タイトル: | 特許公報(B2)_2−ブロモシクロペンタノンの製造法 |
出願番号: | 2003378097 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 45/63,C07C 45/65,C07C 49/457,C07C 49/597 |
福島 大介 平田 紀彦 JP 4374987 特許公報(B2) 20090918 2003378097 20031107 2−ブロモシクロペンタノンの製造法 住友化学株式会社 000002093 中山 亨 100113000 福島 大介 平田 紀彦 JP 2002324989 20021108 20091202 C07C 45/63 20060101AFI20091112BHJP C07C 45/65 20060101ALI20091112BHJP C07C 49/457 20060101ALI20091112BHJP C07C 49/597 20060101ALI20091112BHJP JPC07C45/63C07C45/65C07C49/457C07C49/597 C07C 45/63 C07C 45/65 C07C 49/457 C07C 49/597 CASREACT(STN) 特開2000−178220(JP,A) Indian J. Heterocyclic Chemistry,1991年,1(3),p.117-120 Zhurnal Obshchej Khimii,1958年,28,p.1501-1503 8 2004168774 20040617 7 20060713 安田 周史 本発明は、医薬等の中間体化合物として有用な2−ブロモシクロペンタノン及び2−シクロペンテン−1−オンの製造法に関するものである。 2−ブロモシクロペンタノンの製造法としては、シクロペンテンを出発物質として臭素化剤と反応させる方法(特許文献1参照。)、シクロペンタノンをエノールエーテルやエナミンなどの化合物に変換した後に臭素化剤と反応させる方法(非特許文献1、非特許文献2参照。)などが知られている。またシクロペンタノンと臭素以外の臭素化剤とを反応させる方法としては、臭素化剤にN−ブロモスクシイミドを用いる方法(非特許文献3参照。)、イミダゾ[1,2−b]ピリダジン誘導体の臭素錯体を用いる方法(非特許文献4参照。)などが知られている。またシクロペンタノンと臭素を反応させる方法としては、有機溶媒を単独で用いる方法(特許文献2、非特許文献5、非特許文献6参照。)などが知られている。特公平3−005378号公報特開2000−256387号公報Bull.Soc.Chim.Fr.,1986,(6),881Tetrahedron Lett.,1979,(38),3653J.Amer.Chem.Soc.,1985,107(25),7524Synthesis,1981,(12),987Bio.Org.Chem.Lett.,1995,5(15),1615Indian J.Heterocycl.Chem.,1991,1(3),117 しかしながら、シクロペンテンを出発物質とする方法や、シクロペンタノンをエノールエーテルやエナミンなどの化合物に変換した後に臭素化剤と反応させる方法では、工程数が多く煩雑な操作を必要とするという問題点がある。 また、シクロペンタノンと臭素以外の臭素化剤とを反応させる方法では、臭素化剤が高価であること、臭素化剤を合成するのに新たな工程を必要とすること、生成物と臭素化剤との分離が困難であることなどの問題点がある。 さらに、反応溶媒として有機溶媒のみを用いてシクロペンタノンと臭素とを反応させる方法では、目的とする一臭化物の選択性が低いこと、臭素に対する収率が低いこと、シクロペンタノンがアルドール縮合して生成する二量体が不純物として多量に副生し生成物の純度を低下させるなどの問題点がある。 以上の観点から、上記の従来技術は、2−ブロモシクロペンタノンを工業的に製造する方法としては、必ずしも満足できるものではなかった。