生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_炎症性腸疾患の予防・治療剤
出願番号:2003203961
年次:2005
IPC分類:7,A61K31/718,A61K35/78,A61P1/04,A23L1/30


特許情報キャッシュ

余川 丈夫 青山 伸彦 レカ ラジュ ジュネジャ JP 2005047829 公開特許公報(A) 20050224 2003203961 20030730 炎症性腸疾患の予防・治療剤 太陽化学株式会社 000204181 余川 丈夫 青山 伸彦 レカ ラジュ ジュネジャ 7 A61K31/718 A61K35/78 A61P1/04 A23L1/30 JP A61K31/718 A61K35/78 T A61P1/04 A23L1/30 Z 1 OL 9 4B018 4C086 4C088 4B018MD36 4B018MD47 4B018ME11 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA20 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA68 4C088AB26 4C088AC11 4C088BA08 4C088CA11 4C088NA14 4C088ZA68 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、炎症性腸疾患を予防及び治療剤、特に食品組成物に関する。本発明においては、難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびチコリファイバーからなる群から選択される一種もしくは二種類以上の糖が炎症性腸疾患を予防・治療することのできる有効成分として含有される。【従来の技術】【0002】炎症性腸疾患とは、潰瘍性大腸炎、クローン病、腸型ベーチェット病などの何らかの原因により、腸の粘膜に炎症が起こり、びらん(ただれ)や潰瘍ができる病気である。炎症は通常、肛門に近い直腸から始まり、その後、その奥の結腸に向かって炎症がひろがっていくと考えられている。腸に起こる炎症のために、下痢や粘血便(血液・粘液・膿の混じった軟便)、発熱や体重減少などの症状があらわれる。病状は、おさまったり(緩解期)、悪化したり(活動期)を繰り返すことが多く、長期にわたって、この病気とつきあっていくこともある。特に潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)は発症頻度が高く、難治性で、疾病が長期化し、臨床的に治療することが困難な疾患である。UC及びCDに対し、現在、根本的な治療方法は確立されておらず、栄養療法 (完全静脈栄養療法、経腸栄養療法、食餌療法) 及び薬物療法(スルファサラジン、5−ASA(メサラジン)のサルファ剤、プレドニゾロンを中心としたステロイド剤、アザチオプリンなどの免疫抑制剤などを病期に応じて段階的に使用) が用いられている(例えば、非特許文献1参照。)。【0003】UCは1975年に、CDは1976年に特定疾患に認定されており、特定疾患受給者登録者数はUCが約70,000人、CDが約20,000人となっているが、近年患者数は増加する傾向にある(「厚生省保健医療局エイズ疾病対策課難病医療係」)。【0004】腸型ベーチェット病は、UC及びCDに比べると患者数は少ないが、難治性で、治療法としてはUC及びCDと同様の薬物療法、栄養療法及び外科療法が施されている。その他、大半の炎症性腸疾患は、基本的には内科的に治療することができ、症状に応じて、栄養療法(絶食、食事制限、成分栄養、高カロリー輸液) や薬物療法(抗菌薬投与)などが行われている(例えば、非特許文献2参照。)。【0005】炎症性腸疾患は、厚生労働省の特定疾患調査研究班により研究が進められているが、なぜ病気が起こるのか今だ原因がはっきりと分かっていない。最近の有力な説として、自己免疫機序など免疫異常がその原因となっているのではないかと考えられている。人間の身体には、外から異物が侵入した際に、それを排除しようとするしくみ(免疫機能)が備わっている。腸管にもこの免疫機能がはたらいているが、この免疫機能に異常が生じると自分自身の粘膜をも異物とみなし、これを攻撃して傷つけようとする。その結果、粘膜に炎症が起こる。異物を排除するために異常に免疫機能が活発化すると、白血球が過剰にはたらき、本来ならば異物を処理するための物質を放出しつづけるため、持続する炎症が起こると考えられる。しかし、この免疫説も決定的ではなく、炎症が起こるしくみとしては有力な説であるが、なぜ免疫機能の異常が起こるのか炎症性腸疾患の発症のメカニズムは、まだ明確には分かっていないため、根本治療が確立されていない。