生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_バイオリアクタ
出願番号:2003201789
年次:2005
IPC分類:7,C12M1/00,C12M1/02,C12M1/04


特許情報キャッシュ

小串 泰之 金子 雅人 羽田 道夫 平野 篤 本波 康由 JP 2005040035 公開特許公報(A) 20050217 2003201789 20030725 バイオリアクタ 三菱重工業株式会社 000006208 東京電力株式会社 000003687 青木 篤 100099759 鶴田 準一 100092624 島田 哲郎 100102819 西山 雅也 100082898 小串 泰之 金子 雅人 羽田 道夫 平野 篤 本波 康由 7 C12M1/00 C12M1/02 C12M1/04 JP C12M1/00 D C12M1/02 B C12M1/04 6 1 OL 8 4B029 4B029AA02 4B029AA04 4B029BB02 4B029BB06 4B029BB12 4B029CC01 4B029DA01 4B029DA05 4B029DB11 4B029DB17 4B029DC07 4B029DD06 4B029DF01 4B029DF04 4B029DG10 4B029GB07 【0001】【発明の属する技術分野】本技術は微細藻類等の光合成生物の培養装置に係わる。【0002】【従来の技術】近年温室効果ガスとして地球温暖化への影響が懸念されている二酸化炭素の増加問題が深刻化し、二酸化炭素を固定化する研究が各研究機関で行われている。そのうち光合成生物の光合成作用を利用して二酸化炭素を固定化する方法は、同時に太陽エネルギーをバイオマスとして化学エネルギーに変換することもできるので大いに注目されている。【0003】光合成生物の光合成を利用して二酸化炭素を固定するには、光合成生物をいかに速く増殖させるかがポイントである。数多くの光合成生物の中でも、微細藻類が、増殖速度が非常に速く、効率よく二酸化炭素を固定化することができることがわかってきている。【0004】このような微細藻類は、独立栄養生物で基本的には光、水、二酸化炭素があれば増殖するが、適切な強度の光合成に有効な波長領域の光、適切な濃度の二酸化炭素、無機栄養塩、適切な温度及びpHが、あれば、増殖速度は速くなる。そこで、できるだけ多くの光を受光できるようにしたバイオリアクタが各種開発されている。例えば、特開平9−121835号公報に記載の装置のように、光透過性のチューブを円錐状に間隔をあけながら配設したバイオリアクタが開示されている。【0005】上記公報のような装置では培地中に均一に適切な濃度の二酸化炭素を供給する方法が示されていない。【0006】上記公報のような装置で微細藻類を効率よく増殖することはできるが、二酸化炭素固定システムの全体を効率よく回転させるためには、増殖した微細藻類を効率よく回収することが必要である。ところが、上記公報の発明は増殖した微細藻類の回収については記載されておらず、効率よく回収することはできない。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題に鑑み、培地中に均一に適切な濃度の二酸化炭素を供給し、増殖した光合成生物を効率よく回収できるバイオリアクタを提供することを目的とする。【0008】【課題を解決するための手段】請求項1の発明によれば、光合成生物を培養するバイオリアクタであって、光透過性の材料で形成され内部で光合成生物を含む培養液を培養する培養槽と、培養槽よりも高い位置に配置されるヘッドタンクとが第1パイプおよび第2パイプで連結され、第1パイプの途中に、光合成生物を含む培養液を、培養槽とヘッドタンクの間を第1パイプおよび第2パイプを介して循環させる循環ポンプが付設され、上記循環経路内に循環中の培養液に二酸化炭素を注入する手段が付設され、第1パイプの上端がヘッドタンク内の上側部分で、第2パイプの上端がヘッドタンク内の下側部分で開口され、ヘッドタンクの上部に分離された気体を外部に排出可能な抜気口が設けられている、バイオリアクタが提供される。