生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_MKK7活性化阻害剤
出願番号:2003008179
年次:2005
IPC分類:7,A61K45/00,A61P25/00,A61P25/14,A61P25/28,A61P43/00,G01N33/15


特許情報キャッシュ

土居 洋文 細木 信也 和田 直也 JP WO2004002532 20040108 JP2003008179 20030627 MKK7活性化阻害剤 第一製薬株式会社 000002831 庄司 隆 100088904 土居 洋文 細木 信也 和田 直也 JP 2002190909 20020628 JP 2002190910 20020628 7 A61K45/00 A61P25/00 A61P25/14 A61P25/28 A61P43/00 G01N33/15 JP A61K45/00 A61P25/00 A61P25/14 A61P25/28 A61P43/00 111 G01N33/15 Z AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20051027 2004517311 52 本発明は、MAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の活性化を阻害することを特徴とするc−Jun N末端キナーゼ3(JNK3)によるc−Junリン酸化の阻害、JNK3によるc−Junリン酸化に基づく疾患の改善、並びに神経変性疾患の改善に関する。より詳しくは、MKK7とp21活性化キナーゼ4(PAK4)の相互作用および/またはMKK7とJNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JIK)の相互作用を阻害すること、すなわち、PAK4がMKK7に結合して直接MKK7をリン酸化することにより引き起こされるMKK7の活性化および/またはJIKがMKK7に結合して直接MKK7をリン酸化することにより引き起こされるMKK7の活性化を阻害することを特徴とするJNK3によるc−Junリン酸化の阻害剤および阻害方法に関する。また、かかる特徴を有するJNK3によるc−Junリン酸化に基づく疾患の防止剤および/または阻害剤並びに防止方法および/または阻害方法、さらに神経変性の防止剤および/または阻害剤並びに防止方法および/または阻害方法に関する。さらに、PAK4とMKK7の結合、PAK4によるMKK7のリン酸化、JIKとMKK7の結合またはJIKによるMKK7のリン酸化を阻害する化合物の同定方法および該同定方法で得られた化合物に関する。 c−Jun N末端キナーゼ(以下、JNKと略称する。)は、MAPキナーゼ(以下、MAPKと略称する。)ファミリーに属する蛋白質リン酸化酵素である。哺乳類では3つのJNK遺伝子(JNK1、JNK2およびJNK3)が見出されている。これらのうちJNK3は脳神経系などに特異的に発現している。 JNK3は、古典的MAPKとは異なり、増殖刺激ではほとんど活性化しない。JNK3の活性化は、細胞に対するストレス(DNA損傷、紫外線、熱、高浸透圧、小胞体ストレス、活性酸素など。)や炎症性サイトカイン〔腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン−1(IL−1)など。〕により引き起こされる。活性化されたJNKは、細胞質から核内へ移行し、c−Junなどの転写因子のリン酸化を介して標的遺伝子の発現を制御すると考えられている。 JNKの活性化は、各種ストレス刺激により引き起こされるアポトーシスに関与している。例えば、神経成長因子(NGF)除去による神経細胞死においてJNKが活性化すること(非特許文献1)、NGF除去による神経細胞死がc−Junのドミナントネガティブ変異体(dominant negative mutant)の発現により抑制されることが報告されている(非特許文献2)。さらに、JNK3のノックアウトマウスでは、カイニン酸投与による興奮性神経死が抑制されることが報告されている(非特許文献3)。これらから、JNK3の活性化が神経細胞死に関与していることが示唆されている。 JNKを活性化させるMAPKキナーゼ(以下、MAPKKと略称する。)として、MKK4とMKK7が知られている。MKK7は、MAPKK7、MAP2K7、JNKK2とも呼ばれ、JNKを特異的にリン酸化して活性化させる(非特許文献4および5)。一方、MKK4は、JNKをリン酸化して活性化させるだけではなく、同じくMAPKファミリーの一員であるERK2やp38もリン酸化して活性化させる。MKK4遺伝子を破壊した胚性幹細胞(ES細胞)においても浸透圧刺激または紫外線によるJNK活性化が認められることから(非特許文献6)、MKK7は、MKK4と独立してJNKの活性化に働いていると考えられている。 JNKの活性化はまた、低分子量GTP蛋白質の1つであるcdc42からのシグナルによって引き起こされる(非特許文献7)。cdc42に結合してそのシグナルを伝達するキナーゼとして、p21活性化キナーゼ(p21−activated kinase;PAK)が知られている。実際、PAKファミリーの一員であるPAK1、PAK2、PAK3またはPAK4の過剰発現により、JNKのシグナル伝達経路が活性化することが報告されている(それぞれ非特許文献8、9、7および10)。しかし、PAKとJNK活性化との間の詳細なシグナル伝達経路の機構、例えば直接的なのかあるいは間接的なのかについては明らかにされていない。 cdc42が神経細胞死に関与していることを示唆する知見がいくつか報告されている。例えば、神経細胞への活性化型cdc42の強制発現は神経細胞死を誘導し、また、cdc42のドミナントネガティブ変異体はNGF除去による神経細胞死を抑制する(非特許文献11)。また、活性化型cdc42により、JNKと同様、MKK7も活性化することが報告されている(非特許文献12)。よって、cdc42からMKK7を介してJNKへと伝わるシグナル伝達経路が神経細胞死に関与している可能性が考えられる。 JNK3活性化の原因となる各種ストレスの1つとして、小胞体ストレス(以下、ERストレスと略称する。)が挙げられる。ERストレスは、各種刺激(グルコース枯渇、カルシウム濃度恒常性の変化、活性酸素など。)により、小胞体(以下、ERと略称することもある。)における蛋白質のフォールディング(folding)の過程に異常が起こり、ER内に異常蛋白質が蓄積することにより生じる。ERストレスが生じると、小胞体内分子シャペロンの発現が誘導され(unfolded protein response:UPR)、フォールディング異常(misfolding)の解消へと向かう。この過程においてERストレスのセンサー蛋白質として働いているものとして、IRE1が知られている(非特許文献13)。 ERストレスの負荷によるJNK活性化の過程に、IRE1およびTRAF2が関与していることが報告されている(非特許文献14および15)。すなわち、IRE1破壊細胞株ではERストレスの負荷によるJNK活性化が抑制され、また、IRE1の過剰発現によりJNKが活性化する。さらに、IRE1はTRAF2と結合し、また、TRAF2のドミナントネガティブ変異体はIRE1によるJNKの活性化を阻害する。 ERストレスの負荷によるJNK活性化の過程に関与する蛋白質として、その他にJIK(DPKとも呼ぶ。)が知られている。JIKは、IRE1およびTRAF2と結合し、ERストレスの負荷によるJNK活性化に関与していると考えられている。例えば、JIKの過剰発現はERストレスの負荷によるJNK活性化を増強し、JIKの活性部位欠失変異体はERストレスの負荷によるJNK活性化を抑制する(非特許文献15)。 JIKは、イーストSte20p蛋白質のヒト相同体であるSTE20に関連したセリン/スレオニンキナーゼ(STE20−related serine/threonine kinase)の一つである。JIKについては上記作用の他に、例えば、上皮増殖因子(EGF)刺激によるJNK活性化を阻害し、その際JIK自身の活性も抑制される(非特許文献16)こと、また、JIKの過剰発現がJNKの活性化を引き起こす(非特許文献17)ことが報告されている。 一方、ERストレスの過剰負荷により、アポトーシスが誘導されることが知られている。虚血またはポリグルタミンやアミロイドβ(以下、Aβと略称する。)などの異常蛋白質の蓄積は、ERストレスを生じさせると考えられることから、ERストレスの負荷による神経細胞死と神経変性疾患との関わりが指摘されている。 ERストレスの負荷によるアポトーシスが、MKK4およびMKK7の各々のドミナントネガティブ変異体により抑制されたことから(非特許文献18)、ERストレスの負荷によるアポトーシス誘導に、MKK4またはMKK7を介したJNK活性化が関与している可能性がある。 以下に、本明細書で引用した文献を列記する。特許文献1:国際公開第WO01/67299号公報。非特許文献1:Eilers A.et al.,J.Neurosci.(1998)18:1713−1724。非特許文献2:Ham J.et al.,Neuron(1995)14:927−939。非特許文献3:Yang D.et al.,Nature(1997)389:865−870。非特許文献4:Moriguchi T.et al.,EMBO J.(1997)16:7045−7053。非特許文献5:Foltz I.et al.,J.Biol.Chem.(1998)273:9344−9351。非特許文献6:Yang D.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1997)94:3004−3009。非特許文献7:Bagrodia S.et al.,J.Biol.Chem.(1995)270:27995−27998。非特許文献8:Brown J.et al.,Curr.Biol.(1996)6:598−605。非特許文献9:Frost J.et al.,Mol.Cell.Biol.(1996)16:3707−3713。非特許文献10:Abo A.et al.,EMBO J.(1998)17:6527−6540。非特許文献11:Bazenet C.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1998)95:3984−3989。非特許文献12:Foltz I.et al.,J.Biol.Chem.(1998)273:9344−9351。非特許文献13:Urano F.et al.,J.Cell Sci.(2000)113:3697−3702。非特許文献14:Urano F.et al.,Science(2000)287:664−666。非特許文献15:Yoneda T.et al.,J.Biol.Chem.(2001)276:13935−13940。非特許文献16:Tassi E.et al.,J.Biol.Chem.(1999)274:33287−33295。非特許文献17:Zhang W.et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.(2000)274:872−879。非特許文献18:Zhang C.et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.(2001)289:718−724。非特許文献19:細胞工学、2001年、第20巻、第11号、特集:神経変性疾患の発症メカニズムと治療への展望。 