タイトル: | 特許公報(B2)_結晶性熱可塑性ポリマー用核形成添加剤としてのヘキサヒドロフタル酸金属塩 |
出願番号: | 2002577173 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C08K 5/098,C07C 55/28,C08L 101/00 |
ダリン・エル・ドットソン シャオドン・エドワード・ジャオ JP 4046610 特許公報(B2) 20071130 2002577173 20020313 結晶性熱可塑性ポリマー用核形成添加剤としてのヘキサヒドロフタル酸金属塩 ミリケン・アンド・カンパニー 599060788 Milliken & Company 青山 葆 100062144 柴田 康夫 100083356 森住 憲一 100104592 高山 繁久 100122345 ダリン・エル・ドットソン シャオドン・エドワード・ジャオ US 09/820,569 20010329 20080213 C08K 5/098 20060101AFI20080124BHJP C07C 55/28 20060101ALI20080124BHJP C08L 101/00 20060101ALI20080124BHJP JPC08K5/098C07C55/28C08L101/00 C08K 5/00- 5/59 米国特許第03268499(US,A) H.N.BECK,Heterogeneous Nucleating Agents for Polypropylene Crystallization,Journal of Applied Polymer Science,米国,1967年 5月,Vol.11, No.5,p.673 6 US2002007820 20020313 WO2002078924 20021010 2004525227 20040819 12 20040408 大熊 幸治 本発明は、熱可塑性ポリマー物品に非常に望ましい性質を与えるためのヘキサヒドロキシフタル酸(以下、HHPAと称する)の特定の金属塩およびそれを含む組成物に関する。本発明のHHPA誘導体は、熱可塑性ポリマーの核剤および/または透明剤として有用であり、製造およいび取り扱いが実用的である。このような化合物は、優れた結晶化温度、剛さおよび対象ポリオレフィン中での酸掃去剤との相溶性を提供する。また、そのような化合物は、粉末化または顆粒処方として、非常に低い吸湿性、従って優れた貯蔵性を示す。そのような化合物を用いた熱可塑性ポリマー添加剤組成物およびポリマーの製造方法も、本発明に包含される。 全ての米国特許は、参照して全体としてここに引用される。 本明細書で使用されている「熱可塑性ポリマー」なる用語は、十分な熱に暴露した場合に溶融するが、十分に冷却すると、金型または同様の物品を用いることなく、その固化状態(元の形状ではない)を保持するポリマー物質を意味することを意図している。特にこの用語は、溶融した後に冷却すると、結晶性または半結晶性形態のいずれかをとる、上記の広い定義を満足するポリマーをもっぱら包含することを意図している。このような定義に含まれるポリマーの例は、限定さないが、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンおよびこれらの組み合わせ)、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリウレタン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)など(並びにこれらの組み合わせ)である。 熱可塑性ポリマーは、貯蔵容器、医療機器、食品包装材、プラスチックチューブおよびパイプ、棚ユニットなどを含む多様な最終用途で使用されてきている。このような基本組成物は、しかしながら、広範な用途に適合するためにある物理特性を示す必要がある。とりわけポリオレフィンでは、例えば、効果的で、耐久性があり、多用途のポリオレフィン物品を提供するためには、結晶化時の結晶の配列の均一性が必要である。これらの望ましい物理的特性を得るために、ある種の化合物および組成物は、成形または製造中にのポリオレフィン結晶成長のための核サイトを与えることが知られている。