タイトル: | 再公表特許(A1)_酸素運搬体システム、人工酸素運搬体、および還元剤 |
出願番号: | 2003002234 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K35/18,A61K47/20,A61K47/22,A61K47/26,A61K47/42,A61P7/08 |
土田 英俊 武岡 真司 寺村 裕治 阿閉 友保 JP WO2003072130 20030904 JP2003002234 20030227 酸素運搬体システム、人工酸素運搬体、および還元剤 株式会社 オキシジェニクス 503185437 鈴江 武彦 100058479 村松 貞男 100084618 橋本 良郎 100092196 河野 哲 100091351 中村 誠 100088683 土田 英俊 武岡 真司 寺村 裕治 阿閉 友保 JP 2002051732 20020227 7 A61K35/18 A61K47/20 A61K47/22 A61K47/26 A61K47/42 A61P7/08 JP A61K35/18 A61K47/20 A61K47/22 A61K47/26 A61K47/42 A61P7/08 EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PT,SE,SI,SK,TR),CA,JP,US 再公表特許(A1) 20050616 2003570874 13 技術分野本発明は、ヘモグロビン小胞体を含む酸素運搬体に係り、特には、ヘモグロビンがメトヘモグロビンに酸化したときこれを還元し得る還元剤を備える酸素運搬体システムに関する。背景技術現行の輸血システムは、1)感染(肝炎、エイズウイルス等)の可能性があること、2)赤血球の保存期間が3週間程度であること、3)高齢化社会の到来で、輸血患者のうち高齢者の割合が高くなる一方、健康献血者総数が低下し続けていること、4)赤血球の保存中に汚染の危険があること、5)信仰上の理由で輸血を拒否する患者に適用できないこと、6)災害時の緊急需要に対応できないこと等の問題点が指摘されている。従って、血液型に関係なく何時でも何処でも即応できる赤血球代替物に対する要求が大きくなっている。その一つとして、電解質輸液、膠質輸液等の輸液製剤が広く使用されてきているが、これらの輸液製剤は、血液の最も重要な機能である赤血球の酸素を運搬する機能を有していない。そこで、酸素運搬能を持つ輸液(酸素輸液)の開発が急務となっている。近時、赤血球内部にあって酸素を結合・解離するヘモグロビン(ヒトヘモグロビン、ウシヘモグロビン、組換えヘモグロビン等)を精製し、化学修飾したヘモグロビンを用いた酸素輸液の開発が進められており、分子内架橋ヘモグロビン、水溶性高分子結合ヘモグロビン、分子間架橋重合ヘモグロビンが欧米で臨床実験に供されている。しかしながら、これら化学修飾ヘモグロビンを用いた酸素輸液に関し、赤血球のような細胞型構造を持たない裸のヘモグロビンに起因する各種副作用が指摘されるようになるにつれ、ヘモグロビンを小胞体内に封入した細胞型構造の重要性が明確になってきた。生体膜成分であるリン脂質が単独で小胞体を形成することが発見され、Djordjevich et al.,Fed.Proc.36,567,1977)において、リン脂質/コレステロール/脂肪酸からなる小胞体にヘモグロビンを内包させた系(ヘモグロビン小胞体)が検討されて以来、本発明者らのグループを含むいくつかのグループで、ヘモグロビン小胞体の研究が精力的に展開されてきた。ヘモグロビン小胞体は、1)ヘモグロビンを修飾しない、2)粘度、膠質浸透圧および酸素親和度を任意の値に調節できる、3)血中滞留時間が延長される、4)各種添加剤を小胞体内水相に任意の濃度で封入できる等の利点を有する。本発明者らのグループは、これまでに、ヘモグロビン小胞体の効率的な調製法を独自に確立し、諸物性値が血液にきわめて近いヘモグロビン小胞体分散液を得ており、動物実験でもその優れた酸素運搬能と安全性を確認している(Tsuchida ed.,Blood Substitutes:Present and Future Perspective,Elsevier,Amsterdam,1998)。