タイトル: | 再公表特許(A1)_抗酸菌の溶菌方法およびそれを用いた遺伝子増幅若しくは検出方法 |
出願番号: | 2003006321 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12N1/06,C12Q1/68 |
鎌田 達夫 和泉澤 裕司 JP WO2003097816 20031127 JP2003006321 20030521 抗酸菌の溶菌方法およびそれを用いた遺伝子増幅若しくは検出方法 アークレイ株式会社 000141897 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ 110000040 鎌田 達夫 和泉澤 裕司 JP 2002146823 20020521 JP 2002183461 20020624 7 C12N1/06 C12Q1/68 JP C12N1/06 C12Q1/68 Z AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PT,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NI,NO,NZ,OM,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20050915 2004506475 30 技術分野本発明は、抗酸菌の溶菌方法およびそれを用いた遺伝子増幅若しくは検出方法に関する。背景技術結核は、今なお、世界的に重要な細菌性疾患であり、その治療方法のみならず診断方法は極めて重要である。結核の最終的確認は、培養法により行われるが、結核菌の増殖速度は極めて遅いため、培養法の前段階で実施される予備的診断方法の確立が望まれている。このような予備的診断方法として、注目されているのは、ポリメラーゼ チェーン リアクション(PCR)法を適用した方法である。この方法は、結核菌の遺伝子に特異的なプライマーを用い、結核菌の遺伝子を増幅して検出することにより、結核菌の有無を判定する方法である。前記PCR法を適用した予備的診断方法では、その前処理として結核菌を溶菌して遺伝子を抽出する必要がある。従来の溶菌方法としては、例えば、有機溶媒等を用いた化学的方法、超音波や凍結・融解を繰り返す物理的方法等がある。しかし、結核菌は、その細胞壁の脂質含量が高く、従来の溶菌法では、遺伝子の抽出を十分に行うことができなかった。また、十分な抽出を行うためには、処理条件を過酷なものにする必要があり、それに伴い、特殊な装置や試薬を使用する必要があり、これに加え、処理時間の長期化や操作の煩雑化等の問題があった。このような溶菌の問題は、結核菌を含む抗酸菌全体の問題でもある。発明の開示本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、特殊な装置や試薬を用いることなく、簡単かつ短時間に抗酸菌を溶菌できる方法の提供を、その目的とする。前記目的を達成するために、本発明の第1の溶菌方法は、抗酸菌から遺伝子を抽出するための溶菌方法であって、非イオン界面活性剤を含む液体中において、前記抗酸菌を、前記液体の沸点未満の温度で加熱するという方法である。また、前記目的を達成するために、本発明の第2の溶菌方法は、抗酸菌から遺伝子を抽出するための溶菌方法であって、前記抗酸菌をリパーゼで処理する脂質分解工程と、非イオン界面活性剤の存在下で前記抗酸菌を加熱する加熱工程とを含む方法である。本発明の第1の方法によれば、非イオン界面活性剤溶液中で、抗酸菌を、例えば、96℃で10分間加熱するだけで、十分に遺伝子を抽出することができ、その後の遺伝子増幅若しくは検出方法を簡単に実施できる。また、加熱温度が、前記液体の沸点未満であるため、突沸して試料が飛び散ることが無く、また温度コントロールが容易になって、特別の加熱器を必要としない等の利点がある。また、本発明の第2の溶菌方法は、抗酸菌の細胞壁が脂質を高濃度で含んでいることに着目し、これに基づき到達したものである。すなわち、本発明の第2の溶菌方法では、脂質分解工程によって抗酸菌の細胞壁を脆弱化し、加熱工程によって溶菌するのである。本発明の第1および第2の溶菌方法は、カオトロピック試薬等の特別の試薬および超音波装置等のような特別の装置を用いることなく、簡単かつ短時間に溶菌処理を行うことができ、しかも化学的手法であるから試料の飛散の恐れも少なく、安全な方法である。また、本発明の第1および第2の溶菌方法は、遺伝子の精製を行うことなく、そのまま遺伝子増幅若しくは検出処理に移行できる。なお、本発明の第1および第2の溶菌方法は、遺伝子の増幅・検出方法だけでなく、例えば、遺伝子操作等のその他の分野にも適用できる。発明を実施するための最良の形態以下に、本発明の第1の溶菌方法および第2の溶菌方法をさらに詳しく説明する。まず、本発明の第1の溶菌方法について説明する。本発明の第1の方法において、前記加熱温度は、70℃以上100℃未満が好ましく、より好ましくは80℃以上100℃未満であり、最適には96℃である。また、加熱時間は、例えば、1〜30分であり、好ましくは10分間である。前記液体のpHは、例えば、pH7.0〜12.0の範囲であり、好ましくはpH8.0である。前記液体中の前記非イオン界面活性剤の濃度は、例えば、0.01〜10重量%であり、好ましくは0.5〜2.0重量%であり、より好ましくは1.0重量%である。前記非イオン界面活性剤としては、例えば、Span20,Span40,Span60,Span65,Span80,Span85等(以上、ナカライテスク社製等)のd−ソルビトールの脂肪酸エステル、Tween20,Tween21,Tween40,Tween60,Tween65,Tween80,Tween81,Tween85等(以上、ナカライテスク社製等)のポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、TritonX−100等(以上、ナカライテスク社製等)のポリオキシエチレングリコールp−t−オクチルフェニルエーテル等がある。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。このなかで、TritonX−100、Tween20、Tween21が好ましく、より好ましいのはTritonX−100である。本発明の第1の方法において、さらに、前記液体が、金属キレート剤を含むことが好ましい。試料中には、DNase等の遺伝子分解酵素が含まれており、金属キレート剤は、これによる遺伝子の分解を防止する作用等を発揮する。前記液体中の前記金属キレート剤の濃度は、例えば、0.1〜100mMであり、好ましくは1.0mMである。前記金属キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N´,N´−四酢酸(EGTA)、ジアミノシクロヘキサン四酢酸、o−フェナンスロリン、サリチル酸等がある。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。このなかで、好ましいのは、EDTA、EGTAであり、より好ましいのは、EDTAである。本発明の第1の溶菌方法の対象となる抗酸菌としては、例えば、鳥型結核菌(M.avium)、エム・イントラセルラレエ(M.intracellularae)、エム・ゴルドネエ(M.gordonae)、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)、エム・カンサシイ(M.kansasii)、エム・フォルツイツム(M.fortuitum)、エム・ケロネエ(M.chelonae)、ウシ型結核菌(M.bovis)、エム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、パラ結核菌(M.paratuberculosis)、チモテ菌(M.phlei)、エム・マリヌム(M.marinum)、エム・シミエー(M.simiae)、エム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、エム・スズルガイ(M.szulgai)、らい菌(M.leprae)、エム・キセノピ(M.xenopi)、エム・ウルセランス(M.ulcerans)、鼠らい菌(M.lepraemurium)、エム・フラベセンス(M.flavescens)、エム・テレエ(M.terrae)、エム・ノンクロモジェニクム(M.nonchromogenicum)、エム・マルメンス(M.malmoense)、エム・アシアティクム(M.asiaticum)、エム・ヴァケエ(M.vaccae)、エム・ガストリ(M.gastri)、エム・トリビアル(M.triviale)、エム・ヘモフィラム(M.haemophilum)、エム・アフリカヌム(M.africanum)、エム・サーモレジスタブル(M.thermoresistable)およびスメグマ菌(M.smegmatis)等がある。本発明の第1の方法において、抗酸菌を含む生体試料としては、例えば、痰、髄液、糞、唾液、血液、組織、尿等がある。つぎに、本発明の第1の方法は、例えば、以下のようにして実施できる。すなわち、まず、前記所定pHの緩衝液に、必要に応じてEDTA等の金属キレート剤を添加し、さらに非イオン界面活性剤を添加して溶菌試薬液を調製する。前記緩衝液としては、Tris−HClバッファー、HEPESバッファー、MOPSバッファー、HEPPSバッファー、TAPSバッファー、リン酸バッファー等がある。この溶菌試薬液は、オートクレイブにより高圧蒸気滅菌することが好ましい。他方、試料液を調製する。例えば、喀痰検体を、N−アセチル−L−システイン−NaOH法(NALC−NaOH法)等により、均質化および雑菌処理して、これを試料液とする。これを遠心分離して上清を除去し、残った沈殿物(ペレット)に前記溶菌試薬を添加する。そして、ヒートブロック等を用い、前記所定の温度で加熱することにより、溶菌処理を行う。なお、加熱方法としては、前記ヒートブロックの他に、例えば、ウォーターバス、マイクロウェーブオーブン、エアーバス等がある。このようにして溶菌した検体は、そのまま、若しくは前処理を施して遺伝子増幅若しくは検出処理を行うことができる。