タイトル: | 公開特許公報(A)_人の褥瘡、皮膚潰瘍又は火傷を治療するための外用治療薬及び治療方法 |
出願番号: | 2003350015 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K31/357,A61P17/02,C07D323/02 |
櫻井 正太郎 三浦 敏明 神力 就子 JP 2005112795 公開特許公報(A) 20050428 2003350015 20031008 人の褥瘡、皮膚潰瘍又は火傷を治療するための外用治療薬及び治療方法 櫻井 正太郎 503370000 有限会社オゾノサン・ジャパン 503023900 池浦 敏明 100074505 櫻井 正太郎 三浦 敏明 神力 就子 7A61K31/357A61P17/02C07D323/02 JPA61K31/357A61P17/02C07D323/02 4 OL 7 4C086 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA11 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA05 4C086MA32 4C086MA63 4C086NA14 4C086ZA89 本発明は、人の褥瘡、皮膚潰瘍又は火傷を治療するための外用治療薬及び治療方法に関するものである。 寝たきり状態で自発的に体位変換できない患者で発症する褥瘡や皮膚潰瘍又は火傷などの体表疾患の疾病治療には褥瘡用外用薬や抗生物質をはじめとする種々の薬物療法が施行されている。褥瘡は創面の色調等に基づいて病期が分類され、皮膚潰瘍又は火傷の治療もそれぞれの時期によって、外用治療薬を使い分け、軟膏を患部に木ベラや手指等で塗布しなければならない。また、薬物療法が効果を示さない難治性の疾病による治療の遷延化も深刻な問題となっている。 本発明は、人における褥瘡、皮膚潰瘍又は火傷を速効的に治療するための外用治療薬及び治療方法を提供することをその課題とする。 本発明によれば、以下に示す外用治療薬及び治療方法が提供される。(1)人の褥瘡、皮膚潰瘍又は火傷用外用治療薬であって、オレイン酸エステルオゾニド又はその含有物を多孔性材料に含有保持させたことを特徴とする外用治療薬。(2)該オレイン酸エステルオゾニドが、オレイン酸トリグリセリドオゾニドである前記(1)に記載の外用治療薬。(3)該多孔性材料がガーゼである前記(1)又は(2)に記載の外用治療薬。(4)人の褥瘡部、皮膚潰瘍又は火傷部に対して前記(1)〜(3)のいずれかに記載の外用治療薬を貼付することを特徴とする人の褥瘡、皮膚潰瘍又は火傷を治療する方法。 本発明によれば、人における各種の褥瘡、皮膚潰瘍又は火傷部に対して、本発明の治療薬を貼付することにより、該褥瘡、皮膚潰瘍又は火傷を迅速かつ安価に治療することができる。 本発明の外用治療薬(以下、単に外用薬とも言う)は、その有効成分としてオレイン酸エステルオゾニドを含有するものである。オレイン酸エステルオゾニドには、オレイン酸トリグリセリドオゾニドや、オレイン酸アルキルエステルオゾニド等が包含される。 オレイン酸エステルオゾニドは、オレイン酸エステル又はオレイン酸エステル含有物にオゾンを反応させることによって容易に製造することができる。このオゾニド化反応は従来良く知られている反応である。オレイン酸エステル含有物には、構成脂肪酸としてオレイン酸を約80%含むオリーブ油やベニバナ油等が含有されるが、このものにオゾンを反応させるとオレイン酸トリグリセリドオゾニドを約45%含有するオゾン化オリーブ油やオゾン化ベニバナ油などが得られる。