タイトル: | 特許公報(B2)_ミトコンドリアDNAアッセイの薬理学的応用 |
出願番号: | 2003500289 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12Q 1/68,C12N 15/09,G01N 33/50 |
コート、ヘリーン モンタナー、ジュリオ オショーネシー、マイケル、ブイ. JP 4105626 特許公報(B2) 20080404 2003500289 20020529 ミトコンドリアDNAアッセイの薬理学的応用 ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア 503265094 加藤 朝道 100080816 内田 潔人 100098648 石田 康昌 100080229 コート、ヘリーン モンタナー、ジュリオ オショーネシー、マイケル、ブイ. US 60/293,523 20010529 20080625 C12Q 1/68 20060101AFI20080605BHJP C12N 15/09 20060101ALI20080605BHJP G01N 33/50 20060101ALI20080605BHJP JPC12Q1/68 AC12N15/00 AC12N15/00 AG01N33/50 P C12Q 1/68 C12N 15/00 BIOSIS/WPI(DIALOG) PubMed Science Direct 国際公開第01/035096(WO,A1) 国際公開第99/055845(WO,A1) 国際公開第02/033128(WO,A1) 国際公開第00/026225(WO,A1) 国際公開第00/050043(WO,A1) The Lancet,1991年,Vol.337,pp.508-510 Clinical Therapeutics,2000年,Vol.22, No.6,pp.685-708 Proc. Natl. Acad. Sci. USA,1996年,Vol.93,pp.3592-3597 Antimicrobial Agents and Chemotherapy,1994年,Vol.38, No.8,pp.1824-1828 J. Pediatr.,2001年,Vol.138,pp.748-751 Laboratory Investigation,1997年,Vol.76, No.1,pp.77-87 The Lancet,1999年,Vol.354,pp.1112-1115 Exp. Cel. Res.,1998年,Vol.245,pp.137-145 Mol. Hum. Repro.,1998年,Vol.4, No.7,pp.657-666 18 CA2002000796 20020529 WO2002097124 20021205 2004532043 20041021 20 20040714 引地 進 本発明は、核酸を伴う診断及び治療の分野に関する。 核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTIs)は、HIV感染に対する抗レトロウイルス治療の基礎をなしている。HIV逆転写酵素によって転写される長いウイルスDNA分子へ該阻害剤を組み込むことにより、該阻害剤は、ウイルスの複製を効果的に阻害する。しかしながら、NRTIsは、ヒトDNAポリメラーゼガンマ(POLγ)(Martin et al. 1994)を、従ってミトコンドリアDNA(mtDNA)複製を阻害し、mtDNAの枯渇(減少)及び薬物毒性に繋がりうる(Brinkman et al. 1998、Lewis and Dalakas 1995、Kakuda 2000)。このミトコンドリア毒性(MT)は、乳酸アシドーシス、筋疾患、心筋症、神経障害、肝脂肪症(肝脂肪変性)、ネフローゼ(腎)毒性及び膵炎を含む種々の有害な副作用を引き起こす(Lewis and Dalakas 1995等)。NRTIsによって引き起こされる多種多様な臨床症状は、mtDNAの変異から生じる疾患によって引き起こされる複合症状を暗示している(概観のためにWallace 1999参照)。 ジドブジン誘導性筋疾患に関する初期の研究により、ヒト(Arnaudo et al. 1991)及びマウス(Lewis et al. 1992)の何れに関しても筋肉生検材料から単離された全mtDNAには減少が見られることがわかった。種々の抗HIVヌクレオシドアナログを用いたin vitroでの研究により、NRTIsはヒトリンパ芽球細胞(Chen et al. 1991、Zhang et al. 1994)、CEM細胞(Medina et al. 1994)及びHepG2細胞(Pan-Zhou et al. 2000)のミトコンドリア量を減少するということもわかった。肝臓のmtDNAの大幅な欠失は見られたが、mtDNAの枯渇は見られなかったことが、抗レトロウイルス治療中の乳酸アシドーシスによる死亡例と関連して、最近報告された(Bartley et al. 2001)。MtDNAの枯渇(又は欠失)は、ミトコンドリアRNAを減少し、mtDNAにコードされたタンパク質合成を減少し、及び究極的にはミトコンドリアの機能不全を引き起こしうるということは既に示唆されていた(Lewis et al. 1992)。細胞レベルでは、そのような毒性の結果、酸化的リン酸化、細胞内脂質蓄積及び乳酸蓄積は減少される。生理学的レベルでは、これによって、高乳酸血症(hyperlactatemia)が引き起こされうる。この高乳酸血症は、疲労(倦怠感)、急激な体重減少、脂質異常(変性)(lipid abnormalities)及び肝脂肪症等のミトコンドリア毒性によるその他の症状を併発することも併発しないこともある。慢性高乳酸血症は、恐らく、ヌクレオシドアナログの毒性自体にその原因があるか否かにかかわらず肝臓の乳酸のクリアランスの障害を反映している(Brinkman 2000)。長期間に亘るという抗レトロウイルス治療の特質を考慮すると、最近確認されたこの高乳酸血症症候群は、抗レトロウイルス治療におけるHIV感染患者の数の増加とともに多く見出されるように思われる(Lonergan et al. 2000、Gerard et al. 2000)。その症状、重症度及び頻度は、急性乳酸アシドーシス、即ちしばしば死に至る稀に起こるNRTI副作用の症状、重症度及び頻度とは異なる(Fortgang et al. 1995、Megarbane et al. 2000)。しかしながら、高乳酸血症が乳酸アシドーシスの危険因子であるか否かは未だ不明である。 このNRTI誘導性高乳酸血症に罹患している患者の診断・治療は、依然問題を孕んでいる。例えば、疲労(倦怠感)及びるいそうという毒性の初期症状は、エイズ患者に比較的共通に見られ、かつ病気の進行に類似しうるため、その健康状態の診断は困難でありうる。ミトコンドリア毒性が確認されると、その後の治療は、NRTI治療を打ち切り、患者の健康状態の改善及び血中乳酸レベルをモニタすることになる(Brinkman 2000、Moyle 2000)。ミトコンドリア異常の診断は、筋生検又は肝生検によって行ってもいいが、実際にスクリーニング及びモニタリングのために日常的に行われるものであってはならない。ランダム静脈乳酸(RVLA)の測定値は有用なマーカであるが、その信頼性は、制御するのが困難な外的要因に対するその感受性によって制限される。抗レトロウイルス治療を受けたHIV陽性患者のコホート(群)に関しRVLAをモニタすることにより、継続的なRVLAの測定値は、各被検体間で一致し、かつ正常値を越えることが多いということが実証された(Harris et al. 2000)。