生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_テレフタル酸ジエステルの製造方法
出願番号:2003134300
年次:2010
IPC分類:C07C 67/08,C07B 61/00,C07C 69/82


特許情報キャッシュ

中嶋 巌 高井 正樹 JP 4470391 特許公報(B2) 20100312 2003134300 20030513 テレフタル酸ジエステルの製造方法 三菱化学株式会社 000005968 中嶋 巌 高井 正樹 20100602 C07C 67/08 20060101AFI20100513BHJP C07B 61/00 20060101ALI20100513BHJP C07C 69/82 20060101ALI20100513BHJP JPC07C67/08C07B61/00 300C07C69/82 A C07C 67/08 C07C 69/82 CAplus(STN) CASREACT(STN) REGISTRY(STN) 特開2004−300078(JP,A) 特開昭60−004151(JP,A) 特開平06−211744(JP,A) 2 2004339075 20041202 10 20060216 水島 英一郎 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、テレフタル酸ジエステルの製造方法に関する。【0002】【従来の技術】ジオクチルフタレート(DOP)、ジオクチルアジペート(DOA)等のジカルボン酸ジエステルの製造においては、アルコールの過剰のもとで、エステル化触媒の存在下または不存在下に、常圧または減圧下でエステル化反応させ、生成した水を連続的に反応系外に除去しながら反応を進め、その後使用目的に応じてアルカリ洗浄、水洗、不純物の吸着、蒸留等の後処理を経て、可塑剤、溶剤等として使用している。【0003】例えば、塩化ビニル樹脂の可塑剤として一般的に使用されているジオクチルフタレートは、原料酸として、フタル酸の無水物(無水フタル酸)が用いられる。無水フタル酸は、原料のアルコールに可溶であり、また融点が130℃程度であるため、反応温度を上げることにより無水フタル酸が原料のアルコールに溶解または無水フタル酸自体が融解するため、一定の反応温度以上であれば均一溶液での反応となる。【0004】しかしながら、この方法をテレフタル酸のジエステルの製造に応用した場合、テレフタル酸には融点がなく、また原料の1価のアルコールやエステル化生成物であるテレフタル酸ジエステルに難溶であるため、反応液中のテレフタル酸濃度は非常に低い。一般に反応速度は基質濃度に依存するため、テレフタル酸のエステル化反応速度は非常に遅く、反応の終了までに長時間を要する。【0005】テレフタル酸からテレフタル酸ジエステルを製造する場合には、以上のような問題点を抱えているために、低級アルコールのエステル、例えば、ジメチルテレフタレート(DMT)の製造においては、テレフタル酸の溶解量を増加せしめるため、テレフタル酸に対して大過剰の低級アルコールを使用してエステル化する方法が、高級アルコールのエステル、例えば、ジオクチルテレフタレート(DOTP)の製造においては、テレフタル酸のかわりに溶解性が比較的高く、融点を持つジメチルテレフタレート(DMT)のようなエステルを出発原料としてエステル交換する方法が行われている。しかしながら、前者の方法では、大過剰のアルコールを使用するために、反応器サイズが大きくなる等の問題があり、後者の方法では、テレフタル酸を出発原料とするDMTに変換するための設備が必要となる等の問題がある。従って、テレフタル酸ジエステルを製造する場合には、テレフタル酸を出発原料として若干過剰の1価のアルコールを使用してエステル化を行う方法が好ましい態様である。しかしながら、テレフタル酸を出発原料とした場合、前述したような問題点、すなわち、反応液中のテレフタル酸濃度を改善する必要がある。【0006】反応液中のテレフタル酸濃度を向上させる方法として、反応温度を上げることにより溶解度の向上を図る方法が考えられる。しかし、テレフタル酸は原料の1価のアルコールや生成物であるテレフタル酸ジエステルに難溶であるため、エステル化反応を常圧で実施した場合には、外部からの加熱温度をいくら高くしても反応温度の初期到達温度は1価のアルコールの沸点以上に上げることができない。その後、反応の進行とともに液相を形成するアルコールとテレフタル酸ジエステルの組成が変化してアルコールのモル分率が減少し、反応温度は1価のアルコールの沸点より高い温度に達するが、反応温度の上昇速度が遅いためエステル化反応に長時間を要する。【0007】反応温度を反応初期からアルコールの沸点より高い温度に上げる方法として加圧条件で実施することが上げられる。例えば、高級アルコールのテレフタル酸ジエステルを製造するにあたり、エステル化反応を加圧条件下で実施することにより、原料としての1価のアルコールの沸点より高い温度まで速やかに反応温度を上げることが可能になり反応が効率的に進行することは知られている(特開昭60−4151号公報)。しかしながら、この方法では加圧で反応させるために特別な装置が必要となる。【0008】また、テレフタル酸の溶解度を向上させる方法として、テレフタル酸を溶解する有機溶媒の存在下でエステル化反応を行うことが考えられる。