このようなオゾン化植物油(オレイン酸トリグリセリドオゾニド含有物)もそのまま外用治療薬成分として用いることができるが、もちろん、それからオレイン酸トリグリセリドオゾニドを単離して外用治療薬成分として用いることもできる。 本発明の外用治療薬は、オレイン酸エステルオゾニド又はその含有物を多孔性材料に含有保持させたものである。 多孔性材料としては、薬効成分であるオレイン酸エステルオゾニド又はオレイン酸エステルオゾニド含有物を含有保持させ得るものであればどのようなものでも使用可能である。このようなものには、ガーゼ、繊維状シート又はフィルム、織布、編布、フェルト、多孔性プラスチックシート又はフィルム、粉末状多孔性物質(シリカ、アルミナ、ゼオライト、粘土等)を通液性袋内に充填封止したシート状物等が挙げられる。 多孔性材料にオレイン酸エステルオゾニド又はその含有物を含有保持させる場合、そのオレイン酸エステルオゾニド又はその含有物は、液状、ゼリー状、ワセリン状等の各種形状であることができる。それらのオゾニドは、適当な希釈剤、例えば、アルコール、多価アルコール、油脂、ワセリン、流動パラフィン等と混合して用いることができる。 オレイン酸エステルオゾニド又はその含有物を多孔性材料に含有保持させて形成した外用治療薬は、そのまま流通用製品とすることもできるが、プラスチックフィルムや、アルミ箔フィルム等の密封性袋内に封入したり、そのオゾンニド含有多孔性材料の表面にプラスチックフィルムやアルミ箔等の非通気性又は通液性シート又はフィルムを貼着して流通用製品として用いるのが好ましい。このような製品は、その流通や保管に際して安全かつ安定に保持することができる。そして、その使用に際し、その外袋を破って内容物を取り出して患部に貼付して使用される。また、表面に貼着した非通気性又は通液性のシート又はフィルムを剥離して患部に貼付して使用される。 オレイン酸トリグリセリドオゾニドは、下記式(1)で表される。 オレイン酸アルキルエステルオゾニドは、下記一般式(2)で表される。 前記式中、Rは炭素数1〜12、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のアルキル基を示す。アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等を挙げることができる。 オレイン酸アルキルオゾニド、たとえばオレイン酸メチルオゾニドは室温では一部固形化した油状物質である。 オレイン酸エステルオゾニドの投与は、患部の範囲や、症状等により適宜選定される。例えば、該オゾニド含有多孔性材料を、その1回当りの貼付量が該オゾニド換算量で1cm2当り18mg程度となるように選定し、1日に1〜3回程度患部に貼付する。 本発明の外用治療薬は、人における褥瘡、皮膚潰瘍又は火傷の治療に適用されるが、この場合の褥瘡、皮膚潰瘍又は火傷による体表疾患には、人における各種褥瘡、皮膚潰瘍、熱傷、放射線による火傷、痔瘻、術後の瘻孔、肛囲膿瘍、感染性粉瘤、毛巣瘻、紅斑、不良肉芽、糜爛、液浸出、膿汁、MRSA感染、真菌感染等が包含される。 次に本発明を実施例により詳述する。参考例1(オレイン酸トリグリセリドオゾニドの合成) オレイン酸トリグリセリド(トリオレイン)5gを約30〜40℃に加温し、これにオゾン−酸素混合ガス(オゾン濃度80μg/ml、ガス流量80ml/分)を導通した。反応容器からのガスの出口に10%ヨウ化カリウム(KI)水溶液を入れたガス洗浄瓶を連結し、KI溶液が黄色を呈するまでオゾン−酸素混合ガスの導通を続けたところ、オレイン酸トリグリセリドが810mgのオゾンを吸収したところでKI溶液が黄色を呈した。得られたオレイン酸トリグリセリドオゾニドは透明なゼリー状で、その構造は以下の機器データにより確認した。 