更に、異常RVLA、及びスタブジン(D4T)とヒドロキシ尿素とによる治療、並びにD4Tに関する時間の長さの間の重要な相互関係が見出された(Harris et al. 2000)。 しかしながら、RVLAのレベルの上昇は、ヌクレオシド関連性ミトコンドリアの毒性に対し特異的なものではなく、感染のような他の原因を持ちうる。ジドブジン以外のNRTIsで観察されるヌクレオシド関連性毒性に関し入手可能なin vivoでのデータは殆ど存在しない。 1つの局面において、本発明は薬剤治療の毒性のモニタ方法を提供する。この方法は、薬剤による治療を受けている被検体の細胞内のミトコンドリアDNAの相対量を測定することを特徴とする。ミトコンドリアDNA量は、被検体の細胞内の細胞核DNA量に対して測定することができる。DNA量は、例えば、ミトコンドリアDNAの増幅を基準DNAの増幅と比較する定量的PCRのようなPCRによって測定することができる。本発明の方法は、(D4Tのような)ヌクレオシドアナログで治療を受けている患者のような、HIV感染等の疾病に罹患している人間の患者に適用することができる。本発明の他の局面によれば、本発明の方法は、例えば動物モデルの被検体が薬剤による治療を受けているような動物モデルに関する試験化合物のミトコンドリア毒性をモニタするために使用することもできる。アッセイは、例えば、器官生検によって得られる細胞(これは例えば死後に得られるものであってもよい)のような組織から抽出した細胞において行うこともできる。 本発明の1つの局面において、例えば、ヌクレオシド関連性ミトコンドリア毒性(MT)症候を経験している患者においては末梢血単核細胞(PBMCs)からmtDNAが枯渇されることが明らかにされる。従って、静脈血試料からのNRTI関連性ミトコンドリア毒性を検出及びモニタするために、半定量的アッセイが提供される。本発明の他の実施形態によれば、本発明の方法は、細胞のミトコンドリアDNAの相対量が所定のレベルを下回ったとき、D4Tのようなヌクレオシドアナログによる被検体の治療を中断(中止)するステップを含むことができる。この場合、ミトコンドリアDNAの所定のレベルとは、例えば、ミトコンドリアDNAのベースラインレベルの5、10、15、20、25、30又は35%であり、またミトコンドリアDNAのベースラインレベルは、当該被検体が当該薬剤で治療を受ける前に測定されるか、コントロール用の被検体で測定される。 本発明の1つの局面において、末梢血細胞のミトコンドリアDNA(mtDNA)を定量し、以って当該mtDNAレベルが、治療処置の毒性によって引き起こされうるようなミトコンドリア欠乏を示すレベルにあるか否かを決定するアッセイが提供される。本発明は、薬物治療を受けている被検体のような被検体中のミトコンドリアDNAの相対量を決定するアッセイを提供する。ここで、被検体とは、例えば、ヌクレオシド又はヌクレオチドアナログのような核酸前駆体によりHIV感染のための治療を受けている人間の患者とすることができる。本発明のアッセイは、ミトコンドリア配列とゲノム配列のような基準配列との同時増幅(co-amplification)を伴う半定量的又は定量的PCRのようなPCRアッセイを含むこともできる。そのようなアッセイから得られる情報を評価して、被検体の細胞のミトコンドリアDNAと細胞核DNAとの比を求めることもできる。 例えば、そのようなアッセイは、抗レトロウイルス治療を受けているHIV患者において実行することができる。本発明の1つの局面において、抗レトロウイルス治療は、それゆえ、本発明のmtDNAアッセイの結果に応じて修正することができる。本発明の他の局面によれば、ヌクレオシド又はヌクレオチドアナログのような核酸前駆体により治療を受けている患者から得た試料を検査することができる。ここで、ヌクレオシドアナログは、例えば、AZT及びZDV(Retrovir)、ddI(Videx及びVidex EC)、ddC(Hivid)、d4T(Zerit)、3TC(Epivir)、ABC(Ziagen)を含みうる。ヌクレオシドアナログには、修飾を受けた天然のヌクレオシドをすべて含む。ヌクレオシドアナログは、天然ヌクレオシドを代替し、HIVによる新たな細胞への感染中にウイルスDNA鎖の完成を阻止することができる。他の核酸前駆体には、(HPMPCとしても知られる)Cidofovirのようなヌクレオチドアナログが含まれる。ヌクレオシドアナログ及びその他の核酸前駆体は、癌細胞の増殖を阻止するために癌化学療法に使用することもできる。 HIV陽性の患者から得た試料は、本発明の種々の局面において検査することができるが、そのような患者には、ヌクレオシドアナログ治療を受けている患者も含まれる。同様に、癌患者を、本発明の診断アッセイによってモニタすることもできるが、癌患者には、核酸前駆体で治療を受けている癌患者も含まれる。 本発明の種々の局面を説明する種々の実施形態によれば、疲労や急激な体重減少のような抗レトロウイルス薬剤関連性高乳酸血症及びその他のミトコンドリア毒性症候があり、核酸前駆体で治療を受けている患者から得た末梢血細胞においては、ミトコンドリアDNAは枯渇(減少)されることが示されている。この枯渇(減少)は、静脈乳酸レベルの上昇に先立って起ったが、この知見は、高乳酸血症はmtDNAの枯渇の結果であるということと一致する。従って、ある実施形態では、本発明のアッセイは、ミトコンドリア毒性が現れるか又は高乳酸血症を伴う程に重篤な状態になる前に臨床情報を提供することができる。幾つかのケースでは、短時間で血漿中薬剤濃度が減少し、mtDNA/nDNA比が大きくなることさえ示されるが、患者が積極的に治療を受けている間に本発明の検査を実行することができるため有利であることが示される。 抗レトロウイルス治療の中止後、mtDNA/nDNA比の上昇を示す以下に説明する実施例によって明らかにされるように、患者の中には、mtDNAレベルの枯渇(減少)が可逆的であるものもいることが示される。関連する実施例では、これは、正常なVLAレベルへの漸進的復帰が伴っていた。また、実施例では、mtDNAレベルは、HIVポジティブ(陽性)コントロールグループでは、HIVネガティブ(陰性)コントロールグループの場合より著しく低くかったことが示されるが、その差は、前者の場合におけるより低いCD4数では説明することはできなかった。従って、1つの局面において、本発明は、HIV感染示す情報を提供することができる診断方法を提供する。また、HIVポジティブ(陽性)コントロールグループ内では、DNA抽出前の貯蔵は、測定されたmtDNA/nDNA比(データ不掲載)との重要な相関関係を示さなかったということが見出された。ケースによっては、mtDNAレベルが、正常なレベルの凡そ30%〜20%以下に低下すると深刻な症状が起こりうるということが見出された。臨床的処置を提案しうるmtDNA枯渇の他の測定値は、nDNAに対するmtDNAの比が、0.5、0.45、0.4、0.35又は0.3未満である。 他の実施形態によれば、薬物治療は、mtDNA対nDNA比が、本書において決定されるように、コントロール試料に関して測定された0.5、0.45、0.4、0.35又は0.3のような閾値を下回るとき中止(中断)することができる。本発明の方法は、D4Tのような特定のヌクレオシドによる被検体(患者)の治療を中止した後、他のヌクレオシドアナログによる患者の治療を行うことを含むこともできる。或いは、そのような患者を、ミトコンドリア療法剤、即ちミトコンドリア酵素の補因子又は前駆体のようなミトコンドリアにとって有用な成分によって治療することも可能である。ある実施形態によれば、そのようなミトコンドリア療法剤は、例えば、リボフラビン(ビタミンB2)、コエンザイムQ10、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB12、ビタミンK、l−アセチルシステイン及びニコチンアミドからなる群から選択することができる。 