【0009】請求項2の発明によれば、請求項1の発明において、循環ポンプが、第1パイプの外側に密着され、第1パイプと複数の穴で連通される環状パイプと、該環状パイプに二酸化炭素を含む気体を送りこむ気体送給ポンプとから成る気泡ポンプである、バイオリアクタが提供される。このように構成されたバイオリアクタでは、培養液の循環が、複数の穴から二酸化炭素を含む気体を培養液中に送り込む気泡ポンプでおこなわれ、光合成生物に均等に二酸化炭素が供給される。【0010】請求項3の発明によれば、ヘッドタンクの第1パイプの開口高さよりも高いところにオーバーフローパイプが取付けられ、オーバーフローパイプの出口を培養液回収容器に向けて開放されている、バイオリアクタが提供される。このように構成されたバイオリアクタでは、光合成生物が増殖して増量した培養液をオーバーフローパイプで回収することができ、増殖した光合成生物の回収を容易におこなうことができる。【0011】請求項4の発明によれば、請求項3の発明において、光合成生物の増殖に適した培地を補給する培地補給手段を有する、バイオリアクタが提供される。このように構成されたバイオリアクタでは培地補給手段で光合成生物の増殖に適した培地が補給される。【0012】請求項5の発明によれば、請求項4の発明において、培地を連続的に補給し、常時培養液をオーバーフローパイプでオーバーフローさせる、バイオリアクタが提供される。このように構成されたバイオリアクタでは常時培養液がオーバーフローパイプからオーバーフローするので連続して光合成生物を回収できる。【0013】なお、培地とは光合成生物の増殖に適した液体であるが光合成生物が混入されていないものである。培地に光合成生物が混入されたものが培養液である。例えば、光合成生物がもともと海水で生息、増殖するものであれば、その培地は海水、あるいは、海水と同様の成分を含む液体であり、光合成生物がもともと内陸の湖沼等の淡水で生息、増殖するものであれば、その培地はその淡水、あるいは、その淡水と同様の成分を含む液体である。【0014】請求項6の発明によれば、請求項1の発明において、光合成生物の温度を適切な範囲に維持するために培養槽の外面に冷却水を供給する冷却手段を有する、ことを特徴するバイオリアクタが提供される。このように構成されたバイオリアクタでは培養槽は冷却手段により供給される冷却水で冷却される。【0015】【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の概要を示す側面図であって、透明な光透過性の材料のパイプを連結して成る水平培養槽10と水平培養槽10よりも上方に位置するヘッドタンク20が、水平培養槽10と同じ光透過性の材料から成る垂直な第1パイプ30と第2パイプ40で連結されている。そして、水平培養槽10、ヘッドタンク20、第1パイプ30、第2パイプ40内を光合成生物、例えば、微細藻類の培養液が後述の気泡ポンプ50で循環せしめられる。【0016】第1パイプ30の上端はヘッドタンク20の内部の上寄りの位置で開口し、第2パイプ40の上端はヘッドタンク20の底面のところで開口している。ヘッドタンク20の上面には抜気管21が取付けられている。第1パイプ30の下部には気泡ポンプ50が取付けられている。気泡ポンプ50には機械式のポンプ55により所定濃度の二酸化炭素を含む気体が送給される。【0017】図2は気泡ポンプ50の詳細を説明する図であって、図2の(A)は中心軸に直角な平面で切った断面図、図2の(B)は拡大側面図である。両図に示されるように、気泡ポンプ50は、第1パイプ30の外周面に密着して断面四角形の環状管51を配設し、第1パイプ30と環状管51を複数の穴52で連通すると共に、環状管51の外周壁に前記機械式のポンプ55から送給される気体を導入する気体導入管53を取付けて構成されている。穴52は径が概ね1〜5 mm、個数は概ね8〜32個とされる。【0018】気泡ポンプ50で気体が送給された第1パイプ30内の微細藻類を含む培養液は比重が軽くなり上昇する。