生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_リン脂質水分散組成物の製造方法及び水性化粧料
出願番号:2003170143
年次:2005
IPC分類:7,A61K7/00


特許情報キャッシュ

田村 佳子 金光 智行 JP 2005002070 公開特許公報(A) 20050106 2003170143 20030616 リン脂質水分散組成物の製造方法及び水性化粧料 キユーピー株式会社 000001421 田村 佳子 金光 智行 7 A61K7/00 JP A61K7/00 C A61K7/00 E A61K7/00 M 4 OL 8 4C083 4C083AB032 4C083AC112 4C083AC172 4C083AC581 4C083AC582 4C083AD112 4C083AD571 4C083AD572 4C083AD642 4C083DD27 4C083DD39 4C083EE01 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、酸性を呈する酸性原料を含有しているにも拘わらず長期間にわたりリン脂質の沈殿物が生じ難く安定性に優れたリン脂質水分散組成物の製造方法及び当該リン脂質水分散組成物を配合した水性化粧料に関する。【0002】【従来の技術】ジアシルグリセロリン脂質からなるリン脂質は、リン酸基を中心とした親水基と2本の脂肪酸残基からなる疎水基を有している。このような構造を有するリン脂質を水に分散させると、リン脂質の疎水基同士が向かい合い層を成した脂質二重層であるラメラ構造を形成すると共に、このラメラ構造が中心部に水相を閉じ込めた閉鎖小胞、いわゆるリポソームを一般的に形成することが知られている。リポソームは中心部に水相を有し、水溶性物質を内包できることから、医薬品におけるドラッグデリバリーシステム(DDS)としての応用が検討されている。また、化粧水、美容液等、水を主体とした水性化粧料においても、生理活性を有する水溶性原料の効果増強や、リポソームによる保湿性の改善等から水性化粧料への応用も検討されている。【0003】生理活性を有する水溶性の化粧品原料としては、例えば、アスコルビン酸−2グルコシド、シアル酸、コージ酸等がある。これらの化粧品原料は、いずれも酸性を呈する物質であることから、当該原料を含有した水性化粧料は、一般的に水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ性pH調整剤で生理活性物質の安定性や皮膚のpH等を考慮しpH調整されており、おおよそ弱酸から弱アルカリを呈している。【0004】しかしながら、前記酸性を呈する生理活性物質を有効量含有させて水酸化カリウム等でpH調整した水性化粧料にジアシルグリセロリン脂質を分散させると、保存中にリン脂質の沈殿を生じ、保存安定性で問題があった。特に、脂肪酸残基の不飽和結合を飽和結合に変換し酸化安定を向上させた水素添加卵黄リン脂質や水素添加大豆リン脂質等、飽和度の程度を示すヨウ素価が10以下のジアシルグリセロリン脂質を分散させた場合に沈殿を生じやすい傾向にあった。【0005】そのため、前記酸性を呈する生理活性物質を含有しジアシルグリセロリン脂質を分散させた保存安定性に優れた水性化粧料を得るためには、前記生理活性物質を極僅か含有させる方法しかなく、生理活性物質を有効量含有させた水性化粧料は実用化に至っていなかった。【0006】そこで、本発明者等はその沈殿の原因を調べたところ、前記生理活性物質を有効量含有させて、水酸化カリウム等でpH調整した水性化粧料は、電気伝導度が0.5mS/cm以上と化粧料全体の導電性が高く、解離するイオン性物質が多いことが判った。【0007】リポソームの表面は、一般的にマイナスを帯びたゼータ層を有している。このゼータ層は厚いほどマイナスの荷電を強く帯びており、リポソーム同士が反発し凝集し難くなる。しかしながら、上述のように導電性が高く、イオン性物質が多くなると、ゼータ層が薄くなり、リポソーム同士の反発力が弱まる。したがって、上述したジアシルグリセロリン脂質の沈殿の原因は、この反発力が弱くなることにより、リポソーム同士が凝集し、遂には、沈殿を生じたのではないかと推察される。【0008】リポソームに関する研究は種々行われており、安定化方法についても提案されている。例えば、特開平6−336442号公報(特許文献1)には、安定化剤として酸性を呈するヒドロキシ酸又はその塩とアミノ酸又はその塩とを含有したリポソーム水分散液が提案されている。【0009】しかしながら、特許文献1の実施例等で開示のリポソーム水分散液は、緩衝溶液で弱アルカリ性とした電気伝導度0.5mS/cm以上の水溶液にジアシルグリセロリン脂質を分散させてリポソーム分散液を調製し、当該リポソーム分散液と、これとは別に準備したヒドロキシ酸又はその塩とアミノ酸又はその塩とを含有した水溶液とを混合し最終的なリポソーム分散液を調製する方法であり、基本的には上述した水性化粧料の方法と類似するものである。