生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_反射電子を利用した元素および化合物の状態分析方法
出願番号:2003380496
年次:2005
IPC分類:7,G01N23/20


特許情報キャッシュ

長田 義男 JP 2005114699 公開特許公報(A) 20050428 2003380496 20031006 反射電子を利用した元素および化合物の状態分析方法 長田 義男 503412698 長田 義男 7G01N23/20 JPG01N23/20 2 書面 22 2G001 2G001AA03 2G001BA15 2G001CA03 2G001FA25 2G001FA30 2G001GA06 2G001JA13 2G001KA01 2G001KA12 2G001NA06 2G001NA12 2G001NA13 2G001NA17 2G001NA18 本発明は、測定対象に電子線を試料に対して垂直に照射し、その測定対象から反射される電子を利用するエレクトロン・プローブ・マイクロアナライザー(Electron probe microanalyzer;以下「EPMA」と称する)による試料の極表面における状態分析法に係わり、例えば、アルミニウム合金中に存在する同じ元素で構成される化合物形態の異なる微小化合物の判別に適した状態分析法に関する。 例えば、Al材料において、Al−Fe金属間化合物として、Al6FeとAl3Fe、Al−Cuの金属間化合物として、Al2CuとAlCu、Al−Fe−Si化合物としてα−AlFeSi(A18.3Fe2Si)とβ−AlFeSi(Al8.9Fe2Si2)(文献1)のように同じ元素から構成される化合物形態の異なる微小化合物が多く存在する。最近それら化合物形態によって腐食等の化学的性質が異なるため、製品への影響が問題になり、化合物の特定や分布の測定の要望が多くなってきた。これらの化合物は1ミクロン前後と微小であるため、調査にはEPMAが用いられ、化合物を構成している主要な元素の相対X線強度比を利用して化合物の特定やマッピングを行っている(文献2)。 文献1 G.Rivlin and G.V.Raynor:International Metals Reviews 3,133(1981) 文献2 特許公開2000−180393 発明が解決しようとする課題 電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Microanalyzer,EPMA,)走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM,),走査透過型電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope,STEM)の電子走査装置で発生する収束電子を試料母材に垂直に入射して、その電子のうち試料表面より脱出する反射電子の特定エネルギー区分における反射電子量から、元素や同じ元素から構成される化合物形態の異なる化合物を判別する状態分析方法を提案する。特定エネルギー区分は、好ましくは入射された電子のエネルギー(好ましくは15keV以上)から2keV〜5keVのエネルギーを差し引いたエネルギー区分の反射電子を利用し、例えば、Al表面が酸化されているか否かの調査、Al中に存在するAl3FeとAl6Feの判別、Al2CuとAlCuの判別が可能な状態分析法である。今日用いられている分析方法は特性X線を用いるため、透過力が大きく、化合物の下に接近して別の化合物が存在する場合、同時に異なった化合物を分析する危険性がある。これを防ぐために、加速電圧を下げて分析を行うが、加速電圧を下げると電子ビーム径が大きくなり分解能が低下する。そこで、この問題を解決するため、EPMA等に用いられている反射電子の利用を検討する。反射電子は特性X線に比べて極めて試料表面からの情報である(文献3)、このため、化合物の下に接近した別の化合物が存在しても、両者を同時に分析する可能性はほとんどない。