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タイトル:公開特許公報(A)_液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法
出願番号:2003154193
年次:2004
IPC分類:7,G01N30/56,G01N30/48,G01N30/50


特許情報キャッシュ

吉田 英人 村田 博 篠田 栄司 JP 2004004093 公開特許公報(A) 20040108 2003154193 20030530 液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法 株式会社日清製粉グループ本社 000226998 渡辺 望稔 100080159 三和 晴子 100090217 吉田 英人 村田 博 篠田 栄司 7 G01N30/56 G01N30/48 G01N30/50 JP G01N30/56 A G01N30/48 G G01N30/50 11 1994229348 19940926 OL 14 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、液体クロマトグラフィーの分離カラムに乾式で充填剤を充填する方法に関し、詳しくは簡易な操作で、均一でよく圧密化された固定相を実現し、高い繰り返し安定性で、高理論段数を得ることができる液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法に関する。【0002】【従来の技術】混合物からの純粋な物質の単離や混合物の分離手段として、クロマトグラフィーを用いた、いわゆる分取クロマトグラフィーが各種適用されており、中でも比較的分解しやすい物質の分離が可能である点で、液体クロマトグラフィー、特に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が工業用途を始めとする各種の用途に適用されている。【0003】このような液体クロマトグラフィーにおいて、混合物からの優れた単体の分離に際し、より高い理論段数(良好な理論段相当高さ=HETP)を実現するためには、カラムに充填される充填剤を、均一に、かつよく圧密化された状態とする必要がある。【0004】カラムは、使用者自らが充填剤を充填するか、あるいは市場に供給されるプレパックドカラムを購入することにより利用することができる。しかし、使用者が充填する場合には、特有のノウハウや付帯設備を必要とし、再現性のよいカラムを得ることは難しい。また、使用者が充填を簡便に行えるように作成された自己充填機能付きカラムがあるが、これは非常に高価であり、工業的な使用は著しく制限される。他方、市場に供給されるプレパックドカラムも非常に高価である。【0005】カラムに充填剤を充填する方法としては、主に、充填剤を適当な溶媒に分散させスラリー状態でカラムに充填した後、ポンプ等を用いて前記溶媒を更に加圧送液することにより充填剤を圧密化する湿式充填法と、充填剤をカラムに小量づつ入れながらタッピング等を行う乾式充填法とが行われている。【0006】乾式充填法は、一般に、作業性,安全性には優れているものの、得られる理論段数は低いために、高理論段数が要求される場合には、湿式充填法が用いられている。しかしながら、湿式充填法は高理論段数は得られやすいが、高圧ポンプ等の大がかりな設備が必要であり、多量の分散溶剤(分散媒),洗浄溶剤も必要で使用時に溶剤,分散媒の置換,除去等が大変であり、その取り扱いが面倒であり、また、充填の際に50〜200kg/cm2程度の高圧が必要となるため、高耐圧構造のカラム容器が必要となり、その結果高価なものとなってしまうという問題点がある。【0007】そのため、使用者自らであっても簡便に高理論段数のカラムの充填を行うことができる液体クロマトグラフィー用カラムの開発が望まれている。【0008】このため、本出願人は、特開平5‐107237号公報において、シリカゲル等の基材の表面に超微粒子粉末を、好ましくは基材100重量部に対して0.01〜4重量部担持してなる液体クロマトグラフィー用充填剤およびこの充填剤を乾式充填法により充填してなる液体クロマトグラフィー用カラムを提案している。ここに開示された充填剤を用いることにより、流動性が良好で、乾式充填法によるカラムへの高密度かつ均一な充填を容易かつ良好に行うことができ、得られたカラムは高理論段数を実現できる。