このような現状を鑑みると、各種ストレスによるJNK活性化機構のいずれかの段階を阻害することは、JNKの活性化によって引き起こされるアポトーシスに基づく疾患、具体的には神経変性疾患などの解明並びに防止および/または治療を可能にすると考えられる。その一例として、MKK7と相互作用する機能を有する蛋白質を見出して、MKK7の活性化を阻害することはJNKの活性化を阻害することとなる。 本発明者らは、MKK7がPAK4またはJIKと相互作用することをインシリコ(in silico)で予測して、実験的に証明し、該相互作用の結果、PAK4またはJIKによりMKK7がリン酸化されてJNK3シグナル伝達経路を活性化することを見出して、本発明を完成した。 本発明の一態様は、下記i)からiv)のうちの少なくとも1つを特徴とする、JNK3によるc−Junリン酸化の阻害剤に関する;i)PAK4とMKK7の結合阻害、ii)PAK4によるMKK7のリン酸化の阻害、iii)JIKとMKK7の結合阻害、およびiv)JIKによるMKK7のリン酸化の阻害。 また本発明の一態様は、前記i)からiv)のうちの少なくとも1つを特徴とする、JNK3によるc−Junリン酸化の阻害方法に関する。 さらに本発明の一態様は、前記i)からiv)のうちの少なくとも1つを特徴とする、JNK3によるc−Junリン酸化に基づく疾患の防止剤および/または治療剤に関する。 さらにまた本発明の一態様は、前記i)からiv)のうちの少なくとも1つを特徴とする、神経変性疾患の防止剤および/または治療剤に関する。 また本発明の一態様は、前記i)からiv)のうちの少なくとも1つを特徴とする、JNK3によるc−Junリン酸化に基づく疾患の防止方法および/または治療方法に関する。 さらに本発明の一態様は、前記i)からiv)のうちの少なくとも1つを特徴とする、神経変性疾患の防止方法および/または治療方法に関する。 さらにまた本発明の一態様は、PAK4とMKK7の結合を阻害する化合物の同定方法であって、PAK4とMKK7とが結合する条件下で、PAK4および/またはMKK7を被検化合物と接触させ、次いで、PAK4とMKK7との結合により生じるシグナルの存在、不存在または変化を検出することにより、被検化合物がPAK4とMKK7との結合を阻害するか否かを決定することを含む同定方法に関する。 また本発明の一態様は、JIKとMKK7の結合を阻害する化合物の同定方法であって、JIKとMKK7とが結合する条件下で、JIKおよび/またはMKK7を被検化合物と接触させ、次いで、JIKとMKK7との結合により生じるシグナルの存在、不存在または変化を検出することにより、被検化合物がJIKとMKK7との結合を阻害するか否かを決定することを含む同定方法に関する。 さらに本発明の一態様は、PAK4によるMKK7のリン酸化を阻害する化合物の同定方法であって、PAK4および/またはMKK7と被検化合物を接触させ、MKK7のリン酸化を検出することのできるシグナルおよび/またはマーカーを使用する系を導入し、このシグナルおよび/またはマーカーの存在、不存在または変化を検出することにより、被検化合物がPAK4によるMKK7のリン酸化を阻害するか否かを決定する同定方法に関する。 さらにまた本発明の一態様は、JIKによるMKK7のリン酸化を阻害する化合物の同定方法であって、JIKおよび/またはMKK7と被検化合物を接触させ、MKK7のリン酸化を検出することのできるシグナルおよび/またはマーカーを使用する系を導入し、このシグナルおよび/またはマーカーの存在、不存在または変化を検出することにより、被検化合物がJIKによるMKK7のリン酸化を阻害するか否かを決定する同定方法に関する。 また本発明の一態様は、前記いずれかの同定方法によって得られた化合物に関する。 さらに本発明の一態様は、PAK4とMKK7の結合を阻害する化合物に関する。 さらにまた本発明の一態様は、JIKとMKK7の結合を阻害する化合物に関する。 また本発明の一態様は、PAK4によるMKK7のリン酸化を阻害する化合物に関する。 さらに本発明の一態様は、JIKによるMKK7のリン酸化を阻害する化合物に関する。 さらにまた本発明の一態様は、PAK4とMKK7の結合阻害剤に関する。 また本発明の一態様は、JIKとMKK7の結合阻害剤に関する。 さらに本発明の一態様は、PAK4によるMKK7のリン酸化阻害剤に関する。 さらにまた本発明の一態様は、JIKによるMKK7のリン酸化阻害剤に関する。 また本発明の一態様は、前記化合物および前記阻害剤の少なくとも1種以上を有効量含有してなる医薬組成物に関する。 さらに本発明の一態様は、前記化合物および前記阻害剤の少なくとも1種以上を有効量含有してなる、JNK3によるc−Junリン酸化に基づく疾患の防止剤および/または治療剤に関する。 さらにまた本発明の一態様は、前記化合物および前記阻害剤の少なくとも1種以上を有効量含有してなる、神経変性疾患の防止剤および/または治療剤に関する。 また本発明の一態様は、神経変性疾患が、ポリグルタミン病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、Lewy小体型痴呆症、多系統萎縮症、家族性筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、pick病、ファミリアルブリティッシュ デメンチア(familial British dementia)、クロイツフェルト−ヤコブ(Creutzfeldt−Jakob)病、ゲルストマン−ストランスラー(Gerstmann−Stranssler)症候群、狂牛病(ウシ海綿状脳症)(BSE)、またはニューロセルピン(neuroserpin)封入体を伴う家族性痴呆症である前記神経変性疾患の防止剤および/または治療剤に関する。 さらに本発明の一態様は、前記化合物および前記阻害剤の少なくとも1種以上を使用することを特徴とする、JNK3によるc−Junリン酸化に基づく疾患の防止方法および/または治療方法に関する。 さらにまた本発明の一態様は、前記化合物および前記阻害剤の少なくとも1種以上を使用することを特徴とする、神経変性疾患の防止方法および/または治療方法に関する。 また本発明の一態様は、神経変性疾患が、ポリグルタミン病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、Lewy小体型痴呆症、多系統萎縮症、家族性筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、pick病、ファミリアルブリティッシュ デメンチア(familial British dementia)、クロイツフェルト−ヤコブ(Creutzfeldt−Jakob)病、ゲルストマン−ストランスラー(Gerstmann−Stranssler)症候群、狂牛病(ウシ海綿状脳症)(BSE)、またはニューロセルピン(neuroserpin)封入体を伴う家族性痴呆症である前記神経変性疾患の防止方法および/または治療方法に関する。 さらに本発明の一態様は、PAK4、JIK、PAK4をコードするポリヌクレオチド、JIKをコードするポリヌクレオチド、PAK4をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターおよびJIKをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターから選ばれる少なくとも1つと、MKK7、MKK7をコードするポリヌクレオチドおよびMKK7をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターから選ばれる少なくとも1つとを含んでなる試薬キットに関する。 さらにまた本発明の一態様は、前記同定方法に用いる試薬キットであって、PAK4、JIK、PAK4をコードするポリヌクレオチド、JIKをコードするポリヌクレオチド、PAK4をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターおよびJIKをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターから選ばれる少なくとも1つと、MKK7、MKK7をコードするポリヌクレオチドおよびMKK7をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターから選ばれる少なくとも1つとを含んでなる試薬キットに関する。 第1図は、MKK7とPAK4との相互作用をインシリコで予測した結果を示す。MKK7とPAK4のローカルアライメントを行い、高いスコアを示した領域を表示した。上の配列および下の配列はそれぞれ、MKK7の部分配列およびPAK4の部分配列である。 第2図は、PAK4がインビトロでMKK7をリン酸化したことを示す。GST−MKK7はFLAG−PAK4存在下でリン酸化された(レーン4)が、FLAG−PAK4非存在下(レーン3)ではリン酸化されなかった。一方、GSTはFLAG−PAK4存在下(レーン2)でも非存在下(レーン1)でもリン酸化されなかった。図の左側に示した数値は分子量を示す。 第3図は、PAK4とMKK7が細胞内で結合したことを示す。図中の下段は、免疫沈降試験(IP)において、HA−MKK7とFLAG−PAK4とを共発現させた細胞の細胞溶解物(cell lysate)(レーン2)ではHA−MKK7とFLAG−PAK4を含む免疫共沈降物が検出されたが、HA−MKK7のみを発現させた細胞の細胞溶解物(レーン1)においてはかかる免疫共沈降物が検出されなかったことを示す。また、上段および中段はそれぞれ、各細胞溶解物におけるFLAG−PAK4およびHA−MKK7の発現を確認した結果を示す。免疫共沈降物の検出および発現の確認はウエスタンブロット法(WB)で行った。 第4図は、PAK4の一過性発現によりJNK3によるc−Junリン酸化がPAK4の発現量に依存して増強されたことを示す。図中の下段は、キナーゼアッセイ(kinase assay)において、HA−PAK4とFLAG−JNK3とを共発現させた細胞の細胞溶解物(レーン2−4)によりGST−c−Jun(1−79)がリン酸化されたが、FLAG−JNK3のみ発現させた細胞の細胞溶解物(レーン1)ではGST−c−Jun(1−79)はリン酸化されなかったことを示す。レーン2、レーン3およびレーン4はそれぞれ、HA−PAK4発現ベクター(pcDNA−HA−PAK4)を0.1μg、0.5μg、および2.0μgトランスフェクションした結果を示す。また、上段および中段はそれぞれ、FLAG−JNK3およびHA−PAK4の発現を確認した結果を示す。発現の確認はウエスタンブロット法(WB)で行った。 第5図は、MKK7とJIKとの相互作用をインシリコで予測した結果を示す。MKK7とJIKのローカルアライメントを行い、高いスコアを示した領域を表示した。上の配列および下の配列はそれぞれ、MKK7の部分配列およびJIKの部分配列である。 第6図は、JIKがインビトロでMKK7をリン酸化したことを示す。GST−MKK7はHA−JIK存在下でリン酸化された(レーン2)が、HA−JIK非存在下(レーン1)ではリン酸化されなかった。一方、GSTはHA−JIK存在下(レーン3)でリン酸化されなかった。図の左側に示した数値は分子量を示す。 第7図は、JIKとMKK7が細胞内で結合したことを示す。図中の下段は、免疫沈降試験(IP)において、FLAG−MKK7とHA−JIKとを共発現させた細胞の細胞溶解物(cell lysate)(レーン2)ではFLAG−MKK7とHA−JIKを含む免疫共沈降物が検出されたが、FLAG−MKK7のみを発現させた細胞の細胞溶解物(レーン1)においてはかかる免疫共沈降物が検出されなかったことを示す。