生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_mlc遺伝子が不活性化されたエシェリヒア属細菌を用いたL−アミノ酸の製造法
出願番号:2003312653
年次:2004
IPC分類:7,C12N15/09,C12N1/21,C12P13/08


特許情報キャッシュ

ナタリヤ ヴィクトロヴナ ストイノヴァ エレナ ヴィクトロヴナ スイチョヴァ アレクサンドラ ユリエヴナ スコロホドヴァ ユーリー イヴァノヴィッチ コズロフ JP 2004097221 公開特許公報(A) 20040402 2003312653 20030904 mlc遺伝子が不活性化されたエシェリヒア属細菌を用いたL−アミノ酸の製造法 味の素株式会社 000000066 川口 嘉之 100100549 松倉 秀実 100090516 遠山 勉 100089244 ナタリヤ ヴィクトロヴナ ストイノヴァ エレナ ヴィクトロヴナ スイチョヴァ アレクサンドラ ユリエヴナ スコロホドヴァ ユーリー イヴァノヴィッチ コズロフ RU 2002123822 20020906 7C12N15/09C12N1/21C12P13/08 JPC12N15/00 AC12N1/21C12P13/08 C 5 OL 10 4B024 4B064 4B065 4B024AA03 4B024AA05 4B024BA73 4B024CA01 4B024DA06 4B024GA11 4B064AE10 4B064CA02 4B064CA19 4B064DA01 4B064DA10 4B065AA26X 4B065AA26Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA01 4B065CA17 4B065CA41 4B065CA44 本発明は微生物工業、特にmlc遺伝子が不活性化されたエシェリヒア属細菌を用いたL−アミノ酸の製造法に関する。 Mlcタンパク質は炭化水素代謝の全般的な調節因子(抑制因子)である(例えば、非特許文献1〜3参照)。Mlcタンパク質はいくつかの遺伝子またはオペロンの発現を調節することが示されている。例えば、グルコースホスホトランスフェラーゼ系(PTS)の膜結合サブユニットIICB(Glc)をコードするptsG遺伝子(例えば、非特許文献2,4〜7参照);一般的なPTSタンパク質をコードするPtsHIcrrオペロン(例えば、非特許文献2、4〜7参照);マンノースPTSの第2酵素(enzyme II)をコードするmanXYZオペロン(例えば、非特許文献4参照);及びマルトースレギュロン(regulon)の活性化因子をコードするmalT遺伝子(例えば、非特許文献8参照)などがMlcタンパク質による調節を受ける。 mlcレギュロンの遺伝子はCRP-cAMP複合体によって正の制御を受ける(例えば、非特許文献2〜9参照)。一方、mlc遺伝子の転写調節は非常に複雑である。一つにはMlcタンパク質自身によって負の調節を受ける。リン酸化されていないEIICB(Glc)(ptsG遺伝子産物)が、直接タンパク質−タンパク質相互作用によって結合部位からMlcタンパク質を隔離し、グルコース応答時のmlcレギュロンの発現を誘導する(例えば、非特許文献10〜12参照)。もう一つには、mlc遺伝子の転写はP1とP2という2種類のプロモーターによって行われる(例えば、非特許文献13参照)。P1プロモーターは構成的なシグマ因子σ70(Eσ70)を含むRNAポリメラーゼによってのみ認識されるのに対し、P2プロモーターはEσ70と、熱誘導性シグマ因子を含むEσ32の両方によって認識される。したがって、mlc遺伝子は、様々な環境に反応するために択一的にシグマ因子を結合するRNAポリメラーゼによって認識されるプロモーターを含んだ多重プロモーターから転写される遺伝子群に属する。さらに、よく保存されたCRP結合部位もmlcプロモーター内に存在する(例えば、非特許文献13参照)。 グルコースを制限した条件下で生育するエシェリヒア・コリの中に、mgl、mlc及びmalT遺伝子に変異を有する多重変異体が発見されている(例えば、非特許文献14参照)。しかし、これまでのところ、mlc遺伝子を不活性化してL−アミノ酸生産のために用いるという報告はなかった。Decker et al, Mol Microbiol 1998, vol. 27, No. 2, p381-390Kimata et al, Mol Microbiol, 1998, vol. 29, No. 6, p1509-1519Plumbridge, Mol Microbiol, 1998, vol. 27, No. 2, p369-380Plumbridge, Mol Microbiol, 1998, vol. 29, No. 4, p1053-1063Kim et al, J Biol Chem, 1999, vol. 274, No. 36, p25398-25402Plumbridge, Mol Microbiol 1999, vol. 