タイトル: | 公開特許公報(A)_カンジダ鑑別用発色培地 |
出願番号: | 2003316533 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12Q1/04,C12N1/16 |
小松 理 JP 2005080574 公開特許公報(A) 20050331 2003316533 20030909 カンジダ鑑別用発色培地 栄研化学株式会社 000120456 小松 理 7C12Q1/04C12N1/16 JPC12Q1/04C12N1/16 D 7 OL 7 4B063 4B065 4B063QA01 4B063QA18 4B063QQ03 4B063QQ07 4B063QQ61 4B063QR41 4B063QR58 4B063QR76 4B063QX01 4B065AA73X 4B065BB04 4B065CA46 本発明は、カンジダ症の原因菌であるカンジダ菌を迅速に鑑別することができるカンジダ鑑別用発色培地に関するものである。 カンジダ症における感染状況、治療状況、再発状況などの診断では、検鏡によるカンジダ菌の棲息形態、組織病変、肉眼的炎症所見等と共に、菌数の確認が臨床上重要である。 このような菌数の確認については、培養法が汎用されており、既に水野−高田培地やサブロー培地などの種々の培地が市販されている。これらの培地は、いずれも炭素源、窒素源の他、一般細菌の生育を抑制する物質も含みカンジダ菌のみの検出を目的としている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。 これらの培地の使用に当たっては、患部から採取した検体を培地上で2〜3日培養させた後、肉眼によって菌の生育状況、コロニーの数や形態を観察することによってカンジダ症の現況を診断する。 しかしながら、これらの培地では菌の培養に2〜3日も要するために速やかな診断を下すことができず、迅速な治療開始ができないという問題があった。 このため、少なくともアミノ酸、ペプチド、糖類、細菌繁殖抑制物質を含む水溶液に、雑菌の繁殖が抑制されるような酸性域で変色するpH指示薬を、同じく雑菌の抑制されるようなpHに調整した培地に配合したものを使用することにより、熟練を要さずとも容易にカンジダ症を診断できるカンジダ症診断用培地が提案されている(例えば、特許文献1参照)。 しかしながら、上記カンジダ症診断用培地は、確かに短時間でカンジダ症が診断できるものの、未だ十分とは言えず、さらに迅速に診断することができるカンジダ検出用培地の出現が強く望まれていた。 一方、カンジダ症は、カンジダ・アルビカンスが主要な起炎菌として知られているが、これ以外にもカンジダ・グラブラータを起炎菌とするものやカンジダ・トロピカリスを起炎菌とするものが増加しつつある。 これらのカンジダ菌のうち、カンジダ・アルビカンスとカンジダ・グラブラータとをテトラゾリウム化合物を添加した培地上のコロニーの色調で容易に判別し、これを利用することによってカンジダ症の起炎菌を簡便かつ速やかに究明し、治療対策を早期に確立できるカンジダ簡易鑑別用培地が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。 しかしながら、カンジダ・アルビカンスとカンジダ・トロピカリスは、形態学的性状が近似しているだけでなく、生化学的性状も近似しているため、両者は、まったく判別がつかないという問題があった。 このため、カンジダ・アルビカンスとカンジダ・トロピカリスとをこの菌株の酵素に対する基質である2種の色原体を培地中に添加し、色原体の加水分解後に発色団の基本色とは異なる色を得て両者を区別するカンジダの検出方法が提案されている(例えば、特許文献4、特許文献5参照)。 本発明者も、発色酵素基質として5−ブロム−6−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシドと、5−ブロム−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルコピラノシドとを含有させることにより、それぞれカンジダ・アルビカンスとカンジダ・トロピカリスとを熟練した技術を要さずに、短時間にかつ容易に判別できるカンジダ鑑別用発色培地を既に提案している(例えば、特許文献6参照)。 他方、現在、使用されているカンジダ鑑別用発色培地(商品名:クロモアガーカンジダ、販売元:関東化学(株)、以下、クロモカンジダ培地という)でカンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラータ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・パラプシロシスの5種類のカンジダ菌が推定同定可能と報告されている(例えば、非特許文献3)。Medical.Technology,6,109;1978臨床検査,26,1498;1982臨床と微生物,22,735-739;1995特公平1−46115号公報特開平6−78793号公報特開平6−277094号公報特表平9−500790号公報特表平9−500791号公報特願2002−121575号 しかしながら、このクロモカンジダ培地では、確かに5種類のカンジダ菌が推定同定可能であるが、その後の本発明者の研究によれば、5種類のカンジダ菌をすべて鑑別するのに40時間以上の培養が必要なことが確認された。 