前記遺伝子増幅若しくは検出方法としては、例えば、PCR法、RT−PCR等のPCRの変法等がある。また、分析対象となる遺伝子としては、DNA、RNAがある。つぎに、本発明の第2の溶菌方法について説明する。本発明の第2の溶菌方法において、前記加熱工程が、前記リパーゼの失活工程を兼ねることが好ましい。このようにすれば、特別の工程を設けることなくリパーゼを失活でき、溶菌処理につづく遺伝子の増幅若しくは検出処理等に影響を与えるおそれがない。本発明の第2の溶菌方法において、前記脂質分解工程および前記加熱工程が、緩衝液中で実施されることが好ましく、より好ましくは同一の緩衝液中で実施されることである。緩衝液は、特に制限されず、例えば、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、マッキルバイン緩衝液等があげられ、このなかで、Tris緩衝液、HEPES緩衝液が好ましい。本発明の第2の溶菌方法において、前記脂質分解工程および前記加熱工程が、閉鎖系の同一容器内で実施されることが好ましい。閉鎖系であれば、試料の飛散が防止でき、同一容器内であれば、処理効率が良くなる。本発明の第2の溶菌方法において、前記脂質分解工程を行った後、前記加熱工程を行ってもよく、前記両工程を同時に行ってもよい。前者の場合、例えば、前記脂質分解工程の条件は、pH4〜8、温度37〜60℃および処理時間5〜30分間の条件であり、前記加熱工程の条件は、温度37〜100℃で5〜30分間の条件であり、好ましくは、前記脂質分解工程の条件は、pH6〜8、温度37〜50℃および処理時間5〜20分間の条件であり、前記加熱工程の条件は、温度80〜100℃で5〜20分間の条件であり、より好ましくは、前記脂質分解工程の条件は、pH6.5〜7.5、温度37〜50℃および処理時間10分間の条件であり、前記加熱工程の条件は、温度90〜98℃で10分間の条件である。後者の場合、前記脂質分解工程および前記加熱工程の条件は、例えば、pH4〜8、温度37〜60℃および処理時間10〜30分間の条件であり、好ましくは、pH6〜8、温度37〜50℃および処理時間10〜20分間の条件であり、より好ましくは、pH6.5〜7.5、温度45〜50℃および処理時間10〜20分間の条件である。前記緩衝液中のリパーゼの濃度は、例えば、10〜10000units/mlであり、好ましくは、100〜2000units/ml、より好ましくは、200〜1000units/mlである。使用するリパーゼは、特に制限されないが、例えば、商品名リパーゼR「アマノ」G、商品名リパーゼM「アマノ」10、商品名リパーゼG「アマノ」50、商品名リパーゼAY「アマノ」30G、商品名リパーゼA「アマノ」6等(以上、全て天野製薬(株)製)があり、これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。このなかで、好ましいのは、商品名リパーゼG「アマノ」50、商品名リパーゼAY「アマノ」30Gであり、より好ましいのは、商品名リパーゼAY「アマノ」30Gである。前記緩衝中の前記非イオン界面活性剤の濃度は、例えば、0.01〜10重量%であり、好ましくは0.1〜2.0重量%であり、より好ましくは0.5〜1.0重量%である。前記非イオン界面活性剤としては、例えば、Span20,Span40,Span60,Span65,Span80,Span85等(以上、ナカライテスク社製等)のd−ソルビトールの脂肪酸エステル、Tween20,Tween21,Tween40,Tween60,Tween65,Tween80,Tween81,Tween85等(以上、ナカライテスク社製等)のポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、TritonX−100等(ナカライテスク社製等)のポリオキシエチレングリコールp−t−オクチルフェニルエーテル等がある。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。このなかで、Tween20、TritonX−100が好ましく、より好ましいのは、TritonX−100である。前記加熱工程において、非イオン界面活性剤に加え、さらに、金属キレート剤の存在下で、加熱処理を行うことが好ましい。試料中には、DNase等の遺伝子分解酵素が含まれており、金属キレート剤は、これによる遺伝子の分解を防止する作用等を発揮する。前記液体中の前記金属キレート剤の濃度は、例えば、0.1〜2.0mMであり、好ましくは0.5〜1.0mMである。前記金属キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)および1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)等がある。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。このなかで、好ましいのは、EDTA、EGTAであり、より好ましいのは、EDTAである。本発明の第2の溶菌方法の対象となる抗酸菌としては、前記第1の溶菌方法と同様である。また、本発明の第2の溶菌方法において、抗酸菌を含む生体試料は、前記第1の溶菌方法と同様である。つぎに、本発明の第2の溶菌方法は、例えば、以下のようにして実施できる。すなわち、まず、前記所定pHの緩衝液に、リパーゼ、非イオン界面活性剤、必要に応じてEDTA等の金属キレート剤を添加して溶菌試薬液を調製する。この溶菌試薬液は、オートクレイブにより高圧蒸気滅菌することが好ましい。この溶菌試薬液に、試料を添加し、まず、45℃で10分間インキュベーション(脂質分解工程)し、つづいて96℃で10分間インキュベーション(加熱工程)する。前者のインキュベーションにより、抗酸菌の細胞壁が脆弱化し、後者のインキュベーションにより抗酸菌が溶菌すると共に、リパーゼが失活する。前記両インキュベーションの方法は、ヒートブロック、ウォーターバス、サーマルサイクラー等により行うことができる。なお、この方法の他に、前記溶菌試薬液に試料を添加し、37〜50℃で10〜20分間インキュベーションすることにより、脂質分解工程と加熱工程を同時に行ってもよい。前記試料は、例えば、喀痰検体を、N−アセチル−L−システイン−NaOH法(NALC−NaOH法)等により、均質化および雑菌処理して調製してもよい。この試料を遠心分離して上清を除去し、残った沈殿物(ペレット)に前記溶菌試薬を添加する。このようにして溶菌した検体は、そのまま、若しくは前処理を施して遺伝子増幅若しくは検出処理を行うことができる。前記遺伝子増幅若しくは検出方法としては、例えば、PCR法、RT−PCR等のPCRの変法等がある。また、分析対象となる遺伝子としては、DNA、RNAがある。実施例つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、実施例1−1、1−2、1−3、1−4は、本発明の第1の溶菌方法の実施例であり、実施例2−1、2−2、2−3、2−4は、本発明の第2の溶菌方法の実施例である。(実施例1−1、比較例1)臨床分離結核菌株を、商品名マイコブロス(極東製薬社製)にてMcEarland#1の濁度になるまで37℃で培養し、この菌株をリン酸緩衝液(pH6.8)で希釈して10倍希釈系列(102倍希釈〜105倍希釈)を作成して被験菌液を調製した。前記各濃度の菌液を100μLづつスクリューキャップ付きチューブに分注し、遠心分離(10000g、15分間)してペレット化したものを溶菌反応に用いる試料とした。他方、TE緩衝液(10mMのEDTA、25mMのTris−HCl:pH8.0)に3重量%の濃度で商品名TritonX−100(ナカライ社製)を溶解して溶菌試薬液を調製し、これをオートクレイブで高圧蒸気滅菌したものを使用した。前記試料のそれぞれに、前記溶菌試薬50μLを添加し、ヒートブロックにて96℃で10分間加熱し、溶菌処理を行った。また、比較例1として、商品名アンプリコア検体前処理キット(日本ロシュ社製)を用い、前記試料を溶菌した。このようにして得られた実施例1−1および比較例1の各溶菌試料液37.5μLに、商品名アンプリコア増幅検出キット(日本ロシュ社製)のpre mixture 50μL及び12mM酢酸マグネシウム12.5μLを添加し、前記キットの操作説明書どおりコバスアンプリコアにてPCR法による増幅・検出を行った。前記増幅・検出の結果、実施例1−1および比較例1共に、107倍希釈までは陽性であり、それ以上の希釈倍率では陰性であった。この結果から、実施例1−1の溶菌処理は、従来の方法(比較例1)と同等の感度(溶菌効率)といえる。さらに、実施例1−1の溶菌方法は、従来の方法(比較例1)に比べ、処理時間が半分に短縮された。(実施例1−2、比較例2)臨床分離結核菌株を、商品名マイコブロス(極東製薬)にてMcEarland#1の濁度になるまで37℃で培養した。この培養菌株を、商品名スプタザイム(極東製薬社製)で均質化した非結核性喀痰で希釈して10倍希釈系列(100倍希釈〜1010倍希釈)を作成し、これらを試料とした。他方、TE緩衝液(10mMのEDTA、25mMのTris−HCl:pH8.0)に3重量%の濃度で商品名TritonX−100(ナカライ社製)を溶解して溶菌試薬液を調製し、これをオートクレイブで高圧蒸気滅菌したものを使用した。前記希釈試料のそれぞれ(100μL)に、前記溶菌試薬50μLを添加し、ヒートブロックにて96℃で10分間加熱し、溶菌処理を行った。また、比較例1として、商品名アンプリコア検体前処理キット(日本ロシュ社製)を用い、前記試料を溶菌した。このようにして得られた実施例1−2および比較例2の各溶菌試料液37.5μLに、商品名アンプリコア増幅検出キット(日本ロシュ社製)のpre mixture 50μL及び12mM酢酸マグネシウム12.5μLを添加し、前記キットの操作説明書どおりコバスアンプリコアにてPCR法による増幅・検出を行った。前記増幅・検出の結果、実施例1−2および比較例2共に、104倍希釈までは陽性であり、それ以上の希釈倍率では陰性であった。この結果から、夾雑物の影響下であっても、実施例2の溶菌処理は、従来の方法(比較例2)と同等の感度(溶菌効率)であるといえる。