タイトル: | 公開特許公報(A)_オーステナイト結晶粒界顕出用の腐食液 |
出願番号: | 2003351129 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N33/20 |
坂井 賢二 JP 2005114626 公開特許公報(A) 20050428 2003351129 20031009 オーステナイト結晶粒界顕出用の腐食液 山陽特殊製鋼株式会社 000180070 横井 健至 100101085 坂井 賢二 7G01N33/20 JPG01N33/20 K 2 1 OL 8 2G055 2G055AA03 2G055AA12 2G055BA05 2G055CA07 2G055CA21 2G055EA06 2G055FA02 本発明は、ボロン鋼あるいは高炭素クロム軸受鋼の焼入材などの結晶粒界、特にオーステナイト結晶粒界を顕出するために使用する鋼表面の腐食液に関する。 鋼の凝固組織あるいは焼入材などの金属組織を顕出することは、鋼の凝固状態や焼入材の組織状態を把握する上に欠くことのできない事柄であり、研究や品質間の面から極めて重要である。このような鋼の凝固組織の顕出方法としては、例えば、a.低炭素鋼などを含む普通鋼などは、ピクリン酸飽和水溶液1リットルにライポンF(商品名:ライオン油脂製)などの洗剤2〜3滴を加えた腐食液を80℃に加熱し、その中に鋼片より採取して鏡面研磨を行った試料を1〜3分間浸漬する方法が知られている。(非特許文献1、非特許文献2参照)。b.一方、炭素濃度が50ppm以下の極低炭素鋼鋳片のデンドライトの顕出方法としては、試料を700℃以上、780℃以下に加熱した後、冷却した試料を腐食液で腐食してエッチングする方法が知られている(特許文献1参照)。 さらに出願人は、炭素鋼あるいは低合金鋼鋳片の凝固組織のデンドライトを顕出する腐食液として、60〜80℃の温水500mlに対してピクリン酸を6〜8g溶解し、これにライポンFなどの洗剤を3〜5mlを加え、さらに界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム2〜4gを加えるもの開発している(特許文献2参照)。 ところでオーステナイト結晶粒度の顕出のためのエッチングは、通常、飽和ピクリン酸水溶液とライポンFで行われるが、ボロン鋼あるいは高炭素クロム軸受鋼の焼入材などのオーステナイト結晶粒界の顕出は十分でなく、試行錯誤で薬品により化学腐食する問題があった。特開平7−120457号公報特開2001−289839号公報郡司好喜、岡本平著「鉄と鋼」61(1975)、p.886日本鉄鋼協会編「鉄鋼便覧1基礎」、S56年、丸善発行、p.207 そこで、ボロン鋼あるいは高炭素クロム軸受鋼の焼入材などのオーステナイト結晶粒界の顕出は沸騰ピクリン酸水溶液とドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムと過酸化水素とからなる腐食液で腐食している。この腐食液によるとき、結晶粒はきれいに顕出できる。しかし、この腐食液は沸騰型のため、腐食液の消耗と組成の変化が激しく、かつ腐食時間が30秒と短いので、腐食程度のコントロールが難しく、使いにくい面があった。 そこで、本発明が解決しようとする課題は、これらの腐食液に代えて、ボロン鋼あるいは高炭素クロム軸受鋼の焼入材などのオーステナイト結晶粒界の顕出を的確にかつ容易に行える腐食液を提供することである。 上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、ボロン鋼の焼入材のオーステナイト結晶粒界を顕出する腐食液において、400mlのH2Oに対してピクリン酸を15〜25gを溶解し、これに洗剤のライポンF(商品名:ライオン油脂製)20〜40mlを加え、さらに界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを4〜10gを加えてなることを特徴とするオーステナイト結晶粒界顕出用の腐食液である。なお、本願発明におけるボロン鋼とは、質量%でBを0.0005%以上含有する鋼からなる機械構造用鋼を指している。 