タイトル: | 特許公報(B2)_白内障モデル動物 |
出願番号: | 2003163346 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12Q 1/68,A01K 67/027,A61P 27/12,G01N 33/15,G01N 33/50,G01N 33/53,C12N 15/09,C12N 5/10,C12N 9/16 |
長田 重一 JP 4230284 特許公報(B2) 20081212 2003163346 20030609 白内障モデル動物 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 廣田 雅紀 100107984 長田 重一 20090225 C12Q 1/68 20060101AFI20090205BHJP A01K 67/027 20060101ALI20090205BHJP A61P 27/12 20060101ALI20090205BHJP G01N 33/15 20060101ALI20090205BHJP G01N 33/50 20060101ALI20090205BHJP G01N 33/53 20060101ALI20090205BHJP C12N 15/09 20060101ALN20090205BHJP C12N 5/10 20060101ALN20090205BHJP C12N 9/16 20060101ALN20090205BHJP JPC12Q1/68 AA01K67/027A61P27/12G01N33/15 ZG01N33/50 ZG01N33/53 MC12N15/00 AC12N5/00 BC12N9/16 C12Q 1/68 C12N 15/00-15/90 C12N 5/00- 5/10 C12N 9/16 A01K 67/027 A61P 27/12 G01N 33/15 G01N 33/50 G01N 33/53 JSTPlus(JDreamII) JMEDPlus(JDreamII) 医学・薬学予稿集全文データベース CiNii PubMed BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN) WPIDS(STN) CA/CONFSCI/SCISEARCH(STN) UniProt/GeneSeq GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq 国際公開第01/075082(WO,A1) 国際公開第01/012793(WO,A1) Biochem. Biophys. Res. Commun.,2001年,vol. 288,1119-1128 Nucl. Acids Res.,1999年,vol. 27,4083-4089 Gene,2001年,vol. 269,205-216 Nature,2003年 8月,vol. 424,1071-1074 Nature Immunol.,2003年 2月,vol. 4,138-144 12 2004357652 20041224 21 20051130 中村 正展 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、DLAD(DNase II like acid DNase)遺伝子の機能が染色体上で欠損した白内障モデル非ヒト動物、及び該白内障モデル非ヒト動物を用いた白内障の予防・治療剤のスクリーニング方法等に関する。【0002】【従来の技術】白内障は、眼球の水晶体(レンズ)が混濁した状態をいい、先天白内障と後天白内障とに分けられる。先天白内障は水晶体表層の混濁と内部の混濁に分けられる。前者には先天偽性白内障、先天被膜白内障、先天皮質白内障、先天冠状白内障、先天極白内障、先天ピラミッド白内障などがある。後者としては、層間白内障、点状白内障、縫合白内障、中心白内障、糸状白内障、環状白内障などがある。後天性混濁としては、老人性、後発、褐色、併発、糖尿病性、外傷性、マッサージ、電撃、放射エネルギーによる、ガラス工、超音波による、薬物による、全身病あるいは栄養障害による各白内障が知られている。薬物による白内障としては、パラジクローベンゼン、タリウム、トリウムゾル、2,4−ジニトロフェノール(DNP)、マクレラン、ナフタリン、ステロイド、縮瞳薬、トリパラノール、クロルプロマジン、キノリン、ヨード酢酸等によって生じるものがある。これらの薬物の中ではナフタリンによって生ずる白内障が実験動物を用いて良く研究されている。しかしながら、現在まで混濁した白内障を薬物投与によって透明治癒させうる方法は開発されていない。【0003】また、白内障を発症する実験動物として、遺伝性白内障ラットのSCR(Shumiya Cataract Rat)が知られている。該SCRは高血圧自然発症ラットに肥満遺伝子を導入したコンジェニック系のSHR−faを育成中、成熟期に核性白内障をおこす系統から分離育成された。交配実験による遺伝解析の結果、劣性遺伝子(ctr1)と致死を伴う優性遺伝子(ctr2)とによって白内障を発症するダブルミュータントであり、セグリゲイティング近交系として維持生産された。また、(SCR×BN)F1をもとにしてSCRへの連続戻し交配を行った、有色コンジェニック系統C SCR(N13〜)が確立されている(例えば、非特許文献1参照。)。その他、白内障発症実験動物として、遺伝性白内障モデルマウス(MIPdel)が知られている。該モデルマウスは水晶体線維細胞特異的蛋白質であるMIP蛋白質の4アミノ酸が欠損したものである。該マウスを用いた白内障発症機序の解明が進められた結果、MIPが機能獲得型の遺伝子であることが明らかとなっている。