タイトル: | 特許公報(B2)_酢酸を含まない、ハイドロキシアパタイトによるプラスミドDNAの精製 |
出願番号: | 2002592506 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12N 15/00,B01D 11/02,B01D 15/08,B01J 20/04,B01J 20/34 |
アベリン,シェリル エス. フランクリン,サミュエル ジー. JP 4125605 特許公報(B2) 20080516 2002592506 20020515 酢酸を含まない、ハイドロキシアパタイトによるプラスミドDNAの精製 バイオ−ラッド ラボラトリーズ,インコーポレイティド 591099809 石田 敬 100077517 鶴田 準一 100092624 福本 積 100087871 西山 雅也 100082898 樋口 外治 100081330 アベリン,シェリル エス. フランクリン,サミュエル ジー. US 09/866,093 20010523 20080730 C12N 15/00 20060101AFI20080710BHJP B01D 11/02 20060101ALI20080710BHJP B01D 15/08 20060101ALI20080710BHJP B01J 20/04 20060101ALI20080710BHJP B01J 20/34 20060101ALI20080710BHJP JPC12N15/00 ZB01D11/02 AB01D15/08B01J20/04 CB01J20/34 G C12N 15/00-90 C12Q 1/00ー70 G01N 33/00-98 PubMed、MEDLINE(STN) BIOSIS/WPI(DIALOG) 7 US2002015705 20020515 WO2002095047 20021128 2004520079 20040708 7 20050311 斎藤 真由美 【0001】本発明の背景1.本発明の分野本願発明は、プラスミドDNA精製の分野、そして特にプラスミドDNAの精製のためのハイドロキシアパタイト・カラム・クロマトグラフィーの使用にある。【0002】2.従来技術の説明遺伝子治療は、疾病、並びに遺伝子異常及び障害の治療における最も有望な成果の1つである。遺伝子治療とは、患者の細胞への遺伝子断片の導入であり、上記断片とは、発現されたときに、その患者へ治療としての利益を提供するものである。前述の利益の1つの例は、本来の遺伝子の異常により前記患者によって他の方法では十分に発現されないタンパク質の発現である。他の例は、突然変異遺伝子、アンチセンス配列又はリボザイムの導入による望まれない遺伝子機能、例えばウイルス感染又は癌の阻止である。【0003】遺伝子の導入法の1つは、ベクターとしてのプラスミドDNAの使用により、そして遺伝子治療への関心は、高純度プラスミドDNAに対する需要を生み出している。プラスミドDNAの精製は、他の細胞成分、例えば宿主タンパク質、エンドトキシン、染色体DNA及びRNAの完全な除去を必要とする。これは、培養宿主細胞、典型的にはプラスミドDNAを含む細菌細胞を培養し、遠心分離により上記細胞を回収し、それらを好適な懸濁バッファー中に再懸濁し、そしてアルカリ性溶解剤を用いて細胞溶解を実行し、次に一般的にpH5.5の酢酸カリウム・バッファーを用いて上記溶解物のpHを下げて染色体DNA及び他の細胞性物質を沈殿させる一方で上清中に上記プラスミドDNAを残すことにより成される。次に前記上清を回収し、浄化し、そしてクロマトグラフィーによりプラスミドDNAを上記上清から単離する。好適なクロマトグラフィー法は、陰イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、及び逆相高速液体クロマトグラフィーである。【0004】ハイドロキシアパタイトは、それが陽性及び陰性荷電部分の両者を含むために混合様式イオン交換により動作する、タンパク質及び核酸のための特に有効な分離媒体である。よって、ハイドロキシアパタイトは、プラスミドDNAの精製へのその使用について知られている。