タイトル: | 再公表特許(A1)_骨代謝疾患治療剤 |
出願番号: | 2003007198 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K38/27,A61P13/10,A61P13/12,A61P19/08,A61P19/10,A61P43/00 |
本宮 善恢 森口 佳之 大川 広行 JP WO2003103703 20031218 JP2003007198 20030606 骨代謝疾患治療剤 中外製薬株式会社 000003311 社本 一夫 100089705 増井 忠弐 100076691 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 栗田 忠彦 100075236 本宮 善恢 森口 佳之 大川 広行 JP 2002165544 20020606 7 A61K38/27 A61P13/10 A61P13/12 A61P19/08 A61P19/10 A61P43/00 JP A61K37/36 A61P13/10 A61P13/12 A61P19/08 A61P19/10 A61P43/00 105 AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NI,NO,NZ,OM,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20051006 2004510822 18 [技術分野]本発明は、エリスロポエチン(EPO)を有効成分とした骨代謝疾患、特に骨代謝異状に基づく骨疾患に対する治療剤及び治療方法に関する。[背景技術]近年、人口の高齢化や寿命の延長により、骨代謝疾患に関する医療はQOLや医療費の増大化の観点から大いに注目が集まっている。ここで言う骨代謝疾患とは、いわゆる退行性骨疾患のみならず、高齢化による骨疾患、現代の生活習慣とも深く関係する腎不全や糖尿病に合併する骨代謝疾患も含まれている。骨代謝疾患の範囲は広範であることから、本疾患への対処を如何に進めていくかが大きな社会的課題となっている。このような社会的背景のもとに、骨代謝疾患に関する科学的知見は1980年代後半から急速に蓄積されてきた。骨代謝疾患に対する治療は、治療技術や薬物の開発とあいまって集約的に実施されている。この結果、それぞれの薬物の持つ多面的特性(Redundancy)が見出され、たとえば造血因子と骨代謝関連薬物は相互に作用機序または類似した作用を示し、両者の深い相関が示唆されつつある。骨代謝疾患を罹患したモデル動物を用いて、骨代謝疾患治療法を検討・確立することは、骨代謝疾患患者のQOLの改善につながる有用な情報を提供することを可能とする。骨疾患の中でも、骨量低下を指標とする骨粗鬆症等の骨折の危険率が上がる骨疾患に関しては、非侵襲的かつ簡便という理由から、その疾患の予防と診断を目的とした骨塩量をパラメータとした診断機器(骨塩量測定装置)の開発と技術の向上には著しいものがあった。一方、骨代謝疾患に関する診断については、1970年代に骨標識法を用いた形態学的観察に基づく骨形態計測診断法が開発されたものの、利便性に難点があるため、臨床現場では骨塩量測定装置ほどは汎用されていない。アデニン誘発腎障害モデルラット(アデニンモデル)は、慢性腎不全1),2),3)のモデル動物である。このモデルの腎不全と骨量低下の関係に着目し、モデルの大腿骨の骨密度(骨塩量)を骨塩量測定装置で測定した結果、骨塩量には減少傾向が観察され、この病態にEPOを投与すると、骨塩量に回復傾向が観察されたという報告がある4)。本発明者らは、以前よりこのアデニンモデルを腎不全とその合併症の観点から精査し、腎不全を来たした病態では、ヒトでの腎不全合併症と同様の、二次性副甲状腺機能亢進症、異所性石灰化、また骨代謝疾患である腎性骨異栄養症といった合併症を呈する病態モデル動物であることを報告してきた5),6)。腎性骨異栄養症等の骨代謝疾患の本態を探るためには、骨代謝に関連する骨芽細胞や破骨細胞の骨組織における量的バランスと、時間的概念を加味した機能的かつ経時変化に基づく、病理組織学的手法による最終解析が必要不可欠である。