さらに、実施例1−2の溶菌方法は、従来の方法(比較例2)に比べ、処理時間が半分に短縮された。(実施例1−3、比較例3)患者より得られた喀痰検体90例を、NALC−NaOH法(日本結核病学会編纂「新結核菌検査指針2000」)にて、均質化および雑菌処理を行った。前記処理後の喀痰検体100μLを13,000gで10分間遠心し、上清除去後、沈殿物(ペレット)を回収した。他方、TE緩衝液(10mMのEDTA、25mMのTris−HCl:pH8.0)に1重量%の濃度で商品名TritonX−100(ナカライ社製)を溶解して溶菌試薬液を調製し、これをオートクレイブで高圧蒸気滅菌して使用した。すなわち、前記ペレットに、前記溶菌試薬液50μLを加えて懸濁させた。この懸濁液をヒートブロックにて96℃で10分間加熱し、溶菌処理を施した。他方、比較例3として、商品名アンプリコア検体前処理キット(日本ロシュ社製)を用い、前記試料(ペレット)を溶菌した。このようにして得られた実施例1−3および比較例3の各溶菌試料液12.5μLに、商品名アンプリコア増幅検出キット(日本ロシュ社製)のpre mixture 50μL及び12mM酢酸マグネシウム37.5μLを添加し、前記キットの操作説明書どおりコバスアンプリコアにてPCR法による増幅・検出を行った。また、前記試料(ペレット)について、常法により、培養検査を行った。これらの結果、喀痰検体90例中、従来の方法(比較例3)で処理した場合、結核陽性が41例、陰性は49例であり、本発明の第1の方法(実施例1−3)で処理した場合、結核陽性が41例、陰性は49例であり、両方法の結果は一致した。また、培養検査での結果は、42例が結核陽性、48例が陰性であり、実施例3および比較例3との一致率は略100%(97.8%)であった。このように、本発明の方法の溶菌効果は、従来の方法と同程度であり、実際の臨床検査においても有用であるといえる。また、実施例1−3の方法は、比較例3の方法より、溶菌処理時間が30分間も短縮された。(実施例2−1、実施例1−4)商品名リパーゼG「アマノ」50(天野製薬社製)および商品名リパーゼAY「アマノ」30G(天野製薬社製)を10mM HEPES Buffer(pH7.0)に溶解させてリパーゼ試薬液を調製した。また、溶菌試薬液は、TE buffer(10mM Tris,1mM EDTA,pH8.0)に、TritonX−100(ナカライ社製)を添加して調製し、オートクレーブ滅菌して使用した(以下、TE−Triton試薬という)。試料となる培養BCGは、抗酸菌増殖用液体培地(商品名:MycoBroth、極東製薬工業社製)にて、菌液がマックファーランド1相当の濁度になるまで培養し、これを必要に応じて希釈して調製した。前記BCG菌液を、リン酸緩衝液(pH6.8)を用いて段階希釈(10−4,10−3.5,10−3,10−2.5,10−2)して被験菌液を調製した。前記各濃度の菌液を100μLずつスクリューキャップ付きチューブに分注し、遠心(10,000g,15分間)してペレット化したものを溶菌反応に用いるサンプル(試料)とした。前記リパーゼ試薬液は、その濃度が、100,500,1000,2000,3000(units/mL)の5段階濃度となるように調製した。前記試料に前記各濃度のリパーゼ試薬液を50μL添加し、ボルテックス後、軽く遠心して37℃,30分間インキュベーションした。次に、TE−Tirotn試薬(Triton濃度2%)50μLを添加し、96℃,20分間で加熱して溶菌処理した。他方、リパーゼ処理を行わない以外は、同様の処理を行ったものを実施例1−4とした。細胞が溶解されたことを確認するため、上記の処理によって得られた溶菌液100μLのうち、2μLをtemplateとしてPCRを行った。PCRは94℃で1分間の変性後、94℃で30秒間,60℃で1分間,72℃で1分間の熱サイクルを30回行った。プライマーの配列、反応液の組成は次の通りである。前記の増幅反応による産物各8μLについて、3%アガロースゲル電気泳動を行った。その結果を図1に示す。なお、同図のレーン番号に流したサンプルは、以下のとおりである。(図1の説明)▲1▼TE−Triton試薬中での熱処理のみ。▲2▼リパーゼG「アマノ」50で処理後、TE−Triton試薬中で熱処理。リパーゼ濃度100units/mL▲3▼リパーゼG「アマノ」50で処理後、TE−Triton試薬中で熱処理。リパーゼ濃度500units/mL▲4▼リパーゼG「アマノ」50で処理後、TE−Triton試薬中で熱処理。リパーゼ濃度1,000units/mL▲5▼リパーゼAY「アマノ」30Gで処理後、TE−Triton試薬中で熱処理。リパーゼ濃度100units/mL▲6▼リパーゼAY「アマノ」30Gで処理後、TE−Triton試薬中で熱処理。リパーゼ濃度500units/mL▲7▼リパーゼAY「アマノ」30Gで処理後、TE−Triton試薬中で熱処理。リパーゼ濃度1,000units/mL※図中のM印は100bpラダー分子量マーカーである。※▲1▼〜▲7▼の領域は、全てレーン左から10−4,10−3.5,10−3,10−2.5,10−2の菌サンプル。図1からわかるように、TE−Triton試薬中での熱処理のみの場合(▲1▼、実施例1−4)であっても十分に溶菌できたが、リパーゼによる前処理を行った場合(▲2▼〜▲7▼、実施例2−1)の方が、さらに溶菌作用が向上した。(実施例2−2、実施例2−3)前記BCG菌液を、リン酸緩衝液(pH6.8)を用いて段階希釈(10−4,10−3.5,10−3,10−2.5)したものを被験菌液とした。各濃度の菌液を100μLずつスクリューキャップ付きチューブに分注し、遠心(10,000g,15分間)してペレット化したものを溶菌反応に用いるサンプル(試料)とした。他方、前記TE−Triton試薬にリパーゼAY「アマノ」30Gを500units/mLの濃度になるように添加したものを溶菌試薬液として用いた。前記試料に前記溶菌試薬100μLを添加し、ボルテックス後、軽く遠心した後、45℃でインキュベーションした。インキュベーションの時間は10分間,30分間の2通り行った。続いて、それぞれ96℃,10分間で加熱して溶菌処理を行った(実施例2−2)。また、リパーゼ処理と熱処理とを同時に行った(45℃、10分間)以外は、前述と同様の操作を行ったものを実施例2−3とした。細胞が溶解されたことを確認するため、上記の処理によって得られた溶菌液100μLのうち、2μLをtemplateとしてPCRを行った。PCRの条件は、実施例1と同様である。前記PCR増幅反応産物各8μLを3%アガロースゲル電気泳動法により確認した。その結果を図2に示す。なお、同図のレーン番号に流したサンプルは、以下のとおりである。(図2の説明)▲1▼リパーゼAY「アマノ」30GとTE−Triton試薬との混合試薬中でのリパーゼ処理と熱処理との同時処理(実施例2−3)。▲2▼リパーゼAY「アマノ」30GとTE−Triton試薬との混合試薬で処理。45℃,10分間→96℃,10分間▲3▼リパーゼAY「アマノ」30GとTE−Triton試薬との混合試薬で処理。45℃,30分間→96℃,10分間▲4▼リパーゼAY「アマノ」30Gで37℃,10min処理後、TE−Triton試薬を添加して96℃で10分間熱処理。▲5▼リパーゼAY「アマノ」30Gで37℃,10min処理後、TE−Triton試薬を添加して96℃で10分間熱処理。※図中のM印は100bpラダー分子量マーカーである。※▲1▼〜▲7▼の領域は、全てレーン左から10−4,10−3.5,10−3,10−2.5の菌サンプル。図2に示すように、脂質分解処理と加熱処理を同時に行っても(実施例2−3)、十分に溶菌した。また、脂質分解処理と加熱処理を分けて行うと(実施例2−2)、さらに溶菌効率が向上した。なお、脂質分解処理のインキュベーション時間の影響は認められず、非イオン性界面活性剤とリパーゼとを同一の緩衝液に溶解させても、問題がなかった。(実施例2−4)TE buffer(10mM Tris,1mM EDTA,pH8.0)およびTris Buffer(10mM Tris,pH8.0)に、それぞれTritonX−100(ナカライ社製)を1%の濃度になる様に添加し、オートクレーブ滅菌し、EDTA含有試薬およびEDTA無しの試薬を調製した。これらを、以下、それぞれTE−Triton試薬(EDTA含有)およびTris−Triton試薬(EDTA無し)という。試料となる培養BCGは、抗酸菌増殖用液体培地(商品名:MycoBroth、極東製薬工業社製)にて、菌液がマックファーランド1相当の濁度になるまで培養し、これを必要に応じて希釈して調製した。前記BCG菌液を、リン酸緩衝液(pH6.8)を用いて段階希釈(10−4.5,10−4,10−3.5,10−3,10−2.5)して被験菌液を調製した。前記各濃度の菌液を100μLずつスクリューキャップ付きチューブに分注し、遠心(10,000g,15分間)してペレット化したものを溶菌反応に用いるサンプル(試料)とした。前記TE−Triton試薬およびTris−Triton試薬に、それぞれリパーゼAY「アマノ」30Gを500units/mLの濃度になるように添加した。この溶液100μLを前記試料に添加し、ボルテックス後、軽く遠心した後、45℃でインキュベーションした。インキュベーションの時間は10分間および30分間の2通り行った。続いて、それぞれ96℃,10分間の熱処理を行った。細胞が溶解されたことを確認するため、上記の処理によって得られた溶菌液100μLのうち、2μLをtemplateとしてPCRを行った。PCRの条件は、実施例1と同様である。前記PCR増幅反応産物各8μLを3%アガロースゲル電気泳動法により確認した。その結果を図3に示す。なお、同図のレーン番号に流したサンプルは、以下のとおりである。(図3の説明)▲1▼〜▲3▼:リパーゼAY「アマノ」30GとTE−Triton試薬との混合試薬で処理(EDTAあり)。45℃,10分間→96℃,10分間▲4▼〜▲6▼:リパーゼAY「アマノ」30GとTris−Triton試薬との混合試薬で処理(EDTA無し)。45℃,10分間→96℃,10分間※図中のM印は100bpラダー分子量マーカーである。