一般に、そのような核剤化合物を含む組成物は、核剤を含まないポリオレフィンに比べてずっと早い速度で結晶化する。より高い温度での結晶化は、製造サイクル時間を短縮し、物理的特性(一例として剛さ)に種々の改良をもたらす。 それ故、より速い結晶化および/またはより高い結晶化温度を与えるそのような化合物および組成物は、核剤として一般に知られている。そのような化合物は、その名称が示すように、熱可塑性ポリマーの溶融物の冷却時に結晶成長のための核サイトを与えるのに利用される。一般に、そのような核サイトの存在は、より多くのより小さい結晶を生成することになる。より小さい結晶が形成される結果、常に卓越した透明性が得られるということではないが、対象熱可塑性ポリマーを透明にすることができる。結晶寸法がより均一で、好ましくはより小さければ、光はより散乱されない。このようにして、熱可塑性ポリマー物品の透明性を改良することができる。従って、熱可塑性ポリマー用核剤化合物は、より高められた透明性、物理的特性および/またはより速い加工を達成するために、熱可塑性ポリマー産業にとって非常に重要である。 例として、ジベンジリデンソルビトールは、特にポリプロピレン最終製品のための一般的な核剤化合物である。1,3−O−2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール(以下、DMDBS)(商品名Millad(登録商標)3988としてMilliken Chemical から販売)のような化合物は、対象とするポリプロピレンおよび他のポリオレフィンに優れた核形成特性および透明性を与える。他のよく知られた核剤化合物には、安息香酸ナトリウム、2,2'−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム(NA−11として旭電化工業株式会社から販売)、ビス[2,2'−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸]アルミニウム(NA−21として旭電化工業株式会社から販売)、タルクなどが包含される。このような化合物は全て、高いポリオレフィン結晶化温度を与えるが、大規模の工業用途では、それぞれ独自の欠点を有している。 例えば、非常に重要なことは、典型的なポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)プラスチック物品に広く使用される他の添加剤に対するこれら化合物の相溶性である。例えば、ステアリン酸カルシルムは、安定剤(例えば、光安定剤、酸化防止剤など)を触媒残渣の攻撃から保護するための、典型的なポリプロピレン組成物中に存在する非常に一般的な酸中和剤である。残念なことに、上記核剤化合物のほとんどは、ポリオレフィン物品中のステアリン酸カルシウムと有害な反応を起こす。ナトリウムおよび他の金属イオンの場合、ステアリン酸塩からのカルシウムイオンが核剤のナトリウムイオンと位置を交換し、所望の機能に関して核剤を効果のないものにしてしまう。その結果、そのような化合物は、時には、望ましくないプレートアウトを生じ、全体とし核形成性能を低下させる(例えば、ポリオレフィンの加工中および後の結晶化温度の低下によって評価)。他の加工上の問題は、そのような化合物について明らかである。 上記した標準的な核剤に見られる他の問題点は、分散問題による一貫しない核形成であり、それによりポリオレフィン物品の剛さおよび衝撃強さが変化する。ポリオレフィン製造における実質的な均一性は、比較的均一な最終ポリオレフィン物品が得られるので、非常に重要である。得られる物品が十分に分散された核剤を含んでいなければ、物品全体が剛さを失い、低い衝撃強度しか有さない。 さらに、核剤化合物および組成物の所蔵安定性も、熱可塑性ポリマー用核剤における別の潜在的な問題であり、非常に重要でもある。核剤化合物は一般に粉末または顆粒状でポリオレフィン製造業者に供給され、かつ核剤の均一な小さい粒径は必要とされる均一な分散および性能を与えるために不可欠であるので、そのような化合物は貯蔵中にできるだけ小さい粒径を保持しなければならない。ある種の核剤、例えば安息香酸ナトリウムは、非常に高い吸湿性を示すので、その粉末は容易に水和され、粒子が凝集することになる。