タイトル: | 特許公報(B2)_LPA受容体調節剤からなる泌尿器疾患治療剤 |
出願番号: | 2002562395 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 31/42,A61K 31/425,A61K 39/395,A61P 13/02,A61P 13/08 |
中出 眞嗣 福島 大吉 JP 4396808 特許公報(B2) 20091030 2002562395 20020207 LPA受容体調節剤からなる泌尿器疾患治療剤 小野薬品工業株式会社 000185983 大家 邦久 100081086 林 篤史 100121050 中出 眞嗣 福島 大吉 JP 2001031827 20010208 20100113 A61K 31/42 20060101AFI20091217BHJP A61K 31/425 20060101ALI20091217BHJP A61K 39/395 20060101ALI20091217BHJP A61P 13/02 20060101ALI20091217BHJP A61P 13/08 20060101ALI20091217BHJP JPA61K31/42A61K31/425A61K39/395A61P13/02A61P13/08 A61K 45/00-08 A61K 31/00-33/44 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 国際公開第99/035259(WO,A1) 特開平11−018788(JP,A) 特開平01−125330(JP,A) 特開平09−328469(JP,A) 特開平11−511730(JP,A) 特開2000−247998(JP,A) 特開平10−152446(JP,A) 特開2000−128804(JP,A) 特開平11−035558(JP,A) 14 JP2002001025 20020207 WO2002062389 20020815 18 20050120 上條 のぶよ 技術分野本発明は、リゾホスファチジン酸(Lysophosphatidic acid;以下、LPAと略記する。)受容体調節剤からなる泌尿器疾患治療および/または予防剤に関する。さらに詳しくは、LPA受容体アゴニストからなる尿道収縮剤、LPA受容体アンタゴニストからなる尿道および/または前立腺弛緩剤、それらを有効成分とする医薬に関する。背景技術細胞膜よりホスフォリパーゼの働きによりエイコサノイド、血小板活性化因子(Platelet activating factor;PAF)など様々な脂質メディエーターが産生されることが知られている。一般式(I)(式中、Rはアシル基、アルケニル基またはアルキル基を表わす。)で示されるリゾホスファチジン酸は細胞膜より産生され、情報伝達物質として作用し、細胞内に様々なシグナルを伝えることのできる脂質である。その中で、天然に存在するLPAはL−α−LPAである。最近3種のLPA受容体サブタイプの存在が明らかになり、これらの生理作用がLPA受容体を介していることが、徐々に証明されてきている。3種のLPA受容体はEDG(Endothelial differentiation gene)−2,4,7と呼ばれており、スフィンゴシン−1リン酸受容体のEDG−1,3,5,6,8と同様にEDG受容体ファミリーの一部を形成している。なお、EDG−2はLPA1、VZG−1とも呼ばれている(Mol Pharmacol 2000 Dec;58(6):1188−96)。LPA受容体はLPAと結合し、同受容体にカップリングしたGタンパク質を介して細胞内にシグナルを伝える。LPA受容体に結合しうるGタンパク質としてはGs、Gi、Gqなどが知られており、同受容体は細胞増殖亢進作用、また逆の増殖抑制作用などの応答に関与するとされる。さらに、Gタンパク質の下流にはMAP−キナーゼ系が連動しており、LPA受容体は多彩なシグナルを伝達することが分かってきた。また、LPA受容体サブタイプは生体の広範囲に分布しているが、サブタイプによってそれらの局在様式が異なることから、それぞれの受容体の役割は組織により異なると考えられている。一方、リガンド側のLPAにも種々のバリアントが存在し、アルケニル、アシル、アルキル型の3種類のLPAが知られている。さらにそれぞれの型のLPAについて、脂肪酸内の不飽和結合の数の違いによっても分子の多様性が確認されている。LPAが惹起する薬理作用としてラット血圧の上昇、ラット結腸およびモルモット回腸の収縮現象などが知られている(J.Pharm.Pharmacol.1991,43,774,J.Pharm.Pharmacol.1982,34,514)。LPAによるラット結腸、回腸の収縮は1−リノレノイルリゾホスファチジン酸((18:3)−LPA;式(I)中、RがCH3(CH2CH=CH)3(CH2)7CO基である化合物)による反応が最も強く、1−リノレオイルリゾホスファチジン酸((18:2)−LPA;式(I)中、RがCH3(CH2)3(CH2CH=CH)2(CH2)7CO基である化合物)、1−パルミトイルリゾホスファチジン酸((16:0)−LPA;式(I)中、RがCH3(CH2)14CO基である化合物)にも作用が認められている。しかし一般式(II)(式中、Rはアシル基、アルケニル基またはアルキル基を表わす。)で示されるホスファチジン酸による収縮も認められ、この収縮作用が受容体を介した作用であるか否かの検討はされていない。