【0004】一方、無血管組織で透明な眼球の水晶体は、水晶体前面の上皮細胞とそれが分化伸張した水晶体線維細胞の一種類の細胞だけで構成されている(例えば、非特許文献2〜4参照。)。増殖能を欠失した水晶体線維細胞への分化は、細胞の形の変化、水晶体に特有なタンパク質であるクリスタリンの発現(例えば、非特許文献5参照。)、並びに核、ミトコンドリア、及び小胞体を含む細胞小器官の分解を伴うことが知られている(例えば、非特許文献6、7参照。)。細胞小器官の喪失は、水晶体の透明度を確実にすると考えられているが、この過程の分子機構は全く解明されていない。【0005】また、マウス組織において発現するDNaseとして、DNase II、DLAD、CADが知られている。DNAに特異的に作用し、ホスホジエステル結合を加水分解して3′末端にリン酸基をもつオリゴヌクレオチドを生じるタイプのエンドヌクレアーゼであるDNase IIは酸性DNaseであり、リソソーム内に存在し、赤血球前駆細胞から排出された核DNAの分解、及びマクロファージが貧食した後のアポトーシス細胞のDNA分解において、重要な役割を果たしている(例えば、非特許文献8〜10参照。)。また、マウスDLAD(例えば、非特許文献11参照。)は、ヒトではDNase IIβと呼ばれ、リソソームの中に存在する酸性DNaseであり(例えば、非特許文献12参照。)、DLADは、それぞれマウスの肝臓及びヒトの唾液線及び肺で発現することが報告されてきたが、DLADの生理学的な役割は明らかにされていない。また、カスパーゼ活性DNaseであるCADは、Mg2+要求性の中性DNaseであり、アポトーシス細胞の細胞自発的なDNA分解を引き起こす(例えば、非特許文献13参照。)。【0006】【非特許文献1】J. Biochem. 128: 771-776, 2000【非特許文献2】Eye 13, 425-437, 1999【非特許文献3】Eye 6, 117-122, 1992【非特許文献4】A review of cellular and molecular features.Differentiation 19, 134-153, 1981【非特許文献5】Annu. Rev. Biochem. 57, 479-504, 1988【非特許文献6】Exp. Eye. Res. 74, 1-6, 2002【非特許文献7】J. Cell Biol. 137, 37-49, 1997【非特許文献8】Science 292, 1546-1549, 2001【非特許文献9】Cell Death Differ. 9, 956-962, 2002【非特許文献10】Nat. Immunol. 4, 138-144, 2003【非特許文献11】Nucleic Acids Res., 27, 4083-4089, 1999【非特許文献12】Gene, 269, 205-216, 2001【非特許文献13】Cell Death & Differ. 10, 142-143, 2003【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、治療方法の開発が遅れている白内障の治療の道を拓くために有用な白内障モデル非ヒト動物や、該非ヒト動物を用いた白内障治療剤のスクリーニング方法を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】眼球の水晶体細胞は核を持たないため、水晶体細胞の核内DNAは水晶体細胞形成過程で分解されていると考えられる。本発明者は、ヒト及びネズミ科動物の水晶体細胞に特異的に発現しており、デオキシリボヌクレアーゼIIβとも呼ばれているDLADを欠損したマウスの生理的機能の解明について鋭意研究を進めた結果、該マウスが、水晶体細胞分化の際にDNAを分解することができず、未分解DNAは線維細胞に蓄積されることや、水晶体核に白内障を発症し、網膜電図における光に対する反応が大幅に減少することを見い出した。これらの結果から、DLADが水晶体細胞の分化における核DNA分解に関与していることを明らかにするとともに、核DNAが眼球の中に未分解で存在した場合には、水晶体核の光路がブロックされ、白内障を惹起するため、DLADノックアウトマウスがヒト白内障に適したモデル動物となるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。【0009】 すなわち本発明は、(1)DLAD遺伝子の機能が染色体上で欠損した非ヒト動物を白内障モデル非ヒト動物として使用する方法や、(2)非ヒト動物の水晶体核にDNAが存在することを特徴とする上記(1)記載の方法や、(3)非ヒト動物の水晶体核に小胞体とミトコンドリアが存在することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の方法や、(4)非ヒト動物が、齧歯目動物であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の方法や、(5)齧歯目動物が、マウスであることを特徴とする上記(4)記載の方法に関する。