※▲1▼〜▲7▼の領域は、全てレーン左から10−4.5,10−4,10−3.5,10−3,10−2.5の菌サンプル。図3に示すように、EDTAを用いない場合(▲4▼〜▲6▼)であっても、十分に溶菌できた。また、EDTAを使用すれば(▲1▼〜▲3▼)、さらに溶菌効率を上げることができた。産業上の利用の可能性以上のように、本発明の溶菌方法は、特殊な装置や試薬を用いることなく、簡単かつ短時間に抗酸菌を確実に溶菌できる方法である。したがって、本発明の方法を、例えば、遺伝子の増幅・検出法による抗酸菌検査の試料の前処理に適用することにより、検査の効率化を簡単に実現できる。【配列表】【図面の簡単な説明】図1は、本発明の一実施例の溶菌効果を確認した結果を示す電気泳動の写真であり、図2は、本発明のその他の実施例の溶菌効果を確認した結果を示す電気泳動の写真であり、図3は、本発明のさらにその他の実施例の溶菌効果を確認した結果を示す電気泳動の写真である。 抗酸菌から遺伝子を抽出するための溶菌方法であって、非イオン界面活性剤を含む液体中において、前記抗酸菌を、前記液体の沸点未満の温度で加熱する方法。 前記加熱温度が、70℃以上100℃未満である請求項1記載の方法。 前記加熱時間が、1〜30分である請求項1または2記載の方法。 前記加熱条件が、96℃で10分間の条件である請求項1記載の方法。 前記液体のpHが、pH7.0〜12.0の範囲である請求項1から4のいずれかに記載の方法。 前記液体中の前記非イオン界面活性剤の濃度が、0.01〜10重量%である請求項1から5のいずれかに記載の方法。 非イオン界面活性剤が、d−ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステルおよびポリオキシエチレングリコールp−t−オクチルフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から6のいずれかに記載の方法。 さらに、前記液体が、金属キレート剤を含む請求項1から7のいずれかに記載の方法。 前記液体中の前記金属キレート剤の濃度が、0.1〜100mMである請求項8記載の方法。 前記金属キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N´,N´−四酢酸(EGTA)、ジアミノシクロヘキサン四酢酸、o−フェナンスロリンおよびサリチル酸からなる群から選択された少なくとも一つである請求項8または9記載の方法。 溶菌対象となる抗酸菌が、鳥型結核菌(M.avium)、エム・イントラセルラレエ(M.intracellularae)、エム・ゴルドネエ(M.gordonae)、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)、エム・カンサシイ(M.kansasii)、エム・フォルツイツム(M.fortuitum)、エム・ケロネエ(M.chelonae)、ウシ型結核菌(M.bovis)、エム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、パラ結核菌(M.paratuberculosis)、チモテ菌(M.phlei)、エム・マリヌム(M.marinum)、エム・シミエー(M.simiae)、エム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、エム・スズルガイ(M.szulgai)、らい菌(M.leprae)、エム・キセノピ(M.xenopi)、エム・ウルセランス(M.ulcerans)、鼠らい菌(M.lepraemurium)、エム・フラベセンス(M.flavescens)、エム・テレエ(M.terrae)、エム・ノンクロモジェニクム(M.nonchromogenicum)、エム・マルメンス(M.malmoense)、エム・アシアティクム(M.asiaticum)、エム・ヴァケエ(M.vaccae)、エム・ガストリ(M.gastri)、エム・トリビアル(M.triviale)、エム・ヘモフィラム(M.haemophilum)、エム・アフリカヌム(M.africanum)、エム・サーモレジスタブル(M.thermoresistable)およびスメグマ菌(M.smegmatis)からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から10のいずれかに記載の方法。 抗酸菌を含む生体試料が、痰、髄液、糞、唾液、血液、組織および尿からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から11のいずれかに記載の方法。 抗酸菌の遺伝子を特異的に増幅若しくは検出する方法であって、請求項1から12のいずれかの方法により抗酸菌を溶菌して遺伝子を抽出し、これを試料として遺伝子を特異的に増幅若しくは検出する方法。 抗酸菌から遺伝子を抽出するための溶菌方法であって、前記抗酸菌をリパーゼで処理する脂質分解工程と、非イオン界面活性剤の存在下で前記抗酸菌を加熱する加熱工程とを含む方法。 前記加熱工程が、前記リパーゼの失活工程を兼ねる請求項14記載の方法。 前記脂質分解工程および前記加熱工程が、緩衝液中で実施される請求項14または15記載の方法。 前記脂質分解工程および前記加熱工程が、閉鎖系の同一容器内で実施される請求項14から16のいずれかに記載の方法。 前記脂質分解工程を行った後、前記加熱工程を行う請求項14から17のいずれかに記載の方法。 脂質分解工程の条件が、pH4〜8、温度37〜60℃および処理時間5〜30分間の条件であり、前記加熱工程の条件が、温度37〜100℃で5〜30分間の条件である請求項18記載の方法。 前記脂質分解工程および前記加熱工程を同時に行う請求項14から19のいずれかに記載の方法。 前記脂質分解工程および前記加熱工程の条件が、pH4〜8、温度37〜60℃および処理時間5〜30分間の条件である請求項20記載の方法。 前記緩衝液中のリパーゼの濃度が、10〜10000units/mlである請求項16から21のいずれかに記載の方法。 非イオン界面活性剤が、d−ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステルおよびポリオキシエチレングリコールp−t−オクチルフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも一つである請求項14から22のいずれかに記載の方法。 前記緩衝液中の前記非イオン界面活性剤の濃度が、0.01〜10重量%である請求項16から23のいずれかに記載の方法。 前記加熱工程が、前記非イオン界面活性剤に加えて金属キレート剤の存在下で行われる請求項14から24のいずれかに記載の方法。 前記金属キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)および1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)からなる群から選択された少なくとも一つである請求項25記載の方法。 前記緩衝液中の前記金属キレート剤の濃度が、0.1〜2.0mMである請求項25または26に記載の方法。 溶菌対象となる抗酸菌が、鳥型結核菌(M.avium)、エム・イントラセルラレエ(M.intracellularae)、エム・ゴルドネエ(M.gordonae)、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)、エム・カンサシイ(M.kansasii)、エム・フォルツイツム(M.fortuitum)、エム・ケロネエ(M.chelonae)、ウシ型結核菌(M.bovis)、エム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、パラ結核菌(M.paratuberculosis)、チモテ菌(M.phlei)、エム・マリヌム(M.marinum)、エム・シミエー(M.simiae)、エム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、エム・スズルガイ(M.szulgai)、らい菌(M.leprae)、エム・キセノピ(M.xenopi)、エム・ウルセランス(M.ulcerans)、鼠らい菌(M.lepraemurium)、エム・フラベセンス(M.flavescens)、エム・テレエ(M..terrae)、エム・ノンクロモジェニクム(M.nonchromogenicum)、エム・マルメンス(M.malmoense)、エム・アシアティクム(M.asiaticum)、エム・ヴァケエ(M.vaccae)、エム・ガストリ(M.gastri)、エム・トリビアル(M.triviale)、エム・ヘモフィラム(M.haemophilum)、エム・アフリカヌム(M.africanum)、エム・サーモレジスタブル(M.thermoresistable)およびスメグマ菌(M.smegmatis)からなる群から選択される少なくとも一つである請求項14から27のいずれかに記載の方法。 抗酸菌を含む生体試料が、痰、髄液、糞、唾液、血液、組織、スワブ、胃洗浄液および尿からなる群から選択される少なくとも一つである請求項14から28のいずれかに記載の方法。 抗酸菌の遺伝子を特異的に増幅若しくは検出する方法であって、請求項14から29のいずれかの方法により抗酸菌を溶菌して遺伝子を抽出し、これを試料として遺伝子を特異的に増幅若しくは検出する方法。 本発明は、抗酸菌を、非イオン界面活性剤を含む液体中において、前記液体の沸点未満の温度で加熱することにより、前記抗酸菌を溶菌する方法である。本発明の方法によれば、特殊な装置や試薬を用いることなく、簡単かつ短時間に抗酸菌を確実に溶菌でき、遺伝子を抽出できる。前記過熱条件は、96℃で10分間が好ましい。また、非イオン界面活性剤としては、d−ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステルおよびポリオキシエチレングリコールp−t−オクチルフェニルエーテル等が使用できる。前記液体は、pH8が好ましく、EDTAを含むことも好ましい。また、加熱処理の前に、抗酸菌をリパーゼで処理することが好ましい。 