タイトル: | 特許公報(B2)_腫瘍又はヒト乳頭腫ウイルス性疾患の予防剤又は治療剤 |
出願番号: | 2002571082 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,A61K35/78,A23L1/30,A61K31/525,A61K31/702,A61K35/70,A61K35/72,A61K35/74,A61P1/10,A61P1/14,A61P17/00,A61P17/12,A61P31/12,A61P35/00 |
鈴木 信孝 太田 富久 JP 3590042 特許公報(B2) 20040827 2002571082 20010302 腫瘍又はヒト乳頭腫ウイルス性疾患の予防剤又は治療剤 鈴木 信孝 599142604 別府 邦英 503110152 太田 富久 503110509 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 鈴木 信孝 太田 富久 20041117 7 A61K35/78 A23L1/30 A61K31/525 A61K31/702 A61K35/70 A61K35/72 A61K35/74 A61P1/10 A61P1/14 A61P17/00 A61P17/12 A61P31/12 A61P35/00 JP A61K35/78 U A61K35/78 M A23L1/30 B A61K31/525 A61K31/702 A61K35/70 A61K35/72 A61K35/74 G A61P1/10 A61P1/14 A61P17/00 A61P17/12 A61P31/12 A61P35/00 7 A61K 35/78 A23L 1/30 A61K 31/525 A61K 31/702 A61K 35/70 A61K 35/72 A61K 35/74 BIOSIS(STN) CA(STN) JICSTファイル(JOIS) MEDLINE(STN) 特開平11−169161(JP,A) 特開平02−311421(JP,A) 特開平05−112455(JP,A) 特開昭60−027365(JP,A) 特開平11−113600(JP,A) 特開平01−168245(JP,A) 特開平11−139979(JP,A) 安田和正 他,ハトムギのVirus性疣贅に対する実験的研究(第2報),東京女子医科大学雑誌,1983年,Vol.53,No.2,pp.127-131 平野京子 他,ハトムギのVirus性疣贅に対する実験的研究(第3報),西日本皮膚科,1983年,Vol.45,No.4,pp.602-608 9 JP2001001655 20010302 WO2002072123 20020919 22 20030325 鶴見 秀紀 技術分野本発明は、ハトムギの殻・薄皮・渋皮の発酵処理物若しくは酵素処理物又はこれらの葉酸若しくは田七人参配合物を含む食品用又は医薬用組成物に関する。当該医薬組成物は抗腫瘍効果、抗ヒト乳頭腫ウイルス性疾患に対する効果、各種皮膚疾患や便秘等に対する効果を有するため、腫瘍の化学予防は治療、尖圭コンジローマ、尋常性疣贅、青年性扁平疣贅、老人性疣贅又は喉頭乳頭腫等のヒト乳頭腫ウイルス性疾患の予防又は治療、あるいは各種皮膚疾患や便秘症の予防又は治療に有用である。背景技術イネ科のジュズダマ属のハトムギ(Coix Seed, Job's tears)[学名:Coix lachryma-jobi L. var. ma-yuen(Roman.)Staph]の穀実〔学名:種子〕は、その最外層から内層に向かって殻〔学名:総苞〕、薄皮〔学名:護頴、内頴、外頴〕、渋皮(糠)〔学名:果皮〕、子実(果肉)〔学名:頴果〕から構成されている。現在ハトムギを原料に麺類、菓子等の多くの食品が開発されているが、通常ハトムギを食品として摂取する場合は、その殻と薄皮と渋皮は脱穀して取り除かれ、子実の部分が利用されている。特に殻は非常に堅く、そのまま食することができないので、栄養補助食品等の素材には不向きとされてきた。ただし例外的にハトムギ茶だけは、穀実のまま煎って利用されている。また、「日本薬局方」に記載され、日本では漢方薬としても知られているヨクイニンとは、ハトムギの穀実を採集し脱穀(殻、薄皮及び渋皮を除去)して乾燥させた子実であると定義されている。したがってヨクイニンには、殻、薄皮及び渋皮は含まれていない。食品分野において「ハトムギ」と一般に呼称されている用語は、明記がない限り脱穀した子実を指すことが多く、殻、薄皮及び渋皮を含む場合は皮付きヨクイニン、皮付きハトムギ又は殻付きハトムギなどと呼称されている。したがって、たとえばハトムギエキスと呼称されたものは明記がない限り、脱穀したハトムギのエキスを指している。また、発酵によってハトムギから味噌や酢を製造する場合も明記がない限り脱穀ハトムギが使用されている。日本の医学臨床ではヨクイニンの熱水抽出エキスが用いられ、尋常性疣贅と青年性疣贅に保険適用が認められている。また、漢方薬として他剤と調合される場合もヨクイニンの熱水抽出エキスが用いられている。臨床で用いるヨクイニンエキス散剤・錠剤は、ヨクイニンから抽出した水製乾燥エキスを含有する製剤であり、通常は、散剤は6g中水製乾燥エキスを2g、錠剤は18錠中水製乾燥エキスを2g含有している。ヨクイニンエキスが尋常性疣贅や青年性扁平疣贅に有効であることは周知のこと(山田義貴ら、西日本皮膚科、1993; 55: 106-11./別府邦英ら、医学と薬学、1996; 36: 69-90.)とされているが、実際は難治性のことが多く、完治させるのに手こずる症例が多い。また、疣贅の治療法には外科的切除、電気燃灼術、液体窒素凍結療法などを用いるが、疣贅が多発している場合は苦慮することが多い。また、難治例にはブレオマイシン軟膏、5-FU軟膏等の抗癌剤を塗布することがあるが、副作用に懸念が持たれ、新しい安全性の高い治療薬の出現が待たれている。ヨクイニンは、伝染性軟属腫に対する有効性も報告されている(新村眞人ら、皮膚、1987; 29: 762-78.)が、この疾患もヨクイニン抵抗性のものもしばしばみられ治療に苦慮することが多い。尖圭コンジローマは、尋常性疣贅などと同じくヒト乳頭腫ウイルスによって外陰部や肛門周囲に難治性の乳頭腫状皮疹を生じる疾患である。ヨクイニン内服が効力を示す場合もある(山田義貴ら、皮膚臨床、1993; 35: 1020-1.)が、ふつうヨクイニンは尖圭コンジローマに対して効果が弱いとされ、代わりに電気焼灼等で治療が行われ、患者に多大の苦痛を与えることが多い。ウイルス性疣贅の治療にヨクイニンを使用することが日本以外ではほとんど行われていないのは、上記のようにその効力が弱いためとされている。元来ハトムギは安全な食べ物であるので、ヨクイニンより効力が向上したハトムギ製剤が開発されれば、世界中で使用される可能性がある。ヨクイニンがどのような作用機序によってウイルス性疣贅に効果があるのかは、完全には解明されていないが、溝口らはヨクイニンが単球-マイクロファージ系細胞に作用し、インターロイキン-1の産生増強を介して抗体産生細胞を増強することを報告している(溝口靖紘ら、和漢医薬学会誌、1986; 3: 170-6.)。また、金田らはヨクイニン内服によりNK細胞活性とMHC非拘束性細胞障害性T細胞の増強を認めている(金田達成ら、臨床薬理、1992; 40: 179-81.)。さらに、ヨクイニンにとって細胞損害性T細胞が活性化し、抗ウイルス作用がもたらされるとする報告もなされている(Hidaka Y et al., Biotherapy. 1992; 5: 201-3.)。ヨクイニンの抗腫瘍活性については、ヨクイニンのエーテル脱脂後のアセトン抽出液がマウスのエールリッヒ腹水癌を抑制したことから一連の研究が始まった(中山宗春ら、千葉医学会雑誌、1958; 34: 324ー5.)。そして、Coiexenolideという脂質が単離され(Ukita T et al., Chem. Pharma. Bull. 1961; 9: 43-6.)、ついで合成され(Tanimura A., Chem. Pharma. Bull. 1961; 9: 47-53.)、この物質がヨクイニンの抗腫瘍活性の薬理活性成分であるとされた。しかし、その後のCoiexenolideについて追試が行われたが、確認されておらず(長尾常敦ら、日本薬学会第103年会講演要旨集、1983; P203.)、ヨクイニンにはCoiexenolideを含むものと含まないものがある可能性も指摘されている(ヒキノヒロシ、現代東洋医学、1988; 9: 51-54.)。その他、活性画分が遊離脂肪酸混合物であるとする報告(沼田光弘ら、日本癌学会第43回総会講演要旨集、1984; P919.)や、不飽和脂肪酸(リノール酸)であるとする報告がみられた(沼田光弘ら、日本癌学会第46回総会講演要旨集、1987; P1585.)が、未だ明確にはなっていない。またラット胆管癌に対しヨクイニンの経口投与でその増殖が抑制されることが報告され(岩波黄葵,大阪医大誌、1972; 31: 145-161.)、ヨクイニンのメタノールエキスの制癌作用(小菅卓夫ら、薬誌、1985; 105: 791-5.)やRaji細胞に対して細胞毒性も示されている(木島孝夫ら、生薬誌、1987; 41: 344-8.)。Raji細胞を用いたEpstein-Barrウイルス早期抗原(BV-EA)発現試験で発癌予防作用をスクリーニングし、予防作用の見られたヨクイニンを用いて、マウス皮膚二段階発癌抑制試験を行なったところ、ヨクイニン投与群では腫瘍発生の数が減少し抑制効果が認められ、また紫外線照射発癌においてもヨクイニンの経口投与で抑制作用が認められている(徳田春邦、Fragrance. Journal. 1995; 8: 94-100.)。子宮頸部軽度異型上皮(CIN1)3例に対し、ヨクイニンエキスを投与し5ヶ月から1年後に効果が見られたとする報告(張艶萍ら、産婦人科の世界、1999; 51: 111-3.)もあるが、症例数が少ないことと対照群が設定されていないため有効性については明確ではない。このように、ヨクイニンの抗腫瘍効果や有効成分は研究されてきているが、ハトムギの殻、薄皮、渋皮についての研究はほとんどなく、ハトムギの果皮、種皮の熱水抽出エキスとエーテルエキスが、培養ヒトTリンパ芽球性白血病細胞、培養ヒト悪性黒色腫細胞などに対して細胞障害性を持つことが報告されているのみである(安田和正、西日本皮膚、1983; 45: 203-9. / 安田和正ら、東女医大誌、1983; 53: 127-131.)/ 平野京子ら、西日本皮膚、1983; 45: 602-8./ 平野京子ら、西日本皮膚、1984; 46: 922-7.)。このほか、ハトムギの抗腫瘍効果については、古くからいくつか報告されているが、いまだにはっきりとした臨床効果が提示されていないため、癌の治療にヨクイニンを使用している日本の医師は少なく、欧米ではほとんど全く使用されていないのが実状である。食物を発酵して食する習慣は古くからあり、ハトムギも発酵して食品を製造することが考案されている。