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タイトル:公開特許公報(A)_エチレン−ビニルアルコール共重合体系成形物、評価方法、結晶化度の測定方法
出願番号:2003316800
年次:2005
IPC分類:7,B32B27/28,C08F8/12,G01N24/08


特許情報キャッシュ

神田 泰治 山本 友之 JP 2005081723 公開特許公報(A) 20050331 2003316800 20030909 エチレン−ビニルアルコール共重合体系成形物、評価方法、結晶化度の測定方法 日本合成化学工業株式会社 000004101 神田 泰治 山本 友之 7B32B27/28C08F8/12G01N24/08 JPB32B27/28 102C08F8/12G01N24/08 510S 5 OL 12 4F100 4J100 4F100AK69A 4F100AT00B 4F100BA02 4F100EJ99 4F100GB01 4F100GB15 4F100GB23 4F100GB66 4F100JD01 4J100AA02Q 4J100AG04P 4J100BA03H 4J100CA04 4J100DA36 4J100HA08 4J100HA61 本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記する)の成形物、およびその評価方法、さらにはかかるEVOHの結晶化度の測定方法に関する。 EVOHは、エチレン単位と酢酸ビニルをケン化することによるビニルアルコール単位を主として構成されており、かかるビニルアルコール単位に基づく多数の水酸基を分子内に有するため、ガスバリア性が良好である。 また、分子内に多数の水酸基を有することは、保香性、耐溶剤性、耐油性、保温性、などの性質が良好であることも意味する。そのためEVOHフィルムやEVOHフィルム層を含む積層体等の成形物は、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料をはじめとする各種包装用途に広く使われている。 上記のように、EVOHは素質的にはガスバリア性が良好な樹脂であるが、側鎖に水酸基を有するため親水性を有し、高湿条件下と水と接触する用途に用いるときは、本来のガスバリア性が低下するという問題点を有している。 そこで、(1)EVOHフィルムを熱処理する方法、(2)EVOHフィルムを二軸延伸する方法、(3)EVOHマトリクス中に乾燥剤を添加する方法など、EVOHのガスバリア性を向上させる手段が講じられている。 具体的に、(1)の熱処理や(2)のフィルムを2軸延伸する方法は、EVOHをフィルムにする際に通常行われる方法であり、また(3)の方法においては、EVOH層に特定の粒径をもつ乾燥剤を添加させた組成物を用いる方法(例えば、特許文献1参照。)や積層される熱可塑性樹脂層に乾燥剤を添加させる方法(例えば、特許文献2参照。)などが知られている。特開昭63−113062号公報特開2003−11288号公報 しかしながら、特許文献1に開示の方法では、EVOH層に乾燥剤が含有しているため、乾燥剤とEVOHの密着性が不十分になって十分なガスバリア性が発揮されない恐れがあり、また、特許文献2に開示の方法では、乾燥剤の空間的な配置が規定されておらず外気等に触れて吸湿する可能性がありその結果ガスバリア性が低下する恐れがある。 そこで、本発明者は、かかる現況に鑑みて、EVOHを含有する成形物のガスバリア性について鋭意研究を重ねた結果、EVOHを含有する層を少なくとも1層含むEVOH系成形物で、かつ固体NMRを用いて13C核スピン−格子緩和時間(T1)を23℃で測定して得られるビニルアルコール炭素のケミカルシフトに起因する70ppm付近のピークを緩和時間の違いにより分離したときに、10秒未満〔T11〕、10〜20秒未満〔T12〕及び20秒以上〔T13〕の3成分に分離されるEVOH系成形物がガスバリア性に優れることを見出して本発明の完成に至った。 また、かかる3成分中の10〜20秒未満〔T12〕におけるピーク強度の割合が20〜50%で、かつ20秒以上〔T13〕におけるピーク強度の割合が30%以上であるとき、特にガスバリア性に優れること見出したものである。 本発明のEVOH系成形物は、ガスバリア性に優れるものである。 以下に、本発明を詳細に説明する。 本発明のEVOH系成形物は、EVOHの層を少なくとも1層含むもので、かかるEVOHとしては特に限定されないが、エチレン含有量が5〜60モル%(さらには20〜60モル%、特には25〜50モル%)、酢酸ビニル成分のケン化度が95モル%以上(さらには96モル%以上、特には97モル%以上、殊には99モル%以上)のものが好ましく用いられ、該エチレン含有量が5モル%未満では高湿時のガスバリア性や溶融成形性が低下し、逆に60モル%を越えるとガスバリア性が低下する傾向にあり、さらに酢酸ビニル成分のケン化度が95モル%未満ではガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向にあり好ましくない。 また、EVOHのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160gで測定。以下同様)については、特に限定はされないが、0.5〜100g/10分(さらには1〜50g/10分、特には3〜35g/10分)が好ましく、該メルトフローレートが該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となる傾向にあり、また該範囲よりも大きい場合には、EVOH層の厚み精度が低下して好ましくない。 該EVOHは、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化によって得られ、該エチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造され、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。 また、本発明では、本発明の効果を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよく、かかる単量体としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。又、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化等、後変性されても差し支えない。 また、EVOHとして、異なる2種以上のEVOHを用いることも可能で、このときは、エチレン含有量が5モル%以上(さらには5〜25モル%、特には8〜20モル%)異なり、及び/又はケン化度が1モル%以上(さらには1〜15モル%、特には2〜10モル%)異なり、及び/又はMFRの比が2以上(さらには3〜20、特には4〜15)であるEVOHのブレンド物を用いることにより、ガスバリア性を保持したまま、さらに柔軟性、熱成形性、製膜安定性等が向上するので有用である。異なる2種以上のEVOH(ブレンド物)の製造方法は特に限定されず、例えばケン化前のエチレン−酢酸ビニル共重合体の各ペーストを混合後ケン化する方法、ケン化後の各EVOHのアルコールまたは水とアルコールの混合溶液を混合する方法、各EVOHを混合後溶融混練する方法などが挙げられる。 本発明で用いられるEVOH中には酢酸、ホウ酸、リン酸等の酸類やそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属塩を含有させることも、EVOHの熱安定性、ロングラン成形性、接着剤を用いて多層フィルムとしたときの接着剤樹脂との層間接着性、加熱延伸成形性等が向上する点で好ましく、特にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩がその効果に優れる点で好ましく用いられる。 