以後はEPMAを主体に述べるが、同様な原理は他の透過電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の反射電子を利用した分析装置にも応用できるものである。 文献3 副島啓義:電子線マイクロアナリシス 反射電子を利用する状態分析とは、原子番号あるいは平均原子番号と背面散乱係数あるいは反射電子量(単位時間あたりの反射電子数)間の比例関係を利用して、対象物からの反射電子量を測定しながら原子番号あるいは平均原子番号を求め、その原子番号あるいは平均原子番号から化合物の特定、判別を行ないたいが、電子を試料に垂直に入射する装置において、試料表面が均一である場合、原子番号と背面散乱係数は、図1(参考文献4)のように比例しない。このような関係では反射電子の状態分析への応用はできない。背面散乱係数とは入射された電子数に対して試料表面から脱出する電子(反射電子)数の割合である。実際の測定では反射電子量を計測するが、背面散乱係数と反射電子量は同義語である。 課題を解決するための手段 原子番号と背面散乱係数の関係を見直すため、これまで試みられていない反射電子のエネルギーに注目する。即ち、モンテカルロシミュレーション法により原子番号と背面散乱係数と反射電子のエネルギーの関係を検討する。本件では、原子番号と背面散乱係数と反射電子のエネルギー(最小のエネルギーは50eVとした。)を1KeV間隔で,即ち、0.05KeV〜≦1keV,1keV〜≦2keV,2keV〜≦3keV‥‥‥,および2keV間隔で,即ち、50eV〜≦2keV,2keV〜≦4keV,4keV〜≦6keV‥‥‥および3keV間隔で,即ち、50eV〜≦3keV,3keV〜≦6keV,6keV〜≦9keV‥‥というようなエネルギー範囲で区分し、想定した純元素および化合物を用いて、所定エネルギー区分での原子番号と背面散乱係数の関に比例関係があるか否かを検討する。 本発明方法に用いるモンテカルロ計算は、試料内での電子線軌跡シミュレーションをモンテカルロ法に従って行い、このモンテカルロシミュレーションの結果に基づいて作成する。このモンテカルロシミュレーションは、電子の軌跡を折れ線と仮定し、この折れ線の一つの線分を平均自由行程とし、一つの線分と次の線分との間の角度(散乱角)はある乱数に対応した確率とし、さらに一つの線分毎に電子のエネルギーが失われるとしてモデルを仮定し、1)電子のエネルギーロスの計算式(1)、2)散乱角度(ω)および回転角度(φ)の計算式(2)、3)電子が元素に衝突する確率(P)の計算式(3)、4)平均自由行程の計算式(4)、5)電子散乱後の電子位置の計算式(5)、6)背面散乱係数の計算式は(6)を用いる。一つの入射された電子についての計算は、試料中に入射された電子は非弾性散乱によりエネルギーが失われ、電子のエネルギーが50eV以下になった場合あるいは50eV以上のエネルギーを持った電子が試料から脱出した時に終了される。試料に入射された電子一個の散乱モデルを図2に示す。 1)電子のエネルギーロス(ΔE/ΔS)の計算式(1)E>6.338ΣJiCi,ΔE/ΔS[keV/cm]=7.85×104ρΣ[ZiCi/Ai−1n(1.166E/Ji)]/E.(文献4)ΔE/ΔS[keV/cm]=7.85×104ρΣ(ZiCi/Ai/Ji1/2)/1.26E1/2 (文献5) 文献4 .H.A.Bethe:Ann.Physik(Leipzig)5,325(1930) 文献5 T.Rao−Sahib and D.B.Wittry:J.Appl.Phys.45,5060(1974) 2)散乱角度(ω)および回転角度(φ)の計算式(2)cosω=1−2βiR/(1+βi−R), (文献6)φ=2πR.〔ただし、Eは電子のエネルギー(keV),Aは原子量、Zは元素番号、Rは−様乱数(0〜1),ρは密度(g/cm3),βiはスクリーニングパラメータ、Jiはイオン化ポテンシャル(keV)、πは円周率(3.14),Ciは組成をそれぞれ示す。 