すなわち、第1パイプ30は培養液を上昇せしめる、ライザーの機能を果たしている。この作用によって培養液は循環する。例えば、穴52の直径を1 mmとし、個数を16個とし、ポンプ55で1 %の二酸化炭素を含む空気を9 L/minで供給するようにした気泡ポンプでは、0.5 m/sで培養液が上昇し、この速度で培養液は循環した。【0019】そして、気泡ポンプ50で第1パイプ30内を上昇した培養液はヘッドタンク20内の上寄り部分に開口している第1パイプ30の上端よりヘッドタンク20内に流れ出るが、ヘッドタンク20の第1パイプ30より上の部分には空間が確保されており、過剰に供給された気体や光合成反応により生じた酸素は培養液から分離されて前記空間を上昇し、ヘッドタンク20の上面に設けられた抜気口21から外部に除去される。したがって、培養液に上記のような不要な気体が混入して微細藻類の増殖が妨げられるようなことがなくなる。また、余分な気体がパイプ内に留まるとその部分が乾燥して微細藻類が付着することがあるが、そのような心配もなくなる。【0020】一方、培地を貯留する培地タンク60から培地ポンプ61により培地供給パイプ62を通って、培地が、気泡ポンプ50の下側で、第1パイプ30内に注入できるようになっていて、微細藻類が増殖して微細藻類に対する培地の相対量が過少になることを防止できるようになっている。この培地の供給は連続的あるいは、間欠的におこなわれる。【0021】そして、ヘッドタンク20にはオーバーフローパイプ22が取付けられておりオーバーフローパイプ22の先端は培養液回収タンク70の内部で開口している。したがって、培地ポンプ61で培地が追加され容積が増加した微細藻類を含む培養液がヘッドタンク20のオーバーフローパイプ22の取付け高さに達すると、オーバーフローパイプ22を通って培養液回収タンク70に流入する。したがって、培養液ごと吸い出したりせず、すなわち、増殖を停止することなく、微細藻類の回収をおこなうことができる。【0022】テトラセルミス(Tetraselmis)の培養液を流速0.5 m/s (115 L/min)で循環させながら、培地を60 ml/minで連続的に供給しオーバーフローパイプ22で培養液を回収した場合には、培養液中のテトラセルミスの濃度は略0.65 g/Lで一定であった。なお、テトラセルミスは海水性であり、培地としては海水に栄養塩を加えたものを使用した。【0023】次に、第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態は第1の実施の形態に対して高温化防止のための冷却装置を追加したものである。図3がこの第2の実施の形態の構成を示す側面図であって、培養槽10の上方に配設された散水管80の複数の散水ノズル81からポンプ82で冷却水槽83から汲み上げた冷却水が散水されるようになっている。このような冷却装置で冷却することにより、夏期の屋外培養においても培養液の高温化を阻止して微細藻類の増殖阻害や死滅を防ぐことができる。【0024】例えば、日本国内で8月に、この第2の実施の形態の装置を使って冷却をおこない培養液の温度を35 ℃以下に保って、テトラセルミス(Tetraselmis)の屋外培養をおこなった例では、気泡ポンプにより培養液を流速0.5 m/s (115 L/min)で循環させた場合で、30 mg/m2/dayの微細藻類を生産することができた。【0025】【発明の効果】各請求項に記載の発明は、光合成生物を培養するバイオリアクタであるが、光透過性の材料で形成され内部で光合成生物を含む培養液を培養する培養槽と、培養槽よりも高い位置に配置されるヘッドタンクとが第1パイプおよび第2パイプで連結され、第1パイプの途中に、光合成生物を含む培養液を、培養槽とヘッドタンクの間を第1パイプおよび第2パイプを介して循環させる循環ポンプが付設され、上記循環経路内に循環中の培養液に二酸化炭素を注入する手段が付設され、第1パイプの上端がヘッドタンク内の上側部分で、第2パイプの上端がヘッドタンク内の下側部分で開口され、ヘッドタンクの上部に分離された気体を外部に排出可能な抜気口が設けられている。