例えば、ハトムギの処理法(特開平5-31380号公報)には、脱穀の仕方が記載されており、コイキソール含有食品(特開平6-22726号公報)では、ハトムギの発芽した芽だけを使う旨が記載されている。しかし、特開平6-22726号公報記載の発明では、殻、薄皮、渋皮は使っていない。鳩麦エキス抽出方法及び該抽出方法により得られた鳩麦エキス並びに該鳩麦エキスを含有有効成分とする皮膚改善用品(特開平7-274914号公報)では、実施例において外皮を除去した鳩麦が明記されており、殻、薄皮、渋皮についての記載はない。また、特開平7-274914号公報に記載の発明は、鳩麦に澱分分解酵素、蛋白質分解酵素、麹菌、多糖類分解微生物のうち少なくとも一つを加え反応させて鳩麦エキスを抽出する方法であるが、鳩麦に澱分分解酵素等を使う方法は、すでにはとむぎ乳酸発酵飲食物及びその製法(特開昭57-5151号公報)の本文中に明記されている方法であり、公知の方法である。さらに、蛋白分解酵素を使う方法は、生理活性ペプチド組成物の製造法(特許第3108059号)においてもすでに公知となっている。また、麹菌や多糖類分解微生物を使う方法も、上記特開昭57-5151号公報、「はとむぎ醤油、その諸味及び麹」(特開昭57-48947号公報)、「ハトムギ入り納豆の製造法」(特開昭58-8826号公報)、「ハトムギ酒の製造方法」(特開昭59-51785号公報)等に記載があり、公知の方法である。なお、特開平7-274914号公報には、ハトムギの殻、薄皮、渋皮に各種酵素を作用させたり、発酵する方法やその効用についての記載は見られない。「栄養強化ハトムギ」(特開平8-39号公報)は、蒸煮した脱穀ハトムギを主成分とする培養基を使用している。「抗アレルギー剤、ケミカルメディエーター遊離抑制剤及びこれを含有する抗アレルギー性化粧料,医薬品並びに食品」(特開平10-120583号公報)では、ハトムギの種皮を除いた種子が記載されており、殻には言及していない。「皮膚外用剤」(特開2000-119155号公報)の発明の実施の形態では、「ハトムギ(ヨクイニン)」の記載はあるが、殻と明記がなく、また抽出法も明記されていない。「チロシナーゼ生成抑制剤及びこれを含有する皮膚外用剤」(特開2000-256131号公報)は、ヨクイニン抽出物を混合する外用剤である。「皮膚外用剤」(特開2000-319157号公報)では、主として種皮を除いたヨクイニンが用いられると明記されている。「皮膚外用剤」(特開2000-327552号公報)では、ハトムギ抽出物の記載はあるが、殻、薄皮、渋皮については明記がない。「皮膚外用剤」(特開2000-44481号公報)においては、ハトムギ抽出は水または水性有機溶媒で抽出すると明記してあり、殻、薄皮、渋皮についても記載がない。その他、「乳酸発酵飲食物及びその製法」(特開昭52-92662号公報)、「はとむぎ醤油」(特開昭55-96074号公報)、「ハト麦納豆の製法」(特開昭55-54868号公報)、「ハトムギ入り納豆の製造法」(特開昭58-8826号公報、特開昭58-31905号公報)、「ヨクイニンを主剤とするイボとり外用剤の製造方法」(特開平5-221870号公報)、「油性製剤およびその製造方法」(特開平6-9421号公報)、「味噌、しょうゆ等調味料の製造方法」(特開平7-236447号公報)、「抗酸化組成物及びその製造方法」(特開平8-103245号公報)、「細胞賦活剤及びこれを配合した皮膚外用剤」(特開平9-77634号公報)、「ハトムギ紅麹とその製造法及びα型乾燥ハトムギ紅麹とそれらを用いた食品」(特開平10-84944号公報)がみられるが、いずれもハトムギの殻、薄皮、渋皮を発酵させたとする正確な実施例や殻、薄皮、渋皮の発酵の重要性については触れられていない。特許となったものとしては、「ハトムギ酒の製造法」(特許番号第2631660号公報)があるが、殻、薄皮、渋皮については明記がない。鎮痛用医薬組成物(特許第2958198号公報)はほ乳動物の胸腺を主成分とし、ハトムギエキス等を加えるものであるが、殻付きハトムギエキスと明言はしていない。「抗核抗体減少用医薬組成物及びリウマチ因子減少用医薬組成物」(特許第2978432号公報)は、胸腺を主成分としハトムギエキスを加える旨が記載されており、ハトムギは乾燥原料を細切断したものを30%エタノール液で抽出する旨が記載されている。「生理活性ペプチド組成物の製造法」(特許第3108059号公報)は、精白ハトムギ粉末に酢酸およびプロテアーゼ処理した製造法であり、殻、薄皮、渋皮を使用していない。以上述べたように、いずれもハトムギの殻、薄皮、渋皮を発酵させた実施例、あるいは殻、薄皮、渋皮を発酵又は発酵処理することの医学的意義については言及されていない。また、ハトムギの構造に関する植物学的用語の用い方に誤りがあったり、ハトムギのどこの部分を使用したのかはっきりと明言したものがなく、曖昧な表現が多い。発明者が調べたかぎり、ハトムギの殻、薄皮、渋皮を発酵した製品で公知のものは2つある。野々山らのハトムギ酢の製造法(特開昭58-884号公報)は、殻付きハトムギを発芽・乾燥・焙焼することを特徴とし、ハトムギに優れた香味を持たせることを目的としたものである。しかしながら、医学的効用については記載されていない。「醤油の醸造法」(特許第2879618号公報)は、丸大豆とハトムギ種実とを配合した原料を用いて麹をつくり、これに調整した塩水を加えて仕込みを行い、これを発酵熟成させて熟成諸味となし、その後搾汁、火入れ、おり引きを行って醤油製品とするハトムギ種実を使った醤油の醸造法である。この発明はハトムギ脱皮の省力化を図るものであり、ハトムギの実の一部しか使用しないのは無駄が多いことなどの欠点を改善するために考案されたものである。しかしながら、当該公報にも、醤油の医学的効用については記載されていない。日本国以外の特許においてハトムギに関与したものとしては以下のものがある。「Melanin inhibitor」(米国特許4,978,523号)はcinnamic acid誘導体のメラニンの抑制に関する特許であり、上記誘導体とハトムギとを組み合わせる旨が記載されているが、ハトムギの殻、薄皮、渋皮を使用したと明言されていない。また、ハトムギの抽出方法に関する記載がない。「Fertility drug and method of producing the same」(米国特許5,023,249号)は、ハトムギの糠から抽出した排卵誘発剤に関するものである。「Neutral lipids from endosperm of Job's tears」(米国特許5,444,089号)は、ハトムギの子実の内胚乳から抽出した中性脂肪の抗腫瘍活性及び免疫賦活について述べたものであり、殻、薄皮、渋皮は使用していない。また、抽出法も有機溶媒を用いたものであり、本発明者が用いた抽出法方法とは相違し、有効物質も異なる。「compositions with analgesic, antipyretic and antiinflammatory properties」(米国特許5,908,628号)は、ハトムギを含む12種類の構成物からなる鎮痛・解熱・抗炎症剤である。使用しているのはハトムギの子実であり、用途も本発明とは異なる。「Roasted soybean hypocotyls and beverage material containing the same」(米国特許5,972,410号)は、大豆を煎ったもの及びハトムギを煎ったものなどからなる飲料についての特許であり、発酵・酵素エキスではない。また、その効能についても記載されていない。その他の特許いずれも、ハトムギの殻、薄皮、渋皮、子実の発酵食品/エキス及び発酵食品/エキスについての記載及びその効能については言及されていない。以上記載したごとく、検索ではヨクイニン(子実)については多数の文献や特許が発表されているが、殻、薄皮及び渋皮に関する報告は上記したごとくハトムギの果皮、種皮の熱水抽出エキス及びエーテルエキスの抗腫瘍活性についての基礎的知見に関するものだけであり、殻、薄皮及び渋皮の酵素食品やエキスについては報告がない。また、殻、薄皮及び渋皮の発酵食品やエキスについては論文はなく、特許では特開昭58-884号公報と特許2879618号公報がみられるが、いずれもその効用に関する記載はない。緑黄色野菜などに多く含まれる葉酸は、ビタミンB12と協調してアミノ酸の代謝やタンパク質の合成、特にRNAやDNAの生成に関与し、細胞の分裂・複製、組織の増殖に重要な機能を果たす。例えば、葉酸の機能としては、二分脊椎や無脳症などの先天異常の発症リスクを低下させる効果、あるいは神経伝達に関する補酵素的役割を果たしたり(痴呆、先天性精神発育遅延、知能指数低下に関与)、免疫系、特に白血球の数と機能や赤血球の形成に関与するとされている。葉酸と、子宮頸部異型上皮、上皮内癌又は進行性子宮頸部癌との関係については、以前から論議されている。子宮頸部異型上皮は、軽度異型上皮 (mild dysplasia/CIN I)、中等度異型上皮(moderate dysplasia /CIN II)及び高度異型上皮(severe dysplasia/CIN III)からなり、さらに異型度が増せば、上皮内癌(CIS:carcinoma in situ、早期癌:子宮頸部癌0期、CIN分類ではCIN IIIに含まれる)となる。CINとは、Cervical Intraepitheal Neoplasia(頸部上皮内新生物)の略である。また、最近では、CIN Iをlow grade SIL、CIN IIとCIN IIIをhigh grade SILと呼ぶことが多くなった。SILとはSquamous Intraepitheal Lesionの略である。1980年に、経口避妊剤服用患者における子宮頸部癌発生リスクは、葉酸投与によって減少するかもしれないという指摘がなされた(Check WA., JAMA. 1980; 244: 633-4.)。その後、1985年には子宮頸部癌の患者の血清葉酸値は有意に低いことが報告されたが(Orr JW Jr et al., Am. J. Obstet. Gynecol. 1985; 153: 775-9.)、1991年には進行性子宮頸部癌の病因に血清葉酸の関与は否定的であると報告された(Potischman N et al., Cancer. Res. 1991; 51: 4785-9.)。また、赤血球中の葉酸を測定することによって、葉酸はCINに対して防護的作用を持っていることが推定された(VanEenwyk J et al., Cancer. Epidemiol. Biomarkers. Prev. 1992; 1: 119-24.)。別の報告でも、葉酸は子宮頸部異型上皮発生に対して防護的作用を持っているとみなされたが、上皮内癌や進行性子宮頸部癌の発生に対しては防護的作用を持っていないとされた(Potischman N., J. Nutr. 1993; 123(2 Suppl): 424-9.)。