13C−核磁気共鳴スペクトル(in CDCl3): 105ppm(O−C−O、オゾニド環の炭素) 1H−核磁気共鳴スペクトル(in CDCl3): 5.185ppm(C−9−H及びC−10−H、シス型) 5.140ppm(C−9−H及びC−10−H、トランス型) 赤外線吸収スペクトル(neat): 1100cm−1(O−C−O) 質量スペクトル(electrospray ionization): m/z1051(M+Na+)(オゾン化オリーブ油の合成) オリーブ油190gを約30℃に加温し、上記と同様にKI溶液が黄色を呈するまでオゾン−酸素混合ガス(オゾン濃度10μg/ml、ガス流量800ml/分)を約60時間導通し、白色ワセリン状のオゾン化オリーブ油を220g得た。主成分はオレイン酸トリグリセリドオゾニド(45%)であり、この他にパルミチン酸や、リノール酸オゾニドを含むトリグリセリドのオゾニドも含まれていた。 通常はオレイン酸トリグリセリドオゾニド(ゼリー状)およびオレイン酸トリグリセリドオゾニドを含有するオゾン化オリーブ油やオゾン化ベニバナ油(ワセリン状)を均等に含有保持させたガーゼ等の多孔性材料を直接患部に貼付するが、この場合、オゾニドの塗布量を調整するために、オリーブ油や白色ワセリンなどで希釈したものをガーゼ等の多孔性材料に含有保持させることや、あるいはガーゼ等の多孔性材料の大きさを調整して用いることも可能である。必要があればその上を無菌ガーゼで覆うことができる。(オレイン酸メチルオゾニドの合成) オレイン酸メチルを以下のようにオゾンと反応させ、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離してオレイン酸メチルオゾニドを得た。オレイン酸メチル5gを約30〜40℃に加温し、これにオゾン−酸素混合ガス(オゾン濃度80μg/ml、ガス流量80ml/分)を導通した。反応容器からのガスの出口に10%ヨウ化カリウム(KI)水溶液を入れたガス洗浄瓶を連結し、KI溶液が黄色を呈するまでオゾン−酸素混合ガスの導通を続けたところ、オレイン酸メチルが約800mgのオゾンを吸収したところでKI溶液が黄色を呈した。得られた反応混合物を110gのシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーに付し、ヘキサン2.2L、10%ベンゼン含有ヘキサン1.6L、50%ベンゼン含有ヘキサン1.6Lで順次展開した後、50%ベンゼン含有ヘキサン2.9Lおよびベンゼン1.4Lの溶出画分を減圧濃縮乾固することによってオレイン酸メチルオゾニドのシスとトランス異性体混合物を油状物質(一部固形化)として3.2g得た。その構造は以下の機器データにより確認した。 13C−核磁気共鳴スペクトル(in CDCl3): 104ppm(O−C−O、オゾニド環の炭素) 1H−核磁気共鳴スペクトル(in CDCl3): 5.18ppm(C−9−H及びC−10−H、シス型) 5.13ppm(C−9−H及びC−10−H、トランス型) 赤外線吸収スペクトル(neat): 1100cm−1(O−C−O) 質量スペクトル(electrospray ionization): m/z367(M+Na+)実施例1(人の褥瘡に対する適用) 本発明では、人の褥瘡の治療に、オレイン酸アルキルエステルオゾニドやオレイン酸トリグリセリドオゾニドあるいはオレイン酸トリグリセリドオゾニドを含有するオゾン化植物油を付着浸透させたガーゼ等の多孔性材料を適用することができる。従来、褥瘡の治療には肉体的に大きな負荷がかかり、軽度のものを除いて治療期間は数ヶ月〜数10ヶ月と長期化し、患部が広範囲で深部に達する場合もあり、しばしば難治性のものとなる。 