かかる金属塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸や、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸等の無機酸の金属塩が挙げられ、好適には酢酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩である。また、該金属塩の含有量としては、EVOHに対して金属換算で5〜1000ppm(さらには10〜500ppm、特には20〜300ppm)とすることが好ましく、かかる含有量が5ppm未満ではその含有効果が充分得られないことがあり、逆に1000ppmを越えると得られる多層フィルムの外観が悪化することがあり好ましくない。なお、2種以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩が含有される場合は、その総計が上記の含有量の範囲にあることが好ましい。また、ホウ酸を含有させるときは、ホウ素換算で10〜10000ppm(さらには20〜2000ppm、特には50〜1000ppm)とすることが好ましい。 さらに本発明の効果を損なわない限り、EVOH層にはタルク、マイカ、カオリンなどのような結晶核剤、グリセリン、エチレングリコールなどの可塑剤、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ワックスなどの滑剤など無機系、有機系の添加剤を添加することもできる。 本発明の成形物において、積層体の場合は、上記のEVOH層と他の熱可塑性樹脂層を積層するのであるが、かかる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィン単独または共重合体、あるいはこれらの不飽和カルボン酸やそのエステルによるグラフト変性物)、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられ、その積層構成も特に限定はされないが、本発明においては、かかる成形物(単層あるいは積層体)を、固体NMRを用いて13C核スピン−格子緩和時間(T1)を23℃で測定して得られるビニルアルコール炭素のケミカルシフトに起因する70ppm付近のピークを緩和時間の違いにより分離したときに、10秒未満〔T11〕、10〜20秒未満〔T12〕及び20秒以上〔T13〕の3成分に分離されることを特徴とするものである。すなわち、かかる緩和時間の違いにより分離される〔T11〕〜〔T13〕成分より求められる各成分のピークが3種得られるものであり、以下に詳細に説明する。 かかる固体NMRの測定にあたっては、かかる単層あるいは積層体等の成形物のまま測定することもできるが、さらに粉砕して測定しても差し支えない。 固体NMRの測定温度は23℃で、スピン−格子緩和時間(T1)の測定は、特に限定されないが、Torchia法またはInversion Recovery法によって測定することができ、いずれの方法からも得られるT1は同じ値であるので、どちらを採用しても良い。 まず、かかる固体NMRの測定により得られるスピン−格子緩和時間(T1)から求められるピークの緩和回復挙動のピークから求めるのである。 すなわち、対象とするピークはビニルアルコール炭素のケミカルシフトに起因する70ppm付近の最も大きなピークであり、EVOHにおけるビニルアルコール成分のメチンの炭素に相当する。成分の分離は、シンプレックス法などの最適化手法で可能であり、通常は、マイクロソフト社製表計算ソフトウエア「EXCEL」の「SOLVER」を用いることによって得ることができる。そして、分離後の平衡磁化と全体の平衡磁化(ピーク各成分)の量を算出することができる。 このとき得られるスピン−格子緩和時間(T1)を3成分の異なる時間に分離するのである。 かかる3成分の分離方法については、Torchia法で測定した場合には、下記(1)〜(3)式により、各ピーク強度(=平衡状態の磁化)を算出することができる。 M1(τ)= M1(0)×p1×exp(-τ/T11) ・・・(1)〔ここで、M1(τ)は第1成分の緩和遅延時間τの時に観測される磁化、M1(0)は第1成分の平衡状態の磁化、p1は係数(但し、2<p1<4)、τは緩和遅延時間、T11は第1成分の緩和時間をそれぞれ表す。〕 M2(τ)= M2(0)×p2×exp(-τ/T12) ・・・(2)〔ここで、M2(τ)は第2成分の緩和遅延時間τの時に観測される磁化、M2(0)は第2成分の平衡状態の磁化、p2は係数(但し、2<p2<4)、τは緩和遅延時間、T12は第2成分の緩和時間をそれぞれ表す。〕 M3(τ)= M3(0)×p3×exp(-τ/T13) ・・・(3)〔ここで、M3(τ)は第3成分の緩和遅延時間τの時に観測される磁化、M3(0)は第3成分の平衡状態の磁化、p3は係数(但し、2<p3<4)、τは緩和遅延時間、T13は第3成分の緩和時間をそれぞれ表す。〕 また、Inversion Recovery法で測定した場合には、下記(4)〜(6)式により、各ピーク強度(=平衡状態の磁化)を算出することができる。 M1(τ)=M1(0)×(1-p1×exp(-τ/T11) ・・・(4)〔ここで、M1(τ)は第1成分の緩和遅延時間τの時に観測される磁化、M1(0)は第1成分の平衡状態の磁化、p1は係数(但し、2<p1<4)、τは緩和遅延時間、T11は第1成分の緩和時間をそれぞれ表す。〕 M2(τ)=M2(0)×(1-p2×exp(-τ/T12) ・・・(5)〔ここで、M2(τ)は第2成分の緩和遅延時間τの時に観測される磁化、M2(0)は第2成分の平衡状態の磁化、p2は係数(但し、2<p2<4)、τは緩和遅延時間、T12は第2成分の緩和時間をそれぞれ表す。〕 M3(τ)=M3(0)×(1-p3×exp(-τ/T13) ・・・(6)〔ここで、M3(τ)は第3成分の緩和遅延時間τの時に観測される磁化、M3(0)は第3成分の平衡状態の磁化、p3は係数(但し、2<p3<4)、τは緩和遅延時間、T13は第3成分の緩和時間をそれぞれ表す。〕 なお、Torchia法、Inversion Recovery法いずれの方法においても、これら3成分の合計Mcal(τ)=M1(τ)+M2(τ)+M3(τ)とτを実験で0.05〜600秒の範囲で測定したピーク強度M(τ)との間でΣ((M(τ)-Mcal(τ))2が最小になるようにこれら3成分の平衡磁化 M1(0)、M2(0)、M3(0)、係数 p1、p2、p3、緩和時間 T11、T12、T13を最適化すればよい。 また、本発明においては、上記のスピン−格子緩和時間(T1)の測定におけるピーク強度の割合(全体の平衡磁化のうちの結晶成分(3成分目)の平衡磁化の割合)(%)がEVOHの結晶化度(%)を示すことをも見出したものである。すなわち、EVOHの結晶化度(%)を下記(8)式で算出できることを見出したものである。 結晶化度(%)=〔M3(0)/[M1(0)+M2(0)+M3(0)]〕×100 ・・・(8) 本発明のEVOH系成形物は、上記の測定により得られるビニルアルコール炭素のケミカルシフトに起因する70ppm付近のピークを緩和時間の違いにより分離したときに10秒未満〔T11〕、10〜20秒未満〔T12〕及び20秒以上〔T13〕の3成分に分離されるもので、かかる3成分の関係において、10〜20秒未満〔T12〕のピーク強度の割合が20〜50%で、しかも20秒以上〔T13〕のピーク強度の割合が30%以上であるとき、特に良好なガスバリア性が得られるものである。なお、かかる各ピークの算出にあたっては、上記のM1(0)〜M3(0)より、それぞれの割合、例えば、〔T12〕におけるピーク強度の割合であれば、〔M2(0)/[M1(0)+M2(0)+M3(0)]〕×100(%)により算出されるものである。 かかる上記の条件を満足するガスバリア性の良好なEVOH成形物としては、例えば、以下のようなものを挙げることができる。 EVOH単層の場合には、相対湿度を10%〜50%(さらに20〜40%)に維持することにより実現することができる。 