また、実際に葉酸をヒトに投与して効果が調べられた。すなわち、331人のkoilocytic atypia、軽度異型上皮、中等度異型上皮の患者に一日5mgの葉酸を服用させ、6か月後に改善効果を比較したが、プラセボを内服した群との差は認めないという結果に終わった(Childers JM et al., Cancer. Epidemiol. Biomarkers. Prev. 1995; 4: 155-9.)。さらに、CIN I又はCIN IIの患者154例に一日10mgの葉酸を服用させ、6か月後に葉酸の効果を評価したが、これもプラセボを内服した群との差は認めなかった(Zarcone R et al., Minerva. Ginecol. 1996; 48: 397-400.)。1997年に、CIN-HPV(+) の女性は、統計的に葉酸の血中レベルが低いということから、CINの病因に関与しているのではないかとする論文が発表された(Kwasniewska A et AL., Eur. J. Gynaecol. Oncol. 1997; 18: 526-30.)。翌1998年には、正常7例、CIN I 30例、CIN II 18例、CINIII 13例、上皮内癌(CIS) 11例に対する食事中の葉酸摂取量を調査したところ、葉酸は、子宮頸部の発癌性に関与しないとの結果が出た(Kantesky PA et al., Nutr. Cancer. 1998; 31: 31-40.)。このように、葉酸と子宮頸部癌の発生との関係については、まだはっきりとした結論は出ておらず、混沌とした様相を呈している。しかし、少なくとも一旦出来上がった頸部異型上皮、上皮内癌又は進行子宮癌に対して葉酸を投与しても効果がなく、病変が正常に戻ることはないと結論されている。なお、これまでにハトムギの殻、薄皮、渋皮の発酵食品/エキス、又は酵素食品/エキスに葉酸を配合した組成物に関する報告や特許はない。ウコギ科の田七人参(学名Panax notoginseng)は、三七人参ともいわれ、中国雲南省の産であり、有効成分はサポニンをはじめいくつか知られている。田七人参は比較的良く研究されている食品であり、文献的には心機能に与える影響(Feng PF et al.,Chung. Kuo. Chung. Hsi. I. Chieh. Ho. Tsa. Chih. 1997; 17: 714-7./Huang YS et al., Burns. 1999; 25: 35-41.)や、抗不整脈作用(Li XJ et al., Yao. Hsueh. Hsueh. Pao. 1988; 23: 168-73./Liu S et al., Chung. Kuo. Yao. Li. Hsueh. Pao. 1984; 5: 100-3.)、抗高血圧作用(Kwan CY., Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. 1995; 22(Suppl 1): 297-9.)、出血性ショックに対する作用(Li LX et al., Chung. Kuo. Yao. Li. Hsueh. Pao. 1988; 9: 52-5.)や実験的DICに対する作用(Kubo M et al., Yakugaku. Zasshi. 1984; 104: 757-62.)、虚血性脳障害に対する作用(Han JA et al., Chung. Kuo. Chung. Hsi. I. Chieh. Ho. Tsa. Chih. 1996 ; 16: 506-7./ Jiang KY et al.,Chung. Kuo. Yao. Li. Hsueh. Pao. 1995; 16: 399-402.)、抗脂血作用(Xu Q et al., Chung. Kuo. Chung. Yao. Tsa. Chih. 1993; 18: 367-8.)、血糖降下作用(Gong YH et al., Yao. Hsueh. Hsueh. Pao. 1991; 26: 81-5.)、抗炎症作用(Li SH et al., Chung. Kuo. Yao. Li. Hsueh. Pao. 1999; 20: 551-4. /Hao CQ et al., Chung. Kuo. Yao. Li. Hsueh. Pao. 1986; 7: 252-5.)などが報告されている。腫瘍関係の文献では、田七人参から得られた多糖類の免疫賦活作用(Gao H et al., Pharm. Res. 1996; 13: 1196-200.)、田七人参が配合された混合製剤(名称:Hua-sheng-ping)の前癌病変に対する効果(Yu XY., Chung . Kuo. Chung. Hsi. I. Chieh. Ho. Tsa. Chih. 1993; 13: 147-9.)などが知られており、また、マウス皮膚腫瘍の2段階発癌実験において田七人参エキスが腫瘍の発生・増殖過程を抑制することが報告されている(Konoshimaa T et al., Biol. Pharm. Bull. 1999; 22: 1150-2.)。特許関連では、皮膚賦活剤及び皮膚賦活食品(特開平9-67262号公報)における人参は、本文中に朝鮮人参と明記してあり、田七人参ではなく、ハトムギエキスも殻付きか明記がない。また、抽出方法も明記がない。皮膚外用剤(特開2000-119155号公報)では、人参、オタネ人参、ハトムギ(ヨクイニン)は記載されているものの、田七人参と明記されておらず、またハトムギも「ヨクイニン」の意味で記載されている。さらに、マリアアザミエキス、ウコンエキスに田七人参エキスを組み合わせることによって、単独又は2剤併用の場合に比較して、肝機能賦活効果が相乗的に増大することが見出されている(特開平11-189539号公報)。その他に、「健康飲料」(特開2000-354476号公報)、豆腐や豆腐粕を主体とした健康食品と餌料と健康調味料(特開2000-325044号公報)、「サポニン含有抽出物及びその製造方法」(特開2000-264896号公報)、「ハーブ入りコーヒー及びその製造方法」(特開2000-245348号公報)、「田七人参、霊芝、アガリクス茸を主成分とする糖尿・高血圧・肝機能改善剤及びこれの製造方法」(特開2000-143526号公報)、「免疫系抑制用組成物」(特開平11-139979号公報)、「田七人参入りプロポリス」(特開平10-215799号公報)、「ウコギ科人参エキス組成物」(特開平11-290024号公報)、「健康飲料」(特開平9-294572号公報)、「動・植物生薬」(特開平8-92109号公報)、「Cosmetic or dermatological composition containing at least one saponin of the ginsenoside type, and its applications, especially for treating the hair」(米国特許5,663,160号)、「Use of ginsenoside R.sub.O or a plant extract containing same to promote collagen synthesis」(米国特許5,747,538号)、「Use of triterpensaponins, such as notoginsenoside R1 (NR1) and/or astragaloside (ASIV) for preparing medicaments 」(米国特許5,770,578号)、「Process for the preparation of metabolites of Ginseng saponins」(米国特許5,925,537号)、「Herbal skin regeneration composition and method」(米国特許6,027,728号)、「Process for removing impurities from natural product extracts」(米国特許6,132,726号)等があるが、上記公報のいずれにも、ハトムギの殻、薄皮、渋皮の発酵物や酵素処理物に田七人参を配合した組成物に関する記載はない。発明の開示本発明は、ハトムギの殻、薄皮及び渋皮の発酵物又は酵素処理物を含む医薬組成物又は食品を提供することを目的とする。本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ハトムギの殻、薄皮及び渋皮を発酵又は酵素処理することにより、従来のハトムギ製剤に比較して格段に優れた薬効をもつ医薬組成物を得ることに成功した。そして、ハトムギの殻、薄皮及び渋皮から選ばれる少なくとも一種(以下「殻・薄皮・渋皮」という)の発酵物又は酵素処理物が腫瘍又はヒト乳頭腫ウイルス性疾患に対して優れた効果を持つことを見いだし、その主要な成分として新規物質を単離した。さらに、上記医薬組成物に葉酸及び/又は田七人参を配合することによってさらに効力が強い医薬組成物を作製することに成功し、本発明を完成するにいたった。すなわち、本発明は、以下の通りである。(A)ハトムギの殻、薄皮及び渋皮から選ばれる少なくとも一種を発酵処理して得られる発酵処理物を含有する食品用(酢及び醤油を除く。)又は医薬用組成物。上記発酵は、麹菌、乳酸菌及び酵母から選ばれる少なくとも一種の微生物によって行われることを特徴とする。(B)ハトムギの殻、薄皮及び渋皮から選ばれる少なくとも一種に酵素処理をして得られる酵素処理物を含有する食品用又は医薬用組成物。酵素としては、ジアスターゼ剤、タカジアスターゼ剤、α-アミラーゼ剤、β-アミラーゼ剤、グルコアミラーゼ剤、ペクチナーゼ剤、β-グルコシダーゼ剤、セルラーゼ剤、ヘミセルラーゼ剤及びキシラナーゼ剤から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。(C)ハトムギの子実(ヨクイニン)の熱水抽出物、エタノール抽出物、発酵処理物及び酵素処理物のうち少なくとも一つからなる加工物に、前記(A)の組成物が配合された、食品用(酢及び醤油を除く。)又は医薬用組成物。(D)ハトムギの子実(ヨクイニン)の熱水抽出物、エタノール抽出物、発酵処理物及び酵素処理物のうち少なくとも一つからなる加工物に、前記(B)の組成物が配合された、食品用又は医薬用組成物。(E)ハトムギの殻、薄皮、渋皮及び子実から選ばれる少なくとも一種の発酵又は酵素処理物から抽出されたオリゴ糖画分。本発明においては、該オリゴ糖画分を含む食品用又は医薬用組成物も提供される。(F)前記組成物又はオリゴ糖画分に、葉酸、田七人参又はこれらの両方が配合された、食品用又は医薬用組成物。(G)前記組成物又は前記オリゴ糖画分を有効成分として含む、腫瘍の予防剤又は治療剤。