請求項2の発明では、高炭素クロム軸受鋼の焼入材のオーステナイト結晶粒界を顕出する腐食液において、400mlのH2Oに対してピクリン酸を15〜25gを溶解し、これに洗剤のライポンF(商品名:ライオン油脂製)20〜40mlを加え、さらに界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを4〜10gを加えてなることを特徴とするオーステナイト結晶粒界顕出用の腐食液である。なお、本発明における高炭素クロム軸受鋼はJISで規定するSUJ鋼をいう。 本発明のオーステナイト結晶粒界顕出用の腐食液を使用することで、従来は上記した沸騰型でしか顕出が難しかったボロン鋼や非ボロン鋼である高炭素クロム軸受鋼の焼入材のオーステナイト結晶粒界の顕出が、低炭素鋼鋳片のデンドライトの顕出に対して使用する従来のライポンFと飽和ピクリン酸水溶液の場合と同様の作業で的確かつ容易に好結果を得てできるようになった。 本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。図1の(a)は本発明におけるオーステナイト結晶粒界顕出用の腐食液で顕出したボロン鋼のオーステナイト結晶粒界を400倍で示す顕微鏡写真で、図1の(b)は本発明におけるオーステナイト結晶粒界顕出用の腐食液で顕出したボロン鋼のオーステナイト結晶粒界を1000倍で示す顕微鏡写真である。図2の(a)は本発明の腐食液とは組成を変えた腐食液で顕出したボロン鋼のオーステナイト結晶粒界を400倍で示す顕微鏡写真で、図2の(b)は本発明の腐食液とは組成を変えた腐食液で顕出したボロン鋼のオーステナイト結晶粒界を1000倍で示す顕微鏡写真である。図3は本発明におけるオーステナイト結晶粒界顕出用の腐食液で顕出した高炭素クロム軸受鋼のオーステナイト結晶粒界を1000倍で示す顕微鏡写真である。図4は本発明の上記の腐食液とは組成を変えた腐食液で顕出した高炭素クロム軸受鋼のオーステナイト結晶粒界を1000倍で示す顕微鏡写真である。 本発明を実施するための最良の形態を下記の実施例1および実施例2を通じて、比較例1および比較例2と対比して説明する。 ボロン鋼の焼入材のオーステナイト結晶粒界を顕出するための本発明の腐食液は、ピクリン酸20g、ライポンF30ml、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム6gを水400mlに溶解してエッチング用の腐食液とした。 この腐食液を適用するボロン鋼は、例えば、質量%で、C:0.20%、Si:0.11%、Mn:0.28%、P:0.012%、S:0.015%、Cr:1.05%、Mo:0.01%、B:0.0015%、Al:0.009%、N:0.0052%、O:0.0018%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼である。このボロン鋼からなる鋼試片を研磨して鏡面とし、次いで上記腐食液の63℃とした溶液に浸漬して研磨して得た鏡面を4分間エッチングし、ボロン鋼のオーステナイト結晶粒界を顕出した。顕出したエッチング面を顕微鏡で400倍にして撮影した写真を図1の(a)に、さらに1000倍にして撮影した写真を図1の(b)に示す。これらの顕微鏡写真に見られるとおり、従来の沸騰型としなくとも、ボロン鋼のオーステナイト結晶粒界は明瞭に顕出された。 これに対比して、比較例1として、上記の特許文献2に記載の炭素鋼あるいは低合金鋼鋳片の凝固組織のデンドライトを顕出する腐食液をボロン鋼の焼入材に適用しても好ましいオーステナイト結晶粒界が顕出できなかった。また本発明の腐食液とは組成を変えて比較例として効果を確認した。先ず、ピクリン酸を15g溶解し、これにライポンFなどの洗剤を10mlを加え、400mlの水に溶解して腐食液とした。次いで上記の腐食液を70℃の温水とした溶液に上記と同じ組成のボロン鋼の鋼試片を上記と同様に研磨して得た鏡面を浸漬して4分間エッチングして顕微鏡試片とした。この試片のエッチング面を顕微鏡で400倍にして撮影した写真を図2の(a)に、さらに1000倍にして撮影した写真を図2の(b)に示す。これらの顕微鏡写真に見られるように、この比較例の腐食液ではボロン鋼のオーステナイト結晶粒界は明瞭には顕出することはできなかった。 高炭素クロム軸受鋼であるSUJ2鋼の焼入材のオーステナイト結晶粒界を顕出するための本発明の腐食液は、実施例1と同様に、ピクリン酸20g、ライポンF30ml、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム6gを水400mlに溶解してエッチング用の腐食液とした。 