したがって、特許文献1に開示の方法を水性化粧料に応用した場合、保存安定性は若干、改善されるものの満足できるものではなかった。【0010】【特許文献1】特開平6−336442号公報【0011】【発明が解決しようとする課題】そこで本発明の目的は、酸性を呈する酸性原料を含有しているにも拘わらず長期間にわたりリン脂質の沈殿物が生じ難く安定性に優れたリン脂質水分散組成物の製造方法及び当該リン脂質水分散組成物を配合した水性化粧料を提供することである。【0012】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目的を達成すべくリン脂質水分散組成物の安定化方法を鋭意研究を重ねた結果、酸性原料を含有した水溶液をpH調整する際に、特定のアルカリ性pH調整剤を用いるならば意外にもリン脂質水分散組成物の安定性が顕著に改善されることを見出し本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、(1) 酸性原料を含有したpHが5.0以下、かつ電気伝導度が0.5mS/cm以上の水溶液を5.5〜8.0にpH調整した後、ジアシルグリセロリン脂質を分散するリン脂質水分散組成物の製造方法であって、pH調整剤として塩基性アミノ酸を用いたリン脂質水分散組成物の製造方法、(2) 前記ジアシルグリセロリン脂質がヨウ素価10以下のリン脂質である(1)のリン脂質水分散組成物の製造方法、(3) 前記塩基性アミノ酸がアルギニンである(1)又は(2)のいずれかに記載のリン脂質水分散組成物の製造方法、(4) (1)乃至(3)のいずれかに記載の製造方法により得られたリン脂質水分散組成物を配合した水性化粧料、である。【0013】【発明の実施の形態】以下本発明を説明する。なお、本発明において特に限定していない場合は、「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。本発明においてリン脂質水分散組成物とは、油性成分がゼロ、あるいは少ない状態でジアシルグリセロリン脂質が均一に水分散した液状物をいい、油性成分が少ない状態とは具体的には、ジアシルグリセロリン脂質に対し油性成分が0.5倍量以下(ゼロも含む)の割合で添加された状態である。ジアシルグリセロリン脂質と共に油性成分を添加し均一に水分散させるには、一般的にジアリルグリセロリン脂質と油性成分とを均一にした後、この均一化物を水に分散させる。しかしながら、ジアシルグリセロリン脂質に対し油性成分が0.5倍量より多いと、その殆どが乳化状態となり、本発明の方法を用いなくても比較的安定なものが得られることから、本発明のリン脂質水分散組成物には含まれない。【0014】ここで、油性成分とは、単独で水に分散し難い親油性の物質のことをいい、例えば、脂溶性ビタミン、動植物油、加工油等の油脂類のことであるが、親油性の物質であってもジアシルグリセロリン脂質と共にラメラ構造を形成する等の複合体を形成するような、例えばコレステロール等のステロール類、あるいは親油性の乳化剤や乳化補助剤は前記油性成分から除かれる。【0015】本発明において、ジアシルグリセロリン脂質とは、グリセロ骨格に二個の脂肪酸残基と1個のリン酸基が結合したリン脂質のことであり、構造安定性からジアシルグリセロリン脂質は一般的にグリセロ骨格の1位及び2位に脂肪酸残基が結合している。具体的には、リン酸基に結合した塩基の種類により、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン等が挙げられる。また、脂肪酸残基の構造により、例えば、ホスファチジルコリンの場合、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ステアロイルパルミトイルホスファチジルコリン等が挙げられる。そして、本発明のジアシルグリセロリン脂質は、合成、あるいは天然物より抽出・精製したものでもよく、原料の天然物の種類により、例えば、卵黄リン脂質、大豆リン脂質等が挙げられる。さらに、天然由来のジアシルグリセロリン脂質は、脂肪酸残基が不飽和結合を有したリン脂質を含んでいるが、酸化安定性を向上させるために水素添加処理を施し脂肪酸残基の一部、あるいは全部の不飽和結合を飽和結合に変換した例えば、水素添加卵黄リン脂質、水素添加大豆リン脂質等も本発明のジアシルグリセロリン脂質に含まれる。【0016】本発明では、例えば、上述したジアシルグリセロリン脂質の1種又は2種以上を組合わせて用いると良い。