このとき、患部あるいは患部周囲にオレイン酸トリグリセリドオゾニドあるいはオレイン酸トリグリセリドオゾニドを含有するオゾン化植物油を付着浸透させたガーゼ等の多孔性材料を貼付することによって、遅延していた治癒過程が刺激され、肉芽形成を正常化し、欠損組織の増生を促し、併せて明瞭な疼痛軽減効果を現し、治癒を促進させる効果を得ることができる。すなわち、褥瘡およびその周囲の病巣より壊死組織を除去し、オレイン酸トリグリセリドオゾニドあるいはオレイン酸トリグリセリドオゾニドを含有するオゾン化植物油を付着浸透させたガーゼ等の多孔性材料を適当量貼付する。患部に接触するとオゾニドが速やかに患部全体にゆきわたる。必要があればその上を無菌ガーゼで覆うことができる。オゾン化オリーブ油を1cm2当り40mg含有保持させたガーゼを、患部に対して、1日1回貼付し、この貼付を30日間継続することにより、該患部を治癒することができた。 これらの方法によれば、簡便に貼付でき、これまで治療に難渋していた重篤な褥瘡が治癒するなど、従来の治療方法で長期間かかっていた褥瘡の治療期間が短縮し、治癒率が向上するという効果を有する新規治療方法となる。実施例2(人の皮膚潰瘍に対する適用) 人の皮膚潰瘍は、動脈血栓、バージャー病(閉塞性血栓性血管炎)、静脈炎等が原因となり、しばしば難治性で、従来の方法では治療に難渋することの多い疾患である。これらの皮膚潰瘍に対して、オレイン酸エステルオゾニドあるいはオレイン酸エステルオゾニドを含有する物質、例えば、オゾン化植物油等を付着浸透させたガーゼを適用することができる。 本症は治療方法に乏しく、現在まで積極的な治療方法が確立されていなかった。もっぱら二次感染を防止することを目的とした殺菌性薬剤の患部への塗布が実施されるにすぎなかった重要な疾患である。 オレイン酸トリグリセリドオゾニドあるいはオレイン酸トリグリセリドオゾニドを含有するオゾン化植物油等を付着浸透させたガーゼ等の多孔性材料を、潰瘍を形成した病変部に貼付する。すなわち、皮膚が剥がれて欠損した状態にある患部を覆うように貼付する。必要があればその上を無菌ガーゼで覆うことができる。患部に接触するとオゾニドは速やかに融解して患部全体にゆきわたる。オゾン化オリーブ油を1cm2当り40mg含有保持させたガーゼを、患部に対して、1日1回貼付し、この貼付を30日間継続することにより、該患部を治癒することができた。 この新規の治療方法による効果は、潰瘍性に欠損した皮膚領域を急速に縮小させ、皮膚の修復と再生を促進し、疼痛が軽減され、患者は早期に苦痛から開放される。 皮膚潰瘍に対して、オレイン酸エステルオゾニドあるいはオレイン酸エステルオゾニドを含有するオゾン化植物油等を付着浸透させたガーゼ等の多孔性材料を貼付すれば、創傷の保護、感染の防止、鎮痛、組織再生の促進などの優れた効果を発現し、従来の治療方法では治療に難渋していた疾患に対し、治療期間が短縮し、治癒率が向上するという効果を有する新規の治療方法となる。 人の褥瘡、皮膚潰瘍又は火傷用外用治療薬であって、オレイン酸エステルオゾニド又はその含有物を多孔性材料に含有保持させたことを特徴とする外用治療薬。 該オレイン酸エステルオゾニドが、オレイン酸トリグリセリドオゾニドである請求項1に記載の外用治療薬。 該多孔性材料がガーゼである請求項1又は2に記載の外用治療薬。 人の褥瘡部、皮膚潰瘍部又は火傷部に対して請求項1〜3のいずれかに記載の外用治療薬を貼付することを特徴とする人の褥瘡、皮膚潰瘍又は火傷を治療する方法。 【課題】 人における褥瘡、皮膚潰瘍又は火傷を速効的に治療するための外用治療薬を提供する。【解決手段】 人の褥瘡、皮膚潰瘍又は火傷用外用治療薬であって、オレイン酸エステルオゾニド又はその含有物を多孔性材料に含有保持させたことを特徴とする外用治療薬。【選択図】 なし