また、積層体とするときは、熱可塑性樹脂層(A)/EVOHを含有する層(B)/熱可塑性樹脂層(C)/乾燥剤を含有する熱可塑性樹脂層(D)/熱可塑性樹脂(E)の構成からなり、かつ各層の厚みが下記(7)〜(10)式の条件を満足する積層体を挙げることができる。 a≧b+c ・・・(7) 0.1429≦b/(a+b+c)≦0.8571 ・・・(8) c≦d ・・・(9) c≦e ・・・(10) なお、a〜eは上記の各層(A)〜(E)のそれぞれの厚み(μm)を表す。 ここで、かかる層(A)、(C)〜(E)に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィン単独または共重合体、あるいはこれらの不飽和カルボン酸やそのエステルによるグラフト変性物)、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられ、同時に同じ熱可塑性樹脂を用いてもよいが、異なった熱可塑性樹脂を選択することも可能である。 また、上記の層(D)に含まれる乾燥剤としては、特に制限はなく、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等のリン酸塩やその無水物、ホウ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等の塩類、また吸湿性化合物である塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、シリカゲル、砂糖、ベントナイト、モレキュラシーブ、高吸水性樹脂も利用できる。これらは1種類単独あるいは2種以上を併用することもできる。これらの中でもモレキュラシーブ、シリカゲル、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムが好ましい。なお、乾燥剤の粒子径としては特に限定されないが、50μ以下(さらには30μ以下)が好ましく、かかる粒子径が50μmを越えると層(D)の平滑性が失われるため、層(B)を含む全体の積層が困難となり、さらに外観上好ましくない。 また、積層体を作製するにあたっては、公知の積層方法を採用することができ、例えば、共押出、インフレーション、エクストルージョンコーティング、ドライラミネート、ウエットラミネートなど任意の方法により製造される。 また、上記の積層体の層間には、必要に応じて接着層を設けることもあり、かかる接着層に用いる接着性樹脂としては、種々のものを使用することもでき、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができ、具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。このときにオレフィン系重合体に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の量は、0.001〜3重量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.03〜0.5重量%である。該変性物中の変性量が少ないと、接着性が不充分となることがあり、逆に多いと架橋反応を起こし、成形性が悪くなることがあり好ましくない。またこれらの接着性樹脂には、本発明のEVOH組成物や、EVOH以外の熱可塑性樹脂、さらにポリイソブチレン、エチレン−プロピレンゴム等のゴム・エラストマー成分をブレンドすることも可能である。 なお、上記の積層体を実用に供するにあたっては、層(A)を外側として、層(E)側に内容物が密封される態様が好ましく、また、必要に応じて、積層体の両外側にさらに同種あるいは異種の熱可塑性樹脂層、金属フィルム、紙、不織布、木材等を接触させてもよい。 このように得られた積層体は、ガスバリア性が優れているので食品、医薬品に主として使用することができる。またその他にも農薬品、工業製品、香料、油類などを包装する包装用フィルム、シート、チューブ、袋、容器(ボトル、コンテナ、トレイ、タンク等)としても使うことができ、さらに保温性を利用した農業用資材や、ガスバリア性を利用した電極基板などの用途にも用いることができる。 つぎに実施例と比較例により、本発明をさらに説明する。 実施例1 層(A)〜(E)に用いる樹脂及び樹脂組成物を以下のように用意した。 層(A):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定) 層(B):EVOH(エチレン含有量44モル%、ケン化度99.5モル%) 層(C):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定) 層(D):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定)80部とモレキュラシーブ(粒子径400メッ シュ)20部の組成物 層(E):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定) 上記の樹脂及び樹脂組成物を用いて、インフレーション成形により以下の要領で積層体を作製した。[インフレーション成形による製膜条件] [層(A)、(C)、(E)用押出機] スクリュー内径 40mm L/D 28 スクリュー圧縮比 3.2 スクリュー回転数 40rpm 押出温度 C1:190℃ H:230℃ C2:220℃ D:230℃ C3:230℃ C4:230℃ [層(B)用押出機] スクリュー内径 40mm L/D 28 スクリュー圧縮比 3.2 スクリュー回転数 40rpm 押出温度 C1:190℃ H:230℃ C2:220℃ D:230℃ C3:230℃ C4:230℃ [層(D)用押出機] スクリュー内径 40mm L/D 28 スクリュー圧縮比 3.2 スクリュー回転数 40rpm 押出温度 C1:190℃ H:230℃ C2:220℃ D:230℃ C3:230℃ C4:230℃ [ダイ] ダイ スパイラルマンドレル型 ダイ口径 150mm ダイ温度 230℃ [インフレーション製膜条件] 冷却方式 空冷式 エアリング風温 49℃ ブロー比 1.5 引取速度 10m/分 得られた積層体は、A/B/C/D/E=50μm/30μm/10μm/70μm/20μmの層構成であった。 なお、各層の間に接着剤層として無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンを設けた。 得られた積層体の条件を本文中の(7)〜(10)式に代入すると、 a=50≧b+c=30+10=40 ・・・(7) 0.1429≦b/(a+b+c)=30/(50+30+10)=0.333≦0.8571 ・・・(8) c=10≦d=70 ・・・(9) c=10≦e=20 ・・・(10)となって、全て満足するものであった。 得られた積層体の固体NMRによる緩和時間を以下の要領で測定した。<固体NMRによる緩和時間測定> 上記の積層体(0.7cm×30cm)を7mm試料管に入れ、外部から水分が入らないようにするため密封状態にして5000Hzで回転させ、室温でInversion Recoveryのパルスシーケンスを用いて緩和遅延時間τ=0.05秒から600秒までのスペクトルをとり、ケミカルシフト70ppm付近の最も大きなピークの緩和挙動から各成分のスピン−格子緩和時間(T1)とその割合を計算した。その後、本文中の(4)〜(6)式によりM1(τ)〜M3(τ)の各ピーク強度を算出してそれぞれの割合(%)を求めたところ、〔T11〕=3秒のピーク強度の割合が26%、〔T12〕=12秒のピーク強度の割合が40%、〔T13〕=24秒のピーク強度の割合が34%であった。また、結晶化度(%)は34%であった。 ついで、得られた積層体のガスバリア性を以下の要領で測定した。<酸素透過度(OTR)測定> 上記の積層体の酸素透過度を、20℃、0%RHの条件下でMOCON社製の「OXTRAN 2/20SL」を使用して測定した。