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タイトル:特許公報(B2)_酵素の安定化方法および組成物
出願番号:2003345233
年次:2010
IPC分類:C12N 9/96,C12N 9/12


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中村 義之 木全 伸介 岡 正則 JP 4565311 特許公報(B2) 20100813 2003345233 20031003 酵素の安定化方法および組成物 東洋紡績株式会社 000003160 中村 義之 木全 伸介 岡 正則 JP 2002291491 20021003 20101020 C12N 9/96 20060101AFI20100930BHJP C12N 9/12 20060101ALI20100930BHJP JPC12N9/96C12N9/12 C12N 9/00−9/99 PubMed JSTPlus(JDreamII) 特開平04−066087(JP,A) 国際公開第99/055850(WO,A1) 特開平10−179195(JP,A) 特表2000−508530(JP,A) 特開平08−056694(JP,A) 特開2002−233362(JP,A) 特開平11−069973(JP,A) 特開昭62−174299(JP,A) 特表平10−507750(JP,A) 特開平08−187095(JP,A) 特開平09−052845(JP,A) 2 2004141162 20040520 8 20060907 伊達 利奈 本発明は酵素の安定化方法およびその組成物に関する。特に臨床診断に用いられる生体成分測定試薬に用いられる酵素の安定化方法およびその組成物に関する。 近年、臨床検査用試薬は液状化が主流となっている。そのため、臨床検査用試液を長期保存する場合、試液中への防腐剤の添加は不可欠である。このような目的で使用される防腐剤としては種々のものが挙げられるが、イソチアゾリン系化合物はpHが中性付近の溶液中に於ける防腐効果に優れ、酵素反応系への影響も少ない、等の利点を有する事から、上記した試液に添加される。しかしながら、チアゾリン系化合物は他方に於いて一部の酵素を失活させる作用を有しており、試液の保存期間も必然的に短くならざるを得ない。その為、イソチアゾリン系化合物を防腐剤として含む溶液中での酵素の効果的な安定化方法が望まれている現状にある。 本発明が解決しようとする課題は、防腐剤を含む溶液中において長期間安定な液状試薬として耐えうる安定性を有した酵素溶液を提供することにある。 本発明者らは、上記目的を達成するために種々検討した結果、イソチアゾリン系化合物と酵素の混合試液中に糖類を共存させることにより、酵素を液状状態で長期間安定に保つことを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は以下のようなものである。(1)安定化剤として糖類を共存させることを特徴とする、防腐剤共存下における酵 素の安定化方法。(2)防腐剤としてイソチアゾリン系化合物を用いる請求項1記載の酵素の安定化方 法。(3)糖類の添加濃度が防腐剤に対して0.05〜500倍量(W/W)である請求 項1または2記載の酵素の安定化方法。(4)安定化剤として糖類を共存させることを特徴とする、防腐剤共存下における酵 素の安定化組成物。(5)防腐剤としてイソチアゾリン系化合物を用いた請求項4記載の酵素の安定化組 成物。(6)糖類の添加濃度が防腐剤に対して0.05〜500倍量(W/W)である請求 項4または5記載の酵素の安定化組成物。 本発明においては、防腐剤を含む溶液中において糖類を共存させることで、長期間安定な液状試薬として耐えうる安定性を有した酵素溶液を提供できる。 本発明の一実施態様は、安定化剤として糖類を共存させることを特徴とする、防腐剤共存下における酵素の安定化方法である。 本発明に用いる防腐剤は、試薬を保存している間の微生物の増殖を抑制することを目的として、試薬に添加される物質をいう。本発明における防腐剤としては特に限定されないが、中でもイソチアゾリン系防腐剤は酵素の失活が大きく効果が期待できる。イソチアゾリン系化合物としては、例えば2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CMIT)、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)等が挙げられる。また、一般に市販されているものとしては、混合物としてプロクリン150(スペルコ製、シグマアルドリッチジャパンより入手)、プロクリン300(スペルコ製、シグマアルドリッチジャパンより入手)、アクチサイドMBS(ソー・ジャパン製)、単一製品としてアクチサイドB20(N)(ソー・ジャパン製)、MIT(ロシュ製、シグマ製)等が挙げられる。 防腐剤として抗生物質を使用する場合、微生物が比較的容易に、当該物質の膜透過性を抑制したり、当該物質を分解し無毒化する能力を獲得することができるため、耐性菌の発生を招き、実質的に試薬の防腐効果を失うことがよくあると考えられる。