骨塩量の測定による非侵襲的診断法のみでは骨代謝疾患の一部である骨粗鬆症等の疑いがわずかに判明するだけであり、骨代謝疾患の本態を解析し、類推することは不可能であった。[発明の開示]このように骨代謝疾患のみならず形態学的変化を伴う疾患であれば、他領域例えば癌などの場合も同様に、その病態の確定診断は、定量化に加え、組織診断の所見をも加味しなければならない。ここに病理組織学的診断が、最終診断とされる科学的根拠があり、本発明においてはこの手法を第一義と捉え、骨塩量の測定だけでは判定できなかった骨代謝疾患への予防・治療効果を、この手法を用いて確認しようとするものである。本発明の目的は、腎不全患者の骨代謝異状の予防と治療に有効である予防・治療薬を提供することにある。本発明者らは、アデニンモデルを用いて、このモデルでの骨代謝疾患の本態を探るために、さらにEPOの骨代謝への影響を精査するために、骨代謝に関連する骨芽細胞や破骨細胞の骨組織における量的バランスと、機能的かつ経時変化に基づく最終解析が必要と考え、十分な病理組織学的検索を実施した。その結果、アデニンモデルへEPOの投与を行うことで、骨代謝異状、特に腎性骨異栄養症を改善する作用があることを見出し、本発明に到達した。[発明を実施するための形態]本発明は、従来の骨代謝疾患の非侵襲性診断技術,例えば、骨塩量の測定等、によっては不可能であった、アデニンモデルの骨病変に対するEPOの治癒効果を病理組織学的所見として見出したものである。アデニンモデルは、アデニンを含む餌を調整し、これを一定期間摂餌させることにより、不可逆的な腎障害を惹起し、慢性腎不全の病態を呈するモデルである。アデニン摂餌開始4日目より、アデニンの代謝物である2,8−ジヒドロキシアデニン(2,8−dihydroxyadenine)が析出・結晶化して沈着物となる。このために尿細管には閉塞が起こり、周囲の組織障害が惹起されて不可逆的な腎障害に至り、慢性腎不全が形成される段階では、貧血、腎性骨異栄養症、2次性副甲状腺機能亢進症、異所性石灰化等のヒトの慢性腎不全患者の合併症と類似の病態を呈する。本発明のEPOの適応疾患としては、骨代謝異状を示す骨疾患であり、腎不全に伴う骨異栄養症、大理石病、糖尿病性腎症、骨粗鬆症等が挙げられる。EPOは、アデニン誘発による腎性骨異栄養症の骨代謝異状の病理組織学的所見を正常化させた。以下に、骨および骨髄の病理組織学的所見を説明する。後の実験例において述べるが、使用した全てのアデニンモデルについて、骨幹部皮質骨における腎性骨異栄養症が、軽度ないし重度に観察された。これら中等度以上の骨異栄養症の骨幹端においては、2つの異なる特徴的な病理組織学的所見が得られた。まず、膝関節部の大腿骨骨幹端からより骨幹部により近い部分(海綿骨近位部)は、骨髄と境界を形成するように第一次海綿骨の残存ないしは類骨形成を伴う未熟な骨基質の増加が観られ、骨幹部骨髄との連続性を欠き骨髄組織に乏しく血管形成は稀である(図1)。これらの海綿骨では、骨芽細胞は見られるが、破骨細胞は殆ど観察されず骨吸収は停滞しその結果、骨代謝が遅延し軟骨基質を残存している(図2)。これらの海綿骨近位部の病変部と骨端軟骨の間(海綿骨遠位部)には、少数ながら破骨細胞、骨芽細胞、海綿骨周囲の線維芽細胞から成る骨異栄養症の典型的な海綿骨組織が長軸に対して横断的に帯状に観察される(図1)。EPO投与によりこれら海綿骨近位部、遠位部ともにそれらの骨表面には破骨細胞による骨吸収腔や活性化骨芽細胞の増加が見られ、同時に骨髄腔には、赤血球を入れる血管形成が多くの部位で観られた(図3)。この血管内の赤血球増加は、骨幹部皮質骨内や骨吸収腔の小血管においても観られた。また海綿骨周囲には、線維芽細胞が残存するが、活性化した破骨細胞と骨芽細胞が観られ骨基質は非薄化して層状骨を形成し、成熟した海面骨として観察された(図4)。アデニンモデルにおける骨および骨髄病変へのEPO投与による病理組織学的改善効果として以下の様に要約される。アデニンモデルでは、その腎病変はアデニン摂餌数日後より発症し血中リン値の上昇、活性化VDの低下、PTHの産生亢進等により骨代謝異状も早期に惹起される。これらの骨病変は、海綿骨において二分される。