しかしながら、中和ステップからの酢酸イオンの滞留がハイドロキシアパタイトの有効性を制限する。なぜなら、酢酸イオンは、その媒体の分解の原因となるハイドロキシアパタイトとの相互作用を生じる傾向にあるからである。この問題を回避するために、前記上清は、クロマトグラフィーの前に一般的に沈殿、脱塩、ダイアフィルトレーション又は透析により処理される。当然、これらのステップは、精製されたプラスミドDNAの製造の時間を消費し、費用をかさませ、そしてサンプルの浪費及び/又は変性の原因となる。【0005】本発明の概要プラスミドDNAを含むアルカリ性細胞ライセートを従来技術の酢酸バッファーよりも無機塩の存在下、鉱酸により酸性化し、そしてこの上清を得られた沈殿物から除去し、そしてハイドロキシアパタイト・クロマトグラフ分離媒体に直接適用したとき、精製プラスミドDNAをこの分離媒体から溶出しうることをここで発見した。従来技術によるライセート処理の介在ステップを産物の質の低下なしに省きうる。これらのステップを省くことの費用及び時間的利点に加え、増加した産物の収量が期待される。この発見は、酢酸イオンの使用、そしてそのハイドロキシアパタイトに対する分解作用を回避する。故に、ハイドロキシアパタイトのさらなるライセート上清の多くの精製への再利用を可能にする。故に、本発明は、細菌細胞からのプラスミドDNAの抽出方法にあり、ここで細胞ライセートを、まずアルカリ性溶解剤の作用により形成し、次にこのライセートを鉱酸と無機塩の混合物を用いて酸性化し、得られた上清と沈殿物を分離し、そしてこの上清をハイドロキシアパタイトに直接適用し、その後上記プラスミドDNAを適当な溶出バッファーを用いて溶出する。本発明のさらなる特性及びその好ましい態様は、以下の説明から明らかになる。【0006】本発明の詳細な説明及び好ましい態様本願発明により精製されうるプラスミドDNAは、あらゆる染色体外DNAを含む。本発明は、高コピー数プラスミド及び低コピー数プラスミドの両者、並びにラナウェイ・プラスミドに及ぶ。前記プラスミドは、各種遺伝子、ポリリンカー、複製開始点、プロモーター、エンハンサー、リーダー配列、ポリアデニル化部位、終止配列及びプラスミド構造内に存在することが分かっている他の遺伝子要素を含みうる。ヒト遺伝子又は動物遺伝子をコードするプラスミドを使用しうる。【0007】前記プラスミドDNAを、本技術分野で周知の方法による宿主細胞の微生物発酵から得ることができる。前記宿主細胞は、多種多様な微生物のいずれか、特に酵母細胞及び細菌細胞でありうる。細菌細胞は、この目的のために最も一般的に使用されており、そしてそれ故に好ましいものである。E.コリ(E.coli)細胞は、特に好ましい。前記発酵工程は、バッチ発酵及び供給バッチ発酵(fed−batch fermentation)を含む当業者に周知の方法を用いて慣習的な培地中で実施される。前記宿主細胞の収穫は、同様に慣習法により成され、その例は遠心分離、ろ過及び沈殿である。【0008】前記宿主細胞の溶解をアルカリ性溶解媒体中への前記収穫された細胞の懸濁により実施する。同様に、前記手順のこのステップは、本技術分野で知られ、そして染色体DNAの変性させる能力を持ついずれかのアルカリ性塩基により成される。有名な例は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムである。薄い水性NaOHを一般的に使用する。好ましくは、イオン性界面活性剤が前記変性を助けるために存在する。ドデシル硫酸ナトリウムを一般的に使用するが、しかしながら、他の好適な界面活性剤は当業者にとって容易に理解できるであろう。【0009】一旦溶解物を生じたら、前記アルカリ性ライセートを鉱酸及び無機塩の添加により本発明に従い酸性化する。好ましい酸は塩酸である。前記酸の濃度は本発明にとって重要ではなく、そして変化しうる。たいていの場合、最良の結果は、約0.1N〜約1.0Nの範囲内の酸濃度を用いて達成される。水中によく溶解するあらゆる無機塩を使用しうるが、しかし好ましい無機塩は、そのアニオンが前記酸のそれと同じものである。塩酸を使用するとき、例の好ましい鉱物塩は、塩化アルカリ金属又はアルカリ土類金属、特に塩化ナトリウム及び塩化カリウムである。