また、上述の内、例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ステアロイルパルミトイルホスファチジルコリンや、水素添加卵黄リン脂質、水素添加大豆リン脂質等の脂肪酸残基が主に飽和結合のもの、具体的には、飽和結合の指標となるヨウ素価(化粧品原料基準第二版「ヨウ素価測定法」)が10以下、さらには5以下のジアシルグリセロリン脂質を用いた場合、本発明の方法を用いないと保存中にリン脂質の沈殿物を生じやすい傾向となる。その理由は、ジアシルグリセロリン脂質を水分散させたとき、当該リン脂質の相転移温度の前後で脂肪酸残基の状態が変化する。相転移温度は融点に似たもので、相転移温度より水温が低いと当該リン脂質は、脂肪酸残基の分子運動が止まったゲル状態となり、相転移温度より水温が高いと、脂肪酸残基の分子運動が規則性をもって動きうる液晶状態となる。リン脂質分散組成物の安定性は、前述の脂肪酸残基の運動性により、分子運動がある液晶状態よりも無いゲル状態のほうが劣る。したがって、脂肪酸残基が主に飽和結合であるジアシルグリセロリン脂質、具体的には、ヨウ素価が10以下、さらには5以下のものは、相転移温度が高く、室温(0〜30℃)でゲル状態となることから、保存中に沈殿物を生じやすく、当該リン脂質を用いたリン脂質水分散組成物において、本発明の方法は、保存安定性に優れた組成物を得られることから特に好適である。例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリンの相転移温度は約41℃、ジステアロイルホスファチジルコリンは約55℃、ヨウ素価5以下の水素添加卵黄リン脂質は約30℃以上である。【0017】リン脂質水分散組成物に対するジアシルグリセロリン脂質の含有量は、当該組成物の用途により適宜決めれば良く、例えば、当該組成物を化粧料に用いた場合、使用感や保湿感を考慮し0.01〜5%が好ましく、0.05〜3%がより好ましい。【0018】本発明において、酸性原料とは、酸性を呈する原料であればいずれのものでもよく、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸−2グルコシド、シアル酸、コージ酸、ヒドロキシ酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ピロリドンカルボン酸、グリチルリチン酸、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。酸性原料の含有量は、酸性原料の種類により、酸性を示す度合や解離度が異なることから、本発明では、酸性原料を含有したpH調整前の水溶液において、pHが5.0以下、かつ電気伝導度が0.5mS/cm以上と規定しており、本発明の方法は、pHが5.0以下、かつ電気伝導度が1.0mS/cm以上の水溶液がより好適である。酸性原料を含有した水溶液は、酸性原料やジアシルグリセロリン脂質の水溶液中での分解等の安定性、あるいは化粧料の場合は、皮膚のpH等を考慮し、一般的に当該水溶液を中性付近、具体的には、pH5.5〜8.0程度にpH調整する必要があるが、前記pH調整前の水溶液のpHが5.0を超えるものは、酸性原料の含有量が少なく、電気伝導度も0.5mS/cm未満程度であることから、本発明の塩基性アミノ酸によるpH調整を行わなくても、例えば、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等の一般的に使用されているアルカリ性pH調整剤で比較的安定なリン脂質水分散組成物が得られる。また、pHが5.0以下であっても、電気伝導度が0.5mS/cm未満のものは、上述と同様に比較的安定なリン脂質水分散組成物が得られることから、本発明では、pH調整前の水溶液を、pHが5.0以下、かつ電気伝導度が0.5mS/cm以上と規定している。なお、前記pH及び電気伝導度の値は、測定するpH調整前の水溶液の品温が20℃のときの値であり、更に電気伝導度は、導電率計((株)堀場製作所製「カスタニーLAB導電率計DA−14」)で測定した値である。【0019】また、本発明において塩基性アミノ酸とは、アルギニン、リジン及びヒスチジンのことであり、本発明では、この塩基性アミノ酸を単独あるいは組合わせて用いる。特に、アルギニンを用いた場合は、長期にわたりリン脂質の沈殿物が生じ難いことから好ましい。【0020】本発明において水性化粧料とは、リン脂質水分散組成物を含有させた化粧料であり、クリーム、乳液以外の例えば、化粧水、美容液等の水溶性原料を主成分とした液状乃至ジェル状の化粧料である。特に、水性化粧料の電気伝導度が0.5mS/cm以上のものは、リン脂質の沈殿物を生じやすいが、本発明で得られたリン脂質水分散組成物を用いると沈殿物が生じ難く安定である。なお、本発明では、リン脂質水分散組成物をそのまま水性化粧料として用いてもよく、水性化粧料全体に対し1〜100%のリン脂質水分散組成物を配合させるとよい。