生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_リポソームに封入されたタキサンの投与方法
出願番号:2003197879
年次:2004
IPC分類:7,A61K31/337,A61K9/127,A61K47/24,A61P11/00,A61P15/00,A61P35/00


特許情報キャッシュ

ラーマン、アクイラー JP 2004059590 公開特許公報(A) 20040226 2003197879 20030716 リポソームに封入されたタキサンの投与方法 ネオファーム、インコーポレイティッド 503216568 高島 一 100080791 ラーマン、アクイラー US 09/108,509 19980701 7 A61K31/337 A61K9/127 A61K47/24 A61P11/00 A61P15/00 A61P35/00 JP A61K31/337 A61K9/127 A61K47/24 A61P11/00 A61P15/00 A61P35/00 33 1999554625 19990629 OL 12 4C076 4C086 4C076AA19 4C076BB13 4C076BB21 4C076CC27 4C076DD59 4C076DD63 4C076DD70 4C076FF67 4C076FF68 4C086AA02 4C086BA02 4C086MA02 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA24 4C086MA56 4C086MA66 4C086NA06 4C086NA13 4C086ZB26 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はリポソームに封入されたタキサン(liposomal encapsulated taxane)の投与方法に関する。【0002】【従来の技術】パクリタキセル(paclitaxel)のようなタキサン(taxane)を、卵巣癌および乳癌のような疾患に罹患している患者に対して抗腫瘍剤として用いることが知られている。また、パクリタキセルは、放射線治療と組合わせて用いるとき、相乗作用薬剤として臨床的に作用が強力であることが示されている。パクリタキセルはユニークな作用機構と広い抗癌活性スペクトルを有する。なぜなら、パクリタキセルは微小管の分解(disassembly)よりもむしろ微小管の安定化作用を示すからである。【0003】しかしながら、パクリタキセルの水に対する溶解度が非常に低いことが、適当な投与形態を提供することを困難にしている。現在、パクリタキセルは、クレモフォールEL(Cremophor EL)(ポリエトキシ化ヒマシ油)とエタノールを50:50(vol/vol)の比率で含有するビヒクル中で調製され、投与されている。この溶液は、ヒトに投与する前に食塩水中に1:10の割合で希釈される。一旦、食塩水溶液中に希釈されたパクリタキセルの安定性はかなり低い。この薬物は24時間以内に分解するため、患者にとって薬剤の取り扱いが非常に難しくなる。この薬物は希釈によって析出するので、患者にこの薬物を注入(infusion)するためにオンラインフィルター(on−line filter)が利用されている。【0004】臨床試験においては、必ず起こるアナフィラキシー様反応の問題、呼吸困難、高血圧、および潮紅が生じている。用量制限毒性(dose−limiting toxicity)は骨髄抑制であり、このせいで、この薬物を使用するときに患者は入院する必要がある。【0005】抗ヒスタミン薬およびコルチコステロイドによる患者の前処置に依存したり、注入時間を6時間から24時間に延長することにより、パクリタキセルの心臓毒性およびアナフィラキシー様反応を予防する試みがなされてきた。米国特許第5,621,001号(Canettaら)は、卵巣癌に罹患しパクリタキセル療法を受けている患者に対し、抗腫瘍効果を維持しながら末梢神経毒性症状を軽減する方法において注入時間を延長することを開示している。この方法は、約135mg/m2のパクリタキセルを約24時間にわたって投与することを含む。パクリタキセルの投与は前回の投与の約21日後、少なくとも一回繰り返す。【0006】米国特許第5,665,761号(Canettaら)は、パクリタキセルの投与前の前処置段階を開示している。’761特許は、患者が過敏性反応を軽減または最小限にするための前処置を受けた後、約135mg/m2と約275mg/m2の間の投与量、好ましくは約135mg/m2と約175mg/m2の間の投与量を用い、6時間より短い時間、好ましくは約3時間にわたってパクリタキセルを注入する方法を提供する。