タイトル: | 特許公報(B2)_超磁歪型広帯域超音波発生装置 |
出願番号: | 2003065326 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | H04R 15/00,G01N 29/04,G01N 29/24,H04R 1/22 |
松澤 欣也 JP 4131179 特許公報(B2) 20080606 2003065326 20030311 超磁歪型広帯域超音波発生装置 セイコーエプソン株式会社 000002369 上柳 雅誉 100095728 須澤 修 100107261 松澤 欣也 20080813 H04R 15/00 20060101AFI20080724BHJP G01N 29/04 20060101ALI20080724BHJP G01N 29/24 20060101ALI20080724BHJP H04R 1/22 20060101ALI20080724BHJP JPH04R15/00 330H04R15/00G01N29/04 504G01N29/24H04R1/22 330 H04R 15/00 H04R 1/22 特開平10−145892(JP,A) 特開平04−096744(JP,A) 4 2004274597 20040930 8 20050329 志摩 兆一郎 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、超磁歪材料を用いて広帯域で超音波を発生する超磁歪型広帯域超音波発生装置に関する。【0002】【従来の技術】従来の超音波トランスデューサ(あるいは振動トランスデューサ)は、振動素子として圧電セラミックを用いた共振型がほとんどである(図6、例えば、非特許文献1参照)。図6に示す超音波トランスデューサは、振動素子として圧電セラミックを用いて電気の超音波への変換と超音波の電気への変換(超音波の送信と受信)の両方を行う。図6(a)に示すバイモルフ型の超音波トランスデューサは、2枚の圧電セラミック61および62と、コーン63と、ケース64と、リード65および66と、スクリーン67とから構成されている。圧電セラミック61および62は、互いに貼り合わされていて、その貼り合わせ面と反対側の面にそれぞれリード65とリード66が接続されている。【0003】一方、図6(b)に示すユニモルフ型の超音波トランスデューサは、1枚の圧電セラミック71と、ケース72と、リード73および74と、内部配線75と、ガラス76とから構成されている。圧電セラミック71は、内部配線75を介してリード73が接続されるとともに、ケース72にグランドされている。【0004】共振型の超音波トランスデューサは、圧電セラミックの共振現象を利用しているので、超音波の送信および受信の特性がその共振周波数周辺の比較的狭い周波数帯域で良好となる。この共振周波数は、製造時のばらつきで変化したり、温度、振動等の外乱の影響を受けてずれたり、あるいは、接着層の性能変化等の経時変化の影響を受けたりすることがある。このような場合には同一周波数で駆動していると出力が低下する等の影響が生じる。そのため、共振型の超音波トランスデューサは使用前あるいは使用中に共振周波数のチューニングが必要となることがあった。【0005】これに対し静電効果で振動する静電方式の超音波トランスデューサでは、広帯域型のものも実現されている(図7)。図7に示す静電方式の超音波トランスデューサは、振動体として3〜10μm程度の厚さのPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)等の誘電体81(絶縁体)を用いている。誘電体81に対しては、金属箔として形成される上電極82がその上面部に蒸着等の処理によって一体形成されるとともに、真鍮の下電極83が下面部に接触するように設けられている。この下電極83は、リード84が接続されるとともに、ベークライト等からなるベース板85に固定されている。誘電体81および上電極82ならびにベース板85は、メタルリング86、87、および88、ならびにメッシュ89とともに、ケース80によってかしめられてる。【0006】下電極83の誘電体81側の面には不均一な形状を有する数十〜数百μm程度の微小な溝が複数形成されている。この微小な溝は、下電極83と誘電体81との間の空隙となるので、上電極82および下電極83間の静電容量の分布が微小に変化する。