タイトル: | 公開特許公報(A)_シランカップリング剤 |
出願番号: | 2003345280 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C07F7/12,C07C317/14 |
中川 勝 JP 2005112732 公開特許公報(A) 20050428 2003345280 20031003 シランカップリング剤 財団法人理工学振興会 899000013 関根 武 100104684 渡部 温 100100413 中川 勝 7C07F7/12C07C317/14 JPC07F7/12 GC07C317/14 6 OL 33 4H006 4H049 4H006AA01 4H006AA03 4H006AB84 4H006TA02 4H049VN01 4H049VP01 4H049VQ02 4H049VQ12 4H049VQ54 4H049VR23 4H049VR31 4H049VU22 4H049VW02 本発明は、シランカップリング剤に関するものである。本発明のシランカップリング剤は、安価な汎用紫外線光源から得られる低露光量の紫外線照射により、基材表面を疎水性から親水性に変性し得る感紫外線シランカップリング剤である。 シランカップリング剤は、異質な材料間の接着性を改良する目的で使用される化合物であり、複合材料の開発に伴い、その重要性が増大し、工業的にも広く用いられている。シランカップリング剤は、前記接着性改良の目的以外にも、重合体への架橋構造の付与、撥水性や撥油性の付与や帯電防止等による基材の化学的表面改質等にも用いられる。 シランカップリング剤を用いた表面改質法は、極微量の化学物質の使用によって効率よく表面物性を変化させるという特徴を有している。このため、被修飾物である固体基板の化学組成が維持される点において、被修飾部材のリサイクルやリユースを促進すると考えられ、環境低負荷型材料として期待されている。 光リソグラフィー法を用いた金属配線基板の作製工程や、オフセット印刷における版胴作製工程では、有機画像形成材料として、感光性樹脂組成物のフォトレジスト材料が用いられている。通常、上述した基板の表面に配設されるフォトレジスト材料は数10μm程度の厚みを有しており、作製工程において大量のフォトレジスト材料からなる廃棄物が排出されるため、環境低負荷の観点から、その低減化が強く望まれている。このような技術背景のもと、感光層の厚みが分子一層に相当する、数nmの光反応性有機ナノ薄膜を用いた金属配線基板の製造方法や印刷方法の開発が行われている。 例えば、特開平6−202343号公報には、ジアゾナフトキノン基を感光性部位として有するシラン化合物から形成される自己組織化単分子膜を用いて金属配線基板を製造することが開示されている。該公報によれば、360nmの紫外線を照射することにより、ジアゾナフトキノン基からインデンカルボン酸基に変化する光反応性有機ナノ薄膜に、前記照射波長の紫外線を照射して形成させたカルボキシル基に縮合触媒存在下で、2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸を縮合させ、露光部を選択的に疎水化し、再度前記照射波長の紫外線を照射して形成させた、親水性を示すカルボキシル基に金属化触媒を吸着させ、無電解めっきによる選択的金属化を行い、金属配線基板を製造する方法が開示されている。該公報に開示された方法では、あらかじめ基板表面に形成させる光反応性有機ナノ薄膜中に含まれるジアゾナフトキノン基の化学反応活性が高いことや、金属化のための疎水−親水表面を作製するために、2段階の露光が必要であるという問題がある。 Science, 252, 551(1991)には、フェニルトリクロロシランやベンジルトリクロロシランが表面酸化シリコン基板に形成する疎水性自己組織化単分子膜に照射波長193nmの真空紫外線を照射すると、基剤表面が親水化される現象が開示されている。フェニル基やベンジル基を、Si−C結合の結合エネルギーよりも大きい遠紫外線で励起すると、Si−C結合が光解離して基板表面にシラノール基が形成される。また、パターン露光して作製される疎水−親水表面に、触媒化処理と無電解めっき処理を施すと、未露光部の疎水性表面に金属被覆膜が選択的に形成される。ArFレーザーから放射される波長193nmの遠紫外線を用いて0.3〜0.4J・cm−2の露光量で疎水性表面を親水化表面に変性させることも可能であるが、照射を真空下もしくは不活性ガス雰囲気下で行う必要がある。従って、照射波長の長波長化ならびにレーザー光源よりも安価な光源から放射される波長に対応できる感紫外線単分子膜の開発が望まれている。 また、193nmの遠紫外線照射では、脂肪族炭化水素基やパーフルオロ炭化水素基を含有するシランカップリング剤から形成される自己組織化単分子膜を基板表面から除去して親水化させることは困難であることが知られている。この点を解決する方法として、表面科学,22,364(2001)には、Xeエキシマ−ランプからの172nmの遠紫外線を利用する方法が開示されている。オクタデシルトリメトキシシラン等から基板表面に形成される有機ナノ薄膜に、172nmの光照射を行うと、C−C結合やC−H結合が切断され、ラジカルが形成される。このラジカルは真空紫外線照射下で生じる原子状酸素と反応して表面の有機物が分解され、最終的にH2OやCO2等の揮発性分子として除去され、基板表面が親水化されると考えられている。 一方、特開2000−282240号公報には、パーフルオロ炭化水素を含有するシランカップリング剤から形成される疎水性単分子膜を172nmの遠紫外線照射によって親水性表面に変性させる方法が開示されている。また、特開2002−23356号公報及び特開2002−23367号公報には、メタルハライドランプから放射される222nm又は308nmの光照射によってパーフルオロ基を含有する疎水性有機ナノ薄膜を親水性表面に変性させる方法が開示されている。上記公報及び文献に開示された方法において用いられている有機シランカップリング剤は高価であるため、上記方法を実施するには費用がかかるという問題がある。従って、基板表面を親水化するための安価なシランカップリング剤が望まれている。また、上記公報及び文献に開示された方法を実施するための照射光源も高価であるため、より安価な汎用紫外線光源に対応できる、基板表面を疎水性から親水性に変性することのできる感紫外線シランカップリング剤の開発が望まれている。 