テレフタル酸を溶解させる有機溶媒としては、塩基性の有機溶媒が一般的に知られている。しかしながら、エステル化触媒の存在下にエステル化を行う場合、通常使用されるエステル化触媒は酸触媒であり、塩基性の有機溶媒の存在下では触媒活性を低下させ、エステル化反応速度が低下すると考えられていた。現に、エステル化触媒存在下において、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド等の塩基性有機溶剤の存在下に多環芳香族ジカルボン酸のエステル化反応を行うと、これら有機溶剤がエステル化触媒を失活させるためか、良好な反応結果は得られないと報告されている(特開平9−25257号公報)。【0009】【特許文献1】特開昭60−4151号公報 特許請求の範囲等【特許文献2】特開平9−25257号公報 段落番号[0003]、実施例及び比較例等【0010】【発明が解決すべき課題】テレフタル酸と1価アルコールとのエステル化方法において、反応液中のテレフタル酸濃度を向上せしめ、効率よくエステル化反応を行うことができる方法が求められていた。【0011】【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決すべくテレフタル酸のエステル化に関し鋭意検討した結果、該エステル化反応系にテレフタル酸を溶解させる特定の有機溶媒、たとえそれが塩基性の有機溶媒であっても、を共存させて反応を行うことにより、効率よくエステル化反応を進行させられることを見いだし、本発明を完成するに到った。即ち本発明の要旨は、下記(1)〜(4)に存する。【0012】(1)テレフタル酸と1価のアルコールとからエステル化反応を行い、テレフタル酸ジエステルを製造するにあたり、有機溶媒としてピリジン、アミド、又はアミンの存在下にてエステル化反応を行うことを特徴とするテレフタル酸ジエステルの製造方法。(2)有機溶媒に対するテレフタル酸の溶解度が、25℃の温度において0.1wt%以上、かつ、常圧における有機溶媒の沸点が100℃以上である(1)に記載の製造方法。【0013】(3)エステル化反応がエステル化触媒の存在下に行われる(1)又は(2)に記載の製造方法。(4)反応混合物に対する有機溶媒の濃度が50wt.%以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。【0014】【発明の実施の形態】本発明方法を以下に詳述する。<有機溶媒>本発明で使用される有機溶媒としては、エステル化反応に使用される原料としての1価のアルコールよりも、テレフタル酸の溶解度が高い有機溶媒であればよい(即ち下記式1を満たす様に有機溶媒を選択すればよい。【0015】【式1】エステル化反応に使用される原料としての1価のアルコールのテレフタル酸溶解度 < 有機溶媒のテレフタル酸溶解度)が、テレフタル酸の溶解度が報告されている有機溶媒(1価のアルコールも含む)は非常に少ないため、有機溶媒の選定においては、有機溶媒に対するテレフタル酸の溶解度を調べ、使用する1価のアルコールに対する溶解度と比較する必要がある。有機溶媒を選定するための手段として、例えば分子科学計算により溶解度を推算する方法を採用することができる。理想溶液では固体(テレフタル酸)の溶解度は固体固有の性質によって定まるが、実際の溶液では理想系からのずれが生じる。この理想系からのずれ(乖離)を補正するのが活量係数である。ここで定める固体(テレフタル酸)の活量係数は有機溶媒中における無限希釈状態のものであり、この無限希釈活量係数の値(γ値)が小さいほど固体の溶解性の高い溶媒となる。この無限希釈活量係数は下記に記載する方法により計算することができる。すなわち、量子化学計算により分子の電荷密度を計算し、異種分子間の相互作用を活量係数として算出する方法で行えばよい。【0016】詳しくは、(イ)半経験分子軌道法AM―1+モンテカルロ法計算により、溶質(テレフタル酸)のエネルギー的に最も安定な構造を取得し、(ロ)得られたテレフタル酸分子構造についてCOSMO−RS(COnductor like :Screening MOdel for Real Solvent)モデルを用いた密度汎関数法(DFT)計算を行い、分子表面の電荷密度を求め、(ハ)溶液中の溶質−溶媒の相互作用は異なる電荷密度を持つ分子表面の接触による相互作用として表す統計熱力学に従って、それぞれ溶液中のテレフタル酸の化学ポテンシャルを推算し、(ニ)計算した化学ポテンシャルに基づいて無限希釈溶液におけるテレフタル酸の活量係数(γ値)を求める。【0017】使用するソフトウエアは、例えば(イ)についてはIn−House Software、(ロ)についてはTURBOMOLE、(ハ)及び(ニ)についてはCOSMOtherm/COSMObaseである(本発明においてはこれらのソフトウェアを使用した)。前述したように上記方法で求めた無限希釈活量係数(γ値)が1価のアルコールより小さい値をとるものが、1価のアルコールより溶解度が高い有機溶媒である。即ち本発明においては、テレフタル酸の有機溶媒中における無限希釈活量係数(γ値)が、1価のアルコール中におけるテレフタル酸のγ値よりも小さい値となるような有機溶媒を選択することが一手段として挙げられる。当然のことながら、実験により溶解度を測定する手段も採りうる。