タイトル: | 特許公報(B2)_胆汁酸吸着剤 |
出願番号: | 2003280223 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 38/00,A23J 3/04,A23J 3/34,A61K 35/60,A61P 1/16,A23L 1/30 |
松本 淳一 森 奈保美 土居 幹治 JP 4353746 特許公報(B2) 20090807 2003280223 20030725 胆汁酸吸着剤 マルトモ株式会社 590006398 樺澤 襄 100062764 樺澤 聡 100092565 山田 哲也 100112449 松本 淳一 森 奈保美 土居 幹治 JP 2002361753 20021213 20091028 A61K 38/00 20060101AFI20091008BHJP A23J 3/04 20060101ALI20091008BHJP A23J 3/34 20060101ALI20091008BHJP A61K 35/60 20060101ALI20091008BHJP A61P 1/16 20060101ALI20091008BHJP A23L 1/30 20060101ALI20091008BHJP JPA61K37/18A23J3/04 501A23J3/34A61K35/60A61P1/16A23L1/30 A A61K 38/00 A23J 3/04 A23J 3/34 A61K 35/60 A61P 1/16 A61P 3/06 A23L 1/30 PubMed Science Direct 特開2000−264845(JP,A) 特開昭62−005920(JP,A) 特開平07−278010(JP,A) 松本淳一、土居幹治、森奈保美、岸田太郎、海老原清,かつお節酵素分解物の脂質代謝に与える影響について,第56回日本栄養・食糧学会大会講演要旨集,日本,日本栄養・食糧学会,2002年 6月20日,252 3 2004203859 20040722 13 20051013 特許法第30条第1項適用 平成14年6月20日発行の刊行物「第56回日本栄養・食糧学会大会講演要旨集」に発表。 特許法第30条第1項適用 平成14年7月21日に社団法人日本栄養・食糧学会主催の「平成14年度日本栄養・食糧学会」において文書をもって発表。 佐々木 秀次 特に魚節を原料として製造される胆汁酸吸着剤に関する。 近年、血中コレステロール濃度の上昇による高脂血症が原因の一つと考えられている虚血症心疾患は、脂質摂取量や摂取カロリの増加により今後ますます増えることが予測される。一方、予防医学の観点から高脂血症に対し改善作用の期待される物質の研究や代謝経路の解明が進んでおり、大豆蛋白、食物繊維、タウリン、レシチンあるいは多価不飽和脂肪酸などが注目を集めている。 さらに、このような注目は、魚肉に対しても同様の効果が報告されており、日本の伝統的発酵食品であり蛋白質を豊富に含んでいる魚節、例えばかつお節についても何らかの作用を有することが推測される。 そこで、従来、この種の蛋白分解物質としてのコレステロール低下剤は、魚節、特にかつお節をスライス状あるいは粉状にしたものに、水とサーモリシンなどの酵素とを加えて、このスライス状あるいは粉状の魚節を加水分解させて発酵させた分解物を含有している。そして、この分解物を含有したコレステロール低下剤を服用することにより、血中コレステロール濃度や、血中トリグリセリド濃度が低下する(例えば、特許文献1参照。)。特開2000−264845号公報(第2−3頁) 上述したように、上記コレステロール低下剤では、魚節、特にかつお節に関しては、蛋白質を豊富に含んでいる上、焙乾工程における長時間の加熱工程や発酵工程などの製造工程中に有用な生理活性物質が生成されている可能性がある。