上述したような表面物性調整過程においては、自己組織化単分子膜のパターン形成のために、遠紫外線の照射が必要である。しかしながら、遠紫外線を照射するための光源は高価であり、安価な方法が望まれている。水銀灯は安価に得ることができるため、水銀灯から放射される紫外線に高感度に対応できる、感紫外線シランカップリング剤が望まれている。 本発明者は、上記課題を解決するため、感紫外線シランカップリング剤の開発を進め、2−(4−(ベンジルスルホニル)フェニル)エチルクロロジメチルシランから形成される自己組織化単分子膜が、汎用光源である水銀灯からの254nmの紫外線に反応して、この単分子膜で被覆されたシリカガラス表面が、1.5J・cm−2の露光量の照射で基材表面が親水化する現象を見出した(日本化学会第79回春季年会)。この基材表面が親水化する現象は、光反応性有機ナノ薄膜内におけるベンジル基の光脱離によるスルフィン酸基の形成に基づくことが判明した。しかしながら、この方法においても過剰露光を行うと、親水化された表面が再び疎水化されてしまう。そこで、過剰露光に対しても、基板表面の疎水性表面から親水性表面への変化を維持することのできるシランカップリング剤を開発することが望まれている。特開平6−202343号公報特開2000−282240号公報特開2002−23356号公報特開2002−23367号公報Science, 252, 551(1991) 従って、本発明の目的は、安価な汎用紫外線光源から得られる低露光量の紫外線照射により、基材表面を疎水性から親水性に変性し得るシランカップリング剤を提供することを目的とする。特に、紫外線照射後に基材表面を親水性にする、形成されたスルフィン酸基の光分解反応を伴わない、290nm以上の波長の紫外線に対して活性を示すシランカップリング剤を提供することを目的とする。 上記目的を達成するため、本発明者は鋭意検討した結果、ベンゼンスルフィン酸が290nm未満の紫外線照射により、化合物自身が分解するという知見を得た。また、ベンジルスルホニルベンゼンが280nmに紫外線の吸収端を有しているのに対し、(2−ナフチルメチルスルホニル)ベンゼンは300nmに、(1−ナフチルメチルスルホニル)ベンゼンは320nmに、(2−メチルナフタレン−1−イル)メチルスルホニルベンゼンは330nmに紫外線の吸収端を有していることを見出した。また、これらナフチル基を有する化合物では、290nm以上の紫外線照射によってスルフィン酸基が形成されることが紫外可視吸収スペクトル測定から明らかとなった。上記の知見に基づき、光生成物であるスルフィン酸基の後続光分解反応を防ぐためには、290nm以上の紫外線照射波長に吸収帯を有し、かつ290nm以上の紫外線照射によりスルフィン酸基が形成される感紫外線シランカップリング剤が有力な候補となり、ナフチルメチル基を有するスルホン基含有シランカップリング剤により上記課題が解決し得るという知見を得た。 すなわち、本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、下記一般式(I)で示されるシラン化合物からなるシランカップリング剤を提供するものである。(上記式中、R1はハロゲン、アルコキシ基及びイソシアナト基からなる群から選択される一価官能基であり、R2は水素またはアルキル基であり、R3は水素またはアルキル基であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基、トリフルオロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ベンゾイル基、ブロモアルキル基、クロロアルキル基、アリール基、フェノキシ基、炭素数1から16までの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基からなるアルキル基及びアルキルオキシ基からなる群から選択される一価官能基であり、xは0、1又は2である。) また、本発明は、下記一般式(II)で示されるシラン化合物からなるシランカップリング剤を提供するものである。(上記式中、R11はハロゲン、アルコキシ基及びイソシアナト基からなる群から選択される一価官能基であり、R12は水素またはアルキル基であり、R13は水素またはアルキル基であり、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基、トリフルオロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ベンゾイル基、ブロモアルキル基、クロロアルキル基、アリール基、フェノキシ基、炭素数1から16までの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基からなるアルキル基及びアルキルオキシ基からなる群から選択される一価官能基であり、xは0、1又は2である。) 上記一般式(I)及び(II)で示される感紫外線カップリング剤は、紫外線照射後に基材表面を親水性にする、形成されたスルフィン酸基の光分解反応を伴わない、290nm以上の波長の紫外線に対して活性を示すシランカップリング剤である。 また、本発明は、下記一般式(III)で示されるスルホン基含有化合物を提供する。(上記式中、R3は水素またはアルキル基であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基、トリフルオロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ベンゾイル基、ブロモアルキル基、クロロアルキル基、アリール基、フェノキシ基、炭素数1から16までの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基からなるアルキル基及びアルキルオキシ基からなる群から選択される一価官能基である。) また、本発明は、下記一般式(IV)で示されるスルホン基含有化合物を提供する。(上記式中、R13は水素またはアルキル基であり、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基、トリフルオロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ベンゾイル基、ブロモアルキル基、クロロアルキル基、アリール基、フェノキシ基、炭素数1から16までの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基からなるアルキル基及びアルキルオキシ基からなる群から選択される一価官能基である。)