また、インビボ(in vivo)においてLPAが薬理作用を示すか否かの検討も皆無である。LPAが膀胱より単離した膀胱平滑筋系細胞への収縮作用を有することも知られているが(J.Urol.1999 162,1779)、LPAが尿道の収縮に関与することはこれまで全く知られていない。なお、LPAと前立腺の関係については、これまでに前立腺由来上皮細胞の増殖をLPAが亢進させることが知られているが(J.Urol.2000,163,1027)、LPAが前立腺の収縮に関与することは知られていない。尿道や前立腺の収縮を惹起する物質として、ノルアドレナリン、エンドセリンなどの生理活性物質が知られており、それぞれは各々の受容体を介して作用することが分かっている。このため、これらの受容体アゴニスト、またはアンタゴニストは尿道の収縮が関与する種々の疾患に応用されている。例えば、ノルアドレナリンについてはα1受容体が尿道に分布していることよりα1アンタゴニストのタムスロシン、プラゾシンなどは尿道圧を低下させることにより、前立腺肥大に伴う排尿困難の治療に用いられる。またα1受容体アゴニストは尿道収縮を増強することにより尿失禁の治療に用いられている。このような背景の下、LPAの尿道や前立腺を収縮させる作用についてはこれまで報告はなかった。また、国際特許公開番号WO01/60819号の明細書には、LPA受容体拮抗作用をもつ化合物がLPAにより惹起される細胞活性化を阻害し、経皮的冠動脈形成術(PTCA)後の再狭窄、動脈硬化、動脈閉塞症、悪性および良性増殖性疾患、各種炎症性疾患、腎臓疾患、腫瘍細胞の増殖抑制、癌の浸潤転移、脳あるいは末梢神経障害などの予防・治療につながることが記載されているが、泌尿器系疾患に関与することは記載されていない。発明の開示本発明者らは、LPAの受容体の役割を解明すべくLPA受容体調節剤が有する生理作用について種々検討を行った結果、意外にもこれらが尿道および前立腺に作用し泌尿器疾患に関わっていることを見出した。このことは従来技術からみて全く予期できないことであり、今回、本発明者らが実験により初めて確認したことである。すなわち、本発明はLPA受容体調節剤からなる泌尿器疾患治療および/または予防剤に関し、さらに詳しくは(1)LPA受容体アゴニストからなる尿道収縮剤、(2)LPA受容体アンタゴニストからなる尿道および/または前立腺弛緩剤、(3)LPA受容体アゴニストを有効成分として含有する尿失禁の治療および/または予防剤、(4)LPA受容体アンタゴニストを有効成分として含有する排尿困難、尿閉、頻尿、夜間頻尿、排尿痛、前立腺肥大症の治療および/または予防剤、(5)LPA受容体アゴニストと他の泌尿器疾患治療剤との組み合わせからなる泌尿器疾患治療および/または予防剤。(6)LPA受容体アンタゴニストと他の泌尿器疾患治療剤との組み合わせからなる泌尿器疾患治療および/または予防剤に関する。詳細な説明本発明において、LPAとは一般式(I)で示されるリゾホスファチジン酸を意味し、グリセロリン酸のグリセロールの二つの水酸基のうち一つが脂肪酸に置換された化合物の総称である。本発明において、LPA受容体調節剤とは、LPA受容体アゴニスト(作働薬)および/またはLPA受容体アンタゴニスト(拮抗薬)を表わす。LPA受容体アゴニストとしては、LPA受容体に作用し、LPA受容体を活性化するものなら何でもよいが、好ましくはLPA誘導体、より好ましくは18:3−LPA(一般式(I)中、Rが1−リノレノイル基である化合物)および18:1−LPA(一般式(I)中、Rが1−オレオイル基である化合物)が好ましく、特に18:3−LPAが好ましい。また、一般式(I)で示されるLPAの中でも、好ましいのは天然に存在するL−α−LPAである。LPA受容体アゴニストは尿道収縮作用を有することから尿失禁(尿道機能の衰えからくる腹圧性尿失禁、痴呆性尿失禁、反射性尿失禁、溢流性尿失禁、切迫性尿失禁、全尿失禁、機能性尿失禁、溢流性尿失禁など)の治療および/または予防に有用である。一方、LPA受容体アンタゴニストとしては、LPA受容体に作用し、LPA受容体を不活性化するものなら何でもよい。国際特許公開番号WO01/60819号の明細書には、一般式(1)[式中、R1は、置換基を有してもよい、アルキル基、アリール基、複素環式基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、またはハロゲン原子を表わし、R2は、置換基を有してもよい、アルキル基、アリール基、複素環式基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、またはハロゲン基を表わし、R3は、水素原子、低級アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基を表わし、R4は、(a)置換基を有してもよい、フェニル基、アリール基、あるいは複素環式基、(b)置換あるいは無置換のアルキル基、および(c)置換あるいは無置換のアルケニル基からなる群から選択される基を表わし、Xは酸素原子あるいは硫黄原子を表わす。但し、R3とR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって5〜10員環構造を形成してもよく、また、R3が水素原子である場合、R4はメチル基を除く基を表わす。]で示される化合物またはその塩が、EDG−2過剰発現細胞を用いたアッセイにおいてLPA受容体拮抗作用を有し、EDG−2などに対して作用を示すことが報告されているが、本発明のLPA受容体アンタゴニストまたはEDG−2アンタゴニストには一般式(1)で示される化合物またはその塩も含まれる。