タイトル: | 公開特許公報(A)_抗原抗体複合体を利用した新規な検出法 |
出願番号: | 2003346488 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N33/543,G01N33/53,G01N33/531 |
奥村 康 JP 2005114444 公開特許公報(A) 20050428 2003346488 20031006 抗原抗体複合体を利用した新規な検出法 アサヒビール株式会社 000000055 舟橋 榮子 100083714 奥村 康 7G01N33/543G01N33/53G01N33/531 JPG01N33/543 521G01N33/53 JG01N33/53 QG01N33/531 A 7 OL 5本発明は、抗原抗体反応を利用して被検物質を測定するための方法に関する。診断の分野では微量物質の測定法として種々の方法が開発されているが、高感度測定法として抗原抗体反応を利用した免疫分析法が幅広く利用されている。最近では、一般医院や家庭においても簡易測定の必要性も高まり簡易型測定装置やキットが開示されている(特許文献1、2、3,4等参照)。開示されている方法では、抗体を固定化したニトロセルロースなどのろ紙担体に各種必要な試薬を塗布しておき被検試料を所定の位置に加え毛細管現象によって試料がろ紙上を移動し所定の位置に結合した標識試薬を測定するものである。最近では、アサヒフードアンドヘルスケア株式会社(本社;東京)から免疫クロマトグラフィーの原理を利用した“ダニスキャン(商品名)”が発売されている。本品は、室内塵の中でアレルギーに強く関わっているダニアレルゲンを半定量的に測定できるものであり一般家庭でも利用されている。この製品は、被検試料を加える場所の工夫によって固体試料を測定できるようになっている。これまでに開発されてきた当該分析手法では、標識抗体、捕捉抗体および残存した捕捉抗体を捕捉する抗体の3種が不可欠であった。特に、被検物質に対する抗体は認識部位の異なる2種類が必要である。特開昭63-281053号公報特開平2-500540号公報米国特許第4,235,601号明細書米国特許第4,361,537号明細書近年では、抗体が認識する部位の構造が明らかになっている被検試料が増加している。本発明では、その知見を用い、抗原抗体反応を利用して被検物質を測定するため、より簡便に免疫学的手法で検出する方法を提供することを課題とする。本発明の第一は、抗原抗体反応を利用する被検物質の検出方法において、被検物質に対する抗体との親和性を変化させた被検物質の一部分又は改変体と、該抗体との複合体を用いることを特徴とする検出方法である。本発明の第二は、抗原抗体反応を利用する被検物質の検出方法において、被検物質に対する抗体との親和性が低下した被検物質の一部分又は改変体と、該抗体との複合体を用いることを特徴とする検出方法である。本発明により、従来の免疫クロマトグラフィーを用いた被検物質の検出方法に比べ、特異性を低下させることなく、大幅に簡素化できることから、低価格の製品化が可能となる。また、被検物質に対する認識部位の異なる抗体を2種作成する必要がなく適用範囲が広げることができる。抗体認識部位(エピトープ)は、種々の物質で同定されている。例えば、ダニアレルゲンDerf2の場合、作製されたモノクローナル抗体13A4, 15E11および18G8の3種があり、それぞれエピトープが決定されている(Molecular Immunology 1999; 36:53-60、特開平05-125099、特開平06-16695)。このエピトープ部位のペプチドを作製し先に述べた抗体とあらかじめ結合させた複合体を用いれば該アレルゲンをさらに簡便に測定できる。すなわち、エピトープペプチドに適当な色素、例えばロイコ色素などを結合させておく。この色素は、通常無色であるが顕色剤と反応することにより着色することを利用する。ロイコ色素を結合したエピトープと抗Derf2モノクローナル抗体複合体を作製しスチレンなどの適当な担体に固定しておく。そこへダニアレルゲンDerf2を含む被検物質を加えると抗体に結合しているエピトープペプチドと本来の結合抗原であるアレルゲンが競合し親和性の違いによって置換が生じる。遊離した色素を結合したエピトープペプチドは、拡散あるいは毛細管現象などを利用して固定されている部位から移動させることができる。移動した部位に顕色剤、例えば没食子酸あるいはシリカゲルなどを含有させておけば発色反応が生じ目視できるようになり被検物質中にダニアレルゲンDerf2などの抗体認識物質の存在を容易に検出できる。遊離してくる色素結合ペプチド量は、被検物質中のDerf2量に比例することから発色強度に差異が生じ簡便に存在量が推定できる。