このランダムな微小な溝は、下電極83の表面を手作業でヤスリで荒らすことで形成されている。静電方式の超音波トランスデューサでは、このようにして空隙の大きさや深さの異なる無数のコンデンサを形成することによって、超音波トランスデューサの周波数特性が広帯域となっている。ただし、非常に特性個体差が大きく、また手作業となり効率が悪い。【0007】また、超音波による音圧の強さは周波数と振幅に比例して増加するため、どちらかを大きくすることが重要である。しかし、周波数の高い超音波は減衰率も高く到達距離が短くなるという欠点をもっている。【0008】【非特許文献1】増田良介著「ビギナーズブック2、はじめてのセンサ技術」株式会社工業調査会、1998年11月18日、pp.131−133【0009】【発明が解決しようとする課題】ところで、超音波トランスデューサに対しては、周波数特性の広帯域化に加え、広い周波数範囲で音圧のレベルを一定にしたいという要望がある。これに対して上述したように、一方、非特許文献1に示すような共振型の超音波トランスデューサは周波数帯域が狭いという課題があり、他方、静電方式の超音波トランスデューサは、周波数帯域は比較的広くできるものの、製造効率が悪いという課題がある。【0010】広い周波数帯域で一定の音圧レベルを得るには、広い周波数帯域に渡って超音波の振幅を所定の大きさに管理する必要がある。振幅の大きさは、超音波の発生源となる振動素子や振動体の変位量で管理することができる。上述したような圧電材料を用いる共振型の超音波トランスデューサや、広周波数帯域の静電方式の超音波トランスデューサは、振動素子や振動体の変位量が小さい。そのため、変位量を高精度で管理しようとすると、製造品質をさらに向上させたり、出力制御をより精度良く行ったりする必要がある。【0011】本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、広帯域に渡って一定レベルの音圧を発生することができる超磁歪型広帯域超音波発生装置を提供することを目的とする。より具体的には、本発明は、磁界の変化に対する振動体の変位量が大きく、また、変位量の管理が容易になる超磁歪型広帯域超音波発生装置を提供することを目的とする。【0012】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明は、超磁歪特性を有する振動体と、振動体に変動磁界を掛ける変動磁界発生手段と、振動体に予圧を掛ける予圧発生手段と、振動体にバイアス磁界を掛けるバイアス磁界発生手段とを備えることを特徴とする。この構成によれば、超磁歪特性を有する振動体を用いているので、圧電材料等を振動体に用いるものに比べ、振動体の変位量を大きくすることができる。さらに、予圧発生手段によって振動体に予圧を掛けているので磁歪勾配(磁歪勾配)が高くなるとともに、バイアス磁界発生手段によって振動体にバイアス磁界を掛けているので変位の直線性を向上させることができる。【0013】また、本発明は、前記振動体の先端部に、該振動体によって振動される複数の振動子からなる被振動手段が設けられていることを特徴とする。この構成によれば、複数の振動子が同時に高周波振動するので、広帯域に渡って超音波を発生することができる。【0014】また、本発明は、前記振動子が、前記振動体の振動方向に延びた針状の突起物であることを特徴とする。この構成によれば、より多くの振動子を振動体の先端部に設けることができ、より広い周波数帯域に渡って超音波を発生することができる。【0015】また、本発明は、前記振動体が、複数の溝が形成された円柱形状を有するもの又は薄板状の部材を振動方向に積層化したものであることを特徴とする。この構成によれば、振動体の高周波特性を向上させることができる。【0016】また、本発明は、前記振動体が円柱形状を有するものであり、前記変動磁界発生手段が、振動体の周囲に円筒状に捲き回されたコイルからなり、前記予圧発生手段が、振動体の振動方向に縮められた弾性体からなり、前記バイアス磁界発生手段が、変動磁界発生手段の周囲に設けられた円筒状の永久磁石であって、円筒状のヨークに囲われたものからなることを特徴とする。この構成によれば、各構成要素を効率良く組み合わせることができ、装置の小型化や高効率化を図ることができる。