また、上段および中段はそれぞれ、各細胞溶解物におけるHA−JIKおよびFLAG−MKK7の発現を確認した結果を示す。免疫共沈降物の検出および発現の確認はウエスタンブロット法(WB)で行った。 第8図は、JIKの一過性発現によりJNK3によるc−Junリン酸化が増強されたことを示す。HA−JIKおよびFLAG−JNK3のいずれも非発現の細胞の細胞溶解物(レーン1)並びにFLAG−JNK3のみ発現させた細胞の細胞溶解物(レーン2)ではGST−c−Jun(1−79)がほとんどリン酸化されなかったのに対し、HA−JIKとFLAG−JNK3を共発現させた細胞の細胞溶解物(レーン3)ではGST−c−Jun(1−79)のリン酸化が認められた。 本発明は、参照によりここに援用されるところの、日本国特許出願番号第2002−190909号および同第2002−190910号からの優先権を請求するものである。 本明細書中で使用されている技術的および科学的用語は、別途定義されていない限り、当業者により普通に理解される意味を持つ。本明細書中では当業者に既知の種々の方法が参照されている。そのような引用されている公知の方法を開示する刊行物などの資料は、引用により、本明細書中にそれらの全体が完全に記載されているものと見なす。 以下、本発明について、発明の実施の態様をさらに詳しく説明する。以下の詳細な説明は例示であり、説明のためのものに過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。 本発明においては、MKK7と相互作用する機能を有する蛋白質を国際公開第WO01/67299号公報(特許文献1)記載の方法に従って予測し、その結果2つの蛋白質を見出した。これら蛋白質は、p21活性化キナーゼ4(以下、PAK4と略称する。)およびSTE20に関連したセリン/スレオニンキナーゼの一つであるJIKである。そして、実験的に、PAK4およびJIKがそれぞれMKK7と結合すること、さらにPAK4およびJIKがそれぞれ直接MKK7をリン酸化することを初めて見出した。また、PAK4またはJIKの発現により、c−Jun N末端キナーゼ3(以下、JNK3と略称する。)が活性化されてc−Junがリン酸化されることを明らかにした。これらから、PAK4およびJIKがそれぞれMKK7を直接リン酸化することによりJNK3シグナル伝達経路が活性化されることが判明した。 本明細書においてMKK7と相互作用する機能を有する蛋白質とは、MKK7と特異的に作用し合う蛋白質、具体的には例えばその機能の1つとして特異的にMKK7と結合する蛋白質を意味する。より具体的には、その機能の1つとしてMKK7をリン酸化し得る蛋白質を意味する。本明細書においてはアミノ酸を表記する場合、1文字または3文字にて表記することがある。 PAK4についてはこれまでに、低分子量GTP蛋白質の1つであるcdc42により活性化されること(非特許文献10)が知られている。また、活性化型cdc42が神経細胞死を誘導すること(非特許文献11)、および活性化型cdc42またはPAK4がJNKシグナル伝達経路を活性化することが報告されている(非特許文献7および10)。 本発明において明らかにした知見およびこれら公知の知見から、cdc42がPAK4を活性化し、活性化されたPAK4がMKK7に結合して直接リン酸化してこれを活性化させ、その結果JNK3が活性化してc−Junをリン酸化し、最終的に何らかの生理機能が発現するというシグナル伝達経路が存在すると考えた。該生理機能としては、例えばアポトーシスの誘導など、より具体的には神経細胞死の誘導などが例示できる。このことから、PAK4とMKK7の結合および/またはPAK4によるMKK7のリン酸化を阻害することにより、JNK3の活性化によるc−Junのリン酸化を阻害することができ、ひいては神経細胞死を阻害することが可能である。さらに、JNK3シグナル伝達経路の活性化により引き起こされる疾患、例えばcdc42が介在するJNK3シグナル伝達経路の活性化に基づく疾患の防止および/または治療が可能である。 JIKは、ERストレスの負荷によるJNK活性化に関与していると考えられている。例えば、JIKの過剰発現がERストレスの負荷によるJNK活性化を増強すること、またJIKの活性部位欠失変異体がERストレスの負荷によるJNK活性化を抑制したことが報告されている(非特許文献15)。 本発明において明らかにした知見およびこれら公知の知見から、ERストレスの負荷による生理機能の発現には、ERストレスの負荷によりJIKが活性化され、活性化されたJIKがMKK7に結合して直接リン酸化してこれを活性化させ、その結果JNK3が活性化してc−Junをリン酸化するというシグナル伝達経路が存在していると考えた。該生理機能としては、例えばアポトーシスの誘導など、より具体的には神経細胞死の誘導などが例示できる。このことから、JIKとMKK7の結合および/またはJIKによるMKK7のリン酸化を阻害することにより、JNK3の活性化によるc−Junのリン酸化を阻害することができ、ひいては神経細胞死を阻害することが可能である。さらに、JNK3シグナル伝達経路の活性化により引き起こされる疾患、例えばcdc42が介在するJNK3シグナル伝達経路の活性化に基づく疾患の防止および/または治療が可能である。 JNK3シグナル伝達経路の活性化によって引き起こされる疾患としては、例えばアポトーシスに基づく疾患、具体的には、神経変性疾患などが挙げられる。神経変性疾患としては、次に挙げる例に限定されるものではないが、ポリグルタミン病(例えばハンチントン病、脊髄小脳失調症、球脊髄性筋萎縮症、および歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症など)、アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、Lewy小体型痴呆症、多系統萎縮症、家族性筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、pick病、ファミリアル ブリティッシュ デメンチア(familialBritish dementia)、クロイツフェルト−ヤコブ(Creutzfeldt−Jakob)病、ゲルストマン−ストランスラー(Gerstmann−Stranssler)症候群、狂牛病(ウシ海綿状脳症)(BSE)、およびニューロセルピン(neuroserpin)封入体を伴う家族性痴呆症などを挙げることができる(非特許文献19)。またこの他に、ERストレスの負荷が関与している虚血や再灌流による神経細胞死の防止および/または治療が可能である。 本発明においては、下記i)からiv)のうちの少なくとも1つを特徴とする、JNK3によるc−Junリン酸化の阻害剤、JNK3によるc−Junリン酸化の阻害方法、さらにはJNK3によるc−Junのリン酸化に基づく疾患、例えば神経変性疾患などの防止剤および/または治療剤並びに防止方法および/または治療方法を提供可能である;i)PAK4とMKK7の結合阻害;ii)PAK4によるMKK7のリン酸化の阻害;iii)JIKとMKK7の結合阻害;およびiv)JIKによるMKK7のリン酸の阻害。 本発明においては、上記知見に基づいて、PAK4とMKK7の結合および/またはPAK4によるMKK7のリン酸化を阻害する化合物、あるいはJIKとMKK7の結合および/またはJIKによるMKK7のリン酸化を阻害する化合物の同定方法を提供する。該同定方法は、自体公知の医薬品スクリーニングシステムを利用して構築可能である。化合物の同定に使用するPAK4、JIKおよびMKK7は、これらを遺伝子工学的手法で発現させた細胞、無細胞系合成産物、化学合成産物、または該細胞や生体試料から調製したものであってよく、これらからさらに精製されたものであってもよい。また、PAK4またはJIKとMKK7との結合およびこれら蛋白質の機能、例えばキナーゼ活性が阻害されなければ、N末端側やC末端側に別の蛋白質やペプチドなどを直接的にまたはリンカーペプチドなどを介して間接的に遺伝子工学的手法などを用いて付加することにより標識化したものであってもよい。あるいは、化学修飾物質により標識化したものであってもよい。好ましくは、それらの基本的な性質が阻害されないような標識化が望ましい。付加する蛋白質やペプチドなどとしては、例えばグルタチオン S−トランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュ・パーオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素類、His−tag、Myc−tag、HA−tag、FLAG−tagまたはXpress−tagなどのタグペプチド類、マルトース結合蛋白質、および免疫グロブリンのFc断片などが挙げられる。また、標識化に用いる化学修飾物質としては、グリーン蛍光蛋白質、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)またはフィコエリスリン(phycoerythrin)などの蛍光物質類、ビオチン、あるいは放射性同位元素などを例示できる。標識化するとき、これら蛋白質やペプチドなどは単独で付加してもよいし複数を組み合わせて付加することもできる。これら標識化に用いた蛋白質またはペプチドなどの物質自体、またはその機能を測定することにより、例えばPAK4若しくはJIKとMKK7との結合を検出することが可能になる。被検化合物としては、例えば化学ライブラリーや天然物由来の化合物、またはPAK4、JIKおよびMKK7の一次構造や立体構造に基づいてドラッグデザインして得られた化合物などが挙げられる。 例えば、PAK4とMKK7との結合を可能にする条件を選択し、該条件下でPAK4、MKK7および被検化合物を接触させ、次いで、PAK4とMKK7との結合を検出することのできるシグナルおよび/またはマーカーを使用する系を導入し、このシグナルおよび/またはマーカーの存在、不存在、またはその変化を検出することにより、PAK4とMKK7の結合を阻害する化合物を同定可能である。例えばPAKとMKK7との結合により生じるシグナルまたは該結合のマーカーが、被検化合物をPAK4およびMKK7と接触させたときに消失あるいは低減するなどの変化を示した場合、当該被検化合物はPAKとMKK7との結合を阻害するものであると判定できる。かかる同定方法において、被検化合物をPAK4および/またはMKK7と予め接触させ、その後にPAK4とMKK7の結合反応を行うことも可能である。ここでシグナルとは、そのもの自体がその物理的または化学的性質により直接検出され得るものを指し、マーカーとはそのものの物理的または生物学的性質を指標として間接的に検出され得るものを指す。シグナルとしてはルシフェラーゼ、グリーン蛍光蛋白質、および放射性同位体など、マーカーとしては、レポーター遺伝子、例えばクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子など、または検出用のエピトープタグ、例えば6×His−tagなど、公知のものが利用できる。これらシグナルまたはマーカーの検出方法は当業者には周知のものである。 具体的には、例えばPAK4またはMKK7の一方を固相化し、他方をシグナルで標識化して用いて結合反応を行い、標識シグナルを定量的に測定するといった当業者に知られた一般的なインビトロ(in vitro)における結合実験系に、被検化合物を加えて評価することにより、PAK4とMKK7の結合を阻害する化合物を得ることができる。 