タイトル: | 公開特許公報(A)_カルボン酸無水物の製造方法 |
出願番号: | 2003292382 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C07C51/56,C07C57/04,C07B61/00 |
村田 直志 田村 公夫 坂井 春夫 JP 2005060300 公開特許公報(A) 20050310 2003292382 20030812 カルボン酸無水物の製造方法 三菱レイヨン株式会社 000006035 村田 直志 田村 公夫 坂井 春夫 7C07C51/56C07C57/04C07B61/00 JPC07C51/56C07C57/04C07B61/00 300 6 OL 6 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC47 4H006BA51 4H006BA94 4H006BC10 4H006BC30 4H006BE12 4H006BS80 4H039CA99 4H039CL25 本発明は、カルボン酸と無水脂肪酸からカルボン酸無水物を製造する方法に関する。 カルボン酸と無水脂肪酸とを反応させてカルボン酸無水物を製造する方法としては、例えば、特許文献1には、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムから選ばれる1種または2種以上のアルカリ酢酸塩触媒の存在下で(メタ)アクリル酸と無水酢酸とを(メタ)アクリル酸無水物の製造方法が、特許文献2には、副生した酢酸を除去しながら(メタ)アクリル酸と無水酢酸とを無触媒で反応させる(メタ)アクリル酸無水物の製造方法が知られている。しかし、塩基性の無機化合物を共存させる方法は従来知られていなかった。特開2000−191590号公報特開昭62−158237号公報 特許文献1記載の(メタ)アクリル酸無水物の製造方法では、触媒として使用するアルカリ酢酸塩の吸湿性が極めて高いため取扱いが難しいという問題がある。また、アルカリ酢酸塩は比較的コストが高いという問題もある。 本発明は取扱いが容易であり、また安価な触媒を使用してカルボン酸無水物を簡便で安価に製造する方法を提供することを目的とする。 本発明は、塩基性無機化合物を共存させてカルボン酸と無水脂肪酸とを反応させるカルボン酸無水物の製造方法である。本願発明は、カルボン酸が(メタ)アクリル酸の場合に好適であり、また無水脂肪酸が無水酢酸の場合に好適である。 本願発明において、共存させる塩基性無機化合物の量は無水脂肪酸に対して0.01mol%〜30mol%であることが好ましい。 本願発明では、副生する脂肪酸を留去しながらカルボン酸と無水脂肪酸とを反応させることが好ましい。 また、本願発明では反応系にN−オキシル化合物を共存させることが好ましい。 本発明のカルボン酸無水物の製造方法は、比較的吸湿性が低く、また安価な塩基性無機化合物を触媒として使用するため、カルボン酸無水物、特に(メタ)アクリル酸無水物を簡便で安価に製造できるという利点がある。 本願発明において、カルボン酸と無水脂肪酸とを反応させる際には、塩基性無機化合物を共存させる。塩基性無機化合物は特に限定されず、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム等のナトリウムを含有する化合物、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム等のカリウムを含有する化合物、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、水酸化リチウム等のリチウムを含有する化合物、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等のマグネシウムを含有する化合物等の各種のアルカリ炭酸塩、水酸化アルカリ等が挙げられる。なかでも、価格、入手の容易さの点で、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム等のナトリウムを含有する化合物、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム等のカリウムを含有する化合物が好ましい。特に、取扱いの容易さの点で、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが好ましい。 