文献6 .K.Murata,T.Matsukawa and R.Shimizu:in proceeding of the sixth International Conference on X−ray Optics microanalysis,Tokyo,105−112(1972) ここで、イオン化ポテンシャル(Ji)については、これまでに文献上、下記の3つの値Ji[kev]=11.5Zi×10−3 (文献7)Ji[Kkv]=0.00976Zi+0.0588/Zi0.19 (文献8)Ji[kev]={14.0[1−exp(−0.1Zi)]+75.5/ZiZi/7.5−Zi/(100+Zi)}Zi×10−3 (文献9)が提案されており、また、スクリーニングパラメータ(βi)については、下記の3つの値βi=[5.44Zi2/3/Ei]×10−3 (文献10)βi=3.4Zi2/3/(Ei×1000)×(1.13+3.76α2)1/2 (文献11)α=3.69(Zi/Ei×1000)βi=[3.4Zi2/3/Ei]×10−3 (文献12)が提案されており、さらに、散乱角度(ω)の計算式で用いる−様乱数(R)については、これまでに文献上、例えば、中央二乗法(Xk+1=λk2の中央の数桁)、乗算型相合式法[Xk+1=λk(mod,M)]、混合型合同式法[Xk+1=λ・Xk+μ(mod,M)]等、多数のものが提案されている。 文献7 R.Wilson:Phys.Rev.60,749(1941 文献8 M.J.Berger and S.M.Seltzer:Studies in penetration of charged No.1133(National Academy of Science,Washinton,D,C(1964) 文献9 P.Duncumb and Da Casa:Conference Electron Probe Microanalysis,Inst.Phys and Physical Soc.London(1967) 文献10 B.P.Nigam,M.K.Saunderson and Wu.Ta−You:Phys.Rev.115,491(1959) 文献11 V.E.Cosslett.and R.N.Thomas:Brit,J.Appl,phys,15,883(1964) 文献12 G.Wentzel:Z.physik 40,590(1927) 従って、上記イオン化ポテンシャル(Ji)、スクリーニングパラメータ(βi)、および散乱角度(ω)の計算式で用いる−様乱数(R)の選択については数多くの組み合わせが存在するが、本発明では、特に、イオン化ポテンシャル(Ji)についてはJi[Kev]=11.5Zi×10−3を、また、スクリーニングパラメータ(βi)についてはβi=[5.44Zi2/3/Ei]×10−3を用いるのがよい。更に、散乱角度(ω)の計算式で用いる−様乱数(R)については、特に制限はなく、例えば市販の日本電気(株)性パーソナルコンピュータ等に内蔵の乱数を用いるのがよい。このイオン化ポテンシャル(Ji)とスクリーニングパラメータ(βi)の組み合わせを採用することにより、モンテカルロシミュレーションによる計算結果が標準試料を用いて測定した実測値とよく一致し、また、計算に入力される入射電子数を可及的に減少せしめることができ、大型コンピュータでなくても計算可能になる。 3)電子が元素に衝突する確率(Pi)の計算式(3)多元系化合物に入射した電子がどの元素と衝突するかは元素の衝突断面積による確率(Pi)で決まる。Pi=(σi−Ci/Ai)/Σ(σi−Ci/Ai)σitot=ρNAπe4Σ[Ci/Ai−Zi(Zi+1)]/[βi(βi+1)]/4E2e:電子の電荷(−4.8029×10−10esu)E:電子の運動エネルギー例えば、3元系化合物の場合には次のように行う。O<R≦Pa −−−ならばa元素に衝突Pa<R≦Pa+Pb −−−ならばb元素に衝突Pa+Pb<R≦Pa+Pb+Pc −−−ならばc元素に衝突(但し、Rは−様乱数値である。) 4)平均自由行程(ΔS)の計算式(4)ΔS=1/σitot 電子散乱後の位置は次の▲5▼電子散乱後の電子の位置の計算式(5)によって計算される。