初期アデニンの摂餌期間である4週間の骨代謝異状は、海綿骨遠位部に観られ、骨吸収低下に基づくリモデリングの遅延を主体とする類骨組織の増加と骨基質の残存として観察される。さらにその後、正常食摂餌への代替後4週間における腎機能の一過性の正常化があり、その期間に骨代謝が行われる海綿骨近位部では、線維性骨炎を特徴とする病変が観察された。これら両海綿骨部に認められた経時的骨代謝異状の変化は、摂餌切り替えにより惹起された。EPOは後半の4週間投与され、骨髄では赤血球造血が亢進し多数の赤血球を入れ充血した静脈(類洞)が多数観察された。EPO投与により赤血球造血亢進のほか、VEGF産生刺激に基づく血管形成と骨幹部骨髄からの造血幹細胞生着と前破骨細胞の流入による骨吸収開始とその結果惹起される骨形成とが誘導されたものと考えられる。最終的にはEPO投与により、両海綿骨部に認められた経時的骨代謝異状の海綿骨は、成熟した層状骨を形成し骨髄組織の回復化傾向が同時に進行し、骨骨髄両組織の病変の治癒が病理組織学的に観察された。正常ラット(図5)にEPOを投与しても顕著な形態学的変化は認められなかった(図6)。本発明で使用する活性成分であるエリスロポエチン(EPO)は、例えば、ヒト再生不良性貧血患者の尿から抽出して得られた天然のヒトEPO(特公平1−38,800号公報)や、ヒトEPOのアミノ酸配列に対応するメッセンジャーRNA(mRNA)を採取し、そのmRNAを利用して組換DNA体を作成し、次いで適当な宿主(例えば、大腸菌の如き菌類や、酵母類や、植物の細胞株や、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、マウスC−127細胞等の動物の細胞株等)で生産させる遺伝子組換技術により製造されたもの〔例えば、特公平1−44,317号公報、Kenneth Jacobs等,Nature,313,806〜810(1985)〕等を挙げることができる。また、本発明で使用できるEPOは、上記由来のものの外に、それらの改変体であってもよい。EPO改変体としては、例えば、特開平3−151399号公報に記載された改変体が挙げられる。上記EPO改変体としては、もとの糖蛋白質のペプチド鎖のAsnがGlnに変異し、結合するN結合型糖鎖の結合数が変異したものがある。また他に、アミノ酸変異としては、特開平2−59599号公報、特開平3−72855号公報記載のものが挙げられる。即ち、EPOの有するEPOレセプターへの作用特性を失わない限り、アミノ酸の変異、欠失、付加は何個でもよい。本発明のEPOを有効成分とする製剤については、その投与方法や剤型に応じて必要により、懸濁化剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤等を添加することができる。ここで、懸濁化剤の例としては例えばメチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等を挙げることができ、溶解補助剤としては例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マグロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステル等を挙げることができ、安定化剤としては例えばヒト血清アルブミン、デキストラン40、メチルセルロース、ゼラチン、亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウム等を挙げることができ、等張化剤としては例えばD−マンニトール、ソルビトール等を挙げることができ、また、保存剤としては例えばパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール等を挙げることができ、更に、吸着防止剤としては例えばヒト血清アルブミン、レシチン、デキストラン、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。本発明のEPOを有効成分とし、安定化剤としてある種のアミノ酸を添加することにより、ヒト血清アルブミンや精製ゼラチンを含まない安定なEPO溶液製剤を使用することもできる。この安定なEPO溶液製剤は特開平10−182481号公報に記載されている。