腫瘍としては、良性腫瘍(腱鞘巨細胞腫を含む軟部腫瘍、大腸ポリープ、声帯ポリープを含む)、前癌病変(子宮頸部異型上皮、口腔白斑症を含む)、子宮癌、膣癌、外陰癌、皮膚癌、食道癌、口腔癌、歯肉癌、顎癌、咽頭癌、声帯癌、肺癌、膀胱癌、甲状腺癌、乳癌、胃癌、大腸癌、膵臓癌、腎癌、卵巣癌、メラノーマ、中枢神経系腫瘍、末梢神経系腫瘍、縦隔腫瘍、肝癌、胆管癌、胆嚢癌、腎盃腫瘍、尿管癌、睾丸腫瘍、前立腺癌、絨毛性腫瘍、卵管癌、肉腫、白血病、紅白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫及び癌肉腫からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。(H)前記組成物又は前記オリゴ糖画分を有効成分として含む、ヒト乳頭腫ウイルス性疾患の予防剤又は治療剤。ヒト乳頭腫ウイルス性疾患としては、尖圭コンジローマ、尋常性疣贅、青年性扁平疣贅、老人性疣贅及び喉頭乳頭腫からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。(I)前記組成物又は前記オリゴ糖画分を有効成分として含む、伝染性軟属腫、毛孔性角化症、肝斑、雀斑、皺、老人班、皮膚色素沈着、肌あれ、鶏眼及び尋常性ざ瘡からなる群から選択される少なくとも一種の予防剤又は治療剤。(J)前記組成物又は前記オリゴ糖画分を有効成分として含む、便秘又は便臭の予防剤又は治療剤。(K)前記組成物又は前記オリゴ糖画分を有効成分として含む機能性食品。以下、本発明の詳細を説明する。最近、天然のハーブ、食品、ビタミンなど人体にとって安全性の高い素材や合成された薬物を投与することにより前癌状態の細胞の発癌性を低下させたり、正常細胞に戻す治療法が盛んに研究され、癌の化学予防という新しい概念が登場した。例えば、乳癌に対して抗エストロゲン薬であるタモキシフェンを用いた予防法等がこれに該当する。また、最近レチノイド(ビタミンA誘導体)の一つであるイソレチノイン(13-cisレチン酸)が口腔内の白斑症(前癌病変)に有効なことが報告されたが、安全性が低く、重篤な合併症が併発することが分かっており、健常人が癌の予防に用いることができないのが実態である。本発明者の調べた限り、安全性の高い物質で、実際にヒトの上皮内癌(早期癌)や異型上皮(前癌病変)を治癒させたとする報告はない。癌は進行すると各種治療に極めて抵抗性となるため、進行癌に到る前に治癒させる安全な化学予防剤・治療剤の開発が望まれる。また、各種疣贅や喉頭乳頭腫の原因であるヒト乳頭腫ウイルス性疾患の予防剤又は治療剤も待ち望まれているものである。本発明は、基本的には、ハトムギの殻・薄皮・渋皮の発酵処理物及び酵素処理物に関するものである。本発明においては、まず、ハトムギの殻・薄皮・渋皮を発酵させて得られる発酵処理物、又はハトムギの殻・薄皮・渋皮を酵素処理させて得られる酵素処理物を作製する。そして、これらの処理物を医薬組成物として使用し、各種疾患に対する臨床効果を実証する。本発明において、発酵処理物には発酵エキスも含まれ、酵素処理物には酵素エキスも含まれる。そして、発酵エキス又は酵素エキスは後述の方法によりそれぞれ分離することができる。さらに、当該処理物に葉酸、田七人参又はこれらの組合せを配合し、臨床効果の増大を実証し医学応用する。さらに、ハトムギの殻・薄皮・渋皮から単離した有効物質も本発明において使用することができる。1. ハトムギの殻・薄皮・渋皮の発酵処理物の製造ハトムギの殻・薄皮・渋皮の発酵処理物は、既存の発酵方法で得られる。すなわち、殻つきハトムギ(殻実)をよく水洗し、十分乾燥させた後精米機で、ハトムギの殻をかるく挽割る。脱ぷ処理したハトムギ粒を3.5メッシュ(5.6mm)程度の篩を使用して、末脱ぷ粒と脱ぷ粒に分け、末脱ぷ粒は再度精米機で処理し、殻、薄皮又は渋皮を得る。この際、精米の強度を調整し、子実が割れない程度に調節することが必要である。殻・薄皮・渋皮1Kgに対し水3-7Lを加え、1〜2時間浸した後、徐々に加熱し、20〜30分時間をかけて沸騰させ、さらに20〜30分煮沸する。その後、40℃〜50℃に加温しながら5時間程度真空濃縮するか又は真空遠心濃縮する。市販の麹、例えば蒸した米に麹菌アスペルギルス・オリザ(Aspergillus oryzae)を直接生育させた米麹を、殻・薄皮・渋皮1Kgに対し100-200g添加し、撹拌しながら30℃で48時間発酵させ、90℃前後で約30分殺菌を行う。これを冷却して凍結乾燥、真空加熱乾燥またはスプレードライ法で乾燥させることにより、ハトムギの殻・薄皮・渋皮の発酵処理物を得ることができる。上記発酵処理物は、食品用又は医薬用組成物として使用することができ、臨床における使用料は0.1-0.2g/Kg体重/日であり、通常成人で5g/日使用する。服用は食間が望ましく、2.5gを朝、夕服用する。また、発酵処理物から発酵エキスを得るには、以下のように行う。すなわち、上記48時間発酵させたものを、90℃前後で約30分殺菌し、その後遠心ろ過して得られた上清画分を40℃〜50℃に加温しながら5時間程度真空濃縮するか、又は真空遠心濃縮後、凍結乾燥、真空加熱乾燥若しくはスプレードライ法で乾燥させることにより、殻・薄皮・渋皮の発酵エキスを得ることができる。上記発酵エキスも、食品用又は医薬用組成物として使用することができ、臨床における発酵エキス使用量は0.02-0.04g/Kg体重/日であり、通常成人で0.1g/日使用する。服用は食間が望ましく、0.05gを朝、夕服用する。なお、接種する麹は、米麹に限らず麦麹などが使用でき、乳酸菌、酵母等も使用できる(下記参照)。(1) 麹菌:アスペルギルス属に属する糸状菌アスペルギルス・オリザ(Aspergillus oryzae)(2) 乳酸菌:ラクトバチルス族、ラクトコッカス属又はストレプトコッカス属に属するものラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)ラクトバチルス・デルブルエキイ(Lactobacillus delbrueckii)ラクトバチルス・ロンガム(Lactobacillus longum)ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis)ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)(3) 酵母:サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属、クルーベルミセス族、ピキア族に属するものサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)サッカロミセス・クルーベリ(Saccharomyces kluyveri)サッカロミセス・パラドキサス(Saccharomyces paradoxus)サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)クルーベルミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)クルーベルミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)ピキア・パストリス(Pichia pastoris)乳酸菌、例えばラクトバチルス・ブルガリクスを使用する場合は、殻・薄皮・渋皮の約2〜5重量%の乳酸菌を使用し、培養温度約38〜約40℃の温度条件下に10〜24時間乳酸発酵を行わせることによって、殻・薄皮・渋皮の乳酸発酵生産物を形成することができる。さらに、殻・薄皮・渋皮に水を加えて煮沸しないで常圧の蒸気で蒸した後、発酵させることもできる。また、ハトムギの殻、薄皮、渋皮を子実とともに発酵する方法も上記に準じて行う。殻・薄皮・渋皮を子実とともに発酵した場合、臨床における発酵食品の使用量は0.2-0.4g/Kg体重/日であり、通常成人で10g/日使用する。服用は食間が望ましく、5gを朝、夕服用する。殻・薄皮・渋皮・子実の発酵エキスにあっては使用量は0.04-0.08g/Kg体重/日であり、通常成人で2g/日使用する。2. ハトムギの殻・薄皮・渋皮の酵素処理物の製造ハトムギの殻・薄皮・渋皮の酵素処理物は、既存の酵素処理方法で得られる。すなわち、殻つきハトムギ(穀実)をよく水洗し、十分乾燥させた後精米機で、ハトムギの殻をかるく挽割る。脱ぷ処理したハトムギ粒を3.5メッシュ(5.6mm)程度の篩を使用して、末脱ぷ粒と脱ぷ粒に分け、末脱ぷ粒は再度精米機で処理する。得られた殻・薄皮・渋皮を衝撃式粉砕機にて30メッシュ(0.5mm)を通過するよう粉砕し、この粉砕物を原料として、各種酵素剤の存在下に蒸煮することにより、ハトムギの殻・薄皮・渋皮の酵素処理物を得ることができる。そして、酵素処理物を遠心ろ過し、得られた上清画分を濃縮した後乾燥することにより、殻・薄皮・渋皮の酵素エキスを得ることができる。なお、上記発酵処理物や発酵エキスに酵素処理を追加することもできる。この目的に使用する酵素としては、例えば、ジアスターゼ剤、タカジアスターゼ剤、α-アミラーゼ剤、β-アミラーゼ剤、グルコアミラーゼ剤、ペクチナーゼ剤、β-ダルコシダーゼ剤、セルラーゼ剤、ヘミセルラーゼ剤、キシラナーゼ剤等の各種の酵素剤を用いることができる。具体的な酵素としては、液化型α アミラーゼ剤としてクライスターゼL-1(大和化成(株)製)、耐熱性α-アミラーゼ剤としてクライスターゼT-5(大和化成(株)製)、糖化型αアミラーゼ剤としてスミチームT(新日本化学(株)製、β-アミラーゼ剤としてβ-アミラーゼ(長瀬産業(株)製)、グルコアミラーゼ剤としてグルクザイム(天野製薬(株)製)やアミログルコシダーゼ(ノボ生化学工業(株)製)、ペクチナーゼ剤としてペクチナーゼA(天野製薬(株)製)、ペクチナーゼG(天野製薬(株)製)、β-ダルコシダーゼ剤としてノボザイム188(ノボ生化学工業(株)製)、セルラーゼ剤としてセルラーゼA(天野製薬(株)製)やセルラーゼT(天野製薬(株)製)、ヘミセルラーゼ剤としてはヘミセルラーゼ「アマノ」(天野製薬(株)製)やセルロシンHC100(阪急バイオインダストリー(株)製)、キシラナーゼ剤としてはセルロシンTP25(阪急バイオインダストリー(株)製)等が挙げられる。上記酵素の添加量は、原料に対して約0.1〜約5.0重量%で充分であり、酵素を2種以上使用する場合には、同時使用又は時間差をつけての使用のいずれでもよい。これらの酵素剤を用いて抽出するときには、適用、酵素濃度や条件を選択して使用するのが好適である。処理温度は45〜85℃、好ましくは50〜60℃とするのがよく、pHは3.5〜6、好ましくはpH5とするのがよい。また、処理時間は通常20〜180分、好ましくは90分〜120分である。抽出に用いる水量は、特別な制限はないが、抽出収率などを考慮すれば、原料はとむぎ1Kgに対し水3〜7L程度の使用量が好ましい。上記酵素処理物は、食品用又は医薬用組成物として使用することができ、臨床における酵素処理物の使用量は0.1-0.2g/Kg体重/日であり、通常成人で5g/日使用する。服用は食間が好ましく、2.5gを朝、夕服用する。酵素エキスの使用量は0.02-0.04g/Kg体重/日であり、通常成人で0.1g/日使用する。服用は食間が望ましく、0.05gを朝、夕服用する。