すなわち、試料表面上にX−Y軸をとり、また、深さ方向にZ軸をとり、原点に入射する電子のn番目の電子の終点位置を(Xn,Yn,Zn)とすると(n+1)番目の電子の位置を(Xn+1,Yn+1,Zn+1)は、先ず衝突によりn番目の位置から(ω,φ)の方向(ω:衝突のよる入射方向からの散乱角度、φ:回転角度)に散乱されたとし、これを用いて(n+1)番目の電子の位置を(X,Y,Z)座標軸にたいする方向(θn+1,ψn+1)で表すと、以下にようになる。5)電子散乱後の電子の位置の計算式(5)cos(θn+1)=cos(θn)cos(ωn)−sin(θn)sin(ωn)cos(φn)sin(ψn+1)=Asin(ψn)Bcos(ψn)cos(ψn+1)=Acos(ψn)−Bsin(ψn)A=[cos(ωn)−cos(θn)cos(θn+1)]/[sin(θn)sin(θn+1)]B=sin(φn)sin(ωn)/sin(θn+1)Xn+1=Xn+λnsin(θn+1)cos(ψn+1)×104[μm]Yn+1=Yn+λnsin(θn+1)sin(ψn+1)×104[μm]Zn+1=Zn+λncos(θn+1)×104[μm] 6)背面散乱係数の計算式(6)背面散乱係数=所定エネルギー区分の反射電子数/入射電子数 [計算結果]まず計算が正しく行なわれているかを検証するため、参考値(参考文献13)と計算結果を比較した。想定した元素はAl(13),Ti(22),Zn(30),Sn(50),Au(79)の5種類である。( )内は原子番号、また計算は乱数発生の初期値を変え10回の計算を行い、その平均値を用いた。従来報告されている文献の背面散乱係数の算出は,反射電子のエネルギーの区分は行なわれず50eV以上の全ての反射電子を対象としたものである。この結果と比較するため、ここでの計算は反射電子のエネルギーの区分は行わず50eV以上の全ての反射電子を対象とした。また、入射電子のエネルギーは15Kev,20Kev,30Kev,入射電子数は600個を用いた。シミュレーションの結果、図3に示すように、原子番号と背面散乱係数の関係は加速電圧に極端に影響されず参考値とほぼ同等な傾向であった。これらの結果から計算は正しく行われていることが確認できた。 文献13 Bishop.H.E:Fourth Intern,Symp.On”X−ray Optics and Microanalysis”P153,Hermann,Paris(1966). 次に、入射電子のエネルギー15kev,1keVのエネルギー区分、即ち、14keV〜≦15keV,13keV〜≦14keV,12keV〜≦13keV,11keV〜≦12keV,10keV〜≦11keV,9keV〜≦10kev,8keV〜≦9keV,7keV〜≦8keV,6keV〜≦7keV,5keV〜≦6keV,4keV〜≦5keVにおける原子番号と反射電子数のシミュレーション結果を図4、図5に示す。入射電子数は600個を用いた。その結果、どのエネルギー区分でも原子番号と反射電子数の間には比例関係はみられなかった。 次に、入射電子のエネルギー15kev,2keVのエネルギー区分、即ち、13keV〜≦15keV,11keV〜≦13keV,9keV〜≦11keV,7keV〜≦9keV,5keV〜≦7keV,3keV〜≦5keVにおける原子番号と反射電子数のシミュレーション結果を図6に示す。入射電子数は600個を用いた。その結果、13keV〜≦15keVのエネルギー区分で原子番号と反射電子数は比例した。 次に、入射電子のエネルギー15kev,3keVのエネルギー区分、即ち、12keV〜≦15keV,9keV〜≦12keV,6keV〜≦9keV,3keV〜≦6keVにおける原子番号と反射電子数のシミュレーション結果を図7に示す。入射電子数は600個を用いた。その結果、12keV〜≦15keVのエネルギー区分で原子番号と反射電子数は比例した。 次に、入射電子のエネルギー15kev,5keVのエネルギー区分、即ち、10keV〜≦15keV,5keV〜≦10keV,50eV〜≦5keVにおける原子番号と反射電子数のシミュレーション結果を図8に示す。入射電子数は600個を用いた。その結果、10keV〜≦15keVのエネルギー区分で原子番号と反射電子数は比例した。 