この腐食液を適用する高炭素クロム軸受鋼であるSUJ2鋼は、例えば、質量%で、C:1.00%、Si:0.30%、Mn:0.25%、P:0.015%、S:0.015%、Cr:1.40%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼である。この高炭素クロム軸受鋼の焼入材からなる鋼試片を研磨して鏡面とし、次いで上記腐食液の65℃とした溶液に研磨して得た鏡面を40秒間浸漬してエッチングし、オーステナイト結晶粒界を顕出した。顕出したエッチング面を顕微鏡で1000倍にして撮影した写真を図3に示す。この顕微鏡写真に見られるとおり、高炭素クロム軸受鋼の焼入材のオーステナイト結晶粒界は明瞭に顕出された。 これに対比して、上記の特許文献2に記載の炭素鋼あるいは低合金鋼鋳片の凝固組織のデンドライトを顕出する腐食液もボロン鋼の焼入材には適さなかったので、比較例1の腐食液でその効果を調べた。先ず、ピクリン酸を15g溶解し、これにライポンFなどの洗剤を10mlを加え、400mlの水に溶解して腐食液とした。次いで上記の腐食液を70℃の温水とした溶液に上記と同じ組成の高炭素クロム軸受鋼で焼入材からなる鋼試片を上記と同様に研磨し、得られた鏡面を浸漬して4分間エッチングして顕微鏡試片とした。この試片のエッチング面を顕微鏡で1000倍にして撮影した写真を図4に示す。この顕微鏡写真に見られるように、この腐食液では高炭素クロム軸受鋼の焼入材のオーステナイト結晶粒界は明瞭には顕出することはできなかった。a)は本発明におけるオーステナイト結晶粒界顕出用の腐食液で顕出したボロン鋼のオーステナイト結晶粒界を400倍で示す顕微鏡写真で、(b)は本発明におけるオーステナイト結晶粒界顕出用の腐食液で顕出したボロン鋼のオーステナイト結晶粒界を1000倍で示す顕微鏡写真である。(a)は本発明の腐食液とは組成を変えた腐食液で顕出したボロン鋼のオーステナイト結晶粒界を400倍で示す顕微鏡写真で、(b)は本発明の腐食液とは組成を変えた腐食液で顕出したボロン鋼のオーステナイト結晶粒界を1000倍で示す顕微鏡写真である。本発明におけるオーステナイト結晶粒界顕出用の腐食液で顕出した高炭素クロム軸受鋼のオーステナイト結晶粒界を1000倍で示す顕微鏡写真である。本発明の腐食液とは組成を変えた腐食液で顕出した高炭素クロム軸受鋼のオーステナイト結晶粒界を1000倍で示す顕微鏡写真である。 ボロン鋼の焼入材のオーステナイト結晶粒界を顕出する腐食液において、400mlのH2Oに対してピクリン酸を15〜25gを溶解し、これに洗剤のライポンF(商品名:ライオン油脂製)20〜40mlを加え、さらに界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを4〜10gを加えてなることを特徴とするオーステナイト結晶粒界顕出用の腐食液。 高炭素クロム軸受鋼の焼入材のオーステナイト結晶粒界を顕出する腐食液において、400mlのH2Oに対してピクリン酸を15〜25gを溶解し、これに洗剤のライポンF(商品名:ライオン油脂製)20〜40mlを加え、さらに界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを4〜10gを加えてなることを特徴とするオーステナイト結晶粒界顕出用の腐食液。 【課題】 従来の腐食液に代えて、ボロン鋼あるいは高炭素クロム軸受鋼の焼入材などのオーステナイト結晶粒界の顕出を的確にかつ容易に行える腐食液を提供することである。【解決手段】 ボロン鋼のオーステナイト結晶粒界あるいは高炭素クロム軸受鋼の焼入材のオーステナイト結晶粒界を顕出するための腐食液において、400mlの水に対してピクリン酸を15〜25gを溶解し、これに洗剤のライポンF(商品名:ライオン油脂製)20〜40mlを加え、さらに界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを4〜10gを加えてなることを特徴とする腐食液である。図1は本発明の腐食液で顕出したボロン鋼のオーステナイト結晶粒界の400倍および1000倍の顕微鏡写真である。【選択図】 図1