タイトル: | 公開特許公報(A)_脂質膜ベシクルおよびその調製法 |
出願番号: | 2003338777 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K48/00,A61K9/127,A61K47/14,A61K47/42,A61P43/00,C12N15/09,A61K38/44 |
加藤 敬一 菅原 卓也 久枝 良雄 高島 成光 佐伯 俊昭 JP 2005068120 公開特許公報(A) 20050317 2003338777 20030821 脂質膜ベシクルおよびその調製法 加藤 敬一 503356668 加藤 敬一 菅原 卓也 久枝 良雄 高島 成光 佐伯 俊昭 7A61K48/00A61K9/127A61K47/14A61K47/42A61P43/00C12N15/09A61K38/44 JPA61K48/00A61K9/127A61K47/14A61K47/42A61P43/00 111C12N15/00 AA61K37/50 3 書面 6 特許法第30条第1項適用申請有り 4B024 4C076 4C084 4B024AA01 4B024CA01 4B024EA04 4B024GA11 4B024HA17 4C076AA19 4C076CC29 4C076DD08F 4C076DD08H 4C076DD09F 4C076DD46F 4C076DD46H 4C076EE23F 4C076EE41H 4C076FF68 4C084AA13 4C084BA44 4C084DC23 4C084MA05 4C084MA24 4C084NA03 4C084NA05 4C084NA11 4C084ZC192 本発明は、カチオン性ペプチド脂質を含む人工脂質による脂質膜ベシクルにプラスミド遺伝子を内包する方法に関するものである。 本発明は、遺伝病や癌など、難治療性疾患の遺伝子治療のための遺伝子運搬体として有用な脂質ベシクル(脂質分子膜からなる閉鎖小胞体)および脂質ベシクルへの遺伝子の内包化方法に関するものである。 これまでに、断片化したDNAを内包させて、そのDNAを目的の細胞に移入させる方法を開発した。しかし上記の断片状DNAはベシクル内包物が細胞内へ移入したことを示すためのマーカーとして使用したものであり、遺伝子発現を目的とした遺伝子導入とは異なる。一方、本法で用いたプラスミド遺伝子は、断片状DNAとは異なり高次構造を有している。その高次構造、あるいは機能性を保持したままで目的細胞の核内に導入し、遺伝子発現させるためには断片状DNAの内包、移入とは根本的に異なる手法を開発する必要がある。本法はそのプラスミド遺伝子の内包ベシクルの調製、およびその利用法を開発したものであり、従来にはない新規な方法である。 遺伝子運搬体として使用される非ウィルス性キャリアとしては、脂質膜成分の50%以上(現実的にはほぼ全て)が天然リン脂質よりなるリポソームであり、これらは逆相蒸発法あるいは超音波照射法などによって調製されている。このリポソームに、核酸結合性タンパクである商品名リポフェクトアミンプラス試薬(GIBCO BRL社製)により処理されたDNAを付着させ、遺伝子キャリアとして用いる。しかしながらこれらのリポソームは、▲1▼リポソームの安定性が悪い、▲2▼代謝性が悪い、という問題を有する。また、リポソームおよびリポフェクトアミンプラス試薬は高価である。 一方、人工脂質により構成されるベシクルが、薬物や遺伝子のキャリアとして提案されている。遺伝子キャリアとしての利用に置いては、ベシクル表面にプラスミド遺伝子を付着する形態のものがほとんどである。この場合、実際に利用において、生体内に存在する遺伝子分解酵素などの影響により、プラスミド遺伝子が破壊を受けることが危惧され遺伝子キャリアとして遺伝子治療、特に生体内遺伝子治療に使用するのは困難である。 