タイトル: | 公表特許公報(A)_エンテロウイルス検出のための細胞 |
出願番号: | 2002584851 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12N15/09,C12N5/10,C12Q1/04 |
ファン ユン ティー. JP 2005501520 公表特許公報(A) 20050120 2002584851 20020424 エンテロウイルス検出のための細胞 ダイアグノスティック ハイブリッズ インコーポレーテッド 503393146 清水 初志 100102978 橋本 一憲 100108774 新見 浩一 100128048 ファン ユン ティー. US 09/844,311 20010427 7 C12N15/09 C12N5/10 C12Q1/04 JP C12N15/00 A C12Q1/04 C12N5/00 B AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,CH,CY,DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,PH,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZA,ZW US2002012937 20020424 WO2002087499 20021107 191 20031027 4B024 4B063 4B065 4B024AA11 4B024BA80 4B024CA02 4B024DA02 4B024DA03 4B024DA06 4B024EA04 4B024GA11 4B024GA18 4B024HA11 4B063QA01 4B063QA18 4B063QA19 4B063QQ10 4B063QQ13 4B063QR77 4B063QR80 4B063QS24 4B063QS38 4B063QX01 4B065AA90X 4B065AA93X 4B065AA93Y 4B065AA95X 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA02 4B065CA24 4B065CA46 【技術分野】【0001】発明の分野本発明は、エンテロウイルスの迅速検出のために有用な細胞系に関する。特に、本発明は、単一細胞型(single-cell type)および混合細胞型(mixed-cell type)の培養物においてエンテロウイルスによる感染に対する感度の増大を示し、広範囲のエンテロウイルスによる感染に対する許容性を有する、トランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系に関する。本発明はさらに、エンテロウイルス検出のためのトランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞にも関する。【背景技術】【0002】発明の背景エンテロウイルスは、北米において毎年、晩夏から初秋までの時期に流行を引き起こしている。感染個体の大半は無症候性であるが、それにもかかわらず、無菌性髄膜炎、脳炎、麻痺、心筋炎、呼吸器疾患および胃腸疾患、筋障害、発疹およびライ症侯群を含む広範囲の疾患の原因となるエンテロウイルスを伝染する能力がある。年少の小児の場合、エンテロウイルスは無菌性髄膜炎の原因となる。このため、エンテロウイルス感染の早期発見は疾患の管理のために極めて重要である。【0003】このため、臨床試験材料からエンテロウイルスを検出および/または単離するために、従来技術により用いられてきた1つのアプローチは、エンテロウイルスによる感染に対する感受性のある単一の細胞種、例えばバッファローミドリザル腎臓(BGMK)細胞およびヒト肺粘液性類表皮癌細胞(NCI-H292、H292とも呼ばれる)などを含む細胞培養物を用いることである。しかし、BGMK細胞は、コクサッキーBウイルスなどのいくつかのエンテロウイルスに対する感度は高いが、エコーウイルスなどの他のエンテロウイルスに対する感度は乏しい。同様に、種々のエンテロウイルスに対するH292細胞の感度には差がある。【0004】臨床試験材料からより広範囲のエンテロウイルスを検出および/または単離するために従来技術によって用いられてきたもう1つのアプローチは、エンテロウイルスに対する感受性のある細胞の組み合わせ[初代サル腎細胞など、および、BGMK細胞、ヒト横紋筋肉腫(RD)細胞、ヒト類表皮癌(A-549)細胞、MRC-5細胞などの細胞系など]を用いることである。しかし、この多細胞型アプローチを用いた場合であっても、H292またはBGMK細胞を採用した場合であっても、従来技術のシェルバイアル培養物および試験管培養物は、エンテロウイルスを検出するのにそれぞれ約3日〜約5日を必要とする。【0005】このため、エンテロウイルスの迅速検出が可能になるようにエンテロウイルスに対する感度が増大した細胞、および複数の種類のエンテロウイルスの検出が可能になるようにエンテロウイルスに対してより広範囲の感受性を有する細胞が必要とされている。【発明の開示】【0006】発明の概要本発明は、エンテロウイルスの迅速検出のために有用な細胞系を提供する。特に、本発明は、トランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞系およびトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系を提供する。トランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系は、エンテロウイルス検出のために現在用いられている他の細胞種と比較して、単一細胞型および混合細胞型の培養物におけるエンテロウイルスによる感染に対する感度が高い。また、本発明のトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系は、その由来となった細胞種と比較して、多数のエンテロウイルスによる感染に対して許容性がある。【0007】特に、本発明は、BGMK-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系を提供する。【0008】本発明はさらに、BGMK-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系から樹立された細胞系であって、以下からなる群より選択される特性を有する樹立細胞系を提供する:(a)バッファローミドリザル腎細胞系と比較して、1つまたは複数のエンテロウイルスに対する感度が高いこと;ならびに(b)エコーウイルス-6およびエコーウイルス-11からなる群より選択されるエコーウイルスに対する許容性。1つの態様において、本細胞系は、BGMK-hDAFと命名された細胞系のエンテロウイルスに対する感度を有する。もう1つの態様において、エンテロウイルスは、ポリオウイルス、コクサッキーAウイルス、コクサッキーBウイルス、エコーウイルス、ならびにエンテロウイルス68型、69型、70型および71型からなる群より選択される。【0009】また、ヒト崩壊促進因子を発現するトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系であって、以下からなる群より選択される特性を有する細胞系も、本発明によって提供される:(a)バッファローミドリザル腎細胞系と比較して、1つまたは複数のエンテロウイルスに対する感度が高いこと;ならびに(b)エコーウイルス-6およびエコーウイルス-11からなる群より選択されるエコーウイルスに対する許容性。1つの態様において、ヒト崩壊促進因子は、配列番号:1および配列番号:3から選択される配列によってコードされる。もう1つの態様において、トランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系は、BGMK-hDAFと命名された細胞系のエンテロウイルスに対する感度を有する。さらにもう1つの態様において、細胞系はBGMK-hDAFである。1つの別の態様において、エンテロウイルスは、ポリオウイルス、コクサッキーAウイルス、コクサッキーBウイルス、エコーウイルス、ならびにエンテロウイルス68型、69型、70型および71型から選択される。1つの好ましい態様において、エコーウイルスは、エコーウイルス-4、エコーウイルス-6、エコーウイルス-7、エコーウイルス-9、エコーウイルス-11、エコーウイルス-30からなる群より選択される。1つの代替的な態様において、コクサッキーウイルスは、コクサッキーウイルスBl、コクサッキーウイルスB2、コクサッキーウイルスB4、コクサッキーウイルスB5およびコクサッキーウイルスA9からなる群より選択される。【0010】本発明はさらに、ヒト崩壊促進因子を発現するトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞を含む組成物であって、細胞が、以下からなる群より選択される特性を有する組成物を提供する:(a)バッファローミドリザル腎細胞系と比較して、1つまたは複数のエンテロウイルスに対する感度が高いこと;ならびに(b)エコーウイルス-6およびエコーウイルス-11からなる群より選択されるエコーウイルスに対する許容性。1つの態様において、組成物はさらにトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系以外の細胞種を含み、トランスジェニック・バッファローミドリザル腎臓細胞およびその細胞種は混合細胞型培養下にある。もう1つの態様において、細胞種は、CCD-13 Lu、CCD-8 Lu、CCD-14 Br、CCD-16 Lu、CCD-18 Lu、CCD-19 Lu、Hs888 Lu、MRC-9、CCD-25 Lu、WiDr、DLD-1、COLO205、HCT-15、SW 480、LOVO、SW403、SW48、SW116、SW1463、SW837、SW948、SW1417、FHs74 Int、HCT-8、HCT-116、T84、NCI-H747、NCI-H508、LS123、CaCo-2、HT-29、SK-CO-1、HuTu 80、A253、A704、Hela、Hela、Hela53、L-132、腸(Intestine)、BHK-21、Hak、KB、Hep-2、Wish、Detroit 532、FL、Detroit 525、Detroit 529、Detroit 510、WI-38、WI-38 VA13、シトルリン血症(Citrullinemia)、Spik(NBL-10)、Detroit 539、Cridu Chat、WI26 VA4、BeWo、SW-13、Detroit 548、Detroit 573、HT-1080、HG 261、C211、Amdur II、CHP 3(M.W.)、CHP 4(W.W.)、RD、HEL 299、Detroit 562、MRC-5、A-549、IMR-90、LS180、LS174T、BGMK、CV-1およびCV-1-hDAFからなる群より選択される。1つの好ましい態様において、細胞種は、RD細胞、H292細胞、A549細胞、MRC-5細胞、KB細胞およびCaCo-2細胞からなる群より選択される。より好ましい1つの態様において、細胞種はCaCo-2細胞である。【0011】本発明はまた、BGMK-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞を含む組成物も提供する。1つの態様において、本組成物はさらに、BGMK-hDAF細胞以外の細胞種を含み、BGMK-hDAF細胞およびその細胞種は混合細胞型培養下にある。1つの代替的な態様において、細胞種は、CCD-13 Lu、CCD-8 Lu、CCD-14 Br、CCD-16 Lu、CCD-18 Lu、CCD-19 Lu、Hs888 Lu、MRC-9、CCD-25 Lu、WiDr、DLD-1、COLO205、HCT-15、SW 480、LOVO、SW403、SW48、SW116、SW1463、SW837、SW948、SW1417、FHs74 Int、HCT-8、HCT-116、T84、NCI-H747、NCI-H508、LS123、CaCo-2、HT-29、SK-CO-1、HuTu 80、A253、A704、Hela、Hela、Hela53、L-132、腸(Intestine)、BHK-21、Hak、KB、Hep-2、Wish、Detroit 532、FL、Detroit 525、Detroit 529、Detroit 510、WI-38、WI-38 VA13、シトルリン血症(Citrullinemia)、Spik(NBL-10)、Detroit 539、Cridu Chat、WI26 VA4、BeWo、SW-13、Detroit 548、Detroit 573、HT-1080、HG 261、C211、Amdur II、CHP 3(M.W.)、CHP 4(W.W.)、RD、HEL 299、Detroit 562、MRC-5、A-549、IMR-90、LS180、LS174T、BGMK、CV-1およびCV-1-hDAFからなる群より選択される。もう1つの態様において、細胞種は、RD細胞、H292細胞、A549細胞、MRC-5細胞、KB細胞およびCaCo-2細胞からなる群より選択される。より好ましい1つの態様において、細胞種はCaCo-2細胞である。【0012】BGMK-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系から樹立された細胞を含む組成物であって、樹立細胞が、以下からなる群より選択される特性を有する組成物も、本明細書中に提供される:(a)バッファローミドリザル腎細胞系と比較して、1つまたは複数のエンテロウイルスに対する感度が高いこと;ならびに(b)エコーウイルス-6およびエコーウイルス-11からなる群より選択されるエコーウイルスに対する許容性。1つの態様において、本組成物はさらに樹立細胞以外の細胞種を含み、樹立細胞およびその細胞種は混合細胞型培養下にある。もう1つの態様において、細胞種は、CCD-13 Lu、CCD-8 Lu、CCD-14 Br、CCD-16 Lu、CCD-18 Lu、CCD-19 Lu、Hs888 Lu、MRC-9、CCD-25 Lu、WiDr、DLD-1、COLO205、HCT-15、SW 480、LOVO、SW403、SW48、SW116、SW1463、SW837、SW948、SW1417、FHs74 Int、HCT-8、HCT-116、T84、NCI-H747、NCI-H508、LS123、CaCo-2、HT-29、SK-CO-1、HuTu 80、A253、A704、Hela、Hela、Hela53、L-132、腸(Intestine)、BHK-21、Hak、KB、Hep-2、Wish、Detroit 532、FL、Detroit 525、Detroit 529、Detroit 510、WI-38、WI-38 VA13、シトルリン血症(Citrullinemia)、Spik(NBL-10)、Detroit 539、Cridu Chat、WI26 VA4、BeWo、SW-13、Detroit 548、Detroit 573、HT-1080、HG 261、C211、Amdur II、CHP 3(M.W.)