例えば、急性過敏性反応および患者の死を引き起こし得るアナフィラキシー様ショックを少なくとも予防するために十分なステロイド、抗ヒスタミン薬、およびH2−拮抗剤を患者に前投薬する。米国特許第5,670,537号(Canettaら)はまた、卵巣腫瘍のようなパクリタキセル感受性腫瘍に罹患した患者へ投与するこの方法を開示している。【0007】米国特許第5,641,803号は、約135〜175mg/m2のパクリタキセルを約3時間にわたって投与する、パクリタキセルの患者への投与を開示している。このような投与時間は、一つには、短い注入時間(例えば、1時間、これはポリエトキシ化ヒマシ油を含有する従来のパクリタキセル製剤で採用されていた時間である)のせいで起こる前記の問題のいくつかを解決するために用いられたということである。【0008】従来のパクリタキセル製剤の毒性の問題を解決するための別の試みにおいて、米国特許第5,696,153号が、45〜120mg/m2のパクリタキセルを60〜180分間の時間にわたって21日の期間中に複数回投与し、それぞれの注入は4〜5日間の間隔をおいて行われる薬剤投与計画を用いることを提案している。【0009】しかしながら、このような延長された注入時間の操作、ならびに患者の抗ヒスタミン薬およびコルチコステロイドによる前処置を行っても、患者に重篤な毒性をもたらし、その毒性はしばしば致命的である。この薬物の腫瘍細胞攻撃効果を増強および/または全身毒性を低下させるために異なる薬剤送達システムが利用されている。リポソームは、抗腫瘍剤をより有効にし、毒性をより少なくするのを助けるために開発されてきた多くの担体のうちの一つである。「リポソーム」は内部水層を取り囲む脂質二重層からなる閉鎖構造である。【0010】米国特許第5,648,090号(Rahmanら)および米国特許第5,424,073号(Rahmanら)は、リポソームに封入されたパクリタキセル、またはその抗腫瘍性誘導体を用いて哺乳類における癌を治療する方法用のリポソームに封入されたパクリタキセルを提供する。’090および’073特許は、リポソーム形成材料、カルジオリピン、およびパクリタキセル、またはパクリタキセルの抗腫瘍性誘導体、またはそれらの混合物のような薬剤を含むリポソームの治療有効数;ならびに医薬的に許容される賦形剤の医薬組成物を哺乳類宿主に投与することにより、該哺乳類宿主における癌細胞の多剤耐性を調節する方法を開示している。【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明に至るまで、大半の患者が耐えうる最短の投与時間は最適には3時間であった。従って、毒性反応を誘起することなく、ヒト癌患者に高濃度のタキサンを迅速に投与する方法が要求されている。そのような方法は、タキサン療法の有効性を改善し、これまで知られていたタキサン投与方法に付随する不快感や毒性を軽減するだろう。本発明はそのような方法を提供する。【0012】【課題を解決するための手段】本発明は、相対的に高濃度のタキサンをヒト患者に短時間にわたって投与する方法を提供する。例えば、タキサンを約75〜300mg/m2の量で1時間より短い時間内にヒトに投与することができる。タキサンまたはその抗腫瘍性誘導体のユニークなリポソーム製剤がこのような治療を容易にする。本方法は、抗過敏症薬剤を用いるような前投薬を必要とせず、ヒト患者において実質的な毒性反応を伴わない。その結果、本発明は、タキサンを用いて癌を治療するための改善された方法を提供する。【0013】本発明のこれらのおよびその他の長所、ならびに他の発明の特徴は、ここに述べる発明の記載から明らかとなるだろう。【0014】本発明は、以下の好適な実施態様の詳細な説明を参照することにより最もよく理解されるだろう。【0015】【発明の実施の形態】本発明は、タキサンによる治療を必要とする患者、特にヒト患者にタキサンを投与する方法を提供する。一つには、本発明は、宿主にタキサンを送達するシステムを提供し、該送達システムは、タキサンの溶解度の問題を回避し、タキサンの溶解度を改善し、アナフィラキシー様反応および心臓毒性を回避し、遊離のタキサンを長時間注入するのではなく、ボーラス(bolus)または短時間注入としてタキサンを投与することができ、タキサンの治療有効性を高め、癌細胞における多剤耐性を調節することを特徴とする。【0016】タキサンは、リポソームに封入されたタキサンまたはその抗腫瘍性誘導体の形態で送達される。適当なタキサンまたはその誘導体であればいかなるものでも本発明の方法において使用することができる。適当なタキサンは、開示された方法に従って使用したとき前記のような利点を与える。好ましくは、タキサンはパクリタキセルである。パクリタキセルの適当な誘導体はタキサズム(taxasm)である。