各基の定義は、国際特許公開番号WO01/60819号の明細書に詳しく記載されている。なかでも、実施例に記載されている化合物はすべて好ましく、最も好ましくは実施例115の化合物(メチル3−({4−[4−({[1−(2−クロロフェニル)エトキシ]カルボニル}アミノ)−3−メチル−5−イソキサゾリル]ベンジル}スルファニル)プロパノエート)である。LPAが尿道に加えて前立腺収縮作用を有することから、LPA受容体アンタゴニストは尿道および前立腺の収縮を抑制し、排尿困難(排尿開始遅延、排尿時間延長、尿線細小、間欠排尿、二段排尿など)、尿閉、頻尿、夜間頻尿などの蓄尿障害に、さらにはコレラなどの感染症の症状からくる排尿痛、ならびに前立腺肥大症の治療および/または予防に有用である。また、細菌の分泌するホスフォリパーゼDによりLPAが産生されるとの報告から、LPA受容体アンタゴニストは細菌感染症に伴う尿道収縮の抑制に有用と考えられる。上記した頻尿、夜間頻尿の原因となる疾患としては、神経因性膀胱疾患(脳血管障害、パーキンソン病、脳腫瘍、多発性硬化症、シャイ−ドレーガー(Shy−Drager)症、脊髄腫瘍、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、糖尿病など)、下部尿路の閉塞疾患(前立腺肥大、膀胱容量の減少など)、下部尿路の炎症性疾患(感染など)、多尿などが考えられる。これまでに前立腺由来上皮細胞の増殖をLPAが亢進させることが知られているが、これは細胞株を用いた知見であり、これからはLPA受容体アンタゴニストの前立腺肥大症に対する尿道収縮抑制の即効作用を推測することはできない。本発明において、18:3−LPAがインビトロ(in vitro)およびインビボ(in vivo)において尿道および前立腺に対する強い作用を示すことを確認した。すなわち、インビトロ(in vitro)においては、マグヌス試験により18:3−LPAが尿道および前立腺を収縮させることを示した(実施例1)。また、インビボ(in vivo)においては尿道内圧測定試験により、18:3−LPAおよび18:1が尿道内圧を上昇させることを示した(実施例2)。また、LPA受容体のサブタイプとしてはEDG(Endothelial differentiationgene)−2,4,7の3種類が知られているが、EDG−2抗血清ペプチドを用いた実験により、EDG−2に作用する化合物が泌尿器疾患に有効であることが十分予測できることも確認した(実施例3)。さらに、国際特許公開番号WO01/60819号の明細書において、EDG−2拮抗作用が強いことが示されている実施例115の化合物(メチル3−({4−[4−({[1−(2−クロロフェニル)エトキシ]カルボニル}アミノ)−3−メチル−5−イソキサゾリル]ベンジル}スルファニル)プロパノエート)が尿道収縮抑制作用および尿道内圧降下作用を有することも確認した(実施例4、5)。従って、LPA受容体調節剤のうち、EDG−2調節剤が泌尿器疾患に特に有用であると考えられる。特に、EDG−2アンタゴニストには、排尿困難、尿閉、頻尿、夜間頻尿、排尿痛または前立腺肥大症などの症状に伴う排尿困難、頻尿、残尿量の増加の抑制なども期待される。本発明において見出したLPAの尿道および前立腺における収縮作用は、LPA自身ならびにLPA受容体アゴニストおよびアンタゴニストが、尿道および前立腺関連疾患の治療剤として用い得ることを示唆するものである。[毒性]本発明に用いられる化合物の毒性は低いものであり、医薬として使用するために十分に安全であると判断できる。産業上の利用可能性[医薬品への適用]本発明で使用される一般式(I)で示されるLPAならびにLPA受容体アゴニストおよびLPA受容体アンタゴニストは、LPA受容体に結合するため、泌尿器関連疾患の予防および/または治療に有用であると考えられる。特に、LPA受容体アゴニストは尿道を収縮させるので尿失禁(尿道機能の衰えからくる腹圧性尿失禁、痴呆性尿失禁、反射性尿失禁、溢流性尿失禁、切迫性尿失禁、全尿失禁、機能性尿失禁、溢流性尿失禁など)の治療および/または予防に有用であり、LPA受容体アンタゴニストは尿道を弛緩させるので尿道および前立腺の収縮を抑制し、排尿困難(排尿開始遅延、排尿時間延長、尿線細小、間欠排尿、二段排尿など)、尿閉、頻尿、夜間頻尿などの蓄尿障害に、さらにはコレラなどの感染症の症状からくる排尿痛などの治療および/または予防に有用であり、さらには尿道や前立腺を弛緩させるので前立腺肥大症の治療および/または予防に有用であると考えられる。本発明に用いられる一般式(I)で示されるLPAならびにLPA受容体アゴニストおよびLPA受容体アンタゴニストを上記の目的で用いるには、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。さらに、本発明においては、一般式(I)で示されるLPAならびにLPA受容体アゴニストおよびLPA受容体アンタゴニストは、1)該化合物の予防および/または治療効果の補完および/または増強、2)該化合物の動態・吸収改善、投与量の低減、および/または3)該化合物の副作用の軽減を目的として他の薬剤と組み合わせた併用剤として投与してもよい。