従って、炎症性腸疾患に対して、現在さまざまな治療法の開発が進められているが、残念ながら、まだ根本的に治すことのできる治療法は発見されていない。このため炎症性腸疾患を予防・治療することが大きな課題となっている。【0006】【非特許文献1】厚生労働省「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班,平成13年度研究報告書,p.54【非特許文献2】松仁会医学誌,第39号,p.1−14,2000【0007】【発明が解決しようとする課題】すなわち本発明は、副作用などの問題がなく、安全性の高い炎症性腸疾患の予防・治療剤を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述のような炎症性腸疾患予防することを目的として鋭意研究を重ねた結果、難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびチコリファイバーからなる群から選択される一種もしくは二種類以上の糖が上記目的課題を解決することを見い出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびチコリファイバーからなる群から選択される一種もしくは二種類以上の糖が炎症性腸疾患の発症を予防及び治療するための有効成分として種々の材料、特に飲食品材料に配合してなる炎症性腸疾患の予防・治療剤に関する。本発明の組成物は種々の形態に成形して日常手軽に食することができる。【0009】本発明における炎症性腸疾患とは、潰瘍性大腸炎、クローン病、腸型ベーチェット病などの何らかの原因により、大腸の粘膜に炎症が起こり、びらん(ただれ)や潰瘍ができる病気である。炎症の評価方法については特に限定されないが、炎症マーカーであるミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性量や炎症サイトカインであるTNF−α活性量などの評価が知られている。【0010】本発明における難消化性デキストリンとは、特に限定されないが商品名「パインファイバー」、「ファイバーソル」(松谷化学工業社製)などの、澱粉を加熱、酵素処理して得られる難消化性の食物繊維を用いることができる。具体的には例えば、澱粉を酸性下で加熱処理して得られる焙焼デキストリンを、α−アミラーゼで加水分解処理し、さらに必要に応じて、グルコアミラーゼ処理、イオン交換樹脂クロマトグラフィー処理などの精製処理などを施して得ることができる。その分子量は、特に限定されないが、好ましくは500〜10,000の範囲のものを用いることができる。分子量が500未満のものは呈味性の問題、分子量10,000以上では呈味性、食感の面で問題となることがある。【0011】本発明におけるポリデキストロースとは、特に限定されないが商品名「ライテス」(ダニスコカルター社製)などの、ブドウ糖、ソルビトール及びクエン酸をおおよそ89:10:1の割合で混合し高温真空下で重合させたものなどを用いることができる。その分子量は、特に限定されないが、好ましくは500〜10,000の範囲のものを用いることができる。分子量が500未満のものは呈味性の問題、分子量10,000以上では呈味性、食感の面で問題となることがある。【0012】本発明におけるチコリファイバーとは、特に限定されないが商品名「ラフィテリン」(日本シーベルヘグナー社製)などの、チコリの根から温水抽出し、精製、スプレードライにより粉末化したものを用いることができる。その分子量は、特に限定されないが、好ましくは500〜5,000の範囲のものを用いることができる。分子量が500未満のものは呈味性の問題、分子量5,000以上では呈味性、食感の面で問題となることがある。【0013】難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびチコリファイバーは、種々の工業製品に好ましい物性を付与することが知られているが、このものが炎症性腸疾患の予防・治療効果を有することは従来知られていなかった。しかし、本発明者らの研究によると、上述のような難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびチコリファイバーからなる群から選択される一種もしくは二種類以上の糖を食品組成物とし、これを成人1日当たり1〜70g、好ましくは5〜20gを継続して摂取をつづけるとき、炎症性腸疾患の発症や抑制、治療効果が認められることが見出された。1日70g以上摂取すると人により、軽度かつ一時的ではあるが膨満感を訴える人がいる。