【0021】本発明のリン脂質水分散組成物の製造方法を具体的に説明する。本発明は、酸性原料を均一に分散あるいは溶解させた水溶液を塩基性アミノ酸でpH調整した後、ジアシルグリセロリン脂質を分散させることに特徴を有する。つまり、まず、pHが5.0以下、かつ電気伝導度が0.5mS/cm以上となるように酸性原料、必要に応じ本発明の効果を損なわない範囲で他の原料を精製水等の水に均一に分散あるいは溶解させた水溶液を準備する。得られた水溶液を塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸の水溶液、あるいは塩基性アミノ酸と本発明の効果を損なわない範囲で他のアルカリ性pH調整剤とを組合わせたものでpHを5.5〜8.0に調整する。そして、例えば、従来の工業規模でのリポソーム調製方法に従って、具体的には、必要に応じ前記pH調整後の水溶液を加熱し、当該水溶液にジアシルグリセロリン脂質、ジアシルグリセロリン脂質と油性成分との均一化物、あるいはジアシルグリセロリン脂質とコレステロール等のステロール類との均一化物をホモミキサー等で粗分散させた後、高圧ホモゲナイザーで微粒子化処理を行えば良い。また、本発明のリン脂質水分散組成物を用いた水性化粧料の製造方法は、例えば、予めリン脂質水分散組成物以外の化粧品原料を均一に分散あるいは溶解した水溶液を調製した後、当該水溶液とリン脂質水分散組成物を混合するすれば良い。なお、本発明のリン脂質水分散組成物の製造方法は、上述したとおり酸性原料を含有したpHが5.0以下、かつ電気伝導度が0.5mS/cm以上の水溶液を塩基性アミノ酸でpH5.5〜8.0に調整するが、別の方法として、予め塩基性アミノ酸の添加量を調べ、酸性原料を水に均一に分散あるいは溶解させる際に、塩基性アミノ酸を添加する方法も本発明に含まれる。また、本発明は、上述したとおりpH調整後の水溶液にジアシルグリセロリン脂質を添加して均一分散させても良いが、ジアシルグリセロリン脂質にpH調整後の水溶液を添加してジアシルグリセロリン脂質を均一に分散させる方法も本発明に含まれる。【0022】本発明のレシチン水分散組成物及び水性化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含有させることができる。例えば、ヒアルロン酸の塩、コンドロイチン硫酸の塩、ピロリドンカルボン酸の塩、コラーゲン、酵母抽出液、海草抽出液、各種アミノ酸やペプチド、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステル、塩酸ピリドキシン、水溶性ビタミン等の生理活性物質、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、ペンチレングリコール等の多価アルコール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、パラベン、フェノキシエタノール等の防腐剤、ポリオキシエチレン(以下、POE−と略す。)硬化ヒマシ油、POE−アルキルエーテル、POE−グリセリン脂肪酸エステル、POE−プロピレングリコール脂肪酸エステル、POE−ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤、香料、色素等が挙げられる。【0023】本発明の方法により得られたリン脂質水組成物は、如何なる理由により酸性を呈する酸性原料を含有しているにも拘わらず長期間にわたりリン脂質の沈殿物が生じ難く安定性に優れているからは定かではないが、後述で示しているとおり水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ性pH調整剤を用いてpH調整した場合は、調整後の電気伝導度が明らかに上昇しているのに対し、本発明の方法である塩基性アミノ酸を用いた場合は、調整前後も略同様な電気伝導度の値を示していることから、塩基性アミノ酸による電気伝導度の上昇抑制作用が安定性に関与したのではないかと推定する。【0024】【実施例】次に、本発明を実施例及び試験例に基づき、さらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。【0025】[実施例1]及び[比較例1]表1に示す原料と配合割合で実施例1及び比較例1のリン脂質水分散組成物をそれぞれ製した。具体的には、アスコルビン酸−2グルコシドを精製水に溶解した。得られた水溶液は、液温20℃におけるpH及び電気伝導度がそれぞれ2.0及び3.5mS/cmであった。当該水溶液に実施例1はL−アルギニンを、比較例1は水酸化カリウムを添加しpH調整した。pH調整後の水溶液のpH及び電気伝導度は、実施例1が6.6及び3.5mS/cm、比較例1が7.2及び12.0mS/cmであった。