そのような凝集粒子は、対象熱可塑性ポリマー中での所望の均一な分散を達成するために、粉砕または他の加工方法により解凝集しなければならない。さらには、水和による望ましくない凝集は、使用者において供給および/または取扱い上の問題を生じる。 このような顕著な問題の故に、熱可塑性ポリマー産業においては、上述の問題を生じず、対象熱可塑性ポリマー自体、特に非常に多様な典型的かつ必要な酸掃去添加剤を含む熱可塑性ポリマーに優れたピーク結晶化温度を与える核剤/透明剤に対する要求が長年の間存在していた。現在まで、この目的のための最良の化合物は上記のものに止まっている。残念ながら、例外的に高いピーク結晶化温度、低い吸湿性、優れた分散性並びにそれに付随する透明性および剛さ、更に、最も標準的なポリオレフィン添加剤(例えば、最も重要なカルシウム有機塩型酸掃去剤)との相溶性を示す核剤は、異なる熱可塑性ポリマー分野には供給されてこなかった。これらの問題は、ポリオレフィンに限られず、核剤が使用される全ての熱可塑性ポリマー用途において一般的である。 従って、本発明の目的は、対象熱可塑性ポリマー物品および組成物中でステアリン酸カルシウムとの優れた相溶性を示す核剤およびその組成物を提供することである。本発明の別の目的は、例えばポリプロピレン物品および組成物に非常に高いピーク結晶化温度を与え、また、非常に良好な貯蔵安定性を有する添加剤組成物を与えるための著しく低い吸湿性を示す熱可塑性ポリマー核剤を提供することである。本発明の他の目的は、ポリオレフィンが非常に高い剛さおよび良好な透明性を発揮するように、簡単に分散できる核剤化合物を提供することである。加えて、非常に多くの最終用途のための種々の熱可塑性媒体に使用できる核剤化合物または組成物を提供することも、本発明の目的である。 従って、本発明は、式(I):[式中、M1およびM2は、共同してカルシウム、ストロンチウムおよび一塩基性アルミニウムから選択される単一金属カチオンであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、同一または異なって、水素、C1−C9アルキル(ここで、いずれか2つのビシナルまたはジェミナルアルキル基は、一緒になって6個までの炭素原子を有する炭化水素環を形成してもよい)、ヒドロキシ、C1−C9アルコキシ、C1−C9アルキレンオキシ、アミンおよびC1−C9アルキルアミン、ハロゲン並びにフェニルからなる群からそれぞれ選択される。2つのカルボン酸基は、金属カチオンが一塩基性アルミニウムまたはカルシウムカチオンである場合、シス配置であり、金属カチオンがストロンチウムである場合、シス配置またはトランス配置である。]で示される化合物の金属塩を包含する。 「一塩基性アルミニウム」なる用語は周知であり、2つのカルボン酸基が結合した単一カチオンとしてアルミニウムヒドロキシド基を含むことを意図している。さらに、これら可能な塩のそれぞれにおいて、非対称炭素原子の立体配置は、シスまたはトランスのいずれでもよいが、シスが好ましい。 上述のように、産業上の用途に適切な熱可塑性ポリマー用核剤を開発するためには、多くの重要な基準を満たす必要がある。本発明のHHPAカルシウム、ストロンチウム、一塩基性アルミニウムおよびリチウム塩は、これら重要な要求基準を十分に満足する。例えば、本発明の化合物は容易に水和せず、従って、そのような塩の顆粒または粉末は凝集または塊状化しない。このような保存安定性から得られるコスト上の利点は、熱可塑性ポリマー加工装置に導入する際に、凝集した粉末を分離する必要性は、あるとしてもほとんどないことから、明らかである。さらに、後で詳細に説明するように、本発明の塩は、種々のポリオレフィンおよびポリエステル組成物、特に、ランダムコポリマーポリプロピレン(以下、RCP)、ホモポリマーポリプロピレン(以下、HP)、耐衝撃性コポリマーポリプロピレン(以下、ICP)、シンジオタクチックポリプロピレン(s−PP)、ポリエチレンテレフタレート(以下、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)、およびこれらの混合物に、非常に高いピーク結晶化温度を与える。加えて、このような本発明の塩は、高い剛さ(弾性率)特性を、追加のフィラーおよび強化材を必要とせずに、全般的な最終ポリマー製品に与える。