【0014】本発明では、難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびチコリファイバーからなる群から選択される一種もしくは二種類以上の糖と配合する食品材料は特に限定されるものではなく、他の糖類、食物繊維、脂質、アミノ酸、蛋白質、さらにこれらに必要に応じて、乳酸菌、ビタミン、ミネラルのようなその他の機能性を有する物質を添加して炎症性腸疾患の予防・治療剤とすることができる。このような難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびチコリファイバーの摂取方法としては、例えば、飲料、クッキー、スナック菓子、乳製品などの種々の食品とすることができるほか、例えば適当な増量剤、賦形剤などを用いて錠剤状、液状、シロップ状、顆粒状などの医薬品や健康食品の形態にすることもできる。難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびチコリファイバーは、様々な食品に添加することが可能であることから容易に摂取することが可能であり、炎症性腸疾患の予防・治療することができる。本発明における難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびチコリファイバーからなる群から選択される一種もしくは二種類の糖の炎症性腸疾患抑制作用を試験例に基づいて詳しく説明する。【0015】【実施例】以下、試験例をあげて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら試験例に何ら制約されるものではない。試験例1BALB/c系マウスを用い、1週間、通常のコーンスターチ(corn starch)(以下、CSと記す)を炭水化物源とする標準飼料で予備飼育し、異常のない個体を選別し、1群10匹として実験に供した。なお、試験素材として難消化性デキストリンはファイバーソル2(松谷化学工業社製)、ポリデキストロースは、ライテス(ダニスコカルター社製)、チコリファイバーは、ラフィテリンHP(日本シーベルヘグナー社製)を用いた。上記ラットに8%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)溶液を与えて大腸炎を誘発した。なお、無処置群には、DSSの代わりに生理食塩水のみを投与した。DSS投与翌日から試験飼料に5重量%または10重量%の各素材を添加した試験飼料を水とともに2週間自由摂取させた。なお、無処置群には標準飼料を与えた。標準飼料と試験飼料の組成については表1に示す。【0016】【表1】実験飼料の組成【0017】各検体をDSS投与1週間後に屠殺し、各々の検体につき、Disease activity index(体重の減少:0−4 糞の硬さ:0,2,4 直腸の潰瘍:0,2,4)、炎症の指標となる大腸組織中の全ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性量、及びTNF−α活性を調べた。【0018】(1) Disease activity indexに示すように試験飼料群において改善効果が認められた(p<0.05)。【0019】【図1】【0020】(2) 炎症マーカーである全大腸組織中のMPO活性量は、図2に示すようにDSS無処置群を除き、すべての10重量%試験飼料群で低値(DSS群に対し約50%の減少、p<0.05)を示した。また、すべての5重量%試験飼料群で、約40%(p<0.05)の活性量の低下が認められた。【0021】【図2】【0022】(3) 炎症サイトカインであるTNF−α活性量は、図3に示すようにDSS無処置群を除き、すべての10重量%試験飼料群で低値(DSS群に対し約50%の減少、p<0.05)を示した。また、すべての5重量%試験飼料群で、約35%(p<0.05)の活性量の低下が認められた。【0023】【図3】【0024】これらの実験結果から、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、チコリファイバーは炎症性腸疾患に対し組織学的な改善作用を示すだけでなく、炎症の抑制作用、また炎症性腸疾患の診断マーカーとなりうるMPO活性、TNF−α値の改善作用をも有することが明らかになった。【0025】試験例2炎症性腸疾患の患者30名に対して、難消化性デキストリン(ID)、ポリデキストロース(PD)、チコリファイバー(INU)30g/日を一回10gとして連続28日間経口投与した。臨床症状(下痢、粘血便(血液・粘液・膿の混じった軟便、発熱や体重減少などの症状)と内視鏡所見を行った結果を表2に示した。