33, No. 2, p260-273Tanaka et al, Genes Cells, 1999, vol. 4, No. 7, p391-399Decker et al, Mol Microbiol 1998, vol. 27, No. 2, p381-390Chapon and Colb, J. Bacteriol., 1983, vol. 156, p1135-1143Tanaka et al, EMBO J, 2000, vol. 19, No. 20, p5344-5352Lee et al, EMBO J, 2000, vol. 19, No. 20, p5353-5361Nam et al, EMBO J, 2001, vol. 20, No. 3, p491-498Shin et al, J. Biol. Chem. 2001, vol. 276, No. 28, p25871-25875Manch K., Genetics, 1999,vol. 153, No. 1, p5-12 本発明の課題は、L−アミノ酸生産株の生産性を向上させること及びこれらの株を用いてL−アミノ酸を製造する方法を提供することである。 本発明者らは、PTSによって行われる炭化水素の輸送が、ある種のアミノ酸を過剰生産する場合において律速段階になる可能性があり、PTS遺伝子の発現を負に制御するmlc遺伝子産物を不活性化することによりアミノ酸生産を増加させ得ると考えた。このような考えに基いて鋭意検討した結果、エシェリヒア属細菌において、炭化水素代謝の抑制因子をコードするmlc遺伝子を不活性化することにより、L−スレオニンのようなL−アミノ酸の生産性が向上することを見出した。以上により、本発明を完成させるに至った。  すなわち、本発明は以下のとおりである。 (1) L−アミノ酸生産能を有するエシェリヒア属細菌であって、mlc遺伝子が不活性化するように改変されたエシェリヒア属細菌。 (2) L−アミノ酸がL−スレオニンである、(1)のエシェリヒア属細菌。 (3) L−スレオニンオペロンが高発現するように改変された、(2)のエシェリヒア属細菌。 (4) (1)〜(3)のいずれかのエシェリヒア属細菌を培地中で培養して、L−アミノ酸を培地中に生成蓄積させる工程と、該培地からL−アミノ酸を採取する工程とを含む、L−アミノ酸の製造方法。 (5) L−アミノ酸がL−スレオニンである、(4)の製造方法。 本発明のエシェリヒア属細菌を用いることによって、安価で効率よくL−アミノ酸、特にL−スレオニンを製造することができる。 以下に、本発明を詳細に説明する。 <1>本発明の細菌 本発明の細菌はL−アミノ酸生産能を有するエシェリヒア属細菌であって、mlc遺伝子が不活性化されるように改変された細菌である。本発明において、「L−アミノ酸生産能を有する細菌」とは、培地中で培養した場合に、培地中にL−アミノ酸を蓄積する能力を有する細菌を意味する。L−アミノ酸生産能は、育種によって付与又は向上させられてもよい。「L−アミノ酸生産能を有する細菌」はまた、エシェリヒア・コリの野生株又はエシェリヒア・コリK-12株のような親株よりも多い量のL−アミノ酸を生産して培地中に蓄積することのできる細菌を意味する。 「エシェリヒア属細菌」という用語は、微生物学の分野における当業者に知られた分類に従って、エシェリヒア属に分類される細菌を意味する。本発明に用いることのできるエシェリヒア属細菌としては、例えばエシェリヒア・コリ(E.coli)が挙げられる。本発明に用いることのできるエシェリヒア属細菌は特に限定されないが、例えばNeidhardt, F. C.らによって記載された細菌(「エシェリヒア・コリとサルモネラ・ティフィムリウム」Escherichia coli and Salmonella typhimurium, American Society for Microbiology, Washington D.C., 1987, vol. 2, p1208, Table 1)を挙げることができる。 「mlc遺伝子が不活性化された」との文言は、mlc遺伝子が改変されて、改変遺伝子が制御能力の減少した変異タンパク質又は完全な不活性タンパク質をコードするようにされることを意味する。また、mlc遺伝子の一部の欠失、又はmlc遺伝子に隣接する領域の改変によって、改変されたDNA領域がMlcタンパク質を正常に発現できないようにされることも意味する。 PTSの抑制因子をコードするmlc遺伝子の不活性化は、グルコースなどの炭化水素のL−アミノ酸生産菌の細胞への供給を増加させる。mlc遺伝子は炭化水素代謝系の全般的な制御因子であるMlcタンパク質をコードする。mlc遺伝子の塩基配列は種々の微生物由来のものが報告されているが、本発明においては、例えばエシェリヒア・コリのmlc遺伝子を用いることができる。エシェリヒア・コリのmlc遺伝子(gi:16129552; GenBankのアクセッション番号NC_000913.1の1665368番目から1666588番目)はエシェリヒア・コリK-12株の染色体上のb1593遺伝子とynfL遺伝子の間に位置する。 