他の適当なタキサンは、7−エピパクリタキセル、t−アセチル パクリタキセル、10−デスアセチル−パクリタキセル、10−デスアセチル−7−エピパクリタキセル、7−キシロシルパクリタキセル、10−デスアセチル−7−グルタリルパクリタキセル、7−N,N−ジメチルグリシルパクリタキセル、7−L−アラニルパクリタキセル、タキソテール(taxotere)、およびそれらの混合物である。【0017】医薬組成物はまた適当なカルジオリピンを含有していてもよい。適当なカルジオリピンは天然源または合成源のいずれからのものでもよい。パクリタキセルのようなタキサンはこのカルジオリピンを用いるリポソーム内に封入される。カルジオリピンに加えて、タキサンはホスファチジルコリンおよびコレステロールを用いるリポソーム内に封入してもよい。このような脂質組成物はリポソーム内に該薬物を90%より多く封入できる。【0018】リポソームに封入されたタキサンはいかなる適当な方法によっても調製することができる。例えば、タキサンまたはその誘導体を適当な溶媒に溶解することができる。一般に、適当な溶媒は非極性またはわずかに極性であり、後に毒性残渣を残すことなく蒸発させることができる。適当な溶媒としては、エタノール、メタノール、クロロホルム、ブタノールまたはアセトンのような様々な溶媒を挙げることができる。カルジオリピンもまた、タキサンで説明したような適当な溶媒に溶解することができ、タキサン溶液とカルジオリピン溶液を混合することができる。残りの脂質親和性材料を適当な溶媒に溶解することができ、該溶媒はタキサン含有溶媒と同一でも異なっていてもよい。この溶媒は、クロロホルム、ブタノールのような低極性を有するか、またはn−ヘキサンのような非極性溶媒である。タキサンおよびカルジオリピンを含有する溶媒混合物を、残りの脂質親和性成分を含有する溶液と混合することができる。【0019】凍結乾燥のような適当な方法により、該混合物から溶媒を除去し、薬物を含有する乾燥脂質フィルムを得る。混合物はこの形態で、任意にN2雰囲気のような不活性ガス雰囲気下で保存される。この乾燥脂質フィルムは、−20℃のような低温で、リポソームが使用前に水和されるまで長期間保存することができる。【0020】リポソームはこの脂質フィルムにいかなる適当な溶液を加えることによっても形成することができる。典型的には、適当な溶液は極性溶液であり、好ましくは、食塩水溶液である。一旦、溶液が添加されると、混合することにより、例えば、ボルテックスミキサーで混合することによりリポソームを形成することができる。単ラメラ小胞(unilamellar vesicles)のようなより小さな小胞が望ましい場合、この溶液を音波処理することができる。ある方法において、適当な製剤は多重ラメラ小胞(multilamellar vesicles)と単ラメラ小胞の混合物であってよい。【0021】リポソームは内部水層を取り囲む脂質二重層からなる閉鎖構造である。一般に、リポソームは中性、負電荷または正電荷に荷電したリポソームであってよい。例えば、正電荷に荷電したリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびステアリルアミンを含有する溶液から形成することができる。負電荷リポソームは、例えば、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびホスファチジルセリンまたはより好ましくは、カルジオリピンを含有する溶液から形成することができる。得られた製剤の特性を変化させるために、リポソームに他の添加剤を含有させることもできる。例えば、好ましい製剤はα−トコフェロールも含有する。【0022】保存条件は変わり得る。好ましくは、脂質親和性成分の混合物を乾燥脂質フィルムとして約−20℃で保存する。一旦、水和されると、医薬組成物のリポソーム懸濁液は保存することができ、緩衝された中性pH食塩水溶液中で数時間から数ヶ月間の期間安定である(温度、パクリタキセル含有量、およびリン脂質構成成分に依存する)。【0023】担体に対する薬物の比率が高いことを特徴とするこのリポソーム薬物送達システムは、より長時間にわたって増大したレベルの血漿中薬物濃度を維持しながら、薬物動態を変化させることができる。リポソーム製剤が生物分解性であり、本質的に低毒性かつ低免疫原性であることは、血漿中の自由に浮遊する(free−floating)タキサンに関する毒性を低下させる。【0024】本発明のリポソーム製剤は、不溶性の遊離タキサンの濃度を低く維持し、従来知られていた効果と比べて不都合な毒性効果を最小限に維持する一方で、比較的安定な形態の高濃度のタキサンの注入を可能にし、標的部位に持続性の治療効果を与える薬物送達システムを提供する。