一方、水素添加卵黄リン脂質(キユーピー(株)製、商品名:卵黄レシチンPL−100P、ヨウ素価:5以下)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLBが10以上)及びフェノキシエタノールを加温しながら均一に分散した。次に前記pH調整後の水溶液及び前記リン脂質の分散液をそれぞれ70℃に加温し、pH調整後の水溶液をホモミキサーで撹拌させながらリン脂質の分散液を添加して粗分散させた後、高圧ホモゲナイザーを用いて圧力30,000psiで微粒子化処理して実施例1及び比較例1のリン脂質水分散組成物をそれぞれ製した。【0026】得られたリン脂質水分散組成物をガラス瓶に充填・密封し4℃及び40℃に5週間(約1ヶ月)保存し、各週の状態を目視にて観察した。【0027】【表1】【0028】保存試験の記号○:沈澱物が観察されない。△:極僅か沈澱物が観察されるが、問題とならない程度である。×:沈澱物が観察される。【0029】表1の保存試験の結果から、本発明の塩基性アミノ酸によりpH調整した実施例1は、水酸化カリウムで行った比較例1に比べ、長期間にわたり沈澱物が観察されず安定性に優れていることが理解される。【0030】なお、実施例1及び比較例1で得られたそれぞれのリン脂質水組成物(製造直後)を化粧水として使用したとこといずれも使用感及び保湿感に優れたものであった。【0031】[実施例2]表2に示す原料と配合割合で実施例2のリン脂質水分散組成物を製した。具体的には、アスコルビン酸−2グルコシド及びL−アルギニンを精製水に溶解した。得られた水溶液(pH調整済)は、液温20℃におけるpH及び電気伝導度がそれぞれ6.8及び3.9mS/cmであった。なお、アスコルビン酸−2グルコシドを精製水に溶解した水溶液のpH及び電気伝導度はそれぞれ2.0及び3.9mS/cmであった。一方、水素添加卵黄リン脂質(キユーピー(株)製、商品名:卵黄レシチンPL−100P、ヨウ素価:5以下)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLBが10以上)、イソプレングリコール及びフェノキシエタノールを加温しながら均一に分散した。次に前記水溶液(pH調整済)及び前記リン脂質の分散液をそれぞれ70℃に加温し、リン脂質の分散液をホモミキサーで撹拌させながら水溶液(pH調整済)を添加して粗分散させた後、高圧ホモゲナイザーを用いて圧力30,000psiで微粒子化処理して実施例2のリン脂質水分散組成物を製した。【0032】実施例1と同様に得られたリン脂質水分散組成物をガラス瓶に充填・密封し4℃及び40℃に5週間(約1ヶ月)保存し、各週の状態を目視にて観察した。その結果、長期間にわたり沈澱物が観察されず安定性に優れた組成物であった。また、得られたリン脂質水組成物(製造直後)を化粧水として使用したところ使用感及び保湿感に優れていた。なお、表2中の保存試験の記号は実施例1と同じである。【0033】【表2】【0034】【発明の効果】以上述べたとおり、本発明の製造方法により得られたリン脂質水分散組成物は、酸性を呈する酸性原料を含有しているにも拘わらず長期間にわたりリン脂質の沈澱物が生じ難く安定性に優れていることから、従来、ジアシルグリセロリン脂質と組合わせて高濃度含有させることが出来なかった酸性原料の使用を可能とならしめ、リン脂質水分散組成物の用途を拡大することができる。 酸性原料を含有したpHが5.0以下、かつ電気伝導度が0.5mS/cm以上の水溶液を5.5〜8.0にpH調整した後、ジアシルグリセロリン脂質を分散するリン脂質水分散組成物の製造方法であって、pH調整剤として塩基性アミノ酸を用いることを特徴とするリン脂質水分散組成物の製造方法。 前記ジアシルグリセロリン脂質がヨウ素価10以下のリン脂質である請求項1記載のリン脂質水分散組成物の製造方法。 前記塩基性アミノ酸がアルギニンである請求項1又は2のいずれかに記載のリン脂質水分散組成物の製造方法。 請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法により得られたリン脂質水分散組成物を配合していることを特徴とする水性化粧料。 【課題】酸性を呈する酸性原料を含有しているにも拘わらず長期間にわたりリン脂質の沈殿物が生じ難く安定性に優れたリン脂質水分散組成物の製造方法及び当該リン脂質水分散組成物を配合した水性化粧料を提供する。【解決手段】酸性原料を含有したpHが5.0以下、かつ電気伝導度が0.5mS/cm以上の水溶液を5.5〜8.0にpH調整した後、ジアシルグリセロリン脂質を分散するリン脂質水分散組成物の製造方法であって、pH調整剤として塩基性アミノ酸を用いたリン脂質水分散組成物の製造方法及び当該リン脂質水分散組成物を配合した水性化粧料。


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