本発明においてmlc遺伝子とは、上記のエシェリヒア・コリmlc遺伝子にコードされるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、炭化水素代謝を調節する活性を有するタンパク質をコードするものも含まれる。このようなmlc遺伝子のホモログとしては、上記のエシェリヒア・コリmlc遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNA、上記のエシェリヒア・コリmlc遺伝子の塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の相同性を有するDNAが挙げられる。ストリンジェントな条件としては、通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。 mlc遺伝子の不活性化はUV照射やニトロソグアニンジン(N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine)による変異処理、部位特異的変異法、相同組み換え及び/又は「Red-driven integration」とも呼ばれる挿入−欠失変異法(Datsenko K.A. and Wanner B.L.、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA、 2000年, 第97巻、第12号、p6640-45)による遺伝子破壊などの一般的な方法によって行うことができる。<2>本発明のL−アミノ酸生産菌 本発明のL−アミノ酸生産菌は特に限定されないが、例えば、L−スレオニン生産菌を挙げることができる。したがって、本発明のL−アミノ酸生産菌として、例えば、mlc遺伝子が不活性化するように改変されたL−スレオニン生産菌を用いることができる。本発明のL−スレオニン生産菌は、L−スレオニン生合成経路に関与する一又はそれ以上の遺伝子の発現を上昇させるために改変されたものであってもよい。そのような遺伝子としては、例えばL−スレオニンオペロン、すなわちthrオペロンの遺伝子を挙げることができる。thrオペロンは、スレオニンによるフィードバック阻害に耐性を有するアスパルトキナーゼ ホモセリンデヒドロゲナーゼIをコードする変異thrA遺伝子、ホモセリンキナーゼをコードするthrB遺伝子及びスレオニンシンターゼをコードするthrC遺伝子を含むオペロンであることが好ましい。本発明のL−スレオニン生産細菌の別の好ましい態様は、推定上の膜タンパク質をコードするrhtA遺伝子の発現が上昇するように改変された細菌である。さらに別の好ましい態様は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(アスパラギン酸トランスアミナーゼ)をコードするaspC遺伝子の発現が上昇するように改変された細菌(ロシア特許出願第2002104983号明細書)である。特に好ましい態様は、aspC遺伝子、thrA遺伝子、thrB遺伝子、thrC遺伝子及びrhtA遺伝子の発現量が上昇するように改変され、かつmlc遺伝子が不活性化するように改変された細菌である。 本発明の細菌の親株としては、L−スレオニン生産能を有するエシェリヒア属細菌、例えばE.coli VKPM B-3996株(米国特許第5,175,107号及び第5,705,371号明細書)、E.coli NRRL-21593株(米国特許第5,939,307号明細書)、E.coli FERM BP-3756株(米国特許第5,474,918号明細書)、E.coli FERM BP-3519株及びFERM BP-3520株(米国特許第5,376,538号明細書)、E.coli MG442株(Gusyatinerら, Genetika (ロシア), 1978年, 第14巻, p947-956)、E.coli VL643株及びE.coli VL2055株(いずれも欧州特許出願公開第1149911号明細書)などを用いることができる。 本発明の細菌は、L−アミノ酸生産能を本来的に有している細菌において、mlc遺伝子を不活性化することによって得ることができる。また、本発明の細菌は、既にmlc遺伝子が不活性化された細菌にL−アミノ酸生産能を付与することによっても得ることができる。 プラスミドDNAの調製、DNAの消化及び連結、形質転換、プライマー用オリゴヌクレオチドの設計などは、当業者によく知られた通常の方法によって行うことができる。これらの方法は、例えば、「モレキュラークローニング:実験室マニュアル第2版、Sambrook, J.、Fritsch, E.F.、Maniatis, T.、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年)」に記載されている。<3>本発明の方法 本発明の方法は、本発明の細菌を培地中で培養してL−アミノ酸を培地中に生成蓄積させる工程と、該培地からL−アミノ酸を採取する工程とを含む、L−アミノ酸の製造方法である。