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タイトル:特許公報(B2)_ペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化剤およびペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化物質のスクリーニング方法
出願番号:2003072125
年次:2010
IPC分類:A61K 31/352,A61K 31/7048,A61K 36/23,A61K 36/53,A61P 3/00,A61P 25/00,A61P 43/00,C07D 311/30,C07D 311/36,C07H 17/07


特許情報キャッシュ

今中 常雄 林 利光 守田 雅志 JP 4530619 特許公報(B2) 20100618 2003072125 20030317 ペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化剤およびペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化物質のスクリーニング方法 今中 常雄 503100935 株式会社ツムラ 000003665 小野 信夫 100086324 今中 常雄 林 利光 守田 雅志 20100825 A61K 31/352 20060101AFI20100805BHJP A61K 31/7048 20060101ALI20100805BHJP A61K 36/23 20060101ALI20100805BHJP A61K 36/53 20060101ALI20100805BHJP A61P 3/00 20060101ALI20100805BHJP A61P 25/00 20060101ALI20100805BHJP A61P 43/00 20060101ALI20100805BHJP C07D 311/30 20060101ALN20100805BHJP C07D 311/36 20060101ALN20100805BHJP C07H 17/07 20060101ALN20100805BHJP JPA61K31/352A61K31/7048A61K35/78 NA61K35/78 QA61P3/00A61P25/00A61P43/00 111C07D311/30C07D311/36C07H17/07 A61K 31/352 A61K 31/7048 A61K 36/23 A61K 36/53 A61P 3/00 A61P 25/00 A61P 43/00 C07D 311/30 C07D 311/36 C07H 17/07 CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2002−080362(JP,A) 国際公開第02/055072(WO,A1) 特開平10−101561(JP,A) 特表2002−524522(JP,A) 特開2001−240554(JP,A) 特開2002−326932(JP,A) Chemical & Pharmaceutical Bulletin (1982), 30(1), 219-222 Ther. Res.,1987,6(2),p715-722 谿忠人著「現代医療と漢方薬」医薬ジャーナル社発行、1988年初版、p189-199、奥付 今中常雄,運動失調に関する調査及び病態機序に関する研究班 平成14年度研究報告書,2003年 3月31日,Page.101-103 3 2004277357 20041007 15 20060222 渕野 留香 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化剤に関し、更に詳細には、副腎脳白質ジストロフィー(adrenoleukodystrophy、ALD)等炭素数22以上の極長鎖脂肪酸の代謝が順調に行われないことにより生ずる疾患の治療のために有用なペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化剤に関する。【0002】【従来の技術】ALDは男児2〜3万人に一人の頻度で現れる伴性劣性遺伝病で、中枢神経系の脱髄、副腎皮質不全を特徴とする神経変性疾患である。この病気は厚生労働省の特定疾患に指定されており、国内外でその発病メカニズムについて精力的に研究されているが、現在のところ発病前の骨髄移植以外に有効な治療法はなく、早急な治療薬の開発が望まれている。【0003】ところで、細胞内に存在するペルオキシソームと呼ばれるオルガネラは脂肪酸のβ酸化や胆汁酸の合成など、脂質代謝に重要な働きをする。ALD患者ではこのペルオキシソーム膜に存在する副腎脳白質ジストロフィータンパク質(ALDP)と呼ばれる膜タンパク質に異常があり、炭素数22以上の極長鎖脂肪酸の代謝が順調に行われず、脳、副腎、血漿中に極長鎖脂肪酸が蓄積することが原因であることが知られている。【0004】これまでに、HMG−CoA還元酵素阻害剤であるスタチン系薬物が患者の血漿中の極長鎖脂肪酸の含量を減らすことが報告され、ALD治療薬としての可能性が考えられているが(非特許文献1参照)、これは血漿中コレステロールの減少を反映している可能性がある。【0005】最近、コレステロールの減少が転写因子ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)を活性化し、ALDP関連タンパク質(ALDRP)の発現誘導が起こることが報告された(非特許文献2参照)。ALDRPはALDPと相同性の高いペルオキシソーム膜ABCタンパク質であり、実際ALDPの機能を代替できることが、トランスフェクションの実験で証明されている(非特許文献3参照)。