一般式(I)で示されるLPAならびにLPA受容体アゴニストおよびLPA受容体アンタゴニストと他の薬剤の併用剤は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、一般式(I)で示されるLPAならびにLPA受容体アゴニストおよびLPA受容体アンタゴニストを先に投与し、他の薬剤を後に投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、一般式(I)で示されるLPAならびにLPA受容体アゴニストおよびLPA受容体アンタゴニストを後に投与してもよく、それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。上記併用剤により、予防および/または治療効果を奏する疾患は特に限定されず、一般式(I)で示されるLPAならびにLPA受容体アゴニストおよびLPA受容体アンタゴニストの予防および/または治療効果を補完および/または増強する疾患であればよい。LPA受容体アゴニストの泌尿器疾患に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、他の泌尿器疾患治療剤、例えば、α1アゴニスト、β2アゴニスト、抗コリン剤等が挙げられる。α1アゴニストとしては、塩酸ミドドリン等が挙げられる。β2アゴニストとしては、塩酸クレンブテロール等が挙げられる。抗コリン剤としては、例えば、塩酸オキシブチニン、塩化ベタネコール、塩酸プロピベリン、臭化プロパンテリン、臭化メチルベナクチジウム、臭化ブチルスコポラミン、酒石酸トルテロジン、塩化トロスピウム、Z−338、UK−112166−04、KRP−197、ダリフェナシン、YM−905等が挙げられる。また、LPA受容体アンタゴニストの泌尿器疾患に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、他の泌尿器疾患治療剤、例えば、α1アンタゴニスト、抗コリン剤、5α−リダクターゼ阻害剤、および/または抗アンドロゲン剤等が挙げられる。LPA受容体アンタゴニストとしては、メチル3−({4−[4−({[1−(2−クロロフェニル)エトキシ]カルボニル}アミノ)−3−メチル−5−イソキサゾリル]ベンジル}スルファニル)プロパノエート等が挙げられる。α1アンタゴニストとしては、塩酸テラゾシン、塩酸ブナゾシン、ウラピジル、塩酸タムスロシン、メシル酸ドキサゾシン、塩酸プラゾシン、インドラミン、ナフトピジル、塩酸アルフゾシン、AIO−8507L等が挙げられる。抗コリン剤としては、例えば、塩酸オキシブチニン、塩化ベタネコール、塩酸プロピベリン、臭化プロパンテリン、臭化メチルベナクチジウム、臭化ブチルスコポラミン、酒石酸トルテロジン、塩化トロスピウム、Z−338、UK−112166−04、KRP−197、ダリフェナシン、YM−905等が挙げられる。ただし、抗コリン剤は前立腺肥大を伴わない場合にのみ用いられる。主として前立腺肥大を伴わない場合の頻尿、尿失禁の治療に用いられる。5α−リダクターゼ阻害剤としては、例えば、フィナステリド、GI−998745等が挙げられる。抗アンドロゲン薬としては、例えば、オキセンドロン、酢酸オサテロン、ビカルタミド等が挙げられる。LPA受容体アンタゴニストと前記の他の泌尿器疾患治療剤との組み合わせはすべて好ましいが、特に好ましくはメチル3−({4−[4−({[1−(2−クロロフェニル)エトキシ]カルボニル}アミノ)−3−メチル−5−イソキサゾリル]ベンジル}スルファニル)プロパノエートと塩酸テラゾシン、塩酸ブナゾシン、ウラピジル、塩酸タムスロシン、メシル酸ドキサゾシン、塩酸プラゾシン、インドラミン、ナフトピジル、塩酸アルフゾシン、AIO−8507L、塩酸オキシブチニン、塩化ベタネコール、塩酸プロピベリン、臭化プロパンテリン、臭化メチルベナクチジウム、臭化ブチルスコポラミン、酒石酸トルテロジン、塩化トロスピウム、KRP−197、フィナステリド、オキセンドロン、酢酸オサテロン、ビカルタミドである。一般式(I)で示されるLPAならびにLPA受容体アゴニストおよびLPA受容体アンタゴニストと他の薬剤の重量比は特に限定されない。他の薬剤は、任意の2種以上を組み合わせて投与してもよい。また、一般式(I)で示されるLPAならびにLPA受容体アゴニストおよびLPA受容体アンタゴニストの予防および/または治療効果を補完および/または増強する他の薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。本発明で用いる一般式(I)で示されるLPAならびにLPA受容体アゴニストおよびLPA受容体アンタゴニスト、または一般式(I)で示されるLPAならびにLPA受容体アゴニストおよびLPA受容体アンタゴニストと他の薬剤の併用剤を上記の目的で用いるには、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人あたり、1回につき、1mgから1000mgの範囲で、1日1回から数回経口投与されるか、または成人一人あたり、1回につき、0.1mgから100mgの範囲で、1日1回から数回非経口投与(好ましくは、静脈内投与)されるか、または1日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。もちろん前記したように、投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて必要な場合もある。