| タイトル: | 公開特許公報(A)_生体留置用ステント |
| 出願番号: | 2003299399 |
| 年次: | 2005 |
| IPC分類: | 7,A61M29/02,A61K31/436,A61K31/7088,A61K38/00,A61K45/00,A61K48/00,A61P37/06 |
吉田 進也 深谷 浩平 中野 良二 高田 弘規 西出 拓司 JP 2005065981 公開特許公報(A) 20050317 2003299399 20030822 生体留置用ステント 株式会社カネカ 000000941 吉田 進也 深谷 浩平 中野 良二 高田 弘規 西出 拓司 7A61M29/02A61K31/436A61K31/7088A61K38/00A61K45/00A61K48/00A61P37/06 JPA61M29/02A61K31/436A61K31/7088A61K45/00A61K48/00A61P37/06A61K37/02 11 OL 10 4C084 4C086 4C167 4C084AA01 4C084AA13 4C084AA17 4C084BA09 4C084BA18 4C084BA24 4C084MA56 4C084NA12 4C084ZB081 4C086AA01 4C086AA02 4C086CB22 4C086MA03 4C086MA56 4C086NA12 4C086ZB08 4C167AA44 4C167AA45 4C167AA50 4C167BB01 4C167BB06 4C167CC08 4C167GG05 4C167GG16 本発明は血管増殖過剰病の予防または治療に用いる医療用の生体留置用ステントに関する。 現在、我々が直面する重大な健康上の問題のひとつに動脈硬化による血管狭窄が存在する。その治療方法として、血管内で小型バルーンを拡張させ治療する血管形成術(PTA、PTCA)が低侵襲治療法として広く行なわれている。しかし、この治療法の場合、高い確率で繰り返し狭窄(再狭窄)が生じる。この再狭窄率を低減する手法として、アテレクトミー、レーザー治療、放射線治療などが試みられており、他の方法としてはステントを留置する手技が近年普及している。 ステントとは、血管あるいは他の生体内管腔が狭窄もしくは閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄もしくは閉塞部位を拡張し、その管腔サイズを維持するためにそこに留置する医療用具として主に用いられるものであって、金属や高分子からなっているものが一般的である。ステントは一般的には、血管内にカテーテルによって挿入され、血管内腔の機械的支持を行うために動脈壁の不健全な部分と接触するように拡張される。ステント留置術により再狭窄の発生頻度を有意に低減することが示されているが、まだなお高い確率で再狭窄を引き起こしているのが現状である。例えば、心臓冠動脈を挙げると、ステント留置術を実施しても、約20から30%の頻度での再狭窄発生が報告されている。この再狭窄は生物学的な血管損傷、ステント留置による血管損傷から誘発される。血管損傷から誘発される典型的な血管狭窄・再狭窄は内膜平滑筋細胞の増殖に起因していると考えられている。血管損傷に続いて平滑筋細胞の増殖が開始され、次に平滑筋細胞が内膜へ移行する。次いで内膜における平滑筋細胞が、基質沈着を伴って増殖し、内膜肥厚を生じる。またT細胞、マクロファージ等も内膜へ移行すると考えられている。 そこで、ステントに閉塞を制限する薬剤を被覆し、再狭窄率低減を狙う試みが提案されている(特許文献1)。閉塞を制限する薬としては、抗凝固薬、抗血小板薬、抗痙薬、抗菌薬、抗腫瘍薬、抗微生物薬、抗炎症薬、抗物質代謝薬、免疫抑制剤、等の多数の薬剤が検討されている。免疫抑制剤に関して挙げると、シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、マイコフェノレートモフェチル、およびそれらのアナログ、等をステントに被覆し、再狭窄を低減する試みが提案されている。具体的な例では、特許文献2では免疫抑制剤で知られるシロリムス(ラパマイシン)を被覆したステントが開示され、特許文献3では抗腫瘍薬であるタキソール(パクリタクセル)を被覆したステントが開示されている。