【0009】しかしながら、ここに開示されたカラムは充填剤自体の改良によって高い性能、例えば高充填率,高理論段数を得ているが、その充填方法自体は、従来の乾式充填法であって、カラムに充填剤を少量づつ入れながらタッピングを行うものにすぎず、充填方法自体の改善が強く求められている。また、上述したように湿式充填法に比べると、乾式充填法は、一般に得られる性能(特に、理論段数)が低いため、従来の充填剤を用いる場合であっても湿式充填法と同等あるいは同等以上の性能(特に、理論段数)が得られる乾式充填法の開発が強く望まれている。【0010】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解消し、乾式充填法において、安価で簡易な設備で、簡便に充填でき、低耐圧のカラム容器が使用でき、使用時の取り扱いが簡易であって、しかも高密度かつ均一な充填を行うことができ、かつ高性能、特に湿式充填法によって得られる性能と同等あるいは同等以上の性能(特に、理論段数)を得ることができ、しかも繰り返し安定性の高い液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法を提供することにある。【0011】【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明に係る液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法は、充填剤粉体を除電した後にカラム中に充填することを特徴とするものである。【0012】ここで、前記充填剤粉体の除電は、イオン風によって行うことが好ましい。また、前記カラム内の空気を前記カラムの他端から吸引することが好ましい。また、前記充填は、恒温室内で行われることが好ましい。また、前記充填剤粉体を充填する速度は、充填高さで1〜10cm/minであることが好ましい。また、前記充填剤粉体は、充填剤粉体基材表面に超微粒子粉末を担持してなるものであることが好ましい。【0013】【作用】本発明に係る液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法は、カラムの一端からフィーダーを用いて、好ましくはカラムの他端から空気などのガスを吸引しつつ、充填剤粉体を、カラム直前でイオン風によって除電した後、カラム中に、好ましくは充填高さで1〜10cm/minの充填速度で完全かつ十分に充填する方法(流通充填法)である。本充填法においては、恒温室内で充填剤粉体の充填を行うことが好ましい。また、充填剤粉体は、充填剤粉体基材表面に超微粒子粉末を、より好ましくは、基材100重量部に対して超微粒子粉末0.01〜4重量部担持してなるものであることが好ましい。【0014】従って、本発明によれば、カラムに充填する前に充填剤粉体をイオン風によって除電して、粉体の電荷を緩和除去することにより、高密度かつ均一な充填が可能となり、簡便な乾式充填にもかかわらず、湿式充填法と同等または同等以上の性能、特に高理論段数を得ることができる。【0015】【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法を添付の図面を参照して詳細に説明する。図1(a)は本発明の一実施例に係る液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法を実施するカラム充填装置の正面模式図であり、図1(b)は図1(a)に示すカラム充填装置のイオン風送入部のB−B線切断断面図である。【0016】なお、図1(a)に示すカラム充填装置10は、本発明の一実施例に係る液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法を実施するための装置であって、本装置は、分割真空充填法および流通充填法による液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法を実施可能に構成した装置である。この装置は、粉体供給部12と、バルブ14と、粉体供給部ジョイント16と、イオン風送入部18と、カラム22の両端に取り付けられるカラムジョイント20,20と、ポンプジョイント24とからなり、ポンプジョイント24は真空ポンプ26に接続され、イオン風送入部18はイオナイザー28およびフィーダー30に接続され、イオナイザー28は送風機32に接続される。【0017】粉体供給部12の上端には拡径した逆円錐状の開口部12aが設けられ、その下側にはバルブ14が組み込まれる。