【0010】 また本発明は、(6)DLAD遺伝子の機能が染色体上で欠損した白内障モデル非ヒト動物に被検物質を投与し、該非ヒト動物の白内障の程度を評価することを特徴とする、DLAD異常に起因する白内障の予防・治療剤のスクリーニング方法や、(7)DLAD遺伝子の機能が染色体上で欠損した非ヒト動物と野生型非ヒト動物の場合とを比較・評価することを特徴とする上記(6)記載の、DLAD異常に起因する白内障の予防・治療剤のスクリーニング方法や、(8)野生型非ヒト動物が、DLAD遺伝子の機能が染色体上で欠損した非ヒト動物と同腹の野生型非ヒト動物であることを特徴とする上記(7)記載の、DLAD異常に起因する白内障の予防・治療剤のスクリーニング方法や、(9)被検物質を眼球に直接投与することを特徴とする上記(6)〜(8)のいずれか記載の、DLAD異常に起因する白内障の予防・治療剤のスクリーニング方法や、(10)非ヒト動物が、齧歯目動物であることを特徴とする上記(6)〜(9)のいずれか記載の、DLAD異常に起因する白内障の予防・治療剤のスクリーニング方法や、(11)齧歯目動物が、マウスであることを特徴とする上記(10)記載の、DLAD異常に起因する白内障の予防・治療剤のスクリーニング方法に関する。【0011】 さらに本発明は、(12)非ヒト由来の検体からDLAD遺伝子を抽出し、その遺伝子異常の有無を調べることを特徴とするDLAD異常に起因する白内障の診断法に関する。【0012】【発明の実施の形態】本発明の白内障モデル非ヒト動物としては、DLAD遺伝子の機能が染色体上で欠損した白内障の症状を呈するモデル動物であれば特に制限されるものではないが、水晶体核にDNAが存在することにより、また、水晶体核に小胞体やミトコンドリアが存在することにより白内障の症状を呈するモデル動物を好適に例示することができる。本発明において、DLAD遺伝子の機能が染色体上で欠損した非ヒト動物とは、DLADをコードする非ヒト動物の内在性遺伝子が破壊・欠損・置換等の遺伝子変異により不活性化され、DLADを発現する機能を失なった非ヒト動物をいい、上記非ヒト動物としては、マウス、ラット等の齧歯目動物を具体的に挙げることができるが、これらに限定されるものではない。【0013】本発明における野生型の非ヒト動物とは、上記DLAD遺伝子の機能が欠損した非ヒト動物と同種の動物を意味し、中でも同腹の動物を好適に例示することができる。また上記DLAD遺伝子の機能が欠損した非ヒト動物としては、メンデルの法則に従い出生してくるものが、DLAD欠損型と同腹の野生型を得ることができ、これらを用いて正確な比較実験をすることができる点で好ましい。そして上記のように、DLAD遺伝子の機能欠損白内障モデル非ヒト動物の好適例としては、DLADノックアウトマウスを、野生型マウスとしては該ノックアウトマウスと同腹の野生型マウスを、それぞれ具体的に挙げることができる。以下、非ヒト動物がマウスの場合を例にとって説明する。【0014】DLADノックアウトマウスの作製法としては、DLADを発現する機能を失ったノックアウトマウスを作製することができる方法であればどのような作製法でもよいが、例えば、マウス遺伝子ライブラリーからPCR等の方法により得られた遺伝子断片を用いて、DLAD遺伝子をスクリーニングし、スクリーニングされたDLAD遺伝子を、プラスミドベクター等を用いてサブクローンし、DNAシーケンシングにより特定し、このクローンのDLAD遺伝子の全部又は一部を含むフラグメントをネオマイシン耐性遺伝子カセット等で置換することによって、ターゲットベクターを作製する方法を挙げることができる。【0015】この線状化されたベクターをエレクトロポレーション(電気穿孔)法等によってES細胞に導入し、G−418などの薬剤に抵抗性の細胞の中から相同的組換えを行ったES細胞を選択し、その細胞のクローンをマウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションし、かかる胚盤胞を仮親のマウスに戻し、キメラマウスを作製する。このキメラマウスを野生型のマウスと交配させると、ヘテロ接合体マウス(DLAD+/-)を得ることができ、また、このヘテロ接合体マウスの雌雄を交配させることによって、DLADノックアウトマウス(DLAD-/-)を得ることができる。【0016】本発明の白内障の予防・治療剤のスクリーニング方法としては、本発明のDLAD遺伝子の機能が染色体上で欠損した白内障モデル非ヒト動物に被検物質を投与し、該非ヒト動物の白内障の程度を評価する方法であれば特に制限されるものではなく、被検物質の投与方法としては、経口投与、静脈内投与、眼球への点滴による直接投与などの方法をを挙げることができる。また、白内障の程度を評価する方法としては、水晶体の混濁の程度を目視により観察評価する方法や、水晶体核のDNAの分解の程度を測定評価する方法や、水晶体核の小胞体やミトコンドリアの消失の程度を測定評価する方法や、網膜電図(ERG)における光に対する反応の程度を測定評価する方法などを挙げることができる。網膜電図では、電極によって眼球から取り出された反応信号がその時間経過によって表示されることで評価され、刺激するためには、一回の閃光又は明と暗の連続(フリッカーERG)を使用することができ、この場合、網膜面全体の平均値を算出することになる。白内障の程度を評価するに際しては、白内障モデル非ヒト動物と同種の野生型非ヒト動物、中でも白内障モデル非ヒト動物と同腹の野生型非ヒト動物と比較評価することが好ましい。【0017】本発明はまた、上記本発明のスクリーニング方法により得られる白内障の予防・治療剤や、DLAD異常に起因する白内障の診断法に関する。DLAD異常に起因する白内障の診断法としては、検体からDLAD遺伝子を抽出し、その塩基配列を調べて、正常なDLAD遺伝子と比較して異常の有無を調べる方法を例示することができる。【0018】【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。【0019】実施例[方法](DLAD遺伝子の遺伝子ターゲット法による欠損)マウスDLAD染色体遺伝子を129/svマウスゲノムライブラリーから単離し、pBluescriptにサブクローンした。