次に、入射電子のエネルギー15kev,6keVのエネルギー区分、即ち、9keV〜≦15keV,3keV〜≦9keVにおける原子番号と反射電子数のシミュレーション結果を図9に示す。入射電子数は600個を用いた。その結果,6KeVのエネルギー区分では原子番号と反射電子数には比例関係はなかった。 次に、入射電子のエネルギー15kev,7keVのエネルギー区分、即ち、8keV〜≦15keV.1keV〜≦8keVにおける原子番号と反射電子数のシミュレーション結果を図10に示す。入射電子数は600個を用いた。その結果、7keVのエネルギー区分では原子番号と反射電子数には比例関係はなかった。 次に、想定したAl,Ti,Zn,Sn,Auでは、入射電子のエネルギーから2keV〜5keVのエネルギーを差し引いたエネルギー区分,例えば入射電子エネルギー15keVでは10keV〜≦15keV,11keV〜≦15keV,12keV〜≦15keV,13keV〜≦15keVのエネルギー区分で原子番号と反射電子数が比例することがわかった。そこで、化合物についても同様な傾向があるか否か調査するため、表1に示す8種類の化合物について、入射電子エネルギー15keV,10keV〜≦15keVのエネルギー区分で、平均原子番号と背面散乱係数の関係を検討した。計算は乱数発生の初期値を変え10回の計算を行い、その平均値を用いた。入射電子数は600個を用いた。シミュレーションの結果、図11に示すように、Al,Ti,Zn,Sn,Auの純元素およびAl2O3,Al6Fe,Al3Fe,Al2Cu,AlCu,Al2Au,AlAu4,PbSの化合物は同一直線上にプロットされた。化合物の組成および平均原子番号を表1に示す。平均原子番号とは、化合物を元素と仮想し、構成するそれぞれの元素の原子番号とその化合物に占める重量比率との積和から導きかれる原子番号のことをいう。 次に、入射電子エネルギーを20KeVに変化させ、15keV〜≦20keVのエネルギー区分における原子番号と背面散乱係数を検討した。入射電子数は600個を用いた。シミュレーションの結果、図12に示すようにAl,Ti,Zn,Sn,Auの純元素およびAl2O3,Al6Fe,Al3Fe,Al2Cu,AlCu,Al2Au,AlAu4,PbSの化合物は同一直線上にプロットされた。 更に、入射エネルギーを30keVに変化させ、25KeV〜≦30KeVのエネルギー区分における原子番号と背面散乱係数を検討した。入射電子数は600個を用いた。シミュレーションの結果、図13に示すように」Al,Ti,Zn,Sn,Auの純元素およびAl2O3,Al6Fe,Al3Fe,Al2Cu,AlCu,Al2Au,AlAu4,PbSの化合物は同一直線上にプロットされた。 [測定方法] 例えば入射電子エネルギー15keVにおいて、Al表面が酸化されているか否かを調査する方法を説明する。Al表面の酸化物をAl2O3(アルミナ)と仮定し、まず表面が酸化を受けていない純AlとAl2O3から10keV〜≦15keVのエネルギー区分で、反射電子量を計測する。Alは原子番号13、その時の背面散乱係数は図11に示す比例式から0.086である。また、Al2O3の平均原子番号は10.6、その時の背面散乱係数は比例式から0.073である。まず表面が酸化を受けていない純Alの反射電子量を計測し、その値を1と仮定すれば、Al2O3は0.85(=0.073/0.086),となり、Al表面が酸化されているか否かの判別ができる。また、Alは1、Al2O3は0.85という値をカラー化することにより双方のマッピングができる。なお、入射電子エネルギーの設定および反射電子のエネルギー区分の設定はEPMA等の機種により異なることが予想されるので、測定機種ごとに最適条件を決める必要がある。 更に、入射電子エネルギー15keVにおいて、Al中にAl6FeおよびAl3Feの金属間化合物が混在し、双方の化合物を判別する方法を説明する。まずAl6FeとAl3Feの金属間化合物から10keV〜≦15keVのエネルギー区分で、反射電子量を計測する。Alは原子番号13、その時の背面散乱係数は図11に示す比例式から0.086である。