上記一般式(III)で示されるスルホン基含有化合物、及び上記一般(IV)で示されるスルホン基含有化合物は、それぞれ上記一般式(I)で示されるシランカップリング剤、及び上記一般式(II)で示されるシランカップリング剤を製造するための原料として用いられる。 上記スルホン基含有化合物は、上記感紫外線シランカップリング剤を製造するための原料となる。上記感紫外線シランカップリング剤は、上記スルホン基含有化合物を用いることによって容易に製造可能である。 本発明のシランカップリング剤は、照射波長290nm以上の紫外線を用いた場合、過剰露光に対して基材表面の親水性を保持することのできる光反応性有機ナノ薄膜を形成することのできるものである。本発明のシランカップリング剤は、安価で汎用の水銀灯光源から放射される紫外線に高感度に対応可能であり、かつ紫外線照射により、疎水性表面を親水性表面に変化させることができる。 本発明のシランカップリング剤で基材表面を被覆すると、紫外線を照射することにより疎水性表面から親水性表面に変性させることができるため、親水性−疎水性の差を利用した金属化触媒の表面への選択吸着が可能となり、金属配線基板を供出することができる。 また、版胴表面の親油性及び親水性の差を利用するオフセット印刷においては、本発明のシランカップリング剤で版胴を表面処理することで光反応性有機ナノ薄膜から形成された感光性版胴を得ることができる。 また、スクリーン印刷やインクジェット印刷においては、本発明のシランカップリング剤で紙等のインク受容層を被覆することにより、印字ドットの横方向への拡散を制御することが可能となる。 以下、本発明の感紫外線シランカップリング剤について説明する。 本発明の感紫外線シランカップリング剤は下記一般式(I)で示されるシラン化合物からなる。 上記一般式(I)において、R1はハロゲン、アルコキシ基及びイソシアナト基からなる群から選択される一価官能基である。ハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素が挙げられ、塩素が好適に用いられる。アルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられる。 上記一般式(I)において、R2は水素またはアルキル基である。アルキル基としては、例えばエチル基、メチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。 上記一般式(I)において、R3は水素またはアルキル基である。アルキル基としては、例えばエチル基、メチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。 上記一般式(I)において、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基、トリフルオロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ベンゾイル基、ブロモアルキル基、クロロアルキル基、アリール基、フェノキシ基、炭素数1から16までの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基からなるアルキル基及びアルキルオキシ基からなる群から選択される一価官能基である。ハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素が挙げられ、アルキル基としては、エチル基、メチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられ、アルキルチオ基としてはメチルチオ基及びエチルチオ基が挙げられ、トリフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基及びトリフルオロエチル基が挙げられ、トリフルオロアルコキシ基としては、トリフルオロメトキシ基及びトリフルオロエトキシ基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が挙げられ、ブロモアルキル基としては、ブロモメチル基及びブロモエチル基が挙げられ、クロロアルキル基としては、クロロメチル基及びクロロエチル基が挙げられる。 また、上記一般式(I)において、xは0、1又は2である。 上記一般式(I)で示されるシラン化合物としては、例えばR1が塩素であり、R2がメチル基であり、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10が水素であり、xが2である化合物、すなわち、下記式(V)で示される化合物が挙げられる。 また、本発明の感紫外線シランカップリング剤は下記一般式(II)で示されるシラン化合物からなる。 上記一般式(II)において、R11はハロゲン、アルコキシ基及びイソシアナト基からなる群から選択される一価官能基である。ハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素が挙げられ、塩素が好適に用いられる。アルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられる。 上記一般式(II)において、R12は水素またはアルキル基である。アルキル基としては、例えばエチル基、メチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。 上記一般式(II)において、R13は水素またはアルキル基である。アルキル基としては、例えばエチル基、メチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。 上記一般式(II)において、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基、トリフルオロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ベンゾイル基、ブロモアルキル基、クロロアルキル基、アリール基、フェノキシ基、炭素数1から16までの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基からなるアルキル基及びアルキルオキシ基からなる群から選択される一価官能基である。ハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素が挙げられ、アルキル基としては、エチル基、メチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられ、アルキルチオ基としてはメチルチオ基及びエチルチオ基が挙げられ、トリフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基及びトリフルオロエチル基が挙げられ、トリフルオロアルコキシ基としては、トリフルオロメトキシ基及びトリフルオロエトキシ基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が挙げられ、ブロモアルキル基としては、ブロモメチル基及びブロモエチル基が挙げられ、クロロアルキル基としては、クロロメチル基及びクロロエチル基が挙げられる。 また、上記一般式(II)において、xは0、1又は2である。 上記一般式(II)で示されるスルホン基含有化合物としては、例えばR11が塩素であり、R12がメチル基であり、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20が水素であり、xが2である化合物、すなわち、下記式(VI)で示される化合物が挙げられる。 本発明のスルホン基含有化合物は、下記一般式(III)で示される。 上記一般式(III)において、R3は水素またはアルキル基である。アルキル基としては、例えばエチル基、メチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。 上記一般式(III)において、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基、トリフルオロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ベンゾイル基、ブロモアルキル基、クロロアルキル基、アリール基、フェノキシ基、炭素数1から16までの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基からなるアルキル基またはアルキルオキシ基からなる群から選択される一価官能基である。ハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素が挙げられ、アルキル基としては、エチル基、メチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられ、アルキルチオ基としてはメチルチオ基及びエチルチオ基が挙げられ、トリフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基及びトリフルオロエチル基が挙げられ、トリフルオロアルコキシ基としては、トリフルオロメトキシ基及びトリフルオロエトキシ基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が挙げられ、ブロモアルキル基としては、ブロモメチル基及びブロモエチル基が挙げられ、クロロアルキル基としては、クロロメチル基及びクロロエチル基が挙げられる。 また、本発明のスルホン基含有化合物は、下記一般式(IV)で示される。 上記一般式(IV)において、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基、トリフルオロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ベンゾイル基、ブロモアルキル基、クロロアルキル基、アリール基、フェノキシ基、炭素数1から16までの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基からなるアルキル基及びアルキルオキシ基からなる群から選択される一価官能基である。ハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素が挙げられ、アルキル基としては、エチル基、メチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられ、アルキルチオ基としてはメチルチオ基及びエチルチオ基が挙げられ、トリフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基及びトリフルオロエチル基が挙げられ、トリフルオロアルコキシ基としては、トリフルオロメトキシ基及びトリフルオロエトキシ基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が挙げられ、ブロモアルキル基としては、ブロモメチル基及びブロモエチル基が挙げられ、クロロアルキル基としては、クロロメチル基及びクロロエチル基が挙げられる。 上記一般式(III)で示されるスルホン基含有化合物、及び一般式(IV)で示されるスルホン基含有化合物は、それぞれ上記一般式(I)で示されるシラン化合物及び上記一般式(II)で示されるスルホン基含有化合物を合成するために用いられる。 上記一般式(III)で示されるスルホン基含有化合物、及び一般式(IV)で示されるスルホン基含有化合物は、下記一般式(VII)で示される4−ビニルベンゼンスルホン酸クロリドを原料として用いて合成することが可能である。4−ビニルベンゼンスルホン酸クロリドを得るためには、市販品を用いてもよいし、Bull. Chem. Soc. Jpn., 56, 762-765 (1983)とChem. Mater., 4, 873-842 (1992)に記載の方法に基づき、4−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムに塩化チオニルを作用させて合成することができ、この方法によれば、安価に4−ビニルベンゼンスルホン酸クロリドを得ることができる。 上記一般式(III)で示されるスルホン基含有化合物、及び一般式(IV)で示されるスルホン基含有化合物の製造方法について説明する。粉末状の亜鉛等の還元剤を含むハイドロキノン存在下のアルカリ性水溶液に、上記一般式(VII)示される4−ビニルベンゼンスルホン酸クロリドを加える等して、上記一般式(VII)で示される4−ビニルベンゼンスルホン酸クロリドを還元する。テトラブチルアンモニウム ブロミド等の水溶性ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを加えて、水層から有機溶媒で還元された4−ビニルベンゼンスルホン酸クロリドを抽出する。