しかし、スタチン系の薬物でも血漿中の極長鎖脂肪酸の含量は減るが、脳での極長鎖脂肪酸の含量は減らないという結果が報告されており(非特許文献4および5参照)、その効果についてはまだ結論が出ていない。【0006】一方、尿素サイクル欠損症の患者に使われていた4-フェニルブチレートが極長鎖脂肪酸のβ酸化活性を上昇させることが報告され(非特許文献6参照)、また抗高脂血症薬としてよく知られているフィブラート系薬物はラット肝臓においてβ酸化を活性化する。これらはいずれもALDRPの発現誘導により活性が回復する可能性を示している。【0007】しかしフィブラート系の薬物は血液脳関門を通過しないことから治療薬としては有効でない。脳におけるALDRPの発現誘導の仕組みは解明されていないが、血液脳関門を通過しALDR発現誘導する薬物がALD治療薬として有効かもしれない。最近、ヒストン脱アセチル化酵素活性阻害薬トリコスタチンAがALDRPの発現誘導なしに極長鎖脂肪酸のβ酸化活性を上昇することが報告され(非特許文献7参照)、未知の遺伝子の発現によりβ酸化系が活性化されている可能性が示された。【0008】以上のように、ペルオキシソーム脂肪酸β酸化系に作用して極長鎖脂肪酸の代謝を促進させ、しかも安全性の高い物質はALD等の患者の治療に有用であることが予想されるが、今までにこのような物質は見いだされていないのが現状であった。【0009】【非特許文献1】Singh I., Pahan K., and Khan M. (1998) Lovastatin and sodiumphenylacetate normalize the levels of very long chain fattyacids in skin fibroblasts of X-adrenoleukodystrophy. FEBSLett., 426, 342-346.【非特許文献2】Weinhofer I., Foress-Petter S., Zigman M., and Berger J.(2002) Cholesterol regulates ABCD2 expression: implicationsfor the therapy of X-linked adrenoleukodystrophy. Hum. Mol.Gen., 11, 2701-2708.【非特許文献3】Netik A., Foress-Petter S., Holzinger A., Molzer B., Unter-rainer G., and Berger J. (1999) Adrenoleukodystrophy-relatedprotein can compensate functionally for adrenoleukodystrophyprotein deficiency (X-ALD): implications for therapy. Hum.Mol. Gene., 8, 907-913.【非特許文献4】Cartier N., Guidoux S., Rocchiccioli F., and Aubourg P.(2000) Simvastatin dose not normalize very long chain fattyacids in adrenoleukodystrophy mice. FEBS Lett., 478, 205-208.【非特許文献5】Yamada T., Shinnoh N., Taniwaki T., Ohyagi Y., Asahara H.,Horiuchi I., and Kira J. (2000) Lovastatin dose not correctthe accumulation of very long chain fatty acids in tissuesof adrenoleukodystrophy protein-deficient mice. J. Inherit.Metab. Dis., 23, 607-614.【非特許文献6】Kemp S., Wei H.-M., Lu J.-F., Braiterman L. T., McGuinnessM. C., Moser A. B., Watkins P. A., and Smith K. D. (1998)Gene redundancy and pharmacological gene therapy: Implica-tions for X-linked adrenoleukodystrophy. Nat. Med., 4, 1261-1268.【非特許文献7】McGuinness, M. C. Zhang, H.-P. & Smith, K. D. Evaluation ofpharmacological induction of fatty acid β-oxidation in X-linked adrenoleukodystrophy. (2001) Mol. Genet. Metab., 74,256-263.【0010】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に基づきなされたものであり、ペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性を向上することができるペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化物質の検出方法および安全性の高いペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化剤の提供をその課題とする。