20040702 A16333 全文 3 抗酸菌から遺伝子を抽出するための溶菌方法であって、非イオン界面活性剤を含む液体中において、前記抗酸菌を、前記液体の沸点未満の温度で加熱する方法。 前記加熱温度が、70℃以上100℃未満である請求項1記載の方法。 前記加熱時間が、1〜30分である請求項1または2記載の方法。 前記加熱条件が、96℃で10分間の条件である請求項1記載の方法。 前記液体のpHが、pH7.0〜12.0の範囲である請求項1から4のいずれかに記載の方法。 前記液体中の前記非イオン界面活性剤の濃度が、0.01〜10重量%である請求項1から5のいずれかに記載の方法。 非イオン界面活性剤が、d−ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステルおよびポリオキシエチレングリコールp−t−オクチルフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から6のいずれかに記載の方法。 さらに、前記液体が、金属キレート剤を含む請求項1から7のいずれかに記載の方法。 前記液体中の前記金属キレート剤の濃度が、0.1〜100mMである請求項8記載の方法。 前記金属キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、ジアミノシクロヘキサン四酢酸、o−フェナンスロリンおよびサリチル酸からなる群から選択された少なくとも一つである請求項8または9記載の方法。 溶菌対象となる抗酸菌が、鳥型結核菌(M.avium)、エム・イントラセルラレエ(M.intracellularae)、エム・ゴルドネエ(M.gordonae)、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)、エム・カンサシイ(M.kansasii)、エム・フォルツイツム(M.fortuitum)、エム・ケロネエ(M.chelonae)、ウシ型結核菌(M.bovis)、エム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、パラ結核菌(M.paratuberculosis)、チモテ菌(M.phlei)、エム・マリヌム(M.marinum)、エム・シミエー(M.simiae)、エム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、エム・スズルガイ(M.szulgai)、らい菌(M.leprae)、エム・キセノピ(M.xenopi)、エム・ウルセランス(M.ulcerans)、鼠らい菌(M.lepraemurium)、エム・フラベセンス(M.flavescens)、エム・テレエ(M.terrae)、エム・ノンクロモジェニクム(M.nonchromogenicum)、エム・マルメンス(M.malmoense)、エム・アシアティクム(M.asiaticum)、エム・ヴァケエ(M.vaccae)、エム・ガストリ(M.gastri)、エム・トリビアル(M.triviale)、エム・ヘモフィラム(M.haemophilum)、エム・アフリカヌム(M.africanum)、エム・サーモレジスタブル(M.thermoresistable)およびスメグマ菌(M.smegmatis)からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から10のいずれかに記載の方法。 抗酸菌を含む生体試料が、痰、髄液、糞、唾液、血液、組織および尿からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から11のいずれかに記載の方法。 抗酸菌の遺伝子を特異的に増幅若しくは検出する方法であって、請求項1から12のいずれかの方法により抗酸菌を溶菌して遺伝子を抽出し、これを試料として遺伝子を特異的に増幅若しくは検出する方法。 抗酸菌から遺伝子を抽出するための溶菌方法であって、前記抗酸菌をリパーゼで処理する脂質分解工程と、非イオン界面活性剤の存在下で前記抗酸菌を加熱する加熱工程とを含む方法。 前記加熱工程が、前記リパーゼの失活工程を兼ねる請求項14記載の方法。 前記脂質分解工程および前記加熱工程が、緩衝液中で実施される請求項14または15記載の方法。 前記脂質分解工程および前記加熱工程が、閉鎖系の同一容器内で実施される請求項14から16のいずれかに記載の方法。 前記脂質分解工程を行った後、前記加熱工程を行う請求項14から17のいずれかに記載の方法。 脂質分解工程の条件が、pH4〜8、温度37〜60℃および処理時間5〜30分間の条件であり、前記加熱工程の条件が、温度37〜100℃で5〜30分間の条件である請求項18記載の方法。 前記脂質分解工程および前記加熱工程を同時に行う請求項14から19のいずれかに記載の方法。 前記脂質分解工程および前記加熱工程の条件が、pH4〜8、温度37〜60℃および処理時間5〜30分間の条件である請求項20記載の方法。 前記緩衝液中のリパーゼの濃度が、10〜10000units/mlである請求項16から21のいずれかに記載の方法。 非イオン界面活性剤が、d−ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステルおよびポリオキシエチレングリコールp−t−オクチルフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも一つである請求項14から22のいずれかに記載の方法。 前記緩衝液中の前記非イオン界面活性剤の濃度が、0.01〜10重量%である請求項16から23のいずれかに記載の方法。 前記加熱工程が、前記非イオン界面活性剤に加えて金属キレート剤の存在下で行われる請求項14から24のいずれかに記載の方法。 前記金属キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)および1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)からなる群から選択された少なくとも一つである請求項25記載の方法。 前記緩衝液中の前記金属キレート剤の濃度が、0.1〜2.0mMである請求項25または26に記載の方法。 溶菌対象となる抗酸菌が、鳥型結核菌(M.avium)、エム・イントラセルラレエ(M.intracellularae)、エム・ゴルドネエ(M.gordonae)、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)、エム・カンサシイ(M.kansasii)、エム・フォルツイツム(M.fortuitum)、エム・ケロネエ(M.chelonae)、ウシ型結核菌(M.bovis)、エム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、パラ結核菌(M.paratuberculosis)、チモテ菌(M.phlei)、エム・マリヌム(M.marinum)、エム・シミエー(M.simiae)、エム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、エム・スズルガイ(M.szulgai)、らい菌(M.leprae)、エム・キセノピ(M.xenopi)、エム・ウルセランス(M.ulcerans)、鼠らい菌(M.lepraemurium)、エム・フラベセンス(M.flavescens)、エム・テレエ(M.terrae)、エム・ノンクロモジェニクム(M.nonchromogenicum)、エム・マルメンス(M.malmoense)、エム・アシアティクム(M.asiaticum)、エム・ヴァケエ(M.vaccae)、エム・ガストリ(M.gastri)、エム・トリビアル(M.triviale)、エム・ヘモフィラム(M.haemophilum)、エム・アフリカヌム(M.africanum)、エム・サーモレジスタブル(M.thermoresistable)およびスメグマ菌(M.smegmatis)からなる群から選択される少なくとも一つである請求項14から27のいずれかに記載の方法。 抗酸菌を含む生体試料が、痰、髄液、糞、唾液、血液、組織、スワブ、胃洗浄液および尿からなる群から選択される少なくとも一つである請求項14から28のいずれかに記載の方法。 抗酸菌の遺伝子を特異的に増幅若しくは検出する方法であって、請求項14から29のいずれかの方法により抗酸菌を溶菌して遺伝子を抽出し、これを試料として遺伝子を特異的に増幅若しくは検出する方法。 A16330 全文 3 【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】 本発明は、抗酸菌の溶菌方法およびそれを用いた遺伝子増幅若しくは検出方法に関する。【背景技術】【0002】 結核は、今なお、世界的に重要な細菌性疾患であり、その治療方法のみならず診断方法は極めて重要である。結核の最終的確認は、培養法により行われるが、結核菌の増殖速度は極めて遅いため、培養法の前段階で実施される予備的診断方法の確立が望まれている。このような予備的診断方法として、注目されているのは、ポリメラーゼ チェーン リアクション(PCR)法を適用した方法である。この方法は、結核菌の遺伝子に特異的なプライマーを用い、結核菌の遺伝子を増幅して検出することにより、結核菌の有無を判定する方法である。【0003】 前記PCR法を適用した予備的診断方法では、その前処理として結核菌を溶菌して遺伝子を抽出する必要がある。従来の溶菌方法としては、例えば、有機溶媒等を用いた化学的方法、超音波や凍結・融解を繰り返す物理的方法等がある。しかし、結核菌は、その細胞壁の脂質含量が高く、従来の溶菌法では、遺伝子の抽出を十分に行うことができなかった。また、十分な抽出を行うためには、処理条件を過酷なものにする必要があり、それに伴い、特殊な装置や試薬を使用する必要があり、これに加え、処理時間の長期化や操作の煩雑化等の問題があった。このような溶菌の問題は、結核菌を含む抗酸菌全体の問題でもある。