他の実施形態によれば、ある時間に亘るmtDNA濃度の変化の割合を求めて、付加的な診断情報を提供することができる。一部の患者に対しては、mtDNAの相対量における比較的急速な減少は、薬物毒性又は病的状態を示していることもありうる。例えば、図3Bに示したように、8〜10日未満の期間におけるnDNAに対するmtDNAの相対量の凡そ50%以上(又は事例によっては40%超)の比較的急速な減少から、患者が結局は薬剤から有害な副作用を受け、従ってより詳細にモニタされる必要があること、最終的には他の治療法に代えるか又は薬剤治療を中止する必要があることを看取することができる。 高乳酸血症の他の研究(Lonergan et al. 2000、Gerard et al. 2000、John et al. 2000)の場合と同様に、患者はすべて、毒性が生じたときに薬剤処置の一部としてD4Tを投与されていた。抗レトロウイルス治療中に測定されたmtDNA/nDNA比は、患者がD4Tを除いたヌクレオシド含有療法を再開したときに観察されたmtDNA/nDNA比に極めて類似しているということがわかった。(表1、図2の患者3、4、5)。従って、本発明の1つの局面において、mtDNAの枯渇の閾値が検出されたときある薬剤による治療を中止し、他の薬剤(による治療)に切換えるという思想が提示される。例えば、患者は、あるヌクレオシドアナログ処置から他のヌクレオシドアナログ処置へ切換えることができる。 乳酸アシドーシスの発病率は、1995年の遡及研究において評価され、NRTIs治療の1000人・年当り1〜2例の範囲にあることがわかった(Fortgang et al. 1995)。しかしながら、腹部症候又は原因不明のアラニントランスフェラーゼの増加を伴う高乳酸血症によって規定される広範な事例についての他の研究により、発病率は、NRTIs治療の1000人・年当り20.9例であると評価された(Lonergan et al. 2000)。本発明の試験対象となったコホート(群)において抗レトロウイルス治療を受けた患者の多くは、軽度から中程度の慢性高乳酸血症を示し、その大部分は、無症候性であった。本発明のアッセイは、そのような患者のミトコンドリア毒性及び慢性高乳酸血症の臨床結果をモニタ及び評価するために使用することができる。 本発明の1つの局面において、mtDNAのコピー数それ自体を決定する必要性を回避し、その代わりに、nDNA配列に対する量のようなmtDNAの相対量の決定を可能にするプロトコールが提供される。ある局面においては、このアプローチは、本発明の診断アッセイを単純化することができる。例えば、図4に示したように、細胞核ゲノム当量を表す数(30〜30,000)が、既知の細胞核ゲノム当量濃度のヒトDNAコントロールで較正することによって求められるようなnDNA増幅基準に割り当てられる。これと同じ数が、ミトコンドリア遺伝子に対する対応する標準曲線(検量線)に任意に割り当てられる(尤も、ミトコンドリア遺伝子のコピー数の計算値を表してはいない)。他のアプローチの1つでは、細胞核ゲノム当量を表す数を、試料の希釈度のみに基づいた、nDNA増幅基準に任意に割り当てることができ(そのため、その数は、細胞核ゲノム当量の相対コピー数を反映しているが、当該当量の絶対値は反映していない)、これら任意の数を同様にmtDNA増幅基準に割り当てることができる。本発明のアッセイの結果は、mtDNA対nDNA比で表すことができ、mtDNAのコピー数の絶対値を求める必要はない。そのような実施形態では、十分なPCRテンプレートを提供することにより増幅のサイクル数を、最少で5〜15の任意の整数から最大で15〜40の任意の整数までのような最も信頼度の大きい結果が得られる範囲に収めることができるDNA試料の初濃度を利用することができるので好ましい。 NA配列の相対存在量を比較する方法は、以下のステップ: a) 第1細胞核コントロール試料及び第2細胞核コントロール試料において細胞核増幅反応条件下で細胞核NA配列の増幅速度を測定し、コントロール細胞核増幅測定値を求めること、但し、該第1及び第2細胞核コントロール試料は、互いに異なる細胞核NA配列濃度を有する; b) 前記コントロール細胞核増幅測定値からコントロール細胞核NA配列データセットを構築し、前記細胞核NA配列の増幅速度及び濃度の間のモデル基準関係を求めること; c) 第1ミトコンドリアコントロール試料及び第2ミトコンドリアコントロール試料においてミトコンドリア増幅反応条件下でミトコンドリアNA配列の増幅速度を測定し、コントロールミトコンドリア増幅測定値を求めること、但し、該第1及び第2ミトコンドリアコントロール試料は、互いに異なるミトコンドリアNA配列濃度を有する d) 前記コントロールミトコンドリア増幅測定値からコントロールミトコンドリアNA配列データセットを構築し、前記ミトコンドリアNA配列の増幅速度及び濃度の間のモデル基準関係を求めること; e) 検査試料において前記細胞核増幅反応条件下で前記細胞核NA配列の増幅速度を測定し、検査試料細胞核増幅測定値を求めること; f) 前記細胞核NA配列の増幅速度及び濃度の間の前記モデル基準関係を、前記検査試料細胞核増幅測定値に適用し、検査試料細胞核NA配列濃度測定値を求めること; g) 検査試料において前記ミトコンドリア増幅反応条件下で前記ミトコンドリアNA配列の増幅速度を測定し、検査試料ミトコンドリア増幅測定値を求めること; h) 前記ミトコンドリアNA配列の増幅速度及び濃度の間の前記モデル基準関係を、前記検査試料ミトコンドリア増幅測定値に適用し、検査試料ミトコンドリアNA配列濃度測定値を求めること; i) 前記検査試料細胞核NA配列濃度測定値と前記検査試料ミトコンドリアNA配列濃度測定値とを比較し、前記検査試料における前記細胞核NA配列に対する前記ミトコンドリアNA配列の相対濃度を求めること を含む。 本発明の他の局面によれば、本発明のアッセイで使用される細胞は、例えば生検によって、心臓、脳、腎臓、脂肪又は肝臓のような種々の組織から得ることができる。 他の実施形態によれば、本発明の診断テストは、病気の診断に使用することができる。例えば、末梢血の試料のような被検体から得た試料中の細胞内のミトコンドリアDNAの相対量の測定は、男性の不妊症、臓器機能不全、A型、B型又はC型肝炎感染、HIV感染、関節炎、神経系疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチンチン関連疾患(ハンチントン病)を含むがこれらには限定されない)のような疾患又は症候(症状)に関する情報を提供することができる。そのような病気の診断は、例えば、当該病気が核酸前駆体のような薬剤によって治療される場合、又は当該病気がそのような薬剤によって引き起こされる場合に行うことができる。 他の局面において、本発明は、本発明の方法で使用する成分(要素)を有するキットを提供する。そのようなキットは、mtDNA配列及びnDNA配列に特異的なPCRプライマーを含む以下に詳細に説明するようなPCR成分を含みうる。また、そのようなキットは、本書において説明するような本発明の方法を実行するための説明書を含むこともできる。 他の実施形態によれば、細胞中のミトコンドリアDNAの相対量を測定するために種々の技術を使用することができる。定量的PCR法は、例えば、以下の文献に開示されており、それら文献(の開示内容)はすべて引用を持って繰り込み本書に記載されているものとみなす:Ginzinger et al.に付与された米国特許第6,180,349号、発行日2001年1月30日、Kurnit et al.に付与された米国特許第6,033,854号、発行日2000年3月7日及びHyland et al.