【0011】【課題を解決するための手段】本発明者らは、ALD患者由来の皮膚繊維芽培養細胞の極長鎖脂肪酸のβ酸化が正常人に比べて約30%まで減少しているのに着目し、まず、in vitroでのペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化物質のアッセイ系を確立した。【0012】そして、このアッセイ系を用い、植物成分の中からペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化物質を探索した結果、特定のフラボノイド類やこれを含有する漢方方剤がペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化剤として利用しうることを見いだし、本発明を完成した。【0013】すなわち本発明は、次の式(I)【化2】(式中、R1は、水酸基または低級アルコキシル基、R2は水素原子、水酸基または低級アルコキシ基、R3は水酸基、低級アルコキシル基または糖残基、R4は水素原子または水酸基を示し、R'およびR”は水素原子、水酸基または低級アルコキシ基を示す)で表されるフラボノイド類を有効成分とするペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化剤を提供するものである。【0014】また本発明は、極長鎖脂肪酸のβ酸化活性が低下したヒト由来の皮膚繊維芽細胞に、被検試薬と末端が標識された極長鎖脂肪酸を加えて培養し、培養後の水性代謝物中の標識量を測定するペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化物質の検出方法を提供するものである。【0015】【発明の実施の形態】本発明のペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化剤(以下、「β酸化活性化剤」という)の有効成分であるフラボノイド類は、次の方法によりスクリーニングされたものである。【0016】すなわち、極長鎖脂肪酸のβ酸化活性が低下したヒト由来の皮膚繊維芽細胞に、被検試薬と末端が標識された極長鎖脂肪酸を加えて培養し、培養後の水性代謝物中の標識量を測定することにより、スクリーニングを行うことができる。【0017】極長鎖脂肪酸のβ酸化活性が低下したヒト由来の皮膚繊維芽細胞としては、ALDPの518番目のアルギニンがグルタミンに変異したR518Qや、ALDmRNAの発現が欠損している163Tが挙げられる。【0018】また、末端が標識された極長鎖脂肪酸としては、放射性[1-14C]リグノセリン酸等が挙げられ、培養後の水性代謝物としては、アセチルCoAおよび酢酸が挙げられる。【0019】なお、上記スクリーニングに当たっては、通常の脂肪酸における代謝を対照とすることが好ましく、末端が標識された長鎖脂肪酸、例えば、[1-14C]パルミチン酸を投与して同様に測定し、この値を極長鎖脂肪酸に対する値と比較することが望ましい。【0020】以上のようにして、前記フラボノイド類(I)がβ酸化活性化剤の有効成分としてスクリーニングされたが、この式(I)において、低級アルコキシ基としては、メトキシ基等が、糖残基としてはグルコシル等がそれぞれ挙げられる。【0021】本発明のフラボノイド類(I)で表されるフラボノイド類は、いずれも植物中に存在するものとして公知のものであるか、その簡単な誘導体であり容易に入手できるものである。具体的には、バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテル、7−グルコシルジオスメチン等のフラボン類、ケルセチン5,7,3',4'−テトラメチルエーテル、カンフェロール、イソラムネチン等のフラボノール類、ゲニステイン等のイソフラボノイド等が挙げられる。【0022】上記フラボノイド類(I)は、常法に従い、適当な担体と組み合わせることによりβ酸化活性化剤とすることができ、副腎脳白質ジストロフィーや先天性ジカルボン酸代謝異常症の治療剤、あるいは高脂血症の治療、予防剤として使用することができる。【0023】本発明のβ酸化活性化剤の投与形態は、特に限定されず、一般的な医薬の投与形態から適宜選択することができる。このような投与形態の例としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤または液剤のような経口剤、または注射剤、坐剤、吸入剤等の非経口剤が挙げられる。【0024】本発明β酸化活性化剤の投与方法としては経口投与が最も好ましく、この場合の製剤中の化合物(I)の投与量としては、患者の年齢、性別、体重または疾患の程度により異なるが、通常、成人に対して、1日あたり10〜150mgの範囲であり、これを1日数回に分けて投与するのが好ましい。【0025】経口投与に適する固形経口剤の調製は、本発明化合物を単独で使用するか、あるいは、例えば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチまたは無機塩類のような賦形剤を用いて常法に従って製造することができる。前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤または香料等を適宜選択して使用することができる。【0026】この固形経口剤の調製において使用される結合剤としては、デンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはマクロゴールを例示できる。また、崩壊剤としては、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースまたは低置換ヒドロキシプロピルセルロースを例示できる。