ヘモグロビンは、4個のヘムを含有しており、その中心鉄が二価(Fe2+)であるときには酸素を可逆的に結合でき、大気下ではオキシヘモグロビンとなっているが、中心鉄が一電子酸化型の三価(Fe3+)となったメトヘモグロビンは酸素と結合できない。また、オキシヘモグロビンのメト化に伴いスーパーオキシドアニオンや過酸化水素が生成し、これが酸化剤として作用してメトヘモグロビンの生成を促進する。赤血球内ではメトヘモグロビン還元酵素および活性酸素消去酵素が存在し、メトヘモグロビン含量を1%以下の低いレベルに維持する機構が働くが、ヘモグロビンを用いる酸素輸液では、ヘモグロビンの精製時にこれらの酵素類が除去されているため、保存中および投与後に酸化され易くなり、また酸化されたヘモグロビン(メトヘモグロビン)は還元されずに酸素運搬能が消失する。このメトヘモグロビンを還元するために、種々の方法が提案されている。例えば、グルタチオン、ホモシステインまたはアスコルビン酸等の還元剤、あるいはカタラーゼまたはスーパーオキシドディスムターゼ等の活性酸素消去酵素をヘモグロビン小胞体中に封入する方法(Sakai et at.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,1994およびTakeoka et al.,Bioconjugate Chem.,8,539−544,1997)、電子伝達物質としてメチレンブルーを小胞体膜内に導入し、小胞体の外水相に添加したNADHからの電子伝達機構により小胞体中のメトヘモグロビンを還元する方法(Takeoka et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,70,1171−1178,1997)、近紫外領域の光照射によりメトヘモグロビンを還元する方法(Sakai et.al.,Biochemistry,39,14595−14602,2000)が試みられている。上記還元方法のうち、グルタチオンやホモシステイン等の還元剤を精製ヘモグロビンとともに小胞体内に封入する方法では、ヘモグロビンが自動酸化してメトヘモグロビンとなる速度よりも早く還元剤が自動酸化して失活してしまうため、効率が低い。また、還元剤は、その自動酸化時にスーパーオキシドアニオンや過酸化水素等の活性酸素を発生し、これがオキシヘモグロビンをメトヘモグロビンやフェリルヘモグロビンに変性させる。従って、本発明は、還元剤を用いるものではあるが、より一層効率的にヘモグロビン小胞体中のメトヘモグロビンを還元するシステムを提供することを目的とする。発明の開示本発明者らは、長年にわたってヘモグロビン小胞体を中心に、ヘモグロビンやヘムと還元剤との電子移動や、二分子膜の物質移動に関する基礎研究を系統的に重ねた結果、ヘモグロビン小胞体中に中間電子媒体を封入しておき、小胞体内のヘモグロビンがメトヘモグロビンに酸化したとき、小胞体の外水相に還元剤を添加することによりヘモグロビンの酸素結合能を容易に回復させることを見いだし、本発明を完成させた。すなわち、本発明によれば、ヘモグロビンと0.05Vから0.56V(標準水素電極基準)の標準電極電位を示す中間電子媒体を小胞体内に内包するヘモグロビン小胞体を含む人工酸素運搬体、および該ヘモグロビン小胞体に内包されたヘモグロビンがメトヘモグロビンに酸化したとき該ヘモグロビン小胞体の外水相に添加して該メトヘモグロビンを還元するための、チオール化合物および還元糖からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする還元剤を備える酸素運搬体システムが提供される。また、本発明によれば、ヘモグロビンと0.05Vから0.56V(標準水素電極基準)の標準電極電位を示す中間電子媒体を小胞体内に内包するヘモグロビン小胞体を含む人工酸素運搬体が提供される。