特に、請求項2のように、循環ポンプを、第1パイプの外側に密着され、第1パイプと複数の穴で連通される環状パイプと、該環状パイプに二酸化炭素を含む気体を送りこむ気体送給ポンプとから成る気泡ポンプとすれば、培養液の循環が、複数の穴から二酸化炭素を含む気体を培養液中に送り込む気泡ポンプでおこなわれ、光合成生物に均等に二酸化炭素が供給される。【0026】請求項3のようにヘッドタンクの第1パイプの開口高さよりも高いところにオーバーフローパイプが取付けられ、オーバーフローパイプの出口を培養液回収容器に向けて開放されている。したがって、光合成生物が増殖して増量した培養液をオーバーフローパイプで回収することができ、増殖した光合成生物の回収を容易におこなうことができる。【0027】特に、請求項5のように、培地補給手段で培地を連続的に補給し、常時培養液をオーバーフローパイプでオーバーフローさせれば、連続して光合成生物を回収できる。特に、請求項6の発明によれば、光合成生物の温度を適切な範囲に維持するために培養槽の外面に冷却水を供給する冷却手段を有するようにすれば、培養槽は冷却手段により供給される冷却水で冷却され光合成生物が高温となって増殖速度が低下したり死滅したりすることが防止できる。【図面の簡単な説明】【図1】第1の実施の形態の側面図である。【図2】第1の実施の形態の気泡ポンプを拡大して示す図であって、(A)は軸に直角な面で切った断面図で示したものであり、(B)は側面図で示したものである。【図3】第2の実施の形態の側面図である。【符号の説明】10…水平培養槽20…ヘッドタンク21…抜気管22…オーバーフローパイプ30…第1パイプ40…第2パイプ50…気泡ポンプ51…環状管52…穴53…気体導入管55…(機械式)ポンプ60…培地タンク61…培地ポンプ62…培地供給パイプ70…培養液回収タンク80…散水管83…冷却水槽 光合成生物を培養するバイオリアクタであって、光透過性の材料で形成され内部で光合成生物を含む培養液を培養する培養槽と、培養槽よりも高い位置に配置されるヘッドタンクとが第1パイプおよび第2パイプで連結され、第1パイプの途中に、光合成生物を含む培養液を、培養槽とヘッドタンクの間を第1パイプおよび第2パイプを介して循環させる循環ポンプが付設され、上記循環経路内に循環中の培養液に二酸化炭素を注入する手段が付設され、第1パイプの上端がヘッドタンク内の上側部分で、第2パイプの上端がヘッドタンク内の下側部分で開口され、ヘッドタンクの上部に分離された気体を外部に排出可能な抜気口が設けられる、ことを特徴とするバイオリアクタ。 循環ポンプが、第1パイプの外側に密着され、第1パイプと複数の穴で連通される環状パイプと、該環状パイプに二酸化炭素を含む気体を送りこむ気体送給ポンプとから成る気泡ポンプである、ことを特徴とする請求項1に記載のバイオリアクタ。 ヘッドタンクの第1パイプの開口高さよりも高いところにオーバーフローパイプが取付けられ、オーバーフローパイプの出口を培養液回収容器に向けて開放されている、ことを特徴とする請求項1に記載のバイオリアクタ。 光合成生物の増殖に適した培地を補給する培地補給手段を有する、ことを特徴とする請求項3に記載のバイオリアクタ。 培地を連続的に補給し、常時培養液をオーバーフローパイプでオーバーフローさせる、ことを特徴とする請求項4に記載のバイオリアクタ。 光合成生物の温度を適切な範囲に維持するために培養槽の外面に冷却水を供給する冷却手段を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のバイオリアクタ。 【課題】増殖した光合成生物を効率よく回収できるバイオリアクタの提供。【解決手段】光透過性のパイプを連結して成る水平培養槽(10)とオーバーヘッドタンク(20)が第1パイプ(30)と第2パイプ(40)で連結されている。気泡ポンプ(50)は第1パイプ内に所定濃度の二酸化炭素を含む気体を送給する。第1パイプの上端はヘッドタンクの内部の上側の位置で、第2パイプの上端は底面で開口し、過剰に供給された気体や光合成反応により生じた酸素は培養液から分離されてヘッドタンクの上面に設けられた抜気口(21)から外部に除去される。培地タンク(60)から培地ポンプ(61)により培地供給パイプ(62)を通って、培地が第1パイプ(30)内に注入され、培地が追加され容積が増加した微細藻類を含む培養液がオーバーフローパイプ(22)を通って培養液回収タンク(70)に流入する。【選択図】 図1