【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0004】 本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、特殊な装置や試薬を用いることなく、簡単かつ短時間に抗酸菌を溶菌できる方法の提供を、その目的とする。【課題を解決するための手段】【0005】 前記目的を達成するために、本発明の第1の溶菌方法は、抗酸菌から遺伝子を抽出するための溶菌方法であって、非イオン界面活性剤を含む液体中において、前記抗酸菌を、前記液体の沸点未満の温度で加熱するという方法である。【0006】 また、前記目的を達成するために、本発明の第2の溶菌方法は、抗酸菌から遺伝子を抽出するための溶菌方法であって、前記抗酸菌をリパーゼで処理する脂質分解工程と、非イオン界面活性剤の存在下で前記抗酸菌を加熱する加熱工程とを含む方法である。【0007】 本発明の第1の方法によれば、非イオン界面活性剤溶液中で、抗酸菌を、例えば、96℃で10分間加熱するだけで、十分に遺伝子を抽出することができ、その後の遺伝子増幅若しくは検出方法を簡単に実施できる。また、加熱温度が、前記液体の沸点未満であるため、突沸して試料が飛び散ることが無く、また温度コントロールが容易になって、特別の加熱器を必要としない等の利点がある。【0008】 また、本発明の第2の溶菌方法は、抗酸菌の細胞壁が脂質を高濃度で含んでいることに着目し、これに基づき到達したものである。すなわち、本発明の第2の溶菌方法では、脂質分解工程によって抗酸菌の細胞壁を脆弱化し、加熱工程によって溶菌するのである。【0009】 本発明の第1および第2の溶菌方法は、カオトロピック試薬等の特別の試薬および超音波装置等のような特別の装置を用いることなく、簡単かつ短時間に溶菌処理を行うことができ、しかも化学的手法であるから試料の飛散の恐れも少なく、安全な方法である。また、本発明の第1および第2の溶菌方法は、遺伝子の精製を行うことなく、そのまま遺伝子増幅若しくは検出処理に移行できる。なお、本発明の第1および第2の溶菌方法は、遺伝子の増幅・検出方法だけでなく、例えば、遺伝子操作等のその他の分野にも適用できる。【0010】 (図面の簡単な説明) 図1は、本発明の一実施例の溶菌効果を確認した結果を示す電気泳動の写真であり、図2は、本発明のその他の実施例の溶菌効果を確認した結果を示す電気泳動の写真であり、図3は、本発明のさらにその他の実施例の溶菌効果を確認した結果を示す電気泳動の写真である。【発明を実施するための最良の形態】【0011】 以下に、本発明の第1の溶菌方法および第2の溶菌方法をさらに詳しく説明する。【0012】 まず、本発明の第1の溶菌方法について説明する。【0013】 本発明の第1の方法において、前記加熱温度は、70℃以上100℃未満が好ましく、より好ましくは80℃以上100℃未満であり、最適には96℃である。また、加熱時間は、例えば、1〜30分であり、好ましくは10分間である。前記液体のpHは、例えば、pH7.0〜12.0の範囲であり、好ましくはpH8.0である。前記液体中の前記非イオン界面活性剤の濃度は、例えば、0.01〜10重量%であり、好ましくは0.5〜2.0重量%であり、より好ましくは1.0重量%である。【0014】 前記非イオン界面活性剤としては、例えば、Span20、Span40、Span60、Span65、Span80、Span85等(以上、ナカライテスク社製等)のd−ソルビトールの脂肪酸エステル、Tween20、Tween21、Tween40、Tween60、Tween65、Tween80、Tween81、Tween85等(以上、ナカライテスク社製等)のポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、TritonX−100等(以上、ナカライテスク社製等)のポリオキシエチレングリコールp−t−オクチルフェニルエーテル等がある。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。このなかで、TritonX−100、Tween20、Tween21が好ましく、より好ましいのはTritonX−100である。【0015】 本発明の第1の方法において、さらに、前記液体が、金属キレート剤を含むことが好ましい。試料中には、DNase等の遺伝子分解酵素が含まれており、金属キレート剤は、これによる遺伝子の分解を防止する作用等を発揮する。前記液体中の前記金属キレート剤の濃度は、例えば、0.1〜100mMであり、好ましくは1.0mMである。前記金属キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、ジアミノシクロヘキサン四酢酸、o−フェナンスロリン、サリチル酸等がある。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。このなかで、好ましいのは、EDTA、EGTAであり、より好ましいのは、EDTAである。【0016】 本発明の第1の溶菌方法の対象となる抗酸菌としては、例えば、鳥型結核菌(M.avium)、エム・イントラセルラレエ(M.intracellularae)、エム・ゴルドネエ(M.gordonae)、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)、エム・カンサシイ(M.kansasii)、エム・フォルツイツム(M.fortuitum)、エム・ケロネエ(M.chelonae)、ウシ型結核菌(M.bovis)、エム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、パラ結核菌(M.paratuberculosis)、チモテ菌(M.phlei)、エム・マリヌム(M.marinum)、エム・シミエー(M.simiae)、エム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、エム・スズルガイ(M.szulgai)、らい菌(M.leprae)、エム・キセノピ(M.xenopi)、エム・ウルセランス(M.ulcerans)、鼠らい菌(M.lepraemurium)、エム・フラベセンス(M.flavescens)、エム・テレエ(M.terrae)、エム・ノンクロモジェニクム(M.nonchromogenicum)、エム・マルメンス(M.malmoense)、エム・アシアティクム(M.asiaticum)、エム・ヴァケエ(M.vaccae)、エム・ガストリ(M.gastri)、エム・トリビアル(M.triviale)、エム・ヘモフィラム(M.haemophilum)、エム・アフリカヌム(M.africanum)、エム・サーモレジスタブル(M.thermoresistable)およびスメグマ菌(M.smegmatis)等がある。【0017】 本発明の第1の方法において、抗酸菌を含む生体試料としては、例えば、痰、髄液、糞、唾液、血液、組織、尿等がある。【0018】 つぎに、本発明の第1の方法は、例えば、以下のようにして実施できる。すなわち、まず、前記所定pHの緩衝液に、必要に応じてEDTA等の金属キレート剤を添加し、さらに非イオン界面活性剤を添加して溶菌試薬液を調製する。前記緩衝液としては、Tris−HClバッファー、HEPESバッファー、MOPSバッファー、HEPPSバッファー、TAPSバッファー、リン酸バッファー等がある。この溶菌試薬液は、オートクレイブにより高圧蒸気滅菌することが好ましい。他方、試料液を調製する。例えば、喀痰検体を、N−アセチル−L−システイン−NaOH法(NALC−NaOH法)等により、均質化および雑菌処理して、これを試料液とする。これを遠心分離して上清を除去し、残った沈殿物(ペレット)に前記溶菌試薬を添加する。そして、ヒートブロック等を用い、前記所定の温度で加熱することにより、溶菌処理を行う。なお、加熱方法としては、前記ヒートブロックの他に、例えば、ウォーターバス、マイクロウェーブオーブン、エアーバス等がある。【0019】 このようにして溶菌した検体は、そのまま、若しくは前処理を施して遺伝子増幅若しくは検出処理を行うことができる。前記遺伝子増幅若しくは検出方法としては、例えば、PCR法、RT−PCR等のPCRの変法等がある。また、分析対象となる遺伝子としては、DNA、RNAがある。【0020】 つぎに、本発明の第2の溶菌方法について説明する。【0021】 本発明の第2の溶菌方法において、前記加熱工程が、前記リパーゼの失活工程を兼ねることが好ましい。このようにすれば、特別の工程を設けることなくリパーゼを失活でき、溶菌処理につづく遺伝子の増幅若しくは検出処理等に影響を与えるおそれがない。【0022】 本発明の第2の溶菌方法において、前記脂質分解工程および前記加熱工程が、緩衝液中で実施されることが好ましく、より好ましくは同一の緩衝液中で実施されることである。緩衝液は、特に制限されず、例えば、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、マッキルバイン緩衝液等があげられ、このなかで、Tris緩衝液、HEPES緩衝液が好ましい。【0023】 本発明の第2の溶菌方法において、前記脂質分解工程および前記加熱工程が、閉鎖系の同一容器内で実施されることが好ましい。閉鎖系であれば、試料の飛散が防止でき、同一容器内であれば、処理効率が良くなる。【0024】 本発明の第2の溶菌方法において、前記脂質分解工程を行った後、前記加熱工程を行ってもよく、前記両工程を同時に行ってもよい。前者の場合、例えば、前記脂質分解工程の条件は、pH4〜8、温度37〜60℃および処理時間5〜30分間の条件であり、前記加熱工程の条件は、温度37〜100℃で5〜30分間の条件であり、好ましくは、前記脂質分解工程の条件は、pH6〜8、温度37〜50℃および処理時間5〜20分間の条件であり、前記加熱工程の条件は、温度80〜100℃で5〜20分間の条件であり、より好ましくは、前記脂質分解工程の条件は、pH6.5〜7.5、温度37〜50℃および処理時間10分間の条件であり、前記加熱工程の条件は、温度90〜98℃で10分間の条件である。後者の場合、前記脂質分解工程および前記加熱工程の条件は、例えば、pH4〜8、温度37〜60℃および処理時間10〜30分間の条件であり、好ましくは、pH6〜8、温度37〜50℃および処理時間10〜20分間の条件であり、より好ましくは、pH6.5〜7.5、温度45〜50℃および処理時間10〜20分間の条件である。