好ましくは、本発明の方法は、本発明の細菌を培地中で培養してL−スレオニンを培地中に生成蓄積させる工程と、該培地からL−スレオニンを採取する工程とを含む、L−スレオニンの製造方法である。 本発明において、培養、L−アミノ酸の培地からの採取・精製等は、細菌を用いてアミノ酸を製造する従来の発酵法と同様の方法によって行うことができる。 培養に用いる培地は、炭素源、窒素源、ミネラル、及び必要に応じて細菌の生育に必要な栄養素を含むものである限り、合成培地であっても、天然培地であってもよい。炭素源はグルコース、スクロースのような種々の炭化水素や種々の有機酸を含むものであってもよい。使用する細菌の同化の程度によって、エタノールやグリセロールなどのアルコールを用いてもよい。窒素源としては、アンモニアや硫酸アンモニウムのようなアンモニウム塩、アミンのような他の窒素化合物、ペプトンのような天然の窒素源、大豆加水分解物及び発酵性微生物の消化物などを用いることができる。ミネラルとしては、モノリン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、塩化カルシウムなどを用いることができる。ビタミンとしては、チアミンや酵母エキスなどを用いることができる。 培養は、振とう培養や通気しながらの攪拌培養などの好気的条件下で、20〜40℃、好ましくは30〜38℃で行う。培地のpHは通常5〜9、好ましくは6.5〜7.2に調整する。培地のpHはアンモニア、炭酸カルシウム、種々の酸、種々の塩基又は緩衝液で調整することができる。通常、1〜5日の培養で液体培地中に目的のL−アミノ酸が蓄積する。培養後、細胞などの固形物は遠心分離や膜ろ過などによって除くことができ、採取したL−アミノ酸はイオン交換、濃縮又は結晶化法などによって精製することができる。 [実施例] 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。 mlc遺伝子が不活性化された株の構築1.mlc遺伝子の欠失 mlcの欠失は、DatsenkoとWannerによって最初に開発された「Red-driven integration」と呼ばれる方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, vol. 97, No. 12, p6640-6645)によって行った。この方法に従って、mlc遺伝子及び鋳型プラスミドに抗生物質耐性を付与する遺伝子のそれぞれに近接する領域に、それぞれ相補的なプライマーmlcIL(配列番号1)及びmlcIR(配列番号2)を設計した。プラスミドpACYC184(NBL Gene Sciences Ltd. (英国)、 GenBank/EMBL アクセッション番号 X06403)をPCRの鋳型として用いた。PCRは次の条件で行った:95℃、3分間の変性ステップ;95℃、1分→34℃、30秒→72℃、40秒を2サイクル;95℃、30秒→50℃、30秒→72℃、40秒を30サイクル;72℃、5分。 得られた935bpのPCR産物(図1)(配列番号3)をアガロースゲルで精製し、温度感受性の複製能を有するプラスミドpKD46を含むエシェリヒア・コリMG1655株をエレクトロポレーションするために用いた。プラスミドpKD46(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, vol. 97, No. 12, p6640-6645)は、アラビノース誘導性ParaBプロモーターに制御されるλRed相同組換えシステムの遺伝子(λ、β、exo遺伝子)を含むλファージの2154塩基のDNAフラグメント(GenBank/EMBL アクセッション番号 J02459, 第31088番目〜33241番目)を含む。プラスミドpKD46はPCR産物をMG1655株の染色体に組み込むために必要である。 エレクトロポレーション用のコンピテントセルは次のようにして調製した。すなわち、100mg/Lのアンピシリンを含んだLB培地中で30℃、一晩培養したエシェリヒア・コリMG1655株を、アンピシリンとL-アラビノース(1mM)を含んだ5mLのSOB培地(モレキュラークローニング:実験室マニュアル第2版、Sambrook, J.ら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年))で100倍希釈した。得られた希釈物を30℃で通気しながらOD600が約0.6になるまで生育させた後、100倍に濃縮し、氷冷した脱イオン水で3回洗浄することによってエレクトロポレーションに使用できるようにした。エレクトロポレーションは70μLのコンピテントセルと約100ngのPCR産物を用いて行った。エレクトロポレーション後のセルは1mLのSOC培地(モレキュラークローニング:実験室マニュアル第2版、Sambrook, J.ら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年))を加えて37℃で2.5時間培養した後、37℃でL−寒天培地上で平板培養し、CmR(クロラムフェニコール耐性)組換え体を選択した。