また、ハトムギの殻、薄皮、渋皮を子実とともに酵素処理する方法も上記に準じて行う。臨床における殻・薄皮・渋皮・子実の酵素処理物の使用量は0.2-0.4g/Kg体重/日であり、通常成人で10g/日使用する。服用は食間が望ましく、5gを朝、夕服用する。酵素エキスにあっては使用量は0.04-0.08g/Kg体重/日であり、通常成人で2g/日使用する。上記酵素処理物及び酵素処理物は、固体状(粉末、顆粒)のほか、濃縮物、液状、ペースト状又は懸濁状のいずれでもよい。本組成物は、そのまま飲食品として利用できることは勿論のこと、他の食品又は食品成分と併用し、適宜常法に従って飲食品として利用することも可能である。例えば、本組成物を有効成分とし、ドリンク剤製造に用いられる常用成分を用いて、健康ドリンク等に製剤化することができる。また、本組成物は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、外皮用剤等の医薬品に製剤化することもできる。これらの各種製剤は、常法にしたがって、本組成物を主剤とし、これに乳糖、デンプンなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味・矯臭剤等の医薬の製剤技術分野における通常の各種補助剤を用いて製剤化することができる。本組成物は天然起源であり、しかも永年に使用されていたものを起源とするため、毒性は全くないか又は極めて低く、卓越した安全性を示すものであり、たとえ高齢者、幼児、病弱者であっても長期間摂取することができる。3. ハトムギの殻・薄皮・渋皮の発酵処理物又は酵素処理物と葉酸との配合物の製造本発明者は、ハトムギの殻・薄皮・渋皮の発酵処理物又は酵素処理物に、葉酸を配合することによって相乗的に臨床効果がもたらされることを見いだした。配合の組合せを以下に示す。発酵処理物+葉酸酵素処理物+葉酸発酵処理物+酵素処理物+葉酸葉酸製品としては例えば、フォリアミン(foliamin)[日本製薬(株)製/武田薬品(株)製]の錠剤(1錠中5mg)、葉酸10倍散[日本製薬(株)製/武田薬品(株)製]、葉酸注射剤(1アンプル中葉酸15mg含有)[日本製薬(株)製/武田薬品(株)製]などが使用できる。葉酸の配合量は、腫瘍の化学予防剤(内服剤)にあっては一日あたり100-800μg、望ましくは400μgである。子宮頸部異型上皮と喉頭乳頭腫を含む前癌病変、子宮頸部癌(0期)を含む早期癌、尖圭コンジローマ、尋常性疣贅、青年性扁平疣贅、老人性疣贅の内服治療剤として配合する場合は、葉酸を比較的大量に投与し、例えば最初の4週間は15mg/日、その後2週間は10mg/日投与し、その後は300μg〜1mg/日投与と漸減する方法が好ましい。伝染性軟属腫、毛孔性角化症、肝斑、雀斑、皺、老人班、皮膚色素沈着、肌あれ、鶏眼、尋常性ざ瘡(にきび)、便秘又は便臭の予防剤又は治療剤(内服剤)としては、100-800μg/日、望ましくは400μg/日配合する。葉酸の注射剤を用いるときは上記用量の注射剤を皮下投与、筋肉内投与又は静脈内投与によって使用することができる。葉酸を配合するに際し、薬学的に許容しうる種々の担体を配合することができ、具体的には、セルロース及びその誘導体、デンプン及びその誘導体等の天然及び合成高分子等の賦形剤、ステアリン酸及びその塩類、天然及び合成ワックス類等の滑沢剤、糖類、酸味剤、香料等を配合することができる。剤形は、投与方法及び投与経路に応じて散剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ剤、ドリンク剤等の種々の剤形(経口用剤等)とすることができる。経口用剤としては、散剤とするのが好ましく、賦形剤として乳糖、デンプンなどを配合して使用するのが特に好ましい。また、葉酸以外に他のビタミン剤例えばビタミンB12、B1、B2、B3、B6、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンAを添加したり、核酸を配合することができる。核酸を配合する場合は例えば、さけ白子抽出物1000mg/日を使用する。葉酸を数ヶ月に渡って大量投与する場合は亜鉛欠乏に注意し、亜鉛を5-15mg/日、望ましくは10mg/日配合する。また、本発明の組成物は、医薬のみならず、機能性食品として用いてもよい。4. ハトムギの殻・薄皮・渋皮の発酵処理物又は酵素処理物と田七人参とを含む配合物本発明者は、ハトムギの殻・薄皮・渋皮の発酵物若しくは酵素処理物又はこれらに葉酸を配合したものに、さらに田七人参を配合することによって格段に臨床効果が増大することを見いだした。配合の組合せを以下に示す。発酵処理物+田七人参酵素処理物+田七人参発酵処理物+酵素処理物+田七人参発酵処理物+田七人参+葉酸酵素処理物+田七人参+葉酸発酵処理物+酵素処理物+田七人参+葉酸本発明において用いられる田七人参は、天然品、通常栽培品又は組織培養品のいずれでも使用できる。また、これらの人参は、乾燥原末、熱水抽出エキス、アルコール抽出エキス、発酵田七人参エキス、酵素処理田七人参等を使用するが、望ましくは田七人参を100℃の湯に軽く浸し発芽を抑制したものを乾燥させ、微粉末にしたもの(田七人参原末)を用いる。製品としては、例えば田三七末[栃本天海堂(株)製]等の製品を使用する。本発明において、田七人参原末の配合量は、年齢、症状等によって異なるが、1日当り1〜12g、好ましくは6gである。また、投与回数としては1日1回又は複数回に分けて経口投与することができる。また、田七人参を配合するに際し、薬学的に許容しうる種々の担体を配合することができ、具体的には、セルロース及びその誘導体、デンプン及びその誘導体等の天然及び合成高分子等の賦形剤、ステアリン酸及びその塩類、天然及び合成ワックス類等の滑沢剤、糖類、酸味剤、香料等を配合することができる。剤形は、投与方法及び投与経路に応じて散剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ、ドリンク剤等の経口用剤等の種々の剤形とすることができる。経口用剤としては、散剤するのが好ましく、賦形剤として乳糖、デンプンなどを配合して使用するのが特に好ましい。また、本発明剤は、医薬のみならず、機能性食品として用いてもよい。5. ハトムギの発酵処理物又は酵素処理物中の新規な有効物質の単離及び活性の確認最近、新しい考えとして、ガン予防として効果の認められた物質から、効果を示す化合物を抽出して量を多くして元の物質に戻して、より効果を高めることを目的とした、デザイナーズフーズ、デザイナーズドラッグとよばれるものが作られており、当然、副作用も少なく、実際にパンやクッキーといったシリアル食品として販売されている。本発明においても、ハトムギの発酵処理物又は酵素処理物中の有効物質をデザイナーズフーズ又はデザイナーズドラッグに使用することができる。本発明においては、オリゴ糖画分(後述)も、それ自体のみならず発酵処理物又は酵素処理物に配合して用いることができる。使用量は、C3画分が0.5-2g/日、好ましくは1g/日であり、C4画分が0.1-1g/日、好ましくは0.5g/日である。6.治療剤又は予防剤本発明の組成物は、各種疾患の治療剤又は予防剤として使用することができる。疾患としては、以下のものが挙げられる。以下の疾患は、単独で発症したものでも、2以上の疾患が合併したものでも、さらに他の疾患が併発したものでもよく、いずれの場合も本発明の組成物を使用することができる。(1)腫瘍良性腫瘍、前癌病変、子宮癌、膣癌、外陰癌、皮膚癌、食道癌、口腔癌、歯肉癌、顎癌、咽頭癌、声帯癌、肺癌、膀胱癌、甲状腺癌、乳癌、胃癌、大腸癌、膵臓癌、腎癌、卵巣癌、メラノーマ、中枢神経系腫瘍、末梢神経系腫瘍、縦隔腫瘍、肝癌、胆管癌、胆嚢癌、腎盃腫瘍、尿管癌、睾丸腫瘍、前立腺癌、絨毛性腫瘍、卵管癌、肉腫、白血病、紅白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫及び癌肉腫からなる群から選択される少なくとも一種上記腫瘍において、良性腫瘍には軟部腫瘍、大腸ポリープ、声帯ポリープが含まれ、このうち軟部腫瘍には腱鞘巨細胞腫が含まれる。また、前癌病変には子宮頸部異型上皮、口腔白斑症が含まれる。(2) ヒト乳頭腫ウイルス性疾患尖圭コンジローマ、尋常性疣贅、青年性扁平疣贅、老人性疣贅及び喉頭乳頭腫からなる群から選択される少なくとも一種(3) 伝染性軟属腫、毛孔性角化症、肝斑、雀斑、皺、老人班、皮膚色素沈着、肌あれ、鶏眼及び尋常性ざ瘡からなる群から選択される少なくとも一種(4) 便秘又は便臭【図面の簡単な説明】図1は、子宮頸部の酢酸加工後のコルポスコープ像である。発明を実施するための最良の形態以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。〔実施例1〕ハトムギの殻・薄皮・渋皮の発酵処理物の製造殻つきハトムギ(穀実)をよく水洗し、十分乾燥させた後、精米機でハトムギの殻をかるく挽割り、3.5メッシュ(5.6mm)程度の篩を使用して、末脱ぷ粒と脱ぷ粒に分け、殻、薄皮、渋皮の原料を得た。殻・薄皮・渋皮1Kgに対し水5Lを加え、1時間浸した後、徐々に加熱し、30分で沸騰させ、さらに30分煮沸した。その後、40℃〜50℃に加温しながら5時間真空遠心濃縮した。市販の蒸した米に麹菌アスペルギルス・オリザ(Aspergillus oryzae)を直接生育させた米麹を、殻・薄皮・渋皮の原料1Kgに対し200g添加し、撹拌しながら30℃で48時間発酵させ、90℃前後で約30分殺菌を行った。これを冷却してスプレードライ法で乾燥させることにより、ハトムギの殻・薄皮・渋皮の発酵処理物を得た。また、48時間発酵させたものを、90℃前後で約30分殺菌後、遠心ろ過して上清画分を得、これを40℃〜50℃に加温しながら5時間真空遠心濃縮後、スプレードライ法で乾燥させることにより、殻・薄皮・渋皮の発酵エキスを得た。〔実施例2〕ハトムギの殻・薄皮・渋皮の酵素処理物の製造。30メッシュ(0.5mm)を通過するよう粉砕したハトムギの殻・薄皮・渋皮1kgに水5Lを加え6時間浸漬後、これにヘミセルラーゼ(天野製薬(株)製:ヘミセルラーゼ「アマノ」)及びペクチナーゼ(天野製薬(株):ペクチナーゼG「アマノ」)をそれぞれ10g混入し、45℃下で120分間酵素反応した。その後徐々に加熱して75〜80℃に約40分保持した後、さらに加温し30分緩やかに沸騰させた。そして、40℃〜50℃に加温しながら5時間真空遠心濃縮後、スプレードライ法で乾燥させ殻・薄皮・渋皮の酵素処理物を製造した。また、蒸煮したものを遠心ろ過して得られた上清画分を40℃〜50℃に加温しながら5時間真空遠心濃縮後、スプレードライ法で乾燥させ、殻・薄皮・渋皮の酵素エキスを製造した。この方法で殻・薄皮・渋皮1Kgに対し約200gのエキスを回収した。〔実施例3〕活性画分の単離(1) ハトムギ酵素エキスの分画透析膜としてSpectra/Por 1(50×31、8 mm×30 m)、を用いて殻付きハトムギ酵素エキスの透析を行った。