ところが、このコレステロール低下剤については、血中コレステロール濃度や血中トリグリセリド濃度を低下させる効果が知られているに過ぎず、魚節を原料としたコレステロール低下剤が胆汁酸吸着能力を有するか否かについては不明であるという問題を有している。 本発明はこのような点に鑑みなされたもので、胆汁酸吸着能力を有する胆汁酸吸着剤を提供することを目的とする。 請求項1記載の胆汁酸吸着剤は、微生物に由来するエンド・エキソ型のプロテアーゼにて酵素分解された魚節を含む溶液を濾過した濾渣により生成され、胆汁酸吸着能力を有するものである。 そして、微生物に由来するプロテアーゼにて魚節を酵素分解させることにより生成された胆汁酸吸着剤が、血中コレステロール濃度や血中トリグリセリド濃度を低下させるとともに、胆汁酸吸着能力を有する。 また、微生物に由来するプロテアーゼにて酵素分解された魚節を含む溶液を濾過した濾渣により胆汁酸吸着剤を生成することにより、この胆汁酸吸着剤が有する胆汁酸吸着能力や、血中コレステロール濃度および血中トリグリセリド濃度の低下が向上する。 請求項2記載の胆汁酸吸着剤は、請求項1記載の胆汁酸吸着剤において、濾渣を乾燥して生成されたものである。 そして、微生物に由来するプロテアーゼにて酵素分解された魚節の溶液の濾渣を乾燥させて胆汁酸吸着剤を生成することにより、この胆汁酸吸着剤が固形分となるから、この胆汁酸吸着剤の取り扱いが容易になる。 請求項3記載の胆汁酸吸着剤は、請求項1または2記載の胆汁酸吸着剤において、魚節の脂質が含まれているものである。 そして、魚節に含まれている脂質との相乗効果によって、より強い胆汁酸吸着能力を有するから、血中コレステロール濃度をより低下できる。 請求項1記載の胆汁酸吸着剤によれば、微生物に由来するプロテアーゼにて魚節を酵素分解させることにより生成された胆汁酸吸着剤は、血中コレステロール濃度や血中トリグリセリド濃度を低下させることができるとともに、胆汁酸吸着能力を有する。 また、微生物に由来するプロテアーゼにて酵素分解された魚節を含む溶液を濾過した濾渣により胆汁酸吸着剤を生成することにより、この胆汁酸吸着剤が有する胆汁酸吸着能力や、血中コレステロール濃度および血中トリグリセリド濃度の低下を向上できる。 請求項2記載の胆汁酸吸着剤によれば、微生物に由来するプロテアーゼにて酵素分解された魚節の溶液の濾渣を乾燥させて胆汁酸吸着剤を生成することにより、この胆汁酸吸着剤を固形分にできるから、この胆汁酸吸着剤の取り扱いを容易にできる。 請求項3記載の胆汁酸吸着剤によれば、脂質との相乗効果によって、より強い胆汁酸吸着能力を有するから、血中コレステロール濃度をより低下できる。 次に、本発明の胆汁酸吸着剤の一実施の形態を図1および図4を参照して説明する。 魚節の製造方法は、図2に示すように、まず、節用原料魚として、冷凍され脂肪の少ないかつお、さば、まぐろ、いわし、あじなどを一晩掛けて流水解凍する(ステップ1)。ここで、魚節とは、魚の身を節どりして蒸した後、火に焙ってから干し固めたものである。 そして、このステップ1にて解凍させた節用原料魚を裁断する(ステップ2)。このとき、魚体が大型の場合には頭や内臓を除去して3枚下ろしとしたり、この3枚下ろしにしたものを合断したりして身卸しする(ステップ3)。なお、小型原料魚は裁断せずにそのまま用いることもできる。 そして、例えば55℃以上95℃以下とされた水に、ステップ2にて裁断された節用原料魚を入れて30分以上2時間以下加熱させて煮蒸する(ステップ4)。 この後、このステップ4にて煮蒸された節用原料魚を熱水から引き上げて水切りして骨抜きする(ステップ5)。 