更に、界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステルまたはポリソルベート80を例示できる。【0027】更にまた、滑沢剤としては、タルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムまたはポリエチレングリコールを、流動性促進剤としては、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウムまたはケイ酸マグネシウムをそれぞれ例示できる。【0028】さらに、本発明のβ酸化活性化剤は、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤またはエリキシル剤の液状経口剤として投与することができる。このような剤形の場合には、矯味矯臭剤または着色剤を含有してもよい。【0029】一方、本発明のβ酸化活性化剤は非経口剤とすることもできる。この場合のフラボノイド類(I)の投与量は、患者の年齢、体重、疾患の程度により異なるが、通常、成人に対して1日あたり5〜150mgの範囲内であり、この投与量を、静注、点滴静注、皮下注射または筋肉注射により投与するのが好ましい。【0030】非経口剤の調製に当たっては、フラボノイド類(I)を適当な希釈剤で希釈して用いることができる。希釈剤としては、一般に、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールを用いることができる。非経口剤には、さらに必要に応じて、殺菌剤、防腐剤または安定剤を加えてもよい。【0031】これらのうち、特に、注射剤は、保存安定性の観点から、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾燥技術により水分を除去して、凍結乾燥物として保存し、使用直前に凍結乾燥物から液剤を再調製して用いることもできる。注射剤には、さらに必要に応じて、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤等を加えてもよい。【0032】その他の非経口剤としては、例えば、外用液剤、軟膏等の塗布剤または直腸内投与のための坐剤が挙げられ、これらの製剤は常法に従って製造することができる。【0033】なお、ペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化剤として、漢方方剤、例えば柴胡桂枝湯、小柴胡湯またはそのエキスとすることができる。【0034】【実施例】以下、実施例を上げ本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制約されるものではない。【0035】なお、本実施例において、採用した細胞培養方法および脂肪酸β酸化活性の測定方法は次の通りである。【0036】( 細胞培養方法 )細胞は健常人(N−H)及びALD患者(R518Q;518番目のアルギニンがグルタミンに変異したもの)由来の皮膚由来繊維芽細胞(信州大学医学部小児科、鈴木康之先生より供与)を用いた。培養にはダルベッコイーグル培地(D'MEM、ICN Biomedicals Inc.)に牛胎児血清(10%)(Filtron Pty Ltd.)、ペニシリン(70μg/ml)、ストレプトマイシン(140μg/ml)を含む培地を用い、炭酸インキュベーター(37℃、5% CO2)で培養した。細胞は3日に一度、1/3〜1/5の細胞数を新鮮な培地に移して培養した。【0037】( 脂肪酸β酸化活性の測定方法 )〜90%コンフルエントの繊維芽細胞(N−H, R518Q)を0.25% トリプシン/EDTA溶液(NaCl 4g、KCl 0.15g、Na2HPO4・12H2O 0.4g、KH2PO4 0.02g、グルコース 1g、EDTA 0.1g、トリプシン 1.25g/500 ml)を用いてプレートから剥がし、培地で懸濁した後、その一部を採取し血球計算盤でカウントした。【0038】細胞数が0.6〜0.8×105細胞/ウエルになるように6 ウエル皿(ファルコン)の各ウエルに培養した。37℃で6時間インキュベート後、培地を取り除き、各化合物(最終濃度20μM)を含む新しい培地と交換した。さらに24時間後、48時間後に同様に培地交換を行った。【0039】分子量既知の化合物はDMSO (ジメチルスルホキシド)に20mMになるように可溶化して〜30℃に保存した。分子量未知の化合物やエキスは8mg/mlもしくは20mg/mlとなるように可溶化し、最終濃度20μg/mlになるように添加した。72時間培養後、各生薬成分を含む培地(serum-free)で培地交換を行った。【0040】1時間培養後培地を除き、同培地1ml と共に各ウエルに4nmolの基質(放射性脂肪酸)を加えた。基質は[1-14C]リグノセリン酸 (比放射活性55mCi/mmol) 及び[1-14C]パルミチン酸(比放射活性 56mCi/mmol, いずれも Moravek から購入)を用いた。基質の調製は以下の通り行った。溶媒(エタノール)に窒素ガスを吹き付けて取り除いた後、αシクロデキストリンを含む緩衝液(0.1M Tris−HCl, pH 8.0, 10mM α-シクロデキストリン)を加え、超音波処理によりエマルジョン化した。【0041】各ウエルに基質を入れて37℃で1時間培養後、6ウエル皿を氷上に10分間放置した。培養液0.8mlをマイクロチューブに移し、15〜30分間氷上に放置した後、150μlの10%牛血清アルブミン(BSA)及び200μlの3N過塩素酸溶液(PCA)を加え撹拌した。30分間氷上に放置した後、遠心(12000rpm, 10分, 4℃)し、その上清を試験管に移した。ヘキサンを3 ml加え、30秒間激しく撹拌した。