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、水および、水と二相を形成しうる有機溶媒中、シクロペンタノンと臭素とを反応させると、不純物の生成を抑制し、安価で簡便に収率良く2−ブロモシクロペンタノンを製造できることを見出して、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、(イ)水および、水と二相を形成しうる有機溶媒中、シクロペンタノンと臭素とを反応させることを特徴とする2−ブロモシクロペンタノンの製造法、 ならびに、(ロ)水および、水と二相を形成しうる有機溶媒中、シクロペンタノンと臭素とを反応させて2−ブロモシクロペンタノンを得、次いで、該2−ブロモシクロペンタノンを塩基と反応させることを特徴とする2−シクロペンテン−1−オンの製造法を提供するものである。 本発明の(イ)によれば、シクロペンタノンと臭素を用いて、シクロペンタノンの二量体の生成を抑制しながら、2−ブロモシクロペンタノンを収率良く、安価に製造することができる。 また、本発明の(ロ)によれば、本発明の(イ)で得た2−ブロモシクロペンタノンから、2−シクロペンテン−1−オンを効率良く製造することができる。 以下、本発明の(イ)及び(ロ)について詳細に説明する。 本発明(イ)において、目的化合物である2−ブロモシクロペンタノンは、例えば、水および、水と二相を形成しうる有機溶媒とシクロペンタノンの溶液の混合物中に臭素を滴下することによって、製造することができる。 本発明(イ)及び(ロ)において、原料化合物であるシクロペンタノン及び臭素のモル比は、通常は20:1〜1:1の範囲であり、好ましくは10:1〜1:1の範囲であり、より好ましくは5:1〜2:1の範囲である。 本発明(イ)及び(ロ)において、水の使用量は、臭素に対して、通常は0.1〜100重量倍の範囲であり、好ましくは0.5〜20重量倍の範囲である。 水と二相を形成しうる有機溶媒の具体例としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、1−クロロブタンやクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルやtert−ブチルメチルエーテル等のエーテル類;トルエン、ベンゼンやキシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素類;n−オクタノールやn−デシルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチルやプロピオン酸メチル等のエステル類;又はメチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等のケトン類が挙げられる。 水と二相を形成しうる有機溶媒としては、ハロゲン化炭化水素類が好ましく、1−クロロブタンがさらに好ましい。これらの溶媒は単独又は2種類以上の混合物として用いられる。 水と二相を形成しうる有機溶媒の使用量は、臭素に対して、通常は0.1〜100重量倍の範囲であり、好ましくは0.5〜20重量倍の範囲である。 本発明(イ)及び(ロ)において、水、および、水と二相を形成しうる有機溶媒とシクロペンタノンの溶液の混合物中に臭素を滴下する際の滴下時間としては、通常は0.05〜50時間であり、好ましくは0.5〜5時間である。 臭素を滴下する際の温度は、通常は−10〜80℃の範囲であり、好ましくは0〜50℃の範囲である。 本発明(イ)及び(ロ)において、臭素滴下終了後、反応を完結させるためにさらに保温を継続してもよい。 臭素滴下終了後の保温時間としては、通常は0.5〜100時間であり、好ましくは2〜50時間である。 臭素滴下終了後の保温温度としては、通常は−10〜80℃の範囲であり、好ましくは0〜50℃の範囲である。 本発明の(イ)において、得られた2−ブロモシクロペンタノンは、さらに通常の方法により、単離することが可能である。 2−ブロモシクロペンタノンは、反応終了後、2−ブロモシクロペンタノンを含む油層を水層と分液し、分液した油層中の溶媒を濃縮により留去することで単離することができる。 また、反応の際に過剰に用いたシクロペンタノンが残存する場合は、蒸留により、本発明の(イ)における目的化合物である2−ブロモシクロペンタノンと分離、回収することが可能である。分離、回収されたシクロペンタノンは、本発明の反応に再利用することが可能である。 本発明の(イ)において得られる2−ブロモシクロペンタノンは、さらに蒸留やカラムクロマトグラフィー等によって精製することもできる。 本発明の(ロ)においては、本発明の(イ)において得られる2−ブロモシクロペンタノンを含む油層中の溶媒を、必要に応じて濃縮して留去後、塩基と反応させることにより、2−シクロペンテン−1−オンを製造することができる。 