タイトル: | 特許公報(B2)_フタル酸シクロアルキルエステルを分解する微生物 |
出願番号: | 2003009036 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12N 1/20,B09C 1/10,C02F 3/34 |
重松 亨 森村 茂 木田 建次 JP 4264932 特許公報(B2) 20090227 2003009036 20030117 フタル酸シクロアルキルエステルを分解する微生物 財団法人くまもとテクノ産業財団 801000050 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 重松 亨 森村 茂 木田 建次 20090520 C12N 1/20 20060101AFI20090423BHJP B09C 1/10 20060101ALI20090423BHJP C02F 3/34 20060101ALI20090423BHJP JPC12N1/20 AB09B3/00 EC02F3/34 Z C12N 1/20 B09C 1/10 C02F 3/34 BIOSIS/WPIDS(STN) JSTPlus(JDreamII) 特開2000−287677(JP,A) 7 FERM P-19186 2004215608 20040805 9 20051220 森井 隆信 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、フタル酸シクロアルキルエステルを分解する能力を有する微生物およびその利用に関する。【0002】【従来の技術】いわゆる環境ホルモンは動物の性転換や精子密度の減少等の生殖器官形成の異常を惹起する内分泌撹乱活性を有する物質であり、人体への悪影響が深刻な問題となっている。フタル酸エステルはプラスチックの可塑剤として広く使用されているが、フタル酸エステルの多くは内分泌撹乱活性を有する環境ホルモンとしての疑いが持たれているため、その分解と除去が重要な課題となっている。【0003】工場または生活廃水に混入したフタル酸エステルを分解及び除去する方法としては、特異性や費用の観点から、工場や下水処理場の活性汚泥としてフタル酸を分解する能力のある細菌を用いることが好ましい。従来、フタル酸エステルを分解する能力のある細菌がいくつか報告されている。【0004】非特許文献1には、ロードコッカス・ノカルジア・エリスロポリス(Rhodoccocus Nocardia erythropolis)、ロードコッカス・ノカルジア・レストリクタ(Rhodeccocus Nocardia restricta)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、シュードモナス・ルルオレセンス(Pseudomonas flourescens)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、バークホルデリア・シュードモナス・セパシア(Burkholderia Pseudomonas cepacia)、デルフチア・シュードモナス・アシドボランス(Delftia Pseudomonas acidovorans)、エロモナス(Aeromonas)属の微生物がフタル酸エステル分解能を有することが開示されている。非特許文献2にはアルトロバクター・ケイセリ(Arthrobacter keyseri)がフタル酸エステルを分解する能力を有することが開示されている。特許文献1及び特許文献2にもフタル酸エステル分解能を有する微生物が記載されている。【0005】しかしながら、これらの文献に報告されている微生物は、フタル酸の直鎖又は分枝鎖アルキルエステル(フタル酸ジメチルエステル、フタル酸ジ−n−ブチルエステル、又はフタル酸ジ−2−エチルヘキシルエステル)を分解できるものの、フタル酸ジ(シクロヘキシル)エステルのようなフタル酸シクロアルキルエステルを分解できるものではない。フタル酸シクロアルキルエステルは、環境省がホルモン戦略計画“SPEED 98”において「優先してリスク評価に取り組むべき化学物質」として定めて化学物質の一つであり、この物質を分解できる微生物の取得が切望されているが、従来、フタル酸シクロアルキルエステルを効率的に分解できる微生物は報告されていない。【非特許文献1】微生物の分離法、663-673、R&Dプランニング(1986)【非特許文献2】J.Bacteriol., 183(12), 3689-703(2001)【特許文献1】特開2001−120258号公報【特許文献2】特開2002−142754号公報【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、フタル酸シクロアルキルエステルを分解する能力を有する新規な微生物を提供することにある。