さらに、本発明によれば、ヘモグロビンと0.05Vから0.56V(標準水素電極基準)の標準電極電位を示す中間電子媒体を小胞体内に内包するヘモグロビン小胞体を含む酸素運搬体において、該ヘモグロビンがメトヘモグロビンに酸化したとき、該ヘモグロビン小胞体の外水相に添加して該メトヘモグロビンを還元するための、チオール化合物および還元糖からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする還元剤が提供される。本発明において、ヘモグロビン小胞体は、通常、水系媒体中に分散された形態にある。また、還元剤の有効成分は、システイン、ホモシステイン、N−アセチルシステインおよびチオグリコール酸からなる群の中から選ぶことができ、還元剤は、水溶液の形態にあるか、粉末または錠剤の形態にあり得る。本発明において、中間電子媒体は、好ましくは、0.07から0.55Vの標準電極電位を示し、フェナジン環を有する化合物、フェノチアジン環を有する化合物、フェナゾニウム環を有する化合物、イソアロキサンジン環を有する化合物、およびニコチンアミド基を有する化合物からなる群の中から選ぶことができる。前記ヘモグロビン小胞体は、さらに、活性酸素種の消去酵素を内包することができる。発明を実施するための最良の形態以下、本発明をより詳しく説明する。本発明の酸素運搬体システムは、所定のヘモグロビン小胞体を含む人工酸素運搬体と還元剤を含む。ヘモグロビン小胞体は、小胞体にヘモグロビンと中間電子媒体を内包するものである。小胞体中に封入されるヘモグロビンは、人工酸素運搬体の中心機能を果たすものであり、酸素分圧差により酸素を結合し、または放出するものである。ヘモグロビンは、生体由来の赤血球、献血由来のヒト赤血球あるいはブタ、ヒツジ、ウシ等の家畜由来の赤血球から獲得することができる。例えば、既知の手法に従い、低張溶血法により赤血球から赤血球膜(ストローマ)を除去し、ウイルスを不活性化させるために、60℃で1時間以上加熱処理し、精製する。こうして得られる高純度ストローマフリーのヘモグロビンを好適に使用することができる。なお、上記加熱処理により、赤血球中に存在していたメトヘモグロビン還元酵素系は変性して失活する。また、大腸菌や酵母菌等の菌体や動物や植物細胞の遺伝子組換体由来のリコンビナントヘモグロビンを精製、濃縮して用いてもよい。小胞体の外囲構造を構成する成分としては、二分子膜を形成し、生体適合性が高い両親媒性分子あるいは界面活性剤であれば制限されるものではないが、脂質、好ましくはリン脂質が用いられる。本発明において使用されるリン脂質類は特に制限されるものではないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン等のスフィンゴリン脂質を用いることができる。これらリン脂質の混合物を使用することもできる。小胞体膜には、コレステロールを添加することが好ましい。本発明に用いられる中間電子媒体は、酸化型としてヘモグロビン小胞体内に封入されるものであって、以下詳述する還元剤がヘモグロビン小胞体の外水相に添加され、小胞体膜を透過して小胞体内に入ると、その還元剤により還元されて還元体となり、この還元体がヘモグロビン小胞体内のメトヘモグロビンを速やかに還元するものである。この中間電子媒体は、0.05Vから0.56V、好ましくは0.07から0.55V(標準水素電極基準)の標準電極電位を示すものであり、小胞体内に安定に導入され得、生体適合性の高い化合物であればいずれ化合物でも使用することができる。そのような化合物の好ましい例を挙げると、フェナジンメト硫酸等のフェナジン環を有する化合物、メチレンブルー等のフェノチアジン環を有する化合物、クレシルブルー等のフェナゾニウム環を有する化合物、フラビン類(例えば、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)ルミフラビン、ジクロロリボフラビン、リボフラビン(ビタミンB2)、10−メチルイソアロキサジン)等のイソアロキサンジン環を有する化合物、NADHやNADPH等のニコチンアミド基を有する化合物である。これら化合物は単独で、または組み合わせて用いることができる。