タイトル: | 再公表特許(A1)_安定化されたアルブミン製剤 |
出願番号: | 2003002320 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K38/00,A61K47/12,A61K47/20,A61P1/16,A61P7/00,A61P13/12,A61P43/00 |
小田切 優樹 甲斐 俊哉 佐藤 誠 JP WO2003072123 20030904 JP2003002320 20030228 安定化されたアルブミン製剤 ニプロ株式会社 000135036 小田切 優樹 甲斐 俊哉 佐藤 誠 JP 2002053337 20020228 7 A61K38/00 A61K47/12 A61K47/20 A61P1/16 A61P7/00 A61P13/12 A61P43/00 JP A61K37/02 A61K47/12 A61K47/20 A61P1/16 A61P7/00 A61P13/12 A61P43/00 111 AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PT,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,OM,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20050616 2003570867 14 技術分野本発明は、極めて安定性に優れたアルブミン製剤に関する。さらに詳しくは、安定化され,安全性に優れた、分画ヒト血清アルブミン、遺伝子組み換えヒト血清アルブミンなどのアルブミン製剤に関する。背景技術アルブミン製剤は、急性の低アルブミン血症や管理困難な慢性低アルブミン血症に基づく疾病に対し、その補充によって病態の改善を図るものである。具体的には、出血性及び外傷性ショック時の循環血漿量の是正や浮腫の改善、肝硬変、ネフローゼ症候群等、種々の疾患に対して汎用されており、近代医療にとって欠かせない医薬品である(Peter T.Jr., The Plasma Proteins,Academic Press,New York,133−81(1975).,Rosenorer VM.,Rothschild MA.,Albumin Structure,Function and Uses,(1977))。従来ヒト血清アルブミン製剤の製造は、ヒトから採取した血液を分画し、得られたアルブミン含有水溶液を種々の精製手段により精製することにより行われている。精製手段としては、例えばエタノール分画法、PEG分画法、硫安分画法、陰イオン交換体と69℃、10時間の加熱処理を組み合わせた方法(特開平2−191226号公報)、陰イオン交換体処理、陽イオン交換体処理及び60℃、10時間の加熱処理を組み合わせた方法(特開平3−17123号公報、特開平7−330626号公報)などが知られている。一方、アルブミンは近年リコンビナント(遺伝子組替え)による大量生産技術が確立され、ヒトアルブミンが献血によらず、工場で大量生産できるようになった。(臨床分子医学、1、939(1993))アルブミン製剤の製造(とりわけ分画ヒト血清アルブミンの製造)においては、有害で熱に不安定なウイルスを除去し、蛋白質等の混入を防ぐために、例えば低温殺菌法(60℃、10時間)などの殺菌方法が用いられている。低温殺菌法では、ヒト血清アルブミンにN−アセチルトリプトファン、カプリル酸ナトリウムが加えられている(Ballou GA.,Boyer PD.,Luck JM.,Lum FG.,J.Biol.Chem.,153,589−605(1944),Scatchard G,Strong LE.,Hughes WL.Jr.,AshWorth JN.,Sparrow AH.,J Clin.Invest.,24,571−679(1945),Boyer PD.,Lum FG.,Ballou GA.,Luch JM.,Rice RG.,J.Biol.Chem.,162,181−198(1946))が、N−アセチルトリプトファンは脳内疾患等の副作用の問題がある。ウイルスや夾雑蛋白質が混在せず、副作用の危険性がなく安全で、しかも長期間外観変化や含量低下もなく、安定に保存できるアルブミン製剤の開発が求められている。発明の開示このような背景の下、本発明者らは、N−アセチルメチオニンがアルブミンを安定化する優れた効果を発揮することを見出し、さらに中鎖脂肪酸を共存させることにより、さらに優れた凝集抑制効果を有することを発見した。