あるいは、PAK4によりMKK7がリン酸化される条件を選択し、該条件下でPAK4およびMKK7と被検化合物とを接触させ、MKK7のリン酸化を検出することのできるシグナルおよび/またはマーカーを使用する系を導入し、このシグナルおよび/またはマーカーの存在若しくは不存在または変化を検出することにより、PAK4によるMKK7のリン酸化を阻害する化合物を同定できる。例えばPAKによるMKK7のリン酸化により生じるシグナルまたは該リン酸化のマーカーが、被検化合物をPAK4およびMKK7と接触させたときに消失あるいは低減するなどの変化を示した場合、当該被検化合物はPAKによるMKK7のリン酸化を阻害するものであると判定できる。かかる同定方法において、被検化合物をPAK4および/またはMKK7と予め接触させ、その後にPAK4によるMKK7のリン酸化反応を行うことも可能である。蛋白質リン酸化試験およびリン酸化蛋白質の定量は、自体公知の方法により実施可能である。簡便には、例えば後述する実施例に記載したようにPAK4とMKK7とを放射性同位体(32P)で標識したアデノシン三リン酸(ATP)の存在下でインビトロで反応させ、反応後にSDS−PAGEにより蛋白質の分離を行い、得られた蛋白質のバンドを染色して検出し、リン酸化されたMKK7に相当するバンドの放射活性を測定することにより蛋白質リン酸化試験およびリン酸化蛋白質の定量を実施できる。 または、PAK4およびMKK7を共発現させた細胞を用い、該細胞と被検化合物とを接触させ、PAK4とMKK7の結合またはPAK4によるMKK7のリン酸化を検出することのできるシグナルおよび/またはマーカーを使用する系を導入し、このシグナルおよび/またはマーカーの存在若しくは不存在または変化を検出することにより、PAK4とMKK7の結合および/またはPAK4によるMKK7のリン酸化を阻害する化合物を同定できる。 上記細胞を使用した同定方法は、上記インビトロでの同定方法と組み合わせて使用できる。当該インビトロの同定方法により得られたPAK4とMKK7の結合および/またはPAK4によるMKK7のリン酸化を阻害する化合物を、細胞を使用した上記同定方法で再度試験することにより、有用な化合物をさらに選択し得る。 上記同定方法において、PAK4の代わりにJIKを用いることにより同様に、JIKとMKK7の結合および/またはJIKによるMKK7のリン酸化を阻害する化合物を同定可能である。 本発明にかかる同定方法においては、PAK4とMKK7の結合を阻害する化合物、JIKとMKK7の結合を阻害する化合物、PAK4によるMKK7のリン酸化を阻害する化合物、およびJIKによるMKK7のリン酸化を阻害する化合物を得ることができる。これら化合物もまた、本発明の範囲に包含される。これら化合物は、PAK4とMKK7の結合阻害剤、PAK4によるMKK7のリン酸化の阻害剤、JIKとMKK7の結合阻害剤、またはJIKによるMKK7のリン酸化の阻害剤として利用可能である。このような化合物としては、両蛋白質が相互作用する部位、例えば結合部位のアミノ酸配列からなるペプチドまたはオリゴペプチドを例示できる。このようなペプチドまたはオリゴペプチドは、PAK4またはMKK7のアミノ酸配列から設計し、自体公知のペプチド合成法によって合成し、上記同定方法においてPAK4とMKK7の結合、PAK4によるMKK7のリン酸化、JIKとMKK7の結合、またはJIKによるMKK7のリン酸化を阻害するか否かを試験することにより同定可能である。また、PAK4とMKK7の結合を阻害し得る抗体またはJIKとMKK7の結合を阻害し得る抗体も上記化合物の1つとして例示できる。かかる抗体は、PAK4、JIKまたはMKK7に対する抗体を作成し、得られた抗体からPAK4とMKK7の結合またはJIKとMKK7の結合を阻害し得るものを選択することにより取得可能である。抗体の作製は、抗原として例えば、PAK4、JIKおよびMKK7の各蛋白質自体、またはPAK4とMKK7若しくはJIKとMKK7が相互作用する部位のアミノ酸配列を含むペプチド若しくはオリゴペプチドを用いて、自体公知の抗体作製法により行うことができる。 上記選別された化合物、上記結合阻害剤および上記リン酸化阻害剤は、さらに生物学的有用性と毒性のバランスを考慮して選別することによって、PAK4とMKK7の結合、JIKとMKK7の結合、PAK4によるMKK7のリン酸化、またはJIKによるMKK7のリン酸化を阻害することに基づく医薬の有効成分として有用である。PAK4およびJIKはいずれも、MKK7に結合すると直接MKK7をリン酸化してこれを活性化し、その結果JNK3が活性化してc−Junがリン酸化される。従って、上記化合物、上記結合阻害剤および上記リン酸化阻害剤は、JNK3によるc−Junリン酸化に基づく医薬、例えばアポトーシスに基づく疾患、具体的には神経変性疾患などに対する医薬の有効成分として用いることができる。 本発明に係る医薬は、上記選別された化合物、上記結合阻害剤および上記リン酸化阻害剤のうちの少なくとも1つを有効量含む医薬となしてもよいが、通常は、1種または2種以上の医薬用担体または賦形剤を用いて医薬組成物を製造することが好ましい。かかる担体としては、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限らない。 必要な用量範囲は、上記化合物、上記結合阻害剤および上記リン酸化阻害剤の有効性、投与形態、疾病の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無など)、および担当医師の判断により適宜選択することが望ましい。具体的には、適当な用量は、例えば対象の体重1kgあたり0.1μgないし100μgの範囲であることが好ましい。しかしながら、当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常套的実験を用いてこれらの用量の変更を行うことができる。上記投与量は1日1〜4回に分けて投与することができ、数日または数週間に1回の割合で間欠的に投与してもよい。 処方は投与形態に適したものを選択すればよく、該処方は当業者によく知られたものを用いればよい。また、処方するときには、これらを単独で使用してもよく、あるいは治療に必要な他の化合物または医薬と共に使用してもよい。例えば、c−Junリン酸化阻害剤または神経変性疾患の防止剤および/または治療剤などの有効成分を配合してもよい。 投与形態は、全身投与または局所投与のいずれも選択することができる。この場合、疾患、症状などに応じた適当な投与形態を選択する。例えば、通常の静脈内投与、動脈内投与のほか、皮下、皮内、筋肉内などに投与することもできる。腸溶処方またはカプセル処方がうまく処方されるならば、経口投与も可能である。さらに、胆汁酸塩またはフシジン酸または他の界面活性剤のような浸透剤を用いる経粘膜投与若しくは経皮投与を用いることもできる。局所的な投与においては、膏薬、パスタ、ゲルなどの形態での投与であってもよい。 製剤化にあたっては、その投与形態あるいは有効成分の物性に応じて適切な製剤用添加物を用いることができ、常法に従って製剤化することができる。具体的には、例えば散剤、丸剤、錠剤、カプセル製剤、水溶液製剤、エタノール溶液製剤、リポソーム製剤、脂肪乳剤、シクロデキストリンなどの包接体などの製剤化方法が利用できる。 散剤、丸剤、カプセル剤および錠剤は、ラクトース、グルコース、シュークロース、マンニトールなどの賦形剤、澱粉、アルギン酸ソーダなどの崩壊剤、マグネシウムステアレート、タルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを用いて製造できる。錠剤やカプセルを製造するには、固体の製薬担体が用いられる。 懸濁剤は、水、シュークロース、ソルビトール、フラクトースなどの糖類、ポリエチレングリコールなどのグリコール類、油類を使用して製造できる。 注射用の溶液は、塩溶液、グルコース溶液、または塩水とグルコース溶液の混合物からなる担体を用いて調製可能である。 リポソーム化は、例えばリン脂質を有機溶媒(クロロホルムなど)に溶解した溶液に、当該物質を溶媒(エタノールなど)に溶解した溶液を加えた後、溶媒を留去し、これにリン酸緩衝液を加え、振盪、超音波処理および遠心分離した後、上清を濾過処理して回収することにより行い得る。 脂肪乳剤化は、例えば当該物質、油成分(大豆油、ゴマ油、オリーブ油などの植物油、MCTなど)、乳化剤(リン脂質など)などを混合、加熱して溶液とした後に、必要量の水を加え、乳化機(ホモジナイザー、例えば高圧噴射型や超音波型など)を用いて、乳化・均質化処理して行い得る。また、これを凍結乾燥化することも可能である。なお、脂肪乳剤化するとき、乳化助剤を添加してもよく、乳化助剤としては、例えばグリセリンや糖類(例えばブドウ糖、ソルビトール、果糖など)が例示される。 シクロデキストリン包接化は、例えば当該物質を溶媒(エタノールなど)に溶解した溶液に、シクロデキストリンを水などに加温溶解した溶液を加えた後、冷却して析出した沈殿を濾過し、滅菌乾燥することにより行い得る。この際、使用されるシクロデキストリンは、当該物質の大きさに応じて、空隙直径の異なるシクロデキストリン(α、β、γ型)を適宜選択すればよい。 本発明は、試薬キットであって、PAK4、JIK、PAK4をコードするポリヌクレオチド、JIKをコードするポリヌクレオチド、PAK4をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターおよびJIKをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターから選ばれる少なくとも1つと、MKK7、MKK7をコードするポリヌクレオチドおよびMKK7をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターから選ばれる少なくとも1つとを含んでなる試薬を提供する。本発明にかかる試薬キットは、上記同定方法に使用することができる。JIK、PAK4およびMKK7は、これらを遺伝子工学的手法で発現させた細胞、無細胞系合成産物、化学合成産物、または当該細胞や生体試料から調製したものであってよく、これらからさらに精製されたものであってもよい。また、JIKまたはPAK4とMKK7の結合およびこれら蛋白質の機能、例えばキナーゼ活性が阻害されなければ、N末端側やC末端側に別の蛋白質やペプチドなどを直接的にまたはリンカーペプチドなどを介して間接的に遺伝子工学的手法などを用いて付加することにより標識化したものであってもよい。あるいは、化学修飾物質により標識化したものであってもよい。好ましくは、それらの基本的な性質が阻害されないような標識化が望ましい。付加する蛋白質やペプチドなどとしては、例えばグルタチオン S−トランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュ・パーオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素類、His−tag、Myc−tag、HA−tag、FLAG−tagまたはXpress−tagなどのタグペプチド類、マルトース結合蛋白質、および免疫グロブリンのFc断片などが挙げられる。また、標識化に用いる化学修飾物質としては、グリーン蛍光蛋白質、フルオレセインイソチオシアネートまたはフィコエリスリンなどの蛍光物質類、ビオチン、あるいは放射性同位元素などを例示できる。標識化するとき、これら蛋白質やペプチドなどは単独で付加してもよいし複数を組み合わせて付加することもできる。PAK4、JIKまたはMKK7のいずれかをコードするポリヌクレオチドは、ヒトcDNAライブラリーから自体公知の遺伝子工学的手法により調製することができる。