて有用である。 貴金属触媒の存在下に、下記一般式(1)で示されるニトロスチルベン誘導体と、ギ酸及び/又はギ酸塩とを反応させる工程を含み、貴金属触媒が白金触媒、パラジウム触媒、ルテニウム触媒又はロジウム触媒であることを特徴とする、下記一般式(2)で示されるアミノスチルベン誘導体の製造方法; 但し、当該アミノスチルベン誘導体は塩の形態でもよい。(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、OR4、NO2及びNH2のベンゼン環上の結合位置は任意であることを表す。) R1、R2、R3及びR4の少なくとも一つがメチル基である請求の範囲1記載の方法。 R1、R2、R3及びR4が全てメチル基である請求の範囲2記載の方法。 当該式中、置換ビニル基の結合位置に対して、ベンゼン環上OR4が4位に、NO2及びNH2が3位に結合する請求の範囲1記載の方法。 貴金属触媒が白金触媒又はパラジウム触媒である請求の範囲1記載の方法。 貴金属触媒が白金触媒である請求の範囲1〜5何れか記載の方法。 白金触媒が白金−炭素であり、パラジウム触媒がパラジウム−炭素である請求の範囲5記載の方法。 ギ酸塩がギ酸アンモニウムである請求の範囲1〜7何れか記載の方法。 白金触媒の存在下に、(Z)−3,4,4’,5−テトラメトキシ−3’− ニトロスチルベンとギ酸塩とを反応させた後、(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリン又はその塩を製造する請求の範囲1記載の方法。 パラジウム触媒の存在下に、(Z)−3,4,4’,5−テトラメトキシ−3’− ニトロスチルベンとギ酸塩とを反応させた後、(Z)−2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]アニリン又はその塩を製造する請求の範囲1記載の方法。


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