タイトル: | 公開特許公報(A)_高沸点有機溶媒中のヨウ素化合物の形態別定量分析方法 |
出願番号: | 2003165002 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N33/00,G01N21/27,G01N27/62,G01N30/86,G01N30/88 |
冨田 誠 稲場 徹 JP 2005003427 公開特許公報(A) 20050106 2003165002 20030610 高沸点有機溶媒中のヨウ素化合物の形態別定量分析方法 電気化学工業株式会社 000003296 冨田 誠 稲場 徹 7 G01N33/00 G01N21/27 G01N27/62 G01N30/86 G01N30/88 JP G01N33/00 D G01N21/27 Z G01N27/62 V G01N30/86 J G01N30/88 C 3 1 OL 8 2G059 2G059AA01 2G059BB04 2G059CC02 2G059EE01 2G059MM01 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、高沸点有機溶媒中に不純物として含まれるヨウ素化合物の形態別定量分析方法に関する。【0002】【従来の技術】従来の酢酸などの高沸点溶媒中のヨウ素化合物の定量分析法はガスクロマトグラフィー(以下、GCという)法による炭素数1〜6までの有機ヨウ素化合物を個別に定量分析し、また、吸光光度法により無機ヨウ素イオンを定量してその合量を求めていた。しかしながら、この方法では炭素数7以上の有機ヨウ素化合物を検出することができないため、別に全ヨウ素量を中性子放射化分析法で定量している(例えば、非特許文献1参照)。そして、中性子放射化分析法で求めた全ヨウ素量と各々の方法で求めたヨウ素量との差から炭素数7以上の有機ヨウ素化合物の有無を推定していた。【0003】しかしながら、上記の技術では、中性子放射化分析法による酢酸中の全ヨウ素分析が原子炉を必要とするため日本国内では実施が困難であり、汎用的な分析装置による全ヨウ素の定量分析法が求められていた。他の全ヨウ素分析法には誘導結合プラズマ質量分析(以下、ICPMSという)法があるが、ヨウ素化合物は測定装置内に蓄積しやすく、内壁への吸着と脱着により測定値が安定しないという問題があるため、除染剤としてアンモニアやテトラメチルアンモニウムハイドレイトのようなアルカリ性溶媒を測定経路内に噴霧して内壁を洗浄する必要があった(例えば、非特許文献2参照)。また、酢酸を希釈してICPMSで測定すると表1のようにヨウ素化合物の形態によって、検出感度に10倍〜数十倍の差が生じるため、正確な定量が困難であった。【0004】【非特許文献1】高城,飯島,岩島「分別捕集/放射化分析による降水中ヨウ素の化学形態別定量」分析化学Vol.43,P905−909(1994)【非特許文献2】植頭,中野,渡辺,圓尾「質量分析を用いた土壌試料中の129I定量法」サイクル機構技術,No.10,77−80,(2001.3)【0005】【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、予めICPMS法における炭素数1〜10までの有機ヨウ素化合物量と無機ヨウ素イオンの感度を求めておき、別に、GC法で定量できる炭素数を有する有機ヨウ素化合物量と吸光光度法により定量した無機ヨウ素イオン量をICPMSにおける検出感度で補正して、差し引くことにより、GC法で定量できない炭素数を有する有機ヨウ素化合物量を求める方法を提供することを目的とする。また、本発明は従来のICPMS法において課題であった有機ヨウ素化合物量と無機ヨウ素イオンの感度差を抑制し、安定した分析値が得られる分析方法を提供することを目的とする。【0006】【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、(1)GC法により定量できる炭素数を有する有機ヨウ素化合物を定量し、吸光光度法により無機ヨウ素を定量し、更にICPMS法によりGC法で定量できない炭素数を有する有機ヨウ素化合物を定量することを特徴とする高沸点有機溶媒中のヨウ素化合物の形態別定量分析方法、(2)ICPMS法で、炭素数1〜10までの有機ヨウ素化合物と無機ヨウ素の感度を予め求め、GC法と吸光光度法で求めた個々の有機ヨウ素化合物量と無機ヨウ素量を感度で補正し、ICPMS法により求めた全ヨウ素量から差し引くことによりGC法で定量できない炭素数を有する有機ヨウ素化合物を求めることを特徴とする(1)記載の分析方法、(3)高沸点有機溶媒をICPMS装置へ直接導入し、ICPMS法における各ヨウ素化合物の感度差を抑制することと、試料の測定後、除染剤として5〜20wt/vol%のアルカリ性溶液を噴霧して測定装置内の内壁に吸着したヨウ素化合物を洗浄することを組み合わせることにより安定した分析値を得ることを特徴とする(1)又は(2)記載の分析方法である。