、CHP 4(W.W.)、RD、HEL 299、Detroit 562、MRC-5、A-549、IMR-90、LS180、LS174T、BGMK、CV-1およびCV-1-hDAFからなる群より選択される。1つの好ましい態様において、細胞種は、RD細胞、H292細胞、A549細胞、MRC-5細胞、KB細胞およびCaCo-2細胞からなる群より選択される。より好ましい1つの態様において、細胞種はCaCo-2細胞である。【0013】本発明はさらに、試料中のエンテロウイルス検出のための方法であって、以下の段階を含む方法も提供する:a)i)試料、およびii)BGMK-hDAFと命名された細胞を含む組成物を提供する段階;b)細胞に試料を接種して、接種された細胞を産生する段階;ならびにc)接種された細胞をエンテロウイルスの存在に関して観察する段階。1つの態様において、エンテロウイルスは、ポリオウイルス、コクサッキーAウイルス、コクサッキーBウイルス、エコーウイルス、ならびにエンテロウイルス68型、69型、70型および71型からなる群より選択される。もう1つの態様において、組成物はさらにBGMK-hDAF細胞以外の細胞種を含み、BGMK-hDAF細胞およびその細胞種は混合細胞型培養下にある。1つの別の態様において、細胞種は、CCD-13 Lu、CCD-8 Lu、CCD-14 Br、CCD-16 Lu、CCD-18 Lu、CCD-19 Lu、Hs888 Lu、MRC-9、CCD-25 Lu、WiDr、DLD-1、COLO205、HCT-15、SW 480、LOVO、SW403、SW48、SW116、SW1463、SW837、SW948、SW1417、FHs74 Int、HCT-8、HCT-116、T84、NCI-H747、NCI-H508、LS123、CaCo-2、HT-29、SK-CO-1、HuTu 80、A253、A704、Hela、Hela、Hela53、L-132、腸(Intestine)、BHK-21、Hak、KB、Hep-2、Wish、Detroit 532、FL、Detroit 525、Detroit 529、Detroit 510、WI-38、WI-38 VA13、シトルリン血症(Citrullinemia)、Spik(NBL-10)、Detroit 539、Cridu Chat、WI26 VA4、BeWo、SW-13、Detroit 548、Detroit 573、HT-1080、HG 261、C211、Amdur II、CHP 3(M.W.)、CHP 4(W.W.)、RD、HEL 299、Detroit 562、MRC-5、A-549、IMR-90、LS180、LS174T、BGMK、CV-1およびCV-1-hDAFからなる群より選択される。1つの好ましい態様において、細胞種は、RD細胞、H292細胞、A549細胞、MRC-5細胞、KB細胞およびCaCo-2細胞からなる群より選択される。より好ましい1つの態様において、細胞種はCaCo-2細胞である。【0014】本発明はまた、CV-1-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系も提供する。【0015】さらに、CV-1-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系から樹立された細胞系であって、以下からなる群より選択される特性を有する樹立細胞系も提供される:(a)CV-1細胞系と比較して、1つまたは複数のエンテロウイルスに対する感度が高いこと;ならびに(b)CV-1が許容性を有さない1つまたは複数のエンテロウイルスに対する許容性。1つの態様において、本細胞系はCV-1-hDAFと命名された細胞系のエンテロウイルスに対する感度を有する。もう1つの態様において、エンテロウイルスは、ポリオウイルス、コクサッキーAウイルス、コクサッキーBウイルス、エコーウイルス、ならびにエンテロウイルス68型、69型、70型および71型からなる群より選択される。【0016】本発明はまた、ヒト崩壊促進因子を発現するトランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞系であって、以下からなる群より選択される特性を有する細胞系も提供する:(a)CV-1細胞系と比較して、1つまたは複数のエンテロウイルスに対する感度が高いこと;ならびに(b)CV-1が許容性を有さない1つまたは複数のエンテロウイルスに対する許容性。1つの好ましい態様において、ヒト崩壊促進因子は、配列番号:1および配列番号:3から選択される配列によってコードされる。もう1つの好ましい態様において、トランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞系は、CV-1-hDAFと命名された細胞系のエンテロウイルスに対する感度を有する。1つの代替的な態様において、細胞系はCV-1-hDAFである。さらにもう1つの態様において、エンテロウイルスは、ポリオウイルス、コクサッキーAウイルス、コクサッキーBウイルス、エコーウイルス、ならびにエンテロウイルス68型、69型、70型および71型からなる群より選択される。さらなる1つの態様において、エコーウイルスは、エコーウイルス-4、エコーウイルス-6、エコーウイルス-7、エコーウイルス-9、エコーウイルス-11およびエコーウイルス-30からなる群より選択される。1つの別の態様において、コクサッキーウイルスは、コクサッキーウイルスB1、コクサッキーウイルスB2、コクサッキーウイルスB4、コクサッキーウイルスB5およびコクサッキーウイルスA9からなる群より選択される。【0017】また、ヒト崩壊促進因子を発現するトランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞を含む組成物であって、細胞が、以下からなる群より選択される特性を有する組成物も、本明細書中に提供される:(a)CV-1細胞系と比較して、1つまたは複数のエンテロウイルスに対する感度が高いこと;ならびに(b)CV-1が許容性を有さない1つまたは複数のエンテロウイルスに対する許容性。1つの態様において、本組成物はさらにトランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞系以外の細胞種を含み、トランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞およびその細胞種は混合細胞型培養下にある。1つの代替的な態様において、細胞種は、CCD-13 Lu、CCD-8 Lu、CCD-14 Br、CCD-16 Lu、CCD-18 Lu、CCD-19 Lu、Hs888 Lu、MRC-9、CCD-25 Lu、WiDr、DLD-1、COLO205、HCT-15、SW 480、LOVO、SW403、SW48、SW116、SW1463、SW837、SW948、SW1417、FHs74 Int、HCT-8、HCT-116、T84、NCI-H747、NCI-H508、LS123、CaCo-2、HT-29、SK-CO-1、HuTu 80、A253、A704、Hela、Hela、Hela53、L-132、腸(Intestine)、BHK-21、Hak、KB、Hep-2、Wish、Detroit 532、FL、Detroit 525、Detroit 529、Detroit 510、WI-38、WI-38 VA13、シトルリン血症(Citrullinemia)、Spik(NBL-10)、Detroit 539、Cridu Chat、WI26 VA4、BeWo、SW-13、Detroit 548、Detroit 573、HT-1080、HG 261、C211、Amdur II、CHP 3(M.W.)、CHP 4(W.W.)、RD、HEL 299、Detroit 562、MRC-5、A-549、IMR-90、LS180、LS174T、BGMK、BGMK-hDAFおよびCV-1からなる群より選択される。1つの好ましい態様において、細胞種は、RD細胞、H292細胞、A549細胞、MRC-5細胞、KB細胞およびCaCo-2細胞からなる群より選択される。より好ましい1つの態様において、細胞種はCaCo-2細胞である。【0018】本発明はさらに、CV-1-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞を含む組成物を提供する。1つの態様において、本組成物はさらにCV-1-hDAF細胞以外の細胞種を含み、CV-1-hDAF細胞およびその細胞種は混合細胞型培養下にある。1つの代替的な態様において、細胞種は、CCD-13 Lu、CCD-8 Lu、CCD-14 Br、CCD-16 Lu、CCD-18 Lu、CCD-19 Lu、Hs888 Lu、MRC-9、CCD-25 Lu、WiDr、DLD-1、COLO205、HCT-15、SW 480、LOVO、SW403、SW48、SW116、SW1463、SW837、SW948、SW1417、FHs74 Int、HCT-8、HCT-116、T84、NCI-H747、NCI-H508、LS123、CaCo-2、HT-29、SK-CO-1、HuTu 80、A253、A704、Hela、Hela、Hela53、L-132、腸(Intestine)、BHK-21、Hak、KB、Hep-2、Wish、Detroit 532、FL、Detroit 525、Detroit 529、Detroit 510、WI-38、WI-38 VA13、シトルリン血症(Citrullinemia)、Spik(NBL-10)、Detroit 539、Cridu Chat、WI26 VA4、BeWo、SW-13、Detroit 548、Detroit 573、HT-1080、HG 261、C211、Amdur II、CHP 3(M.W.)、CHP 4(W.W.)、RD、HEL 299、Detroit 562、MRC-5、A-549、IMR-90、LS180、LS174T、BGMK、BGMK-hDAFおよびCV-1からなる群より選択される。1つの好ましい態様において、細胞種は、RD細胞、H292細胞、A549細胞、MRC-5細胞、KB細胞およびCaCo-2細胞からなる群より選択される。より好ましい1つの態様において、細胞種はCaCo-2細胞である。【0019】CV-1-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系から樹立された細胞を含む組成物であって、樹立細胞が、以下からなる群より選択される特性を有する組成物も、本発明によって提供される:(a)CV-1細胞系と比較して、1つまたは複数のエンテロウイルスに対する感度が高いこと;ならびに(b)CV-1が許容性を有さない1つまたは複数のエンテロウイルスに対する許容性。1つの態様において、組成物はさらに樹立細胞以外の細胞種を含み、樹立細胞およびその細胞種は混合細胞型培養下にある。もう1つの態様において、細胞種は、CCD-13 Lu、CCD-8 Lu、CCD-14 Br、CCD-16 Lu、CCD-18 Lu、CCD-19 Lu、Hs888 Lu、MRC-9、CCD-25 Lu、WiDr、DLD-1、COLO205、HCT-15、SW 480、LOVO、SW403、SW48、SW116、SW1463、SW837、SW948、SW1417、FHs74 Int、HCT-8、HCT-116、T84、NCI-H747、NCI-H508、LS123、CaCo-2、HT-29、SK-CO-1、HuTu 80、A253、A704、Hela、Hela、Hela53、L-132、腸(Intestine)、BHK-21、Hak、KB、Hep-2、Wish、Detroit 532、FL、Detroit 525、Detroit 529、Detroit 510、WI-38、WI-38 VA13、シトルリン血症(Citrullinemia)、Spik(NBL-10)、Detroit 539、Cridu Chat、WI26 VA4、BeWo、SW-13、Detroit 548、Detroit 573、HT-1080、HG 261、C211、Amdur II、CHP 3(M.W.)、CHP 4(W.W.)、RD、HEL 299、Detroit 562、MRC-5、A-549、IMR-90、LS180、LS174T、BGMK、BGMK-hDAFおよびCV-1からなる群より選択される。1つの好ましい態様において、細胞種は、RD細胞、H292細胞、A549細胞、MRC-5細胞、KB細胞およびCaCo-2細胞からなる群より選択される。より好ましい1つの態様において、細胞種はCaCo-2細胞である。【0020】本発明はまた、試料中のエンテロウイルス検出のための方法であって、以下の段階を含む方法も提供する:a)i)試料、およびii)CV-1-hDAFと命名された細胞を含む組成物を提供する段階;b)細胞に試料を接種して、接種された細胞を産生する段階;ならびにc)接種された細胞をエンテロウイルスの存在に関して観察する段階。1つの態様において、エンテロウイルスは、ポリオウイルス、コクサッキーAウイルス、コクサッキーBウイルス、エコーウイルス、ならびにエンテロウイルス68型、69型、70型および71型からなる群より選択される。もう1つの態様において、組成物はさらにCV-1-hDAF細胞以外の細胞種を含み、CV-1-hDAF細胞およびその細胞種は混合細胞型培養下にある。1つの代替的な態様において、細胞種は、CCD-13 Lu、CCD-8 Lu、CCD-14 Br、CCD-16 Lu、CCD-18 Lu、CCD-19 Lu、Hs888 Lu、MRC-9、CCD-25 Lu、WiDr、DLD-1、COLO205、HCT-15、SW 480、LOVO、SW403、SW48、SW116、SW1463、SW837、SW948、SW1417、FHs74 Int、HCT-8、HCT-116、T84、NCI-H747、NCI-H508、LS123、CaCo-2、HT-29、SK-CO-1、HuTu 80、A253、A704、Hela、Hela、Hela53、L-132、腸(Intestine)、BHK-21、Hak、KB、Hep-2、Wish、Detroit 532、FL、Detroit 525、Detroit 529、Detroit 510、WI-38、WI-38 VA13、シトルリン血症(Citrullinemia)、Spik(NBL-10)、Detroit 539、Cridu Chat、WI26 VA4、BeWo、SW-13、Detroit 548、Detroit 573、HT-1080、HG 261、C211、Amdur II、CHP 3(M.W.)