タイトル: | 特許公報(B2)_2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン及び該化合物を用いたエポキシ樹脂組成物 |
出願番号: | 2003161221 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C08G 59/26,C07D 303/10,C08J 5/24,C08L 63/00 |
阿久津 光男 中屋敷 哲千 高畑 義徳 JP 4243980 特許公報(B2) 20090116 2003161221 20030605 2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン及び該化合物を用いたエポキシ樹脂組成物 株式会社ADEKA 000000387 羽鳥 修 100076532 阿久津 光男 中屋敷 哲千 高畑 義徳 20090325 C08G 59/26 20060101AFI20090305BHJP C07D 303/10 20060101ALI20090305BHJP C08J 5/24 20060101ALI20090305BHJP C08L 63/00 20060101ALN20090305BHJP JPC08G59/26C07D303/10C08J5/24C08L63/00 C08G 59/26 C08J 5/24 C08L 63/00 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 4 2004359869 20041224 12 20060215 武貞 亜弓 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規エポキシ化合物である2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、及び該エポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物に関する。上記エポキシ化合物は、比誘電率及び誘電正接に優れ且つ吸水率が極めて低いエポキシ樹脂となり、上記エポキシ樹脂組成物は、積層板、特にビルドアップ用途の積層板に適したプリプレグを提供することができる。【0002】【従来の技術】エポキシ化合物は、積層板、塗料、接着剤、光造形等の材料として広く用いられており、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに代表される芳香族エポキシ化合物;2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパンや3,4−エポキシシクロヘキシルカルボニルオキシメチル−3,4−エポキシシクロヘキサン等の脂環式エポキシ化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルや(メタ)アクリル酸グリシジルエステル等の脂肪族エポキシ化合物等、多くのエポキシ化合物が知られている。【0003】これら種々のエポキシ化合物を用いる際には、得られるエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度、吸水率、誘電率、耐衝撃強度、引張り強度、引張り伸び率、接着強度等の特性や、硬化時の硬化速度や硬化条件を制御するために、適宜な化合物の構造及び組成を選択することが必要である。特に、積層回路に用いられるエポキシ樹脂には、高いガラス転移温度、優れた誘電特性、及び低い吸水率が必要である。【0004】エポキシ化合物の構造による特性の制御は、例えば下記特許文献1及び2に記載されている。下記特許文献1及び2には、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパンが、高いガラス転移温度を示すことが記載されており、この化合物を光造形や積層板用途に用いることが提案されている。【0005】【特許文献1】特開平5−105896号公報【特許文献2】特開平11−255863号公報【0006】【発明が解決しようとする課題】しかし、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパンは、吸水率においては満足のいくものではなかった。また、単独のエポキシ化合物で全ての性能を満足することは困難であり、粘度やガラス転移温度等の特性に特徴を有するエポキシ化合物が、エポキシ樹脂の性能向上には不可欠であり、特に硬化前には低粘度であり、ガラス転移温度の高い硬化物を与えるエポキシ樹脂が、積層板用途において望まれている。【0007】従って、本発明の目的は、低吸水率で且つガラス転移温度の高い硬化物を与え得るエポキシ化合物を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記現状に鑑み鋭意検討を重ねた結果、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンが、低吸水率で且つガラス転移温度の高い硬化物を与えることを見出し、本発明に到達した。【0009】即ち、本発明は、下記式(I)で表されるエポキシ化合物を提供するものである。【0010】【化2】【0011】また、本発明は、上記エポキシ化合物を、全エポキシ化合物の5重量%以上用いたエポキシ樹脂組成物を提供するものである。【0012】また、本発明は、上記エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグを提供するものである。【0013】また、本発明は、上記プリプレグを用いたビルドアップ用エポキシ樹脂積層板を提供するものである。【0014】【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。【0015】上記式(I)で表される本発明のエポキシ化合物の合成方法は、特に制限されず、例えば、2,2−ビス(3−シクロヘキセン)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンを、公知の方法でエポキシ化することで得られる。