生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アルカリホスファターゼ活性測定用試薬および測定方法
出願番号:2002583664
年次:2011
IPC分類:C12Q 1/42


特許情報キャッシュ

上田 陽子 山下 和昭 JP 4669205 特許公報(B2) 20110121 2002583664 20020416 アルカリホスファターゼ活性測定用試薬および測定方法 シスメックス株式会社 390014960 西野 卓嗣 100088867 上田 陽子 山下 和昭 JP 2001118180 20010417 20110413 C12Q 1/42 20060101AFI20110324BHJP JPC12Q1/42 C12N15/00-90 C12Q1/00-70 BIOSIS MEDLINE WPID JMEDPLUS JSTPLUS 特開平6−113895(JP,A) 特開昭60−168050(JP,A) 1 JP2002003758 20020416 WO2002086151 20021031 8 20050405 2008005375 20080305 鈴木 恵理子 吉田 佳代子 鵜飼 健 【0001】技術分野本発明は、臨床検査の分野におけるアルカリホスファターゼ(ALP)活性の測定において、測定試料の測定対象物でない物質の存在による測定結果への影響を回避しうるALP活性測定用試薬およびその測定方法に関する。【0002】背景技術現在、臨床化学の分野における血清成分の測定法としては、目的成分が酵素である場合には、その基質となる化合物を用いて酵素反応を行い、得られた生成物を測定して酵素活性を算出する方法が広く普及している。また、目的成分が酵素以外の場合には、目的成分に特異的に作用する酵素を用い、その酵素反応により得られた生成物を測定して目的成分量を算出する、いわゆる「酵素法」と呼ばれる測定方法が広く普及している。体液成分中の種々の成分、例えば還元性物質であるアスコルビン酸、ヘモグロビン、ビリルビン等の還元作用による負誤差の影響、また、ヘモグロビン、ビリルビン等の色素は、測定波長によっては正、負誤差の原因となり、これら色素自身の吸収が光ならびに測定試薬組成中の成分等の影響により測定中に経時的に変化し、測定結果に影響を与えることも広く知られており、このような影響を干渉という。【0003】測定法のいかんを問わず、体液成分による干渉回避のための種々の方法が検討されており、例えばヘモグロビン、ビリルビンによる各干渉に対する回避策だけに絞っても数多くの報告がなされている。ヘモグロビンの干渉回避方法については、チオ尿素を用いる方法、カチオン性界面活性剤/両性界面活性剤を用いる方法、カチオン性界面活性剤/両性界面活性剤/アニオン性界面活性剤を用いる方法、アルキルスルホン酸塩類を用いる方法、二色光測定を行う方法等が知られている。また、ビリルビンの干渉回避方法については、ビリルビンオキシダーゼを用いる方法、ビリルビンオキシダーゼと界面活性剤等を組み合わせる方法、フェリシアン化物を用いる方法、フェロシアン化物を用いる方法、フェロシアン化物/アルブミンを用いる方法等が知られている。【0004】上記の方法は、主に酸化酵素とペルオキシダーゼの組み合わせにより発色へ導く方法における干渉回避方法であるが、一部「ロイシンアミノペプチダーゼ測定法」のような基質分解発色法における干渉回避方法も含まれている。しかし、ビリルビンならびに溶血ヘモグロビンによる各干渉の問題は未だ十分に解決された状況とはいえない。【0005】発明の開示本発明の課題は、アルカリホスファターゼ(以下、「ALP」という。)活性の測定において、測定試料の測定対象物でない物質、たとえばビリルビン、溶血ヘモグロビンの存在による測定結果への影響を回避しうるALP活性測定用試薬およびその測定方法を提供することである。【0006】本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ALPの測定において、試薬にチオジグリコール酸、β−チオジグリコール、メチオニン等のいずれか1または2以上を添加することで溶血ヘモグロビンによる干渉が回避され、さらに含硫化合物を添加することによりビリルビンによる干渉が回避されることを見出し、本発明を完成した。【0007】すなわち本発明は、以下よりなる。1.測定試料中のアルカリホスファターゼ活性を測定するための試薬であって、チオジグリコール酸を含有することを特徴とする、溶血ヘモグロビンまたはビリルビンによる測定への干渉が低減されたアルカリホスファターゼ活性測定用試薬。2.ラウリル硫酸ナトリウムをさらに含有する前項1記載の試薬。3.前記チオジグリコール酸を含有する第一試薬と、p‐ニトロフェニルリン酸、フェニルリン酸およびグリセロリン酸からなる群より選択される少なくとも一つのアルカリホスファターゼ測定用基質を含有する第二試薬とを含む前項1記載の試薬。4.前記チオジグリコール酸の最終濃度が1.0〜50mMとなるよう調製された前項1記載の試薬。5.