さらには、例えば、特許文献4および特許文献5では、タクロリムス(FK−506)を被覆したステントが開示されている。 再狭窄率を低減させるために必要な薬剤量は薬剤の種類によって異なる。十分な効果を発現させるために必要な薬剤量を確実にステント表面に保持させる方法については、これらの先行技術中では明確に開示されていない。特表平5−502179特開平6−9390特表平9−503488WO02/065947EP1254674 これらの状況を鑑み本発明が解決しようとするところは、従来の生体留置用ステントにおいて生じる繰り返し狭窄(再狭窄)率を低減することが可能な量の薬剤が保持された生体留置用ステントを提供することである。 上記の課題の解決のために本発明者らが鋭意検討した結果、略管状体に形成され、かつ略管状体の半径方向外方に伸長可能なステント表面に、平衡含水率100%以上であり、極限伸び率が少なくとも200%を超えるポリマーを含む層を有し、前記層に薬剤の大量保持が可能であることを特徴とする生体留置用ステントを提供する。 ここで、前記薬剤は親水性薬剤から選ばれることが好ましく、さらに前記親水性薬剤は核酸医薬であることが好ましい。また、前記薬剤は免疫抑制剤から選ばれてもよく、例えば、タクロリムス(FK−506)、シクロスポリン、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、マイコフェノレートモフェチルもしくはこれらのアナログから選ばれることがより好ましく、タクロリムス(FK−506)であることがさらに好ましい。 また、前記ポリマーはポリウレタンであることが好ましい。 さらに、前記親水性薬剤または前記ポリマーを膨潤可能な溶媒に可溶な薬剤が、前記層に保持されていることが好ましい。また、前記層の外面に前記親水性薬剤または前記ポリマーを膨潤可能な溶媒に可溶な薬剤の放出速度を遅延させる表面層を設けてもよく、この場合、前記表面層はポリマーから形成されていることが好ましい。 本発明にかかる生体内留置用ステントの製法は、a)前記ポリマーの溶液を作製する工程、b)前記溶液をステント表面に付着させる工程、c)溶媒を除去し、前記ポリマーを含む層を形成する工程、d)前記薬剤を溶解可能で、かつ前記ポリマーを膨潤可能な溶媒を用いて、前記薬剤溶液を作製する工程、e)前記薬剤溶液を前記ポリマーを含む層に含浸させる工程、f)溶媒を除去し、前記薬剤を前記ポリマーを含む層に保持する工程、を含むことが好ましい。 本発明にかかる生体留置用ステントによれば、略管状体に形成され、かつ略管状体の半径方向外方に伸長可能なステント表面に、平衡含水率100%以上であり、極限伸び率が少なくとも200%を超えるポリマーを含む層を有し、前記層に薬剤の大量保持が可能であることを特徴とするため、従来の生体留置用ステントにおいて生じる狭窄、再狭窄の発生率を低減させることが可能である。 以下に、本発明に係るステントの実施形態について説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。 本発明の形態は、略管状体に形成され、かつ略管状体の半径方向外方に伸長可能なステント表面に、平衡含水率100%以上であり、極限伸び率が少なくとも200%を超えるポリマーを含む層を有し、前記層に薬剤が保持されることを特徴とするものである。 平衡含水率が100%を超えるポリマー層を有するため、ステントを任意の物質の水溶液に浸漬した際、ポリマー層は水溶液によって膨潤する。従って、薬剤の水溶液に浸漬することによって、ポリマー層は薬剤の水溶液によって膨潤する。加熱、減圧等の方法によって水分を乾燥させることで、薬剤はポリマー層に容易に保持される。薬剤水溶液の濃度、ステントの浸漬時間等により、ポリマー層に保持される薬剤の量を容易に制御することが可能であり、特に薬剤水溶液の濃度を高くすることにより、大量の薬剤の保持が容易に実現される。また、水以外の溶媒であっても、ポリマー層が膨潤可能であり、かつ薬剤が溶解可能な溶媒であれば、同様の方法で容易に薬剤の保持量を制御でき、大量の薬剤の保持が実現可能である。