また、本発明の別の課題は、上記の特徴を有する微生物を用いて、廃水や汚染土壌からフタル酸シクロアルキルエステルを除去する方法を提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、アルトロバクター(Arthrobacter)属に属する微生物がフタル酸シクロアルキルエステルを分解する能力を有することを見出し、本発明を完成するに至った。【0008】すなわち、本発明は、アルトロバクター属に属する微生物であって、フタル酸シクロアルキルエステルを分解する能力を有する微生物を提供するものである。この微生物の好ましい態様によれば、フタル酸シクロアルキルエステルがフタル酸シクロヘキシルエステルである上記の微生物、及びフタル酸シクロアルキルエステルがフタル酸ジシクロヘキシルエステルである上記の微生物が提供される。特に好ましい態様によれば、アルトロバクター属に属する微生物が受託番号FERM P-19186である上記の微生物が提供される。【0009】別の観点からは、フタル酸シクロアルキルエステルを分解する方法であって、アルトロバクター属に属し、かつフタル酸シクロアルキルエステルを分解する能力を有する微生物をフタル酸シクロアルキルエステルと接触させる工程を含む方法が本発明により提供される。さらに別の観点からは、処理対象物からフタル酸シクロアルキルエステルを除去する方法であって、アルトロバクター属に属し、かつフタル酸シクロアルキルエステルを分解する能力を有する微生物を処理対象物と接触させる工程を含む方法が提供される。この発明の好ましい態様によれば、処理対象物が廃水又は汚染土壌である上記方法;及び上記微生物を活性汚泥として廃水に接触させる上記方法が提供される。また、本発明により、上記微生物を含む活性汚泥も提供される。【0010】【発明の実施の形態】本発明の微生物は、アルトロバクター属に属する微生物であって、かつフタル酸シクロアルキルエステルを分解する能力を有することを特徴としている。本発明の微生物はアルトロバクター属に属し、かつフタル酸シクロアルキルエステルを分解する能力を有するものであれば、その種類は特に限定されない。被験微生物がフタル酸シクロアルキルエステルを分解する能力を有するか否かは、本明細書の実施例に具体的に説明した方法により、当業者は容易に確認することができる。また、被験微生物がアルトロバクター属に属するか否かは、微生物分類学の分野において通常用いられる手法に従って当業者が容易に確認できる。【0011】本発明の微生物の好ましい態様として、本明細書の実施例に具体的に示したアルトロバクターC1株を挙げることができる。この微生物は、本発明者らにより初めて分離された微生物であり、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に平成15年(2003年)1月16日付けで受託番号FERM P-19186として寄託されている。このアルトロバクターC1株は、フタル酸シクロアルキルエステルを含む規定培地中で30℃にて30時間培養した場合、フタル酸シクロアルキルエステルの80%以上を分解し、好ましくは90%以上を分解し、より好ましくは95%以上を分解し、最も好ましくは100%分解することができる。【0012】本明細書において、フタル酸シクロアルキルエステルとは、好ましくは、下記の式で表される化合物である。【化1】(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は置換若しくは無置換アルキル基を示し、ただしR1及びR2のうち少なくとも1つは置換若しくは無置換アルキル基を示す。)【0013】本明細書において、特に言及しない場合には、アルキル基は好ましくは炭素数1〜20個のアルキル基であり、直鎖状、分枝鎖状、環状、及びそれらの組み合わせからなるアルキル基を包含する。シクロアルキル基とは、脂環状構造を有するアルキル基のことであり、環上には1又は2個以上の直鎖状、分枝鎖状、又は環状のアルキル基を有していてもよい。シクルアルキル基は、好ましくは炭素数5〜20個である。