PAK4、JIKまたはMKK7のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターは、上記ポリヌクレオチドを適当な発現ベクターDNA、例えば細菌プラスミド由来のベクターに自体公知の遺伝子工学的手法で導入することにより得られる。これらは試薬であるとき、PAK4またはJIKとMKK7の結合やPAK4またはJIKによるMKK7のリン酸化を検出するためのシグナルおよび/またはマーカー、バッファー、並びに塩など、必要とされる物質を含むことができる。さらに、安定化剤および/または防腐剤などの物質を含んでいてもよい。なお、製剤化にあたっては、使用する各物質それぞれに応じた製剤化手段を導入すればよい。 以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。実施例1(MKK7と相互作用する機能を有する蛋白質のインシリコでの探索) MKK7と相互作用する機能を有する蛋白質を、国際公開第WO01/67299号公報に記載の予測方法に従って予測した。すなわち、MKK7のアミノ酸配列をある長さのオリゴペプチドに分解し、各オリゴペプチドのアミノ酸配列あるいはそのアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を持った蛋白質をデータベース中で検索し、得られた蛋白質とMKK7との間でローカルアライメントを行い、ローカルアライメントのスコアの高いものをMKK7と相互作用すると予測した。 解析の結果、MKK7由来の7アミノ酸残基または6アミノ酸残基からなるオリゴペプチドDVWSLGI(配列番号1)およびPPARPR(配列番号2)と相同性あるオリゴペプチドDIWSLGI(配列番号3)およびPPARAR(配列番号4)が、PAK4のアミノ酸配列中に存在することが分かった。第1図に、MKK7とPAK4とのローカルアライメントの結果を示した。この結果から、PAK4はMKK7と相互作用する機能を有する蛋白質であると予測された。実施例2(PAK4によるMKK7リン酸化の解析) PAK4によるMKK7の相互作用を実験的に確認するために、免疫複合体リン酸化法を用いたインビトロにおけるリン酸化試験を実施した。<材料> PAK4発現プラスミドを次のように構築した。まず、ヒトPAK4cDNAを、ヒト脳由来poly(A)+RNA(Clontech社)から逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により取得し、次いで動物細胞用発現ベクター、pcDNA3.1(+)(Invitrogen社)へ組込んだ。そのとき、5´側にFLAG−tagコード配列またはHA−tagコード配列を挿入し、動物細胞用N末端FLAG−tag付加型PAK4発現プラスミド(pcDNA−FLAG−PAK4)および動物細胞用N末端HA−tag付加型PAK4発現プラスミド(pcDNA−HA−PAK4)をそれぞれ構築した。 試験には、下記組成からなる各バッファーを用いた。 細胞溶解バッファー(Cell lysis buffer):20mM Tris−HCl,pH7.4,150mM NaCl,1mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA),1mM エチレングリコールビス四酢酸(EGTA),1% TritonX−100,2.5mM ピロリン酸ナトリウム(Na−pyrophosphate),1mM β−グリセロホスフェート(glycerophosphate),1mM Na3VO4,プロテアーゼ阻害剤カクテル(protease inhibitor cocktail)、Cell Signaling Technology社。 キナーゼバッファー(Kinase buffer):25mM Tris−HCl,pH7.5,5mM β−グリセロホスフェート,2mM ジチオスレイトール,0.1mM Na3VO4,10mM MgCl2、Cell Signaling Technology社。 SDS サンプルバッファー(SDS sample buffer):4% SDS,125mM Tris−HCl,pH6.8,20% グリセロール,0.01% ブロムフェノールブルー(BPB),10% β−メルカプトエタノール(mercaptoethanol)。<方法> 細胞数5×105のHEK293細胞を37℃、5%CO2の条件下φ60mmのシャーレ中で一晩培養した後、5μgのpcDNA−FLAG−PAK4を、15μlのFuGENE6トランスフェクション試薬(FuGENE6 Transfection Reagent、Roche社)を用いてトランスフェクションした。陰性コントロールとしてpcDNA3.1(+)を用い、同様にトランスフェクションした。2日間培養後、細胞を氷冷したリン酸緩衝生理食塩水(−)〔PBS(−)〕で洗浄して回収し、500μlの細胞溶解バッファーに懸濁し、氷上で10分間放置した。ついで4℃にて14,000rpmで10分間遠心処理してその上清を回収し、細胞溶解物(cell lysate)とした。次に、500μlの細胞溶解物に、アガロースに結合した正常マウスIgG(Agarose−conjugated normal mouse IgG、Sigma社)20μlを加え、4℃にて30分間転倒混和した後、遠心処理してその上清を回収した。回収した上清に20μlの抗FLAG M2アフィニティーゲル(anti−FLAG M2 affinitygel、Sigma社)を加え、4℃にて2時間転倒混和した後、遠心処理によりビーズを回収し、さらにこのビーズを500μlの細胞溶解バッファーで2回、500μlのキナーゼバッファーで2回洗浄した。次に、ビーズに1μgの基質と10μMのATPおよび5μCiの[γ−32P]ATP(3,000Ci/mmol、PerkinElmer社)を含む25μlのキナーゼバッファーを加え、30℃にて30分間リン酸化反応を行った。反応後、25μlの2×SDSサンプルバッファーを加え、5分間煮沸後、上清をSDS−PAGEにより分離し、BAS2000(Fuji film社)を用いたオートラジオグラフィーによりリン酸化蛋白質を検出した。なお、基質は、GST−MKK7の不活性体(unactive GST−MKK7、Upstate社)、または、陰性コントロールとしてGSTをそれぞれ使用した。<結果> 第2図に示したように、PAK4によるGST−MKK7のリン酸化が認められた。また、このリン酸化はPAK4非存在では認められなかったことから、GST−MKK7のリン酸化は自己リン酸化ではなく、PAK4によるものであることが明らかとなった。なお、陰性コントロール用の基質として用いたGSTでは、リン酸化は認められなかった。実施例3(MKK7とPAK4の結合解析) PAK4とMKK7の結合を実験的に確認するために、細胞内共発現/免疫共沈降法による結合試験を実施した。<材料> PAK4発現プラスミドは、実施例2で構築したものを用いた。 MKK7発現プラスミドは次のように構築した。まず、ヒトMKK7cDNAを、ヒト骨格筋由来poly(A)+RNA(Clontech社)からRT−PCRにより取得し、次いで動物細胞用発現ベクター、pcDNA3.1(+)(Invitrogen社)へ組込んだ。その際、5´側にHA−tagコード配列を挿入し、動物細胞用N末端HA−tag付加型MKK7発現プラスミド、pcDNA−HA−MKK7を構築した。 試験に用いた各バッファーの組成は、実施例2に記載のものと同じである。<方法> 細胞数4×105のHEK293T細胞を37℃、5%CO2の条件下φ60mmシャーレ中で一晩培養した後、2μgのpcDNA−FLAG−PAK4を2μgのpcDNA−HA−MKK7と共に、FuGENE6 Transfection Reagent(Roche社)を用いてトランスフェクションした。陰性コントロールとしてpcDNA3.1(+)を用い、同様にトランスフェクションした。2日間培養後、細胞を氷冷したPBS(−)で洗浄して回収し、500μlの細胞溶解バッファーに懸濁し、氷上で10分間放置した。ついで、4℃にて14,000rpmで10分間遠心処理してその上清を回収し、細胞溶解物とした。次に、500μlの細胞溶解物に20μlのAgarose−conjugated normal mouse IgG(Sigma社)を加え、4℃にて30分間転倒混和した後、遠心処理してその上清を回収した。回収した上清に20μlのanti−FLAG M2 affinity gel(Sigma社)を加え、4℃にて一晩転倒混和した後、遠心処理によりビーズを回収した。ビーズを500μlの細胞溶解バッファーで3回、次いで500μlのトリス緩衝生理食塩水(TBS:25mM Tris−HCl,pH7.5,150mM NaCl)で1回洗浄した後、20μlの2×SDSサンプルバッファーを加え、5分間加熱後、上清を5−20%のSDS−PAGEにより分離した。その後、抗HA抗体(Y−11、SantaCruz社)を用いたウェスタンブロット法により結合蛋白質を検出した。なお、検出はECLウエスタンブロッティング検出キット(ECL western blotting detection kit、Amersham pharmacia biotech社)を使用した。<結果> 第3図に示したように、抗FLAG抗体を用いてFLAG−PAK4の免疫沈降を実施した結果、FLAG−PAK4とHA−MKK7とを共発現させた細胞においてはHA−MKK7の共沈降が認められた。一方、FLAG−PAK4非発現細胞ではHA−MKK7の共沈降は認められなかったことから、この共沈降はアガロースビーズへの非特異的結合ではなく、FLAG−PAK4とHA−MKK7の結合を示すものであることが明らかとなった。これらから、PAK4とMKK7が細胞内で結合することが判明した。実施例4(PAK4によるJNK3シグナル伝達経路の活性化) PAK4によるJNK3シグナル伝達経路の活性化を実験的に確認するために、インビトロにおけるJNK3リン酸化試験を、免疫複合体リン酸化法を用いて実施した。<材料> PAK4発現プラスミドは、実施例2で構築したものを用いた。 JNK3発現プラスミドは次のように構築した。まず、ヒトJNK3cDNAを、ヒト海馬cDNAライブラリーからRT−PCRにより取得し、次いで動物細胞用発現ベクター、pcDNA3.1(+)(Invitrogen社)へ組込んだ。その際、5´側にFLAG−tagコード配列を挿入し、動物細胞用N末端FLAG−tag付加型JNK3発現プラスミド、pcDNA−FLAG−JNK3を構築した。 また、c−Jun(1−79)(c−JunのN末端79アミノ酸領域であり、JNKによるリン酸化部位を含む)を、N末端にGST(Glutathione S−transferase)を付加した融合蛋白質〔以下、GST−c−Jun(1−79)〕として大腸菌にて発現後、グルタチオン セファロース 4B(Glutathione sepharose 4B、Amersham Pharmacia biotech社)で精製し、使用した。 試験に用いた各溶液の組成は、実施例2に記載のものと同じである。<方法> 細胞数6×105のHEK293細胞を37℃、5%CO2の条件下φ60mmのシャーレ中で一晩培養した後、pcDNA−FLAG−JNK3(2μg)とpcDNA−HA−PAK4(0、0.1、0.5、または2μg)を12μlのFuGENE6 Transfection Reagent(Roche社)を用いてトランスフェクションした。なお、DNAの総量はpcDNA3.1(+)を用いて全て4μgに調整した。2日間培養後、細胞を氷冷したPBS(−)で洗浄して回収後、500μlの細胞溶解バッファーに懸濁し、氷上で10分間放置した。ついで、4℃にて14,000rpmで10分間遠心処理してその上清を回収し、細胞溶解物とした。