さらに、実施例1に記載のように、エピトープペプチドの一部のアミノ酸を置換することによって親和性を変え遊離条件を種々変え感度設定を容易に行えるという利点もある。さらに、実施例2に記載のように、抗体結合部位のアミノ酸配列を部位特異的変異によって置換し親和性を変えた抗体認識物質そのものを製造し(特開平06-253851、特開平07-95887、WO96/030539)、先に述べた検出法に利用できる。 以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。ダニアレルゲンDerf2遺伝子の塩基配列は、Jpn. J. Allergology 1990; 39:557-561に、また当該アレルゲンに対するモノクローナル抗体15E11のエピトープはMolecular Immunology 1999; 36:53-60に開示されている。その一部のアミノ酸を置換した8アミノ酸残基(Ala-Thr-Ala-Gly-Lys-Ileu-Ala-Asp)からなるペプチドをペプチド合成機を用いて合成した。ペプチドシークエンサーで配列を確認した後に、アミノ基をアセチル化し続いてC末端側のカルボキシル基を塩化チオニールで処理し酸クロライドとした。次に、含水エタノールに溶解したメチルバイオレットとNaHCO3でpHを中性に保ちながら反応させC末端にメチルバイオレットを結合したペプチドを調製した。抗Derf2モノクローナル抗体15E11(生化学工業株式会社カタログ番号290465)を50μg/ml濃度になるようにリン酸緩衝液(pH6.8、50mM)に溶解した。実施例1で作製した色素結合ペプチドを50μg/ml濃度に同じ緩衝液に溶解した。抗体溶液100μlをエッペンドルフチューブに入れ続いて色素結合ペプチド溶液を10μl加えた。室温で、3時間放置し結合反応を行わせた。続いて、ザルトリウス社製ビバスピン2(分画分子量10000)に反応終了液を入れ5000g、室温で5分間遠心した。通過液を捨て先に使用したリン酸緩衝液500μlを加えて遠心によって洗浄した。洗浄操作は3回繰り返した。膜上に残った抗体と色素結合ペプチドとの複合体は、洗浄に用いたリン酸緩衝液50μlに溶解した。ポリスチレン樹脂(JSR社製;IMMUTEX−PS、2μm)1ml(固形分wt10%)をガラスフィルター上で蒸留水で3回洗浄し実施例2で用いたリン酸緩衝液50μlにけん濁した。そこへ、実施例2で作製した抗体/色素結合ペプチド複合体溶液50μlを加え室温で5時間放置した。ビーズを遠心分離にて集め同じリン酸緩衝液を加えて遠心分離操作にて洗浄を3回繰り返した。洗浄した後に、1%BSAを加えブロッキングした。リン酸緩衝液で3回洗浄した後に減圧条件下で乾燥し使用するまでデシケーター中、室温で保存した。ガラスキャピラリー(Drummond社製;カタログ番号2-000-200、200μl用)の1端を脱脂綿で栓をし、そこへ実施例3記載の抗体と色素結合ペプチド複合体を吸着したスチレンビーズを1mmの厚みになるよう充填した。次に結晶性セルロース(旭化成社製;Ceolus PH-F20)を1cm重層しさらに何も吸着させていないスチレンビーズを1mmの厚みになるよう充填した。さらに結晶性セルロースを1cmの厚みになるよう重層し脱脂綿で全体を固定した。抗体複合体を吸着したスチレンビーズ側にダニアレルゲンDerf2を10μg/mlになるようにリン酸緩衝液に溶解した溶液を200μl加え室温で放置した。溶液がキャピラリー内を移動するに従って色素のバンドが抗体複合体を吸着させていたスチレンビーズから何も吸着させていないスチレンビーズ層に移動しDerf2を検出することができた。 抗Derf2モノクローナル抗体15E11が認識するDerf2のエピトープ部アミノ酸に部位特異的変異を導入して抗体との結合性を低下させた改変Der2を作製した。すなわち、Derf2分子の128番目のアルギニンおよび129番目のアスパラギン酸をそれぞれアラニンに置換したDerf2遺伝子を作製した。岩本らが開示している方法(Int. Arch. Allergy Immunol 1996; 109:356-361)に従って発現プラスミドpFL11に当該遺伝子を組み込んだ。大腸菌JM109に作製したプラスミドを導入し50μg/ml濃度のアンピシリン存在下LB培地中、30℃で培養した。OD600nmにおける濁度が0.5になったときにイソプロピル-β-D-ガラクトピラノシドで発現を誘導し6時間培養を継続した。培養終了後、菌体を遠心分離で集め生理食塩水で2回洗浄後、DNase及びデオキシコール酸ナトリウムを含むトリス塩酸緩衝液(100mM、pH8.0)にけん濁し4℃で15分振とうした。