【0014】より具体的には、シクロアルキル基として、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、メチルシクロペンチル基、n−プロピルシクロペンチル基、イソプロピルシクロペンチル基、n−ブチルシクロペンチル基、イソブチルシクロペンチル基、tert−ブチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、n−プロピルシクロヘキシル基、イソプロピルシクロヘキシル基、n−ブチルシクロヘキシル基、イソブチルシクロヘキシル基、tert−ブチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、n−プロピルシクロヘプチル基、イソプロピルシクロヘプチル基、n−ブチルシクロヘプチル基、イソブチルシクロヘプチル基、tert−ブチルシクロヘプチル基、メチルシクロオクチル基、n−プロピルシクロオクチル基、イソプロピルシクロオクチル基、n−ブチルシクロオクチル基、イソブチルシクロオクチル基、tert−ブチルシクロオクチル基などを挙げることができる。これらのうち、シクロヘキシル基が好ましい。【0015】フタル酸シクロアルキルエステルとしては、フタル酸モノシクロアルキルエステル又はフタル酸ジシクロアルキルエステルのいずれであってもよい。フタル酸モノシクロアルキルエステルの場合には、もう一つのカルボキシル基が直鎖状又は分枝鎖状アルキル基のエステルを形成していてもよい。フタル酸ジシクロアルキルエステルの場合には、2つのシクロアルキル基は同一でも異なっていてもよい。【0016】フタル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、フタル酸モノ(シクロペンチル)エステル、フタル酸モノ(シクロヘキシル)エステル、フタル酸モノ(シクロヘプチル)エステル、フタル酸モノ(シクロオクチル)エステル、フタル酸モノ(シクロノニル)エステル、フタル酸モノ(シクロデシルシクロウンデシル)エステル、フタル酸モノ(シクロドデシル)エステル、フタル酸モノ(メチルシクロペンチル)エステル、フタル酸モノ(n−プロピルシクロペンチル)エステル、フタル酸モノ(イソプロピルシクロペンチル)エステル、フタル酸モノ(n−ブチルシクロペンチル)エステル、フタル酸モノ(イソブチルシクロペンチル)エステル、フタル酸モノ(tert−ブチルシクロペンチル)エステル、フタル酸モノ(メチルシクロヘキシル)エステル、フタル酸モノ(n−プロピルシクロヘキシル)エステル、フタル酸モノ(イソプロピルシクロヘキシル)エステル、フタル酸モノ(n−ブチルシクロヘキシル)エステル、フタル酸モノ(イソブチルシクロヘキシル)エステル、フタル酸モノ(tert−ブチルシクロヘキシル)エステル、フタル酸ジ(ノシクロペンチル)エステル、フタル酸ジ(シクロヘキシル)エステル、フタル酸ジ(シクロヘプチル)エステル、フタル酸ジ(シクロオクチル)エステル、フタル酸ジ(シクロノニル)エステル、フタル酸ジ(シクロデシルシクロウンデシル)エステル、フタル酸ジ(シクロドデシル)エステル、フタル酸ジ(メチルシクロペンチル)エステル、フタル酸ジ(n−プロピルシクロペンチル)エステル、フタル酸ジ(イソプロピルシクロペンチル)エステル、フタル酸ジ(n−ブチルシクロペンチル)エステル、フタル酸ジ(イソブチルシクロペンチル)エステル、フタル酸ジ(tert−ブチルシクロペンチル)エステル、フタル酸ジ(メチルシクロヘキシル)エステル、フタル酸ジ(n−プロピルシクロヘキシル)エステル、フタル酸ジ(イソプロピルシクロヘキシル)エステル、フタル酸ジ(n−ブチルシクロヘキシル)エステル、フタル酸ジ(イソブチルシクロヘキシル)エステル、フタル酸ジ(tert−ブチルシクロヘキシル)エステル等を挙げることができる。これらのうち、フタル酸ジシクロヘキシルエステルが好ましい。【0017】本発明の微生物は、当業界で公知のスクリーニング方法によって、土壌などから分離することができる。スクリーニング方法の1例として、フタル酸シクロアルキルエステルを唯一の炭素源として培養を行い、フタル酸シクロアルキルエステルを分解する性質を有する微生物を濃縮して分離する方法が挙げられる。該微生物は、例えば、工場廃水、下水処理場の活性汚泥、廃棄物処理場の土壌などから分離することができる。【0018】本発明の微生物としては、上記のようにして分離されたアルトロバクター属に属する微生物、好ましくはアルトロバクターC1株に突然変異誘発処理を行うことにより得られる微生物を用いてもよい。突然変異誘発処理は当業界で周知であり、例えば、α線、β線、γ線又はX線などの照射、あるいはニトロソグアニジン又はベンゾピレンのような変異原性化学物質による処理などを挙げることができる。