計算の結果から、このような有機溶媒としては、アミン類、ピリジン類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類、ケトン類が挙げられる。これらの有機溶媒の中でも、エステル化反応の原料であるテレフタル酸または1価のアルコールと反応し、通常のエステル化反応で得られる生成物以外の生成物を与えるような有機溶媒は好ましくない。【0018】本発明における有機溶媒は、更に、25℃の温度におけるテレフタル酸の溶解度が0.1wt%以上であり、かつ常圧における沸点が100℃以上の有機溶媒であることがが好ましい。テレフタル酸の溶解度が低すぎるとテレフタル酸の溶解度を向上せしめるために多量の有機溶媒が必要となるため、テレフタル酸ジエステルの生産効率が低下する場合がある。また、常圧における沸点が低すぎるとエステル化反応中に有機溶媒が揮散してしまい効果が出なくなったり、有機溶媒の使用量によっては反応温度が所望反応温度まで上昇しない場合がある。このような有機溶媒としては、ピリジン類、アミド類、アミン類の含窒素化合物が挙げられ、具体的には、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−トリメチルピリジン、5−エチル−2−メチルピリジン、4−イソプロピルピリジン、2−プロピルピリジン、3−ブチルピリジン、4−t−ブチルピリジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、キノリン等のピリジン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、N,N−ジイソプロピルアセトアミド、N,N−ジブチルホルムアミド等の非環状アミド類、N−メチル−2−ピロリドン、1,5−ジメチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−ピペリジノン、N−メチルカプロラクタム等の環状アミド化合物、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリイソオクチルアミン、トリイソデシルアミン、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N,N´,N´−テトラエチルエチレンジアミン等のアミン化合物類が挙げられる。【0019】これら含窒素化合物の中でも、25℃におけるテレフタル酸の溶解度が0.3wt%以上である化合物が好ましく、さらには、テレフタル酸の溶解度が1wt%以上である化合物が好ましい。特に好ましくは、経済性の面から汎用的に使用される有機溶媒であり、具体的には、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられ、特に好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンである。【0020】有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではなく、有機溶媒を存在させることにより、テレフタル酸の反応液中濃度が、1価のアルコールのみの場合に比べ上昇すればよい。さらに、テレフタル酸の反応液中濃度が1価のアルコールのみを使用した場合に対して、おおよそ2倍程度以上の濃度になるように添加するのが好ましい。また、有機溶媒の使用量の上限は生産効率および有機溶媒の分離工程の負荷等経済性の面から決定するのが好ましい。具体的には、反応混合物(テレフタル酸+1価のアルコール+有機溶媒)に対する有機溶媒の濃度が50wt.%以下、好ましくは30wt.%以下である。上述したように有機溶剤の使用量が多すぎると、反応速度が速くなりエステル化反応時間は短縮されるものの、後処理工程での有機溶媒の除去に長い時間を要することになり、テレフタル酸ジエステルの製造工程全体での所要時間の短縮にはつながらない場合がある。【0021】これら有機溶媒を共存させてエステル化反応を行った際には、生成物と分離する必要がある。有機溶媒の分離方法としては、蒸留分離や抽出分離が挙げられる。抽出分離を行う場合には、生成物であるテレフタル酸ジエステルとの分離を容易にするという観点から水溶性の化合物が好ましい。しかしながら、抽出分離を行う場合には、例えば、水という抽出剤が必要となり、有機溶媒を繰り返し使用するためには抽出剤との分離工程が必要で装置の負荷が大きくなる。また、有機溶媒を使い捨てにする場合には、有機溶媒と抽出剤の混合物を廃棄するため廃棄処理設備が必要となる。蒸留分離を行う場合には、有機溶媒の沸点が生成物のテレフタル酸ジエステルの沸点より高いと、テレフタル酸ジエステルを蒸留により分取する必要あり、有機溶媒の分離の負荷が大きくなる。そのため、有機溶媒の沸点は生成物であるテレフタル酸ジエステルより低い化合物が好ましい。このような有機溶媒を使用した場合、テレフタル酸ジエステルの後処理工程において、過剰のアルコールを除去する際に有機溶媒の除去も同時に行うことが可能である。この場合には、1価のアルコールと有機溶媒を分別して回収する方法や、1価のアルコールと有機溶媒の混合物として回収する方法が考えられる。いずれの回収方法においても、回収された1価のアルコール、有機溶媒およびそれらの混合物は再使用することが可能であり、再使用する場合はエステル化反応器へ戻すことが好ましい。