次に、pKD46プラスミドを除去するために、Cm(クロラムフェニコール)入りのL-寒天培地上、42℃で2回継代し、得られたコロニーのアンピシリン耐性を試験した。2.mlc遺伝子欠失のPCRによる確認 Cm耐性遺伝子によって識別できるmlc遺伝子の欠失を含む変異体を、PCRによって確認した。部位特異的プライマーmlcPL(配列番号4)及びmlcPR(配列番号5)を確認のためのPCRに用いた。PCRの条件は以下のとおり:94℃、3分間の変性ステップ;94℃、30秒→52℃、30秒→72℃、2分を30サイクル;72℃、7分。その結果、Mlc+である親株MG1655株の細胞のDNAを鋳型にして得られたPCR産物の長さは1492bpであった(図2、配列番号6)。一方、変異株MG1655Δmlc::cat株の細胞のDNAを鋳型にして得られたPCR産物の長さは1191bpであった(図2、配列番号7)。 スレオニン生産株エシェリヒア・コリTDH7/pRT614(VKPM B-5318,米国特許第6,132,999号明細書)に、P1トランスダクション(transduction)の標準的手法(モレキュラークローニング:実験室マニュアル第2版、Sambrook, J.ら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年))によってCm耐性を付与した。ここで、ドナーとして前記MG1655Δmlc::cat株を用いた。プライマーmlcPL(配列番号4)及びmlcPR(配列番号5)を用いたPCRにより、得られたTDH7Δmlc::cat/pRT614株がΔmlc::cat欠失を有することを確かめた。エシェリヒア・コリTDH7/pRT614株は、オールユニオン リサーチ インスティテュート オブ アンチバイオティックス(All-Union Research Institute of Antibiotics)の微生物コレクションに登録番号2070で、またロシア国立工業微生物コレクション(Russian National Collection of Industrial Microorganism)(ロシア113545、モスクワ、1 Dorozhny proezd、1)に登録番号VKPM B-5318で1990年5月3日に寄託された。 mlc遺伝子が不活性化されたエシェリヒア・コリ株によるL−スレオニンの生産 ストレプトマイシン(50μg/mL)を含むL−寒天培地上で、エシェリヒア・コリTDH7/pRT614株及びTDH7/Δmlc::cat/pRT614株を37℃で18〜24時間培養した。次に一掻き分の細胞を50mLのL−培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、NaCl 5g/L)に移した。シェーカー(140rpm)を用いて37℃、4時間培養した細胞(OD540=0.12、50mL)を発酵用の培地450mLに植菌した。1.0Lの容量の実験室用ファーメンター内で1200rpmの回転数で攪拌通気(1/1vvm)しながら39℃でバッチ発酵を行った。pHの値は8%液体アンモニアで自動的に6.6に調整した。結果を表1に示した。 発酵培地の組成(g/L):  Glucose 100.0  NH4Cl 1.75  KH2PO4 1.0  MgSO4 ・7H2O 0.8  FeSO4 ・7H2O 0.01  MnSO4 ・5H2O 0.01  Mameno (TN) 0.15  Betaine 1.0 グルコースと硫酸マグネシウムは別々に滅菌した。pHは6.6に調整した。 表1に示されるように、mlc遺伝子を不活性化することによって、TDH/pRT614株によるL−スレオニンの蓄積が向上した。プラスミドpACYC184上において、cat遺伝子の増幅に用いられるプライマーmlcILとmlcIRの相対的な位置を示す図。不活性化されたmlc遺伝子を含む染色体DNAフラグメントの構築を示す図。L−アミノ酸生産能を有するエシェリヒア属細菌であって、mlc遺伝子が不活性化するように改変されたエシェリヒア属細菌。L−アミノ酸がL−スレオニンである、請求項1に記載のエシェリヒア属細菌。L−スレオニンオペロンが高発現するように改変された、請求項2に記載のエシェリヒア属細菌。請求項1〜3のいずれか一項に記載のエシェリヒア属細菌を培地中で培養して、L−アミノ酸を培地中に生成蓄積させる工程と、該培地からL−アミノ酸を採取する工程とを含む、L−アミノ酸の製造方法。L−アミノ酸がL−スレオニンである、請求項4に記載の製造方法。  【課題】 微生物を用いてL−スレオニンなどのL−アミノ酸を効率よく製造する。 【解決手段】 炭化水素代謝の全般的な制御因子であるmlc遺伝子を不活性化させたエシェリヒア属細菌を用いて、L−スレオニンなどのL−アミノ酸を製造する。 【選択図】 なし配列表


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