例えば、封入されたパクリタキセルの注入によって、従来のパクリタキセルと比べて最高血漿中濃度がより高くなり、生体内で薬物がより長く存在し、AUC(経時的血漿中濃度の「曲線下面積」測定)がより高くなる。【0025】本発明の医薬組成物は、少なくとも50〜300mgの活性化合物/哺乳類宿主表面積m2の量で、約3時間より短い時間内に、好ましくは約1時間より短い時間内に、最も好ましくは45分以内に、実質的な毒性反応を引き起こすことなく投与することができる。例えば、70kgのヒトにおいて、体重1kg当たり約0.5〜5.0mgの活性化合物を約45分以内に安全に投与することができる。好ましくは、体重1kg当たり約1.0〜3.0mgの活性化合物を投与する。あるいは、好ましい量としては、75、135、175、250、および300mg/m2が挙げられる。【0026】リポソームに封入されたタキサンは、化学療法に付される癌細胞における多剤耐性を克服する際に実質的な、有利な効果を有する。本発明のリポソーム組成物を使用することにより、化学療法に付された癌細胞がアントラサイクリングリコシド類のような化学療法に用いられる化学療法剤に対する耐性を獲得する傾向を低下させることが可能である。この方法は、本発明のリポソームに封入されたタキサンの医薬組成物を投与プロトコールに従って宿主に投与することを含む。【0027】タキサンおよびその抗腫瘍性誘導体はいかなる形態の哺乳類の癌を治療するためにも使用することができる。そのような化合物は、微小管の形成(assembly)を促進することにより、またはチューブリン分解プロセス(tubulin disassembly process)を阻害することにより作用すると考えられている。タキサンおよびその抗腫瘍性誘導体は、哺乳類のリンパ腫、卵巣癌、乳癌、肺癌および結腸癌の治療において特に有用であり、とりわけヒトにおけるこれらの状態に有用である。【0028】本発明のリポソーム組成物は、静脈内に、腹腔内に、哺乳類の体、特にヒトの体の個別の部分(例えば、腕もしくは脚、またはヒトの場合は手)に投与することができ、あるいは腫瘍に直接注射することができる。【0029】【実施例】以下の実施例により本発明をさらに説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。【0030】実施例1パクリタキセルを、カルジオリピン、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびα−トコフェロールのリポソームに封入することができる。本実施例で説明する組成物はリポソーム内に該薬物を90%より多く封入できる。リポソーム製剤中のパクリタキセルは室温で数日間、−20℃で少なくとも5ヶ月間安定である。どの保存温度においてもパクリタキセルの分解または析出は観察されず、この製剤は本発明に従って全身的に投与するのに理想的に適していると考えられる。【0031】パクリタキセル1mg当たりの脂質の割合は、次のとおりである。1.8mg カルジオリピン9.0mg ホスファチジルコリン3.0mg コレステロール0.1mg α−トコフェリル【0032】リポソームに封入されたパクリタキセルは、以下の手順を用いて製造することができる。【0033】t−ブチルアルコ−ル8.89キログラムを12.0リットルフラスコに加え、40〜45℃に加熱する。以下の添加を、溶解するまで混合し40〜45℃で加熱して、順次行う:D−α−トコフェリル アシッド スクシナート3.412グラム、卵ホスファチジルコリン205グラム、パクリタキセル22.78グラム、テトラミリストイル カルジオリピン41.00グラム、コレステロール68.33グラム。【0034】得られた溶液を、0.22ミクロンフィルターを通して濾過する。得られた濾液を滅菌バイアルに充填し、各バイアルは約10.1グラムの濾液を含む。バイアルに栓をし、凍結乾燥する。このバイアルは使用するまで−20℃で保存することができる。【0035】必要に応じて、通常の食塩水溶液25mlを用いて乾燥脂質フィルムからリポソームを調製する。混合物を室温で約1時間かけて水和させ、その後、バイアルをボルテックスミキサーで約1分間振動させ、水浴型ソニケーターで最大周波数にて約10分間音波処理する。バイアルの内容物の適当な量を輸液バッグに移し、本発明に従って患者に注入することができる。【0036】実施例2以下の研究は、実質的な毒性反応を誘起することなく、大量のタキサンをヒトに迅速に投与することができることを実証する。血液学的毒性と非血液学的毒性の両方を評価した。さらに、本研究は、実施例1に記載のリポソーム製剤のヒト患者における用量制限毒性、最大許容用量(maximum tolerated dose)および非許容用量(untolerated dose)を決定するために用いた。