最後に、ポリプロピレン産業において重要なことであるが、本発明の塩は、ステアリン酸カルシウム共添加剤と有害な反応をしない。他の属性と組み合わされてこのような性質は、予測されず、予想もできない。 従って、本発明の化合物は、優れた核形成能を有する。これまで、先行技術、特にWales の米国特許第3,207,739号では、ある芳香族および環式脂肪族カルボン酸のナトリウム塩が検討されていた。この米国特許は、多くのそのような化合物の金属塩、特にナトリウム塩を開示しているが、広くはI族またはII族金属塩を説明している。しかしながら、この米国特許は、芳香族安息香酸塩、とりわけ安息香酸ナトリウムが、ポリオレフィン核剤用には最良の化合物であると明確に記載している。更に、この米国特許は、安息香酸塩のカチオンとしてストロンチウムのみを記載しており、熱加工上の問題からカルシウム塩を使用することは教示していない。加えて、この米国特許は、同特許で好ましいとされる安息香酸塩のカチオンとしてI族またはII族金属を同等に扱っているが、後に詳細に説明するように、マグネシウムおよびバリウムのような他のII族金属は、ポリオレフィン用核剤としてのHHPAについてはまったく効果がない。最後に、この米国特許ではっきりと好ましいとされている安息香酸ナトリウムに比べて、本発明の化合物は、ポリオレフィン物品の形成中のプレートアウトおよびブルーミングのより低い可能性、より低い吸湿性、およびさらに重要であるステアリン酸カルシウムとの低い反応性、それにより対象ポリオレフィン組成物中でのそれらの意図された能力を機能させるために許容される両化合物のより多い量を包含する、より有益な性質を有する(ただしこれらに限定されない)。 本発明のHHPA塩は、従って、上記の有益な性質を発揮させるために、対象熱可塑性ポリマー中に、約0.01〜2.0質量%、より好ましくは0.2〜1.5質量%、最も好ましくは0.05〜1.0質量%の量で添加される。マスターバッチには活性化合物を50%またはそれ以上含ませることが好ましいが、これに限定されるものではない。本発明のHHPA塩含有組成物、またはその組成物から製造される最終熱可塑性ポリマー物品中に所望により含まれる添加剤には、可塑剤、安定剤、紫外線吸収剤および他の類似の標準的な熱可塑性ポリマー用添加剤が包含される。この組成物中には、他の添加剤、とりわけ、酸化防止剤、抗菌剤(例えば、銀系化合物、好ましくは、ALPHASAN (登録商標)抗菌剤(Milliken & Company 製)のようなイオン交換化合物)、帯電防止剤、香料、塩素掃去剤なども含まれていてよい。これらの共添加剤は、容易な供給のために、核剤と共に、粉末、液体、若しくは圧縮/錠剤形で、混合物として存在していてよい。分散剤、例えばポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)ワックス、グリセリンのステアリン酸エステル、モンタンワックスおよび鉱油の使用は望ましい。基本的に、本発明のHHPA金属塩化合物は、標準的な熱可塑性ポリマー(例えば、最も好ましくはポリオレフィン)添加剤形、例えば、(限定するものではないが)粉末、小球、凝集体、液状分散体などとして、特に上記の分散助剤を含んで、存在する(20質量%またはそれ以上まで)。ブレンド、凝集、圧縮および/または押出しなどにより製造された組成物も望ましい。 ポリオレフィンまたはポリオレフィン樹脂は、少なくとも1種の半結晶性ポリオレフィンを含んでなるあらゆる物質を包含することを意図している。好ましい例には、アイソタクチックまたはシンジオタクチックポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ(4−メチル)ペンテン、ポリブチレン、およびこれらのブレンドまたはコポリマーを包含し、密度は高くても低くてもよい。本発明におけるポリオレフィンポリマーは、脂肪族ポリオレフィンおよび少なくとも1種の脂肪族オレフィンと1種またはそれ以上のエチレン性不飽和コモノマーとのコポリマーを含んでいてよい。一般に、存在するなら、コモノマーは少量、例えばポリオレフィンの質量に基づいて約10質量%以下、あるいは5質量%以下の量で供給される。