従って本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであって、5種類のカンジダ菌を20時間程度の培養で鑑別することのできるカンジダ鑑別用発色培地を提供することを目的とする。 本発明者は、多種類のカンジダ菌を短時間で鑑別する培地を開発すべく鋭意研究した結果、酵素基質および酸化還元試薬を含有させることにより、5種類のカンジダを20時間の培養で同時に鑑別できることを見出し、本発明を完成した。 本発明は、下記のような構成からなるものである。(1)酵素基質および酸化還元試薬を含有することを特徴とするカンジダ鑑別用発色培地。(2)酵素基質がx-phosおよび/またはx-galactosaminideである(1)記載のカンジダ鑑別用発色培地。(3)酵素基質の含有量が0.01〜0.1g/Lの範囲である(1)または(2)記載のカンジダ鑑別用発色培地。(4)酸化還元試薬がテトラゾリウム塩である(1)記載のカンジダ鑑別用発色培地。(5)テトラゾリウム塩がTTVおよび/またはTTBである(4)記載のカンジダ鑑別用発色培地。(6)酸化還元試薬の含有量が0.001〜0.01g/Lの範囲である(1)、(4)または(5)記載のカンジダ鑑別用発色培地。(7)培地1Lあたり、ペプトン10〜30g、酵母エキス1〜10g、白糖1〜20g、ブドウ糖1〜10g、TTV0.001〜0.01g、x-phos0.01〜0.1gおよび寒天3〜20gを含有する(1)〜(6)記載のカンジダ鑑別用発色培地。 本発明は、酵素基質および酸化還元試薬を含有させることによって、従来、コロニーが小さく、酵素産生量が少ないため、発色が不十分であったカンジダのコロニーを短時間で発色させることができるカンジダ鑑別用発色培地を提供する。また、本発明のカンジダ鑑別用発色培地によれば、5種類のカンジダ菌を20時間程度の培養で同時に鑑別できるので、臨床的にもその意義は大きいと考えられる。 以下、本発明について更に詳細に説明する。 本発明のカンジダ鑑別用発色培地の特徴は、培地中に酵素基質および酸化還元試薬を含有させることにある。 本発明においては、酵素基質と酸化還元試薬とが相俟って相乗的効果を生じ、5種類のカンジダ菌が短時間でそれぞれ特有の色を持つコロニーを形成するため容易に鑑別することができる。即ち、培養20時間程度で、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)は桃色、カンジダ・グラブラータ(C.glabrata)は白色、カンジダ・トロピカリス(C.tropicalis)は青色、カンジダ・クルセイ(C.krusei)は水色、カンジダ・パラプシロシス(C.parapsilsis)は濃桃色にそれぞれ発色する。 酵素基質は、カンジダ菌が産生する酵素によって分解されて培地中で発色する限り、公知のものの中から適宜選択することができる。その具体例としては、例えばx-phos、x-galactosaminideなどが挙げられる。 この酵素基質の含有量は0.01〜0.1g/Lの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.08g/Lの範囲である。酵素基質の含有量が0.01g/L未満になると、コロニーの発色に時間を要すると共に、検出感度も低下する。逆に、0.1g/Lを超えると、コロニーの発育が阻害されることがある。 本発明においては、上記酵素基質に加えて培地中に酸化還元試薬を含有させることによってより一層コロニーの発色が明瞭となる。即ち、酵素基質と酸化還元試薬とが相俟って相乗的効果を生じ、酵素基質単独で用いた場合より、更に一層識別力を向上させることができる。 この酸化還元試薬も公知のものの中から適宜選択すれば良く、中でもテトラゾリウム塩が好ましく用いられる。テトラゾリウム塩の具体例としては、TTV、TTBなどが挙げられる。 酸化還元試薬の含有量は0.001〜0.01g/Lの範囲が好ましく、より好ましくは0.003〜0.008g/Lの範囲である。酸化還元試薬の含有量が0.001g/L未満になると、コロニーの発色に長時間を要する。逆に、0.01g/Lを超えると、コロニーの発育が阻害されることがある。 本発明のカンジダ鑑別用発色培地は、成分として少なくとも培地1Lあたり、x-phos0.01〜0.1g、TTV0.001〜0.01g、ペプトン10〜30g、酵母エキス1〜10g、白糖1〜20g、ブドウ糖1〜10g、および寒天3〜20gを含有することが好ましい。 これらの成分の他に、カンジダ菌の発育を促進する成分としては、硫酸アンモニウムなどの窒素源、マルトースやスクロースなどの糖類、さらに必要に応じてミネラルやビタミンなどの任意のものを含めることができる。 雑菌の繁殖を抑制するための抗菌剤としては、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ネオマイシンなどのアミノグリコキシド系抗生物質、クロラムフェニコール、テトラサイクリンなどの広範囲抗生物質、広範囲の抗菌スペクトルを有するペニシリン、セファロスポリンが挙げられるが、中でもクロラムフェニコールが好ましい。 