【0017】【発明の実施の形態】以下、本発明による超磁歪型広帯域超音波発生装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。【0018】図1は、本発明による超磁歪型広帯域超音波発生装置の一実施の形態の構成例を示す断面図である。図1に示す超磁歪型広帯域超音波発生装置100は、超磁歪素子10と、磁界コイル11と、バイアス永久磁石12と、予圧用皿ばね13と、ヨーク14、15、16、および17と、フランジ部18と、振動ピン19と、電源端子20とを備えて構成されている。【0019】超磁歪素子10は、超磁歪特性を有する円柱形状の振動体であって、Tb−Dy−Fe合金(テルビウム−ジスプロシウム−鉄の合金)などの超磁歪材料で形成されている。Tb−Dy−Fe合金からなる超磁歪素子では、PZT等からなる圧電材料をはるかに凌ぐ、2000ppm程度の変位量を有している。例えば、素子の厚さ(方向A)が10mmの場合、変化量は20μmとなる。【0020】磁界コイル11は、超磁歪素子10に変動磁界を掛ける変動磁界発生手段となるものであり、超磁歪素子10の周囲に円筒状に捲き回されたコイルである。磁界コイル11に交流電流を通電すると、矢印Aの方向で変動する磁界が発生する。【0021】バイアス永久磁石12は、超磁歪素子10にバイアス磁界を掛けるバイアス磁界発生手段となるものであり、その着磁方向が矢印Aの方向である。このバイアス永久磁石12は、磁界コイル11の周囲に設けられた円筒状の永久磁石であって、円筒状のヨーク14に囲われている。予圧用皿ばね13は、超磁歪素子10に予圧を掛ける予圧発生手段となるものである。予圧用皿ばね13は、フランジ部18とヨーク17に挟まれて、超磁歪素子10の振動方向(矢印Aの方向)に縮められた弾性体である。【0022】ヨーク14、15、16、および17は、強磁性体の磁性材料からなり、磁界コイル11およびバイアス永久磁石12が発生する磁束が通る磁気回路を形成する。さらに、ヨーク14、16、および17が超磁歪型広帯域超音波発生装置100の外枠となり、ヨーク14、15、および16が超磁歪素子10、磁界コイル11やバイアス永久磁石12を支持する機能を有する。ヨーク14および15が円筒状(あるいは円環状)、ヨーク16および17が円板状の形状をそれぞれ有し、ヨーク16の中心部にはフランジ部18が矢印Aの方向に可動するための貫通穴が設けられている。【0023】フランジ部18は、2段の円柱形状を有するように、ステンレス、真鍮等の金属、プラスチック等の非磁性体から構成されている。フランジ部18は、その底面が超磁歪素子10の先端部に固定されていて、その反対の面で予圧用皿ばね13の接触部と、その先端部で振動ピン19の支持部とを構成している。【0024】振動ピン19は、フランジ部18の先端部に固定されている超音波発生用の振動子であって、超磁歪素子10の振動方向(矢印Aの方向)に延びた針状の突起物である。振動ピン19は、鉄系、プラスチック系、あるいはシリコン系の材料からなり、各々が直径100μm程度で、フランジ部18の先端に合計で数百〜数千本設けられている。振動ピン19は、図2に示すように、エッチング処理等でフランジ部18に設けられた複数の凹部18a、18a、…に、振動ピン19、19、…を嵌合することで固定されている。このように振動ピン19を超磁歪素子10の振動方向に延びた針状の突起物とすることで、より多くの振動ピン19を密集させて超磁歪素子10の先端部に設けることができる。これによって、より広い周波数帯域に渡って超音波を発生することができる。【0025】電源端子20は、ヨーク16に固定されたコネクタであって、接点と絶縁部材とから構成されている。電源端子20には、磁界コイル11の両端部に接続された2つの接点が設けられている。【0026】以上の構成で、電源端子20から磁界コイル11の両端に周波数20kHz以上等の交流電圧を印加すると、磁界コイル11に交流電流が流れ、磁界コイル11によって変動磁界が発生する。この変動磁界によって超磁歪素子10が矢印Aの方向に振動する。超磁歪素子10が振動は、フランジ部18の振動となり、振動ピン19が振動することになる。すなわち複数の振動ピン19が同時に高周波で振動することになり、振動ピン19を主要な振動源として超音波が発生する。【0027】超磁歪型広帯域超音波発生装置100による超音波発生時の周波数特性は、例えば、図3に示すように、広帯域なものとなる。