そのようなコモノマーは、ポリオレフィンの透明性の改良を補助するように作用し、またはポリマーの他の性質を改良するように機能することができる。コモノマーは、より高い耐衝撃性を発生するように、より多い量(例えば、エチレン、10〜25%またはそれ以上)でもポリオレフィン中に存在してもよい(以下、耐衝撃性コポリマーまたはICP)。他のポリマーまたはゴム(例えば、EPDMまたはEPR)をポリオレフィンに配合してもよい。他のコモノマーの例には、アクリル酸および酢酸ビニルなどが包含される。 本発明により透明性および結晶化温度が都合よく改良されるオレフィンポリマーの例は、約10000〜約2000000、好ましくは約30000〜約300000の平均分子量を有する、2〜約6個の炭素原子を含む脂肪族モノオレフィンのポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリエチレン(PE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、アイソタクチックポリプロピレン(I−PP)、シンジオタクチックポリプロピレン(s−PP)、ランダムコポリマーポリプロピレン(RCP)、結晶性エチレンプロピレンコポリマー(ICP)、ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチルペンテン)、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)およびポリ(ビニルシクロヘキセン)である。本発明で用いるポリオレフィンは、基本的に、直鎖の通常のポリマーと記載され得るが、例えば、常套の低密度ポリエチレンに見られるような側鎖を場合により含んでいてよい。ポリオレフィンが好ましいが、本発明の核剤は、ポリオレフィンに限らず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびポリエチレンナフタレート(PEN)、さらにナイロン6、ナイロン66などのポリアミドのようなポリマーにも有益な核形成特性を与えることができる。一般に、同程度の結晶含有量を有するいずれの熱可塑性ポリマー組成物も、本発明の核剤により改良することができる。 本発明の組成物は、本発明のHHPA塩(または塩の組み合わせ若しくはそのような塩を含む組成物)を熱可塑性ポリマーまたはコポリマーに添加し、得られた組成物を適当な手段により単に混合するだけで得ることができる。次いで、組成物を、射出成形、射出吹込成形、射出延伸吹込成形、射出回転成形、押出し、押出し吹込成形、シート押出し、フィルム押出し、キャストフィルム押出し、発泡押出し、(例えば、フィルム、ブローフィルム、二軸配向フィルムへの)熱成形、薄肉射出成形などを含む異なる方法により加工・成形して、成形物品を得る。 核剤含有熱可塑性ポリマーは、限定されるものではないが、例えば医療機器(例えば、滅菌用途のための予備充填注射器、静脈点滴用容器および血液採取器具);食品包装材;液体容器(例えば、飲料、医薬、シャンプーなどの容器);衣装ケース;マイクロウエーブ照射物品;棚;収納戸棚ドア;機械部品;自動車部品;シート;パイプおよびチューブ;回転成形物品;吹込成形製品;繊維(紡糸または不織);圧縮成形製品;基本的に核形成の効果が有利である熱可塑性ポリマー物品として使用されることが意図される。 本発明の範囲の特に好ましいHHPAの塩およびそれらの組成物の例を以下に示す。<本発明のHHPA塩の製造> 実施例1 シスHHPAカルシウム: 機械式パドル撹拌機および温度計を備えた8L円筒形容器に、水(4L)および水酸化カルシウム(481g、6.49モル)を、室温で撹拌しながら加えた。このスラリーに、無水シス−ヘキサヒドロフタル酸(1kg、6.49モル)を加え、スラリーを50℃に加熱した。加熱しながら5時間撹拌した後、混合物は非常に濃厚になった。その時点で、水相のpHは約7であった。白色生成物を吸引濾過により集め、十分な量の水で洗浄し、真空オーブン中140℃で一夜乾燥した。乾燥質量は1270g(収率93%)であり、約400℃より高い融点を有していた。IRおよびNMRスペクトルは意図した生成物と一致した。 