酸素透過度(OTR)の単位は「cc/m2/day/atm」である(20μm換算値)。 実施例2 実施例1において、EVOHとして、エチレン含有量29モル%でケン化度99.5モル%のEVOHを用い、かつ層(E)の厚みは10μmとした以外は同様に積層体を作製した。 得られた積層体の条件を本文中の(7)〜(10)式に代入すると、 a=50≧b+c=30+10=40 ・・・(7) 0.1429≦b/(a+b+c)=30/(50+30+10)=0.333≦0.8571 ・・・(8) c=10≦d=70 ・・・(9) c=10≦e=10 ・・・(10)となって、全て満足するものであった。 得られた積層体について、固体NMRによる緩和時間及びガスバリア性を同様に測定した。 実施例3 下記の層(A)〜(E)に用いる樹脂及び樹脂組成物を用意して、実施例1に準じて積層体を作製した。但し、厚み構成をA/B/C/D/E=100μm/50μm/30μm/100μm/30μmとした。 層(A):6−ナイロン(密度1.10g/cm3、三菱エンジニアリングプラスチッ ク社製『ノバミッド1022C6』) 層(B):EVOH(エチレン含有量29モル%でケン化度99.5モル%) 層(C):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定) 層(D):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分:19 0℃、2160gで測定)70部とモレキュラシーブ(粒子径400メッ シュ)30部の組成物 層(E):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定) 得られた積層体の条件を本文中の(7)〜(10)式に代入すると、 a=100≧b+c=50+30=80 ・・・(7) 0.1429≦b/(a+b+c)=50/(100+50+30)=0.2778≦0.8571 ・・・(8) c=30≦d=100 ・・・(9) c=30≦e=30 ・・・(10)となって、全て満足するものであった。 得られた積層体について、固体NMRによる緩和時間及びガスバリア性を同様に測定した。 実施例4 実施例2において層(B)の厚みを40μmとした以外は同様に積層体を作製した。 得られた積層体の条件を本文中の(7)〜(10)式に代入すると、 a=50≧b+c=40+10=50 ・・・(7) 0.1429≦b/(a+b+c)=40/(50+40+10)=0.4000≦0.8571 ・・・(8) c=10≦d=70 ・・・(9) c=10≦e=10 ・・・(10)となって、全て満足するものであった。 得られた積層体について、固体NMRによる緩和時間及びガスバリア性を同様に測定した。 比較例1 下記の層(A)〜(E)に用いる樹脂及び樹脂組成物を用意して、実施例1に準じて積層体を作製した。但し、厚み構成をA/B/C/D/E=50μm/30μm/10μm/70μm/10μmとした。 層(A):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定)80部とモレキュラシーブ(粒子径400メッ シュ)20部の組成物 層(B):EVOH(エチレン含有量44モル%、ケン化度99.5モル%) 層(C):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分:19 0℃、2160gで測定) 層(D):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR=6g/10分 1 90℃、2160gで測定)80部とモレキュラシーブ(粒子径400メッ シュ)20部の組成物 層(E):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定) 得られた積層体について、固体NMRによる緩和時間及びガスバリア性を同様に測定した。 比較例2 下記の層(A)〜(E)に用いる樹脂及び樹脂組成物を用意して、実施例2に準じて積層体を作製した。但し、厚み構成をA/B/C/D/E=50μm/30μm/10μm/70μm/10μmとした。 層(A):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定)80部とモレキュラシーブ(粒子径400メッ シュ)20部の組成物 層(B):EVOH(エチレン含有量29モル%、ケン化度99.5モル%) 層(C):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分:19 0℃、2160gで測定) 層(D):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR=6g/10分 1 90℃、2160gで測定)80部とモレキュラシーブ(粒子径400メッ シュ)20部の組成物 層(E):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定) 得られた積層体について、固体NMRによる緩和時間及びガスバリア性を同様に測定した。 実施例および比較例の評価結果を表1に示す。〔表1〕 結晶化度 酸素透過度 〔T11〕 〔T12〕 〔T13〕* (%) (cc/m2/day/atm) 実施例1 3 12 24 26 40 34 34 2.21 〃 2 4 12 39 26 41 33 33 0.05 〃 3 5 15 35 31 32 37 37 0.02 〃 4 3 12 33 25 41 34 34 0.02 比較例1 3 − 21 66 − 34 34 3.48 〃 2 8 − 44 62 − 38 38 0.08 *上段の値は緩和時間(秒)で、下段の値はそれぞれのピーク強度の割合(%)を表す。また、比較例1及び2では、〔T11〕及び〔T12〕の緩和時間が同じで2成分にしか分離できなかった。 本発明のEVOH系成形物は、ガスバリア性に優れており、食品、医薬、化粧、農薬、飲料品等の包装材料や包装容器に有用である。 エチレン−ビニルアルコール共重合体を含有する層を少なくとも1層含むエチレン−ビニルアルコール共重合体系成形物で、かつ固体NMRを用いて13C核スピン−格子緩和時間(T1)を23℃で測定して得られるビニルアルコール炭素のケミカルシフトに起因する70ppm付近のピークを緩和時間の違いにより分離したときに、10秒未満〔T11〕、10〜20秒未満〔T12〕及び20秒以上〔T13〕の3成分に分離されることを特徴とするエチレン−ビニルアルコール共重合体系成形物。 エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量が5〜60モル%で、ケン化度が95モル%以上であることを特徴とする請求項1記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体系成形物。 13C核スピン−格子緩和時間の違いにより分離した3成分中の10〜20秒未満〔T12〕におけるピーク強度の割合が20〜50%で、かつ20秒以上〔T13〕におけるピーク強度の割合が30%以上であることを特徴とする請求項1または2記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体系成形物。 エチレン−ビニルアルコール共重合体を含有する単層あるいは該層を少なくとも1層含む積層体を、固体NMRを用いて13C核スピン−格子緩和時間(T1)を23℃で測定して得られるビニルアルコール炭素のケミカルシフトに起因する70ppm付近のピークを緩和時間の違いにより分離することを特徴とするエチレン−ビニルアルコール共重合体系成形物の評価方法。 エチレン−ビニルアルコール共重合体を含有する単層あるいは該層を少なくとも1層含む積層体を、固体NMRを用いて13C核スピン−格子緩和時間(T1)を23℃で測定して得られるビニルアルコール炭素のケミカルシフトに起因する70ppm付近のピークを緩和時間の違いにより分離したときに緩和時間が20秒以上〔T13〕におけるピーク強度の割合を測定することを特徴とするエチレン−ビニルアルコール共重合体の結晶化度の測定方法。 【課題】 ガスバリア性に優れたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物系成形物、その評価方法、結晶化度の測定方法を提供すること。【解決手段】 エチレン−ビニルアルコール共重合体を含有する層を少なくとも1層含むエチレン−ビニルアルコール共重合体系成形物で、かつ固体NMRを用いて13C核スピン−格子緩和時間(T1)を23℃で測定して得られるビニルアルコール炭素のケミカルシフトに起因する70ppm付近のピークを緩和時間の違いにより分離したときに、10秒未満〔T11〕、10〜20秒未満〔T12〕及び20秒以上〔T13〕の3成分に分離される。