本発明の培地は、液体、半流動、固形のいずれの形態もとりうるが、検出のし易さ等の観点から、固形培地が好ましく、より好ましくは平板固形培地の形態である。 固形培地の固化剤としては、寒天、カラギーナン、ローカストビーンガムなど通常使用されているものが挙げられる。 以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。実施例1.着色したコロニーの時間ごとの出現状況 表1に示した培地成分のうちTTVを除いた51.35gを秤量し、1000mLの精製水に溶解した。溶解後、pHを6.0±0.2に調整し、100℃で30分間加熱溶解した。50℃に冷却後、0.006gのTTVを少量の蒸留水に溶解し、濾過滅菌して加えた後、20mLづつシャーレに分注して固化した。固化後、30分間乾燥した。対照としてクロモカンジダ培地を作成した。表1 培地の処方 g/L──────────────────────────カゼインペプトン 15.0酵母エキス 5.0白糖 10.0ブドウ糖 5.0クロラムフェニコール 0.3TTV 0.006X−phos.2Na 0.05寒天 7.0カラギーナン(カッパータイプ) 3. 5カラギーナン(イオタタイプ) 2.3ローカストビーンガム 3.2────────────────────────── pH6.0±0.2 上記で作成した培地に、喀痰検体および膣検体を綿棒で平板に塗って着色したコロニーの時間ごとの出現状況を調べた。表2の結果からも明らかなように、本発明のカンジダ鑑別用培地(Viカンジダ)では、培養20時間で殆どのコロニーに着色が見られるのに対し、従来のクロモカンジダ培地では、40時間培養しないと殆どのコロニーが着色しないことが判る。尚、( )内の数は発育が観察されたコロニー数である。表2─────────────────────────────────── 培養時間 16 18 20 40 ───────────────────────────────────喀痰検体 Viカンジダ 18(21) 23(24) 26(27) 26(27) クロモカンジダ 2(21) 5(23) 15(25) 23(25)膣検体 Viカンジダ 4(9) 14(16) 19(19) 19(19) クロモカンジダ 0(8) 5(10) 5(19) 19(19)───────────────────────────────────実施例2 培養時間におけるコロニーの発育性および発色性についての検討 実施例1で作成した培地を用いてカンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラータ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・パラプシロシスを培養し、16,18,20,40時間後のコロニーの大きさや色について従来のクロモカンジダ培地を用いた場合と比較した。 表3 表3の結果から明らかなように、本発明のカンジダ鑑別用培地(Viカンジダ)では、培養20時間で5種類のカンジダのコロニーに色がつき容易に鑑別が可能であった。これに対し、対照であるクロモカンジダ培地では、培養40時間でも、色がつかないコロニーが存在すると共に、同一色のコロニーも存在し、5種類のカンジダ菌を鑑別することができなかった。 本発明によれば、酵素基質および酸化還元試薬を含有させることによって、発色が不十分であったカンジダのコロニーを短時間で発色させることができると共に、5種類のカンジダ菌を同時に鑑別することができる。 酵素基質および酸化還元試薬を含有することを特徴とするカンジダ鑑別用発色培地。 酵素基質が5−ブロム−4−クロロ−3−インドリルホスフェート(以下、x-phosという)および/または5−ブロム−4−クロロ−3−インドリル−N−アセチル−β−Dガラクトサミニド(以下、x-galactosaminideという)である請求項1記載のカンジダ鑑別用発色培地。 酵素基質の含有量が0.01〜0.1g/Lの範囲である請求項1または2記載のカンジダ鑑別用発色培地。 酸化還元試薬がテトラゾリウム塩である請求項1記載のカンジダ鑑別用発色培地。 テトラゾリウム塩がテトラゾリウムバイオレット(以下、TTVという)および/またはテトラゾリウムブルー(以下、TTBという)である請求項4記載のカンジダ鑑別用発色培地。 酸化還元試薬の含有量が0.001〜0.01g/Lの範囲である請求項1、4または5記載のカンジダ鑑別用発色培地。 培地1Lあたり、ペプトン10〜30g、酵母エキス1〜10g、白糖1〜20g、ブドウ糖1〜10g、TTV0.001〜0.01g、x-phos0.01〜0.1gおよび寒天3〜20gを含有する請求項1〜6記載のカンジダ鑑別用発色培地。 【課題】 酵素基質および酸化還元試薬を含有させることによって、従来、コロニーが小さく、酵素産生量が少ないため、発色が不十分であったカンジダのコロニーを短時間で発色させることができるカンジダ鑑別用発色培地を提供する。また、本発明のカンジダ鑑別用発色培地によれば、5種類のカンジダ菌を20時間程度の培養で同時に鑑別できるので、臨床的にもその意義は大きいと考えられる。【解決手段】 酵素基質および酸化還元試薬を含有することを特徴とするカンジダ鑑別用発色培地。【選択図】 無し