酸性域、好ましくは約pH4.0〜約pH5.0の範囲に、そして最も好ましくは約pH4.5〜約pH5.0の範囲内にpHを下げるのに十分な酸を使用する。前記塩濃度は、同様に変化するが、しかし上記塩の利点は高濃度により最もよく達成される。なぜなら、得られた溶液の高いイオン濃度は染色体DNA及び他の不純物の沈殿の助けとなり、そしてそれによりプラスミドDNAからこれらの不純物を分離する。ほとんどの場合、最良の結果は、約1.0M〜約10M(1塩基塩に基づく)の範囲内の塩濃度により達成される。【0010】前記酸性化ステップから得られた沈殿物質は慣習の手段、例えば遠心分離法、沈殿法又はろ過法、あるいはこれらの方法の組み合わせにより除去される。次に、この上清をハイドロキシアパタイト分離媒体に直接適用する。【0011】その化学式がCa10(PO4 )6 (OH)2 であるところのハイドロキシアパタイトは、骨塩及び歯塩(tooth mineral)、並びに他の生物起源のものの主な構成要素であり、既知の方法による合成が可能でもある。ハイドロキシアパタイトはクロマトグラフ媒体又は支持体として、特にタンパク質及び核酸のクロマトグラフ分離のために広く使用される。さまざまなハイドロキシアパタイト・クロマトグラフ媒体が市販されており、そして、あらゆる利用可能な形状の媒体を本願発明の実行に使用されうる。本願発明に使用するための好ましいハイドロキシアパタイトは、凝集して粒子を形成し、そして高温で安定な多孔質セラミック塊に焼結する。前記粒子サイズは厳密ではなく、そして幅広く変化するが、典型的な粒子サイズは直径で約1μm〜約1,000μm、好ましくは約10μm〜約100μmの範囲に渡る。多孔度は大きく異なる。ほとんどの場合、最良の結果は、約100Å〜約10,000Å、又は好ましくは約500Å〜約3,000Åの平均孔直径により達成される。本願発明の前記粒子として有効であるセラミック・ハイドロキシアパタイト材料の例は、Bio−Rad Laboratories,Inc.,Hercules,California,USA製のMACRO−PREP(商標)Ceramic Hydroxyapatite Type I及びIIである。【0012】ハイドロキシアパタイトによるプラスミドDNAの単離は、充填されたハイドロキシアパタイト・カラム、あるいはクロマトグラフ分離の用途のために使用されるか又は知られるあらゆる他の形態により達成されうる。前記ハイドロキシアパタイトからのプラスミドDNAの溶出は、前記酸性化ライセートの浄化され上清中に残った他の成分からのプラスミドDNAの分離を助けるための塩勾配のような一般的な修飾を伴う慣習的な組成の溶出バッファーにより典型的には成される。【0013】以下の実施例を説明目的のためだけに提供する。【0014】実施例当該実施例は、本発明によるハイドロキシアパタイトカラムを用いたPUC19由来のプラスミドDNAの精製を説明する。このプラスミドは、260nmの波長で100mLの細胞培養物当たり350吸光度単位の吸光度の表示度数を有する。【0015】従来法に従い100μg/mLのアンピシリンを追加したTerrific Broth中E.コリ(E.coli)により前記プラスミドを増やした。対照として使用するために、前記培養物の25mLアリコートをPlasmid Midiprepキット(Bio−Rad Laboratories,Inc.,Hercules,California,USA)を用いて精製した。この試験のために、前記培養物の他の25mLアリコートを、氷浴上で40mMリン酸ナトリウム、pH8.0及び25mMエチレン・ジアミン四酢酸(EDTA)中に前記細胞を再懸濁することにより溶解した。次に、1%ドデシル硫酸ナトリウム及び0.2N NaOHを含む細胞溶解溶液を前記懸濁液に添加し、すぐに混合し、そして氷上に3〜5分間静置した。1mLの3M KClを直接添加し、そして混合した、そして得られた懸濁液を1.0N HClを用いてpH4.5に調整し、次にNaOH水溶液を用いてpH7.0に中和した。未加工のライセートを4℃で15,000g、20分間遠心分離した。