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特許公報(B2)_エチレン−ビニルアルコール共重合体系成形物、評価方法、結晶化度の測定方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_エチレン−ビニルアルコール共重合体系成形物、評価方法、結晶化度の測定方法
出願番号:2003316800
年次:2010
IPC分類:B32B 27/28,C08F 8/12,G01N 24/08


特許情報キャッシュ

神田 泰治 山本 友之 JP 4451103 特許公報(B2) 20100205 2003316800 20030909 エチレン−ビニルアルコール共重合体系成形物、評価方法、結晶化度の測定方法 日本合成化学工業株式会社 000004101 神田 泰治 山本 友之 20100414 B32B 27/28 20060101AFI20100329BHJP C08F 8/12 20060101ALI20100329BHJP G01N 24/08 20060101ALI20100329BHJP JPB32B27/28 102C08F8/12G01N24/08 510S B32B 1/00−43/00 G01N 22/00−24/14 特開平05−345390(JP,A) 特開昭61−011339(JP,A) 特開2000−96372(JP,A) 1 2005081723 20050331 12 20060825 横島 隆裕 本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記する)の成形物、およびその評価方法、さらにはかかるEVOHの結晶化度の測定方法に関する。 EVOHは、エチレン単位と酢酸ビニルをケン化することによるビニルアルコール単位を主として構成されており、かかるビニルアルコール単位に基づく多数の水酸基を分子内に有するため、ガスバリア性が良好である。 また、分子内に多数の水酸基を有することは、保香性、耐溶剤性、耐油性、保温性、などの性質が良好であることも意味する。そのためEVOHフィルムやEVOHフィルム層を含む積層体等の成形物は、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料をはじめとする各種包装用途に広く使われている。 上記のように、EVOHは素質的にはガスバリア性が良好な樹脂であるが、側鎖に水酸基を有するため親水性を有し、高湿条件下と水と接触する用途に用いるときは、本来のガスバリア性が低下するという問題点を有している。 そこで、(1)EVOHフィルムを熱処理する方法、(2)EVOHフィルムを二軸延伸する方法、(3)EVOHマトリクス中に乾燥剤を添加する方法など、EVOHのガスバリア性を向上させる手段が講じられている。 具体的に、(1)の熱処理や(2)のフィルムを2軸延伸する方法は、EVOHをフィルムにする際に通常行われる方法であり、また(3)の方法においては、EVOH層に特定の粒径をもつ乾燥剤を添加させた組成物を用いる方法(例えば、特許文献1参照。)や積層される熱可塑性樹脂層に乾燥剤を添加させる方法(例えば、特許文献2参照。)などが知られている。特開昭63−113062号公報特開2003−11288号公報 しかしながら、特許文献1に開示の方法では、EVOH層に乾燥剤が含有しているため、乾燥剤とEVOHの密着性が不十分になって十分なガスバリア性が発揮されない恐れがあり、また、特許文献2に開示の方法では、乾燥剤の空間的な配置が規定されておらず外気等に触れて吸湿する可能性がありその結果ガスバリア性が低下する恐れがある。 そこで、本発明者は、かかる現況に鑑みて、EVOHを含有する成形物のガスバリア性について鋭意研究を重ねた結果、EVOHを含有する層を少なくとも1層含むEVOH系成形物で、かつ固体NMRを用いて13C核スピン−格子緩和時間(T1)を23℃で測定して得られるビニルアルコール炭素のケミカルシフトに起因する70ppm付近のピークを緩和時間の違いにより分離したときに、10秒未満〔T11〕、10〜20秒未満〔T12〕及び20秒以上〔T13〕の3成分に分離されるEVOH系成形物がガスバリア性に優れることを見出して本発明の完成に至った。 また、かかる3成分中の10〜20秒未満〔T12〕におけるピーク強度の割合が20〜50%で、かつ20秒以上〔T13〕におけるピーク強度の割合が30%以上であるとき、特にガスバリア性に優れること見出したものである。 本発明のEVOH系成形物は、ガスバリア性に優れるものである。 以下に、本発明を詳細に説明する。 本発明のEVOH系成形物は、EVOHの層を少なくとも1層含むもので、かかるEVOHとしては特に限定されないが、エチレン含有量が5〜60モル%(さらには20〜60モル%、特には25〜50モル%)、酢酸ビニル成分のケン化度が95モル%以上(さらには96モル%以上、特には97モル%以上、殊には99モル%以上)のものが好ましく用いられ、該エチレン含有量が5モル%未満では高湿時のガスバリア性や溶融成形性が低下し、逆に60モル%を越えるとガスバリア性が低下する傾向にあり、さらに酢酸ビニル成分のケン化度が95モル%未満ではガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向にあり好ましくない。 また、EVOHのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160gで測定。以下同様)については、特に限定はされないが、0.5〜100g/10分(さらには1〜50g/10分、特には3〜35g/10分)が好ましく、該メルトフローレートが該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となる傾向にあり、また該範囲よりも大きい場合には、EVOH層の厚み精度が低下して好ましくない。 該EVOHは、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化によって得られ、該エチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造され、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。 また、本発明では、本発明の効果を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよく、かかる単量体としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。又、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化等、後変性されても差し支えない。 