そして、このステップ5にて水切りされた節用原料魚を焙乾する(ステップ6)。このとき、この水切り後の節用原料魚を約半日程度、煙で燻してスモークする。 次いで、このステップ6にてスモークされた節用原料魚を夜間火を止めてあん蒸する(ステップ7)。このとき、節用原料魚内の水分を拡散させて均一化させる。 ここで、このあん蒸された節用原料魚の水分を限界近くまでとばすため、この節用原料魚に対してステップ6およびステップ7を9回ずつ、計10回程度繰り返して荒節とする(ステップ8)。この荒節は、主にだし取り用の花がつおとされる。 そして、ステップ6による焙乾とステップ7によるあん蒸とのそれぞれが計10回ずつされた荒節の表面を削って、荒節の表面に付着したタール分などを取り除くとともに成形して裸節とする(ステップ9)。 この後、この裸節を、温度が20℃以上40℃以下、湿度が70%以上90%以下のかび付け庫内に入れて2週間程度放置して、この裸節に自然発生的にかび付けをするとともに(ステップ10)、このかび付け後の裸節を天日干し(ステップ11)、これらかび付けおよび天日干しを2回以上4回以内程度繰り返して枯れ節として魚節を得る(ステップ12)。これによって、この裸節の水分や脂肪がさらに減少する。 次に、胆汁酸吸着剤としてのかつお節酵素分解物の製造方法について説明する。 まず、図1に示すように、各種魚類の煮干しや、ステップ8で得られた荒節あるいはステップ12で得られた魚節を削って粉末にする。 この後、この粉末を、微生物に由来するプロテアーゼ(protease)、より具体的には、エンド・エキソ型のプロテアーゼ2種により、温度が10℃以上60℃以下でありpHが3以上11以下の雰囲気において、1時間以上20時間以下程度、酵素分解させる。 そして、この酵素分解された魚節の分解物を含む溶液を濾過して濾液である水溶液分画と濾渣である不溶性分画とに分離する。 なお、この濾過により生成された水溶性分画は、かつお節酵素分解エキスとして使用される。また、この濾過により生成された不溶性分画は、乾燥された後、胆汁酸吸着剤とされる。 次に、上記胆汁酸吸着剤としてのかつお節酵素分解物の実施例について詳細に説明する。 まず、年々、増加する虚血性心疾患の原因とされている血中コレステロール濃度の上昇を抑制する物質を探索する目的で、蛋白質を多く含む上、焙乾工程における長期間の加熱工程や発酵工程などの製造工程中に有用な生理活性物質が生成されている可能性があるかつお節に着目し、脂質代謝に与える影響について試験した。 具体的には、卵巣を摘出した後に回復した6ヶ月齢のWister系の雌ラットに、水溶性分画や不溶性分画を経口投与して、これら水溶性分画や不溶性分画によるラットへの影響を調べた。 より詳細には、コントロール群(C群)とされる7匹のラットへの飼料としては、蛋白源としてガゼインを20%与えた。また、第1の試験食群(DB群)とされる7匹のラットへの飼料としては、カゼインに代えて、かつお節の粉末を与えた。 ここで、かつお節の栄養分組成としては、蛋白質の含量が77.1%と非常に高い一方、脂肪の含量が2.9%であるので、かつお節は高蛋白・低脂肪な食品である。また、かつお節に含まれている蛋白質の構成アミノ酸としては、ロイシン、グルタミン酸、アルギニン、リジンおよびヒスチジンなどである。 さらに、第2の試験食群(DBES群)とされる7匹のラットへの飼料としては、水溶性分画を乾燥させる際にデキストリンを加えて凍結乾燥させたものを蛋白源として与えた。また、第3の試験食群(DBEI群)とされる7匹のラットへの飼料としては、乾燥させた不溶性分画を蛋白源として与えた。 