、CHP 4(W.W.)、RD、HEL 299、Detroit 562、MRC-5、A-549、IMR-90、LS180、LS174T、BGMK、BGMK-hDAFおよびCV-1からなる群より選択される。1つの好ましい態様において、細胞種は、RD細胞、H292細胞、A549細胞、MRC-5細胞、KB細胞およびCaCo-2細胞からなる群より選択される。より好ましい1つの態様において、細胞種はCaCo-2細胞である。【0021】定義本発明の理解を容易にするために、数多くの用語について以下に定義する。【0022】本明細書および特許請求の範囲における「試料」および「検体」という用語は、生物的または環境的な供給源、ならびに生物試料または環境試料と接触させる試料採取用具(例えば、綿棒)から入手される、および/またはそれらに由来する、任意の組成物を含むように、それらの最も広い意味において使用される。「生物試料」には、動物(ヒト、家畜、ならびに有蹄類、熊、魚類、ウサギ、齧歯類などの野生動物(feral or wild animal))から得られたもの、尿、血液、糞便、脳脊髄液(CSF)、精液、喀痰および唾液などの体液、ならびに固形組織が含まれる。また、乳製品、野菜、肉類、肉の副産物などの食品および食品製品、ならびに廃棄物から入手した試料も含まれる。「環境試料」には、表層物質、土壌、水、および産業試料などの環境物質のほかに、食品および乳製品を加工する計器、装置、設備、使い捨て用品、および使い捨てでない用品から得られた試料が含まれる。これらの例は、本発明に適用しうる試料の種類を限定するものと解釈されるべきではない。【0023】本明細書において用いる「細胞種」という用語は、その供給源または特徴にかかわらず、任意の細胞を指す。【0024】本明細書において用いる「微生物」という用語は、顕微鏡的または超顕微鏡的なサイズの任意の生物を指し、これにはウイルス、細菌および原生動物が非制限的に含まれる。【0025】本明細書において用いる「培養物」という用語は、1つもしくは複数の微生物、および/または1つもしくは複数の細胞を含む組成物を指し、これは液体、ゲルまたは固体のいずれでもよい。生物体および/または細胞の培養物は純粋なものでも混合性でもよい。例えば、本明細書において用いる生物体の「純粋培養物」とは、存在する生物体が特定の属の単一の種のただ一つの系統のものである培養物を指す。これは、単一の属および/または種の微生物の複数の系統が存在する培養物を指す、生物体の「混合培養物」とは対照的である。【0026】本明細書において用いる「培養培地」および「細胞培養培地」という用語は、インビトロにある細胞(すなわち、細胞培養物)の維持および/または増殖を支持するのに適した培地を指す。【0027】「初代細胞」とは、動物の組織または臓器から直接得られた細胞を指し、細胞が培養下にあるか否かは問わない。【0028】「培養細胞」とは、インビトロで維持および/または増殖された細胞を指す。培養細胞には初代培養細胞および細胞系が含まれる。【0029】「初代培養細胞」とは、インビトロ培養下にある細胞を指し、これは好ましくは(必然的ではない)、老化および/または増殖停止に至るまでに、インビトロ培養下で10回またはそれより少ない回数の継代を行うことができる。【0030】「細胞系」および「不死化細胞」という用語は、増殖停止および/または老化に至るまでに、同じ供給源からの初代細胞と比較して、より多くの回数のインビトロ細胞分裂を行える細胞を指す。細胞系には、培養下で無限回数の細胞分裂を行いうる細胞が非制限的に含まれる。細胞分裂の回数は、インビトロ培養下で細胞集団を継代(すなわち、継代培養)しうる回数によって決定しうる。細胞の継代は当技術分野で知られた方法によって行える。簡潔に述べると、固体基質(例えば、プラスチック製ペトリ皿)に付着したコンフルエントまたはサブコンフルエント状態の細胞集団を、基質から遊離させ(例えば、酵素消化により)、遊離した細胞のある割合(例えば、10%)を新たな基質上に播種する。細胞を基質に付着させ、適切な培養培地の存在下で増殖させる。付着した細胞の増殖能は、付着細胞による固体基質の被覆の増加を一定の期間にわたって観察することによって視覚的に判定しうる。または、付着細胞の増殖を、固体支持体に最初に付着した細胞を一定期間にわたって維持し、付着細胞の採取および算定を行い、維持された付着細胞の増加を観察して、最初に付着した細胞の数と比較することによって評価してもよい。【0031】細胞系は自然発生的に生じさせてもよく、形質転換によって作製してもよい。「自然発生的細胞系」とは、細胞の日常的培養中に生じる細胞系を指す。「形質転換細胞系」とは、人為的介入による、初代細胞または有限細胞系(finite cell line)への核酸(通常はDNA)を含む「導入遺伝子」の導入によって作製された細胞系を指す。【0032】細胞系には、有限細胞系および連続細胞系(continuous cell line)が非制限的に含まれる。本明細書において用いる「有限細胞系」とは、老化に至るまでに有限数(約1回〜約50回、より好ましくは約1回〜約40回、最も好ましくは約1回〜約20回)の細胞分裂を行える細胞を指す。【0033】「連続細胞系」という用語は、約50回を上回る(より好ましくは無限回数の)細胞分裂を行える細胞系を指す。連続細胞系は一般に(必然的にではないが)、その由来となった有限細胞系または初代培養細胞と比較して、細胞サイズが小さい、増殖速度が大きい、クローニング効率が高い、腫瘍原性が高い、および/または染色体の全数量がさまざまであるという一般的な特徴もある。【0034】本明細書において用いる「導入遺伝子」という用語は、実験操作によって細胞に導入される任意の核酸配列を指す。導入遺伝子は「内因性DNA配列」または「異種DNA配列」(すなわち「外因性DNA」)のいずれでもよい。「内因性DNA配列」という用語は、天然の配列と比較して何らかの改変(例えば、点変異、選択マーカー遺伝子の存在など)を含まない限り、それが導入される細胞内に自然下で認められるヌクレオチド配列を指す。「異種DNA配列」という用語は、自然下では連結されていない核酸配列、または自然下では異なる位置で連結されている核酸配列と連結された、または連結されるように操作される、ヌクレオチド配列を指す。異種DNAは、それが導入される細胞に対して内因性ではないが、別の細胞から入手される。異種DNAには、何らかの改変を含む内因性DNA配列も含まれる。一般に(必然的にではないが)、異種DNAは、それが内部で発現される細胞によって通常は産生されないRNAおよびタンパク質をコードする。異種DNAの例には、レポーター遺伝子、転写調節配列および翻訳調節配列、選択マーカータンパク質(例えば、薬剤耐性を付与するタンパク質)などが含まれる。【0035】「関心対象のヌクレオチド配列」という用語は、その操作が当業者からみて何らかの理由で望ましいと考えられる任意のヌクレオチド配列を指す。関心対象のヌクレオチド配列には、構造遺伝子のコード配列(例えば、レポーター遺伝子、選択マーカー遺伝子、癌遺伝子、薬剤耐性遺伝子、増殖因子など)およびmRNAまたはタンパク質産物をコードしない非コード性調節配列(例えば、プロモーター配列、ポリアデニル化配列、終結配列、エンハンサー配列など)が非制限的に含まれる。【0036】「エンテロウイルス(enterovirus)」という用語は、以前に記載されているように[Fieldes、「ウイルス学(Virology)」(1996)、第3版、発行:Lippincott S. Raben、第22章]、ピコルナウイルス科に属するRNAウイルスを指す。エンテロウイルスは、センスRNAおよび非エンベロープ性ウイルス粒子を有する。エンテロウイルスには、ポリオウイルス、コクサッキーAウイルス、コクサッキーBウイルス、エコーウイルス、ならびにエンテロウイルス68型、69型、70型および71型が非制限的に含まれる。ポリオウイルスの例には、限定的ではないが、ポリオウイルス1型、2型および3型がある。コクサッキーAウイルスには、コクサッキーウイルスA1型、A2型、A3型、A4型、A5型、A6型、A7型、A8型、A9型、A10型、A11型、A12型、A13型、A14型、A15型、A16型、A17型、A18型、A19型、A20型、A21型およびA24型が非制限的に含まれる。コクサッキーBウイルスの例には、コクサッキーウイルスB1型、B2型、B3型、B4型、B5型およびB6型がある。エコーウイルスには例えば、エコーウイルス1型、2型、3型、4型、5型、6型、7型、8型、9型、11型、12型、13型、14型、15型、16型、17型、18型、19型、20型、21型、22型、23型、24型、25型、26型、27型、29型、30型、31型、32型、33型および34型が含まれる。【0037】発明の説明本発明は、エンテロウイルスの迅速検出のために有用な細胞系を提供する。特に、本発明は、トランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞系およびトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系を提供する。本発明のトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系は、エンテロウイルスの検出用に現在用いられている他の細胞種と比較して、単一細胞型および混合細胞型の培養物におけるエンテロウイルスによる感染に対する感度が高い。また、本発明のトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系は、それらの由来となった細胞種と比較して、多数のエンテロウイルスによる感染に対する許容性がある。【0038】より詳細には、本発明は、ヒト崩壊促進因子(hDAF)を発現する、トランスジェニック・アフリカミドリザル腎臓(CV-1)細胞およびトランスジェニック・バッファローミドリザル腎臓(BGMK)細胞を提供する。エンテロウイルスの範囲の拡大、およびエンテロウイルスの検出に関する感受性の向上、ならびに感度のさらなる増大により、本発明のトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞は、臨床実験室におけるエンテロウイルスの迅速検出および/または単離のための有益なツールとなる。特に、本発明のトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系は、広範囲のエンテロウイルスを1日〜2日以内に検出することを可能にする。このことは、従来技術による単一細胞型および混合細胞型の組成物を用いるエンテロウイルス検出には現在4日〜5日必要であることと対照的である。【0039】例えば、本明細書中に提示したデータは、本発明の例示的なBGMK-hDAF細胞は、BGMK細胞と比較して、エンテロウイルスに対する感受性が増大していることを示している。特に、本発明の例示的なBGMK-hDAF細胞は、BGMK細胞と比較して、エコーウイルス-4およびエコーウイルス-9を検出する感度が第1日目で少なくとも10倍高く、エコーウイルス-7およびエコーウイルス-30を検出する感度が第3日目で少なくとも15倍〜20倍高く(実施例2、表2)、コクサッキーウイルスA9、B1およびB5を検出する感度が第1日目で少なくとも15倍〜20倍高かった(実施例2、表3)。さらに、BGMK-hDAFによって33種類の臨床試料中のエンテロウイルスが検出されたのに対してBGMKによる場合は21種類のみであったことから示されるように、本発明の例示的なBGMK-hDAF細胞は、臨床試料中のエンテロウイルスに対する感度がBGMK細胞よりも高かった(実施例7、表10)。【0040】本発明の例示的なBGMK-hDAFは、BGMK細胞よりも低いウイルス力価のエンテロウイルスを検出しうるだけでなく、感染後、BGMK細胞よりも早期にエンテロウイルスを検出した。例えば、感染後第1日目で、本発明の例示的なBGMK-hDAF細胞は、BGMK細胞によって検出された数を上回るエンテロウイルス陽性臨床試料を検出した(実施例3、表4;実施例4、表5)。【0041】重要なことに、本発明の例示的なBGMK-hDAF細胞を含む単一細胞型および混合細胞型の培養物はそれぞれ、検討した他の市販の単一細胞型または混合細胞型の培養物よりも、臨床試料中のエンテロウイルスに対する感度が高かった(実施例7、表9)。例えば、本発明の例示的なBGMK-hDAF細胞の単一細胞型培養物は、検討した他の単一細胞型培養(BGMK細胞、MRC-5細胞、初代アカゲサル腎細胞およびCaco-2細胞を含む)および検討した混合細胞型培養物(RD細胞およびH292細胞の混合物;BGMK細胞およびA549細胞の混合物;RD細胞、H292細胞、BGMK細胞およびA549細胞の混合物;ならびにMRC-5細胞および初代アカゲサル腎細胞の混合物を含む)のどれよりも臨床試料中のエンテロウイルスに対する感度が高かった。同様に、Caco-2細胞および本発明のBGMk-hDAF細胞を含む混合細胞型培養物は、検討した混合細胞型培養物(RD細胞およびH292細胞の混合物;BGMK細胞およびA549細胞の混合物;RD細胞、H292細胞、BGMK細胞およびA549細胞の混合物;ならびにMRC-5細胞および初代アカゲサル腎細胞の混合物を含む)のどれよりも、臨床試料中のエンテロウイルスに対する感度が高かった。【0042】エンテロウイルスに対する感度が増大していることに加えて、本発明の例示的なBGMK-hDAF細胞は、BGMK細胞よりも多数のエンテロウイルスに対する感受性があった。例えば、BGMK細胞はエコーウイルス-6もエコーウイルス-11も検出することができなかったが、本発明の例示的なBGMK-hDAF細胞はエコーウイルス-6およびエコーウイルス-11の両方を検出したことが、本明細書中に提示したデータにより示された(実施例2、表2)。【0043】本発明のトランスジェニックBGMK細胞の特性および利点は、本明細書中に開示するトランスジェニックH292細胞を用いた場合の相反的なデータを考慮すれば、驚くべきものであった。特に、本明細書中に開示したデータは、ヒト崩壊促進因子を発現するベクターによるBGMK細胞のトランスフェクションにより、BGMK細胞のエンテロウイルスに対する感度および許容性がいずれも増大したが、これに対して、同じベクターを用いてH292細胞をトランスフェクトした場合にはエンテロウイルスに対する感度の増大は全く認められなかったことを示している。【0044】以下(A)ヒト崩壊促進因子を発現するトランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞およびバッファローミドリザル腎細胞、(B)本発明のトランスジェニック細胞を含む培養物、ならびに(C)細胞培養物におけるエンテロウイルスの検出のもとで、本発明をさらに説明する。