エクソン3−4を含む6.1kbのDNA断片を、ホスホグリセレートキナーゼ1遺伝子プロモーターにより発現する2.1kbのneo遺伝子に置換してDLADターゲティングベクターを構築した(図2a;参考写真2a)。ポリオーマウイルスのエンハンサーの下流に配置されたジフテリアトキシンAフラグメントをコードする1.2kbDNAフラグメントを、負の選択のために、DLAD遺伝子の下流に挿入した。【0020】エレクトロポレーション法により1.0×107R1 ES細胞を、ターゲティングベクター25μgでトランスフェクションした。G−418耐性クローンのなかから、相同的組換えを起こしたクローンをPCR法によりスクリーニングした。ついで、DLAD欠損対立遺伝子を有するESクローンを、宿主の胚に導入し、キメラマウスを作製し、このキメラマウスを、C57BL/6マウス(Oriental Yeast社製)と交配し、DLAD+/-突然変異マウスを作製した。DLAD-/-マウスは、DLAD+/-の雌雄を交配することにより作製した。全てのマウスは大阪大学医学部の特定病原体未感染施設に収容し、全ての動物実験は大阪大学医学部動物実験委員会に承認された細則に従って行われた。【0021】(PCR法、サザン及びノーザンブロット分析)ゲノムDNAを、文献(Laird, P. W. et al. Res. 19, 4293 (1991))記載に準じて、胚組織又は成体のシッポの先から調製した。DLAD遺伝子の遺伝子型を、Perkin-Elmier 9700 cycle(Applied Biosytems社製)及びTaqポリメラーゼ(Amersham Bioscience社製)を使用し、PCR法により同定した。PCRには、野生型に特異的センスプライマーとして(5'-AGA CAG GGA AGG GCA AAT CGA CAA TAG GGA-3';配列番号1)又は突然変異対立遺伝子型に特異的センスプライマーとして(5'-GAT TCG CAG CGC ATC GCC TTC TAT CG-3';配列番号2;ネオマシン耐性遺伝子の配列)を、共通のアンチセンスプライマー(5'-CTG CAT GCC TTC TGC ATT CCT GAT GTC AAG-3';配列番号3)と共に使用した。【0022】サザンハイブリダイゼーションでは、ゲノムDNAをBam HIで処理し、0.7%アガロースゲルで電気泳動し、ニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell社製)に転写した。ハイブリダイゼーションはDLAD遺伝子のエクソン6に位置する0.5kbDNA断片をプローブとして行った(図2a;参考写真2a)。ノーザンハイブリダイゼーションのために、全RNAを0.22Mホルムアルデヒドを含む1.0%アガロースゲル上で電気泳動し、ニトロセルロース膜に転写した。マウスDLAD cDNAをプローブとして使用し、文献(Sambrook, J. & Russell et.al. A laboratory manual, (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, 2001))記載されている高ストリンジェント条件下にハイブリダイゼーションを行った。【0023】(マウスDLAD mRNAのRT−PCR法及びリアルタイムPCR法)8週齢のマウスの様々な組織、またさまざまな発生段階のマウス胚の水晶体からRNAを調製した。RNA(2μg)をRNaseを含まないDNase I(Invitrogen社製)で処理し、オリゴ(dT)をプライマーとしてSuperscript II逆転写酵素を使用して、全量20μlにて逆転写した。リアルタイムPCRは、LightCyclerTM-FastStart DNA Master SYBER Green I、 各プライマー(0.5μM)及び3mMのMgCl2を含む反応混合液(20μl)中で、LightCycler(Roche Diagnostics 社製)を使用して、製造者の指示通りに行った。プライマーとして、DLADには5'-CCA GTT CAT GGC TAT GAG TAC-3'(配列番号4)及び5'-TTA GGT CTC CAA TGC AGG TCC AGC GAT TTG-3'(配列番号5)を、DNaseIIには5'-AAT CCA GCT CAG CTC GGG AC-3'(配列番号6)及び5'-ATA GGC TCC AGA GCA GTT GG-3'(配列番号7)を、CADには5'-GAA CGT TAC AAG TCC AGT G-3'(配列番号8)及び5'-GGC CAG CAG CTT TTG CCT CAG-3'(配列番号9)をそれぞれ使用した。コントロ−ルとして、β−アクチン遺伝子の発現を、プライマー5'-TGT GAT GGT GGG AAT GGG TCA G-3'(配列番号10)及び5'-TTT GAT GTC ACG CAC GAT TTC C-3'(配列番号11)を使用して検出した。特異的mRNAのレベルは、LightCycler System がPCR蓄積の対数期の上昇期を探知した時点で定量化し、各個別サンプルにおけるβ−アクチンの発現レベルを対照として数値化した。【0024】(ヒトDLAD mRNAのPCR法)ヒト水晶体細胞は、老人性白内障の患者の前部莢膜から、インフォームドコンセント後に入手した。ヒト水晶体上皮細胞(LEC)は、文献(Fleming, T. P. et.al. Vis. Sci. 39, 1387-1398 (1998))記載に準じて、水晶体上皮細胞から作製し、10%FCSを含むDMEM培地を用いて維持した。