一般式(I)で示されるLPAならびにLPA受容体アゴニストおよびLPA受容体アンタゴニスト、または一般式(I)で示されるLPAならびにLPA受容体アゴニストおよびLPA受容体アンタゴニストと他の薬剤の併用剤を投与する際には、経口投与のための固体組成物、液体組成物およびその他の組成物および非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤等として用いられる。経口投与のための固体組成物には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。カプセル剤には、ハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。このような固体組成物においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、少なくともひとつの不活性な希釈剤、例えばラクトース、マンニトール、グルコース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと混合される。組成物は、常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、繊維素グリコール酸カルシウムのような崩壊剤、ラクトースのような安定化剤、グルタミン酸またはアスパラギン酸のような溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤または丸剤は必要により白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの胃溶性あるいは腸溶性物質のフィルムで被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含む。このような液体組成物においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、一般的に用いられる不活性な希釈剤(例えば、精製水、エタノール)に含有される。この組成物は、不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。経口投与のためのその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、それ自体公知の方法により処方されるスプレー剤が含まれる。この組成物は不活性な希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば米国特許第2,868,691号および同第3,095,355号に詳しく記載されている。本発明による非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性および/または非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を包含する。水性の溶液剤、懸濁剤としては、例えば注射用蒸留水および生理食塩水が含まれる。非水溶性の溶液剤、懸濁剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(登録商標)等がある。また、無菌の水性と非水性の溶液剤、懸濁剤および乳濁剤を混合して使用してもよい。このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えば、ラクトース)、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)のような補助剤を含んでいてもよい。これらはバクテリア保留フィルターを通すろ過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化される。これらはまた無菌の固体組成物を製造し、例えば凍結乾燥品の使用前に、無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用することもできる。非経口投与のためのその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される外溶液剤、軟膏、塗布剤、直腸内投与のための坐剤および膣内投与のためのペッサリー等が含まれる。発明を実施するための最良の形態以下、参考例および実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。参考例1:1−リノレノイル(18:3)−LPAの調製1−リノレノイル18:3−LPC(リゾホスファチジルコリン)(SRL−B641)3mg/ml、ホスフォリパーゼD(Sigma P−8023)60U/ml、200mM Tris−HCl pH7.5、5mM フッ化ナトリウムの組成で、37℃で激しく撹拌しながら一晩酵素反応を行なった。クロロホルムおよびメタノール混合溶媒で抽出(クロロホルム:メタノール=2:1で1回、クロロホルム:メタノール=17:3で2回抽出)後、上層にメタノールおよび1N塩酸を適宜加えてpHを2.5に調整した。クロロホルム:メタノール=17:3の混合溶媒で2回抽出後クロロホルム層を分取し、濃縮した。残渣をクロロホルム−メタノール−3%アンモニア水(6:5:1)で中和したあと濃縮し、1−リノレノイル(18:3)−LPAを得た。また同様の方法で、相当するリゾホスファチジルコリン(LPC)を用いて、所望のリゾホスファチジン酸(LPA)を調製することができる。