【0045】A.ヒト崩壊促進因子を発現するトランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞およびトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞本発明は、ヒト崩壊促進因子(hDAF)を発現する、トランスジェニック・アフリカミドリザル腎臓(CV-1)細胞およびトランスジェニック・バッファローミドリザル(BGMK)細胞を提供する。崩壊促進因子(DAF)(CD55)は、補体活性化の調節および細胞シグナル伝達に関与する70kDaのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型糖タンパク質である。本発明者らは、DAFがエコーウイルス3、6、7、11、12、13、19、21、24、25、29、30、33、コクサッキーウイルスA21、B1、B3、B5およびエンテロウイルス70の細胞内への侵入に関与すると考えた。例えば、Bergelsonらなど[Bergelsonら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. 91: 6245-6248;Bergelsonら(1995) J. Virol. 69: 1903-1906;Clarksonら(1995) J. Virol. 69: 5497-5501]は、崩壊促進因子(CD55)を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が、エコーウイルス3型、6型、7型、12型、13型、21型、29型、33型と結合しうることを示した。ウイルス結合が抗DAFモノクローナル抗体によって阻止されることも示されている。Powellら[Powellら(1998) J. Gen. Virol. 79: 1707-1713;Powellら(1999) J. Gen. Virol. 80: 3145-3152]は、抗DAFモノクローナル抗体がエコーウイルス11型、19型、24型、25型、30型の横紋筋肉腫(RD)細胞との結合を阻止しうることを示している。Shafrenら[Shafrenら(1995) J. Virol. 69: 3873-3877;Shafrenら(1997) J. Virol. 71:4736-4743]は、エコーウイルスに加えて、コクサッキーウイルスA21がHEp-2細胞およびHeLa B細胞のDAFとも結合することを報告している。Martinoら[Martinoら(1998) Virol. 244: 302-314]およびShafrenら[Shafrenら(1995) 前記]は、コクサッキーウイルスB1、B3、B5のHeLa細胞との結合を抗DAFモノクローナル抗体によって阻止しうることも示した。Karnauchowら[Karnauchowら(1996) J. Virol. 70:5143-5152;Karnauchowら(1998) J. Virol. 72: 9380-9383]によるさらに別の報告は、エンテロウイルス70はHeLa細胞と結合しうるが、この結合を抗DAFモノクローナル抗体によって阻止しうることを示している。マウスNIH3T3細胞におけるDAFの安定的な発現はエンテロウイルス70の複製を支援するが、DAFを発現しないNIH3T3細胞はそのような複製を支援しないことが示されている。【0046】本発明の細胞は、CV-1-hDAFと命名されたトランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞系、およびBGMK-hDAFと命名されたトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系に例示される。本明細書において用いる「BGMK-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系」という用語は、ヒト崩壊促進因子を発現する任意のトランスジェニックミドリザル腎細胞系を指す。本明細書において用いる「CV-1-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系」という用語は、ヒト崩壊促進因子を発現する任意のトランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞系を指す。細胞系CV-1-hDAFおよびBGMK-hDAFは、American Type Culture Collection(12301 Parklawn Drive, Rockville, Md)に寄託される予定である。【0047】しかし、本発明はトランスジェニック細胞系BGMk-hDAFには限定されない。実際には、本発明は、ヒト崩壊促進因子を発現するあらゆるトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系がその範囲に含まれると考えられる。同じく、本発明はトランスジェニック細胞系CV-1-hDAFには限定されず、ヒト崩壊促進因子を発現するあらゆるトランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞系がその範囲に含まれる。【0048】「トランスジェニック」および「遺伝的に操作された」という用語は、バッファローミドリザル腎細胞系に言及している場合、ヒト崩壊促進因子をコードする導入遺伝子を含む、または本明細書に記載の方法などによる人為的介入によるこの種の導入遺伝子の導入によって全ゲノムが改変された、バッファローミドリザル腎臓(BGMK)細胞系(Diagnostic Hybrids, Inc.から購入したBGMK細胞系、カタログ番号53など)を指す。「トランスジェニック」および「遺伝的に操作された」という用語は、アフリカミドリザル腎細胞系に言及している場合、ヒト崩壊促進因子をコードする導入遺伝子を含む、または本明細書に記載の方法などによる人為的介入によるこの種の導入遺伝子の導入によって全ゲノムが改変された、アフリカミドリザル腎臓(CV-1)細胞系(CV-1細胞系、ATCC # CCL 70など)を指す。【0049】「ヒト崩壊促進因子」「ヒト崩壊促進因子アミノ酸配列」「ヒト崩壊促進因子ポリペプチド」という用語は、配列番号:2(図3)および/または配列番号:4(図4)として挙げたポリペプチド配列を指す。また、「ヒト崩壊促進因子」という用語には、それぞれ配列番号:2および/または配列番号:4の生物的機能を有する、配列番号:2および/または配列番号:4の変異体も含まれることが明らかに意図されている。【0050】本明細書において用いる配列番号:2および/または配列番号:4の「変異体」は、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失および/または保存的置換の点で、それぞれ配列番号:2および/または配列番号:4と異なるアミノ酸配列と定義される。アミノ酸の「保存的置換」とは、そのアミノ酸の、疎水性、極性および/または構造が類似した別のアミノ酸による置換を指す。例えば、中性側鎖を有する以下の脂肪族アミノ酸は互いに保存的に置換されうる:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリンおよびトレオニン。互いに保存的に置換されうる、中性側鎖を有する芳香族アミノ酸には、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンが含まれる。システインおよびメチオニンは、互いに保存的に置換されうる含硫アミノ酸である。また、アスパラギンをグルタミンと保存的に置換すること、およびその逆も可能であるが、これは両方のアミノ酸がジカルボン酸アミノ酸のアミドであるためである。加えて、アスパラギン酸(aspartate)をグルタミン酸(glutamate)と保存的に置換することもでき、これは両方とも酸性荷電(親水性)アミノ酸であるためである。同じく、リジン、アルギニンおよびヒスチジンは、それぞれが塩基性荷電(親水性)アミノ酸であるため、互いに保存的に置換されうる。生物活性または免疫活性を損なうことなく、多くのアミノ酸残基のどれをいかにして置換、挿入または除去するかに関する手引きは、当技術分野で周知のコンピュータプログラム、例えば、DNAStarソフトウエアを用いて得ることができる。【0051】配列番号:2および配列番号:4の変異体の例には、配列番号:2のポリペプチド配列に以下の保存的置換の1つが加わったものがあるが、これらには限定されない:Ala5(すなわち、5位のAla)がGlyに変化、Ala6がValに変化、Leu7がAlaに変化、Leu10がGlyに変化、Leu13がIleに変化、Leu21がSerに変化、Cys23がMetに変化、Val27がGlyに変化、Leu44がThrに変化、Thr48がGlyに変化、Ser49がGlyに変化、Val55がAlaに変化、Ile56がGlyに変化、Tyr58がPheに変化、Cys60がMetに変化、Phe64がTyrに変化、Val74がLeuに変化、Cys76がMetに変化、Ser83がAlaに変化、Ile85がAlaに変化、Ala102がThrに変化、Ile109がValに変化、Thr110がAlaに変化、Val116がIleに変化、Val120がSerに変化、Thr148がValに変化、Ala149がGlyに変化、Val171がSerに変化、Leu176がSerに変化、Trp177がTrpに変化、Ser182がValに変化、Leu200がValに変化、Ser202がLeuに変化、Leu212がGlyに変化、Tyr219がTrpに変化、Cys220がMetに変化、Ala222がValに変化、Ile231がLeuに変化、Ile255がThrに変化、Ser259がThrに変化、Ile260がSerに変化、Lys286がArgに変化、Val297がThrに変化、Thr302がLeuに変化、Thr311がSerに変化、Ala320がIleに変化、Ser329がThrに変化、Phe335がTrpに変化、Lys342がArgに変化、Leu362がIleに変化、およびLeu375がThrに変化。【0052】2つのアミノ酸の保存的置換を含む配列番号:2および配列番号:4の変異体の例には、配列番号:2のポリペプチド配列に以下が加わったものがある:Ala6がValに、Leu13がIleに変化;Cys23がMetに、Val27がGlyに変化;Val55がAlaに、Val116がIleに変化;Tyr58がPheに、Ile85がAlaに変化;Cys60がMetに、Ile85がAlaに変化;Val74がLeuに、Thr311がSerに変化;Ala102がThrに、Lys342がArgに変化;Thr110がAlaに、Cys220がMetに変化;Ser182がValに、Thr302がLeuに変化;Leu212がGlyに、Leu375がThrに変化。3つまたはそれ以上の保存的置換を含む配列番号:2および配列番号:4の変異体の例には、配列番号:2のポリペプチド配列に以下が加わったものがある:Ala5がGlyに、Ala6がValに、Leu7がAlaに変化;Leu10がGlyに、Ser49がGlyに、Phe64がTyrに変化;Val27がGlyに、Ala149がGlyに、Val171がSerに、Tyr219がTrpに変化;Leu44がThrに、Val116がIleに、Val171がSerに、Ala222がValに、Ile260がSerに変化;Val74がLeuに、Thr148がValに、Ala149がGlyに、Trp177がTrpに、Leu212がGlyに、Ala222がValに、Ile231がLeuに、Lys342がArgに変化;Valll6がIleに、Ser182がValに、Ser202がLeuに、Tyr219がTrpに、Ala222がValに、Ile255がThrに、Lys286がArgに、Ala320がIleに、Phe335がTrpに、Leu362がIleに、Leu375がThrに変化。【0053】「配列番号:2および/または配列番号:4の生物活性を有する」という用語は、配列番号:2および/または配列番号:4の変異体の生物活性に言及している場合、配列番号:2および/または配列番号:4の変異体に対するエンテロウイルスの結合の量を指し、これは、配列番号:2および/または配列番号:4のそれぞれに対する同じエンテロウイルスの結合の量と比較して、好ましくは1%を上回り、より好ましくは2%〜500%、より好ましくは2%〜200%、さらにより好ましくは2%〜100%、最も好ましくは50%〜100%である。配列番号:2、配列番号:4および/またはそれらの変異体に対するエンテロウイルスの結合の量は、Powellら(1998)、前記により開示されたものなどの、当技術分野で知られた方法を用いて決定しうる。簡潔に述べると、配列番号:2、配列番号:4および/またはそれらの変異体を発現する107個の細胞を、約104c.p.m.の35S標識エンテロウイルスとともに、氷上で1時間インキュベートする。細胞を遠心処理によって回収し、非結合性の放射能をPBSで洗うことによって除去した上で、細胞結合性の放射能をシンチレーション計数法によって定量する。配列番号:2および/または配列番号:4の変異体を発現する細胞における細胞結合性放射能の量が、配列番号:2および配列番号:4のそれぞれを発現する対照細胞における細胞結合性放射能の量と比較して、1%を上回る、より好ましくは2%〜500%、より好ましくは2%〜200%、さらにより好ましくは2%〜100%、最も好ましくは50%〜100%として検出されれば、変異体が配列番号:2および/または配列番号:4のそれぞれの生物活性を有することを意味する。【0054】本明細書において用いる、ヒト崩壊促進因子を「コードする核酸分子」「コードするDNA配列」および「コードするDNA」という用語、ならびにそれらの文法的等価物は、デオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順番または配列を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順番により、mRNA鎖に沿ったリボヌクレオチドの順番が決定され、同じくポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順番が決定される。このようにして、DNA配列は、ヒト崩壊促進因子のRNA配列およびアミノ酸配列をコードする。1つの好ましい態様において、導入遺伝子は、ヒト崩壊促進因子(配列番号:2)をコードするヌクレオチド配列(配列番号:1;GenBankアクセッション番号M15799;図3)を含む。代替的な好ましい1つの態様において、導入遺伝子は、ヒト崩壊促進因子(配列番号:4)をコードするヌクレオチド配列(配列番号:3;GenBankアクセッション番号M30142;図4)を含む。