次に、500μlの細胞溶解物に20μlのAgarose−conjugated normal mouse IgG(Sigma社)を加え、4℃にて30分間転倒混和した後、遠心処理してその上清を回収した。回収した上清に20μlのanti−FLAG M2 affinity gel(Sigma社)を加え、4℃にて2時間転倒混和した後、遠心処理によりビーズを回収し、さらにビーズを500μlの細胞溶解バッファーで2回、500μlのキナーゼバッファーで2回洗浄した。次に、ビーズに基質として2μgのGST−c−Jun(1−79)と10μM ATPおよび5μCiの[γ−32P]ATP(3,000Ci/mmol、PerkinElmer社)を含む25μlのキナーゼバッファーを加え、30℃にて30分間リン酸化反応を行った。反応後、25μlの2×SDSサンプルバッファーを加え、100℃にて5分間処理後、上清を5−20% SDS−PAGEにより分離し、BAS2000(Fuji film社)を用いたオートラジオグラフィーによりリン酸化されたGST−c−Jun(1−79)を検出した。なお、各蛋白質の発現は、抗FLAG M2モノクローナル抗体(Sigma社)または抗HA抗体(Y−11、SantaCruz社)を用いたウェスタンブロット法により確認した。<結果> 第4図に示すように、HA−PAK4とFLAG−JNK3を共発現させた細胞の溶解物を用いたキナーゼアッセイにおいて、HA−PAK4の発現量に依存して、リン酸化c−Junが増加した。すなわち、HA−PAK4の発現により、JNK3のc−Junリン酸化活性が上昇することが明らかになった。FLAG−JNK3の発現量には大きな変動がないことから、JNK3活性の上昇はHA−PAK4の発現によるものと考えられる。 実施例2、3および4で得られた結果から、PAK4がMKK7に結合してこれを直接リン酸化することにより、JNK3が活性化されてc−Junがリン酸化されること、すなわちJNK3シグナル伝達経路が活性化されることが判明した。実施例5(MKK7と相互作用する機能を有する蛋白質のインシリコでの探索) MKK7と相互作用する機能を有する蛋白質を、実施例1と同様の方法で予測した。その結果、MKK7由来の6アミノ酸残基からなるオリゴペプチド、WSLGIS(配列番号5)およびLEAKLK(配列番号6)、と相同性のあるオリゴペプチド、WSLGIT(配列番号7)およびLENKLK(配列番号8)が、JIKのアミノ酸配列中に存在することが分かった。第5図に、MKK7とJIKとのローカルアライメントの結果を示した。この結果から、JIKはMKK7と相互作用する機能を有する蛋白質であると予測された。実施例6(JIKによるMKK7リン酸化の解析) JIKによるMKK7のリン酸化を実験的に確認するために、免疫複合体リン酸化法を用いたインビトロにおけるリン酸化試験を実施した。<材料> JIK発現プラスミドを次のように構築した。まず、ヒトJIK cDNAを、ヒト腎臓由来poly(A)+RNA(Clontech社)からRT−PCRにより取得し、次いで動物細胞用発現ベクター、pcDNA3.1(+)(Invitrogen社)へ組込んだ。そのとき、5´側にHA−tagコード配列を挿入し、動物細胞用N末端HA−tag付加型JIK発現プラスミド、pcDNA−HA−JIKを構築した。なお、クローニングしたJIK cDNAのアミノ酸翻訳配列は、NCBI(National Center for Biotechnology Information)の蛋白質データベースに開示されたアクセッション番号XP_045006(登録遺伝子名:JIK)のものと同一である。 試験に用いた各バッファーの組成は、実施例2に記載のものと同じである。<方法> 細胞数4×105のHEK293T細胞を37℃、5%CO2の条件下φ60mmのシャーレ中で一晩培養した後、5μgのpcDNA−HA−JIKを、15μlのFuGENE6 Transfection Reagent(Roche社)を用いてトランスフェクションした。陰性コントロールとしてpcDNA3.1(+)を用い、同様にトランスフェクションした。2日間培養後、細胞を氷冷したPBS(−)で洗浄して回収し、500μlの細胞溶解バッファーに懸濁し、氷上で10分間放置した。ついで4℃にて14,000rpmで10分間遠心処理してその上清を回収し、細胞溶解物とした。次に、500μlの細胞溶解物に、Agarose−conjugated normal mouse IgG(Sigma社)20μlを加え、4℃にて30分間転倒混和した後、遠心処理してその上清を回収した。回収した上清に20μlの抗HAアフィニティーマトリックス(anti−HA affinity matrix、Roche社)を加え、4℃にて2時間転倒混和した後、遠心処理によりビーズを回収し、さらにこのビーズを500μlの細胞溶解バッファーで2回、500μlのキナーゼバッファーで2回洗浄した。次に、ビーズに1μgの基質と10μMのATPおよび5μCiの[γ−32P]ATP(3,000Ci/mmol、PerkinElmer社)を含む25μlのキナーゼバッファーを加え、30℃にて30分間リン酸化反応を行った。反応後、25μlの2×SDSサンプルバッファーを加え、5分間煮沸後、上清をSDS−PAGEにより分離し、BAS2000(Fuji film社)を用いたオートラジオグラフィーによりリン酸化蛋白質を検出した。なお、基質は、GST−MKK7の不活性体(unactive GST−MKK7、Upstate社)、または、陰性コントロールとしてGSTをそれぞれ使用した。<結果> 第6図に示したように、JIKによるGST−MKK7のリン酸化が認められた。また、このリン酸化はJIK非存在下では認められなかったことから、GST−MKK7のリン酸化は自己リン酸化ではなく、JIKによるものであることが明らかとなった。なお、陰性コントロール用の基質として用いたGSTでは、リン酸化は認められなかった。実施例7(MKK7とJIKの結合解析) JIKとMKK7の結合を実験的に確認するために、細胞内共発現/免疫共沈降法による結合試験を実施した。<材料> JIK発現プラスミドは、実施例6で構築したものを用いた。 MKK7発現プラスミドは次のように構築した。まず、ヒトMKK7cDNAを、ヒト骨格筋由来poly(A)+RNA(Clontech社)からRT−PCRにより取得し、次いで動物細胞用発現ベクター、pcDNA3.1(+)(Invitrogen社)へ組込んだ。その際、5´側にFLAG−tagコード配列を挿入し、動物細胞用N末端FLAG−tag付加型MKK7発現プラスミド、pcDNA−FLAG−MKK7を構築した。 試験に用いた各バッファーの組成は、実施例2に記載のものと同じである。<方法> 細胞数4×105のHEK293T細胞を37℃、5%CO2の条件下φ60mmシャーレ中で一晩培養した後、2μgのpcDNA−HA−JIKを2μgのpcDNA−FLAG−MKK7と共に、FuGENE6 Transfection Reagent(Roche社)を用いてトランスフェクションした。陰性コントロールとしてpcDNA3.1(+)を用いて、同様にトランスフェクションした。2日間培養後、細胞を氷冷したPBS(−)で洗浄して回収し、500μlの細胞溶解バッファーに懸濁し、氷上で10分間放置した。ついで4℃にて14,000rpmで10分間遠心処理してその上清を回収し、細胞溶解物とした。次に、500μlの細胞溶解物に20μlのAgarose−conjugated normal mouse IgG(Sigma社)を加え、4℃にて30分間転倒混和した後、遠心処理してその上清を回収した。回収した上清に20μlのanti−HA affinity matrix(Roche社)を加え、4℃にて一晩転倒混和した後、遠心処理によりビーズを回収した。ビーズを500μlの細胞溶解バッファーで3回、次いで500μlのTBS(25mM Tris−HCl,pH7.5,150mM NaCl)で1回洗浄した後、20μlの2×SDSサンプルバッファーを加え、5分間加熱後、上清を5−20%のSDS−PAGEにより分離した。その後、抗FLAG M2抗体(Sigma社)を用いたウェスタンブロット法により結合蛋白質を検出した。なお、検出はECLウエスタンブロッティング検出キットを使用した。<結果> 第7図に示したように、抗HA抗体を用いてHA−JIKの免疫沈降を実施した結果、HA−JIKとFLAG−MKK7とを共発現させた細胞においては、FLAG−MKK7の共沈降が認められた。一方、HA−JIK非発現細胞ではFLAG−MKK7の共沈降は認められなかったことから、この共沈降はアガロースビーズへの非特異的結合ではなく、HA−JIKとFLAG−MKK7の結合を示すものであることが明らかとなった。これらから、JIKとMKK7が細胞内で結合することが判明した。実施例8(JIKによるJNK3シグナル伝達経路の活性化) JIKによるJNK3シグナル伝達経路の活性化を実験的に確認するために、インビトロにおけるJNK3リン酸化試験を、免疫複合体リン酸化法を用いて実施した。<材料> JNK3発現プラスミドは、実施例4で構築したものを用いた。 JIK発現プラスミドは、実施例6で構築したものを用いた。 GST−c−Jun(1−79)は実施例4と同様に調製した。 試験に用いた各バッファーの組成は、実施例2に記載のものと同じである。<方法> 細胞数4×105のHEK293T細胞を37℃、5%CO2の条件下φ60mmのシャーレ中で一晩培養した後、2μgのpcDNA−HA−JIKを、2μgのpcDNA−FLAG−JNK3と共に、FuGENE6 Transfection Reagent(Roche社)を用いてトランスフェクションした。陰性コントロールとしてpcDNA3.1(+)を用いて同様にトランスフェクションした。2日間培養後、細胞を氷冷したPBS(−)で洗浄して回収後、500μlの細胞溶解バッファーに懸濁し、氷上で10分間放置した。ついで4℃にて14,000rpmで10分間遠心処理してその上清を回収し、細胞溶解物とした。次に、500μlの細胞溶解物に20μlのAgarose−conjugated normal mouse IgG(Sigma社)を加え、4℃にて30分間転倒混和した後、遠心処理してその上清を回収した。回収した上清に20μlのanti−FLAG M2 affinity gel(Sigma社)を加え、4℃にて2時間転倒混和した後、遠心処理によりビーズを回収し、さらにビーズを500μlの細胞溶解バッファーで2回、500μlのキナーゼバッファーで2回洗浄した。次に、ビーズに基質として2μgのGST−c−Jun(1−79)と10μM ATPおよび5μCiの[γ−32P]ATP(3000Ci/mmol、PerkinElmer社)を含む25μlのキナーゼバッファーを加え、30℃にて30分間リン酸化反応を行った。反応後、25μlの2×SDSサンプルバッファーを加え、100℃にて5分間処理後、上清を5−20% SDS−PAGEにより分離し、BAS2000(Fuji film社)を用いたオートラジオグラフィーによりリン酸化されたGST−c−Jun(1−79)を検出した。<結果> 第8図に示すように、HA−JIKとFLAG−JNK3を共発現させた細胞の溶解物を用いたキナーゼアッセイにおいて、FLAG−JNK3のみを発現させた細胞の溶解物と比較してリン酸化c−Junが増加した。すなわち、HA−JIKの発現により、JNK3のc−Junリン酸化活性が上昇することが明らかになった。 実施例6、7および8で得られた結果から、JIKがMKK7に結合してこれを直接リン酸化することにより、JNK3が活性化されてc−Junがリン酸化されること、すなわちJNK3シグナル伝達経路が活性化されることが判明した。 