【0016】本発明のエポキシ化合物は、そのままエポキシ樹脂に用いても良く、また、下記一般式(II)で表されるオリゴマーとしてから用いても良い。【0017】【化3】【0018】上記一般式(II)におけるRで表される炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、ナフタレン−1,5−ジイル、2,2−ビス(フェニル−4−イル)プロパン、2,2−ビス(フェニル−4−イル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン、2,2−ビス(シクロヘキシル−4−イル)プロパン、2,2−ビス(シクロヘキシル−4−イル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。【0019】上記一般式(II)で表されるオリゴマーの具体例としては、下記化合物No.1〜4が挙げられる。なお、下記化合物No.1〜4において、nは1〜10の数を表す。【0020】【化4】【0021】【化5】【0022】【化6】【0023】【化7】【0024】上記一般式(II)で表されるオリゴマーのうち、フッ素原子を有するビスフェノールやビス安息香酸と、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンとの反応物、例えば上記化合物No.3や化合物No.4が、顕著な低吸水性を示すので好ましい。【0025】上記式(I)で表される本発明のエポキシ化合物を硬化させる方法としては、従来公知のエポキシ樹脂の硬化方法のいずれでもよく、エポキシ樹脂硬化剤による硬化、硬化触媒を用いた自己重合による硬化、光開始剤による光硬化等の方法が挙げられ、硬化促進剤の併用による硬化速度の制御等もできる。【0026】上記エポキシ樹脂硬化剤としては、潜在性硬化剤、ポリアミン化合物、ポリフェノール化合物等が挙げられる。【0027】上記潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、ヒドラジド、イミダゾール化合物、アミンアダクト、スルホニウム塩、オニウム塩、ケチミン、酸無水物、三級アミン等が挙げられる。これらの潜在性硬化剤は、一液型の硬化性エポキシ組成物を与え、取り扱いが容易なので好ましい。【0028】上記酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられる。【0029】上記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環族ポリアミン、m−キシレンジアミン等の芳香環を有する脂肪族アミン、m−フェニレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ポリアミンが挙げられる。【0030】上記ポリフェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、テルペンジフェノール、テルペンジカテコール、1,1,3−トリス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)ブタン、ブチリデンビス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらの中でも、フェノールノボラックは、得られるエポキシ樹脂の電気特性及び機械強度が積層板に適しているので好ましい。【0031】これらの硬化剤の使用量は、特に制限されるものではないが、通常、使用するエポキシ化合物の全エポキシモル数と、硬化剤の官能基数との比が0.9/1.0〜1.0/0.9となる量である。また、フッ素置換されてなる硬化剤は、本発明のエポキシ化合物の特徴である低い吸水率が顕著になるので好ましいが、フッ素置換化合物は、一般に高価であるため、他の特性値等も含め、用途に応じて適宜選択される。【0032】また、本発明のエポキシ化合物を光開始剤により光硬化させる場合には、光開始剤としてカチオン系光開始剤が用いられる。該カチオン系光開始剤は、エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出させることが可能な化合物であり、特に好ましいものは、エネルギー線照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩又はその誘導体である。かかる化合物の代表的なものとしては、一般式[A]m+[B]m-で表される、陽イオンと陰イオンとの塩を挙げられる。【0033】陽イオン[A]m+はオニウムであるのが好ましく、その構造は、例えば一般式[(R1)aQ]m+で表すことができる。【0034】ここで、R1は炭素数が1〜60であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでもよい有機の基である。aは1〜5なる整数である。a個のR1は各々独立で、同一でも異なっていてもよいが、少なくとも1つが、芳香環を有する上記の如き有機の基であることが好ましい。QはS、N、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、F及びN=Nからなる群から選ばれる原子あるいは原子団である。また、陽イオン[A]m+を表す上記一般式[(R1)aQ]m+中のQの原子価をqとしたとき、m=a−qなる関係が成り立つことが必要である(但し、N=Nは原子価0として扱う)。【0035】また、陰イオン[B]m-は、ハロゲン化物錯体であるのが好ましく、その構造は、例えば一般式[LXb]m-で表すことができる。【0036】ここで、Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(Metalloid)であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xbはハロゲン原子である。bは3〜7なる整数である。また、陰イオン[B]m-を表す上記一般式[LXb]m-中のLの原子価をpとしたとき、m=b−pなる関係が成り立つことが必要である。