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特許公報(B2)_バイオリアクタ

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_バイオリアクタ
出願番号:2003201789
年次:2009
IPC分類:C12M 1/00,C12M 1/02,C12M 1/04


特許情報キャッシュ

小串 泰之 金子 雅人 羽田 道夫 平野 篤 本波 康由 JP 4389500 特許公報(B2) 20091016 2003201789 20030725 バイオリアクタ 東京電力株式会社 000003687 特許業務法人 アクア特許事務所 110000349 小串 泰之 金子 雅人 羽田 道夫 平野 篤 本波 康由 20091224 C12M 1/00 20060101AFI20091203BHJP C12M 1/02 20060101ALI20091203BHJP C12M 1/04 20060101ALI20091203BHJP JPC12M1/00 DC12M1/02 BC12M1/04 C12M 1/00-3/00 PubMed WPI 特表2002−523082(JP,A) 特開平09−121835(JP,A) TORZILLO, G. et al.,A two-plane tubular photobioreactor for outdoor culture of Spirulina.,BIOTECH. BIOENG.,1993年 9月,Vol.42, No.7,p.891-898 5 2005040035 20050217 8 20060711 野村 英雄 【0001】【発明の属する技術分野】本技術は微細藻類等の光合成生物の培養装置に係わる。【0002】【従来の技術】近年温室効果ガスとして地球温暖化への影響が懸念されている二酸化炭素の増加問題が深刻化し、二酸化炭素を固定化する研究が各研究機関で行われている。そのうち光合成生物の光合成作用を利用して二酸化炭素を固定化する方法は、同時に太陽エネルギーをバイオマスとして化学エネルギーに変換することもできるので大いに注目されている。【0003】光合成生物の光合成を利用して二酸化炭素を固定するには、光合成生物をいかに速く増殖させるかがポイントである。数多くの光合成生物の中でも、微細藻類が、増殖速度が非常に速く、効率よく二酸化炭素を固定化することができることがわかってきている。【0004】このような微細藻類は、独立栄養生物で基本的には光、水、二酸化炭素があれば増殖するが、適切な強度の光合成に有効な波長領域の光、適切な濃度の二酸化炭素、無機栄養塩、適切な温度及びpHが、あれば、増殖速度は速くなる。そこで、できるだけ多くの光を受光できるようにしたバイオリアクタが各種開発されている。例えば、特開平9−121835号公報に記載の装置のように、光透過性のチューブを円錐状に間隔をあけながら配設したバイオリアクタが開示されている。【0005】上記公報のような装置では培地中に均一に適切な濃度の二酸化炭素を供給する方法が示されていない。【0006】上記公報のような装置で微細藻類を効率よく増殖することはできるが、二酸化炭素固定システムの全体を効率よく回転させるためには、増殖した微細藻類を効率よく回収することが必要である。ところが、上記公報の発明は増殖した微細藻類の回収については記載されておらず、効率よく回収することはできない。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題に鑑み、培地中に均一に適切な濃度の二酸化炭素を供給し、増殖した光合成生物を効率よく回収できるバイオリアクタを提供することを目的とする。【0008】【課題を解決するための手段】 請求項1の発明によれば、光合成生物を培養するバイオリアクタであって、光透過性の材料で形成され内部で光合成生物を含む培養液を培養する培養槽と、培養槽よりも高い位置に配置されるヘッドタンクとが第1パイプおよび第2パイプで連結され、第1パイプの途中に気泡を注入して、光合成生物を含む培養液を、培養槽とヘッドタンクの間を第1パイプおよび第2パイプを介して循環させる循環ポンプが付設され、循環ポンプが、第1パイプの外側に密着され、第1パイプと略等間隔に配置された8個以上の穴で連通される環状パイプと、該環状パイプに二酸化炭素を含む気体を送りこむ気体送給ポンプとから成る気泡ポンプであって、上記循環経路内に循環中の培養液に二酸化炭素を注入する手段が付設され、第1パイプの上端がヘッドタンク内の上側部分で上方向に向かって開口され、第2パイプの上端がヘッドタンク内の下側部分で開口され、ヘッドタンクの上部に分離された気体を外部に排出可能な抜気口が設けられている、バイオリアクタが提供される。【0010】 請求項2の発明によれば、ヘッドタンクの第1パイプの開口高さよりも高いところにオーバーフローパイプが取付けられ、オーバーフローパイプの出口を培養液回収容器に向けて開放されている、バイオリアクタが提供される。 このように構成されたバイオリアクタでは、光合成生物が増殖して増量した培養液をオーバーフローパイプで回収することができ、増殖した光合成生物の回収を容易におこなうことができる。【0011】 請求項3の発明によれば、請求項2の発明において、光合成生物の増殖に適した培地を補給する培地補給手段を有する、バイオリアクタが提供される。 このように構成されたバイオリアクタでは培地補給手段で光合成生物の増殖に適した培地が補給される。【0012】 請求項4の発明によれば、請求項3の発明において、培地を連続的に補給し、常時培養液をオーバーフローパイプでオーバーフローさせる、バイオリアクタが提供される。 このように構成されたバイオリアクタでは常時培養液がオーバーフローパイプからオーバーフローするので連続して光合成生物を回収できる。【0013】なお、培地とは光合成生物の増殖に適した液体であるが光合成生物が混入されていないものである。培地に光合成生物が混入されたものが培養液である。例えば、光合成生物がもともと海水で生息、増殖するものであれば、その培地は海水、あるいは、海水と同様の成分を含む液体であり、光合成生物がもともと内陸の湖沼等の淡水で生息、増殖するものであれば、その培地はその淡水、あるいは、その淡水と同様の成分を含む液体である。【0014】 請求項5の発明によれば、請求項1の発明において、光合成生物の温度を適切な範囲に維持するために培養槽の外面に冷却水を供給する冷却手段を有する、ことを特徴するバイオリアクタが提供される。 このように構成されたバイオリアクタでは培養槽は冷却手段により供給される冷却水で冷却される。【0015】【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の概要を示す側面図であって、透明な光透過性の材料のパイプを連結して成る水平培養槽10と水平培養槽10よりも上方に位置するヘッドタンク20が、水平培養槽10と同じ光透過性の材料から成る垂直な第1パイプ30と第2パイプ40で連結されている。そして、水平培養槽10、ヘッドタンク20、第1パイプ30、第2パイプ40内を光合成生物、例えば、微細藻類の培養液が後述の気泡ポンプ50で循環せしめられる。【0016】第1パイプ30の上端はヘッドタンク20の内部の上寄りの位置で開口し、第2パイプ40の上端はヘッドタンク20の底面のところで開口している。ヘッドタンク20の上面には抜気管21が取付けられている。第1パイプ30の下部には気泡ポンプ50が取付けられている。気泡ポンプ50には機械式のポンプ55により所定濃度の二酸化炭素を含む気体が送給される。【0017】図2は気泡ポンプ50の詳細を説明する図であって、図2の(A)は中心軸に直角な平面で切った断面図、図2の(B)は拡大側面図である。