実施例2 シス−HHPAストロンチウム: 機械式撹拌機および還流冷却器を備えた500ml丸底フラスコに、無水シス−ヘキサヒドロフタル酸(15.4g、100ミリモル)、水(200mL)および水酸化ナトリウム(16g、400ミリモル)を加え、混合物を50℃に加熱した。加熱しながら2時間撹拌した後、塩化ストロンチウム・六水和物(26.7g、168ミリモル)を加えると、直ちに白色綿状沈殿物が発生した。白色生成物を吸引濾過により集め、十分な量の水で洗浄し、真空オーブン中110℃で一夜乾燥した。乾燥質量は25g(収率97%)であり、約400℃を超える融点を有していた。IRおよびNMRスペクトルは意図した生成物と一致した。 実施例3 シス−HHPAジリチウム: 還流冷却器、機械式撹拌機および温度計を備えた1L三ツ首丸底フラスコに、水(300mL)、水酸化リチウム・一水和物(17.7g、421ミリモル)および無水シス−ヘキサヒドロフタル酸(30.8g、200ミリモル)を加えた。3時間加熱還流した後、反応混合物を冷却し、次いで、アセトン(500mL)に注いだ。沈殿は生成せず、溶媒を回転蒸発により除去すると白色粉末が得られた。粉末をフィルタ上で冷水50mLにより洗浄し、固体を真空オーブン中85℃で一夜乾燥した。乾燥質量は37g(収率100%)であり、約350℃より高い融点を有していた。IRおよびNMRスペクトルは意図した生成物と一致した。 実施例4 シス−HHPA一塩基性アルミニウム: 機械式撹拌機を備えた500ml丸底フラスコに、シス−HHPAジナトリウム(10g、46.2ミリモル)および水(100mL)を加えた。均質になったとき、硫酸アルミニウム(15.4g、23ミリモル)の水(100mL)溶液を加えると、直ちに白色綿状沈殿物が生成した。50℃で30分撹拌した後、pHを9に調節し、白色固体を吸引濾過により集め、水(200mL)で洗浄し、真空オーブン中100℃で一夜乾燥した。乾燥質量は8.7g(収率88%)であり、約400℃を超える融点を有していた。IRおよびNMRスペクトルは意図した生成物と一致した。 実施例5(比較) シス−HHPAマグネシウム: 磁気撹拌バーを備えた500mlエルレンマイヤーフラスコに、水(200mL)およびシス−HHPAジナトリウム(20g、92.4ミリモル)を撹拌しながら加えた。均質になったとき、硫酸マグネシウム(11.1g、92。4ミリモル)の水(100mL)溶液をゆっくり加えた。3時間撹拌した後、溶媒を回転蒸発により除去すると白色固体が得られた。粉末をメタノール(300mL)中で超音波処理して副生物である硫酸ナトリウムを除き、濾過し、真空オーブン中110℃で一夜乾燥した。乾燥質量は17g(収率95%)であり、融点は400℃より高かった。IRおよびNMRスペクトルは意図した生成物と一致した。 実施例6(比較) シス−HHPAバリウム: 機械式撹拌機を備えた500ml丸底フラスコに、無水シス−ヘキサヒドロフタル酸(15.4g、100ミリモル)、水(200mL)および水酸化ナトリウム(16g、400ミリモル)を加えた。均質になったとき、塩化バリウム(20.8g、100ミリモル)の水(50mL)溶液を加えると、直ちに白色綿状沈殿物が生成した。30分撹拌した後、白色固体を吸引濾過により集め、水(100mL)で洗浄し、真空オーブン中115℃で一夜乾燥した。乾燥質量は30.7g(収率99%)であり、融点は400℃より高かった。IRおよびNMRスペクトルは意図した生成物と一致した。 実施例7(比較) シス−HHPAジ銀: 機械式撹拌機を備えた500ml丸底フラスコに、シス−HHPAジナトリウム(20g、92.4ミリモル)および水(100mL)を加えた。均質になったとき、硝酸銀(31.39g、184.8ミリモル)の水(100mL)溶液を加えると、直ちに白色綿状沈殿物が生成した。30分撹拌した後、白色固体を吸引濾過により集め、水(200mL)で洗浄し、真空オーブン中110℃で一夜乾燥した。乾燥質量は27.8g(収率78%)であり、融点は400℃より高かった。IRおよびNMRスペクトルは意図した生成物と一致した。 実施例8(比較) シス−HHPAジカリウム: 撹拌バーおよび還流冷却器を備えた500ml丸底フラスコに、無水シス−ヘキサヒドロフタル酸(44g、285.4ミリモル)、水(200mL)および水酸化カリウム(32g、570.8ミリモル)を加えた。