本発明において、ヘモグロビン小胞体は、既知の手法(Sakai et al.,Biotechnol.Progress,12,119−125,1996;Bioconjugate Chem.,8,23−30,1997)を利用して調製することができる。すなわち、この既知の方法でヘモグロビン小胞体を調製する際に、小胞体に内包させる濃厚ヘモグロビン水溶液に中間電子媒体を含有させておくことにより調製することができる。ヘモグロビン小胞体は、生理食塩水等の水系媒体中に分散された形態で得られる。すなわち、上記方法で得られたヘモグロビン小胞体の濃厚分散液を生理食塩水等で希釈することが好ましい。この希釈されたヘモグロビン小胞体分散液は、その分散液におけるヘモグロビン濃度が、5〜15g/dLであることが好ましい。なお、この希釈により、ヘモグロビン小胞体内のヘモグロビンや中間電子媒体の濃度は実質的に希釈されない。また、ヘモグロビン小胞体の外表面をポリエチレングリコールで修飾することもできる。この修飾は、例えば、得られたヘモグロビン小胞体分散液にポリエチレングリコール結合リン脂質を添加することにより行うことができる。本発明の人工酸素運搬体を構成するヘモグロビン小胞体中におけるヘモグロビン濃度は、30〜45g/dLであることが好ましい。また、このヘモグロビン小胞体中の中間電子媒体の濃度は、10〜20μMであることが好ましい。本発明で使用される還元剤は、ヘモグロビン小胞体膜を透過して小胞体内水相に到達し得るものであり、生体適合性を有する水溶性のものである。かかる還元剤は、チオール化合物および還元糖からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とするものである。還元剤の有効成分として使用されるチオール化合物の例を挙げると、システイン、ホモシステイン、N−アセチルシステイン、チオグリコール酸等である。また、還元剤の有効成分として使用される還元糖の例を挙げると、リボース、グルコース等である。これら化合物は、単独で、または組み合わせて使用することができる。これらチオール化合物および還元糖類は、静注や経口投与により生体投与可能な化合物であり、現在医薬品に配合されているものである。還元剤の有効成分としてはチオール化合物が好ましく、特にシステインが好ましい。本発明の還元剤は、水溶液(例えば生理食塩水中の溶液)、粉末または錠剤の形態で使用することができる。本発明の酸素運搬体システムにおいて、人工酸素運搬体におけるそのヘモグロビン小胞体中のヘモグロビンが酸化されてメトヘモグロビンとなったとき、還元剤がヘモグロビン小胞体の外水相に添加される。ヘモグロビン小胞体の外水相に添加された還元剤は、ヘモグロビン小胞体膜を透過して小胞体の内水相に進入し、ヘモグロビン小胞体中の酸化型中間電子媒体を還元してこれを還元体に変換する。その還元型中間電子媒体はヘモグロビン小胞体中のメトヘモグロビンをヘモグロビンに還元し、その酸素結合能を回復させる。還元剤によるメトヘモグロビンの還元反応は、還元剤の酸素酸化、すなわち還元剤の自動酸化との競争反応であるため、還元剤は、まず酸化型の中間電子媒体を還元型に還元し、これがメトヘモグロビンを還元するものであり、還元剤の自動酸化よりも速くメトヘモグロビンを還元し得る。還元剤を添加していないときは、中間電子媒体は不活性な酸化型として存在しているため、これによる酸素酸化は生じることはなく、従ってそれによるヘモグロビンのメト化も進行しない。ところで、上記ヘモグロビン小胞体内に活性酸素種が存在し得る。かかる活性酸素種は、主に過酸化水素であるが、ヘモグロビン小胞体の外部から添加した還元剤の自動酸化により、あるいはヘモグロビン小胞体内の中間電子媒体の還元型の自動酸化により発生し得る。より詳しくは、前記自動酸化によりスーパーオキシドアニオンが発生し、これが不均化反応により過酸化水素となる。このような活性酸素種はヘモグロビン小胞体の寿命を短縮させ得る。そこで、活性酸素種の消去酵素をヘモグロビン小胞体に内包させることが好ましい。活性酸素種消去酵素としては、カタラーゼが特に好ましい。