実施例1:(1)尿道収縮の測定雌性CD(SD)IGSラット(日本チャールスリバー、使用時8〜9週齢)を頭部打撲法および頸動静脈切断により放血致死させた後、恥骨下の尿道を注意深く摘出し、速やかにKrebs−Henseleit液(112mmol/L NaCl、5.9mmol/L KCl、2.0mmol/L CaCl2、1.2mmol/L MgCl2、1.2mmol/L NaH2PO4、25.0mmol/L NaHCO3、11.5mmol/L Glucose)に浸した。摘出した標本から尿道部分を切り取り、切開し平板状にしたあと、輪走筋と平行に切断し、幅2〜3mm、長さ3〜4mmの短冊標本を一匹当たり2〜3個作製した。作製した標本をKrebs−Henseleit液(37±1℃、混合ガス[95%O2+5%CO2]を通気)を充たしたマグヌス管内(容量:10ml)に懸垂した。約0.5gの張力負荷を与え60分間安定させたあと、等尺性トランスデューサ(Force displacement transducer)(FDピックアップTB−611T:日本光電)からひずみ圧アンプ(AP−641G,AP−601G:日本光電)を介してレコーダー(リニアコーダWR3320:GRAPHTEC CORP.,レクチコーダRJG−4128:日本光電)上に収縮運動を記録した。コントロールの収縮反応は、高濃度KCl液(Krebs−HenseleitのNaClを全てKClに置換したもの)で刺激することにより得た。LPAおよびフェニレフリン(比較化合物:αアゴニスト)を累積的に加えることにより、尿道収縮の用量依存性を測定した。測定結果を図1に示す。図1は18:3−LPAおよび対照化合物(フェニレフリン)による雌性ラット尿道の収縮を、化合物濃度(横軸)と、コントロールに対する収縮率(%)(縦軸)との関係としてプロットしたものであり、図中、黒丸は18:3−LPAによる収縮、白丸はフェニレフリンによる収縮を表わす。図1に示される通り、18:3−LPAによるラット尿道の収縮は、収縮時間の長い比較的安定したプラトーを形成し、脱感作も示さなかった。18:3−LPAのラット尿道収縮強度はフェニレフリンよりも強かったことより、18:3−LPAは尿道に作用する生理活性物質と考えられる。(2)摘出前立腺の収縮試験雄性CD(SD)IGSラット(日本チャールスリバー、使用時8〜9週齢)を頭部打撲法および頸動静脈切断により放血致死させた後、前立腺を摘出し速やかに氷冷したKrebs−Henseleit液(112mmol/L NaCl,5.9mmol/L KCl,2.0mmol/L CaCl2,1.2mmol/L MgCl2,1.2mmol/L NaH2PO4,25.0mmol/L NaHCO3,11.5mmol/L Glucose)に浸した。摘出した器官から、前立腺を左右の葉に分割し、脂肪組織を除去し長軸方向に小片を1葉から2〜3個切り出した。作製した標本をKrebs−Henseleit液(37±1℃,混合ガス[95%O2+5%CO2]を通気)を充たしたマグヌス管内(容量:10mL)に懸垂した。60分程度安定させた後、0.5〜1gの張力負荷を与え、等尺性トランスデューサ(Force displacement transducer)(FDピックアップ TB−611T:日本光電)からひずみ圧アンプ(AP−641G,AP−601G:日本光電)を介してレコーダー(リニアコーダWR3320:GRAPHTEC CORP.,レクチコーダRJG−4128:日本光電)上に収縮運動を記録した。マグヌス管内にフェニレフリン0.01〜10μMを添加し、フェニレフリン10μMの収縮をコントロールの収縮反応とした。なお、LPAによるラット前立腺収縮については脱感作が認められたので、フェニレフリンは実験終了直前に加えた。マグヌス管内に懸垂した後は、適時、標本の洗浄を繰り返した。測定結果を図2に示す。図2は18:3−LPAおよび対照化合物(フェニレフリン)による雌性ラット前立腺の収縮を、化合物濃度(横軸)とコントロールに対する収縮率(%)(縦軸)との関係としてプロットしたものであり、黒丸は18:3−LPAによる収縮、白丸はフェニレフリンによる収縮を表わす。実施例2:薬物による尿道内圧の測定雄性CD(SD)IGSラット(日本チャールスリバー、使用時8〜9週齢)を、ペントバルビタールナトリウムの腹腔内投与(50mg/kg)により麻酔した。頸部正中切開後、気道カニューレと動脈カテーテルの挿入を行なった。動脈カテーテルを介して血圧の測定を開始した後、脊髄を破壊するために、ステンレス製の棒を眼孔と大後頭孔を通して脊柱に挿入した。速やかに気道カニューレを小動物用人工呼吸装置(SN−480−7、シナノ製作所)に接続して1回換気量6ml/kg、70ストローク/分の条件下で人工呼吸した。血圧のなだらかな下降とその後の低血圧域での安定によって脊髄破壊がうまく行なわれたことを確認後、薬物投与のための静脈カテーテルを大腿静脈に挿入した。次に下腹部正中切開により膀胱を露出し、恥骨付近で尿道を結紮した。尿道カテーテルを膀胱頂部より尿道内へ挿入し、膀胱頸部で結紮固定した。尿道カテーテルは圧トランスデューサーに接続して尿道内圧を測定した。その後、尿道内圧を約20mmHgに合わせて約1時間放置し、尿道内圧が安定しているのを確認した後、フェニレフリン10μg/kg/0.5mlの投与によって尿道内圧の上昇を確認した。18:3−LPAを含む種々薬物の評価も同様に0.5ml/kgで行なった。表1に雄性ラットにおける尿道内圧測定の結果を示す。脊髄破壊ラットの尿道内圧に対して、18:3−LPAは静脈内投与によって、用量依存的な上昇作用を示した。