500mLの瓶に酢酸を2〜3滴加えておき、その中に長さ30cm程度に切断した透析膜を5分間つけておいた。これは、透析膜に含まれている鉄剤とキレートを作らせ、鉄剤を除去するためである。次に、透析膜を蒸留水に5分間つけ、蒸留水で洗い流した。サンプルの殻付きハトムギ酵素エキス15gを蒸留水500mLに溶かした後、調製したサンプルを、一端をしばった透析膜に高さ3分の1程度まで入れた。その際空気は完全に抜くようにした。もう一方の端をしばり、5 Lの三角フラスコに入れ、蒸留水2.5〜3.0Lに対して透析を行った。透析膜の外液はエバポレーターで濃縮し、凍結乾燥を行い重量を測定した。内液は、再び蒸留水3Lほど入れ撹拌し、3日間透析した。この作業を5回繰り返した。外液は5回分合計した重量を測定し、最後に残った外液は濃縮し、凍結乾燥を行い重量を測定した。ここで得られた透析内液は高分子画分、外液は低分子画分である。それぞれの得られた割合も算出した。(2) ハトムギ酵素エキスの透析及び分画ハトムギ酵素エキス 26.0 gを透析膜(分子量6000-8000カットオフ)を用いて透析後エバポレーターにより濃縮し、高分子画分(内液)を1.5g(5.8%)、低分子画分(外液)21.4g(82.3%)を得た。低分子画分21.4gのうち、13.0gをシリカゲルクロマトグラフィーにより分画した。溶出溶媒としてBAW(n-ブタノール:酢酸:水)を用いた。混合比率によりBAW-1(それぞれ6:1:2)、BAW-2(それぞれ5:1:2)、BAW-3(それぞれ4:1:2)とし、これらのBAWを各4Lずつ順に流した。その結果、混合溶媒BAW-1で溶出させることにより、C-1画分(1.19g、7.5%)及びC-2画分(0.32g、2.0%)、BAW-2で溶出させることによりC-3画分(5.10g、38.6%)、BAW-3で溶出させることによりC-4画分(1.57g、9.9%)を得た。これらの画分(フラクション)をシリカゲルクロマトグラフィー(クルロフォルム-メタノール3:1溶出)に付して主成分を単離し、質量分析や核磁気共鳴スペクトルなどの機器分析に付した結果、C-2画分は主としてグルコース、C-3 及び C-4画分はオリゴ糖を含むことが分かった。すなわち、C-2より、ハトムギ酵素エキスに対する収率0.26%でグルコースを得た。[MS m/z 181 (M)+]C- 3からは、ハトムギ酵素エキスに対する収率8.6%でマルトースを得た。[MS: m/z 365(M;Na)+、343 (M+H)+、1H NMR (ppm): 3.22 (t, J=8.5 Hz), 3.36(d, J=9.5),3.5-3.9 (m), 4.59 (d, J=7.8), 5.17 (br s), 5.35 (br s).]C-4 からは、ハトムギ酵素エキスに対する収率4.4%でマルトトリオース、3.9%でマルトテトラオースを得た。マルトトリオース[MS: m/z 527 (M+Na)+、505 (M+H)+、1H NMR (ppm): 3.22(t,J=8.5 Hz), 3.36 (d, J=9.5), 3.5-3.9 (m), 4.64 (d, J=8.1), 5.17 (d, J=3.9),5.33 (d, J=3.4).]マルトテトラオース[MS: m/z 689 (M+Na)+、667 (M+H)+、1H NMR (ppm): 3.23(t,J=8.5 Hz), 3.38 (d, J=9.5), 3.5-4.0 (m), 4.61 (d, J=8.3), 5.19 (br s), 5.35(br s).]これらの画分のうち、C-1、C-3及びC-4をマウスに経口投与し、抗腫瘍活性を調べた。(3) ハトムギ酵素エキスの各画分の抗腫瘍活性試験(in vivo)がん細胞(Sarcoma-180)をマウスの腹腔に投与した後、継代培養して1週間したマウスの腹水20μLに生理食塩水を加えることで腹水を200倍まで希釈した。その後、がん細胞濃度を0.4〜1.0×106 細胞/mLになるように調製した。上記の通り調製したがん細胞溶液をマウス右肢の付け根の皮下にシリンジで0.05mL移植した。移植後1日目のマウスを、各ケージのマウスの体重の総量が同じになるようにランダムにわけた。各ケージとも6匹となるように群分けした。一方、ハトムギ酵素エキスの各画分のサンプルは、10mg/mLになるように蒸留水で希釈した。コントロールは蒸留水とした。調製した各画分のサンプルを移植後10日間、0.01mg/g(体重)をゾンデで経口投与した。抗腫瘍活性測定については、まず、薬物の副作用を調べるためにマウスの体重を移植後のサンプル投与期間中は毎日、その後は3日に1回の間隔で測定した。腫瘍の大きさは移植1週間後から5週間後まで3日に1回の間隔で測定した。その方法は、直径、短径をcm単位で測定し、その値から(直径×短径2)/2 wを行い、それを仮の容積とした。マウスの腫瘍は眼科用外科用バサミで切取り、重さを測定した。測定したマウス体重、腫瘍堆積、腫瘍の重さは各ケージの平均値を計算して活性を計算した。活性はコントロールを基準として計算した。活性=100×{腫瘍重量(コントロール)−腫瘍重量(サンプル)}/腫瘍重量(コントロール)その結果、オリゴ糖を含むフラクションのうち、C3画分及びC4画分にがん細胞増殖阻害活性が認められ(C3画分:79%、C4画分:44%)、中でもC-3画分に強い活性が認められた。上記画分には、いずれもマウスに対する食欲低下、体重減少等の副作用は認められなかった。〔実施例4〕 子宮頸部上皮内癌(CIS)(子宮頸癌国際分類stageO)方法:臨床試験の方法は充分なインフォームドコンセント下に下記の要領で行った。子宮頸癌細胞診によってclassIV又はVと診断された患者にコルポスコープを施行し、病変部の一部を生検した後、直ちに各種製剤の投与を開始した。試験群は以下の通りとし、各群を観察した。対照群(42例):無治療群A群(21例):市販のヨクイニン熱水抽出物(エキス成分として一日量2g)投与群B群(15例):殻付きハトムギ熱水抽出物(8例)又は殻付きハトムギエタノール抽出物(7例)(それぞれエキス成分として一日量2g)投与群C群(8例):葉酸(15mg/日)投与群D群(12例):殻付きハトムギ酵素エキス(6例)又は発酵エキス(6例)(それぞれエキス成分として一日量2g)投与群E群(11例):殻付きハトムギ酵素エキス(5例)又は発酵エキス(6例)(それぞれエキス成分として一日量2g)に葉酸(15mg/日)を配合した群投与1〜2週間後、生検の結果が判明し、子宮頸癌国際分類stage0(CIS)と判明した患者に対してのみ製剤の投与を継続し、それ以外は脱落例として製剤の投与を中止した。なお、製剤の投与は子宮膣部円錐切除術または子宮全摘手術が行われる前日まで継続し、少なくとも2週間以上製剤を継続摂取できた者のみ検討の対象とした。製剤の投与は最長6週間で中止した。対照群(無治療群)は、過去の病歴から全く食品や薬の投与を受けていない者を無作為抽出した。結果:対照群(42例)において、手術後の病理検査の結果上皮内癌が消失していた例は0例であった。A群、B群及びC群において癌が消失していた例はいずれも0例であった。しかし、D群において癌が消失していた例は5例(対照群に対しp<0.001で有意差有り)、B群において癌が消失していた例は7例であった(対照群に対しp<0.001で有意差有り)。上記7例(E群)のうち著効した1例を以下に示す(図1)。53歳、癌検診にて細胞診classVと診断された。上の写真は来院時の子宮頸部3時から6時方向の酢酸加工後の白色上皮である。子宮頸部全周にわたり白色上皮がみられ、8時方向の生検が行われ、CISと診断された。来院時からインフォームドコンセント下に、殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)+葉酸15mg/日を開始した。図1の下パネルは、投与21日目に撮影された1時から5時方向の酢酸加工後の像である。白色上皮は完全に消失している。投与35日目に子宮頸部の円錐切除を行ない、病理精査したが、癌はすべて消失していた。なお、図1中矢印は白色上皮を、*印は治癒後の病変位置を示すものである。〔実施例5〕 子宮頸部上皮内癌(CIS)(子宮頸癌国際分類stage0)以下に、妊娠中の上皮内癌において、殻付きハトムギ酵素エキスに葉酸を配合する方法が著効した例を提示する。(1) 症例:29歳 初妊婦妊娠7週の定期検診で行った子宮癌細胞診によってclassVと診断され、妊娠9週のコルポスコピーにおいて、酢酸処理後子宮頸部全周に白色上皮が認められた。白色上皮の一部を生検したところ上皮内癌と診断された。円錐切除を含む治療法の説明をするも患者自身が流産を恐れ拒否。そこで充分なインフォームドコンセント下に妊娠12週より殻付きハトムギ酵素エキス(エキス成分として1日量2g)を20日間服用したが、白色上皮の消退傾向はみられなかった。そこで、葉酸配合殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)に変更した。配合した葉酸の量は妊娠を考慮し、はじめは15mg/日2週間、その後10mg/日1週間、5mg/日1週間、400μg/日1週間と斬減した。葉酸配合殻付きハトムギ酵素エキス投与1週間目のコルポスコープ所見では白色上皮は依然と存在し、変化が見られなかったが、2週目には酢酸処置後にもかかわらず白色上皮の色調は薄いピンク色の色調を呈し消退傾向が認められた。さらに観察を続けたところ投与4週目には病変は消失したので、殻付きハトムギ酵素エキスは計6週間をもって一旦中止した。その後、再発予防のため妊娠31週から3週間殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)+葉酸(400μg/日)投与した。なお、妊娠21週、31週、37週における細胞診はclassIIと正常であった。ハトムギ投与中は副作用に注意していたが、流産、早産傾向も認めず妊娠40週に3250gの正常女児を出産した。産後1ヶ月目の細胞診classII、流産2ヶ月目の細胞診とコルポスコープによって異常が認められなかったため、円錐切除を行わず経過を観察した。その後、患者自身の希望により、年に1〜2カ月だけ殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)に葉酸(400μg/日)を配合した製剤を服用させた。第1子出産3年目にはさらに一子を出産した。現在初診から9年経過したが、細胞診を含む諸検査で異常は認めない。(2) まとめこの症例は、本発明者が当該酵素エキスに葉酸を加えると、その臨床効果が相乗的に向上することを発見するきっかけとなった貴重な症例である。本発明者の経験では、妊娠中の上皮内癌に対して殻付きハトムギ酵素エキスの単独投与では無効なことが多く、これは妊娠に伴う尖圭コンジローマと同様である。しかし、葉酸を配合すると相乗的に効果が出現する。〔実施例6〕 子宮頸部異型上皮CIN分類でCIN1,CIN2はそれぞれ軽度異型上皮、中等度異型上皮に相当し、CIN3は高度異型上皮と上記CISを含んでいる。