2000rpmで5分間遠心した後、ヘキサン層を取り除き、水層にさらにヘキサンを加えもう一度同様に撹拌した。遠心後、水層0.5 mlをバイヤルに移し、ACS II(アマシャムファルマシア)を5ml加えて液体シンチレーションカウンターで放射能を測定した。【0042】6ウエル皿の細胞は、すぐにリン酸緩衝液(NaCl 80g, KCl 2g,Na2HPO4・12H2O 28.8g, KH2PO4 2g /1 L)で2回洗浄し、セルスクレーパーを用いて回収した。超音波により破砕した後、その一部をタンパク定量に用いた。タンパク定量は Bradford 法(Bio Rad)を用いた。標準タンパク質としてIgGを使用した。【0043】実 施 例 1ALD患者由来繊維芽細胞の極長鎖脂肪酸β酸化を指標にした植物成分のスクリーニング:極長鎖脂肪酸のβ酸化に対して植物成分が有効かどうかを調べるため、上記方法により培養した培養細胞液中に放射性[1-14C]リグノセリン酸と[1-14C]パルミチン酸を投与し、水溶性代謝物(アセチルCoA、酢酸)の放射能を測定することにより脂肪酸β酸化活性を測定した。【0044】この結果、ALD患者由来の皮膚繊維芽細胞(R518Q:518番目のアルギニンがグルタミンに変異したALDP)は正常細胞に比べて、極長鎖脂肪酸のβ酸化活性は30%程度まで減少していた(図1中、ALD)。この患者由来の繊維芽細胞の極長鎖脂肪酸β酸化を指標にして、後記80種類以上の天然物由来化合物についてスクリーニングを行った。【0045】その中から効果が認められた17種類と、最近ALD治療薬としての可能性が報告されているHMG還元酵素阻害剤ロバスタチン(5μM)について2次スクリーニングを行なった。その結果、カンフェロール、ゲニステイン、バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテル、7−グルコシルジオメスチン、イソレムネチン、ケルセチン5,7,3'4'−テトラメチルエーテルに20μMの濃度で有意な効果が確認された(図1)。【0046】効果があったフラボノイドのなかで、カンフェロール、ゲニステインにはチロシンキナーゼ阻害活性が報告されており、チロシンリン酸化タンパク質がβ酸化系に関与していることを示している可能性が考えられた。ペルオキシソーム膜ABCタンパク質がチロシンリン酸化されている可能性を以前報告しており、リン酸化とβ酸化活性が関係しているか興味深い。【0047】一方、効果が認められたほとんどのフラボノイドは20μMの濃度で細胞の成長を3日間で40〜60%程度阻害した。しかし、バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルだけは、細胞の成長をほとんど阻害せずに再現性よく極長鎖脂肪酸のβ酸化活性を上昇した。この効果は現在治療薬として試されているロバスタチンよりも高く、細胞毒性も低いことが予想された。【0048】( 実験に使用した天然物由来化合物 )スコパリ酸A(scoparic acid A)、スコパドルシ酸Bメチルエーテル(scopadulcic acid B)、スコパドルシ酸G(scopadulcic acid G)、ペオニフロリゲノン(paeoflorigenone)、ペオニフロル(paeoniflor)、ギンクゲチン(ginkgetin)、6−メトキシベンゾキサゾリノン(6-methoxybenzoxazolinone)、カタルパラクトン(catalpalactone)、α−ラパコン(α-lapachone)、メチル−α−ラパコン(α-lapachone-Me)、カーノゾル(carnosol)、フレデリン(friedelin)、オレアノイン酸,(oleanolic acid)、ベチュリン酸(beturinic acid)、スコパドルシアール(scopadulcial)、リナリン(linarin)、コスモシイン(cosmosiin)、スクッテラレイン(scutellarein)、ハイペリン(hyperin)、ケルシトリン(quercitrin)、ルチン(rutin)、7−グルコシルルテオリン(luteolin-7-glc)、イソケルシトリン(isoquercitrin)、ルテオリン(luteolin)、ジオスメチン(Diosmetin)、アピゲニン(apigenin)、カンフェロール(kaempferol)、ケルセチン(quercetin)、ミリセチン(myricetin)、ミリシトリン(myricitrin)、エリオジクチオール(eriodictyol)、ヘスペリジン(hesperidin)、ミスカンソシド(miscanthoside)、ジスチリン(distylin)、アスチルビン(astilbin)、フスチン(fustin)、ホーモノメチン(formononetin)、ソホリコシド(sopholicoside)、ゲニステイン(genistein)、オリエンチン(orientin)、ビテキシン(vitexin)、エンビニン(embinin)、アメントフラボン(amentoflavone)、スェーチシン(swertisin)、イソケルシトリン(isoquercitrin)、リクイリチン(liquiritin)、フクゲチン(fukugetin)、オゴニン(wogonin)、プルニン(purunin)、ネオポンシリン( neoponcirin)、バイカリン(baicalin)、バイカレイン( baicalein)、バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテル(baicalein-5,6,7-Me)、ペクトリナリゲニン(pectolinarigenin)、ネルムロシド(nelumloside)、ケルシメリトリン(quercimeritrin)、スコパリン(scoparin)、ナスシシン(nascissin)、アリクラリン(aricularin)、レイノ−トリン(reynoutrin)、酢酸ルテオリン(luteolin-Ac)、クリソエリオール(chrysoeriol)、フォーチュネルリン(fortunellin)、7−アラビノシルジオスメチン(diosmetin-7-Ara)、7−グルコシルジオスメチン(diosmetin-7-Glc)、ペダリチン(pedalitin)、ユーパトリン(eupatrin)、シルシリオール(cirsiliol)、フェラムリン(phellamurin)アキシホリン(axifolin)、7−アラビノシルカンフェロール(kaempferol-3-Ara)、3−ガラクトシルカンフェロール(kaempferol-3-Gal,)、7−グルコシルカンフェロール(kaempferol-7-Glc)、アカシイン(acaciin)、シナイイン(cinaiin)、ロイホリン(rhoifolin)、カンフェリトリン(kaempferitrin)、グルコシルラムノシルカンフェロール(kaempferol-Glc-Rha)、シルシメリン(circimarin)、ペクトリナリン(pectolinarin)、ソルバニン(sorbanin)、イソラムネチン(isorhamnetin)、ケルセチン5,7,3',4'−テトラメチルエーテル(quercetin-5,7,3',4'-Me)【0049】実 施 例 2(a)バイカレイン誘導体の活性化効果:実施例1でバイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルに効果が認められたので、バイカレイン誘導体(バイカリン、バイカレイン)についてβ酸化活性を調べた。【0050】バイカレインは、バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルの5、6、7番の炭素と結合したメトキシ基が水酸基であるものであり、バイカリンはバイカレインの7番の炭素がグルクロン酸の1位とエーテル結合しているものである(Table 1)。通常オウゴン(コガネバナの根)には、バイカレイン、バイカリンが多く含まれているが、バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルはほとんど含まれておらず、本実験では化学的に合成したものを使用した(EXTRASYNTHESE社(フランス)から購入)。その結果を表1に示す。【0051】【表1】【0052】表1に示すように、バイカレインとバイカリンにはβ酸化活性化効果はほとんど認められず、また細胞の成長を阻害(3日間培養後の細胞総タンパク量を対照細胞と比較すると、バイカリンで70%、バイカレインで25%に低下)した。これに対してバイカレイン5,6,7−トリメチルエーテル は活性を2倍程度まで上昇した。【0053】(b)バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルの濃度依存性:ALD患者繊維芽細胞(R518Q)を用いてバイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルの濃度依存性について調べた。各濃度のバイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルで3日間培養(毎日培地交換)し、β酸化活性を測定した。その結果、バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテル濃度の上昇に呼応してβ酸化活性が上昇し、30μMで最も活性化効果が認められた(図2)。【0054】(c)変異型の異なる患者由来繊維芽細胞への効果:2種類のALD患者由来繊維芽細胞R518Q(ALDPの518番目のアルギニンがグルタミンに変異したもの)と163T(ALDmRNAの発現が欠損している患者由来細胞株)を用いて、バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテル(20μM)のパルミチン酸とリグノセリン酸のβ酸化に対する効果を調べた。この結果を表2に示す。【0055】【表2】【0056】その結果、バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルはパルミチン酸及びリグノセリン酸もβ酸化活性を2倍程度上昇させ、変異のタイプの異なる細胞でも有効なことが示された。【0057】実 施 例 3ペルオキシソーム膜ABCタンパク質発現への影響:ペルオキシソームは脂質代謝に重要なオルガネラで、特に極長鎖脂肪酸のβ酸化はミトコンドリアではおこなわれず、ペルオキシソームのみで行われる。現在哺乳動物のペルオキシソーム膜上には4つのABCタンパク質(PMP70, ALDP, ALDRP, P70R)の存在が報告されており、ALD患者ではこのペルオキシソーム膜ABCタンパク質のひとつALDP機能不全が原因で脂質代謝異常が起こる。トランスフェクションの実験から、ALDPの機能はPMP70やALDRPが代用できることが報告されている。実際、フィブラート系の薬物や治療薬として期待されているスタチン系薬物も核内転写因子を介して、ALDRPやPMP70の発現量を増加することが報告されている。【0058】そこで、バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテル処理によるこれらペルオキシソーム膜ABCタンパク質の発現量をイムノブロッティングにより確認した。このイムノブロッティングは、下記方法により、患者由来の細胞についてトリトンX−100可溶性画分をSDS−PAGEで分離し、PVDF膜に転写後、各ABCタンパク質のC末ペプチド抗体を反応させることにより行った。