粉体供給部12の下端部が粉体供給部ジョイント16によって気密に締め付けられ、カラム22の上端部が粉体供給部ジョイント16とユニット化されたカラムジョイント20によって気密に締め付けられることにより、粉体供給部12とカラム22とが気密に接続される。【0018】一方、カラム22の下端部はポンプジョイント24とユニット化されたもう1つのカラムジョイント20によって締め付けられ、気密に接続される。ポンプジョイント24は真空ポンプ26に接続するためのものである。また、粉体供給部ジョイント16の外側にはイオン風送入部18が取り付けられる。イオン風送入部18は、図1(b)に示すように円環状をなし、接線方向に逆向きに平行な送入路を有し、その先端にイオン風送入口18a,18aを有し、これらの送入口18a,18aはイオン風を生成するイオナイザー28の送出口に輸送管によって接続される。イオナイザー28の送出口とイオン風送入部18の送入口18a,18aとの間の輸送管には粉体供給フィーダー30の送出管が接続される。さらにイオナイザー28には送風機32が接続され、所定風量の空気が送風機32によってイオナイザー28に送風される。【0019】なお、イオナイザー28としては、空気をイオン化できればどのようなものでもよく、市販のイオン化エアーガン,イオン化エアーノズルなどを用いることができる。例えば、イオン化エアーガンMODEL−300,MODEL−301,MODEL−312(いずれも、ヒューグルエレクトロニクス(株)製),パルスガンPG−5(大坪電気(株)製),トップガンII(ES型,HBA型、シムコジャパン(株)製)などを挙げることができる。また、粉体供給フィーダー30としては、特に制限はなく市販の粉体供給フィーダーを用いることができるが、例えば、フィードコンミュー(FCμ−030F,FCμ−200F、日清エンジニアリング(株)製)などを挙げることができる。【0020】本実施形態において用いられる液体クロマトグラフィー用充填剤粉体(以下、充填剤という)は、シリカゲル等の充填剤粉体基材のみから構成されるものでもよいが、本出願人が特開平5‐107237号公報に提案したように、充填剤粉体基材の表面に超微粒子シリカ等の超微粒子粉末を担持してなる構成を有することが好ましい。【0021】基材としては、シリカゲル等、通常の液体クロマトグラフィー用の充填剤として用いられるものがいずれも適用可能であるが、好ましくは平均粒径20〜100μm程度、より好ましくは平均粒径20〜60μm程度のものが好適に適用される。なお、形状は球形であってもよく、あるいは破砕形であってもよい。このような基材としては、具体的には、シリカゲルとしてのマイクロビーズシリカ,BWシリカ(以上、富士デビソン化学(株)製),S−50シリカ(ヤマムラ化学社製),MS−GEL(洞海化学社製)等が好適に例示される。【0022】本発明に使用される充填剤は、好ましくはこのような基材の表面に、超微粒子粉末、特に超微粒子シリカを、好ましくは均一にコーティングした状態に担持してなるものである。なお、本発明において、超微粒子とは粒径が100nm以下であることを示す。本発明においては、このような構成の充填剤を用い、本発明の充填方法と組み合わせることにより、カラム中の充填剤の充填密度を容易に均一で高密度化することを可能とし、それにより、高い理論段数を得られる液体クロマトグラフィー用カラムを実現可能としたものである。【0023】適用される超微粒子シリカの粒径は、上記条件を満たすものであれば特に限定はないが、好ましくは、5〜60nm程度、より好ましくは10〜60nm程度である。上記粒径を有する超微粒子シリカを適用することにより、充填剤の流動性が良好になり、充填密度が増し、カラム内部の粒子充填密度が均一化する。また、高理論段数を実現するためには、適用する超微粒子シリカは高純度であるものが好ましく、少なくとも90%以上、好ましくは99.8%以上の純度を有するものであるのが良い。このような超微粒子シリカとしては、具体的には、AEROSIL 130,AEROSIL 200,AEROSIL 300,AEROSIL 380,RY200,R972,R20等が好適に例示される。【0024】なお、本発明においては、このような超微粒子シリカ以外にも、超微粒子チタン,超微粒子アルミニウム等も好適に適用可能である。このような超微粒子チタンとしては、具体的には、Titanium Oxide P25(日本アエロジル社製)、超微粒子アルミニウムとしては、Aluminum Oxide C(日本アエロジル社製)等が例示される。