薬剤を大量に保持することで、薬剤の特性に応じた放出挙動、例を挙げると、生体内留置初期に薬剤を大量に放出させることや長期間にわたって薬剤を徐放させることが容易に実現できる。 ステントは小径に畳まれた状態でカテーテルを用いて生体内に導入される。留置する際にステントはそれ自身の物理的特性(形状記憶性、超弾性等)によって自己拡張するか、カテーテルが有するバルーンの拡張力によって強制的に拡張されるか、いずれかの方法で拡張される。どちらの方法の場合でも、ステントは半径方向外方に拡張されるため、ステント表面には大きな変形が生じる。従って、ステント表面に設けられたポリマーの極限伸び率が低い場合には、ステントの拡張に伴ってポリマー層の破壊やステントからの剥離等が生じる可能性が高くなる。例えば、心臓冠動脈の場合、生体内でポリマー層の剥離が生じると剥離したポリマー片により急性冠閉塞等の重篤な副作用をもたらす危険性が増大する。しかしながら、本発明ではポリマー層を構成するポリマーとして極限伸び率が200%を超えるものを使用するため、上述したような破壊や剥離の可能性は極めて低い。このようなポリマーとしてはポリウレタンが好ましい。ポリウレタンは血液適合性に優れ、完全埋め込み型人工心臓の表面処理、心臓ペースメーカー用のリード線の被覆等、生体に長期間留置される医療用具に広く使用されている。さらに、ポリウレタンは一般的に耐たわみ性に優れ、強靱で且つ高い伸縮性を有するため、ステント表面にポリウレタンからなる層を設けた場合、ステントの拡張に伴うポリウレタン層の破壊や剥離を生じる可能性は他のポリマーよりもさらに低いものとなる。また、ポリウレタンは密着性に優れるため、コーティング層の肉薄化も可能である。 本発明にかかるステントのひとつの実施形態として、薬剤は親水性薬剤であることが好ましい。上述のように、親水性薬剤の水溶液にステントを浸漬することで、親水性薬剤の大量保持が可能となる。親水性薬剤の種類は限定されないが、デコイ、アンチセンス等の核酸医薬であることが好ましい。特定の転写調節因子の結合部位の結合を阻害し、活性化される遺伝子群の発現抑制あるいは発現増強を目的として合成されたオリゴヌクレオチドがデコイであり、転写調節因子の結合部位を含む塩基配列を有している。デコイは二重鎖を形成した状態で細胞内へ導入され、転写調節因子の結合部位への結合阻害によりプロモーター活性を低下させる。また、人工的に合成した特定の遺伝子と結合する塩基配列を有する核酸(アンチセンス)を細胞内に投与することで、遺伝子の相補性を利用し、特定の遺伝子の発現を抑制することも可能である。ステント留置後の狭窄発現に関与する遺伝子が解明されつつあるため、それらに対するデコイやアンチセンスをステント表面に大量に保持し、効果的に細胞内へ取り込ませることで狭窄発現を抑制することが可能となる。 本発明にかかるもう一つ別の実施形態として、薬剤は免疫抑制剤であることが好ましい。免疫抑制剤としては、シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、マイコフェノレートモフェチルやそれらのアナログ(エバロリムス、ABT−578、CCI−779、AP23573等)が好ましく、タクロリムス(FK−506)がさらに好ましい。上述した免疫抑制剤を用いることで狭窄発現にかかる血管平滑筋細胞の増殖を抑制することが可能であり、中でもタクロリムス(FK−506)の増殖抑制効果が最も大きく狭窄抑制に効果的である。 免疫抑制剤はそのほとんどが疎水性であり、水溶液を調整することは困難である。従って、ステント表面のポリマー層に免疫抑制剤を保持させる場合は、免疫抑制剤を溶解可能でかつポリマー層を膨潤可能な溶媒を用いて免疫抑制剤溶液を作製し、ポリマー層を有するステントを含浸させるとよい。この方法により、再狭窄を防止するために必要な量の免疫抑制剤を容易に保持させることができる。 ベースとなるステントは、ステンレス鋼、Ni−Ti合金、Cu−Al−Mn合金、タンタリウム、Co−Cr合金、イリジウム、イリジウムオキサイド、ニオブ等の金属材料が好適に使用される。ステントの作製は、当業者が通常作製する方法と同様に、筒状の金属材料チューブをレーザーカットによりステントデザインにカットし、電解研磨を施すことで作製することが可能である。