ヒトHeLa細胞は、10%FCSを含むDMED、HL−60及びKT−3細胞は、10%FCSを含むRPMI1640培地で培養した。全RNAは、初期水晶体細胞及び細胞株から酸性フェノール−グアニジン−チオシアネート法で調製した。ヒト肝臓及び胸腺からの全RNAは、それぞれBiochain Institute(Hayward社製)及びBD Biosciences Clontech(Pala Alto社製)から購入した。ヒトDLAD mRNAを、ヒトDLAD mRNAに特異なプライマー(Krieser, R. J. et al. Gene 269, 205-216 (2001))、5'-GTG GCA TCT GCA TAA CTT TC-3'(配列番号12)及び5'-GGT CTC CAA TAC ATG TCC AG-3'(配列番号13)を使用してRT−PCR法により、検出した。コントロールとして、ヒトβアクチンmRNAに対するプライマー((5'-GCA TCC TCA CCC TGA AGT AC-3'(配列番号14)及び5'-CTT AAT GTC ACG CAC GAT TTC C-3'(配列番号15))を使用して、RT−PCR法を行った。【0025】(酸性DNaseの分析)水晶体を溶解緩衝液(10mMのTris−HCl[pH7.5]、1MのNaCl、1mMのpAPMSF)中で破砕し、13,000rpmで30分遠心分離して、細胞核及び大きな細胞の破片を除去した。上澄みを1mMのEDTAを含む50mMのクエン酸緩衝液(pH5.0)に対し透析した。沈殿物を除去した後、上澄みの酸性DNase活性を、文献(Kawane, K. et al. Science 292, 1546-1549 (2001))記載に準じて測定した。要約すると、プラスミドDNA(2.0μg)を反応液(10mMのEDTAを含む50mM MOPS−NaOH緩衝液(pH5.9))120μl中でサンプルと混合した。37℃で3時間インキュベーションした後、混合液をフェノール・クロロホルムで処理し、EtOH沈殿によりDNAを回収した。【0026】(眼球水晶体の組織学的分析及び電子顕微鏡解析)組織学的解析のために、マウス水晶体を、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.2)において4%パラホルムアルデヒド/4%スクロースで固定し、パラフィン包埋し、4μmの切片を作製した。切片は10分間、1N HClで60℃で処理し、フォイルゲン染色のために、シッフ試薬(Merck社製)で45分間染色し、光学電子顕微鏡で観察した。grp94を検出するために、水晶体のパラフィン切片を、一晩4℃でラット抗grp94モノクローナル抗体(Stressgen 社製)とインキュベートし、次にペルオキシダーゼ共役ウサギ抗ラットIgG抗体、及びCy3標識チラミドを、ペルオキシダーゼ基質としてインキュベートした。ミトコンドリアATPシンターゼを検出するために、切片を、一晩4℃で、ミトコンドリアATPシンターゼサβブユニットに対するウサギ抗体(Ezaki, J. et.al. J. Neurochem. 67, 1677-1687 (1996))とインキュベートし、その後さらに、Cy3−結合ヤギ抗ウサギIgG抗体、F(ab’)2断片(Jackson ImmunoResearch Lab.社製)とインキュベートした。電子顕微鏡での解析には、6週齢のマウスの水晶体を、4%グルタルアルデヒドを含む0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.2)で固定した。7.5%ショ糖を含む同緩衝液で洗浄した後、サンプルを4℃で2時間、1%のOsO4で固定し、Epon812に包埋した。この水晶体から切片(80nm)を、スーパーミクロトーム(Nissei社製)で調製し、クエン酸鉛及び酢酸ウラニルで染色し、Hitachi H-7100電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製)で観察した。【0027】(網膜電図)網膜電図(ERG)を文献(Masu, M. et al. Cell 80, 757-765 (1995).)記載に準じて行った。要約すると、マウスを12時間以上暗順応し、キシラジン(20mg/ml)及びケタミン(50Mg/ml)の混合液(0.06ml)を皮下注入して麻酔した。角膜を0.5%オキシブプロカインで麻酔し、瞳孔を0.5%トロピカミド及び0.5%フェニレフリン−HClで拡張した。ERGは塩化銀ワイヤを使用して、片眼の角膜の表面から記録した。光刺激の輝度は、眼球の表面で3.7log cd/m2であり、連続的に光刺激を減少するために、異なったニュートラル・デンシティ・フィルタを使用した。反応は10,000の増幅率に拡大した帯域通過周波数を0.08〜1000Hzに設定した(日本光電社製)。シングルフラッシュの光刺激を1.8log cd/m2から3.7logcd/m2まで増加し、4段階に分けた。10の反応をアベレイジャー(日本光電社製)で平均化した。【0028】実施例[結果](リアルタイムPCR法による3種のDNaseの発現試験)水晶体細胞の分化における核DNAの分解に、DNaseが関与していることを確認するために、本発明者らはまず、様々なマウスの組織における3つのDNase(DNase II、DLAD及びCAD)の発現を、リアルタイムPCR法により検討した。図1a(参考写真1a)に示されているように、CAD mRNAは水晶体以外の様々な組織で発現した。DNaseII mRNAも普遍的に発現したが、水晶体における発現率は低かった。他方、DLAD mRNAは眼球において特異的に高発現していた。マウスの胚形成の初期段階では、全ての水晶体線維細胞は核を保持しているが、この核は胚発生(E)16日以降に、欠落する(Kuwabara, T. et.al. Vis. Sci. 13, 973-981 (1974))。これと一致して、DLAD mRNAのレベルは、E14.5の水晶体では低かったが、マウスの後期発生段階では、大きく増加した(図1b;参考写真1b)。また、DLAD mRNAを老人性白内障の患者のヒト水晶体細胞で検出した。さらにヒト水晶体から樹立された上皮細胞株は、かなり高い水準のDLAD mRNAを発現していた。しかし、他の種類の細胞では、DLAD mRNAの発現は僅かであった(図1c;参考写真1c)。【0029】(DLAD-/-マウスの作製)DLADの生理的な役割を明らかにするために、DLAD-/-マウスをジーンターゲティング法により作製した。マウスDLAD遺伝子は、ゲノムDNA15.0kb以内に6つのエクソンによりコードされている(図2a;参考写真2a)。エクソン3及び4にコードされている領域は、DNase II及びDLAD間に保存されており、この領域には酵素活性部位になりうるヒスチジン残基が2こ存在する(Shiokawa, D. et al. Nucleic Acids Res. 27,4083-4089 (1999))。エクソン3及び4をneo遺伝子と置換し、ターゲティングベクターを構築し、R1マウスの胚幹細胞(ES細胞)内に注入した。変異を有するESクローンをPCR法により同定し、そのうちの1つの代表的クローンに由来するマウスを詳細に解析した。【0030】ヘテロ接合の雌雄マウスを交配させ、その結果生じた同腹子の尾部DNAを、Bam H1で処理した後、サザンハイブリダイゼーションにより分析した(図2a;参考写真2a)。図2b(参考写真2b)に示されるように、DLAD+/+では単一の9.5kbバンドが、DLAD-/-では7.8kbバンドが、DLAD+/-マウスではその両方が見られた。そのサイズはDLAD遺伝子とターゲティングベクターの相同的組換えで想定されたとおりであった。一方、ノーザンハイブリダイゼーションでは1.9kbDLADmRNAがDLAD+/+マウスの眼球から検出された(図2c;参考写真2c)。このmRNAのサイズは野生型の肝臓に見られたものと一致した。DLAD-/-の水晶体ではDLADmRNAも発現したが、そのサイズはターゲッティングストラテジーで予想されたとおり、野生型マウスのDLAD mRNAより小さかった。DLADmRNAの欠損を確認するために、水晶体のRNAをRT−PCR法により分析した。図2cの右パネルに示されるように、DLADmRNAのコード配列の全長にわたる一対のプライマーにより、DLAD+/+の水晶体からのRNAには1073bpバンド、DLAD-/-の水晶体からのRNAには838bpバンド、またDLAD+/-の水晶体からのRNAにはその両方が生じた。エクソン4及び6からの配列がプライマーとして使用された場合には、DLAD+/+及びDLAD+/-水晶体からのRNAは636bpのバンドを生成したが、DLAD-/-水晶体からのRNAではバンドが検出されなかった。これらの結果は、DLAD-/-マウスにおけるDLADmRNAにはエクソン3及び4の配列が欠損していることを示している。ターゲットされたDLAD遺伝子のエクソン2からのオープンリーディングフレームは、エクソン5で中断され不完全なたんぱく質が賛成されることとなる。以下に記載するように、DLAD+/-マウスは野生型マウスと同等の表現系を示し、DLAD+/-マウスで産生される不完全なタンパク質は野生型DLADたんぱく質に悪影響を与えることはないと考えられる。【0031】(DLAD-/-マウスの分析)ブタの水晶体には、白血球エラスターゼ阻害剤に由来するL−DNase IIと呼ばれる酸性DNaseが存在すると報告されている(Torriglia, A. et al. Cell Biol. 18, 3612-3619 (1998))。マウスの水晶体にDLAD以外の酸性DNaseが存在するかどうかを調べるために、また、DLAD-/-マウスにおけるDLADの変異を確認するために、水晶体より細胞抽出物を調製し、プラスミドDNAを基質としてDNase活性を分析した。図2d(参考写真2d)で示されるように、野生型マウスとヘテロ接合型マウスの水晶体抽出物は、pH5.9においてDNase活性を示した。他方、DLAD-/-マウスの水晶体抽出物においては、この条件下及びさらなる酸性条件下でほとんどDNase活性が認められなかった。これらの結果は、DLADがマウスの眼球水晶体において主要な酸性DNaseであり、DLAD-/-対立遺伝子はヌル変異であることを示している。DLAD+/-の雌雄マウスを交配すると3つの遺伝子型(DLAD+/+、DLAD+/-及びDLAD-/-)のマウスがメンデルの法則に従って生まれた。また、DLAD-/-マウスは、白内障以外は発育異常を示さず、通常の繁殖力で繁殖した。【0032】DLAD-/-マウスの眼球は、通常の形態で、DLAD+/+マウスの眼球とほぼ同サイズであった。DLAD-/-マウスの水晶体では通常レベルのクリスタリンが確認され、水晶体線維細胞は成熟した細胞へと正常に分化しうると考えられる。水晶体の正中矢状に断片化し、その切片を組織学的に分析したところ、水晶体の前面を覆っている単層の立方形の上皮細胞が見い出される。そして、水晶体の赤道面及び皮質の線維細胞には、フォイルゲンおよびDAPIで染色される核が存在した(図3a;参考写真3a)。