このとき、C群、DB群、DBES群およびDBEI群のそれぞれに与えられる飼料は、蛋白含量を換算しながら配合して、蛋白含量とデキストリン含量とが同じになるように調整されている。 そして、3週間、すなわち21日間、C群、DB群、DBES群およびDBEI群のラットに対して各群のそれぞれに応じた飼料と水とを自然摂取にて与えた。 この後、試験期間終了の3日前から、各群のラットの糞をそれぞれ採取して、これらラットの糞に含まれる胆汁酸含量を測定した。 さらに、試験期間最終日に、各群のラットの血液を採取し、これらラットの血中脂質濃度、具体的には血中コレステロール濃度および血中トリグリセリド(TG)濃度を測定した。 この結果、飼料効率、ラットの飼料摂取量および体重増加量に関しては、C群、DBES群およびDBEI群の間で差はなかったが、DB群でのみ飼料摂取量が増加する傾向があった。 また、血中コレステロール濃度は、図4および表2に示すように、C群に比べDB群では24.9%、DBES群では14.1%、DBEI群では33.7%それぞれ低下した。同時に、血中トリグリセリド濃度は、C群に比べDB群では27.8%、DBES群では15.8%、DBEI群では36.7%それぞれ低下した。 したがって、血中コレステロール濃度および血中トリグリセリド濃度のそれぞれは、C群に比べDB群およびDBEI群で有意に低下し、DBES群でも低下する傾向あった。 さらに、胆汁酸排泄量は、図3および表2に示すように、C群に比べDB群では370.9%、DBES群では73.5%、DBEI群では471.4%それぞれ増加した。したがって、胆汁酸排泄量は、血中脂質濃度に関する結果と負の相関があった。具体的には、C群に比べDB群、DBES群およびDBEI群のそれぞれにおいて胆汁酸排泄量が増加する傾向があった。この結果、DBES群およびDBEI群で飼料とされた水溶性分画および不溶性分画には、胆汁酸を吸着する能力を有することが判明した。 上述したように、上記一実施例では、エンド・エキソ型のプロテアーゼ2種によりかつお節を酵素分解させることにより生成されたかつお節酵素分解物の生理作用としては、胆汁酸の排泄量を増やしつつ、コレステロールの異化を促進し、血中コレステロール濃度および血中トリグリセリド濃度のそれぞれを低下させるという効果が推測される。 また、かつお節粉未およびかつお節酵素分解物には、ラットにおいて血中コレステロール濃度および血中トリグリセリド濃度のそれぞれの上昇抑制作用が確認されるとともに、胆汁酸排泄量が増加することによる胆汁酸吸着能力を有することが確認できた。 特に、これら血中コレステロール濃度および血中トリグリセリド濃度それぞれの上昇抑制作用と、胆汁酸吸着能力とのそれぞれの効果は、かつお節酵素分解物の不溶性分画を投与したラットにおいて最も強かった。このとき、ラットの胆汁酸排泄量が増加していたことにより、コレステロールの異化が促進され、血中コレステロール濃度が低下した可能性が強いとともに、便秘を改善させる効果も期待できる。 ここで、実験途中にラットの糞を採取し、糞中に含まれる胆汁酸の量を測定したところ、C群に比べDB群、DBES群およびDBEI群のいずれの群においても多く排泄されていた。胆汁酸は、コレステロールから生成される物質であり、かつお節やかつお節酵素分解物が胆汁酸の排泄量を増加させ、結果として血中のコレステロール濃度を低下させたと予測できる。 したがって、近年、食生活の欧米化や、脂肪摂取量の増加に伴い血中脂質濃度の上昇が原因と考えられる虚血性心疾患が増えているが、かつお節やかつお節酵素分解物の水溶性分画あるいは不溶性分画の服用により症状の改善や、予防に役立つことが期待できる。