【0007】【発明の実施の形態】以下に、実施例を踏まえながら説明する。高沸点有機溶媒とは、例えば酢酸、酢酸メチル、酢酸エチル、o−キシレン、メタノール、エタノール、プロパノール、2−ブタノンなどがあげられる。予め、ICPMS法で炭素数1〜10までの有機ヨウ素化合物、無機ヨウ素イオンの感度比を例えば、ヨードメタンを基準とした相対感度をそれぞれ求める。別にGC法により定量できる炭素数を有する有機ヨウ素化合物量、吸光光度法により求めた無機ヨウ素量をヨードメタンを基準とした相対感度で補正し、ヨウ素の合計量を求める。これをICPMS法で求めた全ヨウ素量から差し引くことにより、GC法で定量できない炭素数を有する有機ヨウ素化合物の合量を分析装置を組み合わせることで求めることができる。【0008】【実施例】本発明の一実施例を以下図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の酢酸中のヨウ素化合物の形態別定量分析方法の一実施例によって、炭素数1〜10までの有機ヨウ素化合物、無機ヨウ素イオンの感度比をヨードメタンの感度を1とした時の相対感度で示した。【0009】参考例1表1にICPMS法により測定した2%酢酸水溶液中の有機ヨウ素化合物の感度比をヨウ化カリウム水溶液の感度を1としたときの相対感度で示した。【0010】【表1】【0011】基準溶液としてヨウ化カリウムを純水で希釈し、ヨウ素として10μg/Lに希釈した。次に相対感度測定用標準液として、炭素数1〜4、及び6の有機ヨウ素化合物(ヨードメタン、ヨードエタン、1−ヨードプロパン、1−ヨードブタン、1−ヨードヘキサン)、無機ヨウ素イオン(ヨウ化カリウム)を氷酢酸にそれぞれヨウ素として1wt/vol%になるよう溶解した後、段階的に2vol/vol%酢酸水溶液で希釈し、それぞれヨウ素10μg/Lに希釈した。【0012】ICPMS測定では、トーチは標準トーチを使用し、クロスフローネブライザーで噴霧量を1ml/分、スプレーチャンバー温度は室温に設定した。ヨウ化カリウム水溶液、相対感度測定用標準液についてICPMS法により質量数127のヨウ素を測定した。【0013】その結果、2vol/vol%酢酸溶液における炭素数1〜4、及び6の有機ヨウ素化合物と無機ヨウ素イオンの相対感度は3.2倍から38.7倍の差が認められた。【0014】実施例1検量線用標準液としてヨードメタンを氷酢酸で段階的に希釈してヨウ素として100μg/Lに希釈した。これを10mLメスフラスコに0〜1.0mL段階的に分取した後、標線まで氷酢酸で希釈した。分析用試料の酢酸は前処理することなく用いた。【0015】次に、相対感度測定用標準液として、炭素数1〜10までの有機ヨウ素化合物(ヨードメタン、ヨードエタン、1−ヨードプロパン、1−ヨードブタン、1−ヨードペンタン、1−ヨードヘキサン、1−ヨードヘプタン、1−ヨードオクタン、1−ヨードノナン、1−ヨードデカン)、無機ヨウ素イオン(ヨウ化カリウム)を氷酢酸にそれぞれヨウ素として1wt/vol%になるよう溶解した後、段階的に氷酢酸で希釈し、それぞれヨウ素10μg/Lに希釈した。【0016】ICPMS測定では、氷酢酸を安定して直接導入できるように、トーチは有機溶媒測定用トーチを使用し、マイクロフローネブライザー(4フッ化エチレン樹脂製同軸型ネブライザー)で噴霧量を0.1ml/分以下に抑え、スプレーチャンバーは温度を20℃に設定した。これは気化効率を上げることで有機ヨウ素化合物の感度差を抑制している。また、ヨウ素化合物が測定装置内に蓄積しやすく、内壁への吸着と脱着により測定値が安定しないという問題があるため、試料を測定した後、毎回、ヨウ素の化合物の除染剤として有効なアルカリ(希アンモニア水、またはテトラメチルアンモニウムハイドレイト(TMAH)溶液)で60秒、次いで超純水を120秒噴霧洗浄した。検量線、未知試料、相対感度測定用標準液をICPMS法により質量数127のヨウ素を測定した。【0017】各有機化合物とヨウ素量、及び感度比の対応表を表2に示した。ICPMS法による総ヨウ素量をAμg/L、GC法による炭素数1〜6までの各有機ヨウ素化合物中のヨウ素量をB1〜B6μg/L、吸光光度法により求めた無機ヨウ素量をCKIμg/Lとする。