ここでは、CIN1,CIN2に対する本発明製剤の臨床効果について提示する。細胞診でclassIII、組織診で軽度異型上皮、中等度異型上皮と診断され円錐切除を行わず慎重に経過観察した症例で、インフォームドコンセントが得られた症例を対象に試験を行った。(1) 方法/結果CIN1,CIN2と診断された症例のうち、まったく製剤の投与を行わなかった群(15例)では、診断して2ヶ月後に細胞診又はコルポスコープの所見が両方とも改善していたものは0例であった。市販のヨクイニン熱水抽出物(8例)、殻付きハトムギ熱水抽出物(3例)又は殻付きハトムギエタノール抽出物(3例)投与群(それぞれエキス成分として一日量2g)(14例)において、投与2ヶ月後に細胞診又はコルポスコープの所見が両方とも改善していたものは0例、葉酸(15mg/日)投与群(5例)においても同様の条件で改善例は0例であった。また、殻付きハトムギ酵素エキス(3例)又は発酵エキス(3例)(それぞれエキス成分として一日量2g)投与群(6例)、殻付きハトムギ酵素エキス(4例)又は発酵エキス(4例)(それぞれエキス成分として一日量2g)に葉酸(15mg/日)を配合した群(8例)において観察したが、投与2ヶ月後に細胞診又はコルポスコープの所見が両方とも改善していたものはそれぞれ1例のみであった。そこで、当該食品の長期投与を試みた。試験群は以下の通りとし、各群を観察した。対照群(71例):無治療群A群(24例):市販のヨクイニン熱水抽出物(10例)、殻付きハトムギ熱水抽出物(7例)又は殻付きハトムギエタノール抽出物(7例)(それぞれエキス成分として一日量2g)投与群B群(25例):殻付きハトムギ酵素エキス(10例)又は発酵エキス(15例)(それぞれエキス成分として一日量2g)に葉酸(400μg/日)を配合した群各製剤は1年間の長期投与とし、3〜4ヶ月毎に細胞診とコルポスコピーをおこなった。そして、細胞診の検査で異常を認めなくなった場合、臨床的治癒とした。結果は、対照群(71例)のうち細胞診の結果がclassII以下に改善した者は12例、A群(24例)のうち改善したものは5例(対照群に対しp>0.05で有意差なし)、B群(25例)のうち改善した者は15例であった(対照群、A群に対しそれぞれp<0.001、p<0.01で有意差有り)。(2) まとめ子宮頸部異型上皮CIN1及びCIN2は、将来上皮内癌に移行する比較的軽症の病変であるにもかかわらず、むしろ上皮内癌の方が治癒し易いという結果が得られている。このパラドックスの説明はともかく、CIN1及びCIN2に対して、本発明の方法は、ヨクイニン熱水抽出物、殻付きハトムギ熱水抽出物/エタノール抽出物を用いる方法と比較して優れた方法である。なお、最近は殻付きハトムギ酵素エキス又は発酵エキス(エキス2g/日)に葉酸(400μg/日)と田七人参の組み合わせで、CIN1,CIN2がより早期に治癒する例が本発明者によって確認されている。〔実施例7〕 進行癌(1) 症例 76歳 食道癌(扁平上皮癌) stage IVB初診時の診断で進行性の食道癌のstage IVB(多発性肝転移あり)といわれ、保存的に経過が観察され、食道拡張を毎週施行されていた末期癌患者。本人のインフォームドコンセント下に殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)を投与したところ、投与2週間目からは食道拡張をしなくても、スムーズに経口摂取できるようになり、患者のQOL(quality of life)は向上した。(2) まとめ本例は殻付きハトムギ酵素エキスの食道癌に対する効果を示すものであり、患者は食物が食べられるようになったことに非常に満足した。〔実施例8〕 良性腫瘍(1) 良性腫瘍である腱鞘巨細胞腫が消失した例症例 56歳 男性2年前に、左足背部に直径8mmの腫瘤を認め、近医にて生検を受け、腱鞘巨細胞腫と診断を受け手術をすすめられたが、症状が軽いため放置。最近腫瘤の増大を認め、心配になり来院。本人のインフォームドコンセンサント下に殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)を投与したところ、7週目に消失。その後エキス1g/日の服用を継続したが、再発は認めていない。まとめ本例は病理診断が確定しており、信頼度の高い治癒例であると思われる。良性の軟部腫瘍がなんらかの薬剤で消失したとする報告はほとんどないが、本例は殻付きハトムギ酵素エキスが著効した例と診断した。(2) 良性腫瘍である声帯ポリープが消失した例症例 53歳 女性1年前に、声のかすれ、声が出しにくい、高い声が出ない、喉頭の異物感等の症状が出現し、近医耳鼻科で声帯ポリープ(径約1cm)と診断された。2ヶ月間保存的に経過観察されたが症状改善傾向がないため、医師から手術を進められるも放置。今回、症状の増悪を認め来院。診察では1年前と同一箇所に同一大の声帯ポリープを認めたため、インフォームドコンセント下に殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)と田七人参(8g/日)の配合剤の服用を開始した。服用4日目には声がスムーズに出るようになったため、殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)と田七人参(8g/日)と葉酸(15mg/日)との配合剤に切り替えた。治癒開始20日目にはすべての症状が消失したため、耳鼻科を受診したところ声帯ポリープは完全に消失していた。まとめ本例は1年あまり存在した声帯ポリープが治療後20日間で消失した例である。専門医の診断も受けており、上記3種の配合剤が著効した例と診断した。〔実施例9〕 尖圭コンジローマ(ヒト乳頭腫ウイルス性疾患)方法および結果18歳から28歳までの外陰部尖圭コンジローマの患者で熱水抽出ヨクイニンエキス(エキス成分として1日量2g)を少なくとも4週間服用し、無効と判定された症例8例を対象にインフォームドコンセント下に少なくとも2週間の無投薬期間を設けた後、殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)を4週間から6週間投与した結果、4例に尖圭コンジローマの消失(著効例)、1例に改善(有効例)、無効例3例であった。無効3例はすべて妊婦に合併した尖圭コンジローマであった。〔実施例10〕尖圭コンジローマ(難治例)以下に、葉酸を配合し好成績を得た妊婦例を提示する。(1) 症例 診断 妊婦15週 外陰・膣・子宮膣部尖圭コンジローマ妊娠12週頃から外陰部に違和感、掻痒を認め、妊娠妊娠15週に当科を受診、外陰・膣・子宮膣部尖圭コンジローマ(重症)と診断。十分なインフォームドコンセント下に熱水抽出ヨクイニンエキス(エキス成分として1日量2g)を4週間服用させたが全く無効であった。殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)2週間投与に変更したところ、コンジローマの増生は停止したが、消失傾向はみられなかった。難治性の尖圭コンジローマと診断し、葉酸配合殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)を投与した。葉酸の配合量は15mg/日1週間、10mg/日1週間、5mg/日1週間と斬減した。投与1週間目の状態は見た目は全く変化がないように見えたが、ピンセットでコンジローマを摘むと容易に剥離できることが判明した。2週間目には、コンジローマの病変は半減し、3週間目にはすべて消失した。その後は殻付きハトムギ酵素エキスを1g/日、葉酸は400μg/日と減量し、2週間投与後中止した。この間、流産徴候や早産徴候は全く認められなかった。当患者は妊娠39週に男児を経膣的に出産したが、児にはコンジローマの感染は認めなかった。(2) まとめこの症例は、本発明者が当該酵素エキスに葉酸を配合すると、その臨床効果が著しく上昇することに確信を持つきっかけとなった症例である。妊娠に伴う尖圭コンジローマはそのほとんどが難治性であり、範囲も本例のように外陰のみならず膣や子宮膣部を著しく占拠することが多く、冷凍凝固法など他の治療法を用いることができず、治療不可能となることが多い。妊娠に伴う尖圭コンジローマは、妊娠が終了すると軽快することが多いが、妊娠中に治癒させることには意味がある。コンジローマを治癒させないまま経膣分娩すると分娩時の出血量が増え、また児の皮膚や気道にコンジローマが感染するからである。妊娠中は免疫機能が低下するため、コンジローマが増悪することが多いといわれているので、本法は極めて有用な治療法と考えられる。なお、妊娠中にハトムギを使用すると、流産や早産になるとの民間伝承があり、注意を要するが、実際に流産や早産になったとする報告はなく、本発明者の経験でも1例も遭遇していない。したがって、葉酸配合殻付きハトムギ酵素エキス投与は、医師の監督下に行えば妊娠中であっても極めて有効な方法になると考えられた。〔実施例11〕 尋常性疣贅、青年性扁平疣贅、老人性疣贅(ヒト乳頭腫ウイルス性疾患)(1) 方法・結果熱水抽出ヨクイニンエキスが無効と診断された尋常性疣贅9例、青年性扁平疣贅5例、老人性疣贅8例に対し、殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)に加えて、葉酸を併用投与した。葉酸の量は15mg/日1週間、10mg/日1週間、5mg/日1週間、その後は400μgと斬減して使用し、効果の判定は3ヶ月後に行った。成績は、尋常性疣贅9例中4例消失(著効)、1例軽快(有効)、無効4例であった。青年性扁平疣贅5例中1例消失(著効)、2例軽快(有効)、無効2例であった。老人性疣贅8例中1例消失(著効)、2例軽快(有効)、無効5例であった。(2) まとめ殻付きハトムギ酵素エキスは、尋常性疣贅、青年性扁平疣贅、老人性疣贅の順に効果がみられ、老人性疣贅では治癒し難い症例もみられた。しかし、症例はすべて既存のヨクイニン抵抗性の症例であるので殻付きハトムギ酵素エキスは有用であると考えられた。〔実施例12〕 喉頭乳頭腫(ヒト乳頭腫ウイルス性疾患)(1) 症例 75歳 男性2年前に肺ガンで右肺部分切除術試行。今回嗄声を訴え来院した。声門部に3ヶ所喉頭乳頭腫を認め、病変の大きさはそれぞれ4mm大が2個、6mm大が1個認められた。多発性喉頭乳頭腫と診断され、2週間後に切除が予定された。受診3日目より、殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)+葉酸15mg/日に加え、ビタミンB1 75mg/日+ビタミンB6 75mg/日+ビタミンB12 750μg/日+ビタミンE 150mg/日を服用開始したところ、10日後、喉頭乳頭腫は4mm大が2個が消失、6mm大が1個が3mm大に縮小し、嗄声も著明に改善していたため、さらに1週間服用を続けたところ、3mm大の乳頭腫も消失し、同時に嗄声も消失した。