このとき、このかつお節酵素分解物の不溶性分画は、かつお節酵素分解エキスを作成した際の残渣として、現在有料での廃棄が必要であるが、この残渣を利用できるので、資源の有効活用にもつなげることができる。 さらに、かつお節酵素分解物の不溶性分画をラットに投与する際に乾燥させたことにより、この不溶性分画が固形分となるから、この不溶性分画によるラットへの投与や取り扱いを容易にできる。 次に、上記かつお節酵素分解物である胆汁酸吸着剤中の蛋白と、この胆汁酸吸着剤に少量(例えば、18%程度)含まれている脂質との相乗効果について試験した。 まず、蛋白と脂質とを含んだかつお節酵素分解物である胆汁酸吸着剤の栄養成分組成を調べた。 このとき、この胆汁酸吸着剤中の脂肪分は、原料に由来しているため、原料によって最終商品の脂肪含量も異なる。さらに、この胆汁酸吸着剤中の蛋白は、プロテアーゼの作用、すなわち消化酵素の影響を受けにくい難消化性蛋白質であるレジスタントプロテインである可能性が高い。 具体的には、卵巣を摘出した後に回復した6ヶ月齢のWister系の雌ラットを、蛋白源としてガゼインを与えるコントロール群(C群)と、蛋白源のうち40%を胆汁酸吸着剤に置き換えた飼料を与える第1の試験食群(DBEI群)と、蛋白源のうち40%をペプシンで酵素分解した蛋白脂質複合体に置き換えた飼料を与える第2の試験食群(DBEI−P群)と、蛋白源のうち40%を脱脂した蛋白脂質複合体に置き換えた第3の試験食群(DBEI−D群)に分けた。 そして、これらC群、DBEI群、DBEI−P群およびDBEI−D群のそれぞれを4週間(28日間)飼育してから、これら各群のラットの飼料効率、血中脂質(コレステロール、アポタンパク、トリグリセリド)濃度、および肝臓中脂質(コレステロール、トリグリセリド)濃度を測定して比較した。 ここで、飼料組成のベースは、表4に示すように、AIN93Mに基づき、蛋白含量、脂肪含量は全ての群で等しくなるように調整した。 この結果、図5に示すように、C群に比べ、DBEI群およびDBEI−P群では有意に血中コレステロール濃度が低下した。特に、このDBEI群では、悪玉コレステロールとして動脈効果の原因ともなるLDLコレステロールが低下していた。また、DBEI−D群では、血中コレステロール濃度の低下がDBEI群に比べて半減した。 これらの結果、血中コレステロール濃度の低下作用は、胆汁酸吸着剤に含まれる蛋白と脂質との相乗効果によるものと考えられる。ここで、図6に示すように、胆汁酸の吸着試験では、蛋白と脂質とが複合状態であることにより、胆汁酸の吸着量に相乗効果が示された。したがって、胆汁酸吸着剤の多くの胆汁酸を吸着して排泄することによる腸管循環の阻害が、血中コレステロール濃度の低下に結びついているものと考えられる。 なお、胆汁酸はコレステロールから作られるため、胆汁酸を多く排泄する胆汁酸吸着剤を摂取すると、体内のコレステロール濃度が低下するものと考えられる。したがって、蛋白と脂質との結合体が、かつお節酵素分解物中の蛋白よりも、さらに高い胆汁酸吸着能力を有し、強い血中コレステロール濃度低下作用を有することが判った。 次いで、C群、DBEI群、DBEI−P群およびDBEI−D群それぞれの血中アポタンパク濃度について測定したところ、図7に示すように、DBEI群およびDBEI−P群において、Apo−Eの濃度が低下する傾向があることが判った。 また、これらC群、DBEI群、DBEI−P群およびDBEI−D群それぞれの血中トリグリセリド濃度について測定したところ、図8に示すように、DBEI群およびDBEI−P群およびDBEI−D群それぞれにおいて有意に血中トリグリセリド濃度が低下した。 