この公報の説明は本明細書の一部に含まれるものとする。このEPO溶液製剤で安定化剤として添加するアミノ酸には、遊離のアミノ酸ならびにそのナトリウム塩、カリウム塩、塩酸塩などの塩を含む。本発明の溶液製剤には、これらのアミノ酸の1種または2種以上を組み合わせて添加することができる。好ましいアミノ酸は、D−、L−およびDL−体のロイシン、トリプトファン、セリン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジンおよびリジンならびにその塩であり、より好ましいのはL−ロイシン、L−トリプトファン、L−グルタミン酸、L−アルギニン、L−ヒスチジンおよびL−リジンならびにその塩である。特に好ましいのは、L−アルギニン、L−ヒスチジンおよびL−リジンならびにその塩である。最も好ましいのはL−ヒスチジンならびにその塩である。この安定なEPO溶液製剤の製法等の詳細については上記公報に記載された通りである。本発明の目的の予防、治療薬における、これらEPOの投与量については、対象となる疾患やその病状等を配慮して適宜決定できるものであるが、投与量については、通常成人1人当たり0.1〜500μg、好ましくは5〜100μgである。以下に、実験例及び実施例により、本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例、実験例によって限定されるものではない。なお、実験例において、本発明の効果を確認している。[実験例](実験動物)雄性Wistar Rat(日本チャールズリバー)を5週齢で導入し、2週間の馴化の後、7週齢にて実験に供した。(投与薬剤および投与スケジュール)(1) 投与薬剤EPO: エポジン注3000(エポエチンβ、中外製薬(株))。製剤をvehicleにて200IU/mLに希釈した。vehicle: 0.25%ゼラチン、1.25%D−マンニトール含有1mMリン酸緩衝液pH7.4。アデニン: ラット正常固形試料(CE−2、日本クレア(株))の組成に、アデニン(6−aminopurine)を重量比で0.75%含む混餌固形飼料を調製(日本クレア(株))し、adenine混餌試料とした。(2) 投与群投与群は、adenine vehicle投与群(アデニン試料を摂餌させ、vehicleを投与)adenine EPO投与群(アデニン試料を摂餌させ、EPOを投与)CE−2群(正常食を摂餌させ、投与は実施せず)を設定した。(3) 投与スケジュールアデニン摂餌開始日をDay 0とした。アデニンは、adenine vehicle投与群およびadenine EPO投与群に対し、実験開始から4週間、adenine混餌試料を摂餌させて投与した。実験開始5週目から8週目までの4週間は正常餌を摂餌させた。CE−2群は、実験開始から終了時まで正常餌を摂餌させた。EPOは、実験開始5週目から8週目の4週間、200IU/kgを背部皮下(頚背部)に週3回投与した。Vehicleは、実験開始5週目から8週目の4週間、背部皮下に週3回投与した。EPOまたはvehicleは、投与液量をそれぞれ1mL/kgとした。(臓器採取)実験開始8週目に解剖を行い、腎臓、副甲状腺、大腿骨等を採取してホルマリン固定を行った。(組織標本作製)ホルマリン固定の後、大腿骨は脱灰操作を行った。腎臓、副甲状腺および脱灰後の大腿骨はパラフィン胞埋して、パラフィン切片を作製した。それぞれ切片はヘマトキシリン−エオジン(HE)染色して、病理組織学的検索を実施した。(結果)Wistar系ラットにアデニン混餌試料を4週間摂餌させ、その後正常食を4週間摂餌させた。この処置により腎臓は、尿細管腔の拡張、尿円柱、尿細管上皮の変性萎縮、巨細胞形成を伴う上皮の増殖、細胞浸潤を伴う間質の肥厚など多彩な病変が観察された。これらは、アデニン摂餌によって腎機能低下を来たす病理組織学的所見であり、彌慢性に中等度ないし重度に認められた。副甲状腺は、観察したアデニンモデル全例に増殖性の腫大が観察され、腺細胞の分裂像も多くの個体に認められた。正常食摂餌動物には、この様な変化は見られなかった。また、この副甲状腺の増殖性腫大の所見には、EPO投与による影響は見られなかった。