抽出した有機層を濃縮および乾燥して、主として4−ビニルベンゼンスルフィン酸テトラアルキルアンモニウムを含む有機溶媒に可溶な有機物を得る。このようにして4−ビニルベンゼンスルホン酸クロリドから得た有機物に反応させる化合物としては、市販されている1−ナフチルメチルハライド誘導体、2−ナフチルメチルハライド誘導体、1−(2−ナフチル)エチルハライド誘導体を用いてもよい。そのような1−ナフチルメチルハライド誘導体としては、1−ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、1−(4−メチル)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、1−(5−ニトロ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、1−(2−メチル)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)等が挙げられる。2−ナフチルメチルハライド誘導体としては、2−(1−メトキシ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(3−メトキシ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(4−メトキシ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(5−メトキシ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(6−メトキシ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(7−メトキシ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(8−メトキシ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(3−ニトロ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(3−メチル)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(6−フェニル)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(6−シアノ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(1,4−ジメトキシ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(1,4−ジメトキシ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(5,6−ジメトキシ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(6,7−ジメトキシ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(7,8−ジメトキシ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(5,6,7−トリメトキシ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)、2−(6,7,8−トリメトキシ)ナフタレニルメチルブロミド(クロリド)等が挙げられる。1−(2−ナフタレニル)エチルハライド誘導体としては、1−(2−ナフタレニル)エチルブロミド(クロリド)、1−(2−(6−メトキシ)ナフタレニル)エチルブロミド(クロリド)、1−(2−6,7−ジメチル)ナフタレニル)エチルブロミド(クロリド)等が挙げられる。 4−ビニルベンゼンスルホン酸クロリドを還元して得た有機物と、上記に例示した化合物とを有機溶媒中に混合し、反応させることにより、上記一般式(III)又は(IV)で示されるスルホン基含有化合物を得ることができる。反応に用いる有機溶媒としては、沸点の高い脂肪族エーテル化合物等が好ましく、テトラヒドロフラン及びジオキサンがより好ましい。 上記一般式(III)で示されるスルホン基含有化合物、及び一般式(IV)で示されるスルホン基含有化合物を用いて、上記一般式(I)で示されるシラン化合物及び一般式(II)で示されるシラン化合物を製造する方法について説明する。 上記一般式(III)及び(IV)で示されるスルホン基含有化合物と、下記一般式(VIII)で示されるシラン化合物とを触媒下で反応させて、ハイドロシリレーション反応により、上記一般式(I)及び(II)で示されるシラン化合物を得る。ハイドロシリレーション反応に用いられる触媒であれば、特に制限は無い。反応触媒としては、白金触媒が好適に用いられ、ヘキサクロロ白金(IV)酸・六水和物等がより好適に用いられる。 HSi(R21)3−x(R22)X (VIII) 上記一般式(VIII)中のR21は、一般式(I)のR1、一般式(II)におけるR11と同じである。一般式(VIII)のR21としては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素のハロゲンが好適に用いられ、塩素がより好適に用いられる。R21として塩素を用いる場合、一般式(I)又は(II)で示されるクロロシラン化合物が得られる。一般式(VIII)中のR22は、一般式(I)におけるR2、一般式(II)におけるR12と同じである。一般式(VIII)のR22としては、水素またはアルキル基が挙げられ、アルキル基としては、メチル基が好適に用いられる。 上記のようにして得られた一般式(I)又は(II)で示されるクロロシラン化合物から、一般式(I)におけるR1、一般式(II)におけるR11をアルコキシル基又はイソシアナト基に変換することができる。アルコキシ基への変換は、一般式(I)又は(II)のクロロシラン化合物に、アルコール溶媒中で金属アルコキシド等を作用させて、一般式(I)又は(II)で示されるアルコキシドシラン化合物を得ることができる(日本油化学会誌, vol 46(4), 405-411 (1997); Bull. Chem. Soc. Jpn, 66, 1754-1758 (1993); J. Fluorine Chem., 71, 21-29 (1995))。