両図に示されるように、気泡ポンプ50は、第1パイプ30の外周面に密着して断面四角形の環状管51を配設し、第1パイプ30と環状管51を複数の穴52で連通すると共に、環状管51の外周壁に前記機械式のポンプ55から送給される気体を導入する気体導入管53を取付けて構成されている。穴52は径が概ね1〜5 mm、個数は概ね8〜32個とされる。【0018】気泡ポンプ50で気体が送給された第1パイプ30内の微細藻類を含む培養液は比重が軽くなり上昇する。すなわち、第1パイプ30は培養液を上昇せしめる、ライザーの機能を果たしている。この作用によって培養液は循環する。例えば、穴52の直径を1 mmとし、個数を16個とし、ポンプ55で1 %の二酸化炭素を含む空気を9 L/minで供給するようにした気泡ポンプでは、0.5 m/sで培養液が上昇し、この速度で培養液は循環した。【0019】そして、気泡ポンプ50で第1パイプ30内を上昇した培養液はヘッドタンク20内の上寄り部分に開口している第1パイプ30の上端よりヘッドタンク20内に流れ出るが、ヘッドタンク20の第1パイプ30より上の部分には空間が確保されており、過剰に供給された気体や光合成反応により生じた酸素は培養液から分離されて前記空間を上昇し、ヘッドタンク20の上面に設けられた抜気口21から外部に除去される。したがって、培養液に上記のような不要な気体が混入して微細藻類の増殖が妨げられるようなことがなくなる。また、余分な気体がパイプ内に留まるとその部分が乾燥して微細藻類が付着することがあるが、そのような心配もなくなる。【0020】一方、培地を貯留する培地タンク60から培地ポンプ61により培地供給パイプ62を通って、培地が、気泡ポンプ50の下側で、第1パイプ30内に注入できるようになっていて、微細藻類が増殖して微細藻類に対する培地の相対量が過少になることを防止できるようになっている。この培地の供給は連続的あるいは、間欠的におこなわれる。【0021】そして、ヘッドタンク20にはオーバーフローパイプ22が取付けられておりオーバーフローパイプ22の先端は培養液回収タンク70の内部で開口している。したがって、培地ポンプ61で培地が追加され容積が増加した微細藻類を含む培養液がヘッドタンク20のオーバーフローパイプ22の取付け高さに達すると、オーバーフローパイプ22を通って培養液回収タンク70に流入する。したがって、培養液ごと吸い出したりせず、すなわち、増殖を停止することなく、微細藻類の回収をおこなうことができる。【0022】テトラセルミス(Tetraselmis)の培養液を流速0.5 m/s (115 L/min)で循環させながら、培地を60 ml/minで連続的に供給しオーバーフローパイプ22で培養液を回収した場合には、培養液中のテトラセルミスの濃度は略0.65 g/Lで一定であった。なお、テトラセルミスは海水性であり、培地としては海水に栄養塩を加えたものを使用した。【0023】次に、第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態は第1の実施の形態に対して高温化防止のための冷却装置を追加したものである。図3がこの第2の実施の形態の構成を示す側面図であって、培養槽10の上方に配設された散水管80の複数の散水ノズル81からポンプ82で冷却水槽83から汲み上げた冷却水が散水されるようになっている。このような冷却装置で冷却することにより、夏期の屋外培養においても培養液の高温化を阻止して微細藻類の増殖阻害や死滅を防ぐことができる。【0024】例えば、日本国内で8月に、この第2の実施の形態の装置を使って冷却をおこない培養液の温度を35 ℃以下に保って、テトラセルミス(Tetraselmis)の屋外培養をおこなった例では、気泡ポンプにより培養液を流速0.5 m/s (115 L/min)で循環させた場合で、30 mg/m2/dayの微細藻類を生産することができた。