生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_多環芳香族炭化水素類の人体曝露評価方法
出願番号:2003295704
年次:2005
IPC分類:7,G01N30/88,C12Q1/34,C12Q1/40,G01N30/00,G01N30/06,G01N30/74,G01N33/493


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早川 和一 鳥羽 陽 JP 2005062109 公開特許公報(A) 20050310 2003295704 20030819 多環芳香族炭化水素類の人体曝露評価方法 有限会社金沢大学ティ・エル・オー 803000023 大谷 嘉一 100114074 早川 和一 鳥羽 陽 7G01N30/88C12Q1/34C12Q1/40G01N30/00G01N30/06G01N30/74G01N33/493 JPG01N30/88 CC12Q1/34C12Q1/40G01N30/00 BG01N30/06 ZG01N30/74 FG01N33/493 A 4 1 OL 7 特許法第30条第1項適用申請有り 2G045 4B063 2G045DA80 2G045FB01 2G045FB06 2G045FB12 2G045GC15 4B063QA01 4B063QQ03 4B063QR10 4B063QR15 4B063QS17 4B063QX02 本発明は、癌や喘息の原因の1つであり、内分泌撹乱作用があるといわれている多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon : PAH)の生体指標の評価・分析法に関する。 化石燃料などの有機物の不完全燃焼によって生成する多環芳香族炭化水素類(PAHS)は、癌や喘息などの原因となることが知られ、最近ではそれらの内分泌撹乱作用も疑われている。 PAHSは多種多様な発生源を有し、環境中に広く分布することから、ヒトの曝露量は比較的高く、同時に曝露量の推定が困難な化合物である。 PAHは、その排出源として自動車、特に粉じん排出量の多いディーゼル車の寄与が大きいことが推定されている。 さらにPAHは喫煙によってもその曝露量は増加するなど、ヒトに対する曝露量が極めて高いにもかかわらず、そのリスク評価は十分に行われていない。 最近、PAHの中に内分泌撹乱作用を呈するものがあることが報告され、ベンゾ[a]ピレン(BaP)を含む数種類のPAHについて抗エストロゲン作用などの内分泌撹乱作用の一部が明らかにされつつある。 US Environmental Protection Agency (EPA)では、環境汚染物質として測定すべき項目の中に16種のPAH(16 US EPA PAHS)(図3)をあげ、それらを測定する方法として HPLC(高速液体クロマトグラフィー)または GC/FID(水素炎イオン化検出−ガスクロマトグラフィー)を推奨している。 しかし、環境汚染物質の人体への影響は人による個人差も大きく、大気中の濃度がそのまま人体曝露となるものではない。 また多環芳香族炭化水素の種類が多く、人に対する曝露は定性的に把握できても、定量的に評価できる生体指標がこれまでになかった。 特に、4環以上の多環芳香族炭化水素に至っては、濃度も薄く、定性分析でさえ困難であった。US EPA, Code of Federal Regulation,Title 40,Part 60, subparts D,Da,Db,Dc ; Environmental Protection Agency : Washington,DC(1997),p.44 本発明は、PAHSの曝露指標(バイオマーカー)として、尿中に排泄されるPAH代謝物の尿中濃度から個人のPAH曝露量を推定することを目的に、ヒト尿中PAH代謝物を分析可能な化学物質に変換し、さらに定量が可能な代謝物を抽出することで有用な曝露指標の提供を目的とする。 本発明は、人体に取り込まれたPAHSが解毒代謝されて尿中に水酸化物のグルクロン酸抱合体あるいは硫酸抱合体になって排泄されていることに着目し、環境汚染物質である多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon : PAH)が人の体内に取り込まれ生成した解毒代謝物を酵素を用いてヒドロキシ体に分解して定量分析することにより生体指標としたことを特徴とする。 定量分析方法としては、蛍光検出−高速液体クロマトグラフィーが良い。 PAHの水酸化体が強い蛍光を有するからである。 尿中PAH代謝物の中でも4環以上のものは、2又は3環の化合物に比べて2桁以上も濃度が低く、尿中PAH代謝物を酵素を用いて加水分解してモノヒドロキシ体にし、このモノヒドロキシ−PAHを固相抽出により濃縮した後に溶出し、所定の処理をした検液を用いて蛍光検出−高速液体クロマトグラフィー(HPLC/FL)にて定量分析するのが良い。(指標の有用性の確認) 薬物の解毒に大きく関与している酵素チトクロムP450により、インビトロ(in vitro)で各種PAHを代謝させたところPAHヒドロキシ体が生成することが明らかになった。 次に、本発明に係る生体指標の有用性を確認する目的で喫煙者と非喫煙者の2群に分けPAH代謝物濃度を分析比較した結果を図2(表2)に示す(具体的な分析方法は後述する)。 なお、濃度の単位は尿中のクレアチニン値で補正したμ mol/molクレアチニンである。 表中、日本人とは日本在住の日本人を意味し、タイ人とはタイ国に在住のタイ人を意味する。地域差も検討項目にいれたものである。 また、表中、(mean)は平均値を(SD)は標準偏差値を示し、(range)は最小値を示した人の値と最大値を示した人の値を示し、*はt−検定の結果を示し、下記の意味である。 *:統計学的に非喫煙者に対して喫煙者が5%の棄却率で有意である。 **:統計学的に非喫煙者に対して喫煙者が1%の棄却率で有意である。***:統計学的に非喫煙者に対して喫煙者が0.1%の棄却率で有意である。 