本発明においては、PAK4およびJIKがそれぞれMKK7と結合すること、さらに、PAK4およびJIKのいずれもMKK7を直接リン酸化すること、その結果JNK3シグナル伝達経路が活性されることを初めて見出した。 PAK4がJNKシグナル伝達経路を活性化することは従来知られていたが、その機構は不明であった。PAK4はcdc42によって活性化されるが、cdc42の活性化はJNKシグナル伝達経路の活性化を介して神経細胞死を引き起こす。よって、JNK3シグナル伝達経路の活性化による神経細胞死において、PAK4によるMKK7のリン酸化が関与していると考えられる。 JIKがERストレスの負荷によるJNK活性化に関与していることは今までに報告されているが、その機構は不明であった。ERストレスはJNKシグナル伝達経路の活性化を介して、神経細胞死を引き起こす。よって、ERストレスの負荷によるJNK3シグナル伝達経路の活性化による神経細胞死において、JIKによるMKK7のリン酸化が関与していると考えられる。 したがって、PAK4またはJIKとMKK7の結合、あるいはPAK4またはJIKによるMKK7のリン酸化を阻害することにより、JNK3シグナル伝達経路の活性化によって引き起こされるc−Junのリン酸化を阻害することができ、ひいては神経細胞死を阻害することができる。 PAK4およびJIKがいずれもMKK7を直接的にリン酸化することから、これらは異なった経路でMKK7をリン酸化することによりJNK3シグナル伝達経路の活性化に関与していると考えられる。よって、PAK4によるMKK7のリン酸化およびJIKによるMKK7のリン酸化の両方を阻害することにより、どちらか一方によるMKKのリン酸化を阻害するよりも、c−Junのリン酸化の阻害においてより高い効果が得られると考える。 本発明はこのように、JNK3シグナル伝達経路の活性化によって引き起こされる疾患、例えば神経細胞死に基づく疾患、具体的には、神経変性疾患の予防・治療のために、また、神経変性疾患やJNKシグナル伝達機構の研究のために、非常に有用である。 配列番号1:PAK4の部分配列(配列番号3)と高い相同性を有する、MKK7の部分配列。配列番号2:PAK4の部分配列(配列番号4)と高い相同性を有する、MKK7の部分配列。配列番号3:MKK7の部分配列(配列番号1)と高い相同性を有する、PAK4の部分配列。配列番号4:MKK7の部分配列(配列番号2)と高い相同性を有する、PAK4の部分配列。配列番号5:JIKの部分配列(配列番号7)と高い相同性を有する、MKK7の部分配列。配列番号6:JIKの部分配列(配列番号8)と高い相同性を有する、MKK7の部分配列。配列番号7:MKK7の部分配列(配列番号5)と高い相同性を有する、JIKの部分配列。配列番号8:MKK7の部分配列(配列番号6)と高い相同性を有する、JIKの部分配列。配列番号9:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号10:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したPAK4の部分配列。配列番号11:MKK7、PAK4およびJIKの配列において一致する部分配列。配列番号12:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号13:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したPAK4の部分配列。配列番号14:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号15:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したPAK4の部分配列。配列番号16:MKK7とPAK4の配列において一致する部分配列。配列番号17:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号18:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したPAK4の部分配列。配列番号19:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号20:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したPAK4の部分配列。配列番号21:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号22:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したPAK4の部分配列。配列番号23:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号24:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したPAK4の部分配列。配列番号25:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号26:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したPAK4の部分配列。配列番号27:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号28:MKK7とPAK4とのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したPAK4の部分配列。配列番号29:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号30:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したJIKの部分配列。配列番号31:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号32:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したJIKの部分配列。配列番号33:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号34:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したJIKの部分配列。配列番号35:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号36:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したJIKの部分配列。配列番号37:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号38:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したJIKの部分配列。配列番号39:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号40:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したJIKの部分配列。配列番号41:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号42:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したJIKの部分配列。配列番号43:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号44:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したJIKの部分配列。配列番号45:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したMKK7の部分配列。配列番号46:MKK7とJIKとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したJIKの部分配列。 【配列表】 下記i)からiv)のうちの少なくとも1つを特徴とする、c−Jun N末端キナーゼ3によるc−Junリン酸化の阻害剤;i)p21活性化キナーゼ4(PAK4)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合阻害、ii)PAK4によるMKK7のリン酸化の阻害、iii)JNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JNK/SAPK−inhibitory kinase;JIK)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合阻害、およびiv)JIKによるMKK7のリン酸化の阻害。 下記i)からiv)のうちの少なくとも1つを特徴とする、c−Jun N末端キナーゼ3によるc−Junリン酸化の阻害方法;i)p21活性化キナーゼ4(PAK4)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合阻害、ii)PAK4によるMKK7のリン酸化の阻害、iii)JNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JNK/SAPK−inhibitory kinase;JIK)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合阻害、およびiv)JIKによるMKK7のリン酸化の阻害。 下記i)から(iv)のうちの少なくとも1つを特徴とする、c−Jun N末端キナーゼ3によるc−Junリン酸化に基づく疾患の防止剤および/または治療剤;i)p21活性化キナーゼ4(PAK4)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合阻害、ii)PAK4によるMKK7のリン酸化の阻害、iii)JNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JNK/SAPK−inhibitory kinase;JIK)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合阻害、およびiv)JIKによるMKK7のリン酸化の阻害。 下記i)からiv)のうちの少なくとも1つを特徴とする、神経変性疾患の防止剤および/または治療剤;i)p21活性化キナーゼ4(PAK4)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合阻害、ii)PAK4によるMKK7のリン酸化の阻害、iii)JNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JNK/SAPK−inhibitory kinase;JIK)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合阻害、およびiv)JIKによるMKK7のリン酸化の阻害。 