【0025】 前記緩衝液中のリパーゼの濃度は、例えば、10〜10000units/mlであり、好ましくは、100〜2000units/ml、より好ましくは、200〜1000units/mlである。使用するリパーゼは、特に制限されないが、例えば、商品名リパーゼR「アマノ」G、商品名リパーゼM「アマノ」10、商品名リパーゼG「アマノ」50、商品名リパーゼAY「アマノ」30G、商品名リパーゼA「アマノ」6等(以上、全て天野製薬(株)製)があり、これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。このなかで、好ましいのは、商品名リパーゼG「アマノ」50、商品名リパーゼAY「アマノ」30Gであり、より好ましいのは、商品名リパーゼAY「アマノ」30Gである。【0026】 前記緩衝中の前記非イオン界面活性剤の濃度は、例えば、0.01〜10重量%であり、好ましくは0.1〜2.0重量%であり、より好ましくは0.5〜1.0重量%である。【0027】 前記非イオン界面活性剤としては、例えば、Span20、Span40、Span60、Span65、Span80、Span85等(以上、ナカライテスク社製等)のd−ソルビトールの脂肪酸エステル、Tween20、Tween21、Tween40、Tween60、Tween65、Tween80、Tween81、Tween85等(以上、ナカライテスク社製等)のポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、TritonX−100等(ナカライテスク社製等)のポリオキシエチレングリコールp−t−オクチルフェニルエーテル等がある。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。このなかで、Tween20、TritonX−100が好ましく、より好ましいのは、TritonX−100である。【0028】 前記加熱工程において、非イオン界面活性剤に加え、さらに、金属キレート剤の存在下で、加熱処理を行うことが好ましい。試料中には、DNase等の遺伝子分解酵素が含まれており、金属キレート剤は、これによる遺伝子の分解を防止する作用等を発揮する。前記液体中の前記金属キレート剤の濃度は、例えば、0.1〜2.0mMであり、好ましくは0.5〜1.0mMである。前記金属キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)および1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)等がある。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。このなかで、好ましいのは、EDTA、EGTAであり、より好ましいのは、EDTAである。【0029】 本発明の第2の溶菌方法の対象となる抗酸菌としては、前記第1の溶菌方法と同様である。また、本発明の第2の溶菌方法において、抗酸菌を含む生体試料は、前記第1の溶菌方法と同様である。【0030】 つぎに、本発明の第2の溶菌方法は、例えば、以下のようにして実施できる。すなわち、まず、前記所定pHの緩衝液に、リパーゼ、非イオン界面活性剤、必要に応じてEDTA等の金属キレート剤を添加して溶菌試薬液を調製する。この溶菌試薬液は、オートクレイブにより高圧蒸気滅菌することが好ましい。この溶菌試薬液に、試料を添加し、まず、45℃で10分間インキュベーション(脂質分解工程)し、つづいて96℃で10分間インキュベーション(加熱工程)する。前者のインキュベーションにより、抗酸菌の細胞壁が脆弱化し、後者のインキュベーションにより抗酸菌が溶菌すると共に、リパーゼが失活する。前記両インキュベーションの方法は、ヒートブロック、ウォーターバス、サーマルサイクラー等により行うことができる。なお、この方法の他に、前記溶菌試薬液に試料を添加し、37〜50℃で10〜20分間インキュベーションすることにより、脂質分解工程と加熱工程を同時に行ってもよい。【0031】 前記試料は、例えば、喀痰検体を、N−アセチル−L−システイン−NaOH法(NALC−NaOH法)等により、均質化および雑菌処理して調製してもよい。この試料を遠心分離して上清を除去し、残った沈殿物(ペレット)に前記溶菌試薬を添加する。【0032】 このようにして溶菌した検体は、そのまま、若しくは前処理を施して遺伝子増幅若しくは検出処理を行うことができる。前記遺伝子増幅若しくは検出方法としては、例えば、PCR法、RT−PCR等のPCRの変法等がある。また、分析対象となる遺伝子としては、DNA、RNAがある。【実施例1】【0033】 つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、実施例1−1、1−2、1−3、1−4は、本発明の第1の溶菌方法の実施例であり、実施例2−1、2−2、2−3、2−4は、本発明の第2の溶菌方法の実施例である。【0034】 (実施例1−1、比較例1) 臨床分離結核菌株を、商品名マイコブロス(極東製薬社製)にてMcEarland#1の濁度になるまで37℃で培養し、この菌株をリン酸緩衝液(pH6.8)で希釈して10倍希釈系列(102倍希釈〜105倍希釈)を作成して被験菌液を調製した。前記各濃度の菌液を100μLづつスクリューキャップ付きチューブに分注し、遠心分離(10000g、15分間)してペレット化したものを溶菌反応に用いる試料とした。他方、TE緩衝液(10mMのEDTA、25mMのTris-HCl:pH8.0)に3重量%の濃度で商品名TritonX-100(ナカライ社製)を溶解して溶菌試薬液を調製し、これをオートクレイブで高圧蒸気滅菌したものを使用した。【0035】 前記試料のそれぞれに、前記溶菌試薬50μLを添加し、ヒートブロックにて96℃で10分間加熱し、溶菌処理を行った。また、比較例1として、商品名アンプリコア検体前処理キット(日本ロシュ社製)を用い、前記試料を溶菌した。【0036】 このようにして得られた実施例1−1および比較例1の各溶菌試料液37.5μLに、商品名アンプリコア増幅検出キット(日本ロシュ社製)のpre mixture 50μL及び12mM酢酸マグネシウム12.5μLを添加し、前記キットの操作説明書どおりコバスアンプリコアにてPCR法による増幅・検出を行った。【0037】 前記増幅・検出の結果、実施例1−1および比較例1共に、107倍希釈までは陽性であり、それ以上の希釈倍率では陰性であった。この結果から、実施例1−1の溶菌処理は、従来の方法(比較例1)と同等の感度(溶菌効率)といえる。さらに、実施例1−1の溶菌方法は、従来の方法(比較例1)に比べ、処理時間が半分に短縮された。【0038】 (実施例1−2、比較例2) 臨床分離結核菌株を、商品名マイコブロス(極東製薬)にてMcEarland#1の濁度になるまで37℃で培養した。この培養菌株を、商品名スプタザイム(極東製薬社製)で均質化した非結核性喀痰で希釈して10倍希釈系列(100倍希釈〜1010倍希釈)を作成し、これらを試料とした。他方、TE緩衝液(10mMのEDTA、25mMのTris-HCl:pH8.0)に3重量%の濃度で商品名TritonX-100(ナカライ社製)を溶解して溶菌試薬液を調製し、これをオートクレイブで高圧蒸気滅菌したものを使用した。【0039】 前記希釈試料のそれぞれ(100μL)に、前記溶菌試薬50μLを添加し、ヒートブロックにて96℃で10分間加熱し、溶菌処理を行った。また、比較例1として、商品名アンプリコア検体前処理キット(日本ロシュ社製)を用い、前記試料を溶菌した。【0040】 このようにして得られた実施例1−2および比較例2の各溶菌試料液37.5μLに、商品名アンプリコア増幅検出キット(日本ロシュ社製)のpre mixture 50μL及び12mM酢酸マグネシウム12.5μLを添加し、前記キットの操作説明書どおりコバスアンプリコアにてPCR法による増幅・検出を行った。【0041】 前記増幅・検出の結果、実施例1−2および比較例2共に、104倍希釈までは陽性であり、それ以上の希釈倍率では陰性であった。この結果から、夾雑物の影響下であっても、実施例2の溶菌処理は、従来の方法(比較例2)と同等の感度(溶菌効率)であるといえる。さらに、実施例1−2の溶菌方法は、従来の方法(比較例2)に比べ、処理時間が半分に短縮された。【0042】 (実施例1−3、比較例3) 患者より得られた喀痰検体90例を、NALC−NaOH法(日本結核病学会編纂「新結核菌検査指針2000」)にて、均質化および雑菌処理を行った。前記処理後の喀痰検体100μLを13,000gで10分間遠心し、上清除去後、沈殿物(ペレット)を回収した。他方、TE緩衝液(10mMのEDTA、25mMのTris-HCl:pH8.0)に1重量%の濃度で商品名TritonX-100(ナカライ社製)を溶解して溶菌試薬液を調製し、これをオートクレイブで高圧蒸気滅菌して使用した。すなわち、前記ペレットに、前記溶菌試薬液50μLを加えて懸濁させた。この懸濁液をヒートブロックにて96℃で10分間加熱し、溶菌処理を施した。他方、比較例3として、商品名アンプリコア検体前処理キット(日本ロシュ社製)を用い、前記試料(ペレット)を溶菌した。【0043】 このようにして得られた実施例1−3および比較例3の各溶菌試料液12.5μLに、商品名アンプリコア増幅検出キット(日本ロシュ社製)のpre mixture 50μL及び12mM酢酸マグネシウム37.5μLを添加し、前記キットの操作説明書どおりコバスアンプリコアにてPCR法による増幅・検出を行った。また、前記試料(ペレット)について、常法により、培養検査を行った。【0044】 これらの結果、喀痰検体90例中、従来の方法(比較例3)で処理した場合、結核陽性が41例、陰性は49例であり、本発明の第1の方法(実施例1−3)で処理した場合、結核陽性が41例、陰性は49例であり、両方法の結果は一致した。また、培養検査での結果は、42例が結核陽性、48例が陰性であり、実施例3および比較例3との一致率は略100%(97.8%)であった。