例えば、エタノール中でナトリウムエトキシドを作用させることにより、エトキシシラン化合物が、また、メタノール中でナトリウムメトキシドを作用させることにより、メトキシシラン化合物を得ることができる。 また、一般式(I)又は(II)で示されるクロロシラン化合物に、ベンゼン等の炭化水素溶媒中で、シアン酸銀等を作用させることにより、一般式(I)又は(II)で示されるイソシアナトシラン化合物を得ることができる(J. Fluorine Chem., 79, 87-91 (1996))。 上記一般式(I)で示されるシラン化合物からなる、本発明のシランカップリング剤、及び上記一般式(II)で示されるシラン化合物からなる、本発明のシランカップリング剤は、照射波長290nm以上の紫外線を用いた場合、過剰露光に対して基材表面の親水性を保持することのできる光反応性有機ナノ薄膜を形成することのできるものである。本発明のシランカップリング剤は、安価で汎用の水銀灯光源から放射される紫外線に高感度に対応可能であり、かつ紫外線照射により、疎水性表面から親水性表面に変化させることができる。 本発明のシランカップリング剤で被覆された基材表面は、紫外線を照射することにより疎水性表面から親水性表面に変性させることができるため、親水性−疎水性の差を利用した金属化触媒の表面への選択吸着が可能となり、金属配線基板を供出することができる。 また、版胴表面の親油性及び親水性の差を利用するオフセット印刷においては、本発明のシランカップリング剤で版胴を表面処理することで光反応性有機ナノ薄膜から形成された感光性版胴を得ることができる。 また、スクリーン印刷やインクジェット印刷においては、本発明のシランカップリング剤で紙等のインク受容層を被覆することにより、印字ドットの横方向への拡散を制御することが可能となる。 本発明のシランカップリング剤は、高分子グラフト基板を製造するために用いることができる。以下、本発明のシランカップリング剤を用いて高分子グラフト基板を製造する方法について説明する。本発明のシランカップリング剤を用いて高分子グラフト基板を製造する方法は、以下の工程からなる。 (a)本発明のシランカップリング剤で基板を被覆して表面修飾基板を作製し、(b)該表面修飾基板に紫外線を照射して基板表面に有機酸基を形成させ、(c)該基板表面に形成された有機酸基を活性化させる化学処理を施し、次いで(d)活性化された有機酸基と化学反応し得る求核性官能基を含み、該求核性官能基と同種もしくは異種の多価官能基から構成される化合物を、上記有機酸基と化学反応させることにより、高分子グラフト基板を製造する。 工程(a)において、紫外線を照射することによりシランカップリング剤で基板を被覆して表面修飾基板を作製する。用いられる基板としては、金属配線基板等の電子・電気素子、遺伝子検出剤(DNAチップ)や生体機能検出剤(バイオチップ)等の医療診断用素子、神経回路等の生物素子を作製するために用いられているものを用いることができる。例えばシリコン、ガラス、セメント、陶磁器等のセラミックス又はニューセラミックス、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ビスフェノールAのポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、エポキシ樹脂等のポリマー、該ポリマーにガラスフィラー等を混合した複合材料、活性炭、多孔質ガラス、多孔質セラミックス、多孔質シリコン、多孔質活性炭、織編み物、不織布、濾紙、炭素繊維、メンブレンフィルター等の多孔質物質等が挙げられる。 シランカップリング剤で基板を被覆する方法としては、例えば基板をシランカップリング剤の溶液に浸漬する方法が挙げられる。また、基板をシランカップリング剤の蒸気下に配置し、化学蒸着させる方法を利用することもできる。シランカップリング剤の溶液に用いられる溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル、ヘキサン等の炭化水素、アセトン、エタノール等のアルコールが挙げられる。浸漬時間は1分〜6時間程度が好ましく、30分〜2時間が更に好ましい。浸漬温度は、使用する溶媒の融点から沸点の範囲が好ましく、室温付近の15〜35℃がより好ましい。また、基板をシランカップリング剤溶液に浸漬した後、浸漬に使用した清浄な溶媒で洗浄し、次いで乾燥させることが好ましい。基板をシランカップリング剤溶液に浸漬する場合、シランカップリング剤溶液の濃度は、0.001〜20質量%であることが好ましく、0.1〜2質量%程度であることがより好ましい。このようにして作製された表面修飾基板の最表面有機層の厚みは約1〜10nm程度である。 次いで、工程(b)において、表面修飾基板に紫外線を照射して基板表面に有機酸基を形成させる。工程(b)において表面修飾基板に照射する紫外線としては、その波長が200〜400nmの紫外線を用いることが好ましい。紫外線を照射するための光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、水銀キセノン灯、メタルハライドエキシマーランプ、キセノンエキシマーランプ、各種レーザー等を用いることができる。また、本発明の高分子グラフト基板製造方法においては、上記構成からなるので、照射する紫外線の露光量は通常よりも極めて少なくてよく、1〜1500mJ・cm−2程度の露光量でよく、より好ましくは10〜200mJ・cm−2程度の露光量でよい。 次いで、工程(c)において、基板表面に形成された有機酸基を活性化させる化学処理を施す。有機酸基を活性化させるとは、次の工程(d)において求核性官能基を含む化合物と化学反応し得るようにすることを意味する。例えば、有機酸基がスルフィン酸基である場合、塩化チオニル、五塩化リン、トリフルオロ酢酸無水物、ジイソプロピルカルボジイミド等のカルボジイミド誘導体、ペンタフルオロフェノール、ニトロフェノール等の化合物を作用させる処理のことをいう。例えば塩化チオニルを用いる場合、有機酸基を活性化させるためには、紫外線照射後の基板を液体の塩化チオニルに浸漬することが好ましい。浸漬時間は10分〜5時間が好ましく、30分〜2時間程度がより好ましい。浸漬温度は、室温付近の15〜35℃程度が好ましい。 次いで、工程(d)において、工程(c)において活性化された有機酸基と化学反応し得る求核性官能基を含み、該求核性官能基と同種もしくは異種の多価感応基から構成される化合物を、上記有機酸基と反応させる。