一方、N−メチルイソチアゾロン(N-Methylisothiazolone、略称MIT)および/またはその誘導体などは、蛋白質のSH基やアミノ基に直接作用することができるため、微生物が耐性を得ることが難しいと考えられる点でより好ましく、今後汎用されていく可能性が高い。 しかし、このような蛋白質に直接作用する防腐剤は当然、共存する酵素蛋白質にも作用するため、蛋白質の構造によっては不安定化を招く可能性がある。このように、防腐剤に対する耐性は、その防腐剤の作用機構と蛋白質の構造の両面に起因すると考えられる。 防腐剤の添加濃度は、防腐剤の種類や添加する試薬の組成などによって異なるのは当然であり、適当な添加濃度の決定は当業者が適宜実施できることである。十分な防腐能を有し診断薬用途に用いられる濃度範囲であれば特に限定されないが、例えば溶液中の下限濃度として0.0001%、好ましくは0.001%、更に好ましくは0.01%である。上限濃度として1%、好ましくは0.5%、更に好ましくは0.1%である。 本発明における糖類は、単糖、二糖、オリゴ糖、環状オリゴ糖などの中から適宜選択され、特に限定されるものではない。例えばキシロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、シュークロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、2−デオキシ−D−グルコース、メリビオース、リビトース、イノシトール、ズルシトール、グルシトール、グルコノ−1,5−ラクトン、G2−β−サイクロデキストリン、シュークロースモノカプレート、シュークロースモノコレート等が挙げられる。中でもシュークロースを骨格とする化合物、例えばシュークロース、ラクトシュークロース、ラフィノース、イヌロオリゴ糖類、シュークロースモノカプレート、シュークロースモノコレート等が好適に用いられる。いずれも、市販のものなどを使用することができる。 本発明における糖類の添加濃度は防腐剤に対して、0.01倍量(W/W)以上であり、好ましい下限は0.05倍量(W/W)、好ましい上限は500倍量(W/W)である。 糖類の濃度は種々の公知の方法で測定することができる。一般的に用いられる糖類の測定方法として、ソモジー法に代表される還元法やアンスロン法に代表されるフルフラール発色法、ガスクロマトグラフィー法やHPLC法に代表されるクロマト法等が挙げられる。(参考文献1:石井暢編 臨床検査技術全書 第6巻 臨床化学検査 第1版第2刷、1980、医学書院、参考文献2:分析化学便覧 改定五版、2001、社団法人 日本分析化学会) 防腐剤の濃度は種々の公知の方法で測定することができる。たとえば、イソチアゾリン系化合物は、HPLC分析により測定することができる。図1にその一例を示す。 本発明において「安定」とは、加温処理に対しても酵素活性が維持されていることを意味し、典型的には、50mM HEPES (pH7.5)緩衝液中に、3U/mLのグリセロールキナーゼとイソチアゾリン系化合物とを共存させたとき、35℃14日間保存後の残存酵素活性が、調製直後と比較して、67%以上、好ましくは80%以上維持されていることをいう。なお、酵素活性測定法は、本願明細書記載の方法、市販品であればカタログ記載の方法、文献等に記載の方法などの中から当業者が適宜採用することができる。 本発明により安定化し得る酵素としては、通常の診断薬用途に用いられるものであれば特に限定される事はない。また、本発明により安定化されうる酵素の濃度は、通常臨床検査用試液に用いられる濃度範囲であれば特に限定されないが、本発明に好ましいものとして、イソチアゾリン系化合物により失活を受ける酵素が挙げられる。具体的には、グリセロールキナーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ等、が挙げられる。酵素は、いずれも、市販のものなどを使用することができる。 本発明の方法により安定化し得る溶液のpHとしては、酵素を不安定化する範囲でなければ特に限定されないが、好ましくは5.0〜9.0で選択される。このpH範囲を維持する為には、適当な緩衝液が添加されるが、このような目的に添加される緩衝液としては、例えばリン酸緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液、グッド緩衝液などが挙げられる。なかでも、リン酸緩衝液、トリス緩衝液は濃度、温度によってpHが変動しやすいが、安価であるという利点がある。一方、GOOD緩衝液にはMES、Bis−Tris、ACES、BES、MOPS、PIPES、TES、HEPES、Tricine、Bicine、POPSO、TAPS、CHES、CAPSなどが例示される。緩衝液は、いずれも、市販のものなどを使用することができる。 また、酵素溶液中には診断用試薬として必要な他の試薬が含まれていてもよい。