タイトル: | 公開特許公報(A)_尿検体の採取・保存方法 |
出願番号: | 2003195628 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,G01N1/10,G01N1/00,G01N33/48 |
国宗 範彰 馬場 茂明 亀野 靖郎 JP 2004029028 公開特許公報(A) 20040129 2003195628 20030711 尿検体の採取・保存方法 株式会社クニムネ 390003609 辻本 一義 100072213 国宗 範彰 馬場 茂明 亀野 靖郎 7 G01N1/10 G01N1/00 G01N33/48 JP G01N1/10 V G01N1/00 101H G01N33/48 F 6 1 1999283107 19991004 OL 9 2G045 2G052 2G045AA15 2G045BB05 2G045CB03 2G045HA06 2G045JA07 2G052AA32 2G052AD06 2G052AD26 2G052BA14 2G052CA12 2G052DA27 2G052EA03 【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、臨床診断分野の尿検査において、採取した尿検体を変性させずに長時間保存することを可能にするための方法に関するものである。【0002】【従来の技術】尿検査は、被験者に対して検体採取時の負担を与えずに測定することができるため、外来初診時及び集団検診時でのスクリーニング検査や経過観察の日常検査等において広く用いられている。【0003】被験者から採取した尿検体は、内因性あるいは外因性の細菌や、酸素及び光等により比較的短時間で変性するため、採取後3〜4時間以内に測定するのが好ましいとされている。尿検体を採取後3〜4時間以上放置する場合は、密閉状態で冷蔵あるいは冷凍状態で保存する必要があり、集団検診などにおける大量の尿検体を検査する際には、一般的に冷蔵あるいは冷凍保存し、検査時に尿検体を常温状態に戻した後に測定を行う。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記尿検体は、内因性あるいは外因性の細菌により、外気中にそのまま放置しておくことで細菌が繁殖し、尿検体中の成分が変化してしまうことがある。【0005】さらに、尿検体中には酸素や光に対して不安定な成分が存在するため、外気中に放置することで正確な測定ができなくなることがある。【0006】特に、集団検診のように大量の尿検体を測定する場合、短時間内で測定を行うために測定者及び測定装置を常駐させるか、尿検体を冷蔵あるいは冷凍状態で密栓保管し、測定時に解凍するといった非効率的な選択をする必要が生じる。【0007】また、測定手段を所有しない地域あるいは施設で採取された尿検体は、必然的に冷蔵あるいは冷凍状態で密栓保管するだけでなく、測定できる施設へ輸送する際にも、その状態を維持するといった非経済的な輸送方法が必要となってくる。【0008】そこで、この発明は、上記従来の課題を解決するものであり、採取した尿検体を常温状態で数日間保存しても、尿検体中の成分が変化することなく、正確な測定が行えると共に、集団検診の際にも採取した尿検体を冷蔵あるいは冷凍などの処理を施すことなく、簡便に輸送して検査することが可能な尿検体の採取・保存方法を提供することを目的としてしてなされたものである。【0009】【課題を解決するための手段】そのため、この発明の尿検体の採取・保存方法は、採取した尿検体をろ過フィルターに通してろ過滅菌を行い、減圧密閉された回収容器の引圧により、その回収容器に回収するようにしている。【0010】そして、この発明の尿検体の採取・保存方法において、ろ過フィルターを、尿中被検成分の吸着性が低い材質とし、細菌を通さず検体をろ過できる孔径にしたものとしている。【0011】さらに、この発明の尿検体の採取・保存方法において、ろ過フィルターの孔径を、0.05μm〜0.2μmにしている。【0012】また、この発明の尿検体の採取・保存方法において、回収容器を遮光容器にしている。