同一の脂肪酸側鎖を持つ18:3−LPC(リゾホスファチジルコリン)および18:3−グリセロールは、1mg/kgの投与量においてもその尿道内圧に対する作用が殆ど見られなかった。このことから、この作用がLPAの受容体を介した作用であることが推測された。一方で18:1−LPAは、1mg/kgの投与量において、尿道内圧の上昇が軽度に認められた。実施例3:抗EDG−2ペプチド血清のLPA依存性尿道収縮に対する抑制作用(1)EDG−2ペプチドの作製ヒトEDG−2およびマウスEDG−2のアミノ酸配列を基にEDG−2N末端領域に対する2種類のペプチドを多抗原性ペプチド法(Multiple antigenic peptide:MAP法)により合成した。2種類のペプチドはそれぞれペプチドA(hEDG−2 N末1−13残基,MetAlaAlaIleSerThrSerIleProValIleSerGln(配列番号1))、およびペプチドB(hEDG−2 N末10−21残基,ValIleSerGlnProGlnPheThrAlaMetAsnGlu(配列番号2))である。MAP法についてはTamの方法に従った(Proc.Natl.Acad.Sci USA 85 5409,1988)。(2)動物の免疫と抗EDG−2ペプチド血清の調製(1)に示す方法で得られた合成ペプチドを等容量のフロインド完全アジュバントによりエマルジョン化し、これをウサギ背部皮下3〜4ヶ所に合計1mL(0.5mgのペプチド)インジェクトし免疫した。抗体価を上昇させるために、初回免疫日より2、6および8週間目に同様にして追加免疫(ブースト)を行なった。採血を初回免疫前、初回免疫より4、8および10週目に行ない、血清の抗原に対する反応性を測定した。(3)抗血清の性質血清の抗体価は、血清が免疫に用いた抗原と反応することを酵素免疫測定法(ELISA法:医学書院刊1976年,Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)を用いて確認した。ペプチドAに対する抗体価(ペプチドを1μg/ウエルで固定したときにELISAのOD492値が0.2を示す時の血清の希釈率)は初回免疫前、初回免疫より4、8および10週目でそれぞれ50以下、1,400、3,000および12,500と上昇した。また、ペプチドBに対する抗体価(同上)についても初回免疫前、初回免疫より4、8および10週目でそれぞれ50以下、77,300、79,900および109,800と上昇した。抗血清による阻害実験においては10週目に採血して調製した抗ペプチドA血清、及び抗ペプチドB血清を混合して用いた。なおコントロール血清として、それぞれの個体より初回免疫前に採血して調製した血清を混合して用いた。(4)抗EDG−2ペプチド血清のLPA依存性尿道収縮に対する抑制作用LPAによる尿道収縮がEDG−2を介した作用であることを確認するために、ラット尿道のLPA収縮に対する抗EDG−2ペプチド血清の効果を検討した。摘出した尿道を10μM LPAで収縮が安定するまで繰り返し刺激し、血清を反応させる直前の収縮力をコントロール(pre値)とした。抗EDG−2ペプチド血清の阻害作用は、血清(免疫または免疫前血清を20倍希釈で使用:)を37℃で30分間反応させた後標本を洗い、さらに二次抗体として24μg/ml抗ウサギIgG(イムノグロブリン)抗体(anti−rabbit IgG)(Goat IgG,Sigma R−3128)を37℃で30分間反応させたところに10μM LPAを加えて収縮を引き起こした(post値)。結果は、収縮残存率(%)=(post値/pre値)×100として解析した。血清(IgG 濃度は100μg/ml)を標本に反応させた後洗浄して血清を除去し、さらに二次抗体を作用させ効果を解析した。結果を図3に抗EDG−2ペプチド血清のラット尿道LPA収縮に対する効果として示す(例数は7)。免疫前血清の処置に比較して免疫血清の処置では、有意なLPA収縮阻害作用が認められた。以上より、ラット尿道のLPA収縮に対するEDG−2の関与が確認された。実施例4:ラット摘出尿道のLPA依存性収縮に対するメチル3−({4−[4−({[1−(2−クロロフェニル)エトキシ]カルボニル}アミノ)−3−メチル−5−イソキサゾリル]ベンジル}スルファニル)プロパノエートの阻害作用の検討雄性CD(SD)IGSラット(日本チャールスリバー、使用時8〜9週齢)をエーテル麻酔し腹部大動脈からの放血により安楽死させた後、恥骨下の尿道を膀胱、精嚢腺とともに注意深く摘出し、速やかにkrebs−Henseleit液(112mmol/L NaCl、5.9mmol/L KCl、2.0mmol/L CaCl2、1.2mmol/L MgCl2、1.2mmol/L NaH2PO4、25.0mmol/L NaHCO3、11.5mmol/L Glucose、4℃)に浸した。摘出した標本から近位(前立腺部)尿道(pre−prostatic urethra)を切り取り、眼科鋏で腹部側を切り開き平板状にし、幅2〜3mm、長さ3〜4mmの短冊標本を作製した。作製した標本をKrebs−Henseleit液(37±1℃、混合ガス[95%O2+5%CO2]を通気)を充たしたマグヌス管内(容量:10mL)に懸垂した。約0.5gの張力負荷を与え60分程度安定させた後、フォース・ディスプレイスメント・トランスデューサ(Force displacement transducer;FDピックアップTB−611T:日本光電)からひずみ圧アンプ(AP−641G、AP−601G:日本光電)を介してレコーダー(リニアコーダWR3320:GRAPHTEC CORP)上に収縮運動を記録した。