【0059】すなわち、上記の脂肪酸β酸化の測定時と同様の方法で、正常細胞(N−H)はDMSOのみで、患者由来細胞(R518Q)はDMSOのみとバイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルを最終濃度20μM もしくは 30μM含む培地で、10cmシャーレに各4枚ずつ72時間培養した。途中24時間毎に培地交換した。【0060】細胞をリン酸緩衝液で2回洗浄した後、セルスクレーパーを用いて2mlチューブに回収した。これに緩衝液A(20mM Tris−HCl, pH7.4, 1mM EDTA, 10% (v/v) グリセロール, 1% (v/v) Triton X−100, 100 mM NaCl, 5 mM IAA)、4プロテア-ゼ阻害剤(ペプスタチンA、ロイペプチン、キモスタチン、アンチパイン), 1mM PMSF(フッ化メチルスルホニルフォスフェート)を加えて4℃で30分間ゆっくり撹拌し、0.01容量の1M DTT(ジチオスレイトール)を加えて、4℃で20分間、14,000rpmで遠心分離した。【0061】その上清の一部を用いてタンパクを定量した。タンパク定量は Bradford 法(Bio Rad)を用い、標準タンパク質としてIgGを使用した。試料からのトリトンX−100等の除去は、Wessel&Fluggeの方法(Wessel D., and Flugge U. I.; Anal. Biochem., 138, 141-143.(1984))により行なった。【0062】この上清について4倍容量のメタノールを加え撹拌した後、遠心(9000×g、10秒)し、さらにこれにクロロホルムを2倍容量加え撹拌した。遠心(9000×g、10秒)後、3倍容量の水を加え撹拌した。遠心(9000×g、1分)後、上清のみ慎重に取り除き、3倍容量のメタノールを加え撹拌した。遠心(9000×g、2分)後、沈澱を乾燥し、SDS−PAGE用試料バッファーに100℃、5分間で可溶化した。【0063】ポリアクリルアミドグラディエントゲル(7〜15%)を作成し、1レーン200μgになる様にしてSDS−PAGEを行なった。SDS−PAGEは泳動バッファー (0.05M Trizma base, 0.38M Glycine, 0.1% SDS)を用い、20mAの定電流で3時間泳動した。泳動後、転写バッファー (25mM Trizma base、0.7M Glycine)を用い、150mAの定電流を3時間流してPVDF膜(バイオラッド)にブロッティングした。【0064】ブロッティング後、抗原抗体反応を行った。PVDF膜を、5%スキムミルクを含むTBS−T (20mM Tris−HCl, pH7.6, 137mM NaCl, 0.1% Tween 20)、で1時間インキュベ-トし、TBS−Tで洗浄した後、1次抗体2次抗体による反応を行なった。その後、ECL−plus (ファルマシア)で発色させた。1次抗体にはヒトALDP(C末24残基 九州大 山田先生から供与)、ヒトPMP70(C末15残基)に対するウサギ血清、及びヒトALDRP (C末14残基)を用い、2次抗体としてHRP標識抗ウサギIgG抗体(ファルマシア)を用いた。【0065】またイムノブロッティングした後のPVDF膜を異なる抗体で検出するために、抗体除去を行った。すなわちPVDF膜を抗体除去バッファー(2% SDS,62.5mM Tris−HCl, pH6.7, 10%(V/V)グリセロール , 100mM β−メルカプトエタノール)で70℃、30分間振騰した。そのあと、TBS−Tで10分間インキュベートを2回行った。この後の操作は上記と同様に行った。検出及び定量にはルミノイメ−ジアナライザ−LAS−1000plus(富士フィルム)を用いた。この結果を図3に示す。【0066】その結果、PMP70は患者由来細胞(R518Q)でも認められるが、ALDPは認められなかった。またALDRPの発現はいずれにも認められなかった。バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルを処理した細胞では特にALDPやALDRPの発現は検出されなかった。PMP70は患者では若干低下し、バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルの処理で少し上昇した。【0067】以上の結果、極長鎖脂肪酸のβ酸化活性が上昇するのはALDPやALDRPの発現量が増加するためとは考えにくい。一方、PMP70はバイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルで若干上昇が認められたことから、ALDPの代わりに機能を担っている可能性が考えられるが、発現量から考えてその可能性は低いと考えられる。【0068】半定量的RT−PCRにより各ABCタンパク質やβ酸化系の酵素について発現量を調べた。その結果、バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテル処理による大きな各ABCタンパク質のmRNA発現量の変化は認められなかった。【0069】実 施 例 4漢方方剤による効果:バイカレイン、バイカリン等のフラボノイド類はオウゴン(コガネバナの根)に多く含まれていることが報告されている。そこでオウゴン抽出液及びオウゴンを多く含む後記漢方方剤およびそのエキスが極長鎖脂肪酸のβ酸化活性に有効かどうかを調べた。【0070】各漢方方剤のオウゴン含有率は、柴胡加竜骨牡蛎湯(0%)、黄連解毒湯(33%)、三黄瀉心湯(44%)、大柴胡湯(11%)、防風通聖散(7%)、柴胡桂枝湯(9%)、小柴胡湯(12%)、清肺湯(12%)である。