菌体けん濁液を氷冷下、超音波処理にて菌体を破砕し遠心分離にて封入体を回収した。回収した封入体を10℃で一晩0.1mMのフェニルメチルスルフォニルジフルオライド及び8M尿素を含むトリス塩酸緩衝液に溶解し遠心分離にて沈殿を除去した。上清をアニオンイオン交換樹脂で精製した後、ゲルろ過で緩衝液をリン酸緩衝液に交換した。限外ろ過で濃縮しDerf2の改変体を調製した。実施例5で調製したDerf2改変体を酢酸緩衝液(pH5.0、50mM)に50μg/mlになるよう溶解した。そこへ、0.1%になるよう Coomassie (Amersham社製;PHastGel Blue R-350)溶液を加え室温で60分振とうした。その後、分画分子量3000の限外ろ過膜(ザルトリウス社製;ビバスピン2)で結合しなかった色素を除いた。0.1%の酢酸溶液で3回洗浄した後、リン酸緩衝液(pH7.4、50mM)に50μg/mlになるよう溶解した。抗Derf2モノクローナル抗体15E11を500μg/mlになるよう先に述べたリン酸緩衝液に溶解し色素結合改変Derf2を等量加え室温で3時間放置した。その後、分画分子量50,000の限外ろ過膜(ザルトリウス社製;ビバスピン2)で処理し抗体に結合していない色素結合Derf2改変体を除去した。同じリン酸緩衝液で3回洗浄後、抗体と色素結合改変Derf2複合体を100μlのリン酸緩衝液に溶解した。実施例3に記載した方法に従って、スチレンビーズに作製した複合体を結合させた後にBSAでブロッキングした。ブロッキングした複合体が結合したスチレンビーズを減圧条件下、室温で乾燥した。Drummond社製200μl用キャピラリーの一端を不織布で栓をした後に結晶性セルロース(旭化成社製;Ceolus PH-F20)を1cmの高さに充填した。そこへ実施例6で記載した色素結合改変Derf2と抗体の複合体を結合したスチレンビーズを1mmの高さに充填し結晶性セルロースを1cm重層した。次に、何も吸着させていないスチレンビーズを1mmに重層しさらに結晶性セルロースを1cm重層した。最後に開放になっているキャピラリーの一端を脱脂綿で固定した。不織布にダニアレルゲンDerf2を10μg/ml溶液になるようリン酸緩衝液に溶解した溶液10μlを添加した。続いて、同じ場所にリン酸緩衝液を200μl添加した。そのまま10分間放置した。色素結合改変Derf2は、固定されていたスチレンビーズから外れ結晶性セルロース中を移動し何も結合していないスチレンビーズに捕捉されて青色のバンドが形成され被検液中にダニアレルゲンDerf2が存在することが検出できることが明らかとなった。本発明によれば、ダニアレルゲンの場合、作製されたモノクローナル抗体とあらかじめ結合させた複合体を用いれば該アレルゲンを簡便に測定でき、発色強度による定量、感度設定を容易に行える。また抗体結合部位のアミノ酸配列を部位特異的変異によって置換し親和性を変えた抗体認識物質を製造し、検出法に利用できる。抗原抗体反応を利用する被検物質の検出方法において、被検物質に対する抗体との親和性を変化させた被検物質の一部分又は改変体と、該抗体との複合体を用いることを特徴とする検出方法。抗原抗体反応を利用する被検物質の検出方法において、被検物質に対する抗体との親和性が低下した被検物質の一部分又は改変体と、該抗体との複合体を用いることを特徴とする検出方法。請求項1または2記載の方法が免疫クロマトグラフィーを用いることを特徴とする検出方法。被検物質がダニアレルゲンである請求項1、2または3記載の検出方法。被検物質の一部分がエピトープ(抗原認識部位)または該エピトープの1アミノ酸以上の付加、欠失又は置換誘導体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の検出方法。被検物質の改変体が1アミノ酸以上の付加、欠失又は置換誘導体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の検出方法。被検物質の一部分または改変体に色素を結合させたことを特徴とする請求項項1〜6のいずれか1項に記載の検出方法。 【課題】抗原抗体反応を利用して被検物質を測定するため、より簡便に免疫学的手法で検出する方法を提供することを課題とする。【解決手段】抗原抗体反応を利用する被検物質の検出方法において、被検物質に対する抗体との親和性を変化させた被検物質の一部分又は改変体と、該抗体との複合体を用いることを特徴とする検出方法である。また、抗原抗体反応を利用する被検物質の検出方法において、被検物質に対する抗体との親和性が低下した被検物質の一部分又は改変体と、該抗体との複合体を用いることを特徴とする検出方法である。