【0055】1つの態様においては、導入遺伝子がさらに、選択マーカーをコードする配列を含むことが(必要ではないものの)望ましい。本明細書において用いる「選択マーカー」という用語は、その選択マーカーが発現される細胞に化合物(例えば、抗生物質または薬剤)に対する耐性を付与する酵素活性をコードするヌクレオチド配列を指す。選択マーカーは「陽性」でもよい;すなわち、任意の細胞または細胞系において検出可能である酵素活性をコードする遺伝子でもよい。優性選択マーカーの例には、(1)細胞に薬剤G418に対する耐性を付与する、細菌由来のアミノグリコシド3'ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo遺伝子とも呼ばれる)、(2)抗生物質ハイグロマイシンに対する耐性を付与する、細菌由来のハイグロマイシンGホスホトランスフェラーゼ(hyg)遺伝子、および(3)マイコフェノール酸の存在下における増殖能を付与する、細菌由来のキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gpt遺伝子とも呼ばれる)が非制限的に含まれる。優性でない他の選択マーカーは、使用に際して、関連した酵素活性を欠く細胞系と併用する必要がある。選択マーカーは「陰性」でもよい;陰性選択マーカーは、適切な選択培地中で増殖させた場合にその発現が細胞にとって細胞傷害性である酵素活性をコードする。例えば、HSV-tk遺伝子およびdt遺伝子は陰性選択マーカーとしてよく用いられる。ガンシクロビルまたはアシクロビルの存在下で増殖させた細胞におけるHSV-tk遺伝子の発現は細胞傷害性である;このため、ガンシクロビルまたはアシクロビルを含む選択培地中での細胞の増殖により、機能的なHSV TK酵素を発現しうる細胞が除外選択される。同様に、dt遺伝子の発現により、ジフテリア毒素を発現しうる細胞が除外選択される。1つの好ましい態様において、用いられる選択マーカー遺伝子は、プラスミドpcDNA3(Invitrogen)中にあるneo遺伝子である。この導入遺伝子が組み込まれた細胞は、ジェネテシン(G418)(Gibco-BRL Inc.)に対する曝露によって選択された(実施例1および8)。【0056】ヒト崩壊促進因子をコードするヌクレオチド配列を含むベクター(例えば、プラスミド、線状DNA、ウイルスなど)は、当技術分野で周知の技法を用いて細胞に導入しうる。核酸配列を細胞に「導入すること」という用語は、形質転換細胞を産生するための標的細胞への核酸配列の導入を指す。細胞への核酸配列の導入方法は当技術分野で周知である。例えば、核酸配列がプラスミド、または線状DNAの裸の小片である場合には、例えば、リン酸カルシウム-DNA共沈、DEAE-デキストランを介したトランスフェクション、ポリブレンを介したトランスフェクション、電気穿孔、微量注入、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合およびバイオリスティック法を用いて、配列を細胞に「トランスフェクト」しうる。または、核酸配列をウイルス粒子中に封入する場合には、細胞をウイルスに「感染させること」によって配列を細胞に導入しうる。1つの好ましい態様において、ベクターはプラスミドである。【0057】細胞の形質転換は安定的でも一時的でもよい。「一時的な形質転換」および「一時的に形質転換された」という用語は、関心対象のヌクレオチド配列が宿主細胞のゲノムに組み込まれない、1つまたは複数の関心対象のヌクレオチド配列の細胞への導入を指す。一時的な形質転換は、例えば、関心対象のヌクレオチド配列の1つまたは複数によってコードされるポリペプチドの存在を検出する固相酵素免疫アッセイ(ELISA)によって検出しうる。または、一時的な形質転換を、関心対象のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質(例えば、β-グルクロニダーゼ)の活性を検出することによって検出することもできる。「一時的な形質転換体」という用語は、1つまたは複数の関心対象のヌクレオチド配列が一時的に組み込まれた細胞を指す。【0058】これに対して、「安定的な形質転換」および「安定的に形質転換された」という用語は、1つまたは複数の関心対象のヌクレオチド配列の、細胞のゲノム中への導入および組込みを指す。したがって、「安定的な形質転換体」は、安定的な形質転換体からのゲノムDNAは1つまたは複数の関心対象のヌクレオチド配列を含むが、一時的な形質転換体からのゲノムDNAは関心対象のヌクレオチド配列を含まないという点で、一時的な形質転換体とは区別される。細胞の安定的な形質転換は、関心対象のヌクレオチド配列と結合しうる核酸配列を用いる、形質転換細胞のゲノムDNAのサザンブロットハイブリダイゼーションによって検出しうる。または、細胞の安定的な形質転換を、関心対象のヌクレオチド配列を増幅するための、形質転換細胞のゲノムDNAのポリメラーゼ連鎖反応によって検出することもできる。1つの好ましい態様において、形質転換は、例示的なトランスジェニック細胞系BGMK-hDAFによる50回の継代後のhDAFの発現によって示されるように、安定的である(実施例1)。【0059】1つの好ましい態様において、本明細書に提供するトランスジェニックBGMK細胞およびトランスジェニックCV-1細胞は、ヒト崩壊促進因子を発現する。「ヒト崩壊促進因子を発現する」という用語は、細胞に言及している場合、その細胞が、本明細書に記載するように固相酵素免疫検定法(ELISA)によって検出可能な、可溶性または膜結合型のヒト崩壊促進因子を含むことを意味する。【0060】hDAFタンパク質の発現は、当技術分野で知られた方法を用いて直接的に評価しても間接的に評価してもよい。例えば、間接的検出は、トランスフェクト細胞を抗hDAFモノクローナル抗体(PharMingen. San Diego, CA)および二次抗体としてのFITC結合ヤギ抗マウスIgGとともにインキュベーションし、その後に顕微鏡下で免疫蛍光を観察する、本明細書中に開示するものなどの免疫蛍光アッセイによって行える。【0061】または、hDAFタンパク質の発現を、hDAFタンパク質とコードする遺伝子と機能的に結合したレポーター遺伝子(例えば、uid A遺伝子)によってコードされるレポータータンパク質の活性を検出することにより、間接的に評価することもできる。「レポーター遺伝子」という用語は、酵素(例えば、ELISA、ならびに酵素に基づく組織化学的アッセイ)、蛍光性、放射性および発光システムを非制限的に含む、何らかの検出システムにおいて検出可能なレポーター分子(例えば、RNA、ポリペプチドなど)をコードする遺伝子を指す。レポーター遺伝子の例には、例えば、グルクロニダーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子, 大腸菌β-ガラクトシダーゼ遺伝子、ヒト胎盤性アルカルフォスファターゼ遺伝子およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれる。本発明は何らかの特定の検出システムまたは標識には限定されないものとする。【0062】1つの好ましい態様においては、本明細書に開示するものなどの、当技術分野で知られた方法を用いて、hDAFを発現する形質転換BGMK細胞(または形質転換CV-1細胞)の数を、hDAFを発現しないBGMK細胞(CV-1細胞)に比して富化してもよい。例えば、細胞を、抗hDAFモノクローナル抗体およびFITC結合ヤギ抗マウスIgG(Chemicon)で標識し、蛍光活性化細胞分取法(FACS)による選別でhDAF発現が比較的高度な細胞を選択した上で、限界希釈によってクローニングしてもよい。【0063】ATCC #として寄託される予定の例示的なトランスジェニックBGMK-hDAF細胞、およびATCC #として寄託される予定の例示的なトランスジェニックCV-1-hDAF細胞を用いて、本発明を説明してきたが、本発明はこれらの特定の細胞種には限定されないことが明らかに意図されている。実際には、本発明は、ATCC #として寄託される予定の、本明細書中にてBGMK-hDAF細胞と命名されたトランスジェニック細胞系から樹立されたあらゆる細胞系をその範囲に含むことを意図している。さらに、本発明は、ATCC #として寄託される予定の、本明細書中にてCV-1-hDAF細胞と命名されたトランスジェニック細胞から樹立されたあらゆる細胞系もその範囲に含むことを意図している。【0064】「から樹立された」という用語は、ATCC#として寄託される予定のBGMK-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系、またはATCC#として寄託される予定のCV-1-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系のいずれかに関係する細胞系に言及している場合、ATCC#として寄託される予定のBGMK-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系、またはATCC#として寄託される予定のCV-1-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系のそれぞれから、ウイルスによる感染、DNA配列によるトランスフェクション、例えば化学物質、放射線照射などを用いる処理および/または変異誘発、BGMK-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系に含まれる何らかの細胞の選択などに限定されない何らかの操作を用いて得られた(例えば、単離された、精製されたなど)細胞系を指す。例えば、BGMK-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系から樹立される細胞系には、化合物[例えば、N-エチル-N-ニトロソ尿素(ENU)、メチルニトロソ尿素(MNU)、塩酸プロカルバジン(PRC)、トリエチレンメラミン(TEM)、アクリルアミドモノマー(AA)、クロラムブシル(CHL)、メルファラン(MLP)、シクロホスファミド(CPP)、硫酸ジエチル(DES)、エチルメタンスルホネート(EMS)、メチルメタンスルホネート(MMS)、6-メルカプトプリン(6MP)、マイトマイシン-C(MMC)、プロカルバジン(PRC)、N-メチル-K-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、3H2Oおよびウレタン(UR)]および電磁放射線[例えば、X線照射、γ線照射、紫外光]による処理を受けたBGMK-hDAF細胞が含まれる。【0065】本発明の例示的なトランスジェニックBGMK-hDAF細胞は、エコーウイルス-6およびエコーウイルス-11による感染に対する感受性および許容性があるという驚くべき特性を示す。これは、本発明のトランスジェニック細胞の由来となった、エコーウイルス-6およびエコーウイルス-11のいずれに対しても許容性がないBGMK細胞とは対照的である。【0066】本明細書において細胞に言及して用いる「感受性がある(susceptible)」という用語は、許容性および非許容性の宿主細胞が、ウイルスを吸着し、ウイルスの侵入を受ける能力を述べている。細胞系は、ウイルスの侵入を受けることはできるがウイルスの増殖および/または細胞からのウイルスの放出は生じない場合、感受性はあるが許容性がない場合がありうる。しかし、許容性細胞系には感受性が必ずある。細胞のウイルスに対する感受性は、感染細胞の培養物から調製したタンパク質抽出物の電気泳動分析(すなわち、SDS-PAGE)を用いてウイルスタンパク質の存在を検出するといった当技術分野で知られた方法によって評価しうる。【0067】本明細書において用いる「許容性がある(permissive)」および「許容性」という用語は、ウイルスとその宿主細胞と推定されるものとの間の一連の相互作用事象を述べている。この過程はウイルスの宿主細胞表面への吸着に始まり、感染性ビリオンの放出に終わる。細胞は、例えば、ウイルス核酸配列および/またはウイルスペプチド配列の産生によって判定されるように(ウイルス核酸配列およびウイルスペプチド配列がビリオンとして集合するか否かは関係ない)、それがウイルス増殖を支援することができれば、「許容性である」(すなわち、「許容性」を示す)。必然的にではないが、1つの好ましい態様において、細胞は、それがビリオンを産生すれば、および/またはその中に含まれた形でビリオンを放出すれば、許容性である。所定の細胞系の許容性の判定には、多くの方法を用いることができる。例えば、宿主細胞系における特定のウイルスの増殖を、ウイルスタンパク質、ウイルス核酸(RNAおよびDNAの両方を含む)および子ウイルスを含む、種々のウイルスマーカーの産生によって評価することもできる。ウイルスタンパク質の存在を、感染細胞の培養物から調製したタンパク質抽出物の電気泳動分析(すなわち、SDS-PAGE)によって評価することもできる。ウイルスのDNAまたはRNAを、核酸ハイブリダイゼーションアッセイを用いて定量してもよい。子ウイルスの産生は、細胞変性作用の観察によって評価しうる。本発明は特定の量のウイルス増殖には限定されない。【0068】「許容性でない(not permissive)」という用語は、細胞が、例えば、ウイルス核酸配列および/もしくはウイルスペプチド配列の産生、ならびに/またはウイルス核酸配列およびウイルスペプチド配列のビリオンへの集合によって評価される、ウイルス増殖を支援しえないことを意味する。【0069】本明細書において用いる「ウイルス増殖」という語句は、許容性細胞種から、許容性または感受性のいずれかの特徴を有する別の細胞への伝播または伝達を述べたものである。【0070】本明細書において用いる「細胞変性作用」または「CPE」という用語は、細胞構造の変化(すなわち、病的作用)を述べている。一般的な細胞変性作用には、細胞破壊、シンシチウム(すなわち、融合した巨大細胞)の形成、細胞の円形化、空胞形成および封入体の形成が含まれる。CPEは許容性細胞に対するウイルスの作用の結果として起こり、許容性細胞宿主がその生育可能な状態を維持するために必要な機能を行う能力に悪影響を及ぼす。インビトロ細胞培養系において、CPEは、コンフルエントな単層の一部である細胞が、ウイルスを含む検体との接触後にコンフルエントでない領域を示した場合に明らかである。観察される微視的な影響は一般に病巣性であり、病巣は1個のビリオンによって始まる。しかし、試料中のウイルス量によっては、十分な時間インキュベートするとCPEが単層全体に観察されることもある。ウイルスによって誘発されたCPEを示す細胞は通常はその形態を円形に変え、長時間の後には死に至り、単層内の足場点(anchorage point)から遊離する。