【0025】超微粒子シリカの担持量にも特に限定はなく、シリカゲルの表面全体に均一に超微粒子シリカをコーティングした状態とできればよいが、好ましくは、シリカゲル100重量部に対して0.01〜4重量部程度、より好ましくは0.05〜2重量部程度である。【0026】シリカゲル表面に超微粒子シリカを担持させる方法には特に限定はなく、適用するシリカゲルや超微粒子シリカに応じた公知の方法を適用すればよいが、一例として、適当量の両者を傾斜式球形ミキサーに充填し、このミキサーを2000〜4000rpm程度の速度で、5分程度回転させる方法等が例示される。【0027】本発明に使用される液体クロマトグラフィー用カラム容器(以下、単にカラムという)22は、上述した充填剤を充填するためのもので、円筒状等の形状を有する。カラムの形状は通常円筒状であるが、特に制限はなく、そのサイズも用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定はない。また、材質もステンレス,硬質ガラス等、通常のHPLC用カラムに用いられる物がいずれも適用可能である。【0028】本発明に用いられるカラム充填装置,カラムおよび充填剤は、基本的に以上のように構成されるが、その作用および本発明の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法(いわゆる、流通充填法)について詳細に説明する。【0029】(1)まず、粉体供給部12を粉体供給部ジョイント16で気密に取り付け、このジョイント16にはイオン風送入部18を取り付け、カラム22を除いて図1(a)に示すカラム充填装置10を組み立てる。ここで十分に洗浄乾燥させたカラム22の上端をカラムジョイント20,20で気密に締め付けることによりカラム22をカラム充填装置10に組み込む。なお、カラム充填装置10への組み込み前に、図示しないフィルターを含むカラムエンドアッセンブリとカラム22との組立体の空重量を電子天秤で測定しておくのがよい。【0030】(2)次に、組み終えたカラム充填装置10を図示しない恒温室内に入れ、図1(b)に示すように、イオン風送入部18の送入口18a,18aに送風機32が接続されたイオナイザー28および粉体供給フィーダー30を接続し、ポンプジョイント24に真空ポンプ26を接続する。この後、真空ポンプ26でカラム22の下端から吸引するとともに送風機32から送風された空気流をイオナイザー28でイオン化させて発生させたイオン風をフィーダー30によって供給された、図示しない恒温室内で十分調整した試料充填剤粉体に混合し、この混合物を送入口18a,18aからイオン風送入部18に連続的に導入し、カラム22中に混合物を供給し、充填剤粉体を粉体供給量(充填速度)充填高さで1〜10cm/min、例えば重量で1.3g/minで充填する。【0031】(3)なお、イオン風は主にカラム22の下端から真空ポンプ26によって吸引されるが、イオン風の風量が多い場合には、バルブ14を開放し、イオン風送入部18の上部の粉体供給部12の開口12aから排出させてもよい。このようして、カラム22には、イオン風によって除電された直後の充填剤粉体が充填される。【0032】(4)このようにして充填剤粉体をカラム22の上部まで充填させた後、カラム22のタッピングを所定回数行う。例えば、タッピングは、2cmの高さで約20回繰り返すのが好ましい。(5)この後、片方ずつカラムジョイント20,20を外し、カラム22の両端にフィルターを含むカラムエンドアッセンブリを取り付け、再度、電子天秤で重量を測定し、(1)で測定した空重量を引き、充填された充填剤粉末の重量とカラム容積から、充填カラム22の充填率を算出する。【0033】(6)さらに、充填したカラム22を高速液体クロマトグラフィーに取り付け、その応答波形から理論段数を算出する。こうして、高性能、特に理論段数および充填率の高いカラムを得ることができる。【0034】このような本実施態様に係る流通充填法によって充填剤粉体が充填されたカラムが高い性能、特に高い理論数段を示すのは、イオン風を導入することによって、充填剤粉体の電荷を緩和でき、均一な充填を可能とし、高い充填率を得ることができるからである。【0035】ここで、イオン風の供給量は20〜100l/minであるのがよいが、より好ましくは少ない方が良い。その理由は真空ポンプ26により吸引できる風量に規定されるからである。また、カラム22への充填剤粉体の充填速度は特に制限的ではないが、カラム22への充填高さで10〜100mm/minであることが好ましい。その理由は粒子が十分に除電される程度の量であれば良いからである。