骨および骨髄に関しては、全例のアデニンモデルの骨幹部皮質骨において腎性骨異栄養症が、軽度ないし重度に観察された。これら中等度以上の骨異栄養症の骨幹端においては、2つの異なる特徴的な病理組織学的所見が得られた。まず、膝関節部の大腿骨骨幹端からより骨幹部により近い部分(海綿骨近位部)は、骨髄と境界を形成するように第一次海綿骨の残存ないしは類骨形成を伴う未熟な骨基質の増加が観られ、骨幹部骨髄との連続性を欠き骨髄組織に乏しく血管形成は稀である(図1)。これらの海綿骨では、骨芽細胞は見られるが、破骨細胞は殆ど観察されず骨吸収は停滞しその結果、骨代謝が遅延し軟骨基質を残存している(図2)。これらの海綿骨近位部の病変部と骨端軟骨の間(海綿骨遠位部)には、少数ながら破骨細胞、骨芽細胞、海綿骨周囲の線維芽細胞から成る骨異栄養症の典型的な海綿骨組織が長軸に対して横断的に帯状に観察される。EPO投与によりこれら海綿骨近位部、遠位部ともにそれらの骨表面には破骨細胞による骨吸収腔や活性化骨芽細胞の増加が見られ、同時に骨髄腔には、赤血球を入れる血管形成が多くの部位で観られた(図3)。この血管内の赤血球増加は、骨幹部皮質骨内や骨吸収腔の小血管においても観られた。また海綿骨周囲には、線維芽細胞が残存するが、活性化した破骨細胞と骨芽細胞が観られ骨基質は非薄化して層状骨を形成し、成熟した海面骨として観察された(図4)。アデニンモデルにおける骨および骨髄病変へのEPO投与による病理組織学的改善効果として以下の様に要約される。アデニンモデルでは、その腎病変はアデニン摂餌数日後より発症し血中リン値の上昇、活性化VDの低下、PTHの産生亢進等により骨代謝異状も早期に惹起される。これらの骨病変は、海綿骨において2分される。初期アデニンの摂餌期間である4週間の骨代謝異状は、海綿骨遠位部に観られ、骨吸収低下に基づくリモデリングの遅延を主体とする類骨組織の増加と骨基質の残存として観察される。さらにその後、正常食摂餌への代替後4週間における腎機能の一過性の正常化があり、その期間に骨代謝が行われる海綿骨近位部では、線維性骨炎を特徴とする病変が観察された。これら両海綿骨部に認められた経時的骨代謝異状の変化は、摂餌切り替えにより惹起された。EPOは後半の4週間投与され、骨髄では赤血球造血が亢進し多数の赤血球を入れ充血した静脈(類洞)が多数観察された。EPO投与により赤血球増殖亢進のほか、VEGF産生刺激に基づく血管形成と骨幹部骨髄からの造血幹細胞生着と前破骨細胞の流入による骨吸収開始とその結果惹起される骨形成とが誘導されたものと考えられる。最終的にはEPO投与により、両海綿骨部に認められた経時的骨代謝異状の海綿骨は、成熟した層状骨を形成し骨髄組織の回復化傾向が同時に進行し、骨骨髄両組織の病変の治癒が病理組織学的に観察された。正常ラット(図5)にEPOを投与しても顕著な形態学的変化は認められなかった(図6)。以下に、製剤に関する実施例を示す。[実施例1]エリスロポエチン 8μg注射用蒸留水にて全量 2ml上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、密封した。[実施例2]エリスロポエチン 8μg注射用蒸留水にて全量 2ml上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、凍結乾燥して密封した。[実施例3]エリスロポエチン 16μg注射用蒸留水にて全量 2ml上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、密封した。[実施例4]エリスロポエチン 16μg注射用蒸留水にて全量 2ml上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、凍結乾燥して密封した。[実施例5]エリスロポエチン 8μgヒト血清アルブミン 5mg注射用蒸留水にて全量 2ml上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、密封した。[実施例6]エリスロポエチン 8μgヒト血清アルブミン 5mg注射用蒸留水にて全量 2ml上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、凍結乾燥して密封した。