下記i)からiv)のうちの少なくとも1つを特徴とする、c−Jun N末端キナーゼ3によるc−Junリン酸化に基づく疾患の防止方法および/または治療方法;i)p21活性化キナーゼ4(PAK4)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合阻害、ii)PAK4によるMKK7のリン酸化の阻害、iii)JNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JNK/SAPK−inhibitory kinase;JIK)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合阻害、およびiv)JIKによるMKK7のリン酸化の阻害。 下記i)からiv)のうちの少なくとも1つを特徴とする、神経変性疾患の防止方法および/または治療方法;i)p21活性化キナーゼ4(PAK4)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合阻害、ii)PAK4によるMKK7のリン酸化の阻害、iii)JNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JNK/SAPK−inhibitory kinase;JIK)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合阻害、およびiv)JIKによるMKK7のリン酸化の阻害。 p21活性化キナーゼ4(PAK4)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合を阻害する化合物の同定方法であって、PAK4とMKK7とが結合する条件下で、PAK4および/またはMKK7を被検化合物と接触させ、次いで、PAK4とMKK7との結合により生じるシグナルの存在、不存在または変化を検出することにより、被検化合物がPAK4とMKK7との結合を阻害するか否かを決定することを含む同定方法。 JNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JNK/SAPK−inhibitory kinase;JIK)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合を阻害する化合物の同定方法であって、JIKとMKK7とが結合する条件下で、JIKおよび/またはMKK7を被検化合物と接触させ、次いで、JIKとMKK7との結合により生じるシグナルの存在、不存在または変化を検出することにより、被検化合物がJIKとMKK7との結合を阻害するか否かを決定することを含む同定方法。 p21活性化キナーゼ4(PAK4)によるMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)のリン酸化を阻害する化合物の同定方法であって、PAK4および/またはMKK7と被検化合物を接触させ、MKK7のリン酸化を検出することのできるシグナルおよび/またはマーカーを使用する系を導入し、このシグナルおよび/またはマーカーの存在、不存在または変化を検出することにより、被検化合物がPAK4によるMKK7のリン酸化を阻害するか否かを決定する同定方法。 JNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JNK/SAPK−inhibitory kinase;JIK)によるMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)のリン酸化を阻害する化合物の同定方法であって、JIKおよび/またはMKK7と被検化合物を接触させ、MKK7のリン酸化を検出することのできるシグナルおよび/またはマーカーを使用する系を導入し、このシグナルおよび/またはマーカーの存在、不存在または変化を検出することにより、被検化合物がJIKによるMKK7のリン酸化を阻害するか否かを決定する同定方法。 請求の範囲第7項から第10項のいずれか1項に記載の方法によって得られた化合物。 p21活性化キナーゼ4(PAK4)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合を阻害する化合物。 JNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JNK/SAPK−inhibitory kinase;JIK)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合を阻害する化合物。 p21活性化キナーゼ4(PAK4)によるMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)のリン酸化を阻害する化合物。 JNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JNK/SAPK−inhibitory kinase;JIK)によるMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)のリン酸化を阻害する化合物。 p21活性化キナーゼ4(PAK4)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合阻害剤。 JNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JNK/SAPK−inhibitory kinase;JIK)とMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)の結合阻害剤。 p21活性化キナーゼ4(PAK4)によるMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)のリン酸化阻害剤。 JNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JNK/SAPK−inhibitory kinase;JIK)によるMAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)のリン酸化阻害剤。 請求の範囲第11項から第15項に記載の化合物および請求の範囲第16項から第19項に記載の阻害剤の少なくとも1種以上を有効量含有してなる医薬組成物。 請求の範囲第11項から第15項に記載の化合物および請求の範囲第16項から第19項に記載の阻害剤の少なくとも1種以上を有効量含有してなる、c−Jun N末端キナーゼ3によるc−Junリン酸化に基づく疾患の防止剤および/または治療剤。 請求の範囲第11項から第15項に記載の化合物および請求の範囲第16項から第19項に記載の阻害剤の少なくとも1種以上を有効量含有してなる、神経変性疾患の防止剤および/または治療剤。 神経変性疾患が、ポリグルタミン病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、Lewy小体型痴呆症、多系統萎縮症、家族性筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、pick病、ファミリアル ブリティッシュ デメンチア(familial British dementia)、クロイツフェルト−ヤコブ(Creutzfeldt−Jakob)病、ゲルストマン−ストランスラー(Gerstmann−Stranssler)症候群、狂牛病(ウシ海綿状脳症)(BSE)、またはニューロセルピン(neuroserpin)封入体を伴う家族性痴呆症である請求の範囲第5項若しくは第22項に記載の防止剤および/または治療剤。 請求の範囲第11項から第15項に記載の化合物および請求の範囲第16項から第19項に記載の阻害剤の少なくとも1種以上を使用することを特徴とする、c−Jun N末端キナーゼ3によるc−Junリン酸化に基づく疾患の防止方法および/または治療方法。 請求の範囲第11項から第15項に記載の化合物および請求の範囲第16項から第19項に記載の阻害剤の少なくとも1種以上を使用することを特徴とする、神経変性疾患の防止方法および/または治療方法。 神経変性疾患が、ポリグルタミン病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、Lewy小体型痴呆症、多系統萎縮症、家族性筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、pick病、ファミリアル ブリティッシュ デメンチア(familial British dementia)、クロイツフェルト−ヤコブ(Creutzfeldt−Jakob)病、ゲルストマン−ストランスラー(Gerstmann−Stranssler)症候群、狂牛病(ウシ海綿状脳症)(BSE)、またはニューロセルピン(neuroserpin)封入体を伴う家族性痴呆症である請求の範囲第6項若しくは第25項に記載の防止方法および/または治療方法。 p21活性化キナーゼ4(PAK4)、JNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JNK/SAPK−inhibitory kinase;JIK)、PAK4をコードするポリヌクレオチド、JIKをコードするポリヌクレオチド、PAK4をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターおよびJIKをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターから選ばれる少なくとも1つと、MAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)、MKK7をコードするポリヌクレオチドおよびMKK7をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターから選ばれる少なくとも1つとを含んでなる試薬キット。 請求の範囲第7項から第10項のいずれか1項に記載の同定方法に用いる試薬キットであって、p21活性化キナーゼ4(PAK4)、JNK/SAPK−インヒビトリーキナーゼ(JNK/SAPK−inhibitory kinase;JIK)、PAK4をコードするポリヌクレオチド、JIKをコードするポリヌクレオチド、PAK4をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターおよびJIKをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターから選ばれる少なくとも1つと、MAPキナーゼキナーゼ7(MKK7)、MKK7をコードするポリヌクレオチドおよびMKK7をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターから選ばれる少なくとも1つとを含んでなる試薬キット。 MKK7と結合してこれを直接リン酸化する蛋白質PAK4およびJIKを見出し、PAK4とMKK7の結合、PAK4によるMKK7のリン酸化、JIKとMKK7の結合およびJIKによるMKK7のリン酸化の少なくとも1つを阻害することを特徴とするJNK3によるc−Junリン酸化阻害剤およびリン酸化阻害方法、JNK3によるc−Junリン酸化に基づく疾患の防止剤および/または治療剤並びに防止方法および/または治療方法を提供した。さらにPAK4とMKK7の結合、PAK4によるMKK7のリン酸化、JIKとMKK7の結合またはJIKによるMKK7のリン酸化を阻害する化合物の同定方法および該同定方法で得られた化合物を提供した。また、上記化合物および上記阻害剤のうち少なくとも1種を有効量含有してなる医薬組成物を提供した。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る