この沈殿物を70μmナイロン製細胞ろ過器を用いたろ過により除去した。【0016】次に、プラスミド含有ライセート(892μg/mL)の5mLアリコートをセラミック・ハイドロキシアパタイト・カラム(平均粒子サイズ20μm±10、公称孔直径800〜1,000Å、カートリッジ容量5mLのBio−Rad Laboratories,Inc.,製ECONO−PAC CHT IIカートリッジ)上に注入した。このカラムを、5倍量の、1mM EDTA、pH7.0を加えた10mMリン酸ナトリウムを用いて洗浄し、続いて1.5mL/分の流速で10カラム容量に渡ってリン酸ナトリウム濃度を0.4Mまで上げた線形グラジエントにより洗浄した。【0017】溶出物を254nmで観察し、そして画分を収集し、かつDNA含量について260nmで及びタンパク質含量について280nmで分光光度法で分析した。図1は、課せられた伝導度(ラインA、リン酸ナトリウム・グラジエントを反映する)、計測された伝導度(ラインB)、及び吸光度(ラインC、画分の原寸として吸光度単位で表される)を表すクロマトグラムのトレースである。番号付けした画分を前記トレースの上部の縁に表し、そして経過時間を下部の縁に表した。次に、このプラスミドの純度を0.8%アガロース・ゲルを用いた電気泳動により測定した。当該クロマトグラムの対照サンプルを用いて実施した対応のクロマトグラムとの比較は画分35〜37に渡るピークが純粋なプラスミドDNAであることを示した。【0018】これらの3の画分及び対照を、この画分が純粋なプラスミドDNAであることを確認する、単独の0.8%アガロース・ゲルを用いた別個のレーンでの電気泳動により分析した。【0019】別個に、画分35〜37をEcoRI制限酵素を用いて消化し、そして未消化と消化状態の両方を0.8%アガロース・ゲルを用いた電気泳動により分析した。前記ゲルの実験は、線形になった(消化された)DNAよりもスーパーコイルDNA(消化されなかった)DNAが速いことを示し、画分35〜37がプラスミドDNAを含むことを確認した。【0020】先の記載を説明するために提供する。さまざまな物質、試薬、操作条件、及び手順ステップの修飾、並びに置換が本発明の範囲内にあることは、これらの記載の解釈により当業者に明らかである。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明に従い準備された細菌細胞ライセートを注入したハイドロキシアパタイト・カラムからの溶出液の吸光度のクロマトグラフ・トレースである。 生物細胞からのプラスミドDNAの抽出方法であって、以下のステップ: (a)上記細胞をアルカリ性溶解剤と接触させて細胞ライセートを形成し; (b)上記細胞ライセートを無機塩の存在下、鉱酸を用いてpH4.0〜5.0に酸性化して沈殿物及び上清の形成を引き起こし; (c)上記上清を上記沈殿物から分離し、さらに上記上清をpH7.0〜7.5に中和し;そして (d)上記の中和した上清を、ハイドロキシアパタイト・クロマトグラフ媒体に直接適用し、そして精製されたプラスミドDNAを上記媒体から溶出する、を含む上記方法。 前記ステップ(b)が、塩化アルカリ金属及びアルカリ土類金属から成る群から選ばれるメンバーの存在下、塩酸を用いて前記細胞ライセートを酸性化することを含む、請求項1に記載の方法。 前記ステップ(b)が、塩化ナトリウム及び塩化カリウムから成る群から選ばれるメンバーの存在下、塩酸を用いて前記細胞ライセートを酸性化することを含む、請求項1に記載の方法。 前記ステップ(b)が、塩化カリウムの存在下、塩酸を用いて前記細胞ライセートを酸性化することを含む、請求項1に記載の方法。 前記ステップ(b)が、塩化アルカリ及びアルカリ土類金属から成る群から選ばれるメンバーの存在下、塩酸を用いてpH4.5〜5.0に前記細胞ライセートを酸性化することを含む、請求項1に記載の方法。 前記ハイドロキシアパタイト・クロマトグラフ媒体が、焼結したハイドロキシアパタイトである、請求項1に記載の方法。 前記ステップ(d)が、塩グラジエントを用いて前記精製されたプラスミドDNAを溶出することを含む、請求項1に記載の方法。