【0019】本発明の微生物を用いたフタル酸シクロアルキルエステルの分解は、上記細菌をフタル酸シクロアルキルエステルを含む培地、好ましくは規定培地で、好気性条件下に培養することによって行うことができる。本明細書において、「規定培地」とは構成成分が全て規定されている培地を意味している。規定培地には、例えば、M9培地、普通ブイヨン培地、ハートインフュジョン培地、トリプトソイブイヨン培地、ツァペックドックス氏培地、NB培地などの培地が包含される。【0020】普通ブイヨン培地は、水を溶媒として、培地1リットルあたり、肉エキス3g、ペプトン10g、および塩化ナトリウム5gを含み、pHが7.0に調整された培地である。ハートインフュジョン培地は、水を溶媒として、培地1リットルあたり、ウシ心臓滲出液500g、ペプトン10g、および塩化ナトリウム5gを含み、pHが7.4に調整された培地である。トリプトソイブイヨン培地は、水を溶媒として、培地1リットルあたり、トリプトン17g、ソイペプトン3g、ブドウ糖2.5g、および塩化ナトリウム5gを含み、pHが7.3に調整された培地である。ツァペックドックス氏培地は、水を溶媒として、培地1リットルあたり、ショ糖 30g、K2HPO4 1g、MgSO4・7H2O 0.5g、KCl 0.5g、NaNO3 2g、およびFeSO4・7H2O 0.01gを含み、pHが5.6に調整された培地である。NB培地は、水を溶媒として、培地1リットルあたり、肉エキス3g、ポリペプトン5g、酵母エキス2g、および塩化ナトリウム2gを含み、pHが7.0に調整された培地である。【0021】例えば、本発明の微生物の培養に適切な培地を調製し、この培地に本発明の微生物を添加する。微生物は、添加に先立って前培養を行うことが好ましい。培地への微生物の添加量は当業者が適宜選択可能であるが、通常、液体培地1mlあたり約103〜109個、好ましくは約104〜108個、より好ましくは約106〜108個程度である。培養は、約10℃〜約45℃、好ましくは約20℃〜約40℃、最も好ましくは約30℃で行うことができる。培養に際して攪拌を行うことが好ましく、好気性条件を保つために、培養液に空気又は酸素を吹き込みながら培養を行うことが好ましい。このような培養条件下において、培養の開始前又は培養中にフタル酸シクロアルキルエステルを添加することができる。【0022】本発明の微生物を用いて、例えば土壌や廃水中に含まれるフタル酸シクロアルキルエステルを除去するためには、例えば土壌や活性汚泥中に上記の微生物を添加して、フタル酸シクロアルキルエステルと該微生物が好気性条件下で接触するようにすればよい。本発明の微生物を用いた廃水の処理は、例えば、フタル酸シクロアルキルエステルを含む廃水に本発明の微生物を添加した後、この混合液を、約10℃〜約45℃、好ましくは約20℃〜約40℃、最も好ましくは約30℃に保つことにより行うことができる。上記の処理を行うに際して混合液を攪拌することが好ましく、好気性条件を保つために、混合液に空気又は酸素を吹き込みながら処理を行うことが好ましい。【0023】また、本発明の微生物を含む活性汚泥を用いることにより、排水中のフタル酸シクロアルキルエステルを極めて効率的に除去することができる。本発明の微生物を含む活性汚泥は、下水処理場の活性汚泥を採取することなどにより容易に入手可能な通常の活性汚泥に対して、本発明の微生物、好ましくは上記のC1株が活性汚泥中で適宜の割合、例えば0.01重量%〜10%程度の範囲となるように添加した後、この活性汚泥を好気性処理装置に導入してフタル酸アルキルエステルを含む廃水を供給することにより調製できる。【0024】本発明の微生物は、フタル酸シクロアルキルエステル以外にも、例えばフタル酸の直鎖又は分枝鎖アルキルエステル(モノエステル及びジエステルを含む)を分解することもできる。フタル酸の直鎖アルキルエステルとしては、例えば、フタル酸モノメチルエステル、フタル酸モノエチルエステル、フタル酸モノ(n−プロピル)エステル、フタル酸モノ(n−ブチル)エステル、フタル酸モノ(n−ペンチル)エステル、フタル酸モノ(n−ヘキシル)エステル、フタル酸モノ(n−へプチル)エステル、フタル酸モノ(n−オクチル)エステル、フタル酸モノ(n−ノニル)エステル、フタル酸モノ(n−デシル)エステル、フタル酸モノ(n−ウンデシル)エステル、フタル酸モノ(n−ドデシル)エステル、フタル酸ジメチルエステル、フタル酸ジエチルエステル、フタル酸ジ(n−プロピル)エステル、フタル酸ジ(n−ブチル)エステル、フタル酸ジ(n−ペンチル)エステル、フタル酸ジ(n−ヘキシル)エステル、フタル酸ジ(n−へプチル)エステル、フタル酸ジ(n−オクチル)エステル、フタル酸ジ(n−ノニル)エステル、フタル酸ジ(n−デシル)エステル、フタル酸ジ(n−ウンデシル)エステル、フタル酸ジ(n−ドデシル)エステル等などを挙げることができる。