また、上述した例では、カラム22への粉体充填に際し、カラム22の下端から真空ポンプ26で吸引しているけれども、本発明はこれに限定されず、必ずしも吸引を行う必要はない。また、上述した例では、恒温室を使用し、恒温恒湿雰囲気で充填を行っているが、本発明はこれに限定されるわけではない。【0036】ところで、上述した例では、イオン風送入部18にイオナイザー28からのイオン風と粉体供給フィーダー30から供給される充填剤粉体との混合物を供給しているが、本発明はこれに限定されず、粉体供給部12に粉体供給フィーダー30を接続し、充填剤粉体は粉体供給部12から供給し、イオン風送入部18にはイオナイザー28からのイオン風のみを導入し、両者を粉体供給部ジョイント16および/または上部カラムジョイント20において混合して、カラム22中に供給するようにしてもよい。【0037】以下に、本発明の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法を実施例に基づいて具体的に説明する。【0038】〔実施例1〕図1(a)に示すカラム充填装置10を用いて、本発明の一実施態様に係る流通充填法によって前述した手順でカラム22に試料充填剤粉体を充填した。ここで、イオナイザー28によるイオン風の風量は20l/minであった。カラム22の末端から真空ポンプ26による吸引を行った。フィーダーによる粉体供給部12からカラム22への充填剤粉体の充填速度は1.3g/minであった。カラム22は、直径10mm,高さ100mmのものを用い、充填後のタッピングは、2cmの高さで約20回行った。ここで、試料充填剤粉体は、微粉で表面処理したシリカゲル(SiO2)を調整したが、混合比を0.25〜2.0%重量比の範囲で変えた数種の充填剤粉体を用いた。恒温恒湿室内の雰囲気は、温度25℃,相対湿度50RH%とした。【0039】こうして得られた充填カラムを液体クロマトグラフィー装置(L−6000,L−4200、日立製作所製)に設置し、移動相としての酢酸エチル(15%),ヘキサン(85%)の溶液中に、フタル酸ジメチル3%,ベンゼン3%,ヘキサン94%の溶液を100μl注入し、図2に示すようなクロマトグラムを得、滞留時間tRおよび半値幅Whを実測して、理論段数Nを下記式の半値幅法により求めた。理論段数N=(tR/σ)2=5.54×(tR/Wh)2ここで、σは正規分布による標準偏差である。【0040】得られた結果を各混合比に対する理論段数として図3に示す。同図から明らかなように、イオナイザーを使用してイオン風で除電した場合も、イオナイザーを用いないで除電しなかった場合も混合比0.5%でピークを持つが、イオン風を導入した場合はイオン風を導入しなかった場合に比べ理論段数が高く、混合比が増加するにつれてより高くなることが分かる。この結果、イオン風を導入することにより、粉体の電荷を緩和でき、充填率を向上させ、理論段数を向上させることができることが分かる。【0041】ところで、本発明に係る液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法は、前述のように、図1(a)に示したような構成を有する装置を用いて、その粉体供給部12に粉体供給フィーダー30を接続し、充填剤粉体はこの粉体供給部12から供給し、イオン風送入部18にはイオナイザー28からのイオン風のみを導入して、両者を粉体供給部ジョイント16と上部カラムジョイント20のいずれか一方または両方において混合して、カラム22中に供給する方法としても実施することができる。すなわち、本装置を以下のように操作することにより、分割真空充填法による充填方法を実施することも可能である。【0042】(1’)実施例1に示した手順と同様にして、カラム22を除いて図1(a)に示すカラム充填装置10を組み立て、カラム22をカラム充填装置10に組み込む。なお、この時、バルブ14は閉めた状態にしておく。なお、カラム充填装置10に組み込む前に、カラム22とフィルターを含むカラムエンドアッセンブリとを組み立て、この組み立てカラム22の空重量を電子天秤で測定しておくのがよいことは実施例1の場合と同様である。【0043】(2’)組み終えたカラム充填装置10を恒温室(図示せず)内に入れ、ポンプジョイント24に真空ポンプ26を接続する。試料充填剤粉体は、図示しない恒温室内において十分調整したものを分割回数に合わせて1回の粉体充填量を決め、粉体供給部12に仕込んだ後、真空ポンプ26でカラム22内を所定時間、例えば1〜3分、真空ポンプ26の能力や真空圧によっては30分間吸引する。