【0037】実施例1と同様に、リポソーム化されたパクリタキセル(liposomal paclitaxel)を含有するバイアルを調製した。この製剤はリポソーム中にパクリタキセル1mg/mlを含有していた。バイアルの内容物を適当な投与量で輸液バッグに移し、約45分間かけて患者に投与した。【0038】本研究のために選ばれた患者は、測定可能なまたは評価可能な転移性または局所的再発性の悪性疾患を有しており、他の従来の療法では治癒または緩和の望みが大きくない患者であった。さらに、これらの患者に脊髄圧迫または癌性髄膜炎の徴候はなかった。患者は治療前4週間以内に化学療法または放射線療法を受けていなかった。以前に化学療法または放射線療法を受けたことがある患者は、本研究の治療の前に血液学的に完全に元に戻っていた。全ての患者は、ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)一般状態(performance status)が0または1であり、少なくとも3ヶ月の余命を有していた。本研究における患者は全員18歳を越えており、感染症にかかっておらず、本研究に入る3週間より前であったに違いない大きな手術の効果から回復していた。本試験の直前2週間以内に全ての患者は白血球細胞数が3000/mm3より多く、血小板数が100,000/mm3より多く、血清クレアチニンが1.8mg/dlより低いかまたはクレアチニンクリアランスが60/cc/分より高く、かつ血清ビリルビンが1.5mg/dlより低かった。【0039】治療では約45分間かけて静脈内投与した。各投与量レベルについて、少なくとも3名の患者を治療した。投与量は約90mg/m2、135mg/m2、175mg/m2、250mg/m2、および300mg/m2であり、通常の実験室的および治療的用量の変化の程度にした。この製剤を単独薬剤として与え、ステロイド、抗ヒスタミン薬またはアナフィラキシー阻害剤のような他の治療薬剤による前処置は行わなかった。治療する医師が適当と考えれば、治療を21日毎に繰り返した。各患者には単独の治療計画が適用された。【0040】血液学的毒性は、各患者から5mlの血液サンプルを採取することにより試験患者について評価した。サンプルは薬剤注入の直前に採取し、注入が終了したとき(時間=0)、次いで、注入後2、4、6、10、20、30、60、240分および24時間のときに採取した。サンプルをヘパリン加チューブに集め、充填後、静かに反転させ、確実にヘパリン加血液を混合した。各サンプルから血漿が分離するまで、バイアルを冷却しておいた。実際にできるだけ早く、サンプルを2000rpmで15分間遠心分離し、血漿層を集めた。約1または2mlの血漿をクリオチューブに移し、ふたをして、直立状態で−20℃で直ちに冷凍し、血液学的毒性分析まで保存した。非血液学的毒性および薬物有効性もまた評価した。本研究の結果を下記表Iに示す。【0041】ナショナル・キャンサー・インスティテュートにより確立された共通の毒性グレードを、薬物毒性を決定するために採用した。用量制限毒性(dose−limiting toxicity)は、第1サイクルの化学療法の間に、グレード3以上の非血液学的毒性が7日間以上現れるときと定義される。非許容用量は、少なくとも1/3から2/3の患者が用量制限毒性を有する用量レベルと定義される。最大許容用量レベルは、0/6または1/6の患者が用量制限毒性を経験し、その次に高い用量で治療した患者の少なくとも2/3または4/6が用量制限毒性を経験する用量レベルと定義される。【0042】本研究は、実質的な血液学的または非血液学的毒性反応を誘起することなく、大量のタキサンをヒトに投与することができることを実証した。非血液学的毒性は、一般に少ないが、最も高い用量レベルではより顕著になった。同様に、血液学的毒性は穏やかであったが、最も高い用量ではより顕著になった。実質的な血液学的毒性またはアナフィラキシーを誘起することなく、少なくとも300mg/m2のタキサンを45分以内にヒト患者に投与することができた。45分以内に薬物を投与すると、用量制限毒性(dose limiting toxicity)は約300mg/m2であった。この研究から非許容用量および最大許容用量は決定されなかったが、少なくとも300mg/m2であった。一例を除いて、研究した各患者において癌は進行しなかったか、または改善された。【0043】【表1】【0044】ここに挙げた全ての参考文献(特許、特許出願、および刊行物を含む)は、言及することでその全体がここに組み入れられるものである。【0045】本発明を、好適な実施態様を強調して説明してきたが、当業者には、好適な実施態様が変更され得ること、ならびに本発明はここで特別に記載された以外の方法でも実施され得ることが意図されることが自明であろう。