均質になったとき、溶液を2時間加熱還流した。溶液を冷却し、溶媒を回転蒸発により除去した。白色固体をアセトン(250mL)で洗浄し、濾過し、真空オーブン中100℃で一夜乾燥した。乾燥質量は59.8g(収率84%)であり、融点は400℃より高かった。IRおよびNMRスペクトルは意図した生成物と一致した。サンプルは非常に吸湿性であったので、プラスチック中での試験は行えなかった(吸湿性結果については表3参照)。 <本発明のHHPA塩を含む核形成ポリオレフィンの製造> ポリプロピレンプラックを成形する前に、対象ポリプロピレンペレットの1kgバッチを下記表に従って製造した成 分 量ポリプロピレンホモポリマー(Himont Profax(登録商標) 6301 1000gIrganox(登録商標) 1010、主酸化防止剤(Ciba 製) 500ppmIrgafos(登録商標) 168、副酸化防止剤(Ciba 製) 1000ppm酸掃去剤(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム又はDHT4-A) 記載通り本発明HHPA塩 記載通り 基礎樹脂(ポリプロピレンホモポリマー、以下「HP」)および全添加剤を秤量し、次いで、Welex ミキサーにより1600rpmで1分間ブレンドした。次に全サンプルを、4つの加熱ゾーンを通して約204℃〜232℃の傾斜温度でKillion 一軸押出機により溶融配合した。押出機ダイの出口での溶融物温度は、約246℃であった。スクリューは、2.54cmの直径および24:1の長さ/直径比を有していた。溶融後、溶融ポリマーを60メッシュ(250ミクロン)スクリーンにより濾過した。次いで、対象ポリプロピレンのプラックは、押出機からArburg25トン射出成型機に送って作成した。成型機は、いずれの個所も190℃から260℃の間、好ましくは190℃から240℃の範囲、最も好ましくは約200℃から230℃の範囲の温度に設定した(以下の表では標準温度は220℃であった)。プラックは、約51mm×76mm×1.27mmの寸法を有し、金型が鏡面仕上げであったので、得られたプラックも鏡面仕上げを示した。金型冷却循環水は約25℃の温度に制御した。同じ基本手順により、耐衝撃性コポリマーポリプロピレン(ICP、表2)のプラックを製造した。 曲げ弾性率試験(1%割線モジュラスとして報告)は、上記のプラックについて、MTS Sintech 1/S: 40" 装置を用い、ASTM D790に従って、49mmのスパン、1.28mm/分の固定撓み速度、1.27mmの呼称サンプル厚さ、および50mmの呼称幅で行った。 核形成能は、対象プラックを溶融し、約20℃/分の速度でプラックを冷却し、ポリマーの結晶の再形成が生じる温度(Tc)を記録することにより、ポリマー再結晶化温度として測定した(この温度は、核形成添加剤の存在により提供されるポリマー結晶形成の速さを示す)。結晶化半値時間(half-time)(T1/2)も、核剤がどの程度成型サイクル時間を短縮したかを決定することができる有用なパラメータである。この試験では、対象プラック(ICP)を220℃で溶融し、200℃/分の呼称速度で140℃に冷却し、その時点で、半高さでの結晶化温度を測定した。上記測定のいくつかまたは全てについて比較するために、核形成添加剤を含まない対照プラック、並びにNA−11およびNA−21(旭電化製)並びに安息香酸ナトリウムを含むプラックも製造した。 下記表1および2は、数種の本発明HHPA塩の性能データを、ピーク結晶化温度(Tc)、ヘイズ(%)および曲げ弾性率(下記の全ての温度は、±0.5℃の統計誤差を有し、全てのヘイズ測定値は、±0.25ヘイズ単位の統計誤差を有している)、並びに結晶化半値時間(T1/2)として示している。添加した酸掃去剤は次の通りである:ステアリン酸カルシウム(CS)、ジヒドロタルサイト(DHT4-Aとして知られる協和化学製市販品)およびステアリン酸リチウム(LS)。これら化合物は、被検プラックを製造するために、約400〜800ppmの量で対象ポリプロピレン組成物に添加し、一方、本発明HHPA塩は、(別途記載しない限り)0.25質量%の濃度で添加した。