に付与された米国特許第5,972,602号、発行日1999年10月26日。 以下の例で説明するように、ヌクレオシド関連性ミトコンドリア毒性は、血球mtDNA量の著しい減少、即ち治療中断(中止)による可逆的な効果と関連する。アッセイは、例えば抗レトロウイルス治療を受けている患者に関するミトコンドリア毒性をモニタするために提供される。本発明の方法は、他の薬剤の毒性を評価し、及びmtDNAレベルに影響を及ぼす遺伝病を有する患者のミトコンドリアに関する健康状態をモニタするために使用することもできる。 材料及び方法 ミトコンドリア毒性症状のため抗レトロウイルス治療を中止した8人の患者からの長期的血液試料の遡及研究を行った。これらの患者の症状は、中程度の高乳酸血症、疲労(倦怠感)、急速な体重減少及び心肺(機能)検査における低い無酸素性作業閾値を含んでいた。全DNAは、血球から抽出され、細胞核遺伝子もミトコンドリア遺伝子もハイブリダイゼーションプローブを用いたリアルタイムPCRによって増幅・定量された。MtDNAレベルは、細胞核DNAに対するミトコンドリアDNAの比(mtDNA/nDNA)として表した。 試料採取及びDNA抽出 血漿ウイルス量検査に用いたものと同じ血液試料からバフィーコートを収集し、使用するまで−70℃で凍結保存した。血漿ウイルス量は、Amplicor Ultra-Sensitive HIV-1 Monitor assay(ロシュ・モレキュラ・ダイアグノスティック・システムズ、ブランチバーグ、ニュージャージー)を用いて測定した。全DNAは、QIAamp DNA Blood Mini kit(キアゲン、ミシソーガ、オンタリオ、カナダ)を用い、キアーゲンのプロトコールに従って、バフィーコート200μLから抽出し、溶出バッファ200μLに再懸濁した。標準曲線(検量線)を作成するために、24人のHIV陰性の男性ボランティアから同様の試料を採取し、DNAを抽出してプールした。HIV陰性DNAプールの細胞核ゲノム当量(g.eq.)は、既知の細胞核g.eq.濃度の対照キットヒトDNA(ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ、ラヴァル、ケベック、カナダ)により較正することによって定量した。 ランダム静脈乳酸(定量)測定 乳酸(定量)測定のための静脈試料は、フッ化ナトリウム/シュウ酸カリウムチューブで収集した。その際、通常の止血帯を用い、患者に対しては、拳を固めたり手を上下させたりしないこと以外には特に指示しなかった。試験用の基準範囲は、0.7〜2.1mmol/Lである。 定量的リアルタイムPCR MtDNA CCOI遺伝子に対しては、CCOI1F 5'-TTCGCCGACCGTTGACTATT-3'(配列番号1)及びCCOI2R 5'-AAGATTATTACAAATGCATGGGC-3'(配列番号2)プライマーをPCR増幅のために使用し、オリゴヌクレオチド3'−フルオレセイン標識CCOIPR1 5'- GCCAGCCAGGCAACCTTCTAGG-F-3'(配列番号3)及び5'LC Red640標識CCOIPR2 5'-L-AACGACCACATCTACAACGTTATCGTCAC-P-3'(配列番号4)(但し後者の3'末端はリン酸分子が付加されている)をハイブリダイゼーションプローブとして使用した。nDNA ASPOLγ遺伝子に対しては、ASPG3F 5'-GAGCTGTTGACGGAAAGGAG-3'(配列番号5)及びASPG4R 5'-CAGAAGAGAATCCCGGCTAAG-3'(配列番号6)プライマーをPCRのために使用し、オリゴヌクレオチド3'−フルオレセイン標識ASPGPR1 5'-GAGGCGCTGTTAGAGATCTGTCAGAGA-F-3'(配列番号7)及び5'LC Red640標識、3'−リン酸付加ASPGPR2 5'-L-GGCATTTCCTAAGTGGAAGCAAGCA-P-3'(配列番号8)をハイブリダイゼーションプローブとして使用した。リアルタイムPCR反応は、LightCycler FastStart DNA Master Hybridization Probes kit(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ、ラヴァル、ケベック、カナダ)を用いて、各遺伝子に対し独立かつ同一に行った。PCR反応は、溶出バッファ中に、MgCl25mM、プライマー各0.5μM、3'−フルオレセインプローブ0.1μM、5'LC Red640プローブ0.2μM及び1:10希釈のDNA抽出物4μLを含んでいた。PCR増幅は、95℃、10分の変性/酵素活性化を1ステップ行った後、20℃/sの温度変化速度で、95℃/0秒、60℃/10秒、72℃/5秒を45サイクル繰り返すことによって行った。利得(ゲイン)設定は、F1=1、F2=8であり、シングルフルオレセンス獲得は、アニーリングの各ステップの終了時に行った。細胞核g.eq.30、300、3000及び30000の外部標準曲線(検量線)は、LightCyclerの各試行に含まれており、同じ細胞核g.eq.値が、細胞核遺伝子(ASPOLγ)及びミトコンドリア遺伝子(CCOI)の何れにも用いられた。データは、各増幅反応の2次導関数の極大を用い、それをそれぞれの標準曲線(検量線)に当てはめることによって解析した。定量的PCRの結果は、所定の抽出物に対する複製nDNAg.eq.の平均値に対する複製mtDNAg.eq.の平均値の相対比(mtDNA/nDNA)で表した。それら2つの標準曲線(検量線)を作成するために同じ細胞核g.eq.値を用いたという事実によって、比は、凡そ1.0に任意に設定された。 ある実施例では、本発明のPCR法は、リアルタイムPCRを採用することができるが、これは、増幅産物が、LightCycler FastStart DNA Master Hybridization Probes kit(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ、ラヴァル、ケベック、カナダ)を使用する上述のようなハイブリダイゼーションプローブ又は(例えばPCRプロセス中にPCR産物の蓄積を連続的に検出するABI Prism 7700 instrument、アプライド・バイオシステムズ、フォスターシティ、カリフォルニア、USAを使用する)ABI Taqman(登録商標)technologyのような商業的に入手可能な他の技術によって検出される。その他のPCR法及び上記方法のバリエーションを採用することもできる。これらの方法に関しては、以下の米国特許に開示されているが、これら文献の開示内容は引用を持って繰り込み本書に記載されているものとみなす:米国特許第6,180,349号(Ginzinger et al;2001年1月30日)、米国特許第6,033,854号(Kurnit et al;2000年3月7日)、米国特許第5,972,602号(Hyland et al;1999年10月26日)、米国特許第5,476,774号及び第5,219,727号(Wang;1995年12月19日及び1993年6月15日)、米国特許第6,174,670号(Wittwer et al;2001年1月16日)、米国特許第6,143,496号(Brown;2000年11月7日)、米国特許第6,090,556号(Kato;2000年7月18日)、米国特許第6,063,568号(Gerdes et al;2000年3月16日)。 血漿薬剤レベル プロテアーゼ阻害剤(PIs)(indinavir、ritonavir、saquinavir、nelfinavir及びlopinavir)及び非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTIs)(nevirapine、delavirdine及びefavirenz)の濃度は、ウイルス量検査のために収集された保存血漿試料で決定した。