測定試料中のアルカリホスファターゼ活性を測定するための方法であって、チオジグリコール酸を含有する第一試薬と前記測定試料とを混合する第一工程と、前記第一工程で調製した混合液とp‐ニトロフェニルリン酸、フェニルリン酸およびグリセロリン酸からなる群より選択される少なくとも一つのアルカリホスファターゼ測定用基質を含有する第二試薬とを混合する第二工程と、前記第二工程で調製した混合液の吸光度に基づいてアルカリホスファターゼ活性を測定する第三工程とを含み、前記チオジグリコール酸によって、前記測定試料中のビリルビンまたは溶血ヘモグロビンの、第三工程における吸光度測定に与える影響が低減されるアルカリホスファターゼ活性測定方法。【0008】発明を実施するための最良の形態本発明において測定されるALP活性は、例えばヒトまたは動物の血液、血清、血漿、尿、便、精液、髄液、唾液、汗、涙、腹水、羊水等の体液、臓器、組織、細胞等の抽出液等に含まれるALP活性をいい、ALPのアイソザイムの活性も含まれる。【0009】従来用いられているALP活性測定用試薬をそのまま2試薬系に分配した試薬組成では、ビリルビンならびに溶血ヘモグロビンによる各干渉でALP活性の測定結果に影響を及ぼすことがある。ALP活性測定系におけるこれらの干渉回避策を検討したところ、溶血性ヘモグロビンに対しては、チオジグリコール酸、メチオニン、β−チオジグリコールのいずれか少なくとも1を添加することにより効果が認められた。また、ビリルビンに対しては、含硫物質を添加することにより効果が認められる。含硫物質とは分子にイオウ原子を含むものであれば特に限定されないが、その例として、硫黄原子を含むオキソ酸、チオ酸およびこれらの塩、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオジグリコール酸、メチオニン、チオ尿素等が例示される。より好ましくはチオジグリコール酸、メチオニン、亜硫酸ナトリウム、チオ尿素のいずれか少なくとも1を試薬に添加することで効果が認められる。また、溶血ヘモグロビンの干渉回避作用のあるラウリル硫酸ナトリウム(以下、「SDS」という。)をこれらから選択されるいずれかの物質と共存させてもビリルビン干渉回避効果も保持されることから、SDSを併用することでビリルビンおよび溶血ヘモグロビンの各干渉を回避できることを見出し、本発明を完成した。【0010】ヒト血清中ALPは体内諸器官に広く分布し、多くのリン酸化合物を分解する生体膜の外側に局在する膜結合の酵素で、サブユニット2分子のダイマー状の構造であり、これに糖鎖がつく糖タンパク質である。例えば、クル病、繊維性骨炎、上皮小体機能亢進症、ベーチェット病、転移性骨癌、骨軟化症などの疾患や閉塞性黄疸、急性肝炎、肝硬変、転移性肝癌等で、ALP活性の上昇が見られる。【0011】本発明のALP活性の測定用試薬は、ヒトまたは動物の血液、血清、血漿、尿、便、精液、髄液、唾液、汗、涙、腹水、羊水等の体液、臓器、組織、細胞等の抽出液等に含まれるALPの測定に使用することができる。また、本測定法は、ALPのアイソザイムの活性測定に用いることもできる。【0012】本発明におけるALP活性測定用基質は、特に限定されるものではないが、例えばグリセロリン酸、p−ニトロフェニルリン酸、フェニルリン酸等が知られており、一般的にはp−ニトロフェニルリン酸が使用される。各ALP活性測定用基質において、ALPの作用により解離する発色化合物は、p−ニトロフェノールである。【0013】本発明の上記の基質を用いたALP活性の測定は、基質の分解速度を経時的に測定して吸光度の増加により算出して活性を測定することもでき、エンドポイント法で測定することも可能である。また、p−ニトロフェニルリン酸を基質としたALPの測定は緩衝液としてジエタノールアミン(diethanolamin;DEA)緩衝液、2−(エチルアミノ)エタノール(2−(ethylamino)ethanol;EAE)緩衝液、N−メチル−D−グルカミン(N−methyl−D−glucamine;MEG)緩衝液、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(2−amino−2−methyl−1−propanol;AMP)緩衝液を用いる方法が知られているが(検査と技術、Vol.29,No.3,p.225−230(2001))、本発明のALP活性測定用試薬および測定方法は、特にAMPを使用した場合に効果が認められる。【0014】本発明において、ビリルビンならびに溶血ヘモグロビンの各干渉回避のためにALP活性測定用試薬に含有させるチオジグリコール酸は、最終濃度が0.5〜100mM、好ましくは1.0〜50mM、より好ましくは2.0〜30mMとなるようにする。ここにおいて、最終濃度とは、測定系において測定用試料と測定用試薬を反応させる最終溶液量に対する濃度をいう。【0015】さらに、本発明はALP活性測定用試薬に上記チオジグリコール酸に加えて、溶血ヘモグロビンの各干渉回避のためにSDSを含有させることもできる。該SDSは、最終濃度が0.001〜1.0%、好ましくは0.005〜0.5%、より好ましくは0.01〜0.1%となるようにする。本発明は、チオジグリコール酸、または、さらにSDSを添加したALP活性測定用試薬および該測定用試薬を含む測定試薬キットならびにALP活性測定方法にも及ぶ。【0016】実施例以下に実施例で本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。