ここで、真空ポンプ26による吸引は、カラム22内の圧力が所定真空圧、好ましくは、10kPa以下になるまで行うことが好ましい。その理由は、空気の粘性を十分に小さくするためである。【0044】また、1回の充填量は、全充填量を分割回数に応じて分割した量であれば良く、毎回均一であっても、不均一であってもよいが、1回の充填量は、カラム22の大きさによって決めるのが好ましく、より好ましくは、充填高さ5〜20mmに相当する量が適量である。分割数を多くすれば、理論数段は向上するが、操作性は悪くなるからである。従って、カラム22の大きさから1回の充填量を決め、全充填量を充填する分割回数を定めるのがよい。【0045】(3’)カラム22内の圧力が所定真空圧になっていることを、例えばインジケータ(圧力計)や真空ゲージ等で確認後、イオナイザー28でイオン化させて発生させたイオン風を供給しつつ素早くバルブ14を開放し、充填剤粉体をカラム22内に急速に充填する。なお、真空圧に達していないあるいは達しない場合には、再度、カラム充填装置10を組み直して、漏れがないことを確認し、再び真空ポンプ26でカラム22内を吸引する。【0046】(4’)この後、真空ポンプを取り外し、カラム22のタッピング所定回数を行う。例えば、タッピングは、2cmの高さで約20回繰り返すのが好ましい。これは、適度な衝撃を与えるために2cm程度の高さが適当であることと、20回程度のタッピングで、充填密度がほぼ最大定常に漸近するという理由による。【0047】(5’)この分割充填(上記(2’)〜(4’))を所定回数だけ繰り返す。所定分割回数の分割充填を行って、カラム22の上部まで充填剤粉体が充填された後、粉体供給部ジョイント16とユニット化された上部のカラムジョイント20を外し、カラム22の上部を例えばカッターナイフ等で擦り切り、平らにならした後、図示しないフィルターを含むカラムエンドアッセンブリを取り付ける。この後、カラム22を逆にし、ポンプジョイント26とユニット化されたカラムジョイント20を取り外し、同様に擦り切った後、図示しないフィルターを含むカラムエンドアッセンブリを取り付ける。なお、この時、カラム22とフィルターとの間に充填剤粉体が挟まらないように気を付けるのがよい。【0048】ところで、下側のカラムジョイント20の代わりにフィルターを内蔵するカラムエンドアッセンブリをカラム22に取り付けたまま用いてもよい。この場合には、取り外し可能なポンプジョイント24をカラムエンドアッセンブリの配管接続口に直接接すればよい。この場合には、充填剤粉体をカラム22の上部まで充填後、上側のカラムジョイント20を外してカラム22の上部を平らにした後、カラム22の上部のみにフィルター付カラムエンドアッセンブリを取り付ければよい。こうすることで、カラム充填(カラム製造)操作を簡略化できる。【0049】(6’)充填し終えたカラム22は、実施例1の場合と同様に、再度、電子天秤で重量を測定し、(1’)で測定した空重量を引き、充填された充填剤粉体の重量とカラム容積から充填率を算出する。(7’)充填したカラムを高速液体クロマトグラフィーに取り付け、その応答波形から理論段数を算出する。このようにして、高性能、特に理論段数および充填率の高いカラムを得ることができる。【0050】このような、本実施態様に係る分割真空充填法によって充填剤粉体が充填されたカラムが高い性能、特に高い理論段数を示すのは、以下の理由によるものと考えられる。一般に、高い理論段数を得るには粒子径の小さい充填剤粉体を用いる必要があるが、従来の乾式充填法では、充填剤粉体が空気を抱き込んでしまい、高密度の充填を行うことができなかったが、本発明の分割真空充填法では、充填を真空中で行うことにより、空気の粘性の影響を排除できるためであると考えられる。また、多数回に分割して充填することにより、充填率がカラム内部でより均一になるため理論段数が向上するものと考えられる。【0051】上述した例では、恒温室を使用し、恒温恒湿雰囲気で充填しているが、本発明はこれに限定されるわけではない。また、分割真空充填1回当たりの充填量,真空引きの時間などは、上述した例に限定されず、カラムの大きさや分割回数および真空ポンプ26の能力や達成すべき真空圧に応じて、さらにはその他の必要に応じて適宜選択すればよい。【0052】次に、この構成における動作例を示す。図1(a)に示すカラム充填装置10を用いて、前述した(1’)〜(5’)の工程を行って分割回数を1回,2回,3回,4回,8回,12回および16回に変えてカラム22に試料充填剤粉体を充填した。