多数の細胞が病巣性破壊に至った場合、その領域はウイルスプラークと呼ばれ、それは単層内の穴として認められる。「プラーク」および「ウイルス感染病巣」という用語は、境界明瞭なCPE領域を指し、これは通常、1個の感染性ウイルスに細胞単層が感染し、その後に複製して単層の近隣細胞に波及した結果である。細胞変性作用は当業者によって容易に識別および区別が可能である。【0071】本明細書中に提示したデータはまた、本発明の例示的なトランスジェニックBGMK-hDAF細胞が、本発明のトランスジェニック細胞の由来となったBGMK細胞と比較して、エンテロウイルスによる感染に対する感度の増大を示すことも示している。「感度(sensitivity)」および「感度が高い(sensitive)」という用語は、細胞に言及している場合、ウイルスに対する細胞の許容性の程度を、同じウイルスに対する別の細胞の許容性の程度と比較したものを指す相対的な用語である。【0072】例えば、「エンテロウイルスに対する感受性の増大」という用語は、本発明のトランスジェニックBGMK細胞系に言及して用いられる場合、本発明のトランスジェニックBGMK細胞のエンテロウイルスによる感染後に生じるエンテロウイルスタンパク質、エンテロウイルス核酸および/または子ウイルスによるCPEの量が、対照BGMK細胞の感染後に生じるエンテロウイルスタンパク質、エンテロウイルス核酸および/または子ウイルスによるCPEの量(それぞれ)と比較して、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは5%〜10,000%、より好ましくは5%〜1,000%、さらにより好ましくは10%〜200%、さらにより好ましくは10%〜100%多いことを指す。例えば、1つまたは複数のエンテロウイルスを含む34種類の試料を子ウイルスの存在に関して試験したところ、本発明のトランスジェニックBGMK細胞および対照BGMK細胞を用いてCPEの存在を示したのはそれぞれ25種類および13種類の試料であり、このため、本発明のトランスジェニックBGMK細胞および対照BGMK細胞の感度はそれぞれ74%および38%であった。このことは、本発明のトランスジェニックBGMK細胞の感度が対照BGMK細胞の感度よりも90%高いことを反映している(例えば、実施例7、表9を参照)。【0073】同じく、「エンテロウイルスに対する感度の増大」という用語は、本発明のトランスジェニックCV-1細胞系に言及して用いられる場合、本発明のトランスジェニックCV-1細胞のエンテロウイルスによる感染後に生じるエンテロウイルスタンパク質、エンテロウイルス核酸および/または子ウイルスによるCPEの量が、対照CV-1細胞の感染後に生じるエンテロウイルスタンパク質、エンテロウイルス核酸および/または子ウイルスによるCPEの量(それぞれ)と比較して、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは5%〜10,000%、より好ましくは5%〜1,000%、さらにより好ましくは10%〜200%、さらにより好ましくは10%〜100%多いことを指す。【0074】B.本発明のトランスジェニック細胞を含む培養物本発明は、エンテロウイルスの存在を検出するための、トランスジェニックBGMK細胞またはCV-1-hDAF細胞の単一細胞型培養物を提供する。「単一細胞型培養物」という用語は、単一の種類の細胞を含む組成物を指し、これは液体でもゲルでも固体でもよい。本明細書中に提示したデータは、例示的なBGMK-hDAF細胞系は、検討した他のいずれの単一細胞型培養よりも、臨床試料中のエンテロウイルスに対する感度が高かったことを示している。【0075】本発明はさらに、本発明のトランスジェニックBGMK細胞以外の細胞種を本発明のトランスジェニックBGMK細胞とともに含む混合細胞型培養物を提供する。本発明はまた、本発明のトランスジェニックCV-1細胞以外の細胞種を本発明のトランスジェニックCV-1細胞とともに含む混合細胞型培養物も提供する。これらの混合細胞型培養物は、エンテロウイルスおよび/または他の生物体(ウイルス、細菌、原生動物を含む)の存在を検出するのに有用である。【0076】本明細書において用いる「混合細胞型培養物」という用語は、2つまたはそれ以上の種類の細胞の混合物を含み、これらの細胞種が混合された組成物を指し、これは液体でもゲルでも固体でもよい。例えば、混合細胞型培養物は、同じ種および同じ属に由来する異なる組織または臓器からの細胞を含みうる。または、混合細胞型培養物が、同じ属の異なる種に由来する細胞を含んでもよい。さらにもう1つの選択肢として、混合細胞型培養物は、異なる属に由来する細胞を含む。本発明は、試料中のウイルスの検出、同定および/または定量のために適した細胞種の任意の組み合わせを包含し、これには、用いる細胞種のすべてが遺伝的に操作されていない混合細胞型培養物、細胞種の1つまたは複数が遺伝的に操作され、残りの細胞種が遺伝的に操作されていない混合物、および細胞種のすべてが遺伝的に操作されている混合物が含まれる。【0077】本明細書において用いる「トランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系以外の細胞種」という用語には、Diagnostic Hybrids, Inc.によるカタログ番号53のBGMK細胞系;Diagnostic Hybrids, Inc.によるカタログ番号53のBGMK細胞系以外の細胞種から樹立された任意の細胞種;および、ATCC#として寄託される予定のBGMK-hDAF細胞系から樹立された任意の細胞種が非制限的に含まれる。特に、「トランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系以外の細胞種」という用語は、hDAF遺伝子をトランスフェクトされていないか、または1つもしくは複数の関心対象のヌクレオチド配列を含む導入遺伝子をトランスフェクトされた、CV-1細胞を明示的に含む。同じく、「トランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系以外の細胞種」という用語は、hDAF遺伝子をトランスフェクトされていないか、または1つもしくは複数の関心対象のヌクレオチド配列を含む導入遺伝子をトランスフェクトされた、BGMK細胞(Diagnostic Hybrids, Inc.、カタログ番号53)を明示的に含む。さらに、「トランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系以外の細胞種」という用語は、ATCC#として寄託される予定であって、1つまたは複数の関心対象のヌクレオチド配列を含む導入遺伝子をさらにトランスフェクトされたBGMK-hDAF細胞も明示的に含む。【0078】本明細書において用いる「トランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞系以外の細胞種」という用語には、CV-1細胞系(ATCC #CCL 70);CV-1細胞系(ATCC #CCL 70)以外の細胞種から樹立された任意の細胞種;およびATCC#として寄託される予定のCV-1-hDAF細胞系から樹立された任意の細胞種が非制限的に含まれる。特に、「トランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞系以外の細胞種」という用語は、hDAF遺伝子をトランスフェクトされていないか、または1つもしくは複数の関心対象のヌクレオチド配列を含む導入遺伝子をトランスフェクトされたCV-1細胞を明示的に含む。この用語は、hDAF遺伝子をトランスフェクトされていないか、または1つもしくは複数の関心対象のヌクレオチド配列を含む導入遺伝子をトランスフェクトされたBGMK細胞(Diagnostic Hybrids, Inc.、カタログ番号53)も明示的に含む。さらに、「トランスジェニックミドリザル腎細胞系以外の細胞種」という用語は、ATCC#として寄託される予定であって、1つまたは複数の関心対象のヌクレオチド配列を含む導入遺伝子をさらにトランスフェクトされたCV-1-hDAF細胞も明示的に含む。【0079】本発明のトランスジェニックBGMK細胞および/またはトランスジェニックCV-1細胞を混合細胞型培養に用いる利点の1つは、そのような培養物により、診断アッセイに適している上に、個別の容器内で培養した多数の細胞系の必要性を解消させる、単一の混合細胞型ユニット式の迅速かつ高感度のアッセイシステムが提供されることである。【0080】本発明は何らかの特定の細胞種には限定されないが、本発明のトランスジェニックCV-1細胞および/またはトランスジェニックBGMK細胞とともに混合細胞型培養物として用いることができ、エンテロウイルスおよび/または他のウイルスを検出しうる細胞系の例を表1に列挙している。【0081】(表1)本発明の細胞系を用いる混合細胞型培養物のための例示的細胞系(a)ヘルペス=ヘルペスウイルスエンテロ=エンテロウイルスアデノ=アデノウイルスミクソ=ミクソウイルスパラミ=パラミクソウイルス【0082】1つの好ましい態様において、エンテロウイルスの検出のために用いられる混合細胞型培養物は、本発明のトランスジェニック細胞系を、以下の細胞種の1つまたは複数とともに含む:RD細胞(ATCC #CCL-136)、H292細胞(ATCC #CCL-1848)、A549細胞(ATCC #CCL-185)、MRC-5細胞(ATCC #CCL-171)、CaCo-2細胞(ATCC HTB-37)。さらにより好ましい1つの態様において、細胞種はCaco-2細胞である。本明細書中に示す通り、Caco-2細胞および本発明の例示的なBGMK-hDAF細胞を含む混合細胞型培養物は、検討した他のいずれの市販の混合細胞型培養物よりも、臨床試料中のエンテロウイルスに対する感度が高かった。混合細胞型培養物を調製するための方法は当技術分野で公知であり、これには08/17/99にSchollらに対して発行された米国特許第5,939,253号、および2001年1月2日にSchollらに対して発行された米国特許第6,168,915号(これらの内容はすべて参照として本明細書に組み入れられる)に開示されたものなどがある。簡潔に述べると、細胞系の単層を集密に達するまで培養する。本明細書において付着細胞系に言及して用いる「集密(confluence)」および「コンフルエント(confluent)」という用語は、培養物全体にわたる細胞が互いに接触して、連続的なシートのように見えるもの、すなわち細胞の「単層」を生じる状態を定義する。細胞単層を、マグネシウムおよびカルシウムを含まないハンクス平衡塩類溶液(HBSS)ですすぎ洗いする。細胞系によっては、トリプシン(0.125%、カルシウムおよびマグネシウムを含まないHBSS中)またはトリプシン-EDTA(0.25%、カルシウムおよびマグネシウムを含まない1mM EDTAのHBSS溶液)を細胞単層に対して直接添加して、周囲温度で約5分間インキュベートすることにより、細胞を解離させてもよい。トリプシン処理したそれぞれの細胞懸濁液に細胞培養培地を添加し、細胞のピペッティングを繰り返して、ほぼ単細胞性の懸濁液(すなわち、細胞凝集物を含まないもの)を作製する。トリプシン処理した各々の細胞懸濁液を十分量の培養培地で希釈し、96ウェルマイクロタイタープレート中でインキュベーションして2日〜3日以内に集密化した細胞単層が生じるように適した光学密度の細胞懸濁液を作製する。【0083】混合細胞型の単層は、2つの異なる細胞種をそれぞれ希釈した同じ容積の細胞懸濁液を同時プレーティングすることによって作製しうる(例えば、0.1mlの各細胞種を96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルへの接種に用いる)。細胞を30分間〜60分間、重力によってウェル表面に付着させ、接種したマイクロタイタープレートを相対湿度95%の5%CO2中にて36℃で最大3日間インキュベートする。【0084】インキュベーション中には定期的に、混合細胞型単層を、全体的な生存状態に関して、および細胞系が共存して2つの異なる細胞形態(すなわち、二相性細胞シート)を有し、各細胞種がほぼ等しい密度にある単一の細胞シート(すなわち、単一の単層)を形成する能力に関して試験する。集密に達したところで、光学顕微鏡を用いる観察のためのコントラストが得られるように、細胞をメチレンブルー染色溶液で処理し、細胞を固定してそれらを淡青色に染色してもよい。【0085】混合細胞型培養物は、ウェル表面に付着した混合細胞の単層を含むことが好ましい。付着した単層培養物は、滑らかで均一に分布した単層を示し、各細胞型が容易に区別可能であり、混合細胞型単層内で生存することから、単一細胞分布物の外観を呈することがある。または、付着した単層培養物が、集密化した時点で2つの異なる形態を呈し、各細胞系の別個の異なるパッチが単層内に共存することから、油と水を混合したような外観を呈することもある。【0086】C.細胞培養物の感染および細胞培養物におけるエンテロウイルスの検出単一細胞型または混合細胞型の単層のインキュベーションの後に、エンテロウイルスを含む疑いのある検体、またはウイルス保存培養物(すなわち、陽性対照)を単層に接種する。陰性または非感染性の対照培養物を用いてもよい;これらの培養物にはエンテロウイルスを全く含まない培養培地を与える。培養物への接種のためには、被験検体のアリコートを、標準的な培養容器に入った適した標準的な培養培地中に入れる。【0087】接種は、用いる培養物(すなわち、プレート培養物、シェルバイアル培養物または試験管培養物)の種類に適した任意の方法を用いて行いうる。プレート培養物またはシェルバイアルを用いる場合には、エンテロウイルスを含む疑いのある溶液(または既知の対照溶液)をプレートのウェルに分けて入れ、シェルバイアルを室温にて700gで約1時間遠心する。試験管培養物を用いる場合には、この遠心処理の段階は必要でない。「接種」(すなわち、単層の、感染性ウイルスを含む、または含む疑いのある検体への曝露)の後に、単層を37℃で、ウイルス感染サイクルが進行するのに十分な期間(例えば、約3時間〜約5日間)にわたってインキュベートする。検体中のエンテロウイルスの存在は、例えば、CPEを観察することによって検出しうる。【0088】実施例以下の実施例は、本発明のある特定の好ましい態様および局面を例示するためのものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。【0089】実施例1ヒト崩壊促進因子(hDAF)を発現するトランスジェニックH292細胞およびバッファローミドリザル腎臓(BGMK)細胞の作製ヒト粘液性類表皮細胞(NCI-H292;「H292」細胞とも呼ばれる;ATCC # CCL-1 848)およびBGMK細胞(Diagnostic Hybrids, Inc.