このような知見に基づき、種々検討した結果、本発明を完成した。すなわち、本発明は、(1)中鎖脂肪酸またはその塩と含硫黄アミノ酸またはその誘導体とを含有することを特徴とする、安定化されたアルブミン製剤、(2)中鎖脂肪酸が、炭素数6〜12の直鎖状飽和脂肪酸である上記1記載のアルブミン製剤、(3)含硫黄アミノ酸が、アルキル化されていてもよくジスルフィド結合化していてもよいメルカプト基を有するアミノ酸である上記1記載のアルブミン製剤、(4)含硫黄アミノ酸誘導体が、N−アシル化された含硫黄アミノ酸誘導体である上記1記載のアルブミン製剤、(5)中鎖脂肪酸またはその塩と含硫黄アミノ酸またはその誘導体の総添加量が、アルブミンに対して、約1倍から20倍モル量である上記1記載のアルブミン製剤、(6)アルブミンが遺伝子組み換えヒト血清アルブミンである請求項1記載のアルブミン製剤、(7)中鎖脂肪酸またはその塩と含硫黄アミノ酸またはその誘導体とからなるアルブミン製剤用安定化剤、及び(8)中鎖脂肪酸またはその塩と含硫黄アミノ酸またはその誘導体とを配合することを特徴とする、アルブミン製剤の安定化方法に関する。本発明製剤では、有効成分のアルブミンとして分画ヒト血清アルブミン、遺伝子組み換えヒト血清アルブミンなどが用いられる。アルブミン製剤は、通常アルブミン含量が約5重量/容量%〜約25重量/容量%の溶液として用いられる。アルブミンを溶解する溶媒としては、水(注射用水)、生理的食塩水、医薬品として投与可能なリン酸塩等の緩衝液などが挙げられる。本発明製剤に添加する中鎖脂肪酸は、例えば炭素数6から12の脂肪酸、好ましくは炭素数6から12の直鎖状飽和脂肪酸が挙げられる。好ましい具体例を挙げれば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸等である。中鎖脂肪酸の塩としては塩基塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。このうちカプリル酸ナトリウムが最も好ましい。含硫黄アミノ酸またはその誘導体としては、アルキル化されていてもよく、二量化(ジスルフィド結合)していてもよいメルカプト基(SH基)を有するアミノ酸が挙げられる。含硫黄アミノ酸は、硫黄原子を1から3個分子中に有するアミノ酸が挙げられる。その好ましい具体例を挙げれば、例えばシステイン、シスチン、メチオニンなどである。含硫黄アミノ酸の誘導体としては、N−アシル体、好ましくは、例えばN−ホルミル、N−アセチル、N−プロピオニル、N−ブチリル等のN−(1から6のアルカノイル)体、より好ましくはN−アセチル体が挙げられる。このうち、N−アセチルメチオニンが最も好ましい。本発明製剤において、中鎖脂肪酸またはその塩と含硫黄アミノ酸またはその誘導体との合計添加量は、アルブミンに対して、好ましくは等モル量程度から20倍モル量程度である。含硫黄アミノ酸またはその誘導体:中鎖脂肪酸またはその塩の添加モル比は、0.1〜10:1、好ましくは、0.5〜2:1である。中鎖脂肪酸またはその塩及び含硫黄アミノ酸またはその誘導体はそれぞれ1種類または2種類以上適宜混合して用いてもよい。本発明製剤は、必要により薬理学的に許容できる、着色剤、安定化剤、防腐剤、希釈剤、pH調整剤(例、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、塩酸、酢酸、リンゴ酸、水酸化ナトリウム等)、浸透圧調整剤(例、塩化ナトリウム,塩化カリウム,グルコン酸カリウム,硫酸マグネシウム,炭酸水素ナトリウム,塩化カルシウム,グルコン酸カルシウム,クエン酸等の電解質等)、表面活性剤(例、非イオン性表面活性剤等)等を適量添加してもよい。本発明製剤の溶液のpH値は必要によりpH調整剤を加えて、約5から7.5、好ましくはpH約6.5〜7.4に調整する。本発明製剤は、必要に応じて、アルブミン以外の生理活性物質を含んでいてもよい。例えば糖類(例、グルコース,フラクトースなどの単糖類、マルトースなどの二糖類、ソルビトール,キシリトールなどの糖アルコール類)を加えてもよい。本発明製剤は出血性及び外傷性ショック時の循環血漿量の是正や浮腫の改善、肝硬変、ネフローゼ症候群等の治療用に用いられる。 投与量は、通常成人一回あたりアルブミンとして、約5g〜約12.5gである。