この濃度決定は、タンデム型質量分析法(API-2000 LC/MS/MS System, AB/MDS-Sciex, フォスターシティ、カリフォルニア)と組合わせた高速液体クロマトグラフィ(HPLC)(HP 1100, アジレント・パロ・アルト, カリフォルニア)を用いて行った。簡単に説明すると、PIsとNNRTIsは、アセトニトリルによって抽出し、沈殿した血漿タンパクは、Ultrafree-MCフィルタ(ミリポア, ベッドフォード, マサチューセッツ)によって濾過して分離した。濾液中の薬剤は、Zorbax XDB C-18カラム(アジレント・パロ・アルト, カリフォルニア)を用いたHPLCによって部分的に分離し、質量分析器による標準的な方法によって定量した。試料は、血液をやや希釈するクエン酸デキストロース(ACD)チューブで収集したが、最後の一発(フラクション)が分与された時間は不明であった。このため、血漿薬剤レベルは、抗レトロウイルス剤が定期的に服用され、血液循環系に到達していたか否かについての定性評価をなすものとみなした。 統計分析 ウィルコクソン符号付順位検定(signed-rank test)を用いて、対比較による測定値間の差を評価した(表3)。ノンパラメトリック・スピアマンのロー相関係数を用いて、臨床試験とmtDNA/nDNA比との間の相関を評価した。 結果 ミトコンドリア毒性症候(N=8)は、著しく小さいmtDNA/nDNA比(即ちHIVネガティブ(陰性)コントロール(N=24)より70%低く、HIV陽性/抗レトルウイルス治療未処置コントロール(N=47)より45%低い)と関連していた。mtDNA比は、治療中止(中断)後著しく増加した(p=0.016)。mtDNAの減少は、静脈乳酸レベルの増加より先に起こった。同様に、mtDNAの治療後のリバウンドは、正常な乳酸レベルの回復より先に起こったと考えられる。CD4数(p=0.170)又は血小板数(p=0.141)とmtDNA/nDNA比との間には重要な相関は見られなかった。 患者の特徴 ブリティッシュコロンビア大学セントポール病院HIV/AIDS上級センターの薬剤治療プログラムに登録された8人のHIV感染者に関し遡及的研究を行った(表1)。これらの患者は、慢性高乳酸血症、疲労、急激な体重減少及び心肺運動試験中の低い無酸素性作業閾値(データ不掲載)を含むミトコンドリア毒性(MT)症候(症状)を経験していた。患者のうちの2人は、4つのヌクレオシドアナログからなる薬剤治療措置を受け、(他の)2人には、ヒドロキシ尿素を投与し、MT症候が生じた者は全員、その時、D4Tが投与された。この薬剤毒性が生じた結果、患者は全員治療担当医によって抗レトロウイルス治療を中止され、その乳酸レベルがRVLA対時間でモニタされた。治療中止時、患者8人中7人は、その血漿ウイルス量が、検出限界以下の50コピー/mL(血漿)であった。抗レトロウイルス治療中止後、MT症状(症候)は、患者全員について徐々に消滅した。治療不実施の平均時間は、15.6週であり、患者8人中5人は、その後、D4T及びDDIを除いた薬剤による別の薬剤治療措置によって抗レトルウイルス治療を再開し、血漿ウイルス量は検出不能なレベルに達した。患者のうち2人(4と5)は、中止前措置(pre-interruption regimen)の開始前に、肝臓酵素(レベル)を上昇した。他の患者は全員、MT症状が発症する前は、正常な肝臓酵素(レベル)、INR(レベル)及びアルブミンレベルを示した(データ不掲載)。 MtDNA/nDNA比及び抗レトロウイルス治療 8人の患者からの長期的血液試料(患者一人当り6〜17個の異なる試料、22〜28ヶ月間に亘って行った)は、抗レトロウイルス治療中止前、中、後に収集し、そのmtDNA/nDNA比を求めた(図1c、図2;表2)。コントロールとして、24人のHIV陰性の健康な男性と47人のHIV陽性薬剤治療未処置の男性についてmtDNA/nDNA比を求めた(図1a、図1b;表2)。 種々のグループに付いて得られた比を統計的に比較した結果を表3に示した。HIVネガティブ(陰性)コントロールの平均mtDNA/nDNA比は、HIVポジティブ(陽性)/薬剤治療未処置グループの平均mtDNA/nDNA比より著しく大きかった。治療中止前平均(pre-therapy interruption mean)の計算(予測)により、試料はすべて、処方されたPI及びNNRTI血漿薬剤レベルが検出不能であるか、(製薬業者のモノグラフに応じ)>2の標準偏差で平均トラフ(極小)濃度を下回るよう測定されるものを含んでいると考えられた(図2)。治療中止後試料は、時間に関しては特に制限を受けることなく治療の中止後に収集された試料をすべて含む。患者1は、抗レトロウイルス治療不実施の期間中にバフィーコートを入手することができなかったので、この分析から除外された。患者8人のうち5人については、新たな治療措置からヌクレオシドアナログD4T及びDDIを除いた抗レトロウイルス治療を再開した(表1)。その期間に収集した試料はすべて、D4Tなしの平均mtDNA/nDNA比の計算(予測)に含まれていた。 8人のMT患者に対し、治療中止前(但し、最後の薬剤治療措置の開始後少なくとも1ヶ月経過後)の観察された平均mtDNA/nDNA比は、HIVネガティブコントロールグループ又はHIVポジティブ/抗レトロウイルス治療未処置コントロールグループ(p<0.001)について得た平均mtDNA/nDNA比より著しく低かった。完全な治療中止及びD4Tなし治療(これらは、それぞれ、抗レトロウイルス薬をすべて除いた治療及びD4Tを除いた抗レトロウイルス薬治療措置の場合を含む)中に測定された平均mtDNA/nDNA比はいずれも、HIVポジティブ/薬剤治療未処置コントロールに対して得た平均値に極めて類似していた。実際、治療中止前に収集したすべての試料の平均mtDNA/nDNA比は、抗レトロウイルス薬全部なしの場合の平均mtDNA/nDNA比(p=0.016)及びD4Tなしの場合の平均mtDNA/nDNA比(p=0.008)の何れよりも著しく小さかった(表3)。 更に何人かの患者についての臨床試験結果について、当該結果がmtDNA/nDNA比との関連性を示すか否かを求めるために研究した。HIVポジティブ/抗レトロウイルス治療未処置グループの場合(p=0.593)でもMT患者グループの場合(p=0.170)でも、mtDNA/nDNA比とCD4数との間には重要な相関はなかった。血小板は、mtDNA/nDNA比に影響を及ぼしうる細胞当り少数のmtDNAを含む(Shuster et al. 1988)。しかしながら、血小板のデータは、MTグループを除きコントロールグループについては入手できなかったが、(MTグループについて)mtDNA/nDNA比と血小板数(p=0.14)との間には重要な相関はなかった。同様に、MT患者について、mtDNA/nDNA比と、白血球細胞数(p=0.21)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALZ)(p=0.47)又はINRとの間に相関は見られなかった。しかしながら、mtDNA/nDNA比と、AST(p=0.02)及びアルブミンレベル(p=0.02)との間には弱い相関は見られた。 MtDNA及び乳酸レベル 患者1、4及び8では(図2)、mtDNAの枯渇(減少)は、明らかに、高乳酸血症より先に起こっている(乳酸値に関する初期データについては、他の5人の患者については入手できなかった)。