また、Al6Feの平均原子番号は16.3、その時の背面散乱係数は比例式から0.104、また、Al3Feの平均原子番号は18.3、その時の背面散乱係数は比例式から0.115である。まず純Alの反射電子量を計測し、その値を1と仮定すれば、Al6Feは1.21(=0.104/0.086),Al3Feは1.34(=0.115/0.086)となり、双方が判別できる。また、Alは1、Al6Feは1.21,Al3Feは1.34という値をカラー化することにより化合物マッピングができる。なお、入射電子エネルギーの設定および反射電子のエネルギー区分の設定はEPMA等の機種により異なることが予想されるので、測定機種ごとに最適条件を決める必要がある。 更に、入射エネルギー20keVにおいて、Al中にAl2CuおよびAlCuの金属間化合物が混在し、双方の化合物を判別する方法を説明する。まずAl2CuおよびAlCuの金属間化合物から15keV〜≦20keVのエネルギー区分を有する反射電子数を計測する。Alは原子番号13、その時の背面散乱係数は図12に示す比例式から0.053である。また、Al2Cuの平均原子番号は21.6、その時の背面散乱係数は比例式から0.099、また、AlCuの平均原子番号は24.2、その時の背面散乱係数は比例式から0.112である。まず純Alの反射電子数を計測し、その値を1と仮定すれば、Al2Cuは1.87(=0.099/0.053),AlCuは2.11(=0.112/0.053となり、双方を判別することができる。また、Alは1、Al2Cuは1.87,AlCuは2.11という値をカラー化することにより化合物マッピングができる。なお、入射電子エネルギーの設定および反射電子のエネルギー区分の設定はEPMA等の機種により異なることが予想されるので測定する機種での最適条件は決められることになる。 発明の効果 これまで、同じ元素で構成される化合物形態の異なる微小化合物の特定やマッピングは、化合物を構成する主要元素の相対X線強度比を用いてEPMAにより測定されていた。しかしながら、この方法は、特性X線を用いるため、透過力が大きく、このために化合物の下に接近して存在する別の化合物を同時に分析する危険性があった。本発明の反射電子による状態分析法は、反射電子は試料の極表面から検出されること、および反射電子の特定エネルギー区分で、原子番号と背面散乱係数が比例することを応用したものである。従って、化合物の下に接近して存在する別の化合物を同時に分析する可能性はほとんどない。また、特性X線を利用する微小物の分析では分析領域の観点から加速電圧の設定に留意が必要であるが、本発明の反射電子を利用すれば、反射電子は加速電圧に極端に影響されないため、その必要はない。 図1は、Bishop.:による原子番号と背面散乱係数の関係図図2は、試料に入射された一個の電子の散乱モデル図3は参考値とシミュレーション結果の比較図図4は、Al,Ti,Zn,Sn,Au各元素の入射エネルギー15keVで,1keVのエネルギー区分、即ち、14keV〜≦15keV,13keV〜≦14keV,12keV〜≦13keV,11keV〜≦12keV,10keV〜≦11keVのエネルギー区分における原子番号と平均背面散乱係数のシミュレーション結果の関係図。図5は、Al,Ti,Zn,Sn,Au各元素の入射エネルギー15keVで,1keVのエネルギー区分、即ち、9keV〜≦10keV,8keV〜≦9keV,7keV〜≦8keV,6keV〜≦7keV,5keV〜≦6keV,4keV〜≦5keVのエネルギー区分における原子番号と平均背面散乱係数のシミュレーション結果の関係図。図6は、Al,Ti,Zn,Sn,Au各元素の入射エネルギー15keVで、2keVのエネルギー区分、即ち、13keV〜≦15keV,11keV〜≦13keV,9keV〜≦11keV,7keV〜≦9keV,5keV〜≦7keV,3keV〜≦5keVのエネルギー区分における原子番号と平均背面散乱係数のシミュレーション結果の関係図。