また、EVOHとして、異なる2種以上のEVOHを用いることも可能で、このときは、エチレン含有量が5モル%以上(さらには5〜25モル%、特には8〜20モル%)異なり、及び/又はケン化度が1モル%以上(さらには1〜15モル%、特には2〜10モル%)異なり、及び/又はMFRの比が2以上(さらには3〜20、特には4〜15)であるEVOHのブレンド物を用いることにより、ガスバリア性を保持したまま、さらに柔軟性、熱成形性、製膜安定性等が向上するので有用である。異なる2種以上のEVOH(ブレンド物)の製造方法は特に限定されず、例えばケン化前のエチレン−酢酸ビニル共重合体の各ペーストを混合後ケン化する方法、ケン化後の各EVOHのアルコールまたは水とアルコールの混合溶液を混合する方法、各EVOHを混合後溶融混練する方法などが挙げられる。 本発明で用いられるEVOH中には酢酸、ホウ酸、リン酸等の酸類やそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属塩を含有させることも、EVOHの熱安定性、ロングラン成形性、接着剤を用いて多層フィルムとしたときの接着剤樹脂との層間接着性、加熱延伸成形性等が向上する点で好ましく、特にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩がその効果に優れる点で好ましく用いられる。 かかる金属塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸や、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸等の無機酸の金属塩が挙げられ、好適には酢酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩である。また、該金属塩の含有量としては、EVOHに対して金属換算で5〜1000ppm(さらには10〜500ppm、特には20〜300ppm)とすることが好ましく、かかる含有量が5ppm未満ではその含有効果が充分得られないことがあり、逆に1000ppmを越えると得られる多層フィルムの外観が悪化することがあり好ましくない。なお、2種以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩が含有される場合は、その総計が上記の含有量の範囲にあることが好ましい。また、ホウ酸を含有させるときは、ホウ素換算で10〜10000ppm(さらには20〜2000ppm、特には50〜1000ppm)とすることが好ましい。 さらに本発明の効果を損なわない限り、EVOH層にはタルク、マイカ、カオリンなどのような結晶核剤、グリセリン、エチレングリコールなどの可塑剤、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ワックスなどの滑剤など無機系、有機系の添加剤を添加することもできる。 本発明の成形物において、積層体の場合は、上記のEVOH層と他の熱可塑性樹脂層を積層するのであるが、かかる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィン単独または共重合体、あるいはこれらの不飽和カルボン酸やそのエステルによるグラフト変性物)、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられ、その積層構成も特に限定はされないが、本発明においては、かかる成形物(単層あるいは積層体)を、固体NMRを用いて13C核スピン−格子緩和時間(T1)を23℃で測定して得られるビニルアルコール炭素のケミカルシフトに起因する70ppm付近のピークを緩和時間の違いにより分離したときに、10秒未満〔T11〕、10〜20秒未満〔T12〕及び20秒以上〔T13〕の3成分に分離されることを特徴とするものである。すなわち、かかる緩和時間の違いにより分離される〔T11〕〜〔T13〕成分より求められる各成分のピークが3種得られるものであり、以下に詳細に説明する。 かかる固体NMRの測定にあたっては、かかる単層あるいは積層体等の成形物のまま測定することもできるが、さらに粉砕して測定しても差し支えない。 固体NMRの測定温度は23℃で、スピン−格子緩和時間(T1)の測定は、特に限定されないが、Torchia法またはInversion Recovery法によって測定することができ、いずれの方法からも得られるT1は同じ値であるので、どちらを採用しても良い。 まず、かかる固体NMRの測定により得られるスピン−格子緩和時間(T1)から求められるピークの緩和回復挙動のピークから求めるのである。 すなわち、対象とするピークはビニルアルコール炭素のケミカルシフトに起因する70ppm付近の最も大きなピークであり、EVOHにおけるビニルアルコール成分のメチンの炭素に相当する。成分の分離は、シンプレックス法などの最適化手法で可能であり、通常は、マイクロソフト社製表計算ソフトウエア「EXCEL」の「SOLVER」を用いることによって得ることができる。そして、分離後の平衡磁化と全体の平衡磁化(ピーク各成分)の量を算出することができる。 このとき得られるスピン−格子緩和時間(T1)を3成分の異なる時間に分離するのである。 かかる3成分の分離方法については、Torchia法で測定した場合には、下記(1)〜(3)式により、各ピーク強度(=平衡状態の磁化)を算出することができる。 M1(τ)= M1(0)×p1×exp(-τ/T11) ・・・(1)〔ここで、M1(τ)は第1成分の緩和遅延時間τの時に観測される磁化、M1(0)は第1成分の平衡状態の磁化、p1は係数(但し、2<p1<4)、τは緩和遅延時間、T11は第1成分の緩和時間をそれぞれ表す。〕 M2(τ)= M2(0)×p2×exp(-τ/T12) ・・・(2)〔ここで、M2(τ)は第2成分の緩和遅延時間τの時に観測される磁化、M2(0)は第2成分の平衡状態の磁化、p2は係数(但し、2<p2<4)、τは緩和遅延時間、T12は第2成分の緩和時間をそれぞれ表す。〕 M3(τ)= M3(0)×p3×exp(-τ/T13) ・・・(3)〔ここで、M3(τ)は第3成分の緩和遅延時間τの時に観測される磁化、M3(0)は第3成分の平衡状態の磁化、p3は係数(但し、2<p3<4)、τは緩和遅延時間、T13は第3成分の緩和時間をそれぞれ表す。〕 また、Inversion Recovery法で測定した場合には、下記(4)〜(6)式により、各ピーク強度(=平衡状態の磁化)を算出することができる。 M1(τ)=M1(0)×(1-p1×exp(-τ/T11) ・・・(4)〔ここで、M1(τ)は第1成分の緩和遅延時間τの時に観測される磁化、M1(0)は第1成分の平衡状態の磁化、p1は係数(但し、2<p1<4)、τは緩和遅延時間、T11は第1成分の緩和時間をそれぞれ表す。〕 M2(τ)=M2(0)×(1-p2×exp(-τ/T12) ・・・(5)〔ここで、M2(τ)は第2成分の緩和遅延時間τの時に観測される磁化、M2(0)は第2成分の平衡状態の磁化、p2は係数(但し、2<p2<4)、τは緩和遅延時間、T12は第2成分の緩和時間をそれぞれ表す。〕 M3(τ)=M3(0)×(1-p3×exp(-τ/T13) ・・・(6)〔ここで、M3(τ)は第3成分の緩和遅延時間τの時に観測される磁化、M3(0)は第3成分の平衡状態の磁化、p3は係数(但し、2<p3<4)、τは緩和遅延時間、T13は第3成分の緩和時間をそれぞれ表す。〕 なお、Torchia法、Inversion Recovery法いずれの方法においても、これら3成分の合計Mcal(τ)=M1(τ)+M2(τ)+M3(τ)とτを実験で0.05〜600秒の範囲で測定したピーク強度M(τ)との間でΣ((M(τ)-Mcal(τ))2が最小になるようにこれら3成分の平衡磁化 M1(0)、M2(0)、M3(0)、係数 p1、p2、p3、緩和時間 T11、T12、T13を最適化すればよい。 また、本発明においては、上記のスピン−格子緩和時間(T1)の測定におけるピーク強度の割合(全体の平衡磁化のうちの結晶成分(3成分目)の平衡磁化の割合)(%)がEVOHの結晶化度(%)を示すことをも見出したものである。