塩基性無機化合物を原料のカルボン酸と混合すると発熱するので、塩基性無機化合物の使用量は少ないほど原料液または反応液の温度を低く抑えることができるので、より安全に反応を行うことができる。この観点から塩基性無機化合物の仕込量は、原料の脂肪酸無水物に対して通常50mol%以下であり、好ましくは30mol%以下である。さらに、触媒コストの観点から20mol%以下が特に好ましい。一方、塩基性無機化合物の使用量は多いほど反応速度が速くなることから、通常0.0001mol%以上であり、好ましくは0.01mol%以上であり、より好ましくは0.1mol%以上である。 原料の無水脂肪酸は特に限定されず、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等の脂肪酸の無水物が挙げられる。中でも、ギ酸、酢酸、プロピオン酸の無水物は、反応で副生する脂肪酸が蒸留で容易に除去できるので好ましい。カルボン酸と無水脂肪酸から無水カルボン酸を製造する反応は平衡反応であり、副生する脂肪酸を反応系から除去することで反応時間を短縮することができる。また、無水脂肪酸としては入手が容易であることから無水酢酸が特に好適である。 原料のカルボン酸は特に限定されないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、アクリル酸、メタクリル酸、乳酸等が挙げられる。中でも、本発明は(メタ)アクリル酸の場合に好適である。なお、本願において「(メタ)アクリル酸」とは常用されるようにアクリル酸とメタクリル酸の総称である。 カルボン酸と無水脂肪酸から無水カルボン酸を製造する反応は、液相反応が行える反応器を用いて行う。反応は、前述した理由により副生する脂肪酸を除去しながら行うことが好ましいことから、副生する脂肪酸を除去可能な仕組みを備えていることが好ましく、そのような仕組みとして蒸留塔を備えていることがより好ましい。また、原料のカルボン酸および無水脂肪酸と、副生する脂肪酸とを分離するために、2段以上の精留効果のある蒸留塔を備えていることがより好ましい。 反応は溶剤の存在下に行うこともできる。その場合は副生する脂肪酸と共沸しやすい溶媒を使用し、脂肪酸と溶媒を共沸させながら反応を行うことが好ましい。 反応器に原料、塩基性無機化合物等を仕込む方法は特に限定されない。 反応は通常−30〜200℃で行うが、好ましくは0〜150℃である。反応の終点は、例えば原料の無水脂肪酸の減少速度により知ることができる。生成したカルボン酸無水物は蒸留、洗浄等の方法で精製することができる。 原料のカルボン酸が(メタ)アクリル酸等の重合性の化合物である場合、反応液や蒸留塔等における原料のカルボン酸や目的生成物である無水カルボン酸の重合防止のために、重合防止剤を使用することが好ましい。 重合防止剤は特に限定されないが、例えば、N−オキシル化合物類、ヒドロキノン(HQと略す)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQと略す)等キノン系化合物等が挙げられる。なかでも、重合防止能力の点でN−オキシル化合物類が好ましい。N−オキシル化合物類としては、例えば次の式(1)で示される化合物が挙げられる。(式(1)中、R1、R2、R3、R4はアルキル基、R5はH、OH、OR、OCOR、NHCORまたはO−[(EO)n+(PO)m]−H、R6はH、またはR5とR6は一緒になって=Oを表わす。ただし、Rは炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基であり、アルキル基は直鎖状であっても分岐していてもよく、EOはエチレンオキシ基を、POはプロピレンオキシ基を示し、nおよびmは同一または異なる0〜10の整数を示す。) 重合防止剤の添加量は適宜決めることができる。例えばN−オキシル化合物類の添加量は重合成化合物に対して通常0.01〜10000ppm、好ましくは0.1〜5000、より好ましくは1〜3000ppmである。 重合防止剤の添加方法は特に限定されないが、通常は原料と一緒に反応器に仕込む。しかし、反応の際に蒸留塔の塔頂や塔の途中から反応系に供給することもできる。 以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。