アステリスク(*)は、測定を行わなかったことを示す。 このように、本発明のHHPA塩は、比較例に比べて、特に非常に望ましい酸掃去剤を添加した場合に、一貫してより高いピーク結晶化温度、並びにより低いヘイズおよび一貫して高い曲げ弾性率を示した。 このように、本発明のHHPAカルシウムは、従来技術の核剤と比較して、許容できるピーク結晶化温度および結晶化半値時間を示した。 <吸湿性試験> この試験は、湿分吸収に適した表面積を与えるように粉砕した生成物について行った。各実施例の生成物を時計皿に広げ、真空オーブンで乾燥した直後に、秤量した。次いで、サンプルを制御した湿度(65%)の雰囲気中に置き、質量を7日間毎日測定した。質量増加割合(%)を、7日での湿分吸収パーセントと規定した。表3に結果を示す。 上記のデータから、実施例1の本発明の化合物は、従来技術の核剤およびより高い分子量のI族金属塩(ジナトリウム)に比べ、大きく低減された吸湿性を示すことが明らかである。 <実施例1の化合物(5000ppm)を用いた核形成PETの製造> C. W. Brabender トルクレオメータを用い、5000rpmで、Shell Cleartuff(登録商標)8006 PETボトル級樹脂(0.80のIVを有する)に、添加剤を配合した。全ての樹脂は、20ppm未満の湿分まで乾燥した。サンプルを採り、プレスし、急速に冷却して、20〜40milのフィルムを得た。分析の前に、全サンプルを減圧下、150℃で6時間乾燥した。5mgのサンプルを、窒素雰囲気中、Perkin Elmer System 7 示差走査熱量計を用いて20℃/分の加熱および冷却速度で、分析した。サンプルを冷却前に290℃で2分間保持した後、Tcデータを収集した。データを下記表4に示す。 このように、実施例1の本発明化合物は、核剤化合物を含まない対照品に比べ、ポリエステルに改良された核形成特性を与える。 上記に本発明を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく変更または改変ができることは当業者には自明である。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ決定されなければならない。 式(I):[式中、M1およびM2は、共同してカルシウム、ストロンチウムおよび一塩基性アルミニウムから選択される単一金属カチオンであり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、同一または異なって、水素、C1−C9アルキル(ここで、いずれか2つのビシナルまたはジェミナルアルキル基は、一緒になって6個までの炭素原子を有する炭化水素環を形成してもよい)、ヒドロキシ、C1−C9アルコキシ、C1−C9アルキレンオキシ、アミンおよびC1−C9アルキルアミン、ハロゲン並びにフェニルからなる群からそれぞれ選択される。2つのカルボン酸基は、金属カチオンが一塩基性アルミニウムまたはカルシウムカチオンである場合、シス配置であり、金属カチオンがストロンチウムである場合、シス配置またはトランス配置である。]で示される金属塩化合物。 R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10のそれぞれは水素であり、M1およびM2は共同して単一のカルシウムイオンであり、2つのカルボン酸基はシス配置である請求項1に記載の化合物。 少なくとも1つの熱可塑性ポリマー成分および請求項1または2に記載の化合物の少なくとも1つを含んでなる熱可塑性ポリマー物品。 該ポリマーはポリプロピレンを含んでなる請求項3に記載の熱可塑性ポリマー物品。 該ポリマーはポリエステルを含んでなる請求項3に記載の熱可塑性ポリマー物品。 請求項1または2に記載の化合物の少なくとも1つを含んでなるポリマー添加剤組成物であって、該添加剤組成物は、粉末、ペレットまたは液体からなる群から選択される形状で存在し、該組成物は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、および所望により、可塑剤、酸掃去剤、酸化防止剤、抗菌剤、難燃剤、光安定剤、帯電防止剤、発泡剤、着色顔料およびこれらの組み合わせを含んでなる組成物。