すなわち、EVOHの結晶化度(%)を下記式で算出できることを見出したものである。 結晶化度(%)=〔M3(0)/[M1(0)+M2(0)+M3(0)]〕×100 本発明のEVOH系成形物は、上記の測定により得られるビニルアルコール炭素のケミカルシフトに起因する70ppm付近のピークを緩和時間の違いにより分離したときに10秒未満〔T11〕、10〜20秒未満〔T12〕及び20秒以上〔T13〕の3成分に分離されるもので、かかる3成分の関係において、10〜20秒未満〔T12〕のピーク強度の割合が20〜50%で、しかも20秒以上〔T13〕のピーク強度の割合が30%以上であるとき、特に良好なガスバリア性が得られるものである。なお、かかる各ピークの算出にあたっては、上記のM1(0)〜M3(0)より、それぞれの割合、例えば、〔T12〕におけるピーク強度の割合であれば、〔M2(0)/[M1(0)+M2(0)+M3(0)]〕×100(%)により算出されるものである。 かかる上記の条件を満足するガスバリア性の良好なEVOH成形物としては、例えば、以下のようなものを挙げることができる。 EVOH単層の場合には、相対湿度を10%〜50%(さらに20〜40%)に維持することにより実現することができる。 また、積層体とするときは、熱可塑性樹脂層(A)/EVOHを含有する層(B)/熱可塑性樹脂層(C)/乾燥剤を含有する熱可塑性樹脂層(D)/熱可塑性樹脂(E)の構成からなり、かつ各層の厚みが下記(7)〜(10)式の条件を満足する積層体を挙げることができる。 a≧b+c ・・・(7) 0.1429≦b/(a+b+c)≦0.8571 ・・・(8) c≦d ・・・(9) c≦e ・・・(10) なお、a〜eは上記の各層(A)〜(E)のそれぞれの厚み(μm)を表す。 ここで、かかる層(A)、(C)〜(E)に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィン単独または共重合体、あるいはこれらの不飽和カルボン酸やそのエステルによるグラフト変性物)、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられ、同時に同じ熱可塑性樹脂を用いてもよいが、異なった熱可塑性樹脂を選択することも可能である。 また、上記の層(D)に含まれる乾燥剤としては、特に制限はなく、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等のリン酸塩やその無水物、ホウ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等の塩類、また吸湿性化合物である塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、シリカゲル、砂糖、ベントナイト、モレキュラシーブ、高吸水性樹脂も利用できる。これらは1種類単独あるいは2種以上を併用することもできる。これらの中でもモレキュラシーブ、シリカゲル、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムが好ましい。なお、乾燥剤の粒子径としては特に限定されないが、50μ以下(さらには30μ以下)が好ましく、かかる粒子径が50μmを越えると層(D)の平滑性が失われるため、層(B)を含む全体の積層が困難となり、さらに外観上好ましくない。 また、積層体を作製するにあたっては、公知の積層方法を採用することができ、例えば、共押出、インフレーション、エクストルージョンコーティング、ドライラミネート、ウエットラミネートなど任意の方法により製造される。 また、上記の積層体の層間には、必要に応じて接着層を設けることもあり、かかる接着層に用いる接着性樹脂としては、種々のものを使用することもでき、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができ、具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。このときにオレフィン系重合体に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の量は、0.001〜3重量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.03〜0.5重量%である。該変性物中の変性量が少ないと、接着性が不充分となることがあり、逆に多いと架橋反応を起こし、成形性が悪くなることがあり好ましくない。またこれらの接着性樹脂には、本発明のEVOH組成物や、EVOH以外の熱可塑性樹脂、さらにポリイソブチレン、エチレン−プロピレンゴム等のゴム・エラストマー成分をブレンドすることも可能である。 なお、上記の積層体を実用に供するにあたっては、層(A)を外側として、層(E)側に内容物が密封される態様が好ましく、また、必要に応じて、積層体の両外側にさらに同種あるいは異種の熱可塑性樹脂層、金属フィルム、紙、不織布、木材等を接触させてもよい。 このように得られた積層体は、ガスバリア性が優れているので食品、医薬品に主として使用することができる。またその他にも農薬品、工業製品、香料、油類などを包装する包装用フィルム、シート、チューブ、袋、容器(ボトル、コンテナ、トレイ、タンク等)としても使うことができ、さらに保温性を利用した農業用資材や、ガスバリア性を利用した電極基板などの用途にも用いることができる。 つぎに実施例と比較例により、本発明をさらに説明する。 実施例1 層(A)〜(E)に用いる樹脂及び樹脂組成物を以下のように用意した。 層(A):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定) 層(B):EVOH(エチレン含有量44モル%、ケン化度99.5モル%) 層(C):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定) 層(D):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定)80部とモレキュラシーブ(粒子径400メッ シュ)20部の組成物 層(E):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定) 上記の樹脂及び樹脂組成物を用いて、インフレーション成形により以下の要領で積層体を作製した。[インフレーション成形による製膜条件] [層(A)、(C)、(E)用押出機] スクリュー内径 40mm L/D 28 スクリュー圧縮比 3.2 スクリュー回転数 40rpm 押出温度 C1:190℃ H:230℃ C2:220℃ D:230℃ C3:230℃ C4:230℃ [層(B)用押出機] スクリュー内径 40mm L/D 28 スクリュー圧縮比 3.2 スクリュー回転数 40rpm 押出温度 C1:190℃ H:230℃ C2:220℃ D:230℃ C3:230℃ C4:230℃ [層(D)用押出機] スクリュー内径 40mm L/D 28 スクリュー圧縮比 3.2 スクリュー回転数 40rpm 押出温度 C1:190℃ H:230℃ C2:220℃ D:230℃ C3:230℃ C4:230℃ [ダイ] ダイ スパイラルマンドレル型 ダイ口径 150mm ダイ温度 230℃ [インフレーション製膜条件] 冷却方式 空冷式 エアリング風温 49℃ ブロー比 1.5 引取速度 10m/分 得られた積層体は、A/B/C/D/E=50μm/30μm/10μm/70μm/20μmの層構成であった。 なお、各層の間に接着剤層として無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンを設けた。 得られた積層体の条件を本文中の(7)〜(10)式に代入すると、 a=50≧b+c=30+10=40 ・・・(7) 0.1429≦b/(a+b+c)=30/(50+30+10)=0.333≦0.8571 ・・・(8) c=10≦d=70 ・・・(9) c=10≦e=20 ・・・(10)となって、全て満足するものであった。 