その結果、喫煙者群と非喫煙者群の尿中1−OHPyr(1−ヒドロキシピレン)濃度及び2−OHFle(2−ヒドロキシフルオレン)濃度を比較したところ、喫煙者群で有意に高く、尿中PAH代謝物が喫煙によるPAHS摂取の指標として有用であることが明らかとなった。 また、在住地による地域差があることも認められた。 本発明においては、後述するように尿中のPAH代謝物を酵素を用いて加水分解したことにより、ヒト尿中のPAH代謝物として、1−OHNap(1−ヒドロキシナフタレン)、2−OHNap(2−ヒドロキシナフタレン)、2−OHFle(2−ヒドロキシフルオレン)、2−OHPhe(2−ヒドロキシフェナントレン)、3−OHPhe(3−ヒドロキシフェナントレン)、1−and/or9−OHPhe(1−及び/又は9−ヒドロキシフェナントレン)、1−OHPyr(1−ヒドロキシピレン)を同定できた。 1−OHPyrを除く4環以上のPAHヒドロキシ体は2,3環の化合物と比べて2桁以上濃度が低いことも明らかになった。 今回、喫煙者と非喫煙者との比較を例に、本発明が、PAHS摂取の生体指標(バイオマーカー)として有用であることを確認したように、道路沿いや工場地帯等の環境汚染の違い、飲食等の傾向と各種病気との因果関係等多くの分野での生体指標となることが期待される。 本発明に係る分析手順を以下説明する。(1)ヒト尿試料(10mL)をサンプリングし、1.0M塩酸を加え、pH5.0に調節した後、酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を20mL加える。(2)これにβ−グルクロニダーゼ/アリルスルファターゼ溶液(type H−2:Helix pomatia 由来:β−グルクロニダーゼ活性,100,000 units/mL, スルファターゼ活性,5000 units/mL)(Sigma社製)15μL を加え、恒温水浴中で37℃、2時間インキュベートする。 グルクロン酸抱合体あるいは硫酸抱合体を酵素にて加水分解するためである。(3)メタノール5mL及び水10mLを通液し前処理をした逆相系固相抽出カートリッジ(Sep-Pack PlusC18,Waters)に酵素処理した上記尿試料を通液する。(4)20%メタノール水溶液10mLでカートリッジを洗浄し、通気して乾燥させる。(5)あらかじめn-ヘキサン100mLで洗浄しておいた順相系固相抽出カートリッジ(Sep-Pack Plus Silica,Waters)をC18カートリッジの下に接続し、n-ヘキサン/酢酸エチル(9/1,v/v)20mLで溶出する。(6)この溶出液を減圧乾固し、最終的にメタノール(200μL)に溶解して検液とする。(7)定量のための蛍光検出−高速液体クロマトグラフィー装置は、島津社製HPLCポンプ2台、デガッサー1台、カラムオーブン1台、蛍光検出器1台、システムコントローラー1台、インテグレーター1台から構成され、カラムはDiscovery RP-Amide C16(250×4.6mmi.d.,5 μm Supelco)を用いる。 移動相としてA液:アセトニトリル及びB液:10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用意し、あらかじめB液45%、流速1.0mL/min、カラム温度40℃で1時間流し、カラム平衡化しておく。分析の際のグラジェントプログラムは、0−20分までB液45%、20分から37分までにB液60%まで直線的にBの割合を増加させ、その後60分までB液60%一定とする。 また波長切り替えプログラムは、0−15分(励起波長Ex.277nm、蛍光波長Em.355nm)、15−20分(Ex.270,Em.327)、20−40分(Ex.256,Em.370)、40−60分(Ex.240,Em.387)とする。(8)このシステムに上記手順に従って処理した検液(20μL)を導入し、得られたクロマトグラフの例を図1(チャート)に示す。 分かりやすくするために、検液(Urine)のクロマトグラフに標準試料(Standard)のクロマトグラフを重ね合わせてある。 なお、縦軸は蛍光強度(Fluorescence intensity)である。(グラフ1)尿中代謝物のクロマトグラフを示す。(表1)喫煙者と非喫煙者の代謝物比較結果を示す。PAHの構造例を示す。 環境汚染物質である多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon : PAH)が人の体内に取り込まれ生成した解毒代謝物を酵素を用いてヒドロキシ体に分解して定量分析することにより生体指標としたことを特徴とする多環芳香族炭化水素類(PAHS)の人体曝露評価方法。 人の体内に取り込まれた解毒代謝物が尿中PAH代謝物であることを特徴とする請求項1記載のPAHS人体曝露評価方法。 定量分析法が蛍光検出−高速液体クロマトグラフィーであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のPAHS人体曝露評価方法。 尿中PAH代謝物を酵素を用いて加水分解してモノヒドロキシ体にし、このモノヒドロキシ−PAHを固相抽出濃縮した後に溶出した検液を用いて蛍光検出−高速液体クロマトグラフィー(HPLC/FL)にて定量分析することを特徴とするPAHS人体曝露評価方法。 【課題】PAHSの曝露指標(バイオマーカー)として、尿中に排泄されるPAH代謝物(PAHモノヒドロキシ体)の尿中濃度から個人のPAH曝露量を推定する。【解決手段】人体に取り込まれたPAHSが代謝されて尿中に水酸化物のグルクロン酸抱合体又は硫酸抱合体になっていることに着目し、環境汚染物質である多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon : PAH)が人の体内に取り込まれ生成した解毒代謝物を酵素を用いてヒドロキシ体に加水分解して定量分析することにより生体指標とした。【選択図】 図1


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