同様に、患者4、6及び8では、mtDNAレベルがリバウンド(回復)するのに必要な時間は、高乳酸血症が正常化(0.5〜2.1mmol/Lの範囲)するのに必要な時間と同じ程度かより短かった。幾つかのケースでは、mtDNAのリバウンドは、血漿ウイルス量のリバウンド(データ不掲載)よりも先に起こった。利用できた僅かなmtDNA/nDNAデータに基づいて評価したところ、最大mtDNA半減期は、4.5週間(患者3)〜8週間(患者4)の範囲であり、最大mtDNA倍加時間は、4週間(患者5)〜16週間(患者1)の範囲であった。(患者3、4、7に対して見られるような)治療中の短い中断及び極めて低い循環薬剤レベル(患者4、6、7)もまた、mtDNAレベルの上昇に影響を与えた。利用可能なデータに基づくと、乳酸レベルが正常レベルに回復する前の最大薬剤非投与時間は、4週間(患者8)〜28週間(患者5)の範囲であった。更に、乳酸レベルは、3TC+abacavir(ABA)又はzidovudine(AZT)を含む治療の再開後数ヶ月間正常レベルの範囲内に維持された。抗レトロウイルス薬投与及び非投与治療における静脈乳酸レベル間には、有意な差はなかった(表3)。このことは、治療に関する変化と乳酸レベルにおける変化との間のタイムラグ、即ちmtDNA/nDNA比の変化と乳酸レベルとの間にも見られた遅れ(図2の患者1及び患者4参照)が原因である可能性が大きい。 a) Nは、各グループに含まれる個体の数を表す。MtDNA/nDNA数は、各グループについて平均値を計算する際に考慮された個人データ点の数を表す。 治療実施(on therapy)データは、1ヶ月以上前から行われている最後の治療措置を患者が受けている間に収集されたデータを意味する。 治療不実施(off therapy)は、如何なる抗レトロウイルス薬による治療を受けていないことを意味する。 D4Tなし(off D4T)は、如何なる抗レトロウイルス薬による治療を受けていないこと及び/又はD4Tを含まないARV治療を受けていることを意味する。 a) ウィルコクソン符号付順位検定(Wilcoxon signed-rank test)により求めた。 1つの局面において、本発明のアッセイは、ミトコンドリア障害を特徴とする臓器機能不全(障害)に関する情報を提供するために死後組織に対しても使用することができるということが見出された。この実施例では、組織の死後分析は、死因と高い関連性がある。死因が乳酸アシドーシス及び肝臓脂肪症の場合、mtDNA/nDNA比は、HIV+及びHIV−のコントロール試料と比べると肝臓では減少していた。腎機能不全が死に伴っている場合、mtDNA/nDNA比は、コントロールと比べると腎臓では著しく減少していた。 引用文献 以下の文献は、引用を持って本書に繰り込まれたものとみなす。 Arnaudo E, Dalakas M, Shanske S, Moraes CT, DiMauro S, Schon EA. Depletion of muscle mitochondrial DNA in AIDS patients with zidovudine-induced myopathy. Lancet 1991; 337:508-510. Bartley PB, Westacott L, Boots RJ, Lawson M, Potter JM, Hyland VJ, et al. Large hepatic mitochondrial DNA deletions associated with L-lactic acidosis and highly active antiretroviral therapy. AIDS 2001; 15:419-420. Berger A, Bruschek M, Grethen C, Sperl W, Kofler B. Poor storage and handling of tissue mimics mitochondrial DNA depletion. Diagn Mol Pathol 2001; 10:55-59. Brinkman K: Editorial response: Hyperlactatemia and hepatic steatosis as features of mitochondrial toxicity of nucleoside analogue reverse transcriptase inhibitors. Clin Infect Dis 2000; 31:167-169. Brinkman K, Smeitink JA, Romijn JA, Reiss P. Mitochondrial toxicity induced by nucleoside-analogue reverse transcriptase inhibitors is a key factor in the pathogenesis of antiretroviral-therapy-related lipodystrophy. Lancet 1999; 354: 1112-1114. Brinkman K, Hadewynch JM, ter Hofstede HJM, Burger DM, Smeitink JAM, Koopmans PP. Adverse effects of reverse transcriptase inhibitors: mitochondrial toxicity as common pathway. AIDS 1998; 12:1735-1744. Chen C-H, Vazquez-Padua M, Cheng Y-C. Effect of anti-human immunodeficiency virus nucleoside analogues on mitochondrial DNA and its implication for delayed toxicity. Mol Pharmacol 1991 ; 39:625-628. Fortgang IS, Belitsos PC, Chaisson RE, Moore RD. Hepatomegaly and steatosis in HIV-infected patients receiving nucleoside analog antiretroviral therapy. Am J Gastroenterol 1995; 90:1433-1436. Fouty B, Frerman F, Reeves R. Riboflavin to treat nucleoside analogue-induced lactic acidosis. Lancet 1988; 352:291-292. Gerard Y, Maulin L, Yazdanpanah Y, de la Tribonniere X, Amiel C, Maurage CA, et al. Symptomatic hyperlactatemia: an emerging complication of antiretroviral therapy. AIDS 2000; 14:2723-2730.Haas RHA. Comparison of genetic mitochondrial disease and nucleoside analogue toxicity. Ann NY Acad Sci 2000; 918:247-261. Harris M, Tesiorowski A, Chan K, Hogg R, Rosenberg F, Chan Yan C, et al. Lactic acidosis complicating antiretroviral therapy: frequency and correlates. Antiviral Ther 