タイトル: | 特許公報(B2)_インフルエンザウイルスの免疫学的測定方法 |
出願番号: | 2003406428 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 33/543,G01N 33/569,G01N 33/53 |
神野 英毅 大代 京一 山田 泰史 JP 4131850 特許公報(B2) 20080606 2003406428 20031204 インフルエンザウイルスの免疫学的測定方法 アークレイ株式会社 000141897 矢野 寿一郎 100080621 神野 英毅 大代 京一 山田 泰史 20080813 G01N 33/543 20060101AFI20080724BHJP G01N 33/569 20060101ALI20080724BHJP G01N 33/53 20060101ALI20080724BHJP JPG01N33/543 581DG01N33/543 581HG01N33/569 LG01N33/53 D G01N 33/48−98 国際公開第01/096595(WO,A1) 国際公開第02/006456(WO,A1) 特開2002−277472(JP,A) 特開平02−168162(JP,A) 国際公開第03/054545(WO,A1) 国際公開第01/057227(WO,A1) 特開昭55−030656(JP,A) 特表2001−511148(JP,A) 特開昭64−031051(JP,A) 2 2005164496 20050623 8 20051215 海野 佳子 本発明は、免疫学的測定方法を用いたインフルエンザA型およびB型ウイルスの定量的な検出方法であり、インフルエンザA型およびB型ウイルスの鑑別診断に利用可能となる技術に関するものである。 インフルエンザは、主にA型およびB型インフルエンザウイルスの感染によって引き起こされる。特に小児では肺炎や脳炎・脳症といった重篤な合併症をきたすこともあり、早期の鑑別診断が必要とされている。 インフルエンザウイルスの分離同定には従来からMDCK(Madin−Darby canine kidney)細胞を用いたウイルス培養法と、赤血球凝集抑制試験(HI試験)とで行われてきた。しかし、培養だけで数日を要することや、臨床現場で簡易にできる方法ではないため、主に流行株の把握など衛生学的な用途に限定使用されている。 一方、最近の臨床においてインフルエンザウイルスの検出には、抗原抗体反応を利用した簡易酵素免疫測定法(以下簡易EIA法、例えば特許文献1を参照)や、イムノクロマト法を原理とする迅速診断方法およびキット(例えば非特許文献1など)が普及してきた。簡易EIA法は、抗体を固定化したメンブランフィルターなどの固相に抗原を含む検体を反応させたあと酵素標識抗体を反応させ、固相に結合した酵素量を、発色基質を用いて、視覚化して検出するものである。イムノクロマト法は、抗体を固定化した金属コロイドや着色ラテックス粒子と抗原を含む検体を同時に展開することにより、展開メンブランの抗体固定化部位に抗原と着色粒子が結合することにより発色、視覚化し、検出するものである。これらの方法は、特殊な技能を必要とせず、臨床現場で簡単に検出方法として用いることができる上、15分程度の短時間にウイルスの有無を判定することができる。 これらの方法では、インフルエンザウイルスのA型またはB型に特異的な抗体を用いることにより、1回の測定でA型かB型かの鑑別も可能になった。そして、治療において最適な抗インフルエンザウイルス剤を選択することができるようになった。 そして、自動分析装置による定量的な自動測定に適する方法としてラテックス免疫比濁法が知られている(例えば、特許文献2など)。 ラテックス免疫比濁法は、抗体(または抗原)を固定化したラテックスと検体中の抗原(または抗体)を混合した時に生じる凝集度合いを光学的に測定する方法である。この方法は検体、反応用緩衝液と抗体感作ラテックス試薬(または反応用緩衝液と抗体感作ラテックス試薬を同一にした試薬)を自動分析装置にセットして自動的に測定することができ、ホモジニアスイムノアッセイであるためにEIA法とは違ってB/F分離の必要がない。よって簡易な分注機構と分光光度計の性能を備えた装置での測定が可能となり、検体中の抗原(または抗体)量に比例した吸光度シグナルが得られることから迅速、定量的に測定することに適している。臨床検査ではC反応性蛋白などの血清中成分の定量時に一般的に用いられている方法である。