本発明製剤は、病態により異なるが、1日1回または2から4回程度に分けて投与してもよい。本発明製剤は副作用もほとんどなく、低毒性で安全であり、自体公知の方法に従ってヒトやほ乳動物(例、ヒツジ、ウマ、ウシ等)に皮下または静脈内投与することができる。本発明製剤は、中鎖脂肪酸またはその塩と含硫黄アミノ酸またはその誘導体とアルブミン水溶液(医薬品として投与可能なリン酸塩等の緩衝液、注射用水または生理的食塩水等)とを均一に混合して溶解し、ついで混合溶液を例えば、点滴製剤、注射剤などの非経口投与に適した製剤形に製剤化することにより製造できる。原料として用いられる中鎖脂肪酸またはその塩、含硫黄アミノ酸またはその誘導体及びアルブミンは、公知方法または自体公知の方法にしたがって製造することができる。製造された製剤を保存する容器としては、例えば、ガラスバイアルやポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック容器を用いることができる。本発明のアルブミン製剤は、上記した容器等に充填し、密閉し、滅菌(60℃/10時間)を施すことができる。本発明製剤は、加熱滅菌処理を行っても、また長期間保存しても外観変化は少なく含量の変化もほとんどない優れた安定性を示す。発明を実施するための最良の形態以下、本発明を実施例、実験例により具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。[実施例1]遺伝子組み換えヒト血清アルブミン(以下、ヒト血清アルブミンをHSAまたはアルブミンと略称)を生理食塩水に溶解し25w/v%HSA生理食塩水溶液500mLを調製した。これに安定化剤としてカプリル酸ナトリウム1662mgとN−アセチルメチオニン1912.5mgとを添加して溶解させた後、50mLバイアルにHSA生理食塩水溶液50mLずつ分注し密封した[実施例2]血液から分画されたHSAを生理食塩水に溶解し25w/v%HSA生理食塩水溶液500mLを調製した。これに安定化剤としてカプリル酸ナトリウム1662mgとN−アセチルメチオニン1912.5mgとを添加して溶解させた後、50mLバイアルにHSA生理食塩水溶液50mLずつ分注し密封した[実験例1](1)供試薬剤の調製遺伝子組み換えHSAをChenの方法(Chen RF,J.Biol.Chem.,242,173−181(1967))に従って脱脂した。さらに透析した後、凍結乾燥を行い、以下の全ての実験に用いた。HSA100μM(1/15mMリン酸緩衝液、pH7.4)に各種薬剤を添加し、以下の供試薬剤を調製した。▲1▼ HSA 100μM溶液▲2▼ HSA 100μM+カプリル酸ナトリウム500μMの溶液▲3▼ HSA 100μM+N−アセチルメチオニン500μMの溶液▲4▼ HSA 100μM+N−アセチルメチオニン500μM+カプリル酸ナトリウム500μMの溶液【0001】(2)測定方法これらの供試薬剤▲1▼〜▲4▼の示差走査熱量分析(DSC)測定から熱転移温度(Tm)及び転移エンタルピー変化ΔHcalを算出し、安定化効果を熱力学的観点から評価した。熱力学上、熱転移温度(Tm)が上昇する場合、その供試薬剤の安定性は増加することを意味する。また転移エンタルピー変化ΔHcalが増加すれば、その供試薬剤の安定性は増加することを示す。表1に、供試薬剤▲1▼〜▲4▼の熱転移温度Tm値及び転移エンタルピー変化ΔHcal値を示した。これらの値はHSA溶液のDSCサーモグラムから解析された。示差走査熱量測定法(DSC法)DSCは、MicroCal社製MC−2示差走査熱量計を使用して測定した。測定条件を以下に示す。走査速度:1K/minアルブミン濃度:100μM溶媒:1/15Mリン酸緩衝液(pH7.4)熱変性の可逆性は、初回の測定後のアルブミン溶液を冷却後、再び加熱して確認した。その結果、85℃以下までの加熱であれば、アルブミンは不可逆的な変性を惹起することなく、可逆的な熱転移を起こすことが明らかになった。得られたサーモグラムは非線形フィッティングアルゴリズム(Using Origin TM scientific plotting software)を用い、フィッティングを行い、その結果得られた過剰熱容量曲線下面積を用いて、以下のように解析した。転移エンタルピー ΔHcal=∫Cex dTCexは過剰熱容量を表す。(3)結果表1から明らかなように各種薬剤が添加された溶液は、添加されていないHSA溶液に比べ、熱転移温度(Tm)がいずれも増加した。カプリル酸ナトリウムの添加によって、アルブミンのTmは約7℃上昇しており、熱に対する安定性の向上が示されている。また、N−アセチルメチオニン単独の添加によってもわずかにTmの上昇と転移エンタルピー変化ΔHcalが増加した。カプリル酸ナトリウムとN−アセチルメチオニンとを添加した溶液は、アルブミンがより秩序だった立体構造状態となり、native状態よりもさらに安定な状態であることが明らかである。[実験例2](1)供試薬剤の調製HSAの24μMリン酸緩衝溶液(67mM pH7.4)を調製し、これに各種薬剤を24、72、120μMの濃度になるように添加した供試薬剤▲1▼〜▲4▼を調製し、添加薬剤の濃度の安定化効果への影響を検討した。▲1▼ HSA 24μM▲2▼ HSA 24μM+カプリル酸ナトリウム▲3▼ HSA 24μM+N−アセチルメチオニン▲4▼ HSA 24μM+N−アセチルメチオニン+カプリル酸ナトリウム(2)測定方法60℃/30分の加熱滅菌による熱安定性をNATIVE−PAGEにより評価した。NATIVE−PAGENATIVE−PAGEは、7.5%(w/v)ポリアクリルアミドゲルを用い、Davis法に従って行った。蛋白質の染色にはクマジーブリリアントブルーR−250を使用した。分子量マーカーとしては下記の蛋白質を用いた。α−サイログロブリン(M.W.669000)、フェリチン(M.W.443000)、乳酸脱水素酵素(M.W.139850)、ウシ血清アルブミン(M.W.66267)、トリプシンインヒビター(M.W.20110)を用いた。(3)結果NATIVE−PAGEの結果を図1に示した。60℃で30分間の加熱処理後、供試薬剤▲1▼(添加薬剤なし)は多量の凝集体が確認された。一方、供試薬剤▲2▼(カプリル酸ナトリウム含有)供試薬剤▲3▼(N−アセチルメチオニンを含有)あるいは供試薬剤▲4▼(カプリル酸ナトリウムとN−アセチルメチオニンを含有)では、凝集体抑制効果が認められた。またこれらの濃度依存性については、泳動パターンから明らかなように、アルブミンと等モルの薬剤を加えた場合には、ほとんど凝集体抑制効果が認められなかったが、3倍量(72μM)を添加した場合には明らかな凝集体抑制効果が認められ、さらに5倍量(120μM)の添加では著しい凝集体抑制効果が得られた。[実験例3]カプリル酸ナトリウム以外の中鎖脂肪酸を用いて、熱に対する凝集体抑制効果について検討を行った(図2電気泳動)。測定試料は、HSA24μMリン酸緩衝溶液(67mM pH7.4)に対して、5倍量(120μM)の各種脂肪酸を添加したものを用いた。その結果、カプリル酸ナトリウムよりも炭素鎖の短いカプロン酸(C6)、エナント酸(C7)では、わずかに凝集体抑制効果は観察され、カプリル酸ナトリウム以上の炭素鎖を持つ脂肪酸では顕著な抑制効果が観察された。[実験例4](1)供試薬剤の調製HSAの24μMリン酸緩衝溶液(67mM pH7.4)を調製し、各種薬剤を120μMの濃度で添加した供試薬剤を以下のように調製し、供試薬剤5mLに対して、最終濃度10μMとなるように2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(以下、AAPH)(1級、和光純薬製)を添加した。▲1▼ HSA▲2▼ HSA+カプリル酸ナトリウム▲3▼ HSA+カプリル酸ナトリウム+N−アセチルメチオニン(2)HSAのメルカプト型とノンメルカプト型の存在比率の測定高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLC)でHSAのメルカプト型とノンメルカプト型の存在比率(メルカプト分率)を測定した。メルカプト分率の測定に用いたHPLCはグラジエント装置を装備した島津LC−4Aに島津SPD−2ASUV検出器及び島津C−R2AXデータ処理装置を接続したものを用いた。試料の溶離は、(A)0.05Mトリス−酢酸緩衝液(pH7.0)から、(B)0.5M酢酸ナトリウムを含む0.05Mトリス−酢酸緩衝液(pH7.0)への30分間の直線グラジエント法を用いて流速0.5mL/minで行った。試料の検出はUV280nmにて室温で実施した。(3)結果供試薬剤▲1▼のHSAのHPLCクロマトグラムを図3に示す。供試薬剤▲1▼では、メルカプト型の減少とノンメルカプト型の増大が認められた。HSAのメルカプト型とノンメルカプト型の存在率の変化は、カプリル酸ナトリウムを添加しても変化は認められなかった。