活性酸素種消去酵素は、ヘモグロビン小胞体の内相中のヘモグロビン分子に対して1/700〜1/30のモル比で存在させることができる。本発明の人工酸素運搬体は、赤血球代替物として、赤血球と同様に利用することができ、出血性ショックの際の蘇生液として、あるいは体外循環に用いることができる。ヘモグロビン小胞体中のメトヘモグロビンの量は、例えば、紫外可視分光光度計により測定することができる。また、還元剤は、静脈注射、点滴等により静注したり、あるいは経口投与により水溶液、粉末あるいは錠剤として添加することができる。なお、本発明の還元剤は、生体内の赤血球内のメトヘモグロビン還元系の一部が先天的に欠損していたり、あるいは薬物等の影響により急性的にメトヘモグロビン還元系が機能しなくなり、メトヘモグロビンの含量が増加するような病態の治療にも適用できる。赤血球内には、フラビンやチトクロームcb5、NADH、NADPH等本発明でいう中間電子媒体に相当する物質が存在しているので、本発明の還元剤を上に説明したように投与することにより、これが赤血球膜を透過してメトヘモグロビンを還元することができる。血液は、人工のものではないが、酸素運搬体である。以上、本発明の種々の態様を説明したが、本発明はそれら態様に限定されるものではない。また、上述した種々の態様の2つまたはそれ以上を組み合わせることができることはいうまでもない。以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。実施例1無菌的雰囲気下において、献血由来のヒト赤血球から精製して得た高純度ストロマフリーヘモグロビン溶液(40g/dL、6.2mM)に酸化型フェナジンメト硫酸を濃度1mMおよび100μMとなるように添加した。Remolino(登録商標)(日本ミリポア社製)を用いて孔径0.22μmのFMミクロフィルター(富士写真フイルム社製)でろ過し、仕込みヘモグロビン溶液を得た。混合脂質粉末Presome PPG−I(ホスファチジルコリン/コレステロール/ホスファチジルグリセロールの混合物;日本精化社製)を脂質濃度が4.5重量%となるように少量ずつ添加し、4℃で12時間攪拌してヘモグロビン内包多重層小胞体を得た。Remolino(登録商標)を用いたエクストルージョン法により、小胞体の粒径および膜層数の制御を行った。その際、FMミクロフィルターを孔径3μm、0.8μm、0.65μm、0.45μm、0.3μm、0.22μmの順に使用した。こうして得られたヘモグロビン小胞体分散液を生理食塩水で希釈し、超遠心分離(50,000g、40分)に供した後、上澄みヘモグロビン溶液を吸引除去した。得られた希釈小胞体分散液に、生理食塩水に分散させたポリオキシエチレン結合脂質(N−(モノメトキシポリエチレングリコール−カルバミル)ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン;ポリエチレングリコールの分子量5300)を小胞体外表面の脂質の0.3モル%相当量添加し、25℃で2時間攪拌してヘモグロビン小胞体の表面をポリエチレングリコールで修飾した。ヘモグロビン小胞体を超遠心分離(50,000g、40分)にて沈殿させ、ヘモグロビン濃度が10g/dLとなるように生理食塩水にて再分散させた。これをDismic−25;0.45μmフィルター(ADVANTEC)でろ過してポリエチレングリコール修飾ヘモグロビン小胞体分散液を得た。なお、フェナジンメト硫酸を添加しない高純度ストロマフリーヘモグロビン溶液(40g/dL、6.2mM)についても全く同じ処理を行い、ポリエチレングリコール修飾ヘモグロビン小胞体分散液を得た。得られた各小胞体分散液に亜硝酸ナトリウムを添加し、小胞体内のヘモグロビンをほぼ100%酸化させた。超遠心分離により小胞体を沈殿させ、上澄みの亜硝酸ナトリウムを完全に除去した後、リン酸緩衝液(pH7.4)によりメトヘモグロビン濃度が5.0μMとなるように調整した。