特開2001−124775号公報特公平6−092969号公報感染症学雑誌(社団法人 日本感染症学会) 第75巻第9号792−799(2001年)「イムノクロマトグラフィー法によるA,B型インフルエンザウイルス迅速診断キットの検討」 しかしながら、簡易EIA法やイムノクロマト法は簡便、迅速性に優れているものの定量性はなく、その測定法での最低検出感度を境にして陽性か陰性かだけを判定する所謂定性的な測定法である。このため、その判定結果から検体中のウイルス量が多いか少ないかまで判断することはできない。 ウイルス量を定量的に測定することができれば、臨床症状と合わせて判断することによって、検体中のウイルス量が多い場合はその患者の感染力が高いことが予想されるし、ウイルス量が少ない場合は感染の末期であることも予想しやすくなり、治療方針に役立てることができる。また、臨床症状と乖離してウイルス量が少ない場合には、検体採取の手技的な問題を疑うこともできる。 さらに、簡易EIA法やイムノクロマト法は少数の検体を処理するには適しているが、多数の検体を同時にスクリーニング処理しようとした場合は、操作にかかる手間が非常に多くかかってしまう。また、測定者の目でシグナルを判定する必要があるため、陽性か陰性かの境界付近では測定者によって判定基準が異なることが原因で違う結果を出してしまうことが問題となる。 EIA法には96穴マイクロプレートとマイクロプレートリーダーを用いることで、多数の検体を自動的に定量的で処理可能な方法もあるが、標識抗体や酵素基質液など複数試薬を添加する必要がある上に、プレートの洗浄も加わって、いくつもの工程が必要になる。このため、測定には数時間を要することになり、臨床現場で求められる簡易で迅速な測定には向いていない。 このような問題を踏まえた上で、簡便性、迅速性に優れ、定量も可能なインフルエンザウイルスの測定方法が期待されていた。 そこで本発明は、インフルエンザA型またはB型ウイルスに対する抗体を不溶性担体粒子に担持させ、インフルエンザウイルスと抗体との抗原抗体反応によって生じた不溶性担体粒子の凝集度合いを測定することによって、インフルエンザウイルスを定量するものである。抗原としては、インフルエンザA型またはB型ウイルスの核蛋白を用いることが好ましい。 また、本発明のもうひとつの主題は、インフルエンザA型またはB型ウイルスの核蛋白を抗原とし、該抗原に対する抗体を不溶性担体粒子に担持させ、抗原抗体反応によって生じた不溶性担体粒子の凝集度合いを測定することによって、インフルエンザウイルスを検出または定量するものであり、抗原の抽出処理にN−D−グルコ−N−メチルアルカンアミド類を用いるものである。 自動分析装置による定量的な自動測定に適する方法としてラテックス免疫比濁法をもちいることができる。ラテックス免疫比濁法は、検体中の抗原濃度に比例して抗体感作ラテックスが抗原抗体反応し、ラテックスが架橋して生じる凝集の程度を吸光度(濁度)変化として測定する方法である。よって、ラテックス免疫比濁法による反応の測定は一般的な分光光度計でも測定することができる。特に、多数の検体を自動的に測定するためには、自動分析装置{日立計測器社製「日立7070」(商品名)、日本電子社製「BioMajesty」(商品名)など}を用いるのが好ましい。また、アークレイ社製の「スポットケム−IM」(商品名)のように、小型で安価な自動分析装置でも測定できるため、開業医などの小規模施設でも測定可能である。 一例として、「スポットケム−IM」(商品名)は、3つの光学セルと6つの試薬ウェルを備える専用カートリッジに試薬をあらかじめ入れておいて、測定時そのカートリッジに検体を入れて装置にセットしスタートするだけで、自動的に測定結果を出力する自動分析装置である。 インフルエンザA型およびB型ウイルス測定試薬をあらかじめ一つのカートリッジの中に入れておいたものを提供することにより、測定者は試薬をあらかじめ準備する必要もなく、検体を入れた一つのカートリッジを装置にセットするだけで簡便にA型とB型ウイルスの測定を同時に行うことが可能になる。 インフルエンザウイルスを検出する方法としてラテックス免疫比濁法に代表されるような不溶性担体粒子を用いた免疫法を適用することによって、簡易EIA法やイムノクロマト法と同等の簡便性に加え、マイクロプレートを用いたEIA法のような定量性も兼ね備えた方法を提供することが可能になる。