、カタログ番号53)を、トリプシンを利用して個別に継代し、E-MEM培養培地(Diagnostic Hybrids Inc.)の存在下で12ウェルプレート中に播種して、36℃のインキュベーター内で48時間インキュベーションした。新たに形成された細胞単層をトランスフェクションに用いた。【0090】hDAF遺伝子(GenBankアクセッション番号M15799)を、標準的な分子生物学の技法を用いてpcDNA3(Invitrogen)中にクローニングした。pcDNA3-DAFのプラスミドDNAを用いて大腸菌の形質転換を行い、プラスミドDNAを含む細菌コロニーを選択した上で、肉汁培養下で18時間増殖させることによって増やした。プラスミドDNAを細菌から市販のキット(Qiagen Inc.)を用いて精製し、これを用いるとともに、SUPERFECT(商標)(Qiagen Inc.)を製造者の指示に従って担体として用いてH292細胞およびBGMK細胞のトランスフェクションを行い、H292-hDAF細胞およびBGMK-hDAF細胞をそれぞれ作製した。【0091】トランスフェクトした細胞をさらに2日間インキュベーションし、ジェネテシン(G418)(Gibco-BRL Inc.)を添加して安定的な形質転換体を選択した。10日後にはほとんどの細胞は死滅し、生存した細胞は増殖を開始した。細胞が単層を再び形成したらすぐ、それらを継代した。細胞の一部を用い、抗hDAFモノクローナル抗体(PharMingen)を一次抗体、フルオレセイン(FITC)結合ヤギ抗マウスIgG(Chemicon International Inc.)を二次抗体として用いる染色によってhDAF発現を評価した。BGMK-hDAF細胞では約20%がhDAFを発現したが、H292-hDAF細胞はトランスフェクトしていない親H292細胞と同じレベルのhDAF発現を示した。トランスフェクトした細胞は種々のレベルでhDAFを発現した。【0092】ヒトhDAFを発現する細胞を富化するために、フラスコ内で培養したH292-hDAF細胞およびBGMK-hDAF細胞をトリプシン処理によって採取し、抗hDAFモノクローナル抗体およびFITC結合ヤギ抗マウスIgG(Chemicon)で標識した後に、蛍光活性化細胞分取法(FACS)による選別でhDAFの発現が比較的高度な細胞を選択した。続いて、FACSにより得られた細胞のうち少数を12ウェル培養プレートのウェル中で培養した。培養物を連続継代によって増やし、hDAFの発現を上記および図1に示したように免疫蛍光染色によって観測した。【0093】図1では、淡黄緑色の蛍光が陽性細胞によるhDAFタンパク質の発現を示しているが、ほとんどのBGMK-hDAF細胞がhDAFを発現した(図1A)。これに対して、トランスフェクトしていないBGMK細胞は暗緑色のバックグラウンドのみを示し(図1B)、このことから非トランスフェクトBGMK細胞がhDAFを発現しないことが裏づけられた。図1Cおよび図1DはH292細胞およびH292-hDAF細胞がほぼ同一な染色強度を呈したことを示しており、これは、これらの細胞の間にhDAF発現レベルに関して有意差がないことを示している。【0094】トランスジェニック細胞系における発現の安定性を確認するために、BGMK-hDAF細胞およびH292-hDAF細胞を複数回継代し、hDAF発現を観測した。BGMK-hDAF細胞では、hDAFの発現レベルは少なくとも50回の継代にわたって安定に保たれた。これらのBGMK-hDAF細胞を引き続いて限界希釈によってクローニングした。H292細胞およびH292-hDAF細胞は同じレベルのhDAF発現を50回の継代後も維持していた。【0095】実施例2BGMK-hDAF細胞を用いたエンテロウイルス分離株の検出BGMK-hDAF細胞によるエンテロウイルスの検出の感度を親BGMK細胞と比較するために、各細胞種に対するエコーウイルスおよびコクサッキーウイルスの分離株の細胞変性作用を以下の通りに評価した。簡潔に述べると、各細胞種を48ウェルプレートに細胞2×105個/mlの密度で1ウェル当たり0.2mlを播種した。細胞が単層を形成した後に(通常約2日〜3日)、それらに対して、エンテロウイルスの種々の分離株の連続希釈したものを接種した。接種された細胞を700×g、22℃で45分間遠心し、続いて36℃の5%CO2インキュベーター内でインキュベーションした。エンテロウイルス感染によって誘導された細胞変性作用(CPE)の程度を毎日記録した。エンテロウイルスの典型的なCPEは、図2Bおよび図2Dに示すように、顕微鏡下では反射性の小さな細胞として観察された。対照BGMK細胞およびBGMK-hDAF細胞はいずれも類似したCPEを示し、これによりエンテロウイルスによる感染が持続しているこれらの細胞において、hDAF発現が親BGMK細胞の特徴を変化させないことが示された。【0096】A.エコーウイルスエコーウイルスに関するCPEの結果を表2に示す。表2(および以下の表3〜表8)中の値は、視覚的観察で細胞変性作用(CPE)が認められたウェル中の細胞の割合を反映している。特に、-はウェル中の細胞の0%が、1+は最大約25%が、2+は約25%〜約50%が、3+は約50%〜約75%が、4+は約75%〜100%が細胞変性作用を示すことを意味する。【0097】(表2)BGMK(BG)細胞およびBGMK-hDAF(BG-D)細胞を用いたエコーウイルスの検出*試料の希釈倍数:-1は10-1希釈を、-2は10-2希釈を、-3は10-3希釈を、-4は10-4希釈を、-5は10-5希釈を、-6は10-6希釈を、-7は10-7希釈を、-8は10-8希釈を意味する。【0098】表2には、エコーウイルス-4およびエコーウイルス-9に関して、検出された最終的なウイルス力価がBGMKおよびBGMK-hDAFでほぼ同じであったことが示されている。しかし、第1日目でBGMK-hDAF細胞において検出されたウイルス希釈度はBGMK細胞よりも10倍高かった。【0099】エコーウイルス-7およびエコーウイルス-30の場合、第3日目までに検出された最終的なウイルス力価はBGMK-hDAF細胞の方がBGMK細胞よりも約15倍〜約20倍高かった。より高い希釈度でこれらのエコーウイルスが検出されたことに加えて、BGMK-DAFはこれらのエコーウイルスをより高い希釈度でより早期に検出することも示された。【0100】エコーウイルス-6およびエコーウイルス-11の場合、BGMK細胞はこれらの2種類のウイルスを検出できなかった。これに対して、重要なことに、BGMK-hDAF細胞は高度に希釈されたウイルスを第1日目までに検出した。本発明を何らかの特定の機序に限定することを意図したわけではないが、これらの結果は、hDAFがこれらの2種類のウイルスのBGMK細胞への侵入に不可欠であることを示している。【0101】B.コクサッキーウイルスBGMK細胞は、コクサッキーBウイルスおよび一部のコクサッキーAウイルスの検出に関して最も感度が高い。BGMKおよびBGMK-hDAFをコクサッキーウイルスA9、B1、B2、B4およびB5の検出に関して比較した。その結果を表3に示す。【0102】(表3)BGMK(BG)細胞およびBGMK-hDAF(BG-D)細胞を用いたコクサッキーウイルスの検出【0103】表3には、コクサッキーA9、B1およびB5に関して、BGMK-hDAF細胞が第1日目でBGMK細胞よりも約15倍〜約20倍高い希釈度のウイルスを検出したことを示している。第3日目までに検出された最終的なウイルス希釈度はどちらの細胞種もほぼ同じであった。コクサッキーウイルスB2およびB4の場合、BGMK-hDAF細胞はBGMK細胞とほぼ同じ希釈度のウイルスを検出した。何らかの特定の機序に限定されることは意図しないが、これらの結果は、hDAFがおそらくこれらの2種類のウイルスのBGMK細胞への侵入を増強しないと考えられることを示している。【0104】以上の結果は、BGMK-hDAF細胞が対照BGMK細胞と比べて、より低いウイルス力価のエンテロウイルスをより早期に検出しうることを示している。これらの結果は、BGMK-hDAF細胞が、親BGMK細胞が許容性を有さない一部のエンテロウイルス、例えばエコーウイルス-6およびエコーウイルス-11などに対する感受性および許容性を有することも示している。【0105】実施例3BGMK-hDAF細胞を用いた臨床試料中のエンテロウイルスの検出(小規模での検討)精製エンテロウイルス分離株を用いた以上の結果は、本発明者らには、患者の管理にとって極めて重要な、臨床検体からの低力価エンテロウイルスの早期検出を、BGMK-hDAF細胞が向上させうることを示唆するものと考えられた。この仮説を臨床試料中に存在するウイルスに適用しうるか否かを検証するために、臨床試験材料を用いて以下の実験を行った。【0106】BGMK細胞およびBGMK-hDAF細胞を48ウェルプレートに2×105個/ml、1ウェル当たり0.2mlを播種し、36℃の5%CO2インキュベーター内で3日間インキュベーションした。以前に試験した4種類のエンテロウイルス陽性の元の臨床試料をウェル中に別々に接種した。接種された細胞を700×g、22℃で45分間遠心し、36℃でインキュベーションした。細胞を毎日観察し、CPEを記録した。その結果を表4に示す。【0107】(表4)BGMK(BG)細胞およびBGMK-hDAF(BG-D)細胞を用いた臨床試験材料からのエンテロウイルスの検出【0108】表4は、BGMK-hDAF細胞が3種類のエンテロウイルス陽性試料を第1日目までに検出し、一方、非トランスフェクトBGMK細胞は1種類のエンテロウイルス陽性試料のみを検出したことを示している。第2日目までに、BGMK-DAF細胞は4種類のエンテロウイルス陽性試料すべてを検出したが、BGMK細胞は第3日目までに2種類のエンテロウイルス陽性試料を検出したのみであった。検体の型判定をモノクローナル抗体(Chemicon Inc.)を用いて行った。検体1および2はエコーウイルスを含むと判定され、検体3および4はコクサッキーウイルスを含むと判定された。【0109】これらの結果は、エンテロウイルスがより早期に検出され、より多数のエンテロウイルス陽性試料を検出したことから示されるように、BGMK-hDAF細胞がエンテロウイルスをBGMK細胞よりも早期に検出しただけでなく、BGMK細胞と比較してより多くの臨床試験材料中のエンテロウイルスの存在を検出したことを明らかに示している。【0110】実施例4BGMK-hDAF細胞を用いた臨床試料中のエンテロウイルスの検出(大規模での検討)上記実施例3における好成績を受けて、本発明者らは、臨床試験材料の評価をより大きな規模で行った。BGMK細胞およびBGMK-hDAF細胞は実施例3に記載した通りに調製した。本実施例に用いた臨床試験材料は、クリーブランド大学病院(University Hospitals of Cleveland, Cleveland, Ohio)、ノースカロライナ大学(University of North Carolina, Chapel Hill, North Carolina)および小児病院(Children's Hospital, Omaha, Nebraska)からのものであった。合計17種類の検体を接種した。検体原物の容積がわずかであったため、それらを1倍〜20倍に希釈して接種用に十分な容積とした。接種後に細胞を実施例3に記載した通りに処理し、細胞を毎日CPEに関して観察した。その結果を表5に示す。【0111】(表5)BGMK(BG)細胞およびBGMK-DAF(BG-D)細胞を用いた臨床検体からのエンテロウイルスの検出【0112】表5は、BGMK細胞が8種類のエンテロウイルス陽性試料を検出し、一方、BGMK-DAFは16種類のエンテロウイルス陽性試料を検出したことを示している。BGMKにより第5日目に検出された、型判定されなかった1種類のエンテロウイルス(検体4)は、BGMK-hDAFによっては検出されなかった。BGMK細胞およびBGMK-hDAF細胞のそれぞれによる検出の遅れおよび欠如を、本発明者らは、検体の力価が極めて低かった結果であり、それが接種物に影響した可能性があると考えた。16種類の試料のうち10種類はエコーウイルスと判定され、3種類はポリオウイルス、1種類はコクサッキーウイルス、1種類はエコーウイルスおよびコクサッキーウイルスを含むと判定され、2種類は型判定されなかった。【0113】より大規模な臨床試料を用いたこれらの結果から、BGMK-hDAF細胞により、BGMK細胞と比較して、エンテロウイルスがより早期に検出され、より多数のエンテロウイルス陽性試料が検出されたことから示されるように、BGMK-hDAF細胞の方がBGMK細胞よりも臨床試料からのエンテロウイルスの検出に関する感度がはるかに高いという実施例3の所見が裏づけられた。【0114】実施例5H292-hDAF細胞を用いたエンテロウイルス分離株の検出以上の実施例2〜4の結果から、本発明者らには、BGMK細胞におけるhDAFの発現がエンテロウイルスの検出に関するBGMK細胞の感度を大きく増大させることが示された。本実施例に述べる実験は、hDAF遺伝子の追加コピーを発現させることにより、エンテロウイルスの実験室分離株に対するH292細胞の感度も増大するか否かを明らかにするために行った。【0115】上記の実施例2に記載した実験を、BGMK細胞およびBGMK-hDAF細胞の代わりにH292細胞およびH292-hDAF細胞を用いて再度行った。簡潔に述べると、いくつかのエコーウイルスおよびコクサッキーウイルスを連続希釈し、H292細胞およびH292-hDAF細胞を含むウェル中に接種した上で、CPEを毎日観察した。これらの実験の結果を表6および7に示す。【0116】(表6)H292細胞およびH292-hDAF(H292-D)細胞を用いたエコーウイルスの検出【0117】(表7)H292細胞およびH292-hDAF(H292-D)細胞を用いたコクサッキーウイルスの検出【0118】表6および表7は、H292およびH292hDAFによるエンテロウイルスの検出の感度が、検出されたエンテロウイルス分離株の種類、エンテロウイルスが最も早く検出された時期、ならびにエンテロウイルスが検出された試料の数および実体に関しては変わりなかったことを示している。【0119】これらの結果は、hDAFを発現するH292細胞にhDAF遺伝子の追加コピーをトランスフェクトしても、エンテロウイルスの実験室株の検出に関する細胞の感度は増大も低下もしないことを示している。これらの結果は、前記の実施例2に示したBGMK-hDAF細胞で得られた結果とは正反対である。【0120】実施例6H292-hDAF細胞を用いた臨床試料中のエンテロウイルスの検出hDAF遺伝子の追加コピーの発現によって、臨床試料中のエンテロウイルスに対するH292-hDAF細胞の感度が増加するか否かを明らかにするために、エンテロウイルス陽性であることが試験で判明している4種類の患者試料(試料のうち2種類はエコーウイルスを含み、2種類がコクサッキーウイルスを含む)を、上記の通りにH292細胞またはH292-hDAF細胞とインキュベーションし、CPEを毎日観察して記録した。