図7は、Al,Ti,Zn,Sn,Au各元素の入射エネルギー15keVで、3keVのエネルギー区分、即ち、12keV〜≦15keV,9keV=≦12keV,6keV〜≦9keV,3keV〜≦6keVのエネルギー区分の原子番号と平均背面散乱係数とのシミュレーション結果の関係図。図8は、Al,Ti,Zn,Sn,Au各元素の入射エネルギー15keVで、5keVのエネルギー区分、即ち、10keV〜≦15keV,5keV〜≦10keV,50eV〜≦5keVのエネルギー区分の原子番号と平均背面散乱係数とのシミュレーション結果の関係図。図9は、Al,Ti,Zn,Sn,Au各元素の入射エネルギー15keVで、6KeVのエネルギー区分、即ち、即ち、9keV〜≦15keV,3keV〜≦9keVのエネルギー区分の原子番号と平均背面散乱係数とのシミュレーション結果の関係図。図10は、Al,Ti,Zn,Sn,Au各元素の入射エネルギー15keVで、7keVのエネルギー区分、即ち、8keV〜≦15keV,1keV〜≦8keVのエネルギー区分の原子番号と平均背面散乱係数とのシミュレーション結果の関係図。図11は、Al,Ti,Zn,Sn,Au各元素およびAl2O3,Al6Fe,Al3Fe,Al2Cu,AlCu,Al2Au,AlAu4,PbS各化合物の入射エネルギー15keV、10keV〜≦15keVのエネルギー区分における原子番号あるいは平均原子番号と背面散乱係数のシミュレーション結果の関係図。図12は、Al,Ti,Zn,Sn,Au各元素およびAl2O3,Al6Fe,Al3Fe,Al2Cu,AlCu,Al2Au,AlAu4,PbS各化合物の入射エネルギー20keV、15keV〜≦20keVのエネルギー区分における原子番号あるいは平均原子番号と背面散乱係数のシミュレーション結果の関係図。図13は、Al,Ti,Zn,Sn,Au各元素およびAl2O3,Al6Fe,Al3Fe,Al2Cu,AlCu,Al2Au,AlAu4,PbS各化合物の加速電圧30kV、25keV〜≦30keVのエネルギー区分における原子番号あるいは平均原子番号と背面散乱係数のシミュレーション結果の関係図。 電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Microanalyzer,EPMA,)走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM,),走査透過型電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope,STEM)の電子走査装置で発生する収束電子を試料母材に垂直に入射して、その電子のうち試料表面より脱出する反射電子の特定エネルギー区分における反射電子量から、元素や同じ元素から構成される化合物形態の異なる化合物を判別する状態分析方法。 特定エネルギー区分は、好ましくは入射された電子のエネルギー(好ましくは15keV以上)から2keV〜5keVのエネルギーを差し引いたエネルギー区分の反射電子を利用し、例えば、Al表面が酸化されているか否かの調査、Al中に存在するAl3FeとAl6Feの判別、Al2CuとAlCuの判別が可能な状態分析法。 【課題】Al材料において、同じ元素から構成される微小化合物の形態によって腐食等の化学的特性が異なることから、製品への影響が問題になり、化合物の特定や分布の測定が切望されている。この問題を解決するため、化合物を構成する主要元素の相対X線強度比を利用したEPMAによる微小化合物の特定やマッピングが用いられている。しかし、この方法では、特性X線を用いるため、透過力が大きく、このために化合物の下に接近して存在する別の化合物を同時に測定する危険性がある。【解決手段】そこで、試料の極表面からの情報を伝える反射電子の利用を考えた。本発明は、モンテカルロシミュレーション法によりこれまで検討されていない、反射電子のエネルギーを考慮して、原子番号と背面散乱係数の関係を見直した。その結果、反射電子を特定エネルギー区分すると、原子番号と背面散乱係数が比例することを見出し、反射電子の状態分析への道を開いた。【選択図】 なし


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