得られた判定結果から検体中のウイルス量を定量的に測定することができ、臨床症状と合わせて判断することによって、例えば、検体中のウイルス量が多い場合はその患者の感染力が高いことの予想要因として利用される。逆にウイルス量が少ない場合は、感染の末期であることが予想されて治療方針に役立てられる他に、検体採取の手技的な問題を疑うこともできる。 インフルエンザウイルスのA型とB型の鑑別は核蛋白に対して特異的な抗体を用いることによって行う。ウイルス表面蛋白のヘマグルチニンなどは抗原性が次々と変異するために、一定の抗ヘマグルチニン抗体を用いた場合では、流行したウイルスの亜型によって反応性が異なってしまい、場合によっては反応しなくなる可能性がある。しかし核蛋白に対する抗体を用いれば、核蛋白はA型やB型を分類する際の基本となる抗原性を維持しており亜型の種類に関わらず一定の反応性を示すため、A型とB型の鑑別に適している。 しかし、核蛋白はウイルス粒子の脂質二層膜からなるエンベロープの内部に局在し、ウイルス表面には存在しないため、何らかの方法で核蛋白を抽出する必要がある。その方法には超音波処理や凍結融解を繰り返すことによる物理的なウイルス粒子の破壊と、界面活性剤などによる化学的な処理方法がある。物理的な破壊方法は特殊な器材が必要なことに加えて手間がかかることから臨床での使用には適していない。一方、化学的な方法では一般的に「Tween20」(商品名)のような非イオン性界面活性剤などの抽出剤で抽出する必要がある。EIA法やイムノクロマト法など従来の方法では、抗原の抽出に界面活性剤の「Tween20(一般名称:Polyoxyethylene Sorbitan Monolaurate)」を用いているが、「Tween20」をそのままラテックス免疫比濁法に適用した場合、抗原に対する反応性が著しく低下してしまうことがわかった。そのため、ラテックス免疫比濁反応に影響しない抽出剤が望まれていた。 そこで本発明者らは各種の界面活性剤を調べたところ、N−D−グルコ−N−メチルアルカンアミド類が好ましく、特にn−Octanoyl−N−methylglucamide(商品名:MEGA−8)が、ラテックス免疫比濁反応の反応性に及ぼす影響が少なく、かつ抽出効果もあることを発見した。 これらの抽出剤はラテックス免疫比濁法に適用することができるが、核蛋白を抗原とする他の免疫学的測定方法であれば用いることができる。例えばEIA法やイムノクロマト法の既存のインフルエンザウイルス検出法にも適用することが可能である。 インフルエンザA型およびB型ウイルスの鑑別測定にラテックス免疫比濁法を適用することによって、簡便な装置で迅速に定量的な測定結果を得ることができる。[実施形態] 本発明に用いる不溶性担体粒子としてはポリスチレン製のラテックス粒子が一般的であるが、ポリスチレンに限らずポリプロピレン、ポリエチレン、ゼラチン粒子、金属コロイドなど抗体を感作できる粒子であれば良い。 本発明に用いる抗インフルエンザA型ウイルス抗体および抗インフルエンザB型ウイルス抗体は特異的な凝集反応が得られるものであればモノクローナル抗体に限らず、ポリクローナル抗体でも良く、由来動物種はマウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ニワトリなどどれでも良い。 (1)抗インフルエンザA型抗体感作ラテックスの調製 抗インフルエンザA型モノクローナル抗体(Fitzgerald社製)を1mg/mLになるように調製したPBS(0.9%NaClを含む50mMリン酸緩衝液pH7.4)0.5mLと、1%(w/v)ポリスチレンラテックス粒子(積水化学社製、平均粒子径0.4μm)0.5mLを混合し、37℃で1時間インキュベートすることによって抗体をラテックスに感作した。そこにBSA(Sigma社製、ウシ血清アルブミン)を1%となるように添加して37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った。ブロッキングされた抗体感作ラテックスをリン酸緩衝液で洗浄したあと、0.1%(w/v)になるようラテックス分散緩衝液(50mM Tris−HCl pH8.4、0.1%BSA、0.1%NaN3)に分散させて、ラテックス試液とした。 (2)抗インフルエンザB型抗体感作ラテックスの調製 抗体として、抗インフルエンザB型モノクローナル抗体(Fitzgerald社製)を用いること以外は、先記の抗インフルエンザA型抗体感作ラテックスの調製と同様に実施した。 (3)インフルエンザA型ウイルスの測定 抗原となるインフルエンザA型ウイルスはFitzgerald社製の精製ウイルスを用いて、検体希釈液(1%BSAと0.1%NaN3を含むPBS pH7.4)でウイルス濃度が10μg/mLと50μg/mLになるよう希釈調製した。さらに測定の直前に各濃度のウイルス検体を検体抽出液(1%MEGA−8、0.5%BSA、0.9%NaCl、0.1%EDTA2Naを含む50mM Tris−HCl pH8.4の緩衝液)で10倍希釈してから測定に用いた。ウイルス濃度0の検体としては検体希釈液を検体抽出液で10倍希釈したものを用いた。 反応用緩衝液としては、1.6%ポリエチレングリコール20000(ナカライ社製)、1%BSA、0.9%NaCl、0.1%EDTA2Na、0.1%NaN3を含む200mM Tris−HCl(pH8.4)緩衝液を用いた。吸光度の測定には自動分析装置BioMajesty−8(日本電子社製)を用いて、以下の様に試薬と検体とを混合し、5分間の吸光度(測定波長596nm)変化量を測定した。 S(検体) : 18μL R1(反応用緩衝液) : 36μL R2(ラテックス試液) : 36μL 結果を表1に示す。 以上のように、ウイルス濃度に比例して反応していることから、定量的にウイルス量を測定できることが確認できた。 (4)抽出剤の比較 前項インフルエンザA型ウイルスの測定における検体抽出液の1%MEGA−8を0.1%MEGA−8、 0.1%MEGA−9(n−Nonanoil−N−methylglucamide)、0.1%MEGA−10(n−Decanoyl−N−methylglucamide)、1%Tween20、0.1%Tween20、1%TritonX−100、0.1%TritonX−100に代えて、それ以外は全く同様の方法でウイルス濃度10μg/mLを測定した。結果は1%MEGA−8で得られた吸光度差を100としたときの各抽出剤での吸光度差を表した。 結果を表2に示す。 以上のように、Tween20やTritonX−100では0.1%でも反応に影響があるため、MEGA−8の場合の1/4程度しかシグナルが得られていない。一方、MEGA−9、MEGA−10は0.1%ではMEGA−8とほとんど同等のシグナルが得られているが、0.5%以上では半分以下のシグナルになった。 なお、データには示していないが、ニワトリ卵でウイルス培養した漿尿を検体として、これらの抽出剤を含まない緩衝液(0.5%BSA、0.9%NaCl、0.1%EDTA2Naを含む50mM Tris−HCl pH8.4)で処理した場合、ウイルスが検出されなかったのに対して、0.1〜1%のMEGA−8、MEGA−9、MEGA−10ではウイルスが検出できたことから、これらの抽出液ではウイルスの抽出ができていると考えられた。 (5)インフルエンザB型ウイルスの測定 反応用緩衝液として200mM Tris−HCl(pH8.4)、 1.5%ポリエチレングリコール20000、 1%BSA、 0.9%NaCl、 0.1%EDTA2Na、 0.1%NaN3を用いた。またインフルエンザB型ウイルスはCapricorn社製の精製ウイルスを用いて、検体希釈液(1%BSAと0.1%NaN3を含むPBS pH7.4)で必要な濃度に希釈した。吸光度の測定はA型の測定と同様に行った。 結果を表3に示す。以上のように、ウイルス濃度に比例して反応していることから、定量的にウイルス量を測定できることが確認できた。 インフルエンザA型またはB型ウイルスの核蛋白を抗原とし、該抗原に対する抗体を不溶性担体粒子に担持させ、抗原抗体反応によって生じた不溶性担体粒子の凝集度合いを測定することによって、インフルエンザウイルスを定量する方法であって、前記抗原を、N−D−グルコ−N−メチルアルカンアミド類を用いて抽出し、抽出した前記抗原と、前記抗体を担持させた前記不溶性担体粒子との抗原抗体反応によって生じた前記不溶性担体粒子の凝集度合いを、前記N−D−グルコ−N−メチルアルカンアミド類の存在下で吸光度を測定することによって、インフルエンザウイルスを定量することを特徴とするインフルエンザウイルスの免疫学的測定方法。 前記抗原の抽出処理および吸光度の測定に用いる前記N−D−グルコ−N−メチルアルカンアミド類として、n−Octanoyl−N−methylglucamideを用いることを特徴とする請求項1に記載のインフルエンザウイルスの免疫学的測定方法。