この領域の細胞は小胞体(endoplasmic reticulum,ER)に存在するタンパク質Grp94に対する抗体及びミトコンドリアに存在するATPシンターゼに対する抗体で染色されることから、この領域の線維細胞は小胞体及びミトコンドリアを有していることがわかった。一方、野生型マウス(DLAD+/-)の水晶体の内側には、核、ER、ミトコンドリアなどの細胞小器官を欠損した領域(organelle-free zone)が存在する。DLAD-/-の水晶体核の繊維細胞には小胞体やミトコンドリアが存在せず、形態学的によく分化しているように思われる。しかし、この一見成熟した線維細胞にもフォイルゲン及びDAPI陽性物質が認められた。これらのフォイルゲン陽性さいぼうはどのような年齢(1週齢〜35週齢)のDLAD-/-マウスの核水晶体線維細胞でも確認された。【0033】透過型電子顕微鏡により、成熟した水晶体細胞を分析したところ、成熟したDLAD-/-の線維細胞は、確かに小胞体、ミドコンドリアを含んでいなかった(図3b;参考写真3b)。しかし、この細胞にはDNAと考えられる凝縮した物質が見出された。さらに高倍率での分析は、この細胞の中にほどけたDNAと考えられる物質あるいは無形態な物質が認められた。これらの物質は、膜質様組織で囲まれておらず、核膜が破壊されていることを示唆した。次に、DLAD-/-の水晶体の成熟線維細胞で、DNAが未消化のまま残っていることを確認するために、水晶体を物理的に3つの領域(上皮層、末梢皮質、核)に分け、染色体DNAを上皮層及び核の細胞から調製した。図3c(参考写真3c)に示されるように、上皮層の細胞は、大量の染色体DNAを含んでいたが、野生型と同等であるDLAD+/-の水晶体核からの線維細胞には含まれていなかった。反対に、DLAD-/-の眼球においては、かかるDNAは上皮層の細胞だけでなく、水晶体核においても観察された。【0034】DLAD-/-マウスの眼球は、弱いがはっきりとした白内障を発症した(図4a;参考写真4a)。すなわち、DLAD-/-の水晶体核には、混濁が見え、老齢のマウスにおいてはより顕著となった。線維細胞に残されたDNAの光の伝達に対する効果を検査するために、網膜電図(ERG)をDLAD+/-及びDLAD-/-マウスで比較した。図4b(参考写真4b)に示されるように、EGRを暗順応条件の野生型マウスで記録したとき、a波及びb波で構成される典型的な反応が観察された。DLAD-/-マウスにおいては、光フラッシュに対する反応は著しく低下し、光路がDLAD-/-水晶体でブロックされたことを示した。【0035】【発明の効果】本発明によると、白内障モデル非ヒト動物を用いた白内障の予防・治療薬のスクリーニング方法を提供することができるので、治療方法の開発が遅れている白内障の治療の道を拓くことができる他、本発明の白内障モデル非ヒト動物を用いて白内障の発症機構を解明することができる。【0036】【配列表】【図面の簡単な説明】【図1】水晶体におけるDLAD mRNAの発現。a.マウスの水晶体におけるDLAD mRNAの特異的発現。8週齢のC57BL/6マウスの示された組織よりRNAを調製した。DALD、CAD及びDNase II mRNAを、方法の章に記載されている通りのリアルタイムPCR法で定量した。DNase のmRNAは各組織のβ−アクチンmRNA量の相対的数値として表されている。b.マウスの後期発生段階における、水晶体内のDLAD遺伝子の発現。示された発生段階のマウスの胚及び新生児の水晶体からRNAを調製した。DLAD mRNAの発現レベルは、リアルタイムPCR法で同定し、βアクチン mRNA量の相対的数値として表されている。c.ヒト水晶体細胞におけるDLAD mRNAの発現。老人性白内障の2人の患者の水晶体細胞のRNA、ヒト胸腺及び肝臓からのRNA、さまざまなヒト細胞株からのRNAを、ヒトDLAD及びβ−アクチン mRNAに特異なプライマーを使用して、RT−PCR法で分析した。検査したヒト株細胞は、次の通りである:LEC、水晶体上皮細胞;Hela、腺ガンから作製した上皮株細胞;KT−3及びJurkat、T細胞リンパ腫細胞株;HL−60、前骨髄球性白血病細胞株ヒトDLAD mRNAに想定されたサイズのバンド(471bp)は、矢印で示す。マーカーDNAの細部は、bpで示す。【図2】相同的組換えによるDLAD遺伝子の遺伝子ターゲット法による欠損a.ターゲティングストラテジー。内在性DLAD遺伝子座(上の棒線)、ターゲット構築(真中の棒線)、標的DLAD遺伝子座(下の棒線)を図式で示した。DLAD遺伝子の6つのエクソン(コード領域)を黒のボックスで表し、番号をつけた。制限酵素Bam HI(B)及びSma I(S)の認識部位を示した。それぞれ正の選択、負の選択に使用した、ネオマイシン耐性遺伝子(Neo)及びジフテリアトキシンAフラグメント(DTA)をコードするDNAフラグメントを示した。サザンハイブリダイゼーションに使用されたプローブを、下の棒線の下に、塗りつぶしたボックスで示した。cのRT−PCR法に使用したプライマーを、上の棒線の上に矢印で示した。プローブによって検出された、Bam HIで処理した断片を示した。下のスケールバーは1kbを表す。b.DLAD+/-ヘテロ接合型の雌雄を交配して作製した仔から単離した尾部DNAをターゲットの図に示されたプローブを使用してサザンブロット分析した。相同的組換えにより、DLAD遺伝子座には、neo遺伝子が挿入されBam HI消化により単一の9.5kbバンドから7.8kbバンドに移動する。マーカーDNAのサイズは、左側にkbで示した。c.ノーザンハイブリダイゼーション及びRT−PCR法。