上述の目的を達成するため、本発明に係る脂質ベシクルは、カチオン性ペプチド脂質を含む人工脂質より構成されるものである。カチオン性ペプチド脂質を加えることにより、脂質ベシクルの外表面がプラス荷電となり、マイナス荷電であるDNAを効率的に固定化でき、さらにマイナス荷電である細胞表面への結合性も大きく改善され、遺伝子導入効率が飛躍的に向上する。遺伝子内包ベシクルの調製に関しては、ベシクル調製時にかかる剪断力を抑え、遺伝子の物理的破壊をできるだけ少なくする必要がある。特開2003−1097公報特開2003−12503公報 遺伝子治療において、治療用遺伝子を目的細胞に確実に送達することが非常に重要である。このためには、目的遺伝子を完全な状態で目的細胞へ運ぶ必要がある。しかし、血液をはじめとする体液中には遺伝子分解酵素が存在し、血液循環中に治療用遺伝子が破壊されてしまう。そこで遺伝子が破壊を受けないようにマイクロカプセルとしての脂質ベシクルの中に内包し、遺伝子を膜で保護することにより、効果的に遺伝子を目的の細胞まで送達することか可能となる。特許文献1に示した技術では、断片化したDNAをベシクルに内包し、ベシクル内包物が標的の細胞内に移入できるかどうかを検討するための指標として用いたものであり、内包したDNAは遺伝子としての機能は有していない。今回の技術は、遺伝子としての機能性を有した状態のままプラスミド遺伝子をベシクルに内包し、なおかつその遺伝子を細胞に発現させるというものである。 本発明は、プラスミド遺伝子を内包した脂質ベシクルに関するものである。 脂質ベシクルに遺伝子を内包することにより、膜が内包遺伝子を様々な遺伝子破壊因子から保護し、効果的に遺伝子をターゲットとなる細胞へ送達し、効率的な遺伝子導入を可能とする。 プラスミド遺伝子を内包する脂質ベシクルは、構成脂質にカチオン性ペプチド脂質(CPL)を混合することで、カチオン性脂質含有脂質ベシクルとして調製した。CPLを混合することにより、1)ベシクルとターゲット細胞との親和性が高まり、遺伝子導入効率が上昇する、さらには、2)ベシクル内にプラスミド遺伝子の取り込み効果が上昇する。 プラスミド遺伝子内包脂質ベシクル調製には二段階乳化法を用いた。二段階乳化法における一段階目の乳化過程において、ヘキサン中にプラスミド遺伝子内包水相が分散した、いわゆるW/Oエマルションを調製する。その後有機溶媒のヘキサンを除去して、遺伝子を内包したW/Lエマルション(脂質(L)中に遺伝子内包水相(W)が分散している状態)を形成させる。さらに、二段階目の乳化過程でそのW/Lエマルションを十分に分散させ、プラスミド遺伝子内包脂質ベシクルを調製する。本発明の脂質ベシクルの調製法において、特に一段階目の乳化時の攪拌操作を断続化すること、さらにはCPLを混合することにより、機能的なプラスミド遺伝子を内包した脂質ベシクルを実現できた。こうして調製したプラスミド遺伝子内包脂質ベシクルをターゲット細胞に作用させることにより、ターゲット細胞において遺伝子を機能させ、形質転換を行った。 本実施例では、脂質ベシクルとして粒径が1μm以上のいわゆるマイクロサイズベシクルを用いた。主成分としてソルビタンオレイン酸モノエステル(商品名「スパン80」和光純薬製)とCPLを使用している。内包遺伝子には、プラスミド遺伝子としてpcDNA3を骨格とし、遺伝子発現確認用の機能性遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだpcDNA3−luciを用いた。ここで用いたカチオン性ペプチド脂質の構造は(CH3)3N+(CH2)5CONHCH(CH3)CON[(CH2)15CH3]2Br−であり、N+C5Ala2C16と略して表示される。