しかし、供試薬剤▲3▼(カプリル酸ナトリウムとN−アセチルメチオニンとを併用)では、これらの存在率の変化は有意に抑制され、抗酸化効果が確認された。したがって、副作用のないN−アセチルメチオニンが安定化剤として適していることがわかる。[実験例5]HSAに対し過剰量の酸化剤2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(AAPH)を加え、HSAを酸化させた。一定時間酸化を行った後に、HSAのカルボニル含量を測定した。酸化時間と安定化剤の種類との関係から、各種安定化剤の抗酸化作用について評価を行った(図4)。酸化の程度を示すカルボニル含量はClimentらの方法(Climent I.,Thai L.,Levine RL.,Anal.Biochem.,182,226(1989).に記載)に従って測定した。カルボニル呈色試薬Fluoresceinamineの蛋白質あたりの修飾量として表示した。N−アセチルメチオニンにおいては、添加されていない供試薬剤と比較してカルボニル含量の有意な減少が観察され、抗酸化作用が得られることは明らかである。[実験例6]遺伝子組み換えHSAを生理食塩水を用いて25w/v%の500mL溶液を調製し、安定化剤としてカプリル酸ナトリウム1662mgとN−アセチルメチオニン1912.5mgとを添加した供試薬剤を調製し、50mLをバイアルに密封した。また、別に安定化剤を含まない遺伝子組み換えHSAを生理食塩水を用いて25w/v%の濃度に調製し50mLをバイアルに密封した。これらの試料を60℃で30分間の減菌条件で加熱処理した後、異物の発生について目視確認を行った。その結果、添加剤未添加の試料は明らかに熱によるアルブミンの凝集体生成が認められたが、安定化剤添加試料は全く異物が認められなかった。産業上の利用可能性本発明の安定化されたアルブミン製剤は、副作用の危険性がなく、安全でしかも長期間安定に保存できる。中鎖脂肪酸またはその塩単独では、熱安定性に対する効果は認められるが、アルブミンの抗酸化作用が小さく、また、含硫黄アミノ酸またはその誘導体のみの添加では、アルブミンの熱安定性に対する効果が認められない。従って、中鎖脂肪酸またはその塩及び含硫黄アミノ酸またはその誘導体の両方を添加することにより相乗的に優れたアルブミン安定化効果が得られる。【図面の簡単な説明】第1図は、実験例2の未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を示す図面に替わる代用写真である。第2図は、実験例3の未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を示す図面に替わる代用写真である。第3図は、実験例4のHPLCクロマトグラムを示す図面である。第4図は、実験例5の酸化によるHSA中のカルボニル含量を示す図面である。 中鎖脂肪酸またはその塩と含硫黄アミノ酸またはその誘導体とを含有することを特徴とする、安定化されたアルブミン製剤。 中鎖脂肪酸が、炭素数6〜12の直鎖状飽和脂肪酸である請求項1記載のアルブミン製剤。 含硫黄アミノ酸が、アルキル化されていてもよくジスルフィド結合化していてもよいメルカプト基を有するアミノ酸である請求項1記載のアルブミン製剤。 含硫黄アミノ酸誘導体が、N−アシル化された含硫黄アミノ酸誘導体である請求項1記載のアルブミン製剤。 中鎖脂肪酸またはその塩と含硫黄アミノ酸またはその誘導体の総添加量が、アルブミンに対して、約1倍から20倍モル量である請求項1記載のアルブミン製剤。 アルブミンが遺伝子組み換えヒト血清アルブミンである請求項1記載のアルブミン製剤。 中鎖脂肪酸またはその塩と含硫黄アミノ酸またはその誘導体とからなるアルブミン製剤用安定化剤。 中鎖脂肪酸またはその塩と含硫黄アミノ酸またはその誘導体とを配合することを特徴とする、アルブミン製剤の安定化方法。 ウイルスや夾雑蛋白質が混在せず、副作用の危険性がなく安全で、しかも長期間外観変化や含量低下もなく、安定に保存できるアルブミン製剤を提供する。中鎖脂肪酸またはその塩と含硫黄アミノ酸またはその誘導体とアルブミン水溶液(医薬品として投与可能なリン酸塩等の緩衝液、注射用水または生理的食塩水等)とを均一に混合して溶解し、ついで混合溶液を例えば、点滴製剤、注射剤などの非経口投与に適した製剤形に製剤化することにより製造される安定化されたアルブミン製剤及びアルブミン製剤の安定化方法。