大気下でシステインを濃度50mMとなるように添加したところ、フェナジンメト硫酸無添加のヘモグロビン小胞体では30分で25%のメトヘモグロビンが還元されたに過ぎなかったが、フェナジンメト硫酸内包ヘモグロビン小胞体ではいずれも60分で90%のメトヘモグロビンが還元されたことが紫外可視吸収スペクトルから示された。実施例2フェナジンメト硫酸の代わりにフラビンモノヌクレオチドを2mM濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様の手法によりメトヘモグロビン濃度5.0μMのフラビンモノヌクレオチド内包ヘモグロビン小胞体分散液を調製した。この分散液に大気下にホモシステインを濃度が30mMとなるように添加したところ、30分で60%のメトヘモグロビンが還元された。実施例3フェナジンメト硫酸の代わりにメチレンブルーを6.5mM濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様の手法によりメトヘモグロビン濃度5.0μMのメチレンブルー内包ヘモグロビン小胞体分散液を調製した。この分散液に大気下にリボースを濃度が60mMとなるように添加したところ、30分で50%のメトヘモグロビンが還元された。実施例4フェナジンメト硫酸の代わりに、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを2mM濃度、およびカタラーゼを10000単位/mL濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様の手法によりメトヘモグロビン濃度5.0μMのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド/カタラーゼ内包ヘモグロビン小胞体分散液を調製した。この分散液に大気下でシステインを濃度が50mMとなるように添加したところ、30分で75%のメトヘモグロビンが還元された。実施例5Wister系ラット(雄、体重300g)をネンブタール腹腔内麻酔させた後、頚動脈と頚静脈に挿管した。実施例1で調製したフェナジンメト硫酸内包ヘモグロビン小胞体(ヘモグロビン濃度10g/dL、4mL)を頚静脈から1mL/分の速度で投与した。9時間後に頚動脈から1mLの血液を抜き取り、これをEDTA添加採血管に入れて遠心分離(2000g、10分)に供して、上澄みとしてヘモグロビン小胞体分散液を得た。20%のヘモグロビンが酸化していることを紫外・可視吸収スペクトルにて確認した後、頚動脈から60mM濃度のシステインを1mL投与した30分後に頚動脈から1mLの血液を抜き取り、同様の操作によりメトヘモグロビン濃度を測定したところ、5%であった。実施例6Wister系ラット(雄、体重300g)をネンブタール腹腔内麻酔させた後、頚動脈と頚静脈に挿管した。頚動脈から8mLの血液を抜き取り、これをEDTA添加採血管に入れて遠心分離(2000g、10分)に供し、生理食塩水で3回洗浄し、洗浄赤血球を得た。この赤血球に対し、亜硝酸ナトリウムでヘモグロビンを酸化させた後、再度生理食塩水で3回洗浄し、20%のヘモグロビンが酸化された赤血球を調製し、これを頚動脈から投与した。5分後、システイン錠剤(1錠、システイン300mg/錠)を経口投与し、30分後に頚動脈から1mLの血液を抜き取り、同様の操作によりメトヘモグロビン濃度を測定したところ、2%であった。実施例7Wister系ラット(雄、体重300g)をネンブタール腹腔内麻酔させた後、頚動脈と頚静脈に挿管した。フェナジンメト硫酸とカタラーゼを内包したヘモグロビン小胞体を実施例1に基づいて調製した(ヘモグロビン濃度10g/dL、カタラーゼ濃度5.6×104単位/mL、4mL)。この試料を頚静脈から1mL/分の速度で投与した。9時間後に頚動脈から1mLの血液を抜き取り、これをEDTA添加採血管に入れて遠心分離(2000g、10分)に供して、上澄みとしてヘモグロビン小胞体分散液を得た。15%のヘモグロビンがメトヘモグロビンに酸化していることを紫外・可視吸収スペクトルにて確認した後、頚動脈から30mM濃度のシステインを1mL投与した30分後に頚動脈から1mLの血液を抜き取り、同様の操作によりメトヘモグロビン濃度を測定したところ、5%であった。