例えば中性脂肪測定試薬としては、一般にグリセロールキナーゼの他、リパーゼ、グリセロリン酸オキシダーゼ、ATP、マグネシウム、ペルオキシダーゼ、色源体が含有される。マグネシウム測定試薬としては、一般にグリセロールキナーゼの他、グリセロリン酸オキシダーゼ、グリセリン、ATP、色源体が含有される。また、クレアチニン測定試薬としては、一般にザルコシンオキシダーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼの他、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、ペルオキシダーゼ、色源体などが含有される。また、クレアチン測定試薬としては、一般にザルコシンオキシダーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼの他、ペルオキシダーゼ、色源体などが含有される。これらの試薬類は、いずれも、市販のものなどを使用することができる。 グリセロールキナーゼの活性測定は以下の測定条件で行うのが好ましい。〈測定試薬〉(1)基質液 0.3M グリセロール溶液(2)発色液100mM HEPES緩衝液、pH7.92mM ATP1mM 塩化マグネシウム0.1g/L フェノール0.2g/L 4-アミノアンチピリン8KU/L グリセロリン酸オキシダーゼ5.5KU/L ペルオキシダーゼ〈測定条件〉(1)発色液3mLをキュベット(d=1cm)に採り、酵素液0.1mLを加え、 ゆるやかに混和後、37℃で約5分間予備加温する。(2)グリセロール溶液0.05mLを添加し、ゆるやかに混和後、水を対照に37 ℃に制御された分光光度計で500nmの吸光度変化を3〜4分間記録し、その初期直 線部分から1分間当たりの吸光度を求める(ΔODtest)。(3)盲検は発色液3mLに酵素溶液の代わりに酵素希釈液(20mM Kリン酸緩 衝液、pH7.5)を0.1mL加え、上記同様に操作を行なって、1分間当たりの吸 光度変化を求める(ΔODblank)。 以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は実施例により特に限定されるものではない。(実施例1)グリセロールキナーゼ(東洋紡績製GYK−311)3U/mL、各種糖類5g/L含有し、防腐剤としてプロクリン300(スペルコ製)を0.3mL/Lとなるように調製した下記試薬にて35℃で14日間保存し、残存活性(溶解直後の活性値に対する保存後の活性値の割合)を検討した。(試薬の調製)下記組成からなる試薬をそれぞれ調製した。 HEPES−NaOH 50mM pH7.5 グリセロールキナーゼ(東洋紡社製GYK−311) 3U/mL プロクリン300 0.3mL/L 各種糖類(名称は表に記載) 5g/L結果 表1に示す。比較例では66%まで活性が低下するのに対し、実施例では保存後も良好な安定性を示す。(実施例2)グリセロールキナーゼ(東洋紡績製GYK−311)3U/mL、プロクリン300(ロシュ製)0.3mL/L含有試薬に、シュークロース0〜5g/Lとなるように添加濃度を変えて調製した試薬にて35℃で14日間保存し、残存活性(溶解直後の活性値に対する保存後の活性値の割合)を検討した。結果 表2に示す。0.01%で安定化効果を認め、0.3%以上では更に良好な安定性を示す。(実施例3)グリセロールキナーゼ(東洋紡製GYK−311)12U/mL、プロクリン300(スペルコ製)0.3mL/L、シュークロース5g/L含有試薬を9℃にて6週間保存し、残存活性(溶解直後の活性値に対する保存後の活性値の割合)を検討した。結果 表3に示す。比較例では65%まで活性が低下するのに対し、実施例では低温保存下に於いても良好な安定性を示す。 本発明の防腐剤共存下における酵素の安定化方法は、防腐剤を含む溶液中において長期間安定な液状試薬として耐えうる等の特性を持つため、臨床検査分野で用いられる診断薬として優れており、産業界に寄与することが大である。イソチアゾリン系化合物のHPLC分析方法の一例。イソチアゾリン系化合物の防腐剤の共存下におけるグリセロールキナーゼの安定化方法であって、安定化剤として0.1〜5.0g/Lの、以下の(1)に示す群の中から少なくとも1種類以上の糖類を共存させることを特徴とする、酵素の安定化方法。(1)シュークロース、マルトース、イノシトール、グルシトール、グルコノ−1,5−ラクトン、シュークロースモノカプレートおよびシュークロースモノコレート イソチアゾリン系化合物の防腐剤の共存下におけるグリセロールキナーゼの安定化組成物であって、安定化剤として0.1〜5.0g/Lの、以下の(1)に示す群の中から少なくとも1種類以上の糖類が共存していることを特徴とする、酵素の安定化組成物。(1)シュークロース、マルトース、イノシトール、グルシトール、グルコノ−1,5−ラクトン、シュークロースモノカプレートおよびシュークロースモノコレート


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