炭素数1のヨードメタンの感度を1として、炭素数2〜6までの有機ヨウ素化合物の感度比をf2〜f6、炭素数7〜10の有機ヨウ素化合物の感度比の平均をfx、無機ヨウ素イオンの感度比をfKIとすると炭素数7以上の有機ヨウ素化合物量Dμg/Lは次式で求められる。D=(A−(B1+B2×f2+B3×f3+B4×f4+B5×f5+B6×f6+CKI×fKI))/fx【0018】【表2】【0019】以上の一連の操作を工業用酢酸Aについて分析した。表3にICPMSにおける炭素数1のヨードメタンの感度を1とした、炭素数2〜6までの有機ヨウ素化合物の感度比をf2〜f6、炭素数7〜10の有機ヨウ素化合物の感度比の平均をfx、無機ヨウ素イオンの感度比をfKIとしてまとめた。なお、相対感度は分析装置の型式や測定条件により変化するので、未知試料測定時に同時に求める必要がある。【0020】【表3】【0021】この工業用酢酸AはGC法でヨードメタン中のヨウ素は0.2μg/Lであった。他の炭素数2〜6までの有機ヨウ素化合物は不検出であった。吸光光度法によるヨウ素イオンは0.6μg/Lであった。ICPMS法による総ヨウ素量は0.4μg/Lであった。この時の各ヨウ素化合物のヨードメタンに対する相対感度は表3の通りであった。【0022】この酢酸中の炭素数7以上の有機ヨウ素化合物量はよって、この酢酸には炭素数7以上の有機ヨウ素化合物は含まれていない。【0023】実施例2実施例1と同じ操作で工業用酢酸Bを分析した。この工業用酢酸BはGC法でヨードメタン中のヨウ素は0.5μg/L、ヨードエタン中のヨウ素は1.0μg/L、1−ヨードペンタン中のヨウ素は2.4μg/Lであった。他の炭素数3、4、6の有機ヨウ素化合物は不検出であった。吸光光度法によるヨウ素イオンは0.2μg/Lであった。ICPMS法による総ヨウ素量は10.5μg/Lであった。この時の各ヨウ素化合物のヨードメタンに対する相対感度を表4に示した。【0024】【表4】【0025】この酢酸中の炭素数7以上の有機ヨウ素化合物量はよって、この酢酸には炭素数7以上の有機ヨウ素化合物が約10.4μg/L含まれている。【0026】【発明の効果】以上、説明したように、本発明によれば、汎用の分析手法であるICPMS法、GC法、吸光光度分析法を併用することにより、高沸点有機溶媒中のヨウ素の形態別分析ができる。また、ICPMSにおける測定方法の改良により、従来のICPMS法において課題であった有機ヨウ素化合物量と無機ヨウ素イオンの感度差が数倍以内に抑制されると共に、安定した分析値が得られるようになる。【図面の簡単な説明】【図1】ICPMS法における、炭素数1〜10までの有機ヨウ素化合物、無機ヨウ素イオンの感度比をヨードメタンの感度を1とした時の相対感度を示す。【符号の説明】1. ヨウ化カリウム2. ヨードメタン3. ヨードエタン4. 1−ヨードプロパン5. 1−ヨードブタン6. 1−ヨードペンタン7. 1−ヨードヘキサン8. 1−ヨードヘプタン9. 1−ヨードオクタン10.1−ヨードノナン11.1−ヨードデカン ガスクロマトグラフィー法により定量できる炭素数を有する有機ヨウ素化合物を定量し、吸光光度法により無機ヨウ素を定量し、更に誘導結合プラズマ質量分析法によりガスクロマトグラフィー法で定量できない炭素数を有する有機ヨウ素化合物を定量することを特徴とする高沸点有機溶媒中のヨウ素化合物の形態別定量分析方法。 誘導結合プラズマ質量分析法で、炭素数1〜10までの有機ヨウ素化合物と無機ヨウ素の感度を予め求め、ガスクロマトグラフィー法と吸光光度法で求めた個々の有機ヨウ素化合物量と無機ヨウ素量を感度で補正し、誘導結合プラズマ質量分析法により求めた全ヨウ素量から差し引くことによりガスクロマトグラフィー法で定量できない炭素数を有する有機ヨウ素化合物を求めることを特徴とする請求項1記載の分析方法。 高沸点有機溶媒を誘導結合プラズマ質量分析装置へ直接導入し、誘導結合プラズマ質量分析法における各ヨウ素化合物の感度差を抑制することと、試料の測定後、除染剤として5〜20wt/vol%のアルカリ性溶液を噴霧して測定装置内の内壁に吸着したヨウ素化合物を洗浄することを組み合わせることにより安定した分析値を得ることを特徴とする請求項1又は2記載の分析方法。 【課題】本発明によれば、汎用の分析手法であるICPMS法、GC法、及び吸光光度分析法を併用することにより、高沸点有機溶媒中のヨウ素の形態別分析定量分析方法を提供すること。【解決手段】GC法により定量できる炭素数を有する有機ヨウ素化合物を定量し、吸光光度法により無機ヨウ素を定量し、更にICPMS法によりGC法で定量できない炭素数を有する有機ヨウ素化合物を定量することを特徴とする高沸点有機溶媒中のヨウ素化合物の形態別定量分析方法を構成とする。【選択図】 図1