【0022】<テレフタル酸>本発明方法で使用するテレフタル酸は、通常、繊維、樹脂等の原料として用いられる市販の粉末のものが用いられる。<アルコール>アルコールとしては特に制限はないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール、2−メチルブタノール、イソペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ノナノール、イソノニルアルコール、n−デカノール、イソデカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール、ステアリルアルコール等の脂肪族アルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール類等の脂環族アルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、トリルメタノール等の芳香族アルコールを挙げられる。またこれらのアルコールの混合物を用いてもよい。中でも、炭素数1〜18の脂肪族1価アルコールが好ましく、更に炭素数4〜12の範囲にある脂肪族1価アルコールであることが好ましい。特に好ましくは、n−ブタノール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール、2−メチルブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、n−ヘプタノール、2−メチルヘキサノール、n−オクタノール、2−メチルヘプタノール、2−エチルヘキサノール、n−ノナノール、イソノニルアルコール、n−デカノール、イソデカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノールである。【0023】これら1価アルコールの使用量は特に限定されるものではないが、テレフタル酸1モルに対して、2.0〜4.0モル比、好ましくは2.1〜3.0モル比である。1価のアルコールの仕込量が少なすぎると反応の進行が遅くなったり、反応が押し切ることができなくなり、多すぎると、反応温度の上昇速度が遅くなることにより反応遅延の原因となったり、また反応終了後に過剰のアルコールを除去するための負荷が大きくなり好ましくない。【0024】<触媒>本発明方法におけるエステル化反応は、エステル化反応触媒を使用せずとも可能であるが、反応効率化の点からエステル化触媒を使用するのが望ましく、中でも特に酸触媒が好ましい。触媒としては、公知のものでよく、例えば、硫酸、塩酸、リン酸等の鉱酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のアレーンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等のアルカンスルホン酸、スズテトラエチレート、ブチルスズマレート、ジメチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド等のスズ化合物、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート、四塩化チタン等のチタン化合物、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物が挙げられる。これらの中でも、スズ、チタン、亜鉛等金属化合物が好ましく、特に好ましくは、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート等のテトラアルキルチタネート類である。またこれらの使用量は、テレフタル酸100重量部に対し、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜1重量部である。【0025】<反応装置>反応装置としては、通常、エステル化反応に用いられる反応装置が使用できる。例えば、撹拌機、コンデンサーおよび凝縮液のうち1価のアルコールを還流できるようにした凝縮液溜めを備えた反応装置が挙げられる。<反応開始方法>反応開始方法としては、特に制限はないが、テレフタル酸、1価アルコール、有機溶媒を仕込んだ後に所望反応温度まで加熱する方法が好ましい。また、テレフタル酸、1価アルコールおよび有機溶媒の仕込み時の温度は所望温度以下であればよく、さらに、触媒を使用する場合の触媒の仕込み時期としては、特に制限はなく、反応開始時または反応途中のいずれでもよく、好ましくは、反応開始時に添加する方法が採られる。【0026】<反応および精製>反応は通常アルコールの還流下で行われ、反応圧力としては一般には常圧〜100mmHg(用いるアルコールの蒸気圧により設定される。具体的には、反応混合物が沸騰状態を維持する圧力に調整され、さらには、副生する水を系外へ除去することが可能な圧力に調整することが好ましい。)であり、また、反応温度は、通常、60〜250℃、好ましくは100〜250℃の範囲から選ばれる。反応温度が低すぎると反応の進行が遅く反応終了までに長時間を要し、反応温度が高すぎると1価のアルコールが脱水したオレフィンや脱水縮合したエーテル化合物等の反応副生成物の増加をもたらす。