しかし、作製方法はこの方法に限定されず、エッチングによる加工方法や、平板金属をレーザーカットしてから丸めて溶接する方法、金属ワイヤーを編みこむ加工方法等の手法も可能である。また、金属材料に限定されず、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトンのような高分子材料、セラミック、ハイドロキシアパタイト等の無機材料も使用され得る。これらの高分子材料や無機材料を用いたステントの作製方法は、本発明の効果を制限するものではなく、それぞれの材料に適した加工方法を任意に選択することができる。 ステント表面にポリマー層を設ける方法としては、ステントをポリマー溶液にディッピングする方法、ポリマー溶液をスプレーによりステントに噴霧する方法等の方法が使用可能である。上述した方法はいずれもコーティングによる方法であるが、別途作製したポリマーのシートをステント表面に貼り付けても構わない。コーティングによる場合、ポリマー溶液を作製する際に使用する溶媒はポリマーの溶解性を有する任意の溶媒を選択することができる。溶媒の揮発性等を調整するために2つ以上の溶媒を用いた混合溶媒としてもよい。ポリマー溶液の濃度は特に制限されず、ポリマー層の表面性、必要となる薬剤保持量、保持させた薬剤の放出挙動等を勘案して任意の濃度とすることができる。 このような溶媒を用いて作製したポリマー溶液をステントに塗布し乾燥させる操作または当該液にステントを浸漬し乾燥させる操作を少なくとも1回以上繰り返すことにより、ステントへポリマー層を設けることができる。スプレーによりコーティングを行う際、ポリマー層の表面を均一化するためスプレーノズルとステントとの距離を50cm以下とすることが好ましく、10cm以上、30cm以下がより好ましい。また、スプレーコーティングまたはディッピングを行う際ステントを回転させてもよく、ポリマー層の表面を均一化するためには50rpm以上が好ましい。さらに、ポリマー層の表面性を制御するために、ステントにポリマー溶液を塗布する途中および/または塗布した後に余分なポリマー溶液を除去してもよい。除去する手段としては、振動、回転、減圧等が挙げられ、これらを複数組み合わせてもよい。 (実施例1) ベースとなるステントは、当業者が通常作製する方法と同様に、ステンレス鋼(SUS316L)の内径1.50mm、外径1.80mmの筒状チューブをレーザーカットによりステントデザインにカットし、電解研磨を施すことで作製した。使用したステントの展開図を図1に、模式図を図2に示した。ステント長さを13mm、厚みを120um、拡張後の公称径を3.5mmとした。ステントはバルーンエクスパンダブルタイプと言われるもので、カテーテルの先端部付近にバルーンを備えたバルーンカテーテルを使ってステントを拡張・留置するタイプのものである。バルーンエクスパンダブルタイプのステントは、バルーンカテーテルのバルーン部分に収縮された状態でセットされ、目的個所までデリバリーさせた後、バルーンを拡張することで拡張・留置される。 核酸医薬のモデルとして以下の配列のDNAを合成した。 1)GAC TTA GTA 2)TAC TAA GTC 1)および2)を混合して2本鎖とした後、純水に溶解させ0.1g/mlの濃度に調整した(DNA水溶液)。また、ポリエーテルベースポリウレタン樹脂(平衡含水率150%、極限伸び率430%)をクロロホルムに溶解させ、0.5%(w/w)の濃度に調整した(ウレタン溶液)。直径100μmのステンレス製ワイヤをステントの一端に固定し、他端を攪拌機に接続することで、ステントを長さ方向に鉛直に保持した。攪拌機を100rpmで回転させながら、スプレーガンを用いて作製したウレタン溶液をステントに吹き付けることで溶液をステントに付着させた。スプレーガンのノズルからステントまでの距離は10cmとした。吹き付け後に60℃で30分間乾燥した。吹き付けと乾燥の操作を5回繰り返すことでステント1個あたり150μgの前記ウレタンがコーティングされた。このウレタンコーティングステントをDNA溶液に1時間浸漬した後、真空乾燥を1時間行った。これによりステントにコーティングされたDNA量は300μgであった。 (比較例1) ポリマーとして、ポリエーテルベースポリウレタン樹脂(平衡含水率2%、極限伸び率390%)を用いた以外は実施例1と同様に作製した。コーティング量は、ステント1個あたりポリマー150μg、DNA120μgであった。 (比較例2) ポリマーとして、ポリ−(L)−乳酸(平衡含水率1%、極限伸び率4%)を用いた以外は実施例1と同様に作製した。コーティング量は、ステント1個あたりポリマー150μg、DNA110μgであった。 (ステント拡張実験) バルーンカテーテルのバルーン部分に実施例1、比較例1、比較例2のステントを固定し、バルーンを拡張させることによってステントを拡張させた。拡張圧は8atmで30秒間行い、拡張後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察を行った。 SEMによる観察では、比較例2のステント表面のポリマーにひび割れが生じていた。しかし実施例1、比較例1においてはポリマーにひび割れが観察されなかった。これは極限伸び率の違いによるものと考えられる。極限伸び率が低い場合、拡張によるステントの変形にポリマーが対応できず、ひび割れが生じたと推定される。従って、ステントにコーティングするポリマーは極限伸び率の高いものが適しているといえる。 また、実施例1と比較例2の薬剤保持量の違いは、平衡含水率の違いによるものと考えられる。比較例1ではポリマーの平衡含水率が低いため、ポリマー内に薬剤が含浸せず、コーティングされた薬剤は乾燥時に表面に残存したもののみである。一方、実施例1ではポリマーの平衡含水率が高いため、多量の薬剤をポリマー層に含浸・保持させることが可能である。 (実施例2) 70%エタノール水溶液にタクロリムス(FK506)を溶解させ、0.1g/mlの濃度に調整した(タクロリムス溶液)。薬剤溶液としてタクロリムス溶液を用いた以外は実施例1と同様に作製した。コーティング量はステント1個あたりポリマー150μg、タクロリムス250μgであった。 (実施例3)実施例2のステントを作製後、薬剤放出を遅延させる目的で実施例1で使用したポリマー溶液をスプレーし、実施例2のステントの外面に薬剤を含まないポリマー層(重量100μg)を設けた。 (比較例3)ポリマーおよび薬剤をコーティングしていないベースとなるステントを比較例3とした。 (比較例4)薬剤を含浸させる操作を省いた以外は実施例1と同様に作製した。 (ミニブタへの留置実験) 実施例2、3および比較例3、4のステントを用いて、ミニブタ(クラウン、雌、月齢8から12ヶ月)へのステント留置実験を実施し、評価を行った。麻酔下でミニブタの右大腿動脈にシース(6Fr)を挿入し、シースから挿入したガイディングカテーテル(6Fr)の先端を左冠状動脈入口部にエンゲージさせた。ガイディングカテーテル経由で左冠状動脈前下行枝および左冠状動脈回旋枝へとステントをデリバリーした後、拡張・留置した。ガイディングカテーテルおよびシースを抜去した後、右大腿動脈を結紮し止血した。ステントを留置する部分は血管径が約2.80mmの部位とし、ステント拡張径を3.50mmとすることで留置部分におけるステント径/血管径の比を約1.25とした。血管径2.80mmの部位が選定できない場合には、ステントを拡張・留置する際のバルーンの拡張圧力を変化させ、ステント径/血管径の比を約1.25とするように調整した。本実験においては、ステントの内径をステント拡張径と定義した。免疫抑制剤を含むステントについてはミニブタ1頭当たりの最大留置数を1個とした。免疫抑制剤を含まないステントについてはミニブタ1頭当たりの最大留置数に制限を設けなかった。 留置実験を実施する前日より剖検日まで、アスピリン330mg/day、チクロピジン250mg/dayを混餌投与した。留置1ヵ月後にミニブタを安楽死させ心臓を摘出した。ステントを留置した冠状動脈を心臓より摘出し、10%中性緩衝ホルマリン溶液中で浸漬固定した。樹脂包埋後、各ステントの中央部の切片を作製し、H.E.染色(ヘマトキシリン・エオジン染色)、およびE.V.G.染色(エラスチカ・ワン・ギーソン染色)を行い、拡大観察を実施した。評価項目として、各ステント断面の血管内腔面積(LA:Lumen Area)、血管内弾性板内側面積(IELA:Area within the Internal Elastic Lamina)を測定した。