2000; 5(Suppl 2): 31 (abstract #34). Harris M, Tesiorowski A, Thompson C, Kiess M, Rosenberg F, Chan Yan C, et al. Antiviral Ther 2000 ; 5(Suppl 2): 31 (abstract#35). John M, Moore CB, James IR, Nolan D, Upton RP, McKinnon EJ, et al. Chronic hyperlactatemia in HIV-infected patients taking antiretroviral therapy. AIDS 2001; 15:717-723. Kakuda TN. Pharmacology of nucleoside and nucleotide reverse transcriptase inhibitor-induced mitochondrial toxicity. Clin Ther 2000; 22(6):685-708. Kakuda TN, Brundage RC, Anderson PL, Fletcher CV. Nucleoside reverse transcriptase inhibitor-induced mitochondrial toxicity as an etiology for lipodystrophy. (1999) AIDS 1999; 13:2311-2312. Lewis W, Dalakas MC. Mitochondrial toxicity of antiviral drugs. Nature Med 1995; 1:417-422. Lewis W, Gonzalez B, Chomyn A, Papoian T. Zidovudine induces molecular, biochemical, and ultrastructural changes in rat skeletal muscle mitochondria. J Clin Invest 1992; 89:1354-1360. Lonergan JT, Behling C, Pfander H, Hassanein TI Mathews WC. Hyperlacatatemia and hepatic abnormalities in 10 human immunodeficiency virus-infected patients receiving nucleoside analogue combination regimens. Clin Infect Dis 2000; 31:162-166. Martin JL, Brown CE, Matthews-Davis N Reardon JE. Effects of antiviral nucleoside analogs on human DNA polymerases and mitochondrial DNA synthesis. Antimicrob Agents Chemother 1994; 38:2743-2749. Medina DJ, Tsai C-H, Hsiung GD, Cheng Y-C. Comparison of mitochondrial morphology, mitochondrial DNA content, and cell viability in cultured cells treated with three anti-human immunodeficiency virus dideoxynucleosides. Antimicrob Agents Chemother 1994 ; 38:1824-1828. Megarbane B, Brivet F, Guerin JM, Baud FJ. Acidose lactique et defaillance multi-viscerale secondaire aux therapeutiques antiretrovirales chez les patients infectes par le VIH. La Presse Med 2000; 40:2257-2264. Moraes CT, Kenyon L, Hao H. Mechanisms of human mitochondrial DNA maintenance: The determining role of primary sequence and length over function. Mol Biol Cell 1999, 10:3345-3356. Moyle G. Clinical manifestation and management of antiretroviral nucleoside analog-related mitochondrial toxicity. Clin Ther 2000; 22:911-936. Pan-Zhou X-R, Cui L, Zhou X-J, Sommadossi J-P, Darley-Usmar VM. Differential effects of antiretroviral nucleoside analogs on mitochondrial function in HepG2 cells. Antimicrob Agents Chemother 2000; 44:496-503. Shadel GS, Clayton DA. Mitochondrial DNA maintenance in vertebrates. Ann Rev Biochem 1997; 66:409-435. Shuster RC, Rubenstein AJ, Wallace DC. Mitochondrial DNA in anucleate human blood cells. Biochem Biophys Res Commun 1988; 155:1360-1365. Tang Y, Schon EA, Wilichowski E, Vazquez-Memije ME, Davidson E, King MP. Rearrangements of human mitochondrial DNA (mtDNA): New insight into the regulation of mtDNA copy number and gene expression. Mol Biol Cell 2000; 11:1471-1485. Wallace DC. Mitochondrial disease in man and mouse. Science 1999; 283:1482-1488. Zheng H, Cooney DA, Sreenath A, Zhan Q, Agbaria R, Stowe EE, Fornace AJ and Johns DG. Quantitation of mitochondrial DNA in human lymphoblasts by a competitive polymerase chain reaction method: application to the study of inhibitors of mitochondrial DNA content. Mol Pharmacol 1994; 46(6):1063-1069. 結び 本発明の種々の実施形態を本書に開示したが、本発明の技術的思想の範囲内において当業者の通常の知識に基づいてなしうる変形・修正は多々ある。そのような修正には、同一の結果を実質的に同一の態様により達成するため、本発明の何れかのアスペクト(局面)に対応する既知の均等物による置換を含む。