【0025】【発明の効果】 各請求項に記載の発明は、光合成生物を培養するバイオリアクタであるが、光透過性の材料で形成され内部で光合成生物を含む培養液を培養する培養槽と、培養槽よりも高い位置に配置されるヘッドタンクとが第1パイプおよび第2パイプで連結され、第1パイプの途中に気泡を注入して、光合成生物を含む培養液を、培養槽とヘッドタンクの間を第1パイプおよび第2パイプを介して循環させる循環ポンプが付設され、循環ポンプが、第1パイプの外側に密着され、第1パイプと略等間隔に配置された8個以上の穴で連通される環状パイプと、該環状パイプに二酸化炭素を含む気体を送りこむ気体送給ポンプとから成る気泡ポンプであって、上記循環経路内に循環中の培養液に二酸化炭素を注入する手段が付設され、第1パイプの上端がヘッドタンク内の上側部分で上方向に向かって開口され、第2パイプの上端がヘッドタンク内の下側部分で開口され、ヘッドタンクの上部に分離された気体を外部に排出可能な抜気口が設けられている。【0026】 請求項2のようにヘッドタンクの第1パイプの開口高さよりも高いところにオーバーフローパイプが取付けられ、オーバーフローパイプの出口を培養液回収容器に向けて開放されている。 したがって、光合成生物が増殖して増量した培養液をオーバーフローパイプで回収することができ、増殖した光合成生物の回収を容易におこなうことができる。【0027】 特に、請求項4のように、培地補給手段で培地を連続的に補給し、常時培養液をオーバーフローパイプでオーバーフローさせれば、連続して光合成生物を回収できる。 特に、請求項5の発明によれば、光合成生物の温度を適切な範囲に維持するために培養槽の外面に冷却水を供給する冷却手段を有するようにすれば、培養槽は冷却手段により供給される冷却水で冷却され光合成生物が高温となって増殖速度が低下したり死滅したりすることが防止できる。【図面の簡単な説明】【図1】第1の実施の形態の側面図である。【図2】第1の実施の形態の気泡ポンプを拡大して示す図であって、(A)は軸に直角な面で切った断面図で示したものであり、(B)は側面図で示したものである。【図3】第2の実施の形態の側面図である。【符号の説明】10…水平培養槽20…ヘッドタンク21…抜気管22…オーバーフローパイプ30…第1パイプ40…第2パイプ50…気泡ポンプ51…環状管52…穴53…気体導入管55…(機械式)ポンプ60…培地タンク61…培地ポンプ62…培地供給パイプ70…培養液回収タンク80…散水管83…冷却水槽 光合成生物を培養するバイオリアクタであって、 光透過性の材料で形成され内部で光合成生物を含む培養液を培養する培養槽と、培養槽よりも高い位置に配置されるヘッドタンクとが第1パイプおよび第2パイプで連結され、 第1パイプの途中に気泡を注入して、光合成生物を含む培養液を、培養槽とヘッドタンクの間を第1パイプおよび第2パイプを介して循環させる循環ポンプが付設され、 循環ポンプが、第1パイプの外側に密着され、第1パイプと略等間隔に配置された8個以上の穴で連通される環状パイプと、該環状パイプに二酸化炭素を含む気体を送りこむ気体送給ポンプとから成る気泡ポンプであって、 第1パイプの上端がヘッドタンク内の上側部分で上方向に向かって開口され、第2パイプの上端がヘッドタンク内の下側部分で開口され、 ヘッドタンクの上部に分離された気体を外部に排出可能な抜気口が設けられる、ことを特徴とするバイオリアクタ。 ヘッドタンクの第1パイプの開口高さよりも高いところにオーバーフローパイプが取付けられ、オーバーフローパイプの出口を培養液回収容器に向けて開放されている、ことを特徴とする請求項1に記載のバイオリアクタ。 光合成生物の増殖に適した培地を補給する培地補給手段を有する、ことを特徴とする請求項2に記載のバイオリアクタ。 培地を連続的に補給し、常時培養液をオーバーフローパイプでオーバーフローさせる、ことを特徴とする請求項3に記載のバイオリアクタ。 光合成生物の温度を適切な範囲に維持するために培養槽の外面に冷却水を供給する冷却手段を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のバイオリアクタ。


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