図1は、二段階乳化法を用いたプラスミド遺伝子内包脂質ベシクル調製法を示している。132mgのスパン80と所定量のCPLを4mlのヘキサンに溶解し、この混合液に1μgのプラスミドを溶解した水溶液を滴下し、マイクロホモジナイザーによって撹拌することにより一次乳化を行った。その後、エバポレーターでヘキサンを減圧乾固し、Tween80を含んだリン酸緩衝生理食塩水溶液を加えて、再度攪拌することで二次乳化を行った。このように調製したプラスミド遺伝子内包脂質ベシクルをターゲット細胞であるHeLa細胞に3時間作用させた。48時間培養した後、基質物質を加え、その発色を測定した。プラスミド遺伝子にはルシフェラーゼ発現遺伝子を組み込んでいるため、導入された遺伝子が機能し、ルシフェラーゼを発現すれば、基質物質と反応して発色する。 プラスミド遺伝子を脂質ベシクルに内包する際、一次乳化時の撹拌作業時の物理的な力による遺伝子の破壊を考慮する必要がある。そこで、遺伝子破壊を最小限にとどめた一次乳化条件を決定した。図2に各一次乳化処理条件でのプラスミド遺伝子の破壊状況を示した。この結果から、一次乳化時のマイクロホモジナイザーによる撹拌速度を10000回転に設定し、15秒間の断続的撹拌とすることで、プラスミド遺伝子の破壊を抑え、なおかつ効果的にプラスミド遺伝子内包脂質ベシクルを調製することが可能であることが確認された。また3000〜10000回転の範囲でもプラスミド遺伝子内包ベシクルの調製は可能である。 本発明の第2の実施例として、プラスミド遺伝子内包ベシクルを用いてHeLa細胞に遺伝子導入した。その結果を図3に示す。この結果から、CPLを膜性分に含んだ遺伝子内包脂質ベシクルが機能性を保持した状態でプラスミド遺伝子を包括することができ、さらに、細胞への遺伝子キャリアとして機能していることが確認された。また、遺伝子導入において至適なプラスミド内包CPLベシクル濃度は、600nmの濁度換算で、0.2から0.7である。 遺伝子導入効率を至適化するために、遺伝子内包脂質ベシクル中のCPL含量を検討した。その結果図4に示したように、遺伝子内包脂質ベシクル調製において総脂質に対するCPL含量を10%から15%にすることで、至適化できることが確認できた。 カチオン性脂質を用いて、機能性を保持した状態でプラスミド遺伝子を内包した脂質ベシクルの調製が可能である。この発明の脂質ベシクルおよびその調製法は、生体外、および生体内遺伝子治療へ適用することができる。 プラスミド遺伝子内包ベシクルの調製法を示した図である。(実施例1)遺伝子内包脂質ベシクル調製時の至適一次乳化処理条件を示した図である。(実施例1)遺伝子内包脂質ベシクルを用いて本発明を適用した結果を示す図である。(実施例2)遺伝子内包脂質ベシクル中の至適CPL含量を検討した結果を示す図である。(実施例2) ソルビタンオレイン酸モノエステルとカチオン性ペプチド脂質を含み、プラスミド遺伝子を内包する脂質膜ベシクル。 一次乳化過程における攪拌操作を断続的に行う工程を含む脂質膜ベシクルの調製法。 ソルビタンオレイン酸モノエステルとカチオン性ペプチド脂質を溶媒に溶解させた混合液に、プラスミドを溶解した水溶液を滴下する一次乳化工程と、溶媒を除去する工程と、二次乳化工程を含む請求項2に記載の脂質膜ベシクルの調製法。 【課題】プラスミド遺伝子を脂質ベシクルに内包した遺伝子キャリアの調製【解決手段】二段階乳化法を用いたプラスミド遺伝子内包脂質ベシクル調製に当たって、一次乳化時の撹拌条件を遺伝子内包脂質ベシクル調製のために至適化した。また、脂質ベシクル表面にプラス荷電を与えるカチオン性ペプチド脂質(CPL)の含量を遺伝子内包脂質ベシクル調製のために至適化した。