本書において、用語「含むこと(comprising)」は、実質的に「を含むが、それ(それら)に限定されない(including, but not limited to)」という言い回しと等価な非限定型表現として使用され、用語「含む(comprise)」は、それに対応する(動詞的)意味を有する。本書における文献の引用は、そのような文献に記載された発明が本発明に対する従来技術であることを自認したものとして理解すべきではない。本書において引用した特許及び特許出願を含むがそれらに限定されないすべての刊行物は、あたかも個々の刊行物がそれぞれ明確かつ各別に引用を持って本書に繰り込まれることを指示されかつあたかも完全に本書に記載されているかのように、引用を持って繰り込み本書に記載されたものとみなす。本発明は、実質的に上述し、実施例及び図面を参酌することにより理解されるあらゆる実施形態及び変形形態を含む。A)HIV陰性の男性、B)HIV陽性/薬剤治療未処置の男性(PI/NNRTIは血漿試料中では検出されなかった)、C)HIV陽性/MT症候(症状)患者に関するPBMCのmtDNA/nDNA比のグラフ。黒色のバーは、抗レトロウイルス治療の間に測定された最少mtDNA/nDNA比を表しており、灰色のバーは、最初の抗レトロウイルス治療を中断した後到達した最大比を表している。MT症候を有する患者に関する、時間に対する静脈内乳酸レベル(左側の縦軸)及びmtDNAレベル(右側の縦軸)及び抗レトロウイルス薬剤処置(底部のバー)の長期間分析。バーは、患者が、MTを引き起こす薬剤処置を受けているときは濃灰色、抗レトロウイルス薬がすべて除去されているときは白色、D4Tを含まない新たな処置を受けているときはハッチングによって表されている(表1参照)。この抗レトロウイルス薬剤のデータは、医療カルテ情報、薬剤処方日及び血漿薬剤レベルに基づいている。薄い灰色の領域は、PI及び/又はNNRTIに対する血漿薬剤レベルが(製薬業者のモノグラフに応じ)>2の標準偏差で平均トラフ(極小)濃度を下回って測定された試料を示している。なお、明瞭化及び簡略化のため、時間は、試料を採取した特定の日で表わされている。スタブジン(d4T)、ジダノシン(ddI)及びエファビレンズ(EFV)による抗レトロウイルス治療処置を受けている患者に対する、日で示された時間変化(横軸)に対するmtDNAレベルの長期間分析(左側の縦軸はmtDNA/nDNA比)。A)は、有害な副作用がなかった2人の患者についてのグラフであり、B)は、有害な副作用(高乳酸血症、体重減少、+/−末梢神経障害)が生じた3人の患者についてのグラフである。白抜きの記号は、治療を行っている状態を意味し、黒塗りの記号は、有害な副作用のため治療を中断している状態を意味する。丸印で表された患者もヒドロキシ尿素が投与されている。HIV陰性の男性のボランティアからのプールDNA抽出物の段階希釈を用いて行った、細胞核遺伝子ASPOLG及びミトコンドリア遺伝子CCOIに対し求められた一般的なライトサイクラーを用いたリアルタイムPCRの標準曲線(検量線)。細胞核遺伝子に対する標準曲線(検量線)に示された数(30〜30,000)は、各試行に含まれる細胞核ゲノム当量の数を示している。これと同じ数が、ミトコンドリア遺伝子に対する標準曲線(検量線)にも当てはめられた(尤も、それらは、ミトコンドリア遺伝子の計算によるコピー数は表していない)。HIV陰性DNAプールの細胞核ゲノム当量含量は、(例えばロッシュ・アプライド・サイエンス、ラヴァル、ケベック、カナダから入手可能であるもののような)細胞核ゲノム当量濃度が既知のコントロール用のヒトDNAによって較正することにより求められた。HIVに感染していない男性(平均値±標準偏差=1.28±0.38、N=24)のグループと、HIVに感染した無症候性/抗レトロウイルス治療未処置の男性(血漿試料中には検出可能なPI/NNRTIは不存在)(0.72±0.19、N=47)のグループと、HIV感染/抗レトロウイルス治療されたミトコンドリア毒性の症候性患者のグループとの間のmtDNA/nDNA比の比較箱型図。3番目のグループは、更に、治療が行われているグループ(0.41±0.08、N=8)と治療が行われていないグループ(0.74±0.13、N=7)に対するmtDNA/nDNA比が示されている。(上下に伸びる)直線は、各グループ内で観察された最大及び最少mtDNA/nDNA比を示し、箱の(上下の)辺は、25%及び75%四分位値を示し、(箱の)真中の直線は、平均値を示し、黒塗りの正方形は、平均mtDNA/nDNA比示している。 核酸前駆体薬剤の毒性をインビトロでモニタするための方法であって、 前記薬剤により治療を受けている被検体からの末梢血試料中の細胞内の細胞核DNAの量に対するミトコンドリアDNAの相対量を測定することを含むこと を特徴とするモニタ方法。 細胞核DNAに対するミトコンドリアDNAの比がベースライン比の0.5の所定レベルを下回ったか否かを求めるステップを更に含むこと、該ベースライン比は、前記被検体が前記薬剤で治療される前に測定されるか又はコントロール用の被検体において測定されること を特徴とする請求項1に記載のモニタ方法。 前記所定レベルは、前記ベースライン比の0.45であること を特徴とする請求項2に記載のモニタ方法。 前記所定レベルは、前記ベースライン比の0.40であること を特徴とする請求項2に記載のモニタ方法。 前記所定レベルは、前記ベースライン比の0.35であること を特徴とする請求項2に記載のモニタ方法。 前記所定レベルは、前記ベースライン比の0.30であること を特徴とする請求項2に記載のモニタ方法。 DNAの量は、PCR法によって測定されること を特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のモニタ方法。 前記PCR法は、定量的PCR法であると共に、前記ミトコンドリアDNAの増幅は、基準DNAの増幅と比較されること を特徴とする請求項7に記載のモニタ方法。 前記PCR法は、リアルタイムPCRであると共に、増幅産物は、ハイブリダイゼーションプローブによって検出されること を特徴とする請求項7に記載のモニタ方法。 前記薬剤は、ヌクレオシド又はヌクレオチドアナログであること を特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載のモニタ方法。 前記ヌクレオシドアナログは、AZT、ddI、ddC、d4T、3Tc、Abacavir及びD4Tからなる群から選択されること を特徴とする請求項10に記載のモニタ方法。 前記ヌクレオシドアナログは、D4Tであること を特徴とする請求項10に記載のモニタ方法。 前記ヌクレオシドアナログは、Tenofovir及びCidofovirからなる群から選択されること を特徴とする請求項10に記載のモニタ方法。 前記薬剤は、逆転写酵素阻害剤であること を特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載のモニタ方法。 前記被検体は、人間の患者であること を特徴とする請求項1〜14の何れか一項に記載のモニタ方法。 前記被検体は、非ヒト動物であること を特徴とする請求項1〜14の何れか一項に記載のモニタ方法。 前記被検体は、HIVに感染していること を特徴とする請求項15に記載のモニタ方法。 前記毒性による病状は、筋疾患、心筋症、神経障害、肝脂肪症(肝脂肪変性)、ネフローゼ(腎)毒性、膵炎、酸化的リン酸化減少、乳酸アシドーシス、脂質異常(変性)、高乳酸血症、心肺(機能)検査における低い無酸素性作業閾値、疲労、及び急激な体重減少からなる群から選択されること を特徴とする請求項1〜17の何れか一項に記載のモニタ方法。配列表