さらに、これらC群、DBEI群、DBEI−P群およびDBEI−D群それぞれの肝臓中のコレステロール濃度について測定したところ、図9に示すように、DBEI群およびDBEI−P群およびDBEI−D群それぞれにおいてフリーのコレステロールが増加しており、肝臓でのコレステロールのプール量が増大した。これは、胆汁酸吸着剤の摂取による胆汁酸排泄量の増加によって引き起こされたものであると考えられる。 さらに、これらC群、DBEI群、DBEI−P群およびDBEI−D群のそれぞれの実験終了前3日間の糞を採取した。この結果、図10および図11に示すように、C群に比べ、DBEI群、DBEI−P群およびDBEI−D群それぞれの糞の排泄量および糞中の胆汁酸排泄量が増加しているから、胆汁酸吸着剤による便秘に対しての効果も期待できる。 また、ガスクロマトグラフ測定法にて胆汁酸の組成を調べた結果、胆汁酸吸着剤に含まれる脂肪酸は、表5に示すように、飽和脂肪酸を45%、多価不飽和脂肪酸を20%、および一価不飽和脂肪酸を22%含んでいる。したがって、単独でも血中コレステロール濃度を低下させる効果のある不飽和脂肪酸が多く含まれていることが判った。 ここで、かつお節酵素分解物中の蛋白と脂質とを組み合わせることによって、魚蛋白の一部や不飽和脂肪酸の一部が有する血中コレステロール濃度を低下させる作用よりも、より高い血中コレステロール濃度低下作用を有することが判った。さらに、このかつお節酵素分解物を製造することによって、このかつお節酵素分解物から蛋白および脂質を含んだ蛋白脂質複合体である胆汁酸吸着剤を容易に得ることができる。 これらの結果から、蛋白質の一部をかつお節酵素分解物に置き換えることによって、血中コレステロール濃度の低下が期待できる。また、得られた酵素分解物の不溶性画分は、消化酵素による分解を受けにくい難消化性蛋白である可能性が高い。さらに、この難溶解性蛋白と脂質との複合体である胆汁酸吸着剤は、強い胆汁酸結合能力を有する。 なお、上記各実施例では、主としてかつおを原料としたかつお節から生成されるかつお節酵素分解物について説明したが、かつお以外の魚、例えばさば、まぐろ、いわし、あじなどの魚節であっても対応させて用いることができる。本発明の一実施の形態の胆汁酸吸着剤を魚節から製造するまでを示す工程図である。同上魚節を製造するまでを示す工程図である。同上蛋白分解物質である胆汁酸吸着剤を投与したラットの糞中の胆汁酸排泄量および糞の排泄量を示すグラフである。同上蛋白分解物質である胆汁酸吸着剤を投与したラットの血中脂質濃度を示すグラフである。(実施例1)同上蛋白分解物質を含む蛋白脂質複合体である胆汁酸吸着剤を投与したラットの血中コレステロール濃度を示すグラフである。(実施例2)同上蛋白脂質複合体である胆汁酸吸着剤1g当りの胆汁酸吸着量を示すグラフである。(実施例2)同上蛋白脂質複合体である胆汁酸吸着剤を投与したラットの血中アポタンパク濃度を示すグラフである。(実施例2)同上蛋白脂質複合体である胆汁酸吸着剤を投与したラットの血中トリグリセリド濃度を示すグラフである。(実施例2)同上蛋白脂質複合体である胆汁酸吸着剤を投与したラットの肝臓中コレステロール濃度を示すグラフである。(実施例2)同上蛋白脂質複合体である胆汁酸吸着剤を投与したラットの糞の排泄量を示すグラフである。(実施例2)同上蛋白脂質複合体である胆汁酸吸着剤を投与したラットの糞中の胆汁酸排泄量を示すグラフである。(実施例2) 微生物に由来するエンド・エキソ型のプロテアーゼにて酵素分解された魚節を含む溶液を濾過した濾渣により生成され、 胆汁酸吸着能力を有する ことを特徴とした胆汁酸吸着剤。 濾渣を乾燥して生成された ことを特徴とした請求項1記載の胆汁酸吸着剤。 魚節の脂質が含まれている ことを特徴とした請求項1または2記載の胆汁酸吸着剤。