その後、殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)+葉酸1mg/日及びビタミンB1 50mg/日+ビタミンB6 50mg/日+ビタミンB12 500μg/日+ビタミンE 100mg/日を服用しているが、喉頭乳頭腫の再発はみられない。(2) まとめ乳頭腫は、上皮から発生し乳頭状に発育する良性腫瘍であり、喉頭の良性腫瘍の中で頻度が最も多い。原因はヒト乳頭腫ウイルス感染とされている。声門部、声門上部に好発し、本例のように多発性の場合は通常難治性であり、単発性の場合は比較的治療し易い。症状としては嗄声が最も多く、大きくなると呼吸困難を起こす。この症例は、腫瘍の消失にしたがって嗄声が改善し、殻付きハトムギ酵素エキス+葉酸が奏功した症例と考えられる。本例のように、他のビタミン剤たとえばビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンA等と組み合わせることによって効果が増すことが本発明者によって明らかとなっている。この例のように、わずか10日あまりで乳頭腫が消失しはじめることがあるが、通常は完治するまでに少なくとも3週間はかかることが多い。喉頭乳頭腫に対してインターフェロン長期投与も用いられることがあるが、根治させることは難しいとされている。また、病変が広がり呼吸困難に陥った場合には、喉頭全摘出を行うことがある。したがって、殻付きハトムギ酵素エキスは非侵襲性であり極めて有用性の高い医薬組成物であるといえる。〔実施例13〕 伝染性軟属腫(1) 症例 3歳、男児。3ヶ月前から躯幹から腋窩部にかけて20-30個の伝染性軟属腫病変を認め来院。来院日より、ヨクイニンエキス2g/日を経口投与して1週間経過を観察したが、余り変化がないため、両親のインフォームドコンセント下にハトムギの殻・薄皮・渋皮・子実の酵素エキスを2g/日使用した。使用1週間目頃より次第に丘疹の数が減少し始めたため、2週目より1日あたり殻・薄皮・渋皮・子実の酵素エキス2g、葉酸200μg、田七人参1gの配合剤を2週間使用したところ伝染性軟属腫の丘疹はすべて消失した。(2) まとめ本例は殻・薄皮・渋皮・子実の酵素エキスおよび葉酸、田七人参の配合剤が著効した症例と考えられた。〔実施例14〕毛孔性多角化症(1) 方法・結果18歳から26歳までの毛孔性角化症のボランテイア女性15人全員に熱水抽出ヨクイニンキス(エキス成分として1日量2g)を服用させ、3週間から最長6週間観察し、ヨクイニンが無効と判定された症例を対象とした。殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)投与群7例(A群)、葉酸配合殻付きハトムギ発酵エキス(葉酸10mg/日+エキス2g/日)投与群8例(B群)を、3週間から最長6週間観察した。A群7例のうち著効1例、有効2例、無効4例であった。また、B群8例のうち著効5例、有効1例、無効2例であった。つぎに、上記無効例6例を対象に、少なくとも2ヶ月の期間をおいて再度下記の治療を行った。葉酸配合殻付きハトムギ発酵エキスに加えて田七人参を併用投与(葉酸10mg/日+エキス2g/日+田七人参6g/日)した群3例(C群)、田七人参単独投与群3例(D群)を2週間観察したところC群では著効1例、有効2例、無効0例であったのに対し、D群では著効例はなく、有効1例、無効2例であった。なお、いずれのケースも副作用はみられなかった。(2) まとめ毛孔性角化症は、毛包の遺伝的角化異常症で治療法はなく、生命を脅かす疾患でないため放置されることが多い。しかし、特に若い女性の場合は、美容を気にすることが多く、医師が想像する以上にいわゆるサメ肌(肌あれ)に悩んでいるケースが多く、殻付きハトムギ発酵エキスによる治療法は患者のQOLの向上にも貢献し、極めて有用な治療法と考えられた。なお、当該治療法で改善した症例の維持療法としては、殻付きハトムギ発酵エキス2g/日+葉酸400μg/日+田七人参3g/日を継続することが勧められる。〔実施例15〕 毛孔性角化症(著効例)本実施例は、毛孔性角化症に対し著効した1例を提示する。症例 18歳 女性14歳の思春期の頃に、四肢の伸側、特に上腕と肩甲部皮膚に毛包口に一致して、非炎症性の角化性丘疹が多発したため皮膚科を受診し、尿素軟膏等の処置を受けたが改善しなかった。その後掻痒感などの症状はなかったものの、次第に皮膚がサメ肌のようになり、病変部位も大腿部伸側に広がった。皮膚科専門医に相談したところ、家族性のものであり治療法はないと言われ、ショックを受けて当科外来を受診した。まず、ヨクイニンを3週間投与したが無効であったため、インフォームドコンセンセント下に、葉酸配合殻付きハトムギ発酵エキス(エキス2g/日+葉酸10mg/日)を投与したところ、1週間目から次第に皮膚のざらつきが消失しはじめ、4週間後にはざらつきが全く消失した。また、毛孔に一致してみられた黒い色素沈着も消失し、皮膚全体にいわゆる美白効果が確認された。この症例は、臨床的に著効例と判定した。〔実施例16〕 肝斑(しみ)方法・結果30歳から66歳までの女性で肝斑のボランテイア女性22人に熱水抽出ヨクイニンエキス(エキス成分として1日量2g)を6週間服用させ、無効と判定された症例を対象に、少なくとも2ヶ月間の無投薬期間を設けた後、殻付きハトムギ酵素エキス(エキス2g/日)を6週間投与した。その結果、肝斑が完全に消失したもの(著効例)は8例、肝斑が改善したもの(有効例)が8例、無効6例であった。以上の結果より殻付きハトムギ酵素エキスは肝斑に有効と見なされた。〔実施例17〕 肝斑(著効例)本実施例は、3剤の配合剤が著効した例を提示する。(1) 症例 64歳 女性 卵巣癌(stage IIIa)約5年前より、両顔面に3×4cm大の肝斑と左頬部に1cm大の尋常性疣贅が出現していたが放置していた。今回抗癌剤の投与にあたり、インフォームドコンセント下に抗腫瘍効果を期待して殻付きハトムギ発酵エキス2g/日+葉酸2mg/日+田七人参6g/日を連日投与したところ、抗癌剤2コース終了時(投与5週間目)に、両顔面の肝斑と尋常性疣贅が完全に消失した。(2) まとめ本症例は肝斑と尋常性疣贅の治療目的のために殻付きハトムギ酵素エキスを投与したものではなかったが、偶然、肝斑と尋常性疣贅の消失をみた例である。約5年間肝斑と尋常性疣贅が継続してみられたこと、及び普通抗がん剤投与中は免疫機能の抑制やウイルス性疾患の増悪をみることが多いことから鑑み、本例は殻付きハトムギ発酵エキスを含む3剤が著効した症例と診断された。また、本症例は本人及び家族の証言から顔の美白効果(皮膚色素沈着防止効果)も確認された症例である。〔実施例18〕 雀斑、皺、老人班、皮膚色素沈着、鶏眼、尋常性ざ瘡(にきび)雀斑、皺、老人班、皮膚色素沈着、鶏眼、尋常性ざ瘡(にきび)に、殻付きハトムギ発酵エキスや酵素エキス、および葉酸/田七人参配合剤が効果があることが判明している。本発明者が観察した症例の集計では、雀斑は26例、皺(特に顔面および四肢)14例、老人班(特に顔面)10例、皮膚色素沈着(51例)、鶏眼(4例)、尋常性ざ瘡(32例)に上記薬剤が著効した。集計に使用した症例はいずれも症状が少なくとも6ヶ月以上続いた症例であり、いずれもこれらの疾患を当初から治療する目的で薬剤を投与したのではなく、腫瘍や疣贅の治療中に治癒したものである。〔実施例19〕 便秘及び便臭消去作用(1) 方法・結果3〜7日に1回しか排便のない習慣性便秘のボランテイア女性18人と男性14人に熱水抽出ヨクイニンエキス(エキス成分として1日量2g)を1週間投与し、無効と判定された症例24人を対象に、少なくとも2週間の無投薬期間を設けた後、殻付きハトムギ発酵エキス2g/日を1週間投与した。結果は便通の改善をみたもの(有効例)は18例、無効3例、判定不能3例であった。また、24例中便臭の消失を時角したものは16例であった。なお、熱水抽出ヨクイニンエキスを服用中に便臭の消失を時角したものは32例中0例であった。(1) まとめ殻付きハトムギ発酵エキスは熱水抽出ヨクイニンエキスに比較し、習慣性便秘の改善及び便臭消去能においてすぐれた薬効をもつことが推察された。本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、そのまま参考として本明細書に取り入れるものとする。産業上の利用可能性本発明により、ハトムギの殻・薄皮・渋皮の発酵処理物若しくは酵素処理物又はこれらの葉酸若しくは田七人参配合物を含む食品用又は医薬用組成物が提供される。本発明の組成物は、各種疾患の予防若しくは治療剤、又は機能性食品として有用である。 ハトムギの殻、薄皮及び渋皮から選ばれる少なくとも一種に発酵処理又は酵素処理をして得られる発酵処理物又は酵素処理物を有効成分として含む腫瘍の治療剤。 腫瘍が、良性腫瘍、前癌病変、子宮癌、膣癌、外陰癌、皮膚癌、食道癌、口腔癌、歯肉癌、顎癌、咽頭癌、声帯癌、肺癌、膀胱癌、甲状腺癌、乳癌、胃癌、膵臓癌、腎癌、卵巣癌、メラノーマ、中枢神経系腫瘍、末梢神経系腫瘍、縦隔腫瘍、肝癌、胆管癌、胆嚢癌、腎盃腫瘍、尿管癌、睾丸腫瘍、前立腺癌、絨毛性腫瘍、卵管癌、肉腫、白血病、赤白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫及び癌肉腫からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1記載の治療剤。 さらに、葉酸又は葉酸及び田七人参の両方を有効成分として含む請求項1または2に記載の腫瘍の治療剤。 ハトムギの殻、薄皮及び渋皮から選ばれる少なくとも一種に発酵処理又は酵素処理をして得られる発酵処理物又は酵素処理物を有効成分として含むヒト乳頭腫ウイルス性疾患の治療剤。 ヒト乳頭腫ウイルス性疾患が、尖圭コンジローマ、尋常性疣贅、青年性扁平疣贅、老人性疣贅及び喉頭乳頭腫からなる群から選択される少なくとも一種である請求項4記載のヒト乳頭腫ウイルス性疾患の治療剤。 ハトムギの殻、薄皮及び渋皮から選ばれる少なくとも一種に発酵処理又は酵素処理をして得られる発酵処理物又は酵素処理物並びに葉酸又は葉酸及び田七人参の両方を有効成分として含む、伝染性軟属腫、毛孔性角化症、肝斑、雀斑、皺、老人班、皮膚色素沈着、肌あれ、鶏眼及び尋常性ざ瘡からなる群から選択される少なくとも一種の治療剤。 発酵が、麹菌、乳酸菌及び酵母から選ばれる少なくとも一種の微生物によって行われることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の治療剤。 酵素が、ジアスターゼ剤、タカジアスターゼ剤、α-アミラーゼ剤、β-アミラーゼ剤、グルコアミラーゼ剤、ペクチナーゼ剤、β-グルコシダーゼ剤、セルラーゼ剤、ヘミセルラーゼ剤及びキシラナーゼ剤から選ばれる少なくとも一種である請求項1から7のいずれか1項に記載の治療剤。 ハトムギの殻、薄皮及び渋皮から選ばれる少なくとも一種に発酵処理又は酵素処理をして得られる発酵処理物又は酵素処理物がオリゴ糖を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の治療剤。