【0013】さらにまた、この発明の尿検体の採取・保存方法において、回収容器を、0.1気圧〜0.5気圧に減圧密閉したものとしたり、回収容器内を不活性ガスで充満させてから、減圧密閉状態にしたものとしている。【0014】このようにしたこの発明の尿検体の採取・保存方法によって、採取・保存された尿検体は、ろ過滅菌が行われると共に、外気からの細菌の汚染や酸素及び光の影響による尿中成分の変性を防ぐことができ、冷蔵や冷凍などの処理をしなくても長時間保存することが可能となる。【0015】【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。【0016】先ず、この発明の尿検体の採取・保存方法に用いる器具は、図1、3に示すように、尿検体を採取する採尿カップ1と、尿検体のろ過フィルター2を保持したフィルターホルダー3と、栓体4によって減圧密閉された回収容器5とからなる。【0017】図1に示したものでは、前記フィルターホルダー3は、内部にろ過フィルター2を保持する空間S1 を有し、上部の検体取り込み側と下部の送り出し側にそれぞれ空間S1 に連通する注射針6を取り付けたものとしている。なお、注射針6の周囲は、薄手のゴムキャップ7で覆われており、注射針6から採尿後の尿が漏れ出たり、注射針6を手指等に突き刺して怪我をしないようにしている。【0018】したがって、図1に示したような尿検体の採取・保存器具を用いて、この発明の尿検体の採取・保存方法を実施すると、図2に示したように、フィルターホルダー3の上部に取り付けた注射針6を、尿検体を採取した採尿カップ1の底面1aに突き刺し、フィルターホルダー3の下部に取り付けたもう一方の注射針6を減圧密閉された回収容器5の栓体4に突き刺すことによって、引圧により採尿カップ1に採取した尿検体はろ過フィルター2を通り、回収容器5へ流入して回収されることになる。【0019】図3に示したものでは、前記フィルターホルダー3は、内部にろ過フィルター2を保持する空間S1 を有し、上部の検体取り込み側には採尿カップ1の底孔1bと連通する連通孔8が設けられ、下部の送り出し側にはフィルターホルダー3の空間S1 に連通する注射針6を取り付けたものとしている。なお、注射針6の周囲は、前記図1に示したものと同様に薄手のゴムキャップ7で覆われており、注射針6から採尿後の尿が漏れ出たり、注射針6を手指等に突き刺して怪我をしないようにしている。また、採尿カップ1の底部には、フィルターホルダー3を設置できる空間S2 を設け、このフィルターホルダー3が採尿カップ1の底部から突き出ないようにしている。【0020】したがって、図3に示したような尿検体の採取・保存器具を用いて、この発明の尿検体の採取・保存方法を実施すると、図4に示したように、フィルターホルダー3の下部に取り付けた注射針6を、減圧密閉された回収容器5の栓体4に突き刺すことによって、引圧により採尿カップ1に採取した尿検体はろ過フィルター2を通り、回収容器5へ流入して回収されることになる。【0021】前記採尿カップ1は、注射針6を刺して尿検体を回収することが可能であり、極端に液体漏れを起こさないものであれば、形状や材質は特に限定されない。【0022】前記フィルターホルダー3内に保持したろ過フィルター2は、蛋白質等の尿中被検成分の吸着性が低いセルロースアセテートやポリスルホン或いはポリエーテルスルホン等を材質とし、孔径は細菌を通さず検体をスムーズにろ過できるように0.05μm〜0.2μmであるのが好ましい。【0023】前記回収容器5は、空気を遮断するような材質及び構造となっており、一度容器内を窒素ガス等の不活性ガスで充満させ、減圧状態にして、合成ゴムなどの栓体4によって密栓されている。回収容器5は、尿検体がこの回収容器5内に充分量回収できる程度に減圧する必要があり、極端な減圧は圧力の維持の効率や、容器の耐久性に影響を与えるので、材質にもよるが、回収容器5内の圧力は0.1気圧〜0.5気圧にするのが好ましい。【0024】また、回収容器5の大きさや形状は、一般的な尿検査装置に装着できるような、試験管形状やビン形状が好ましいが、特に限定されることはない。さらに、回収容器5は、遮光機能を持たせたものとすれば、回収した尿検体への光の影響を軽減することができるので好ましい。【0025】【実施例】以下、この発明を実施例に基づいて具体的に説明する。【0026】図3に示す尿検体の採取・保存器具を用いて、この発明の尿検体の採取・保存方法を実施し、0〜7日後の尿検体中の成分を測定した。【0027】先ず、採尿カップ1に尿検体A〜Eをそれぞれ採取する。そして、それぞれのフィルターホルダー3の下部に取り付けた注射針6を、減圧密閉された回収容器5の栓体4に突き刺す。すると、回収容器5の引圧により、採尿カップ1に採取した尿検体は、ろ過フィルター2を通り、回収容器5へ流入する。その後、栓体4に突き刺した注射針6を引き抜き、栓体4をそのままにした状態で0〜7日間、室温で保存した。なお、ろ過フィルター2は、セルロースアセテートを材質にした孔径0.2μm、直径50mmのアドバンテック社製フィルターを用いた。また、回収容器5は、ゴム栓により栓をし、0.2気圧に減圧密閉した褐色プラスチックの試験管とした。【0028】一方、比較例として、前記採尿カップ1に採取した尿検体A〜Eの残りを、何の処理もしないまま褐色プラスチックの試験管に回収し、ゴム栓をした状態で0〜7日間、室温で保存した。【0029】それぞれの検体について、栄研化学株式会社製尿検査装置(US−3100)を用いて、保存直後、2日後、4日後、7日後に尿中成分を測定した。測定結果は表1〜5に示す。【0030】【表1】【0031】【表2】【0032】【表3】【0033】【表4】【0034】【表5】表1〜5に示した測定結果より、比較例では、色調、比重、pH、糖、蛋白、亜硝酸のいくつかの項目の測定値で、1〜7日の間に大きな変動があったが、この発明の実施例では、上記項目の測定値で、1〜7日の間に変動は確認されなかった。【0035】【発明の効果】この発明は、以上に述べたように構成されているので、採取した尿検体を常温状態で数日間保存しても、尿検体中の成分が変化することなく、正確な測定が行えると共に、集団検診の際にも採取した尿検体を冷蔵あるいは冷凍などの処理を施すことなく、簡便に輸送して検査することが可能なものとなった。【図面の簡単な説明】【図1】この発明の尿検体の採取・保存方法に用いる器具の一例を示す断面図である。【図2】図1に示す尿検体の採取・保存器具の使用状態を示す断面図である。【図3】この発明の尿検体の採取・保存方法に用いる器具の他の例を示す断面図である。【図4】図3に示す尿検体の採取・保存器具の使用状態を示す断面図である。【符号の説明】2 ろ過フィルター5 回収容器 採取した尿検体をろ過フィルターに通してろ過滅菌を行い、減圧密閉された回収容器の引圧により、その回収容器に回収するようにしたことを特徴とする尿検体の採取・保存方法。 ろ過フィルターを、尿中被検成分の吸着性が低い材質とし、細菌を通さず検体をろ過できる孔径にしたことを特徴とする請求項1に記載の尿検体の採取・保存方法。 ろ過フィルターの孔径を、0.05μm〜0.2μmにしたことを特徴とする請求項1に記載の尿検体の採取・保存方法。 回収容器を遮光容器にしたことを特徴とする請求項1に記載の尿検体の採取・保存方法。 回収容器を、0.1気圧〜0.5気圧に減圧密閉したことを特徴とする請求項1に記載の尿検体の採取・保存方法。 回収容器内を不活性ガスで充満させてから、減圧密閉状態にしたことを特徴とする請求項1に記載の尿検体の採取・保存方法。 【課題】被験者から採取した尿検体は、内因性あるいは外因性の細菌により、外気中にそのまま放置しておくことで細菌が繁殖し、尿検体中の成分が変化してしまうことがある。さらに、尿検体中には酸素や光に対して不安定な成分が存在するため、外気中に放置することで正確な測定ができなくなることがある。【解決手段】この発明の尿検体の採取・保存方法は、採取した尿検体をろ過フィルターに通してろ過滅菌を行い、減圧密閉された回収容器の引圧により、その回収容器に回収するようにしている。そして、この発明の尿検体の採取・保存方法において、ろ過フィルターを、尿中被検成分の吸着性が低い材質とし、細菌を通さず検体をろ過できる孔径にしたものとしている。【選択図】 図1