【0071】その結果、柴胡桂枝湯、小柴胡湯の漢方方剤エキスで有意な効果が認められた。しかし、オウゴンの含有率との相関関係は認められなかった。今回、DMSOのみの対照に比べて、漢方方剤エキス0時間処理でも活性の上昇が認められた。漢方方剤エキスにはサポニンなどの界面活性作用をもつものが含まれているが、この様な物質がヘキサン抽出等のβ酸化アッセイプロトコールに影響しているものと推定された。しかし、このアーティファクト(artifact)を考慮に入れても、効果は確認された。【0072】極長鎖脂肪酸の代謝異常は、極長鎖脂肪酸のβ酸化活性に対する長鎖脂肪酸のβ酸化活性の比「リグノセリン酸の代謝量/パルミチン酸の代謝量」を指標として示すことができ、その値が0.255以下でALDと診断される。【0073】先程の結果から特に有効と思われる柴胡桂枝湯エキスを処理すると、ALD細胞では最初0.234であったが、処理日数に従い値が上昇した。また正常なヒト由来の細胞でも最初は0.422であるが活性が上昇した。以上のことから漢方エキスの中にもペルオキシソームの脂質β酸化を活性化する有効なものが存在することを見出した。【0074】( 漢方方剤及びエキスの調製 )漢方方剤(柴胡加竜骨牡蛎湯、黄連解毒湯、三黄瀉心湯、大柴胡湯、防風通聖散、柴胡桂枝湯、小柴胡湯、清肺湯)は、刻み生薬により調製した。【0075】漢方方剤エキスは、漢方方剤について、一日分の構成生薬をそれぞれ量り取り、イオン交換水900 mlを加え熱時20分間抽出し、得られた抽出液をろ過した後、40℃で減圧下濃縮し、残渣をさらに凍結乾燥することにより得た。【0076】【作用】本発明により、フラボノイド類、例えばバイカレイン5,6,7−トリメチルエーテル処理において患者由来繊維芽細胞の極長鎖脂肪酸のβ酸化活性が濃度依存的に有意に上昇することが見出された。この活性化効果はロバスタチンよりも有効で、しかもロバスタチンに比べて細胞の成長への影響は少ない。【0077】バイカレインは生体内に入るとバイカリンに代謝され、排泄されることが知られている。これに対してバイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルは水酸基がメトキシ基になっているため、代謝を受けにくく、またバイカレイン、バイカリンに比べて脂溶性が高いと考えられる。効果の違いはこの脂溶性の上昇のため細胞膜を通過しやすくなったためか、代謝を受けにくくなったためと推察される。【0078】これらの事実は、バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルの治療薬としての可能性を考える上で好都合である。バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテル処理した細胞では、ロバスタチンで報告されている様なALDRPの発現量に上昇は認められなかった。患者由来の細胞ではALDPが存在しなくても、正常の30%程度の極長鎖脂肪酸のβ酸化活性は存在していること、極長鎖脂肪酸がペルオキシソームのみで代謝を受けることから考えて、ALDP非依存性の代謝経路が存在していると考えられる。バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテル処理により未知遺伝子の発現が誘導され、ALDP非依存性の代謝経路のどこかを活性化している可能性が考えられる。今後、この作用メカニズムについて検討していく必要がある。【0079】今回、数種の漢方方剤エキスにも同様な効果が認められた。漢方方剤は実際にヒトにも処方されているものであり、すぐに治療薬として使用できる可能性がある。【0080】【発明の効果】本発明のβ酸化活性化剤は、天然物由来のペルオキシソームの極長鎖脂肪酸のβ酸化活性を促進する物質を有効成分とするものであり、その作用も優れたものである。【0081】従って、極長鎖脂肪酸の代謝が不十分な疾患、例えばALD等の疾患の治療に有効である。またバイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルは長鎖脂肪酸のβ酸化も活性化することより、高脂血症の治療にも有効である。【0082】また、本発明のペルオキシソーム脂肪酸β酸化系活性化物質の検出方法を用いれば、新しいペルオキシソーム脂肪酸β酸化系に作用する物質を効率的に検出することができ、既存の脂質代謝改善薬とは異なる新規な作用機序をもつ医薬品の開発が期待される。【図面の簡単な説明】【図1】 極長鎖脂肪酸β酸化を指標にした植物成分のスクリーニング結果を示す図面。【図2】 バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテル濃度とβ酸化活性の関係を示す図面。【図3】 イムノブロッティングによりペルオキシソーム膜ABCタンパク質の発現を調べた結果を示す図面(写真)。以 上 カンフェロール、ゲニステイン、バイカレイントリメチルエーテル、グルコシルジオスメチン、ケルセチンテトラメチルエーテルまたはイソラムネチンから選ばれるフラボノイド類を有効成分とする副腎脳白質ジストロフィー(adrenoleukodystrophy、ALD)の治療剤。 バイカレイントリメチルエーテルが、バイカレイン5,6,7−トリメチルエーテルである請求項1記載の副腎脳白質ジストロフィー(adrenoleukodystrophy、ALD)の治療剤。 柴胡桂枝湯、小柴胡湯またはそのエキスを有効成分とする副腎脳白質ジストロフィー(adrenoleukodystrophy、ALD)の治療剤。


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