これらのうち、フタル酸ジエチルエステル、フタル酸ジ−n−プロピルエステル、フタル酸ジブチルエステルが好ましい。【0025】フタル酸の分枝鎖アルキルエステルの例としては、例えば、フタル酸モノ(イソプロピル)エステル、フタル酸モノ(イソブチル)エステル、フタル酸モノ(2−メチルペンチル)エステル、フタル酸モノ(2−メチルヘキシル)エステル、フタル酸モノ(2−メチルへプチル)エステル、フタル酸モノ(2−メチルオクチル)エステル、フタル酸モノ(2−エチルペンチル)エステル、フタル酸モノ(2−エチルヘキシル)エステル、フタル酸モノ(2−エチルへプチル)エステル、フタル酸モノ(2−エチルオクチル)エステル、フタル酸ジ(イソプロピル)エステル、フタル酸ジ(イソブチル)エステル、フタル酸ジ(2−メチルペンチル)エステル、フタル酸ジ(2−メチルヘキシル)エステル、フタル酸ジ(2−メチルへプチル)エステル、フタル酸ジ(2−メチルオクチル)エステル、フタル酸ジ(2−エチルペンチル)エステル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、フタル酸ジ(2−エチルへプチル)エステル、フタル酸ジ(2−エチルオクチル)エステルなどを挙げることができる。これらのうち、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルエステルが好ましい。【0026】【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることなない。例1(1)フタル酸シクロアルキルエステル分解微生物の濃縮下水場の活性汚泥サンプルを実容積3Lの好気性処理装置に添加し、フタル酸ジシクロヘキシルエステル(以下「DCHP」という。)を1g/Lの割合で含む表1の組成の合成廃水を30℃、通気量1vvmの条件下で1.2L/日の流量で供給することによりDCHP分解微生物の濃縮を行った。【0027】【表1】【0028】(2)フタル酸シクロアルキルエステル分解微生物の分離上記DCHP含有合成廃水を供給している槽内液を採取してフタル酸寒天培地とフタル酸エステル液体培地での培養を繰り返すことにより、DCHPを唯一の炭素源として生育するC1株を単離した。(3)微生物の同定上記C1株の形態観察及び16S r−DNAの塩基配列に基づく系列解析を行った。その結果、C1株はアルトロバクター属に属する微生物であり、最近縁種はアルトロバクター・ケイセリであることが確認された(相同性99%)。【0029】例2例1で得られたアルトロバクターC1株をDCHP 500mg/Lを含む表1の無機塩培地10mlを用いて72時間振盪培養した。培養を停止し、培養液中のDCHPとTOC(Total Organic Carbon:全有機炭素)濃度を測定した。その結果、DCHPはほぼ完全に酸化分解されていた。また、DCHPにかえてフタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、又はフタル酸ジ−n−プロピルを用いて同様に培養を行ったところ、これらのフタル酸アルキルエステルもほぼ完全に分解された(表2)。【0030】【表2】【0031】【発明の効果】本発明の微生物は、いわゆる環境ホルモンとして問題になっているフタル酸シクロアルキルエステルを効率的に分解することができ、汚染土壌や廃水の処理を行うための微生物として有用である。 アルトロバクター属に属する微生物であって、フタル酸シクロアルキルエステルを分解する能力を有するアルトロバクターC1株(受託番号FERMP−19186)。 フタル酸シクロアルキルエステルがフタル酸ジシクロヘキシルエステルである請求項1に記載の微生物。 フタル酸シクロアルキルエステルを分解する方法であって、アルトロバクター属に属し、かつフタル酸シクロアルキルエステルを分解する能力を有するアルトロバクターC1株(受託番号FERMP−19186)をフタル酸シクロアルキルエステルと接触させる工程を含む方法。 処理対象物からフタル酸シクロアルキルエステルを除去する方法であって、アルトロバクター属に属し、かつフタル酸シクロアルキルエステルを分解する能力を有するアルトロバクターC1株(受託番号FERMP−19186)を処理対象物と接触させる工程を含む方法。 処理対象物が廃水又は汚染土壌である請求項4に記載の方法。 該微生物を含む活性汚泥を廃水に接触させる請求項4に記載の方法。 請求項1又は2に記載の微生物を含む活性汚泥。