このように、本発明の方法の溶菌効果は、従来の方法と同程度であり、実際の臨床検査においても有用であるといえる。また、実施例1−3の方法は、比較例3の方法より、溶菌処理時間が30分間も短縮された。【実施例2】【0045】 (実施例2−1、実施例1−4) 商品名リパーゼG「アマノ」50(天野製薬社製)および商品名リパーゼAY「アマノ」30G(天野製薬社製)を10mM HEPES Buffer(pH7.0)に溶解させてリパーゼ試薬液を調製した。また、溶菌試薬液は、TE buffer(10mM Tris、1mM EDTA、pH8.0)に、TritonX-100(ナカライ社製)を添加して調製し、オートクレーブ滅菌して使用した(以下、TE-Triton試薬という)。試料となる培養BCGは、抗酸菌増殖用液体培地(商品名:MycoBroth、極東製薬工業社製)にて、菌液がマックファーランド1相当の濁度になるまで培養し、これを必要に応じて希釈して調製した。【0046】 前記BCG菌液を、リン酸緩衝液(pH6.8)を用いて段階希釈(10-4、10-3.5、10-3、10-2.5、10-2)して被験菌液を調製した。前記各濃度の菌液を100μLずつスクリューキャップ付きチューブに分注し、遠心(10,000g、15分間)してペレット化したものを溶菌反応に用いるサンプル(試料)とした。前記リパーゼ試薬液は、その濃度が、100、500、1000、2000、3000(units/mL)の5段階濃度となるように調製した。前記試料に前記各濃度のリパーゼ試薬液を50μL添加し、ボルテックス後、軽く遠心して37℃、30分間インキュベーションした。次に、TE-Tirotn試薬(Triton濃度2%)50μLを添加し、96℃、20分間で加熱して溶菌処理した。他方、リパーゼ処理を行わない以外は、同様の処理を行ったものを実施例1−4とした。【0047】 細胞が溶解されたことを確認するため、上記の処理によって得られた溶菌液100μLのうち、2μLをtemplateとしてPCRを行った。PCRは94℃で1分間の変性後、94℃で30秒間、60℃で1分間、72℃で1分間の熱サイクルを30回行った。プライマーの配列、反応液の組成は次の通りである。【0048】 (PCR反応組成) 10 x Ex-Taq Buffer 2.5μL 2.5mM dNTP Mixture 2.0μL 100μM プライマー1 0.125μL(配列番号1) 100μM プライマー2 0.125μL(配列番号2) Ex-Taq(5u/μL) 0.125μL D.W. 18.125μL 各溶菌後サンプル 2.0μL 合計 25.0μL【0049】 前記の増幅反応による産物各8μLについて、3%アガロースゲル電気泳動を行った。その結果を図1に示す。なお、同図のレーン番号に流したサンプルは、以下のとおりである。【0050】 (図1の説明)(1)TE-Triton試薬中での熱処理のみ。(2)リパーゼG「アマノ」50で処理後、TE−Triton試薬中で熱処理。リパーゼ濃度100units/mL(3)リパーゼG「アマノ」50で処理後、TE−Triton試薬中で熱処理。リパーゼ濃度500units/mL(4)リパーゼG「アマノ」50で処理後、TE−Triton試薬中で熱処理。リパーゼ濃度1,000units/mL(5)リパーゼAY「アマノ」30Gで処理後、TE−Triton試薬中で熱処理。リパーゼ濃度100units/mL(6)リパーゼAY「アマノ」30Gで処理後、TE−Triton試薬中で熱処理。リパーゼ濃度500units/mL(7)リパーゼAY「アマノ」30Gで処理後、TE−Triton試薬中で熱処理。リパーゼ濃度1,000units/mL※図中のM印は100bpラダー分子量マーカーである。※(1)〜(7)の領域は、全てレーン左から10-4、10-3.5、10-3、10-2.5、10-2の菌サンプル。【0051】 図1からわかるように、TE-Triton試薬中での熱処理のみの場合((1)、実施例1−4)であっても十分に溶菌できたが、リパーゼによる前処理を行った場合((2)〜(7)、実施例2−1)の方が、さらに溶菌作用が向上した。【0052】 (実施例2−2、実施例2−3) 前記BCG菌液を、リン酸緩衝液(pH6.8)を用いて段階希釈(10-4、10-3.5、10-3、10-2.5)したものを被験菌液とした。各濃度の菌液を100μLずつスクリューキャップ付きチューブに分注し、遠心(10,000g、15分間)してペレット化したものを溶菌反応に用いるサンプル(試料)とした。他方、前記TE-Triton試薬にリパーゼAY「アマノ」30Gを500units/mLの濃度になるように添加したものを溶菌試薬液として用いた。前記試料に前記溶菌試薬100μLを添加し、ボルテックス後、軽く遠心した後、45℃でインキュベーションした。インキュベーションの時間は10分間、30分間の2通り行った。続いて、それぞれ96℃、10分間で加熱して溶菌処理を行った(実施例2−2)。また、リパーゼ処理と熱処理とを同時に行った(45℃、10分間)以外は、前述と同様の操作を行ったものを実施例2−3とした。【0053】 細胞が溶解されたことを確認するため、上記の処理によって得られた溶菌液100μLのうち、2μLをtemplateとしてPCRを行った。PCRの条件は、実施例1と同様である。前記PCR増幅反応産物各8μLを3%アガロースゲル電気泳動法により確認した。その結果を図2に示す。なお、同図のレーン番号に流したサンプルは、以下のとおりである。【0054】 (図2の説明) (1)リパーゼAY「アマノ」30GとTE−Triton試薬との混合試薬中でのリパーゼ処理と熱処理との同時処理(実施例2−3)。 (2)リパーゼAY「アマノ」30GとTE−Triton試薬との混合試薬で処理。45℃、10分間→96℃、10分間 (3)リパーゼAY「アマノ」30GとTE−Triton試薬との混合試薬で処理。45℃、30分間→96℃、10分間 (4)リパーゼAY「アマノ」30Gで37℃、10min処理後、TE−Triton試薬を添加して96℃で10分間熱処理。 (5)リパーゼAY「アマノ」30Gで37℃、10min処理後、TE−Triton試薬を添加して96℃で10分間熱処理。※図中のM印は100bpラダー分子量マーカーである。※(1)〜(7)の領域は、全てレーン左から10-4、10-3.5、10-3、10-2.5の菌サンプル。【0055】 図2に示すように、脂質分解処理と加熱処理を同時に行っても(実施例2−3)、十分に溶菌した。また、脂質分解処理と加熱処理を分けて行うと(実施例2−2)、さらに溶菌効率が向上した。なお、脂質分解処理のインキュベーション時間の影響は認められず、非イオン性界面活性剤とリパーゼとを同一の緩衝液に溶解させても、問題がなかった。【0056】 (実施例2−4) TE buffer(10mM Tris、1mM EDTA、pH8.0)およびTris Buffer(10mM Tris、pH8.0)に、それぞれTritonX-100(ナカライ社製)を1%の濃度になる様に添加し、オートクレーブ滅菌し、EDTA含有試薬およびEDTA無しの試薬を調製した。これらを、以下、それぞれTE-Triton試薬(EDTA含有)およびTris-Triton試薬(EDTA無し)という。試料となる培養BCGは、抗酸菌増殖用液体培地(商品名:MycoBroth、極東製薬工業社製)にて、菌液がマックファーランド1相当の濁度になるまで培養し、これを必要に応じて希釈して調製した。【0057】 前記BCG菌液を、リン酸緩衝液(pH6.8)を用いて段階希釈(10-4.5、10-4、10-3.5、10-3、10-2.5)して被験菌液を調製した。前記各濃度の菌液を100μLずつスクリューキャップ付きチューブに分注し、遠心(10,000g、15分間)してペレット化したものを溶菌反応に用いるサンプル(試料)とした。前記TE-Triton試薬およびTris-Triton試薬に、それぞれリパーゼAY「アマノ」30Gを500units/mLの濃度になるように添加した。この溶液100μLを前記試料に添加し、ボルテックス後、軽く遠心した後、45℃でインキュベーションした。インキュベーションの時間は10分間および30分間の2通り行った。続いて、それぞれ96℃、10分間の熱処理を行った。【0058】 細胞が溶解されたことを確認するため、上記の処理によって得られた溶菌液100μLのうち、2μLをtemplateとしてPCRを行った。PCRの条件は、実施例1と同様である。前記PCR増幅反応産物各8μLを3%アガロースゲル電気泳動法により確認した。その結果を図3に示す。なお、同図のレーン番号に流したサンプルは、以下のとおりである。【0059】 (図3の説明)(1)〜(3):リパーゼAY「アマノ」30GとTE−Triton試薬との混合試薬で処理(EDTAあり)。45℃、10分間→96℃、10分間(4)〜(6):リパーゼAY「アマノ」30GとTris−Triton試薬との混合試薬で処理(EDTA無し)。45℃、10分間→96℃、10分間※図中のM印は100bpラダー分子量マーカーである。※(1)〜(7)の領域は、全てレーン左から10-4.5、10-4、10-3.5、10-3、10-2.5の菌サンプル。【0060】 図3に示すように、EDTAを用いない場合((4)〜(6))であっても、十分に溶菌できた。また、EDTAを使用すれば((1)〜(3))、さらに溶菌効率を上げることができた。【産業上の利用可能性】【0061】 以上のように、本発明の溶菌方法は、特殊な装置や試薬を用いることなく、簡単かつ短時間に抗酸菌を確実に溶菌できる方法である。したがって、本発明の方法を、例えば、遺伝子の増幅・検出法による抗酸菌検査の試料の前処理に適用することにより、検査の効率化を簡単に実現できる。【図面の簡単な説明】【0062】【図1】図1は、本発明の一実施例の溶菌効果を確認した結果を示す電気泳動の写真である。【図2】図2は、本発明のその他の実施例の溶菌効果を確認した結果を示す電気泳動の写真である。【図3】図3は、本発明のさらにその他の実施例の溶菌効果を確認した結果を示す電気泳動の写真である。【配列表フリーテキスト】【0063】配列番号1:プライマー1の塩基配列配列番号2:プライマー2の塩基配列【配列表】