左のパネルには、6週齢のDLAD+/+、DLAD+/-、DLAD-/-マウスの眼球水晶体からの全RNA(列毎に10μg)及び野生型マウスの肝臓からのポリ(A)mRNA(列毎に2μg)を、DLAD cDNAをプローブとして、ノーザンハイブリダイゼーションにより分析した。マーカーRNAのサイズは、左側にkbで示した。下のパネルでは、コントロールとしてフィルターを、EF−1αcDNAをプローブとして分析した。右のパネルでは、6週齢のDLAD+/+、DLAD+/-、DLAD-/-マウスの眼球水晶体からの全RNAを、RT−PCR法により分析した。分析には、マウスDLAD遺伝子のエクソン1及び6(エクソン1−6)に位置するプライマー、又はエクソン4及び6(エクソン4−6)に位置するプライマーを使用した。RT−PCR法に同量のRNAが使用されていることを確認するために、コントロールとしてβ−アクチンmRNAをRT−PCR法で分析した。d.水晶体における酸性DNase活性。プラスミドDNAを、酸性条件下で、DLAD+/+、DLAD+/-又はDLAD-/-眼球からの細胞抽出物の量(15、45、135μg)を増加させてインキュベートし、1.5%アガロースゲルで電気泳動により分析した。C列は、プラスミドDNAを、細胞抽出物なしで、インキュベート処理したものである。列I及びIIでは、1.5ngのウシ膵臓由来のDNaseI(Roche Diagnostics社製)及び3.8ngのブタ脾臓由来のDNase II(Worthington Biochemical社製)のDNase活性を上記の通り分析した。マーカーDNAのサイズはbpで示されている。【図3】DLAD-/-水晶体線維細胞の核DNAの非破壊a.眼球水晶体の組織学的分析。6週齢のDLAD+/-及びDLAD-/-マウスの眼球水晶体はパラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋した。正中矢状水晶体切片(4μm)はDNA用フォイルゲンで染色した(左パネル)。真中と右のパネルでは、水晶体切片をgrp94に対する抗体又はミトコンドリアATPシンターゼβサブユニットに対する抗体でそれぞれ染色し(赤)、次にDAPI染色を行った(青)。Ep:上皮組織、OZF:細胞小器官がない領域。AS:前部縫合。PS:後部縫合。100μmのスケールバーを各パネルの右角に示した。b.DLAD-/-水晶体線維細胞の透過型電子顕微鏡写真。6週齢のDLAD-/-マウスの水晶体線維細胞を透過型電子顕微鏡で分析した。凝縮体から拡散しているほどけたDNAと考えられる物質を、矢頭で示している。右角のスケールバーは、2μm又は500nmを表している。c.DLAD-/-水晶体核内DNA。上皮単層(Ep)を、15週齢のDLAD+/-及びDLAD-/-マウスの水晶体から静かに剥がした。次に水晶体を末梢皮質及び核に分割した。上皮層(Ep)と核(Nuc)の細胞を、200mMのNaCl、5mMのEDTA、0.2%のSDS及び100μg/mlのプロテイナーゼKを含むTris−HCl緩衝液(pH8.5)100mM中で懸濁した。55℃で4.5時間インキュベーションした後、混合液をフェノール/クロロフォルムで処理し、DNAをEtOH沈殿で回収した。ついで、DNAを0.8%アガロースゲルで電気泳動することにより分析した。【図4】DLAD-/-マウスの白内障の進行a.DLAD-/-マウスの核白内障。6及び26週齢のDLAD+/-、DLAD-/-マウスの眼球を撮影した。b.網膜電図。照度を増した刺激を拡散するのに応じた網膜電図を11週齢のDLAD+/-、DLAD-/-マウスで記録した。左側の数字はログユニットの中性濃度(ND)膜の数値を示している。動物の角膜の表面に対する最高輝度は3.7log cd/m2であった。 DLAD遺伝子の機能が染色体上で欠損した非ヒト動物を白内障モデル非ヒト動物として使用する方法。 非ヒト動物の水晶体核にDNAが存在することを特徴とする請求項1記載の方法。 非ヒト動物の水晶体核に小胞体とミトコンドリアが存在することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。 非ヒト動物が、齧歯目動物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の方法。 齧歯目動物が、マウスであることを特徴とする請求項4記載の方法。 DLAD遺伝子の機能が染色体上で欠損した白内障モデル非ヒト動物に被検物質を投与し、該非ヒト動物の白内障の程度を評価することを特徴とする、DLAD異常に起因する白内障の予防・治療剤のスクリーニング方法。 DLAD遺伝子の機能が染色体上で欠損した非ヒト動物と野生型非ヒト動物の場合とを比較・評価することを特徴とする請求項6記載の、DLAD異常に起因する白内障の予防・治療剤のスクリーニング方法。 野生型非ヒト動物が、DLAD遺伝子の機能が染色体上で欠損した非ヒト動物と同腹の野生型非ヒト動物であることを特徴とする請求項7記載の、DLAD異常に起因する白内障の予防・治療剤のスクリーニング方法。 被検物質を眼球に直接投与することを特徴とする請求項6〜8のいずれか記載の、DLAD異常に起因する白内障の予防・治療剤のスクリーニング方法。 非ヒト動物が、齧歯目動物であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか記載の、DLAD異常に起因する白内障の予防・治療剤のスクリーニング方法。 齧歯目動物が、マウスであることを特徴とする請求項10記載の、DLAD異常に起因する白内障の予防・治療剤のスクリーニング方法。 非ヒト由来の検体からDLAD遺伝子を抽出し、その遺伝子異常の有無を調べることを特徴とするDLAD異常に起因する白内障の診断法。