図6に示すような従来の素子では、破線で示すように、共振周波数近傍の周波数帯域の入力に対してのみ良好な音圧レベルを得ることができる。これに対して、本実施の形態の超磁歪型広帯域超音波発生装置100では、実線で示すように、広い周波数帯域で良好な(比較的大きくかつ一定の)音圧レベルを得ることができている。なお図3で横軸は印加した交流電圧の周波数、縦軸は音圧レベルである。【0028】また、図1に示す構成では、超磁歪素子10に対して、バイアス永久磁石12によって常時、バイアス磁界が掛けられている。これによって、磁界コイル11に通電された電流の変化に対して、超磁歪素子10は、より直線的に変位するようになっている。すなわち、例えば図4に示すように、バイアス磁界がない場合(破線)に比べ、バイアス磁界があるとき(実線)は、電流の変化に対して、より直線的に、かつより大きく変位するようになっている。【0029】また、超磁歪素子10に対しては、予圧用皿ばね13によって、予圧力が掛けられている。これによって、磁歪効率(磁歪勾配)が高められている。すなわち、例えば図5に示すように、予圧を掛けることで、予圧力がない場合に比べ、同一磁界に対してより大きな磁歪を得ることができている。【0030】なお、超磁歪素子10は、複数の溝が形成された円柱形状を有するものにしたり、薄板状の部材を振動方向に積層化したものにしたりすることができる。この場合、超磁歪素子10の磁歪材料としての高周波数特性をより向上させることができる。また、予圧用皿ばね13は、皿ばねに限らず、コイルばね、渦巻ばね、板ばね等であってもよいし、油圧や空気圧を用いる予圧手段であってもよい。また、バイアス永久磁石12は、電磁石等に代えることもできる。【0031】本実施の形態によれば、振動体の変位量が大きくとれるので、製造のばらつきの影響度合いを小さくしたり、変位量をより精度良く制御したりすることができ、従来に比べ、振動体の変位量の管理がしやすくなる。したがって、より容易に広帯域に渡って一定レベルの音圧を発生することができる。【0032】なお、本発明の応用製品としては、測距センサ、3次元スキャンによる形状認識センサ、音圧変化による対象物材質分析センサ等が考えられる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の超磁歪型広帯域超音波発生装置の一実施の形態を示す断面図。【図2】フランジ部18の先端部(一部)の形状を示す平面図。【図3】図1の超磁歪型広帯域超音波発生装置100の周波数音圧特性図。【図4】バイアス磁界あり/なしによる電流−変位特性の変化を示す図。【図5】予圧による磁界−磁歪特性の変化を示す図。【図6】従来の圧電方式の共振型の超音波トランスデューサの構成図。【図7】従来の静電方式の広帯域超音波トランスデューサの構成図。【符号の説明】10 超磁歪素子、11 磁界コイル、12 バイアス永久磁石、13 予圧用皿ばね、14〜17 ヨーク、18 フランジ部、19 振動ピン、20 電源端子、100 超磁歪型広帯域超音波発生装置 超磁歪特性を有する振動体と、 前記振動体に変動磁界を掛ける変動磁界発生手段と、 前記振動体に予圧を掛ける予圧発生手段と、 前記振動体にバイアス磁界を掛けるバイアス磁界発生手段と を含み、 前記振動体の先端部に、該振動体によって振動される複数の振動子からなる被振動手段が設けられていること を特徴とする超磁歪型広帯域超音波発生装置。 前記振動子が、前記振動体の振動方向に延びた針状の突起物であることを特徴とする請求項1記載の超磁歪型広帯域超音波発生装置。 前記振動体が、複数の溝が形成された円柱形状を有するもの又は薄板状の部材を振動方向に積層化したものであることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項記載の超磁歪型広帯域超音波発生装置。 前記振動体が円柱形状を有するものであり、 前記変動磁界発生手段が、前記振動体の周囲に円筒状に捲き回されたコイルであり、 前記予圧発生手段が、前記振動体の振動方向に縮められた弾性体であり、 前記バイアス磁界発生手段が、前記変動磁界発生手段の周囲に設けられた円筒状の永久磁石であって、円筒状のヨークに囲われたものである ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の超磁歪型広帯域超音波発生装置。