[実施例7]エリスロポエチン 16μgヒト血清アルブミン 5mg注射用蒸留水にて全量 2ml上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、密封した。[実施例8]エリスロポエチン 16μgゼラチン 5mg注射用蒸留水にて全量 2ml上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、凍結乾燥して密封した。[実施例9〜12]実施例5〜8におけるヒト血清アルブミンに代えて5mgのデキストラン40を用い、これら実施例5〜8と同様にして注射剤を調製した。[実施例13]注射用蒸留水100ml中にD−マンニトール5g、エリスロポエチン1mg、ヒト血清アルブミン100mgを無菌的に溶解して水溶液を調製し、1mlずつバイアル瓶に分注し、凍結乾燥して密封した。[実施例14]調剤溶液1ml中に以下の成分:EPO 1500国際単位非イオン性界面活性剤 0.05mg(ポリソルベート80:日光ケミカル社製)塩化ナトリウム 8.5mgL−アルギニン塩酸塩(Sigma社製) 10mgを含み、10mMリン酸緩衝溶液(和光純薬社製)にてpH6.0に調整した溶液を、5mlのガラスバイアルに1ml充填し、打栓、密封し、溶液製剤に供した。[実施例15]調剤溶液1ml中に以下の成分:EPO 1500国際単位非イオン性界面活性剤 0.05mg(ポリソルベート80:日光ケミカル社製)塩化ナトリウム 8.5mgL−ヒスチジン塩酸塩(Sigma社製) 10mg上記実施例14と同様に溶液製剤を調製した。[実施例16]調剤溶液1ml中に以下の成分:EPO 1500国際単位非イオン性界面活性剤 0.05mg(ポリソルベート80:日光ケミカル社製)塩化ナトリウム 8.5mgL−リジン塩酸塩(Sigma社製) 10mg上記実施例14と同様に溶液製剤を調製した。[産業上の利用可能性]本発明のEPO有効成分とする製剤は、既報のEPOによる赤血球増加作用とは別に、骨疾患、特に骨代謝異状に基づく骨疾患に対して、骨および骨髄の病変治癒による改善作用をもたらす新規の予防・治療剤であり、その対象病態は、骨代謝異状を示す骨疾患であり、腎不全に伴う骨異栄養症、大理石病、糖尿病性腎症、骨粗鬆症等である。【図面の簡単な説明】図1は、アデニン腎炎ラット(溶媒投与群)の大腿骨骨幹端の組織標本を撮影した写真である(8倍、HE染色)。図2は、上記図1と同様の組織標本を撮影した写真である。但し、倍率は80倍である。図3は、アデニン腎炎ラット(EPO投与群)の大腿骨骨幹端の組織標本を撮影した写真である(8倍、HE染色)。図4は、上記図3と同様の組織標本を撮影した写真である。但し、倍率は80倍である。図5は、正常ラットの大腿骨骨幹端の組織標本を撮影した写真である(8倍、HE染色)。図6は、正常ラット(EPO投与群)の大腿骨骨幹端の組織標本を撮影した写真である(8倍、HE染色)。 エリスロポエチン(EPO)を有効成分として含有する骨代謝疾患治療剤。 前記骨代謝疾患が、腎不全に伴う骨異栄養症、大理石病、糖尿病性腎症又は骨粗鬆症である、請求項1記載の治療剤。 骨代謝疾患患者にエリスロポエチンを投与することからなる骨代謝疾患の治療方法。 エリスロポエチンを通常成人1人当たり0.1〜500μg、好ましくは5〜100μgを投与する、請求項2に記載の治療方法。 前記骨代謝疾患患者が、腎不全に伴う骨異栄養症、大理石病、糖尿病性腎症又は骨粗鬆症のいずれかの疾患の患者である、請求項3に記載の治療方法。 エリスロポエチン(EPO)を有効成分として配合する骨代謝疾患治療剤の製造方法。 前記骨代謝疾患が、腎不全に伴う骨異栄養症、大理石病、糖尿病性腎症又は骨粗鬆症のいずれかの疾患、請求項7に記載の治療剤の製造方法。 EPOを有効成分として含有する骨代謝疾患治療剤又は骨代謝疾患患者の治療方法を提供する。EPOを有効成分とする製剤は、既報のEPOによる赤血球増加作用とは別に、骨疾患、特に骨代謝異状に基づく骨疾患に対して、骨および骨髄の病変治癒による改善作用をもたらす新規の予防・治療剤であり、その対象病態は、骨代謝異状を示す骨疾患であり、腎不全に伴う骨異栄養症、大理石病、糖尿病性腎症、骨粗鬆症等である。