工程(d)において用いられる化合物は求核性官能基を含む化合物であり、求核性官能基とは、例えば塩基性官能基であり、例えばアミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基等を意味する。そして、かかる求核性官能基は、上記工程(c)において活性化された有機酸基と化学反応し得るものである。 上記工程(d)において用いられる化合物は、上記求核性官能基と同種もしくは異種の多価官能基から構成されるものである。すなわち、上記化合物は、上記の求核性官能基を複数含む化合物であってもよく、上記求核性官能基とは異なる官能基から構成される化合物であってもよい。 上記化合物の具体例としては、デンドリマーが挙げられる。デンドリマーとは、樹状に枝分かれした高分子化合物を意味する。デンドリマーの具体例としては、ポリ(アミドアミン)デンドリマーとポリ(プロピレンイミン)デンドリマー等が挙げられる。ポリ(プロピレンイミン)デンドリマーの具体例としては、アミノ基を2個有する第0世代のエチレンジアミン、アミノ基を4個有する第1世代のテトラアミンデンドリマー、アミノ基を8個有する第2世代のオクタアミンデンドリマー、アミノ基を16個有する第3世代のヘキサデカアミンデンドリマー、アミノ基を32個有する第4世代のドトリアコンタアミンデンドリマー、アミノ基を64個有する第5世代のテトラヘキサコンタアミンデンドリマー等が挙げられる。上記第1世代から第4世代の多価アミンデンドリマーの化学構造式を下記に示す。 上述のようなアミンデンドリマーの中でも、含まれるアミノ基の数の多い方が低い照射光量の紫外線露光により基板表面を改質することができるので好ましい。この場合、基板表面に露出するアミノ基の数が多いので、その後にバイオチップ、DNAチップ等を作製する際にも好都合である。上述した高分子グラフト基板製造方法において用いられる化合物としては、上述のデンドリマーに限定されないことはいうまでもない。使用可能な化合物としては、例えばポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリウレタン、尿素ポリマー等の求核性官能基を含有する高分子化合物をはじめ、ポリペプチド、タンパク質、酵素、DNA、抗原、抗体等の求核性官能基を含有する生体高分子、さらには求核性官能基を含有する生体細胞、神経細胞が挙げられる。また、表面に求核性官能基を有する高分子微粒子、ラテックス微粒子、シリカ微粒子等の金属酸化物微粒子、金属微粒子、磁性微粒子等が挙げられる。 上記工程(d)における、化合物と有機酸基との化学反応は、上記工程(c)において有機酸基は活性化されているので、化合物の溶液に基板を浸漬することにより実施することができる。この場合の温度は使用する溶媒の融点から沸点の範囲でよく、室温付近の15〜35℃程度がより好ましい。浸漬時間は10分から24時間の範囲でよく、30分から2時間程度がより好ましい。 上述した高分子グラフト基板製造方法によって得られる高分子グラフト基板は、微細加工を行うものに対して適用が可能であり、金属配線基板等の電子・電気素子、遺伝子検出剤(DNAチップ)や生体機能検出剤(バイオチップ)等の医療診断用素子、神経回路等の生物素子等に適用可能である。 以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。 実施例1 4−(2−ナフチルメチルスルホニル)−1―ビニルベンゼンの合成 4−tert−ブチルカテコール(0.64g)をN,N−ジメチルホルムアミド(200ml)に加え、反応器内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換した。反応器を−5℃のエタノールの浴槽に浸し、反応溶液の温度を0〜5℃の温度に保持しながら、塩化チオニル(120ml)を加えた。塩化チオニルを添加して30分経過した後に、反応溶液の温度を10℃以下に保持しながら、4−スチレンスルホン酸ナトリウム(40g)を加えた。反応溶液を窒素ガス雰囲気下、5℃の温度で24時間撹拌した。 別に、粉砕した氷(500g)を用意し、この氷を分液ロートに入れ、分液ロート内に上記反応溶液を注いだ。水分散液内の有機物をトルエン(150ml)で3回抽出した。抽出した有機層を硫酸ナトリウムで30分間乾燥した。乾燥剤の硫酸ナトリウムをろ紙で除去し、トルエン溶液を40℃の温度で減圧下で濃縮した。残留した淡黄色の液体をさらに減圧乾燥して、粗製の4−スチレンスルホン酸クロリド(31.3g)を得た。 ハイドロキノン(0.20g)及び亜鉛粉末(8.0g)を水(100ml)に加え、撹拌しながら水溶液の温度を60 ℃まで加熱した。60℃に加熱された水溶液に4−スチレンスルホン酸クロリド(5.0g)を加え、60〜70℃の温度で30分間撹拌した。氷浴を用いて反応溶液の温度を室温まで冷却した後、窒素ガス雰囲気下で、水酸化ナトリウム(0.98g)及び炭酸ナトリウム(1.4g)を加え、室温で30分間撹拌した。反応溶液を吸引ろ過してろ液を得た。テトラブチルアンモニウム ブロミド(8.0g)を水(4ml))に溶解させた溶液を上記ろ液に加え、窒素ガス雰囲気下で30分間撹拌した。ろ液をクロロホルム(200ml)で抽出した後、塩化カルシウムで有機層を乾燥させた。乾燥剤をろ過により除去し、溶媒を減圧留去して、薄茶色の粘性液体を得た。 得られた粘性液体に2−ブロモメチルナフタレン(8.2g)及び脱水テトラヒドロフラン(50ml)を加えて、4時間還流した。還流を行った後、反応溶液を室温まで放冷した。次いで、ジクロロメタン(100ml)を反応溶液に加え、分液ロートを用いてジクロロメタン溶液を水(100ml)で2回洗浄した。シリカゲル(40g)からなる乾式カラムに洗浄したジクロロメタン溶液を注いだ。さらに、清浄なジクロロメタン(200ml)を乾式カラムに注ぎ、溶出液を回収した。回収した溶出液をろ紙でろ過し、溶媒を25℃の温度で減圧濃縮し、油状物質を得た。得られた油状物質をジクロロメタン(20ml)で溶解し、ヘキサン(20ml)を加えて、沈殿を形成させた。形成した沈殿物を吸引ろ過した後、ろ過物をテトラヒドロフランから再結晶を行い、4−(2−ナフチルメチルスルホニル)−1―ビニルベンゼン(4.2g)を白色粉末として収率37%で得た。 得られた化合物の性状を以下に示す。