従って、本発明は、以下の請求の範囲によって定義される発明の精神および範囲に包含される全ての変形を含むものである。 タキサンによる治療を必要とする患者にタキサンを投与する方法であって、医薬組成物を約75〜300mg/m2の量で1時間より短い時間にわたって投与することを含む方法であり、前記医薬組成物はリポソームに封入されたタキサンまたはその抗腫瘍性誘導体である方法。 前記タキサンが、パクリタキセル、7−エピパクリタキセル、t−アセチル パクリタキセル、10−デスアセチル−パクリタキセル、10−デスアセチル−7−エピパクリタキセル、7−キシロシルパクリタキセル、10−デスアセチル−7−グルタリルパクリタキセル、7−N,N−ジメチルグリシルパクリタキセル、7−L−アラニルパクリタキセル、タキソテール、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1記載の方法。 前記医薬組成物が、医薬的に許容される賦形剤をさらに含有する請求項1記載の方法。 前記医薬組成物が、カルジオリピンをさらに含有する請求項1記載の方法。 前記カルジオリピンが、天然カルジオリピンおよび合成カルジオリピンからなる群より選ばれる請求項4記載の方法。 前記タキサンの前記量が約75mg/m2である請求項1記載の方法。 前記タキサンの前記量が約135mg/m2である請求項1記載の方法。 前記タキサンの前記量が約175mg/m2である請求項1記載の方法。 前記タキサンの前記量が約250mg/m2である請求項1記載の方法。 前記タキサンの前記量が約300mg/m2である請求項1記載の方法。 前記患者が、卵巣癌、乳癌、肺癌または他の腫瘍に罹患した患者である請求項1記載の方法。 前記のリポソームに封入されたタキサンが静脈内注入により投与される請求項1記載の方法。 前記のリポソームに封入されたタキサンが45分間かけて投与される請求項12記載の方法。 前記のリポソームに封入されたタキサンの前記投与が、21日ごとに少なくとも1回繰り返される請求項12記載の方法。 前記のリポソームに封入されたタキサンの前記投与が癌に罹患した患者への腹腔内投与である請求項1記載の方法。 前記のリポソームに封入されたタキサンの前記投与が結腸癌に罹患した患者への腹腔内投与である請求項15記載の方法。 実質的な毒性反応を誘起することなく、大量のリポソーム化されたタキサンをヒトに迅速に投与することを含む、タキサンでヒトを治療する方法。 リポソーム化されたタキサンを静脈内投与する請求項17記載の方法。 ステロイド、抗ヒスタミン薬または他の治療薬剤によって前処置することなく、リポソーム化されたタキサンを単独薬剤として投与する請求項17記載の方法。 実質的な非血液学的毒性が誘起されない請求項17記載の方法。 実質的なアナフィラキシーが誘起されない請求項17記載の方法。 大量のリポソーム化されたタキサンが約75〜300mg/m2の範囲である請求項17記載の方法。 大量のリポソーム化されたタキサンが約90〜300mg/m2の範囲である請求項17記載の方法。 大量のリポソーム化されたタキサンが約135〜300mg/m2の範囲である請求項17記載の方法。 大量のリポソーム化されたタキサンが約175〜300mg/m2の範囲である請求項17記載の方法。 大量のリポソーム化されたタキサンが約175〜250mg/m2の範囲である請求項17記載の方法。 大量のリポソーム化されたタキサンが約250mg/m2である請求項17記載の方法。 リポソーム化されたタキサンを3時間より短い時間内に迅速に投与する請求項17記載の方法。 リポソーム化されたタキサンを1時間より短い時間内に迅速に投与する請求項17記載の方法。 リポソーム化されたタキサンを約45分以内に迅速に投与する請求項17記載の方法。 実質的な血液学的毒性または非血液学的毒性を誘起することなく、大量のリポソーム化されたタキサンをヒトに迅速に投与する工程を繰り返すことをさらに含む、請求項17記載の方法。 繰り返す工程が21日以内に行われる請求項31記載の方法。 約45分以内に投与すると、少なくとも約300mg/m2の用量制限毒性を有する、リポソーム化されたタキサン製剤の約175〜300mg/m2を約45分以内にヒトに静脈内投与することを含む、タキサンでヒトを治療する方法。 【解決手段】リポソームに封入されたタキサンまたはその抗腫瘍性誘導体またはそれらの混合物が提供され、これは治療効果が高められた癌の治療方法を実施するために用いられる。【効果】このリポソームに封入されたパクリタキセルは、患者に、特にヒト患者に、実質的な毒性を誘起することなく1時間より短い時間内に投与することを可能にする。【選択図】   なし


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