以上述べたように、本発明によれば、還元剤を用いて、より一層効率的にヘモグロビン小胞体中のメトヘモグロビンを還元するシステムが提供される。 ヘモグロビンと0.05Vから0.56V(標準水素電極基準)の標準電極電位を示す中間電子媒体を小胞体内に内包するヘモグロビン小胞体を含む人工酸素運搬体、および該ヘモグロビン小胞体に内包されたヘモグロビンがメトヘモグロビンに酸化したとき該ヘモグロビン小胞体の外水相に添加して該メトヘモグロビンを還元するための、チオール化合物および還元糖からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする還元剤を備える酸素運搬体システム。 前記ヘモグロビン小胞体が、活性酸素種の消去酵素をさらに内包している請求項1に記載の酸素運搬体システム。 前記活性酸素種の消去酵素が、カタラーゼである請求項2に記載の酸素運搬体システム。 前記ヘモグロビン小胞体が、水系媒体中に分散された形態にある請求項1に記載の酸素運搬体システム。 前記還元剤の有効成分が、システイン、ホモシステイン、N−アセチルシステインおよびチオグリコール酸からなる群の中から選ばれるチオール化合物である請求項1に記載の酸素運搬体システム。 前記還元剤が、水溶液の形態にある請求項1に記載の酸素運搬体システム。 前記還元剤が、粉末または錠剤の形態にある請求項1に記載の酸素運搬体システム。 前記中間電子媒体が0.07から0.55V(標準水素電極基準)の標準電極電位を示す請求項1に記載の酸素運搬体システム。 前記中間電子媒体が、フェナジン環を有する化合物、フェノチアジン環を有する化合物、フェナゾニウム環を有する化合物、イソアロキサンジン環を有する化合物、およびニコチンアミド基を有する化合物からなる群の中から選ばれる請求項8に記載の酸素運搬体システム。 ヘモグロビンと0.05Vから0.56V(標準水素電極基準)の標準電極電位を示す中間電子媒体を小胞体内に内包するヘモグロビン小胞体を含む人工酸素運搬体。 前記ヘモグロビン小胞体が、活性酸素種の消去酵素をさらに内包している請求項10に記載の人工酸素運搬体。 前記ヘモグロビン小胞体が、水系媒体中に分散された形態にある請求項10に記載の人工酸素運搬体。 前記中間電子媒体が、0.07から0.55V(標準水素電極基準)の標準電極電位を示す請求項10に記載の人工酸素運搬体。 前記中間電子媒体が、フェナジン環を有する化合物、フェノチアジン環を有する化合物、フェナゾニウム環を有する化合物、イソアロキサンジン環を有する化合物、およびニコチンアミド基を有する化合物からなる群の中から選ばれる請求項13に記載の人工酸素運搬体。 ヘモグロビンと0.05Vから0.56V(標準水素電極基準)の標準電極電位を示す中間電子媒体を小胞体内に内包するヘモグロビン小胞体を含む酸素運搬体において、該ヘモグロビンがメトヘモグロビンに酸化したとき、該ヘモグロビン小胞体の外水相に添加して該メトヘモグロビンを還元するための、チオール化合物および還元糖からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする還元剤。 前記有効成分が、システイン、ホモシステイン、N−アセチルシステインおよびチオグリコール酸からなる群の中から選ばれるチオール化合物である請求項15に記載の還元剤。 水溶液の形態にある請求項15に記載の還元剤。 粉末または錠剤の形態にある請求項15に記載の還元剤。 酸素運搬体システムは、ヘモグロビンと0.05Vから0.56V(標準水素電極基準)の標準電極電位を示す中間電子媒体を小胞体内に内包するヘモグロビン小胞体を含む人工酸素運搬体、および前記ヘモグロビン小胞体に内包されたヘモグロビンがメトヘモグロビンに酸化したときヘモグロビン小胞体の外水相に添加してメトヘモグロビンを還元するための還元剤を備える。還元剤は、チオール化合物および還元糖からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする。