タイトル: | 公開特許公報(A)_ジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法 |
出願番号: | 2003187965 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12P7/42 |
莪山 眞與 田村 豊 JP 2005021034 公開特許公報(A) 20050127 2003187965 20030630 ジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法 三菱瓦斯化学株式会社 000004466 永井 隆 100117891 莪山 眞與 田村 豊 7 C12P7/42 C12P7/42 C12R1:01 C12P7/42 C12R1:02 JP C12P7/42 C12P7/42 C12R1:01 C12P7/42 C12R1:02 6 OL 8 4B064 4B064AD32 4B064CA02 4B064CB13 4B064CC03 4B064CD06 4B064DA16 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、一般式1で示されるトリス(ヒドロキシメチル)誘導体のメチロール基を酸化して一般式2で示されるジメチロ−ルカルボン酸誘導体を製造する方法に関する。さらに詳しくは、一般式1で示されるトリス(ヒドロキシメチル)誘導体のメチロール基に対する酸化能を持つ、キサントバクタ−(Xanthobacter)属、ミコプラナ(Mycoplana)属、アセトバクタ−(Acetobacter)属、又はグルコノバクタ−(Gluconobacter)属に属する細菌を用いた、微生物酸化法によるトリス(ヒドロキシメチル)誘導体からのジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法に関する。【0002】ジメチロ−ルカルボン酸誘導体は、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、各種化成品中間体として極めて重要な化合物である。【0003】【従来の技術】トリス(ヒドロキシメチル)誘導体を酸化してジメチロ−ルカルボン酸誘導体を製造する方法としては、過酸化水素を用いた化学的酸化による方法(例えば、特許文献1参照)、ロドコッカス(Rhodococcus)属又はアグロバクテリウム(Agrobacterium)属に属する細菌を用いた微生物酸化による方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。しかし、過酸化水素を用いた化学的酸化では、副反応による過酸化物の生成を伴うためジメチロ−ルカルボン酸誘導体の収率が低く、しかも、酸化剤の取り扱いに細心の注意を要し、余剰となった酸化剤の処理に手間と経費を要すると言う問題があった。一方、ロドコッカス(Rhodococcus)属又はアグロバクテリウム(Agrobacterium)属に属する細菌を用いた微生物酸化による方法は、反応条件が穏やかである点では優れた特性を有するが、反応収率、選択率が充分ではなく工業的に実施する方法としては効率的に問題を有するものであった。このような背景から、微生物酸化によって、高い収率、選択率でジメチロ−ルカルボン酸誘導体を製造できる工業的に適用可能な方法の提供が望まれていた。【0004】【特許文献1】特開平11−217351号公報【特許文献2】特開平9−12506号公報【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来技術における上記のような課題を解決し、微生物の酸化能力を利用して、トリス(ヒドロキシメチル)誘導体からジメチロ−ルカルボン酸誘導体を高い収率及び選択率で生産できる工業的に優れた製造方法を提供することにある。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、トリス(ヒドロキシメチル)誘導体を酸化し、ジメチロ−ルカルボン酸に変換する能力を持った微生物について鋭意検討を重ねた結果、キサントバクタ−(Xanthobacter)属、ミコプラナ(Mycoplana)属、アセトバクタ−(Acetobacter)属、グルコノバクタ−(Gluconobacter)属に属する細菌を用いることによって、顕著に高い収率及び選択率でトリス(ヒドロキシメチル)誘導体からジメチロ−ルカルボン酸誘導体を製造できることを見出し、本発明に到達した。【0007】即ち、本発明は、一般式1で示されるトリス(ヒドロキシメチル)誘導体のメチロ−ル基を酸化し、一般式2で示されるジメチロ−ルカルボン酸誘導体に変換する優れた性能を有するキサントバクタ−(Xanthobacter)属、ミコプラナ(Mycoplana)属、アセトバクタ−(Acetobacter)属、又はグルコノバクタ−(Gluconobacter)属に属する細菌の培養液、菌体、又は菌体処理物を用いる、(1)〜(6)に示すジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法に関する。(1)一般式1で示されるトリス(ヒドロキシメチル)誘導体を酸化して一般式2で示されるジメチロ−ルカルボン酸誘導体を製造するに当たって、メチロ−ル基を酸化する能力有する、キサントバクタ−(Xanthobacter)属、ミコプラナ(Mycoplana)属、アセトバクタ−(Acetobacter)属、又はグルコノバクタ−(Gluconobacter)属に属する細菌を用いることを特徴とする、ジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法。但し、一般式1及び2中のRは水素原子、アミノ基、アルキル基、又は置換アルキル基である。【化3】【化4】(2)キサントバクタ−属に属する細菌が、キサントバクタ−・オウトトロフィカス(Xanthobacter autotrophicus)である、(1)記載のジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法。(3)ミコプラナ属に属する細菌が、ミコプラナ・ジモルファ(Mycoplana dimorpha)、又はミコプラナ・ブラタ(Mycoplana bullata)である、(1)記載のジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法。(4)アセトバクタ−属に属する細菌が、アセトバクタ−・リクファシエンス(Acetobacter liquefaciens)である、(1)記載のジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法。(5)グルコノバクタ−属に属する細菌が、グルコノバクタ−・インダストリウス(Gluconobacter industrius)、グルコノバクタ−・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、グルコノバクタ−・ロズウス(Gluconobacter roseus)、グルコノバクタ−・サボキシダンス(Gluconobacter suboxydans)、グルコノバクタ−・セリナス(Gluconobacter cerinus)、グルコノバクタ−・スクレロイデウス(Gluconobacter scleroideus)、グルコノバクタ−・アルビダス(Gluconobacter albidus)、グルコノバクタ−・ジオキシアセトニカス(Gluconobacter dioxyacetonicus)、グルコノバクタ−・グルコニカス(Gluconobacter gluconicus)、又はグルコノバクタ−・ノノキシグルコニカス(Gluconobacter nonoxygluconicus)である、(1)記載のジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法。(6)キサントバクタ−(Xanthobacter)属、ミコプラナ(Mycoplana)属、アセトバクタ−(Acetobacter)属、又はグルコノバクタ−(Gluconobacter)属に属する細菌を培地中で培養し、得られた培養液、菌体、又は菌体処理物を一般式1で表されるトリス(ヒドロキシメチル)誘導体に作用させる、(1)〜(5)の何れかに記載のジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法。【0008】【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細について説明する。前記の一般式1、2で示されるトリス(ヒドロキシメチル)誘導体、ジメチロ−ルカルボン酸誘導体のRは水素原子、アミノ基、アルキル基、又は置換アルキル基であればよく、特に制限はない。本発明の一般式1で示されるトリス(ヒドロキシメチル)誘導体の代表的な例としては、トリメチロ−ルプロパンなどがある。【0009】本発明のトリス(ヒドロキシメチル)誘導体の微生物酸化に使用される微生物は、高い収率と選択率でジメチロ−ルカルボン酸を生成せしめる、キサントバクタ−(Xanthobacter)属、ミコプラナ(Mycoplana)属、アセトバクタ−(Acetobacter)属、又はグルコノバクタ−(Gluconobacter)属に属する菌株である。これら各属に属する菌株のうち、キサントバクタ−(Xanthobacter)属に属するものとしてはキサントバクタ−・オウトトロフィカス(Xanthobacter autotrophicus) ATCC 35674が、ミコプラナ(Mycoplana)属に属するものとしてはミコプラナ・ジモルファ(Mycoplana dimorpha) ATCC 21759、ミコプラナ・ブラタ(Mycoplana bullata) ATCC 4278が、アセトバクタ−(Acetobacter)属に属するものとしてはアセトバクタ−・リクファシエンス(Acetobacter liquefaciens) IAM 1835 が、グルコノバクタ−(Gluconobacter)属に属するものとしてはグルコノバクタ−・インダストリウス(Gluconobacter industrius) ATCC 12302、グルコノバクタ−・オキシダンス(Gluconobacter oxydans) ATCC 33446、グルコノバクタ−・ロズウス(Gluconobacter roseus) ATCC 14960、グルコノバクタ−・サボキシダンス(Gluconobacter suboxydans) ATCC 621、グルコノバクタ−・セリナス(Gluconobacter cerinus) ATCC 12303、グルコノバクタ−・スクレロイデウス(Gluconobacter scleroideus) IAM 1842、グルコノバクタ−・アルビダス(Gluconobacter albidus) IFO 3251、グルコノバクタ−・ジオキシアセトニカス(Gluconobacter dioxyacetonicus) IFO 3271、グルコノバクタ−・グルコニカス(Gluconobacter gluconicus) ATCC 9324、グルコノバクタ−・ノノキシグルコニカス(Gluconobacter nonoxygluconicus) ATCC 43983が好適な菌株として挙げられる。なお、これらの菌株は何れも公知のものであり、各分譲機関より容易に入手することができる。【0010】これらの微生物は、一般式1に示すトリス(ヒドロキシメチル)誘導体のメチロール基を酸化して一般式2に示すジメチロ−ルカルボン酸誘導体に変換する能力を有する限り、野生株、変異株、若しくは細胞融合又は遺伝子操作法などの遺伝子的手法により誘導される組み換え株など、何れの株でも用いることができる。【0011】これらの微生物の培養は、通常資化し得る炭素源、窒素源、各微生物に必須の無機塩、栄養等を含有させた培地を用いて行われる。培養時のpHは、4〜8の範囲が、温度は20〜35℃の範囲が好ましい。培養は1日〜1週間程度好気的に行われる。このようにして培養した微生物は、培養液、分離菌体、菌体破砕物、更には精製した酵素として反応に使用される。また、常法に従って、菌体又は酵素を固定化して使用することもできる。【0012】トリス(ヒドロキシメチル)誘導体の微生物酸化反応の条件は、反応液中のトリス(ヒドロキシメチル)誘導体の濃度が0.05〜10wt%の範囲であることが好ましく、1〜5wt%の範囲であることがより好ましい。トリス(ヒドロキシメチル)誘導体に対する微生物の使用量は、乾燥菌体として重量比0.005〜5の範囲が好ましく、0.1〜2の範囲がより好ましい。反応温度は15〜40℃の範囲が好ましく、25〜30℃の範囲がより好ましい。反応時間は1時間〜14日の範囲が好ましく、1日間〜7日間がより好ましい。反応pHは4〜8が好ましく、5〜7の範囲がより好ましい。また、反応は撹拌下、好気的に行なうことが望ましい。【0013】本発明におけるトリス(ヒドロキシメチル)誘導体の微生物酸化反応で生成したジメチロ−ルカルボン酸誘導体は、反応終了後、菌体を反応液から遠心分離又は濾過膜などの通常の固液分離手段により分離し、例えば、分離液を濃縮して、ジメチロ−ルカルボン酸誘導体を結晶化させるといった方法により、容易に分離、精製することができる。【0014】【実施例】以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例1次の組成の培地を調製し、この培地300mlを1L三角フラスコに入れ、滅菌後、キサントバクタ−・オウトトロフィカス(Xanthobacter autotrophicus) ATCC 35674を接種し、30℃で2日間振とう培養を行った。培地組成(pH7.0)ソルビト−ル 50gバクトペプトン 10g酵母エキス 5g蒸留水 1000ml培養終了時、培養液の濁度は、660nmでの吸光度で2.7であった。この培養液12.6mlから、遠心分離により集菌し、トリメチロ−ルプロパンを0.1g含む50mMリン酸カリウムバッファ−を20ml加え反応液を調製した。反応液の濁度は、660nmでの吸光度で1.7であった。これを30℃で25日間振とうした。反応液を高速液体クロマトグラフィ−により分析した結果、トリメチロ−ルプロパンの反応率は87%であり、ジメチロ−ルブタン酸の選択率は98%であった。【0015】実施例2微生物をミコプラ−ナ ジモルファ (Mycoplana dimorpha) ATCC 21759に代えてその他は実施例1と同様な操作を行って培養した。培養終了時、培養液の濁度は、660nmでの吸光度で5.4であった。この培養液148.1mlから、遠心分離により集菌し、トリメチロ−ルプロパンを0.1g含む50mMリン酸カリウムバッファ−を20ml加え反応液を調製した。反応液の濁度は、660nmでの吸光度で40であった。これを30℃で14日間振とうした。反応液を高速液体クロマトグラフィ−により分析した結果、トリメチロ−ルプロパンの反応率は94%であり、ジメチロ−ルブタン酸の選択率は97%であった。【0016】実施例3微生物をグルコノバクタ−・インダストリウス(Gluconobacter industrius) ATCC 12302に代えて実施例1と同様な培地で、この培地300mlを入れた1L三角フラスコを20個使用して25℃で3日間振とう培養した。培養終了時、培養液の濁度は、660nmでの吸光度で3.5であった。この培養液4571.4mlから、遠心分離により集菌し、1%トリメチロ−ルプロパン水溶液1000mlを加え反応液を調製した。反応液の濁度は、660nmでの吸光度で16であった。反応液を発酵槽に入れて空気を吹き込みながら、アンモニア水を添加してpH6.8にコントロ−ルし、25℃で7日間撹拌して反応を行った。反応液を高速液体クロマトグラフィ−により分析した結果、トリメチロ−ルプロパンの反応率は99%であり、ジメチロ−ルブタン酸の選択率は99%であった。【0017】実施例4微生物をグルコノバクタ−・インダストリウス(Gluconobacter industrius) ATCC 12302に代えて実施例1と同様な培地を用いて25℃で3日間振とう培養した。培養終了時、培養液の濁度は、660nmでの吸光度で3.5であった。この培養液74.3mlから、遠心分離により集菌し、トリメチロ−ルエタンを0.2g含む100mMリン酸カリウムバッファ−を20ml加え反応液を調製した。反応液の濁度は、660nmでの吸光度で13であった。これを25℃で3日間振とうした。反応液を高速液体クロマトグラフィ−により分析した結果、トリメチロ−ルエタンの反応率は85%であり、ジメチロ−ルプロパン酸の選択率は99%であった。【0018】【発明の効果】微生物酸化法に用いる生体触媒として、本発明のキサントバクタ−(Xanthobacter)属、ミコプラナ(Mycoplana)属、アセトバクタ−(Acetobacter)属、又はグルコノバクタ−(Gluconobacter)属に属する細菌を用いることにより、トリス(ヒドロキシメチル)誘導体よりジメチロ−ルカルボン酸誘導体を極めて高い収率と選択率で製造することが可能となり工業の発展に寄与する。 一般式1で示されるトリス(ヒドロキシメチル)誘導体を酸化して一般式2で示されるジメチロ−ルカルボン酸誘導体を製造するに当たって、メチロ−ル基を酸化する能力有する、キサントバクタ−(Xanthobacter)属、ミコプラナ(Mycoplana)属、アセトバクタ−(Acetobacter)属、又はグルコノバクタ−(Gluconobacter)属に属する細菌を用いることを特徴とする、ジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法。但し、一般式1及び2中のRは水素原子、アミノ基、アルキル基、又は置換アルキル基である。 キサントバクタ−属に属する細菌が、キサントバクタ−・オウトトロフィカス(Xanthobacter autotrophicus)である、請求項1記載のジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法。 ミコプラナ属に属する細菌が、ミコプラナ・ジモルファ(Mycoplana dimorpha)、又はミコプラナ・ブラタ(Mycoplana bullata)である、請求項1記載のジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法。 アセトバクタ−属に属する細菌が、アセトバクタ−・リクファシエンス(Acetobacter liquefaciens)である、請求項1記載のジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法。 グルコノバクタ−属に属する細菌が、グルコノバクタ−・インダストリウス(Gluconobacter industrius)、グルコノバクタ−・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、グルコノバクタ−・ロズウス(Gluconobacter roseus)、グルコノバクタ−・サボキシダンス(Gluconobacter suboxydans)、グルコノバクタ−・セリナス(Gluconobacter cerinus)、グルコノバクタ−・スクレロイデウス(Gluconobacter scleroideus)、グルコノバクタ−・アルビダス(Gluconobacter albidus)、グルコノバクタ−・ジオキシアセトニカス(Gluconobacter dioxyacetonicus)、グルコノバクタ−・グルコニカス(Gluconobacter gluconicus)、又はグルコノバクタ−・ノノキシグルコニカス(Gluconobacter nonoxygluconicus)である、請求項1記載のジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法。 キサントバクタ−(Xanthobacter)属、ミコプラナ(Mycoplana)属、アセトバクタ−(Acetobacter)属、又はグルコノバクタ−(Gluconobacter)属に属する細菌を培地中で培養し、得られた培養液、菌体、又は菌体処理物を一般式1で表されるトリス(ヒドロキシメチル)誘導体に作用させる、請求項1〜5の何れかに記載のジメチロ−ルカルボン酸誘導体の製造方法。 【課題】微生物を利用してトリス(ヒドロキシメチル)誘導体からジメチロ−ルカルボン酸誘導体を製造する収率及び選択率に優れた方法を提供する。【解決手段】トリス(ヒドロキシメチル)誘導体を酸化してジメチロ−ルカルボン酸誘導体を生成する能力を有する微生物として、キサントバクタ−(Xanthobacter)属、ミコプラナ(Mycoplana)属、アセトバクタ−(Acetobacter)属、グルコノバクタ−(Gluconobacter)属に属する細菌を培地中で培養し、得られた培養液、菌体または菌体処理物にトリス(ヒドロキシメチル)誘導体を作用させ、ジメチロ−ルカルボン酸誘導体を製造する。【選択図】 なし