実施例における分析はガスクロマトグラフィー(以下GCという)で行った。 カルボン酸無水物の純度はGCのピーク面積から次式により算出した。 純度(%)=(A/B)×100ここで、Aは目的生成物であるカルボン酸無水物のピーク面積、Bは全ピークの面積の合計を表す。 また、反応収率、実得収率は次式により算出した。 反応収率(%)=(C/D)×100 実得収率(%)=(E/D)×100ここで、Cは反応した無水脂肪酸のモル数、Dは仕込みの無水脂肪酸のモル数、Eは生成した目的生成物であるカルボン酸無水物のモル数(生成物の重量に純度を乗じ、目的生成物の分子量で除して算出)を表す。 [実施例1] 10段オールダーショー付き1Lガラスフラスコにメタクリル酸516g(6mol)、無水酢酸255g(2.5mol)、炭酸ナトリウム13.25g(0.125mol)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(HO−TEMPOと略す)0.258g、HO−TEMPOの4位の水酸基にエチレンオキサイドが平均6mol付加した化合物(式(1)のR1、R2、R3、R4がメチル基、R5がO−(EO)6−H、R6がHのN−オキシル化合物、EO6Xと略す)0.516gを仕込んだ。 使用した炭酸ナトリウムは周囲の空気にさらされた状態で30日間保管したものを使用した。この炭酸ナトリウムは吸湿による外観変化がほとんどなく、フラスコに仕込む際の取扱いにおいても何ら問題なかった。 内温70℃、圧力2.67〜0.67kPaで副生する酢酸を留出させながら10時間反応を行ったところ、反応収率は95%であった。 得られた反応液にトルエン1200gを添加し、5wt%の水酸化ナトリウム水溶液380gで1回、さらに水380gで1回洗浄して、メタクリル酸無水物のトルエン溶液1415g(メタクリル酸無水物351g(2.28mol)含有、純度は24.8%)を得た。無水酢酸基準の実得収率は91%であった。 [実施例2] HO−TEMPOとEO6Xの代わりにHQを0.258g使用した以外は実施例1と同様にして反応、洗浄操作を行った。 このときの反応収率は89%、洗浄して得られたメタクリル酸無水物のトルエン溶液は1391g(メタクリル酸無水物327g(2.12mol)含有、純度23.5%)、実得収率85%であった。 [比較例1] 触媒である炭酸ナトリウム13.25gを酢酸ナトリウム10.25g(0.125mol)に代えた以外は実施例1と同様にして反応、洗浄操作を行った。なお、酢酸ナトリウムは実施例1の炭酸ナトリウムと同様の条件で保管したものを使用したが、吸湿して含水した状態であり、取扱いにくいものであった。 このときの反応収率は53%、洗浄して得られたメタクリル酸無水物のトルエン溶液は1260g(メタクリル酸無水物196g(1.27mol)含有、純度15.6%)、実得収率51%であった。 比較的吸湿性が低く、また安価な塩基性無機化合物を触媒として使用することによって、カルボン酸と無水脂肪酸からカルボン酸無水物、特に(メタ)アクリル酸と無水脂肪酸から(メタ)アクリル酸無水物を簡便で安価に製造することができる。 塩基性無機化合物を共存させてカルボン酸と無水脂肪酸とを反応させるカルボン酸無水物の製造方法。 カルボン酸が(メタ)アクリル酸である請求項1記載のカルボン酸無水物の製造方法。 無水脂肪酸が無水酢酸である請求項1または2記載のカルボン酸無水物の製造方法。 無水脂肪酸に対して0.01mol%〜30mol%の塩基性無機化合物を共存させる請求項1〜3のいずれか記載のカルボン酸無水物の製造方法。 副生する脂肪酸を留去しながらカルボン酸と無水脂肪酸とを反応させる請求項1〜4のいずれか記載のカルボン酸無水物の製造方法。 反応系にN−オキシル化合物を共存させる請求項1〜5のいずれか記載のカルボン酸無水物の製造方法。 【課題】 取扱いが容易であり、また安価な触媒を使用してカルボン酸無水物を簡便で安価に製造する方法を提供する。【解決手段】 塩基性無機化合物を共存させてカルボン酸と無水脂肪酸とを反応させる。カルボン酸としては(メタ)アクリル酸が好適である。また、無水脂肪酸としては無水酢酸が好適である。共存させる塩基性無機化合物の量は無水脂肪酸に対して0.01mol%〜30mol%であることが好ましい。カルボン酸と無水脂肪酸との反応は、副生する脂肪酸を留去しながら行うことが好ましい。【選択図】なし