塩基としては、例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機炭酸アルカリ金属塩、炭酸カルシウム等の無機炭酸アルカリ土類金属塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機炭酸水素アルカリ金属塩、ピリジン、トリエチルアミン、ルチジン、コリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン等の有機アミン等が挙げられる。好ましい塩基としては、炭酸リチウムが挙げられる。 塩基の使用量は、2−ブロモシクロペンタノンに対して、通常は0.2〜2.0モル倍の範囲であり、好ましくは0.5〜1モル倍の範囲である。 本発明の(ロ)における反応溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系溶媒、ピリジン、5−エチル−2―メチルピリジン等のアミン系溶媒、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、グルタル酸ジメチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、トルエン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。好ましい反応溶媒としては、N,N’−ジメチルホルムアミドが挙げられる。 これらの反応溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。 反応溶媒の使用量は、2−ブロモシクロペンタノンに対して、通常は1〜10重量倍の範囲であり、好ましくは1〜5重量倍の範囲である。 本発明の(ロ)における反応は、上記の塩基および反応溶媒の混合物中に、2−ブロモシクロペンタノン又はその溶液を滴下することにより行われる。この際に、臭化リチウムや塩化リチウム等のハロゲン化アルカリや、ヒドロキノンのような重合禁止剤を少量加えてもよい。 反応温度は、好ましくは80〜150℃の範囲であり、2−ブロモシクロペンタノン又はその溶液の滴下終了後、同温度で通常は1〜5時間保温される。 使用する溶媒の沸点が反応温度より低い場合はオートクレーブ等の装置を用いて加圧下で反応してもよい。 反応終了後、2−シクロペンテン−1−オンは、必要に応じて、例えば反応液を濃縮して反応溶媒を留去することにより単離してもよい。不溶物が存在する場合には、ろ過等により、2−シクロペンテン−1−オンと不溶物とを分離してもよい。 また、2−シクロペンテン−1−オンは、蒸留により精製することもできる。 以下、実施例等により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。実施例1 シクロペンタノン63.2g(750.9mmol)、水60.0g、1−クロロブタン60.0gからなる溶液に、臭素40.0g(250.3mmol)を1℃で2時間かけて滴下し、同温で15時間攪拌した。攪拌終了後、水44.0g、1−クロロブタン60.0gを加え同温で15分攪拌した後、油層を水層と分液した。油層として、2−ブロモシクロペンタノン34.5g(211.7mmol、臭素に対する収率84.7%)を含む1−クロロブタン溶液185.9gを得た。本溶液中に2−シクロペンチリデンシクロペンタノンは含まれていなかった。実施例2 シクロペンタノン105.3g(1251.5mmol)、水60.0g、1−クロロブタン60.0gからなる溶液に、臭素40.0g(250.3mmol)を1℃で2時間かけて滴下し、同温で10時間攪拌した。攪拌終了後、水44.0g、1−クロロブタン60.0gを加え同温で10分攪拌した後、油層を水層と分液した。油層として、2−ブロモシクロペンタノン33.8g(207.4mmol、臭素に対する収率82.8%)を含む1−クロロブタン溶液228.2gを得た。本溶液中に2−シクロペンチリデンシクロペンタノンは含まれていなかった。本溶液を濃縮することで、2−ブロモシクロペンタノン32.8g(201.2mmol、臭素に対する収率80.4%)を含む褐色溶液37.0gを得た。また、未反応のシクロペンタノンを濃縮留出液として回収した。