その結果を表8に示す。【0121】(表8)H292細胞およびH292-hDAF(H292-D)細胞を用いたエンテロウイルスの検出【0122】臨床試料を用いた表8の結果のプロフィールは、エンテロウイルスの実験室株を用いて得たものと類似していた。言い換えると、hDAF遺伝子の追加コピーをH292細胞にトランスフェクトしても、これらの細胞による臨床試験材料からのエンテロウイルスの検出の感度に対する影響はなかった。【0123】実施例7BGMK-hDAF細胞とCaco-2細胞との混合細胞型培養物におけるエンテロウイルスの検出BGMK-hDAF細胞の感度を、エンテロウイルスの検出に広く用いられている他の単一細胞型培養物および混合細胞型培養物のものと比較した。E-Mix AはRD細胞(ATCC #CCL136)およびH292細胞(ATCC #1848)を含んでおり、E-Mix BはBGMK細胞(Diagnostic Hybrids, Inc.)およびA549細胞(ATCC #CCL-185)を含んでいた。【0124】E-Mix A、E-Mix B、Caco2/BGMK細胞およびCaco-2/BGMK-hDAF細胞を48ウェルプレート(Diagnostic Hybrids Inc.)中に調製した。MRC-5細胞および初代アカゲサル腎臓(pRhMK)細胞は48ウェルプレート(ViroMed Inc.)中に調製した。【0125】エンテロウイルス陽性であることが以前の試験で判明している34種類の臨床試料を用いた。Chemicon International Incのエコーウイルス配合物、ポリオウイルス配合物、エンテロウイルス配合物およびコクサッキーB配合物を用いたところ、34種類のエンテロウイルスは13種類がエコーウイルス、14種類がコクサッキーウイルス、3種類がポリオウイルス、1種類がエンテロウイルスと判定され、3種類は型判定されなかったエンテロウイルスであった。この34種類のエンテロウイルスは、PAN ENTERO配合物(Chemicon)およびエンテロウイルスモノクローナル抗体(Dako)によっても同定された。【0126】エンテロウイルスを含む臨床試料を希釈し、0.2mlの接種物を、細胞を含むウェルに加えた。プレートを700×g、22℃で45分間遠心した後に、36℃の5%CO2下でインキュベーションした。接種された細胞を毎日観察し、細胞変性作用(CPE)を第1日目〜第6日目まで記録した。その結果を表9に示す。【0127】(表9)細胞培養物(b)における臨床試料(a)からのエンテロウイルスの検出(a)各値は、細胞を臨床検体とともにインキュベーションした後の第1日目から第6日目までのCPEの検出によって判定されたエンテロウイルス陽性検体の数を表す。括弧内の値は、CPEの検出によって判定されたエンテロウイルス陽性検体の数を被験検体の総数(34)で除算し、百分率として表したものを反映した、エンテロウイルスの検出感度を反映している。(b)E-Mix AはRD細胞およびH292細胞である;E-mixBはBGMK細胞およびA549細胞である;SBGはBGMK-hDAF細胞であり、BGはBGMK細胞である;pRhMKは初代アカゲサル腎細胞である。【0128】表9の結果は、凍結検体由来の34種類のエンテロウイルスのすべてが、1つまたは複数の細胞によって単離されたことを示している。1種類のポリオウイルス検体はpRhMK細胞のみに認められ、他の細胞では認められなかった。感染pRhMK細胞からの上清を他のすべての細胞に接種したところ、それらはすべて良好に増殖し、このことから、これが他の細胞の感受性の問題ではなく、検体のウイルス力価が低かったことが示された。要約すると、Caco-2/BGMK-hDAF細胞は1種類のポリオウイルスを検出しなかった。E-Mix A+E-Mix Bは1種類のエコーウイルス、3種類のコクサッキーウイルスおよび1種類のポリオウイルスを検出しなかった。MRC-5+pRhMK細胞は3種類のエコーウイルス、4種類のコクサッキーウイルスおよび1種類のポリオウイルスを検出しなかった。Caco-2/BGMK細胞は1種類のコクサッキーBウイルス、3種類のエコーウイルスおよび1種類のポリオウイルスを検出しなかった。【0129】表9は、BGMK-hDAFが、検討した他のいずれの単一細胞型培養物(すなわち、BGMK細胞、MRC-5細胞、初代アカゲサル腎細胞およびCaco-2細胞)よりも、臨床試料中のエンテロウイルスに対する感度が高いことを示している。特に、例えば、それぞれの感度が第1日目には74%対38%、第2日目には88%対50%、第3日目には97%対59%であったことから示されるようにBGMK-hDAFはBGMKよりも臨床試料中のエンテロウイルスに対する感度が高いという上記の実施例2および3の結果が、表9により裏づけられた。【0130】表9は、単一細胞型培養下にあるBGMK-hDAF細胞が、RD細胞とH292細胞の混合物(E-Mix A)、BGMK細胞とA549細胞の混合物(E-Mix B)、RD細胞、H292細胞、BGMK細胞およびA549細胞の混合物(E-mix A+B)ならびにMRC-5細胞と初代アカゲサル腎細胞の混合物を含む、エンテロウイルス検出用の市販の混合細胞型培養物よりも、臨床試料中のエンテロウイルスに対する感度が高かったことも示している。重要なことに、BGMK-hDAF細胞は、検討した他のいずれの単一細胞型培養物または混合細胞型培養物よりも、多くのエンテロウイルス陽性試料を検出しただけでなく、より早期にエンテロウイルスを検出した。表9中のデータはさらに、BGMK-hDAF細胞が、Caco-2細胞とともに混合細胞型培養下においた場合にも、エンテロウイルスに対する感度の増大を保つことを示している。【0131】実施例8ヒト崩壊促進因子(hDAF)を発現するトランスジェニック・アフリカミドリザル腎臓(CV-1)細胞の作製アフリカミドリザル腎臓(CV-1)細胞(ATCC# CCL 70)の単層を継代し、E-MEM培養培地(Diagnostic Hybrids Inc.)の存在下で12ウェルプレート中に播種して、36℃で24時間インキュベーションした。新たに形成された細胞単層を、前記の通りに、pcDNA3ベクター(Invitrogen)中にクローニングしたhDAF遺伝子を用い、SUPERFECT(商標)をプラスミドDNA(Quiagen Inc.)の担体として用いるトランスフェクションに用いた(実施例1)。トランスフェクトした細胞をさらに2日間インキュベーションし、その後にジェネテシン(G418)を添加して安定的な形質転換体を選択した。8日後にはほとんどの細胞は死滅し、生存した細胞は増殖を開始した。さらに2日後に細胞は単層を形成した。抗hDAFモノクローナル抗体を一次抗体として、フルオレセイン結合ヤギ抗マウスIgG(Chemicon International Inc.)を二次抗体として用いる免疫蛍光染色により、細胞表面でのhDAF発現を評価した。その結果、トランスフェクトした細胞の約5%(これをCV-1-hDAF細胞と呼んだ)は細胞表面にhDAFを発現した。トランスフェクトした細胞を引き続いて増殖させ、蛍光活性化細胞分取法(FACS)による選別により、hDAF発現レベルが比較的高い細胞を選択した。選別した細胞の少数を培養して増やした。細胞を再び継代し、希釈して1ウェル当たり1個として48ウェルプレートに播種した。約2週間で細胞は単層を形成した。これらの細胞クローンを継代し、hDAF発現に関して観察した。hDAF発現が高度なクローニング細胞を増殖させ、-80℃で凍結保存した。これらのクローニング細胞はエンテロウイルスの検出に用いられる。【0132】以上より、本発明が、エンテロウイルスに対する感度が高く、エンテロウイルスの迅速検出のために有用な細胞を提供することは明らかである。さらに、本発明が、エンテロウイルスに対する広範囲の許容性を有し、そのため複数の種類のエンテロウイルスの同時検出を可能にするという利点を有する細胞も提供することも明らかである。【0133】以上の明細書で言及したすべての刊行物および特許は参照として本明細書に組み入れられる。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明の説明された方法および系にさまざまな変更および変化を加えうることは当業者には明らかである。本発明は特定の好ましい態様とともに説明されたが、添付の特許請求の範囲に記載される本発明は、このような特定の態様に過度に限定されないことが理解されるべきである。実際に、本発明を実施するための説明された様式に対するさまざまな改変は、当技術分野およびそれに関連した分野の当業者には明らかであり、それらは添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。【図面の簡単な説明】【0134】【図1】(A)BGMK-hDAF細胞、(B)BGMK細胞、(C)H292-hDAF細胞、および(D)H292細胞に対する、hDAFタンパク質の免疫蛍光染色を示している。【図2】(A)エコーウイルス非存在下でのBGMK細胞、(B)エコーウイルス非存在下でのBGMK、(C)エコーウイルス非存在下でのBGMK-hDAF細胞、および(D)エコーウイルス非存在下でのBGMK-hDAF細胞の、細胞変性作用(CPE)を示す写真である。【図3】ヒト崩壊促進因子のポリペプチド配列(配列番号:2)(B)をコードするヌクレオチド配列(配列番号:1;GenBankアクセッション番号M15799)(A)を示している。【図4】ヒト崩壊促進因子(配列番号:4)(B)をコードするヌクレオチド配列(配列番号:3;GenBankアクセッション番号M30142)(A)を示している。 BGMK-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系。 BGMK-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系から樹立された細胞系であって、以下からなる群より選択される特性を有する細胞系:(a)バッファローミドリザル腎細胞系と比較して、1つまたは複数のエンテロウイルスに対する感度が高いこと;ならびに(b)エコーウイルス-6およびエコーウイルス-11からなる群より選択されるエコーウイルスに対する許容性。 BGMK-hDAFと命名された細胞系のエンテロウイルスに対する感度を有する、請求項2記載の細胞系。 ヒト崩壊促進因子を発現するトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系であって、以下からなる群より選択される特性を有する細胞系:(a)バッファローミドリザル腎細胞系と比較して、1つまたは複数のエンテロウイルスに対する感度が高いこと;ならびに(b)エコーウイルス-6およびエコーウイルス-11からなる群より選択されるエコーウイルスに対する許容性。 ヒト崩壊促進因子が、配列番号:1および配列番号:3からなる群より選択される配列によってコードされる、請求項4記載の細胞系。 トランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系が、BGMK-hDAFと命名された細胞系のエンテロウイルスに対する感度を有する、請求項4記載の細胞系。 細胞系がBGMK-hDAFである、請求項4記載の細胞系。 ヒト崩壊促進因子を発現するトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞を含む組成物であって、細胞が、以下からなる群より選択される特性を有する組成物:(a)バッファローミドリザル腎細胞系と比較して、1つまたは複数のエンテロウイルスに対する感度が高いこと;ならびに(b)エコーウイルス-6およびエコーウイルス-11からなる群より選択されるエコーウイルスに対する許容性。 上記トランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系以外の細胞種をさらに含み、上記トランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞および該細胞種が混合細胞型培養(mixed-cell type culture)下にある、請求項8記載の組成物。 細胞種が、RD細胞、H292細胞、A549細胞、MRC-5細胞、KB細胞およびCaCo-2細胞からなる群より選択される、請求項9記載の組成物。 BGMK-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞を含む組成物。 BGMK-hDAF細胞以外の細胞種をさらに含み、BGMK-hDAF細胞および該細胞種が混合細胞型培養下にある、請求項11記載の組成物。 BGMK-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系から樹立された細胞を含む組成物であって、該樹立細胞が、以下からなる群より選択される特性を有する組成物:(a)バッファローミドリザル腎細胞系と比較して、1つまたは複数のエンテロウイルスに対する感度が高いこと;ならびに(b)エコーウイルス-6およびエコーウイルス-11からなる群より選択されるエコーウイルスに対する許容性。 上記樹立細胞以外の細胞種をさらに含み、上記樹立細胞および該細胞種が混合細胞型培養下にある、請求項13記載の組成物。 試料中のエンテロウイルス検出のための方法であって、以下の段階を含む方法:a)i)試料、およびii)BGMK-hDAFと命名された細胞を含む組成物を提供する段階;b)該細胞に該試料を接種して、接種された細胞を産生する段階;ならびにc)該接種された細胞を、該エンテロウイルスの存在に関して観察する段階。 組成物がBGMK-hDAF細胞以外の細胞種をさらに含み、かつBGMK-hDAF細胞および該細胞種が混合細胞型培養下にある、請求項15記載の方法。 CV-1-hDAFと命名されたトランスジェニック細胞系。 試料中のエンテロウイルス検出のための方法であって、以下の段階を含む方法:a)i)試料、およびii)CV-1-hDAFと命名された細胞を含む組成物を提供する段階;b)該細胞に該試料を接種して、接種された細胞を産生する段階;ならびにc)該接種された細胞を、該エンテロウイルスの存在に関して観察する段階。 本発明は、エンテロウイルスの迅速検出のために有用な細胞系を提供する。特に、本発明は、トランスジェニック・アフリカミドリザル腎細胞系およびトランスジェニック・バッファローミドリザル腎細胞系を提供する。本発明は、エンテロウイルスの検出のために現在用いられている他の細胞種と比べて、単一細胞型および混合細胞型の培養物におけるエンテロウイルスによる感染に対する感度が増大した細胞系を提供する。また、本発明の細胞は、本発明の細胞が由来する細胞種と比較して、より数多くのエンテロウイルスによる感染に対する許容性がある。