本動作例では、真空ポンプ26による真空引きの時間は30分、真空ケージによる真空圧のチェックは10kPaであることを確認することで行った。また、タッピングは2cmの高さで、約20回繰り返した。さらに、充填に際して温度,湿度の影響をなくすために用いた恒温恒湿室内の雰囲気は温度25℃,相対湿度50RH%とした。【0053】ここで用いたカラム22は、(株)YMC製カラムで、その直径は10mm,高さは100mmであった。ここで、試料充填剤粉体は、シリカゲル(SiO2)で質量中位径47.5μm(MB4B、富士デビソン化学(株)製)と質量中位径0.15μm(Aerosil200、日本アエロジル(株)製)の両者を混合機を用いて混合比0.5%の重量比(微粉質量/粗粉質量)で混合撹拌し、表面処理したものを用いた。混合機(日清エンジニアリング社製、Hi−X200)の操作条件は、インペラー回転数4000rpm,混合槽傾斜角45deg,混合時間20minとした。【0054】こうして得られた充填カラムを液体クロマトグラフィー装置(L−6000,L−4200、日立社製)に設置し、移動相としての酢酸エチル(15%),ヘキサン(85%)の溶液中に、タル酸ジメチル3%,ベンゼン3%,ヘキサン94%の溶液を100μl注入し、図2に示すようなクロマトグラムを得、滞留時間tRおよび半値幅Whを実測して、理論段数Nを下記式の半値幅法により求めた。理論段数N=(tR/σ)2=5.54×(tR/Wh)2ここで、σは正規分布による標準偏差である。【0055】こうして得られた結果を図4に示す。この図から明らかなように、分割回数が増加するにつれて、理論段数も増加してきているのが分かる。この結果より、多数回に分割して充填することにより、充填率がカラム内部でより均一になるため理論段数が向上したことが分かる。【0056】次に、他の動作例を示す。図1(a)に示すカラム充填装置10を用い、前述の動作例と同様に分割真空充填法によって試料粉体をカラムに充填し、測定して理論段数を求めた。分割回数は8回および12回とした。また、用いたカラムは直径10mm,高さ100mmのものと、直径10mm,高さ150mmのものを用いた。ここでは、試料充填剤粉体として、平均粒径D50=40μmのシリカゲル(MB4B、富士デビソン化学(株)製)を微粉による表面処理をせずにそのまま用いた。また、比較のため、従来の乾式タッピング充填法によって充填した市販の直径10mm,高さ150mmの充填カラムの理論段数を測定した。これらの結果を、表1に示す。【0057】【表1】【0058】表1から明らかなように、従来の大気圧充填およびタッピングを行う乾式充填法による市販カラムは、理論段数のばらつきが大きく、相対的に低い理論段数を示しているのに対し、本発明の8回分割真空充填法による同一寸法の充填カラムは高い理論段数を示し、そのばらつきも小さいことがわかる。また、本発明の分割真空充填法による充填カラムは、分割回数が多いほど、より高い理論段数を示し、カラムの高さが変わっても、単位長さ当りの理論段数は高くなり、かつそのばらつきも小さくなることがわかる。【0059】以上、一実施例に係る液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、充填の際に、充填剤の表面にアルコール等を噴霧して充填剤の流動性を向上する等、公知の各種の操作を行ってもよいなど、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の変更および改良を行ってもよいのはもちろんである。【0060】【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によれば、湿式充填のように大がかりで複雑な設備が不要で、安価で簡易な設備で簡便に充填でき、低耐圧のカラム容器を使用でき、溶剤を使用しないので使用時の取り扱いが容易であるにもかかわらず、従来の乾式充填に比べて高く、湿式充填と同等もしくは同等以上の性能(特に、理論段数,充填率など)を得ることができ、得られた性能(特に、理論段数)のばらつきも小さく繰り返し安定性が高いという効果を奏する。【図面の簡単な説明】【図1】(a)は本発明の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法を実施するカラム充填装置の一実施例の正面図であり、(b)は(a)のB−B線断面図である。