【0037】上記一般式[LXb]m-で表される陰イオンの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4)-、ヘキサフルオロフォスフェート(PF6)-、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6)-、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6)-、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6)-等が挙げられる。【0038】また、陰イオン[B]m-としては、一般式[LXb-1 (OH)]m-で表される構造のものも好ましい。L、X及びbは、上記一般式[LXb]m-におけるものと同様である。また、これらの他に、陰イオン[B]m-としては、過塩素酸イオン(ClO4)-、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3)-、フルオロスルホン酸イオン(FSO3)-、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオン等が挙げられる。【0039】この様なオニウム塩の中でも、下記のイ)〜ハ)の芳香族オニウム塩を使用するのが特に有効である。これらの中から、その1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。【0040】イ)フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等のアリールジアゾニウム塩【0041】ロ)ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等のジアリールヨードニウム塩【0042】ハ)トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4'−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4'−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4,4'−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4'−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4−[4'−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4'−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のトリアリールスルホニウム塩【0043】また、イ)〜ハ)の他に好ましい光開始剤としては、(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)〔(1,2,3,4,5,6,−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン〕−アイアン−ヘキサフルオロホスフェート等の鉄−アレーン錯体や、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトナトアセタト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウム等のアルミニウム錯体とトリフェニルシラノール等のシラノール類との混合物等も挙げられる。【0044】これらの中でも、実用面及び光感度の観点から、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、鉄−アレーン錯体を用いることが特に好ましい。【0045】これらの光開始剤は、安息香酸系、第三級アミン系等の公知の光重合促進剤の1種又は2種以上と組み合わせて用いても良い。上記光開始剤の含有量は、本発明のエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物中、0.1〜30重量%が好ましい。0.1重量%未満では添加効果が得られないことがあり、30重量%より多いと硬化物の機械強度が低下することがある。【0046】上記光開始剤を用いる場合の重合(硬化)に用いる光源としては、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の公知の光源を用い、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波等の活性エネルギー線の照射により、上記光開始剤からルイス酸を放出することで、エポキシ化合物を硬化させる。上記光源としては、400nm以下の波長を有する光源が有効である。【0047】本発明のエポキシ化合物は、必要に応じて、他のエポキシ化合物と併用される。他のエポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が用いられる。上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ノボラック、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の多価フェノールのグリシジルエーテル化合物が挙げられる。上記脂環族エポキシ化合物としては、少なくとも1個以上の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又はシクロヘキセン環含有化合物やシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイド含有化合物やシクロペンテンオキサイド含有化合物等が挙げられる。具体的には、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルへキシル等が挙げられる。上記脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等が挙げられる。代表的な化合物としては、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、またプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。