【0026】【表2】【0027】表2より、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、チコリファイバーの摂取により炎症性腸疾患の臨床症状と内視鏡所見の改善が認められた。【0028】試験例3表3に示される組成を持ち、総食物繊維定量法によって得られる難消化性成分をほぼ等しくして2種類のビスケットを常法に従って調製した。得られたビスケットを10人のパネラーを対象にして官能試験を実施した。試験項目は、色、味、におい、食感の4項目とし、各項目に関して好ましい方を選択させた。その後、2点嗜好試験法の検定表に基づいて検定を行った。なお、食物繊維(DF)含有量は日本食物繊維成分表(科学技術庁資源調査会編)より算出した。また、難消化性デキストリン(ID)としてはファイバーソル2(松谷化学工業社製)を使用した。【0029】【表3】ビスケット処方【0030】得られた試験結果を表4に示した。表4に示したとおり、色、におい、味、食感ともに難消化性デキストリン含有のビスケットと対照区に差は認められなかった。他にポリデキストロースとチコリファイバーに関してもビスケットを調製し、比較試験を行った結果、対照区と差は認められなかった。【0031】【表4】以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明する。【0032】実施例1難消化性デキストリン粉末gに粉糖93.5g、アラビアガム1.0g、ステアリン酸マグネシウム0.5g、香料適量の割合で混練して乾燥した後打錠し、炎症性腸疾患の予防・治療に有用な錠菓の製品100gを得た。【0033】実施例2難消化性デキストリン粉末5gにローファットミルク95.0gを加え炎症性腸疾患の予防・治療に有用な乳飲料の製品100gを得た。【0034】実施例3難消化性デキストリン粉末3.0gにピーチピューレ40.0g、果糖ブドウ糖液糖10.0g、クエン酸0.1g、ビタミンC0.03g、フレーバー適量、水46.8gを加え炎症性腸疾患の予防・治療に有用な清涼飲料水の製品100gを得た。【0035】実施例4難消化性デキストリン粉末5.0gに強力粉51.0g、砂糖15.0g、食塩7.0g、イースト8.0g、イースト1.0g、バター10.0g、水30.0gの配合でパン焼き機を利用して炎症性腸疾患の予防・治療に有用な食パンの製品110gを得た。【0036】実施例5難消化性デキストリン粉末4.0gにグラニュー糖30.0g、水あめ35.0g、ペクチン1.0g、1/5アップル果汁2.0g、水28.0gで混合し85℃まで加熱した後、50℃まで冷却し炎症性腸疾患の予防・治療に有用なゼリーの製品100gを得た。【0037】【発明の効果】難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびチコリファイバーからなる群から選択される一種もしくは二種類以上の糖は、上述のように、明らかに炎症性腸疾患の予防・治療効果を有しており、これを他の食品材料に配合してなる組成物を種々の形態の食品として食することにより、炎症性腸疾患、特に慢性炎症性腸疾患を治療もしくは予防することができる。また、難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびチコリファイバーは、色、におい、味、食感が良いため、これを配合した食品は通常の食品と同様に摂取することができ、多量あるいは長期間にわたる摂取が可能である。 難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびチコリファイバーからなる群から選択される一種もしくは二種類以上の糖を有効成分として含有することを特徴とする炎症性腸疾患の予防・治療剤。 【課題】炎症性腸疾患は、厚生労働省の特定疾患調査研究班により研究が進められているが、なぜ病気が起こるのか今だ原因がはっきりと分かっていない。従って、炎症性腸疾患に対して、現在さまざまな治療法の開発が進められているが、残念ながら、まだ根本的に治すことのできる治療法は発見されていない。このため炎症性腸疾患を予防・治療することが大きな課題となっている。本発明は、通常の食品と同様に摂取することができる炎症性腸疾患の予防・治療剤を提供することを目的とする。【解決手段】難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびチコリファイバーからなる群から選択される一種もしくは二種類以上の糖を含有させることで本課題を解決する。


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