得られた積層体の固体NMRによる緩和時間を以下の要領で測定した。<固体NMRによる緩和時間測定> 上記の積層体(0.7cm×30cm)を7mm試料管に入れ、外部から水分が入らないようにするため密封状態にして5000Hzで回転させ、室温でInversion Recoveryのパルスシーケンスを用いて緩和遅延時間τ=0.05秒から600秒までのスペクトルをとり、ケミカルシフト70ppm付近の最も大きなピークの緩和挙動から各成分のスピン−格子緩和時間(T1)とその割合を計算した。その後、本文中の(4)〜(6)式によりM1(τ)〜M3(τ)の各ピーク強度を算出してそれぞれの割合(%)を求めたところ、〔T11〕=3秒のピーク強度の割合が26%、〔T12〕=12秒のピーク強度の割合が40%、〔T13〕=24秒のピーク強度の割合が34%であった。また、結晶化度(%)は34%であった。 ついで、得られた積層体のガスバリア性を以下の要領で測定した。<酸素透過度(OTR)測定> 上記の積層体の酸素透過度を、20℃、0%RHの条件下でMOCON社製の「OXTRAN 2/20SL」を使用して測定した。酸素透過度(OTR)の単位は「cc/m2/day/atm」である(20μm換算値)。 実施例2 実施例1において、EVOHとして、エチレン含有量29モル%でケン化度99.5モル%のEVOHを用い、かつ層(E)の厚みは10μmとした以外は同様に積層体を作製した。 得られた積層体の条件を本文中の(7)〜(10)式に代入すると、 a=50≧b+c=30+10=40 ・・・(7) 0.1429≦b/(a+b+c)=30/(50+30+10)=0.333≦0.8571 ・・・(8) c=10≦d=70 ・・・(9) c=10≦e=10 ・・・(10)となって、全て満足するものであった。 得られた積層体について、固体NMRによる緩和時間及びガスバリア性を同様に測定した。 実施例3 下記の層(A)〜(E)に用いる樹脂及び樹脂組成物を用意して、実施例1に準じて積層体を作製した。但し、厚み構成をA/B/C/D/E=100μm/50μm/30μm/100μm/30μmとした。 層(A):6−ナイロン(密度1.10g/cm3、三菱エンジニアリングプラスチッ ク社製『ノバミッド1022C6』) 層(B):EVOH(エチレン含有量29モル%でケン化度99.5モル%) 層(C):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定) 層(D):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分:19 0℃、2160gで測定)70部とモレキュラシーブ(粒子径400メッ シュ)30部の組成物 層(E):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定) 得られた積層体の条件を本文中の(7)〜(10)式に代入すると、 a=100≧b+c=50+30=80 ・・・(7) 0.1429≦b/(a+b+c)=50/(100+50+30)=0.2778≦0.8571 ・・・(8) c=30≦d=100 ・・・(9) c=30≦e=30 ・・・(10)となって、全て満足するものであった。 得られた積層体について、固体NMRによる緩和時間及びガスバリア性を同様に測定した。 実施例4 実施例2において層(B)の厚みを40μmとした以外は同様に積層体を作製した。 得られた積層体の条件を本文中の(7)〜(10)式に代入すると、 a=50≧b+c=40+10=50 ・・・(7) 0.1429≦b/(a+b+c)=40/(50+40+10)=0.4000≦0.8571 ・・・(8) c=10≦d=70 ・・・(9) c=10≦e=10 ・・・(10)となって、全て満足するものであった。 得られた積層体について、固体NMRによる緩和時間及びガスバリア性を同様に測定した。 比較例1 下記の層(A)〜(E)に用いる樹脂及び樹脂組成物を用意して、実施例1に準じて積層体を作製した。但し、厚み構成をA/B/C/D/E=50μm/30μm/10μm/70μm/10μmとした。 層(A):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定)80部とモレキュラシーブ(粒子径400メッ シュ)20部の組成物 層(B):EVOH(エチレン含有量44モル%、ケン化度99.5モル%) 層(C):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分:19 0℃、2160gで測定) 層(D):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR=6g/10分 1 90℃、2160gで測定)80部とモレキュラシーブ(粒子径400メッ シュ)20部の組成物 層(E):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定) 得られた積層体について、固体NMRによる緩和時間及びガスバリア性を同様に測定した。 比較例2 下記の層(A)〜(E)に用いる樹脂及び樹脂組成物を用意して、実施例2に準じて積層体を作製した。但し、厚み構成をA/B/C/D/E=50μm/30μm/10μm/70μm/10μmとした。 層(A):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定)80部とモレキュラシーブ(粒子径400メッ シュ)20部の組成物 層(B):EVOH(エチレン含有量29モル%、ケン化度99.5モル%) 層(C):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分:19 0℃、2160gで測定) 層(D):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR=6g/10分 1 90℃、2160gで測定)80部とモレキュラシーブ(粒子径400メッ シュ)20部の組成物 層(E):低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、MFR6g/10分;19 0℃、2160gで測定) 得られた積層体について、固体NMRによる緩和時間及びガスバリア性を同様に測定した。 実施例および比較例の評価結果を表1に示す。〔表1〕 結晶化度 酸素透過度 〔T11〕 〔T12〕 〔T13〕* (%) (cc/m2/day/atm) 実施例1 3 12 24 26 40 34 34 2.21 〃 2 4 12 39 26 41 33 33 0.05 〃 3 5 15 35 31 32 37 37 0.02 〃 4 3 12 33 25 41 34 34 0.02 比較例1 3 − 21 66 − 34 34 3.48 〃 2 8 − 44 62 − 38 38 0.08 *上段の値は緩和時間(秒)で、下段の値はそれぞれのピーク強度の割合(%)を表す。また、比較例1及び2では、〔T11〕及び〔T12〕の緩和時間が同じで2成分にしか分離できなかった。 本発明のEVOH系成形物は、ガスバリア性に優れており、食品、医薬、化粧、農薬、飲料品等の包装材料や包装容器に有用である。 エチレン−ビニルアルコール共重合体を含有する単層あるいは該層を少なくとも1層含む積層体を、固体NMRを用いて13C核スピン−格子緩和時間(T1)を23℃で測定して得られるビニルアルコール炭素のケミカルシフトに起因する70ppm付近のピークを緩和時間の違いにより分離したときに、全体の平均磁化のうちの緩和時間が20秒以上〔T13〕におけるピーク強度の割合を測定することを特徴とするエチレン−ビニルアルコール共重合体の結晶化度の測定方法。


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