【0027】本発明における反応時間は、反応温度、有機溶媒の使用量、エステル化触媒を使用する場合の触媒使用量により変わりうるが、通常1時間〜48時間、好ましくは3時間〜24時間である。反応時間が短すぎると原料のテレフタル酸および/または反応中間体であるモノエステルの含量が多く、反応後の酸成分を除去する後処理工程の負荷が大きくなり、反応時間が長すぎると副生成物が増加する等によりテレフタル酸ジエステルの品質を損なう可能性がある。【0028】エステル化反応は上記反応条件において、反応率を100%近くまで向上させ、アルコールおよび有機溶媒を分離したのち、アルカリ洗浄、水洗、不純物の吸着、蒸留等の公知の方法で後処理することによりテレフタル酸ジエステルを得ることができる。触媒を使用した場合の触媒分離の方法としては、公知の方法が使用できる。具体的には、鉱酸や有機スルホン酸化合物を用いた場合にはアルカリ洗浄による除去が、有機金属化合物、例えば、テトラアルキルチタネートを使用した場合には、加水分解した後にろ過することによる除去が挙げられる。【0029】<反応方式>本発明のエステル化反応は、回分法、連続法のいずれの反応方式にも適用できる。【0030】【実施例】以下、本発明を実施例にてより詳細に説明する。<テレフタル酸の有機溶媒中における無限希釈活量係数(γ値)とテレフタル酸の溶解度>【0031】【表1】【0032】実施例1撹拌機、温度計、還流管、エステル管を備えた200mlの四つ口フラスコにテレフタル酸20g(0.12mol)、2−エチルヘキサノール39g(0.30mol)、テトライソプロピルチタネート(触媒)0.03mlおよびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)5.24g(0.053mol)を仕込み、反応系を窒素置換し、撹拌しながら230℃に加熱したオイルバスに浸して反応させた。常圧で4時間反応を行い、反応液を経時的にサンプリングし、高速液体クロマトグラフィーで分析した。4時間反応後のビス(2−エチルヘキシル)テレフタレート(DOTP)の収率は、84.3%であった。また、反応時間2.5時間までのDOTPの生成速度は、0.037モル/時であった。【0033】実施例2実施例1において、NMPの仕込み量を10.52g(0.106mol)とした以外は、実施例1と同様に反応を行った。4時間反応後のDOTP収率は80.5%であった。また、反応時間2.5時間までのDOTPの生成速度は、0.037モル/時であった。【0034】実施例3実施例1において、NMPの仕込み量を1.18g(0.012mol)とした以外は、実施例1と同様に反応を行った。4時間反応後のDOTP収率は、79.0%であった。また、反応時間2.5時間までのDOTPの生成速度は、0.031モル/時であった。【0035】実施例4実施例1において、NMPの仕込み量を0.54g(0.005mol)とした以外は、実施例1と同様に反応を行った。4時間反応後のDOTP収率は、79.7%であった。また、反応時間2.5時間までのDOTPの生成速度は、0.029モル/時であった。【0036】実施例5実施例1においてNMPのかわりに、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)を4.92g(0.056mol)使用した以外は、実施例1と同様に反応を行った。4時間後のDOTP収率は80.2%であった。また、反応時間2.5時間までのDOTPの生成速度は、0.032モル/時であった。【0037】実施例6実施例1においてNMPのかわりに、4−tert−ブチルピリジンを4.84g(0.036mol)使用した以外は、実施例1と同様に反応を行った。4時間後のDOTP収率は76.7%であった。また、反応時間2.5時間までのDOTP生成速度は、0.029モル/時であった。【0038】比較例1撹拌機、温度計、還流管、エステル管を備えた200mlの四つ口フラスコにテレフタル酸20g(0.12mol)、2−エチルヘキサノール39g(0.30mol)、テトライソプロピルチタネート0.03mlを仕込み、反応系を窒素置換し、撹拌しながら230℃に加熱したオイルバスに浸して反応させた。常圧で4時間反応を行い、反応液を経時的にサンプリングし、高速液体クロマトグラフィーで分析した。4時間反応後のDOTPの収率は72.9%であった。また、反応時間2.5時間までのDOTPの生成速度は、0.027モル/時であった。【0039】以下に実施例、比較例の結果を表―2にまとめて示した。【0040】【表2】【0041】【発明の効果】本発明の方法を用いることにより、テレフタル酸と1価アルコールとのエステル化方法において、反応液中のテレフタル酸溶解度を向上せしめ、効率よくエステル化反応を行うことができる。 テレフタル酸と1価のアルコールとからエステル化触媒であるテトライソプロピルチタネート類の存在下にエステル化反応を行い、テレフタル酸ジエステルを製造するにあたり、有機溶媒としてピリジン又はアミドの存在下にてエステル化反応を行うことを特徴とするテレフタル酸ジエステルの製造方法。 反応混合物に対する有機溶媒の濃度が50wt.%以下であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。


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