実施例3 シクロペンタノン31.6g(375.4mmol)、水30.0g、ヘキサン30.0gからなる溶液に、臭素20.0g(125.1mmol)を1℃で2時間かけて滴下し、同温で76時間攪拌した。攪拌終了後、水22.0g、ヘキサン30.0gを加え同温で15分攪拌した後、油層(油層−1)と水層(水層−1)とを分液した。さらに水層−1にヘキサン50.0gを加え20℃で15分攪拌した後、油層(油層−2)と水層とを分液した。油層−1および油層−2を合一し、2−ブロモシクロペンタノン11.5g(70.3mmol、臭素に対する収率56.2%)を含むヘキサン溶液135.6gを得た。本溶液中に2−シクロペンチリデンシクロペンタノンは含まれていなかった。実施例4 シクロペンタノン42.1g(500.6mmol)、水60.0g、1−クロロブタン60.0gからなる溶液に、臭素40.3g(252.2mmol)を1℃で2時間かけて滴下し、同温で24時間攪拌した。攪拌終了後、水44.0g、1−クロロブタン60.0gを加え同温で15分攪拌した後、油層を水層と分液した。油層として、2−ブロモシクロペンタノン32.4g(198.5mmol、臭素に対する収率78.7%)を含む1−クロロブタン溶液168.6gを得た。本溶液中に2−シクロペンチリデンシクロペンタノンは含まれていなかった。比較例1 シクロペンタノン105.3g(1251.5mmol)に、臭素40.0g(250.3mmol)を1℃で2時間かけて滴下し、同温で80時間攪拌した。攪拌終了後、水105.3gを加え同温で15分攪拌した後、油層を水層と分液し、2−ブロモシクロペンタノン25.2g(154.4mmol、臭素に対する収率61.7%)および副生物である2−シクロペンチリデンシクロペンタノン7.5g(50.0mmol)を含む溶液83.6gを得た。比較例2 シクロペンタノン105.3g(1251.5mmol)、1−クロロブタン120.0gからなる溶液に、臭素40.0g(250.3mmol)を1℃で2時間かけて滴下し、同温で10時間攪拌した。攪拌終了後、水105.3gを加え同温で15分攪拌した後、油層を水層と分液し、2−ブロモシクロペンタノン33.0g(202.3mmol、臭素に対する収率80.6%)および副生物である2−シクロペンチリデンシクロペンタノン7.3g(48.4mmol)を含む溶液226.8gを得た。実施例5 実施例2と同様の方法で得られた2−ブロモシクロペンタノン20.0g(122.7mmol)を含む溶液21.6gを、N,N’−ジメチルホルムアミド60.0g、炭酸リチウム5.44g(73.6mmol)、臭化リチウム・一水和物0.51g(4.9mmol)、ヒドロキノン0.02g(0.2mmol)からなる懸濁液に、100℃で1時間かけて滴下した。同温で3時間保温した後、冷却して2−シクロペンテノン9.3g(113.0mol、収率92.1%)を含む溶液を得た。 この溶液を減圧度6.7KPa、内温50〜120℃の範囲で単蒸留し、2−シクロペンテノン9.2g(112.6mmol)を含むN,N’−ジメチルホルムアミド溶液58.0gを得た。 2−ブロモシクロペンタノンからの収率は91.8%であった。 本発明の製造法で得られる2−ブロモシクロペンタノン及び2−シクロペンテン−1−オンは、医薬品などの中間体化合物として有用である。 水および、水と二相を形成しうる有機溶媒中、シクロペンタノンと臭素とを反応させることを特徴とする2−ブロモシクロペンタノンの製造法。 水と二相を形成しうる有機溶媒が、カルボニル基を有しない有機溶媒である請求項1に記載の製造法。 水と二相を形成しうる有機溶媒がハロゲン化炭化水素類、炭化水素類、またはハロゲン化炭化水素類と炭化水素類の混合溶媒である請求項1に記載の製造法。 水と二相を形成しうる有機溶媒がハロゲン化炭化水素類である請求項1に記載の製造法。 水と二相を形成しうる有機溶媒が1−クロロブタンである請求項1に記載の製造法。 シクロペンタノンと臭素のモル比が、10:1〜1:1である請求項1〜5のいずれかに記載の製造法。 シクロペンタノンと臭素のモル比が、5:1〜2:1である請求項1〜5のいずれかに記載の製造法。 水および、水と二相を形成しうる有機溶媒中、シクロペンタノンと臭素とを反応させて2−ブロモシクロペンタノンを得、次いで、該2−ブロモシクロペンタノンを塩基と反応させることを特徴とする2−シクロペンテン−1−オンの製造法。