さらに、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルや、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。【0048】他のエポキシ化合物を併用する場合、その種類や使用量は、硬化物の用途により適宜選択されるものであり、本発明のエポキシ化合物を用いる特徴が得られる範囲で、かつ、他のエポキシ化合物を用いた効果も得られる範囲から選択されるが、エポキシ化合物全体に占める本発明のエポキシ化合物の割合が、5〜95重量%となるようにするのが好ましく、10〜90重量%がより好ましい。【0049】さらに、本発明のエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、ガラス繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ホウ素ウィスカー等の繊維状充填剤や、シリカ、アルミナ等の球状充填剤を用いるのが好ましい。上記繊維状充填剤は、用途に応じて、適宜な長軸方向の長さやアスペクト比を有するものを選択することが好ましく、上記球状充填剤は、真球状で粒径が小さいものが好ましい。【0050】【実施例】以下に、実施例及び比較例により、本発明をさらに具体的に示す。ただし、本発明は、以下の実施例等により何等制限されるものではない。下記実施例1においては、本発明のエポキシ化合物を合成した。下記実施例2及び下記比較例1それぞれにおいては、本発明のエポキシ化合物又は従来のエポキシ化合物及びエポキシ樹脂硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物を作成し、該エポキシ樹脂組成物から得られた硬化物についての各種特性の測定を行った。下記実施例3及び下記比較例2それぞれにおいては、本発明のエポキシ化合物又は従来のエポキシ化合物及び光開始剤を含有するエポキシ樹脂組成物を作成し、該エポキシ樹脂組成物から得られた硬化物についての各種特性の測定を行った。【0051】〔実施例1〕2,2−ビス(3−シクロヘキセン)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン80g(0.256モル)、99重量%蟻酸13.1g(0.282モル)、リン酸緩衝液8.0g及びクロロホルム400gをフラスコに入れ、50℃で60重量%過酸化水素水87.3g(1.536モル)を滴下した。滴下後、50℃で4時間反応させ、室温まで冷却後、油水分離して有機層を50gの水で3回洗浄した。60℃、20mmHgで溶媒を留去した後、130℃、1.5mmHgで蒸留して融点99.5℃の白色固体56gを得た。得られた白色固体は、ガスクロマトグラフでの純度が99.50%で、エポキシ当量が170.42であった。さらに、該白色固体は、元素分析、1H−NMR分析及び19F−NMR分析を行った結果、目的物であるビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンと同定された。分析結果を以下に示す。【0052】(分析結果)・元素分析:C:51.94%(理論値52.33%)H:5.14%(理論値5.27%)F:33.23%(理論値:33.11%)O:9.69%(理論値:9.29%)・1H−NMR分析:1.24−2.34ppm(−CH2−及び−CH−)3.1ppm、3.3ppm(−CH−O−CH−)・19F−NMR分析:−56.9ppm(−CF3)【0053】〔実施例2及び比較例1〕表1記載の配合によりエポキシ樹脂組成物を作成し、該エポキシ樹脂組成物を180℃で1時間、200℃で1時間、更に220℃で1時間保持することで硬化物を得た。得られた硬化物のガラス転移温度、比誘電率、誘電正接、吸水率及び屈折率を、下記測定方法により測定した。測定結果を表1に示す。なお、表1における難燃剤は、最終的なエポキシ樹脂組成物のリン含有量が1重量%になるように配合した。【0054】(測定方法)・ガラス転移温度:動的粘弾性法で測定した。・比誘電率及び誘電正接:マテリアルアナライザーHP−4291B(アジレントテクノロジー製)で測定した。・吸水率:室温で蒸留水に24時間浸漬後し、浸漬前後の重量増加率を吸水率とした。・屈折率:アッベ屈折計(JIS-K7142)で測定した。【0055】【表1】【0056】〔実施例3及び比較例2〕表2記載の配合によりエポキシ樹脂組成物を作成し、該エポキシ樹脂組成物を膜厚が50μmになるようにガラス基板上に塗布した後、表面が指で押してもべとつかなくなるまで、高圧水銀灯紫外線(50mJ/cm2)を繰り返し照射して硬化物を得た。その際の合計照射量を光硬化性とした。結果を表2に示す。【0057】さらに、得られた硬化物について、実施例2と同様にして、ガラス転移温度、比誘電率、誘電正接、吸水率及び屈折率を測定した。測定結果を表2に示す。【0058】【表2】【0059】表1及び表2から明らかなように、本発明のエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物から得られた硬化物は、高いガラス転移温度並びに良好な誘電率特性及び屈折率を有しながら、従来のエポキシ化合物を用いた場合に比べて非常に低い吸水率を示した。また、表2から明らかなように、上記エポキシ樹脂組成物は、光開始剤を用いた光硬化により硬化させた場合、低いエネルギー線照射量で、良好な特性を有する硬化物を形成した。【0060】【発明の効果】本発明によれば、吸水率に優れる新規なエポキシ化合物であるビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンを提供することができる。また、本発明のエポキシ化合物を用いることにより、誘電率特性や吸水率に優れる、積層板に適したエポキシ樹脂組成物を提供することができる。 下記式(I)で表されるエポキシ化合物。 請求項1記載のエポキシ化合物を、全エポキシ化合物の5重量%以上用いたエポキシ樹脂組成物。 請求項2記載のエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ。 請求項3記載のプリプレグを用いたビルドアップ用エポキシ樹脂積層板。