【0017】実施例1抱合型ビリルビン濃度または溶血ヘモグロビン濃度が異なる試料の測定系において、ALP活性測定用試薬にチオジグリコール酸またはSDSを添加したときの効果を検討した。測定用試薬は以下のように調製した。(第一試薬)2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP) 350mM硫酸亜鉛 1.36mM酢酸マグネシウム 2.71mMN−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸 2.71mM(HEDTA)pH 10.4(30℃)(第二試薬)2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP) 350mM4−ニトロフェニルリン酸 65.1mMpH 10.4(30℃)第一試薬にチオジグリコール酸30mMを添加したものならびにSDS0.5%添加したものを調製した。【0018】測定用試料は以下の方法により調製した。(a)抱合型ビリルビン濃度が異なる血清試料管理血清QAP−トロール・1X(国際試薬製)の血清9容と抱合型ビリルビンを含まない水溶液または調製した抱合型ビリルビン(干渉チェック:国際試薬製)を含む水溶液1容を混合して、抱合型ビリルビン濃度が最大22mg/dLである血清の希釈系列を調製し、各測定用試料とした。(b)ヘモグロビン濃度が異なる血清試料管理血清QAP−トロール・1X(国際試薬製)の血清9容と溶血ヘモグロビンを含まない水溶液または調製した溶血ヘモグロビン(干渉チェック:国際試薬製)を含む水溶液1容を混合して、溶血ヘモグロビン濃度が最大480mg/dLである血清の希釈系列を調製し、各測定用試料とした。【0019】測定は以下の条件で行った。測定用試料5μLに第一試薬210μLを加え、37℃で5分間予備加温した後、第二試薬70μLを添加し、撹拌後405nm(主波長)および505nm(副波長)における単位時間当たりの吸光度の増加速度を比較した。ALP活性値が既知である酵素溶液の吸光度増加速度を元に、各測定用試料中の酵素活性を決定した。測定装置は日立7170形自動分析装置を使用した。【0020】結果を第1図〜第3図に示した。第1図より各濃度の抱合型ビリルビンによる干渉は、チオジグリコール酸の添加により回避されることが示された。また第2図より各濃度の溶血ヘモグロビンによる干渉は、チオジグリコール酸の添加により軽減されることが認められた。第3図より各濃度の溶血ヘモグロビンによる干渉は、SDSの添加により回避されることが確認された。【0021】実施例2抱合型ビリルビンまたは溶血ヘモグロビン(Hb)が含まれる測定用試料において、ALP活性測定用試薬にチオジグリコール酸およびSDSを添加したときの効果について検討を行った。測定用試料の調製および試薬の調製は以下の方法で行い、測定は実施例1と同様に行った。【0022】(測定用試料の調製)測定用試料は、実施例1と同様の方法で、抱合型ビリルビン濃度21.6mg/dLまたは溶血Hb濃度480mg/dLとなるように各調製した。(試薬の調製)第一試薬および第二試薬は実施例1に示したのと同様に調製した。さらに、第一試薬に、チオジグリコール酸30mMおよびSDS0.5%を併用して添加したものを調製した。チオジグリコール酸およびSDS添加効果の評価は、抱合型ビリルビンおよび溶血Hbを含まない測定系での測定値を100%とした相対値で行った。その結果を表1に示した。表1から明らかなようにチオジグリコール酸およびSDSの添加により抱合型ビリルビンならびに溶血ヘモグロビンの干渉が回避されることが示された。【表1】【0023】産業上の利用可能性以上説明したように、本発明のALP活性測定用試薬により、溶血性ヘモグロビンによる干渉ならびにビリルビンによる干渉を回避して、ALP活性の正確な測定値を得ることが可能となる。【図面の簡単な説明】第1図は、ALP活性測定系における抱合型ビリルビンの干渉について、チオジグリコール酸の添加の有無による相対的効果を示す図である(実施例1)。第2図は、ALP活性測定系における溶血ヘモグロビンの干渉について、チオジグリコール酸の添加の有無による相対的効果を示す図である(実施例1)。第3図は、ALP活性測定系における溶血ヘモグロビンの干渉について、SDSの添加の有無による相対的効果を示す図である(実施例1)。 測定試料中のアルカリホスファターゼ活性測定するための方法であって、チオジグリコール酸およびラウリル硫酸ナトリウムを含有する第一試薬と前記測定試料とを混合する第一工程と、前記第一工程で調製した混合液とp−ニトロフェニルリン酸、フェニルリン酸およびグリセロリン酸からなる群より選択される少なくとも一つのアルカリホスファターゼ測定用基質を含有する第二試薬とを混合する第二工程と、前記第二工程で調製した混合液の吸光度に基づいてアルカリホスファターゼ活性を測定する第三工程とを含み、前記測定試料にビリルビンおよび溶血ヘモグロビンの両方が含まれている場合に、前記チオグリコール酸およびラウリル硫酸ナトリウムによって前記測定試料中のビリルビンおよび溶血ヘモグロビンの両方の測定干渉が低減される、アルカリホスファターゼ活性測定方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る