血管内腔面積(LA)および血管内弾性板内側面積(IELA)を用いて血管閉塞率を次式に従い算出した。実施例2および3、比較例3および4のそれぞれについて、各3個のステント留置を行った。評価結果を表1に示す。 血管閉塞率(%)=(1−(LA/IELA))×100 表1を参照すると、免疫抑制剤を多量に有する実施例2および3では、比較例3および4と比べて顕著に血管閉塞率が低下し、優れた効果を示している。さらに、実施例3においては血管閉塞率がほぼ30%程度とより優れた成績であることから、薬剤放出を遅延させるためのコーティングは有効であると考えられる。 以上のごとく、本発明にかかる生体留置用ステントによれば、略管状体に形成され、かつ略管状体の半径方向外方に伸長可能なステント表面に、平衡含水率100%以上であり、極限伸び率が少なくとも200%を超えるポリマーを含む層を有し、前記層に薬剤の大量保持が可能であるため、ステント留置部の狭窄の発現を著しく低減させ、血管増殖過剰病の予防または治療に極めて有用である。ステントの展開図ステントの模式図略管状体に形成され、かつ略管状体の半径方向外方に伸長可能なステント表面に、平衡含水率100%以上であり、極限伸び率が少なくとも200%を超えるポリマーを含む層を有し、前記層に薬剤の大量保持が可能であることを特徴とする生体留置用ステント。前記薬剤が親水性薬剤である請求項1の生体留置用ステント。前記親水性薬剤が核酸医薬であることを特徴とする請求項2記載の生体留置用ステント。前記薬剤が免疫抑制剤であることを特徴とする請求項1記載の生体留置用ステント。前記免疫抑制剤が、例えばシクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、マイコフェノレートモフェチル、およびそれらのアナログであることを特徴とする請求項4記載の生体留置用ステント。免疫抑制剤がタクロリムス(FK−506)もしくはそのアナログからなることを特徴とする請求項5記載の生体留置用ステント。前記ポリマーがポリウレタンであることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の生体留置用ステント。前記親水性薬剤または前記ポリマーを膨潤可能な溶媒に可溶な薬剤が、前記層に保持されたことを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の生体留置用ステント。前記層の外面に前記親水性薬剤または前記ポリマーを膨潤可能な溶媒に可溶な薬剤の放出速度を遅延させる表面層を設けることを特徴とする請求項8記載の生体留置用ステント。前記表面層がポリマーから形成されることを特徴とする請求項9記載の生体留置用ステント。a)前記ポリマーの溶液を作製する工程、b)前記溶液をステント表面に付着させる工程、c)溶媒を除去し、前記ポリマーを含む層を形成する工程、d)前記薬剤を溶解可能で、かつ前記ポリマーを膨潤可能な溶媒を用いて、前記薬剤溶液を作製する工程、e)前記薬剤溶液を前記ポリマーを含む層に含浸させる工程、f)溶媒を除去し、前記薬剤を前記ポリマーを含む層に保持する工程、を含むことを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の生体内留置用ステントの製法。 【課題】 血管狭窄症の治療方法として、血管内で小型バルーンを拡張させ治療する血管形成術(PTA、PTCA)が低侵襲治療法として広く行なわれている。しかし、この治療法の場合、高い確率で繰り返し狭窄(再狭窄)が生じる。この再狭窄率を低減する手法として、ステントを留置する手技が近年普及しているが、このステント留置術においても、約20から30%の頻度での再狭窄発生が報告されている。そこでステントに閉塞を制限する薬剤を被覆する試みがされているが、それでもなお狭窄率が高い頻度で発生するのが現状である。【解決手段】 略管状体に形成され、かつ略管状体の半径方向外方に伸長可能なステント表面に、平衡含水率100%以上であり、極限伸び率が少なくとも200%を超えるポリマーを含む層を有し、前記層に薬剤の大量保持を可能とした。【選択図】 なし