Anal. Found: C, 73.91 %; H, 5.43 %; N, 0.00 %; S, 10.39 %Calc. for C19H16O2: C, 74.03 %; H, 5.19 %; N, 0.00 %; S, 10.31 %1H NMR(270 MHz, CDCl3) d: 7.79-7.84 (m, 2H), 7.68-7.75 (m, 2H), 7.57 (d, 2H, J = 8.6 Hz), 7.46 - 7.58 (m, 3H), 7.40 (d, 2H, J = 8.6 Hz), 7.20 (4d, 1H, J = 1.8, 8.6 Hz), 6.70 (dd, 1H, J = 10.9, 17.6 Hz), 5.85 (d, 1H, J = 17.6 Hz), 5.43 (d, 1H, J = 10.9 Hz), 4.46 (s, 2H) 実施例2 2−(4−(2−ナフチルメチルスルホニル)フェニル)エチルクロロジメチルシランの合成 実施例1で得られた4−(2−ナフチルメチルスルホニル)−1−ビニルベンゼン(4.2g)、クロロジメチルシラン(10g)、ヘキサクロロ白金(IV)酸・六水和物(2.5×10−2g)、脱水トルエン(10ml)を耐圧反応容器に入れ、密栓下で100℃の温度で18時間撹拌を行った。反応容器内の反応溶液を放冷した後、反応物をヘキサン(200ml)に注ぎ、沈殿物を形成させた。形成された沈殿物をろ過して粗生成物を得た。トルエン及びデカンから再結晶を行い、2−(4−(2−ナフチルメチルスルホニル)フェニル)エチルクロロジメチルシラン(2.7g)を白色粉末として収率49%で得た。Anal. Found: C, 62.89 %; H, 5.67 %; N, 0.00 %; S, 7.78 %Calc. for C21H23ClO2SSi: C, 62.61 %; H, 5.71 %; N, 0.00 %; S, 7.95 %1H NMR(270 MHz, CDCl3) d: 7.77-7.82 (m, 1H), 7.62-7.73 (m, 2H), 7.54 (d, 2H, J = 8.6 Hz), 7.43-7.56 (m, 3H), 7.24 (d, 2H, J = 8.6 Hz), 7.16 (m, 1H), 4.44 (s, 2H), 2.85-2.76 (m, 2H), 1.21-1.13 (m, 2H), 0.44-0.39 (m, 6H)下記一般式(I)で示されるシラン化合物からなるシランカップリング剤。(上記式中、R1はハロゲン、アルコキシ基及びイソシアナト基からなる群から選択される一価官能基であり、R2は水素またはアルキル基であり、R3は水素またはアルキル基であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基、トリフルオロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ベンゾイル基、ブロモアルキル基、クロロアルキル基、アリール基、フェノキシ基、炭素数1から16までの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基からなるアルキル基及びアルキルオキシ基からなる群から選択される一価官能基であり、xは0、1又は2である。)R2がメチル基であり、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10が水素である、請求項1に記載のシランカップリング剤。下記一般式(II)で示されるシラン化合物からなるシランカップリング剤。(上記式中、R11はハロゲン、アルコキシ基及びイソシアナト基からなる群から選択される一価官能基であり、R12は水素またはアルキル基であり、R13は水素またはアルキル基であり、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基、トリフルオロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ベンゾイル基、ブロモアルキル基、クロロアルキル基、アリール基、フェノキシ基、炭素数1から16までの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基からなるアルキル基及びアルキルオキシ基からなる群から選択される一価官能基であり、xは0、1又は2である。)R12がメチル基であり、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20が水素である、請求項3に記載のシランカップリング剤。 下記一般式(III)で示されるスルホン基含有化合物。(上記式中、R3は水素またはアルキル基であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基、トリフルオロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ベンゾイル基、ブロモアルキル基、クロロアルキル基、アリール基、フェノキシ基、炭素数1から16までの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基からなるアルキル基及びアルキルオキシ基からなる群から選択される一価官能基である。) 下記一般式(IV)で示されるスルホン基含有化合物。(上記式中、R13は水素またはアルキル基であり、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、トリフルオロアルキル基、トリフルオロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ベンゾイル基、ブロモアルキル基、クロロアルキル基、アリール基、フェノキシ基、炭素数1から16までの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基からなるアルキル基及びアルキルオキシ基からなる群から選択される一価官能基である。) 【課題】 安価な汎用紫外線光源から得られる低露光量の紫外線照射により、基材表面を疎水性から親水性に変性し得るシランカップリング剤を提供することを目的とする。特に、紫外線照射後に基材表面を親水性にする、形成されたスルフィン酸基の光分解反応を伴わない、290nm以上の波長の紫外線に対して活性を示すシランカップリング剤を提供すること。【解決手段】 本発本発明のシランカップリング剤は、下記一般式(I)で示される。【化1】【選択図】 なし