【図2】本発明の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法の実施例の流通充填法における混合比と理論段数の関係を示すグラフである。【図3】本発明の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法の他の実施例において理論段数を求めるのに用いられるクロマトグラムの一例である。【図4】本発明の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法の他の実施例における分割回数と理論段数の関係を示すグラフである。【符号の説明】10 カラム充填装置12 粉体供給部12a 供給口14 バルブ16 粉体供給部ジョイント18 イオン風送入部18a 送入口20 カラムジョイント22 カラム24 ポンプジョイント26 真空ポンプ28 イオナイザー30 粉体供給フィーダー32 送風機 充填剤粉体を除電した後にカラム中に充填することを特徴とする液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法。 前記充填剤粉体の除電はイオン風によって行うことを特徴とする請求項1に記載の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法。 前記カラム内の空気を前記カラムの他端から吸引することを特徴とする請求項1または2に記載の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法。 前記充填は、恒温室内で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法。 前記充填剤粉体は、充填剤粉体基材表面に超微粒子粉末を担持してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法。 一端に開閉可能なバルブを有する粉体供給部に閉止した前記バルブを介してカラムの一端を接続し、所定量の充填剤粉体を前記粉体供給部に仕込み、前記カラムの他端から吸引して前記カラム内を所定真空圧まで減圧し、また、前記粉体供給部とカラムとの間に設けられた除電部を作動させた後、前記バルブを瞬時に開放して、前記除電部により、前記粉体供給部から前記所定量の充填剤粉体を除電しつつ前記カラム内に充填する第1のステップと、所定回数のタッピングを行う第2のステップとを繰り返すことを特徴とする液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法。 前記第1のステップと第2のステップとを繰り返す回数が8回以上であることを特徴とする請求項6に記載の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法。 前記真空圧は、10kPa以下であることを特徴とする請求項6または7に記載の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法。 前記所定量、すなわち充填剤粉体の1回あたりの充填量は、繰り返される充填回数に応じて決定されることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法。 前記充填は、恒温室内で行われることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法。 前記充填剤粉体は、充填剤粉体基材表面に超微粒子粉末を担持してなることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法。 【課題】乾式充填法において、安価で簡易な設備で、簡便に充填でき、低耐圧のカラム容器が使用でき、使用時の取り扱いが簡易であって、しかも高密度かつ均一な充填を行うことができ、さらに、繰り返し安定性の高い液体クロマトグラフィー用カラムの充填方法を提供すること。【構成】粉体供給フィーダーによって充填剤粉体をカラム内に連続的に充填する際にカラム中に充填する前に充填剤粉体を除電することにより、上記目的を達成する(流通充填法)。また、この構成に、バルブを介してカラムに接続された粉体供給部に供給された粉体を、カラム内を真空状態にした後に、バルブを開放して急速にカラム内に充填する(分割真空充填法)ための構成を付加して、充填剤粉体を除電した後に、分割真空充填法による充填を行うように構成することも可能である。【選択図】なし


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