メチル3−({4−[4−({[1−(2−クロロフェニル)エトキシ]カルボニル}アミノ)−3−メチル−5−イソキサゾリル]ベンジル}スルファニル)プロパノエート(以下、化合物Aと記す。)の泌尿器系器官に対する薬理作用を評価する為に、ラット摘出尿道のLPA依存性収縮に対する阻害作用を検討した。すなわち、摘出した尿道を10μM LPAで収縮が安定するまで繰り返し刺激し、化合物Aを反応させる直前の収縮力をコントロール(pre値)とした。次に種々の濃度になるように化合物Aを37℃で30分間反応させた後に、LPAを終濃度で10μMになるように加えて収縮を引き起こした(post値)。化合物Aの阻害活性を、阻害率(%)={1−(post値/pre値)}×100として算出した。その結果、化合物Aは濃度依存性にLPAによる尿道収縮を阻害し、化合物Aの50%阻害濃度(IC50)値は0.07μMであった(図4)。このことから、化合物Aは前立腺肥大症等における排尿機能の改善、頻尿病態等の改善に奏功する可能性が示唆された。実施例5:メチル3−({4−[4−({[1−(2−クロロフェニル)エトキシ]カルボニル}アミノ)−3−メチル−5−イソキサゾリル]ベンジル}スルファニル)プロパノエートのインビボ(in vivo)におけるラット尿道内圧の阻害作用雄性CD(SD)IGSラット(日本チャールスリバー、使用時8〜9週齢)をウレタン1.2g/kgの皮下投与により麻酔した。頸部正中切開後、化合物投与用の頚静脈カテーテル、血圧測定用の動脈カテーテルを挿入した。次に下腹部正中切開し、恥骨下で尿道を結紮した。尿道カテーテルを膀胱頂部を切開して尿道内へ挿入し、膀胱頸部で結紮固定した。尿道カテーテルの他端を圧トランスデューサーに接続して尿道内圧を測定した。尿道内圧を20mmHg付近に合わせて静止させ、安定するまで静置した(約20分)。その後、化合物Aを静脈内投与し、20分間血圧、尿道内圧を測定したあと、尿道内圧の死後基線を求めるために、ソムノペンチルを1mL静脈内投与した。尿道内圧が下がりきって安定するのを待ち、その点を死後基線値とした。化合物Aの投与は、投与用量を3mg/kg、投与容量を1mL/kgとして行なった。なお、ビヒクル(vehicle)は10%DMSO−90%ラットプラズマ溶液とした。化合物Aのin vivoでの有効性を検証するために、化合物投与後のラット尿道内圧の変化をvehicle投与と比較して検討した。化合物Aの尿道内圧に対する作用の評価は、投与後2分ごとに実測値から投与前の尿道内圧値を引いた値を算出し、経時的な変化(尿道内圧降下量)をグラフ化し、データはすべて平均値±標準偏差で示した。その結果、Vehicle投与群では投与後の尿道内圧の変化はほとんどなかったが、化合物A投与群では有意な顕著な尿道内圧の降下が認められた(図5)。また、この時の最大の降下量は、尿道内圧の絶対値(投与前の尿道内圧−死後基線値)の約50%に達し、効果は強かった。このことから、EDG−2アンタゴニストなどのLPA受容体アンタゴニストは尿道内圧を降下させることが判明し、前立腺肥大症等に伴なう排尿障害治療薬として有効であることが示唆された。実施例6:LPAのラット静脈内投与による頻尿惹起作用の確認in vitro、in vivoでの評価において、18:3−LPAが前立腺、尿道などに対して収縮作用を示したことから、麻酔下ラットを用いて18:3−LPAのシストメトリーに対する影響を検討した。すなわち、雌性ラットCrj:SD(CD)IGS(日本チャールスリバー、使用時12〜13週齢)をウレタン1.2g/kgの皮下投与により麻酔し、仰臥位に固定し、下腹部正中切開した。左右両尿管を剥離し、絹製縫合糸No.3で結紮した後、腎臓側を切断した。膀胱を露呈し、膀胱頂部をハサミで切開し、膀胱内圧測定用のカテーテル(JMSカットダウンチューブ、C3)を挿入した後、絹製縫合糸で結紮固定した。カテーテルの他端にはトップ三方活栓R型を2つ連結して接続し、そのうち一方を圧トランスデューサーに接続し、膀胱内圧を記録した。他の二方のうち一方はインフュージョンポンプに装着した膀胱灌流用のシリンジに接続した(残りの一方には調節用のシリンジが装着された)。なお、頚動脈に血圧測定用のカテーテルを挿入し、頚静脈に薬物投与用のカテーテルを挿入した。上記の手術を施したラットを37度の温水を循環させた保温台上に置き、膀胱内へクエン酸溶液(pH4.0)または生理食塩水を2.85ml/hrの速度で注入した。排尿反射のパターンが安定した後、頚静脈より生理食塩水を3ml/kg/hrの速度で注入した。所定時間後、生理食塩水で5mg/mlに調製した18:3−LPAを3ml/kg/hrの速度で注入した(15mg/kg/hr/3ml)。所定時間後、LPAの注入を止めて再度同様に生理食塩水を注入した。その結果、18:3−LPAを15mg/kg/hr/3mlで持続的に静脈内投与した場合、生理食塩水投与時よりも律動性膀胱収縮における排尿圧が上昇することが確認された。また、排尿間隔に関しても、18:3−LPA投与により短縮することが分かった(図6)。LPAは摘出膀胱に対しては収縮を起こさないことが分かっているので、LPAは尿道又は前立腺の収縮を助長すること、もしくは知覚神経系に作用することにより頻尿を惹起したと考えられた。このことからEDG−2アンタゴニストなどのLPA受容体アンタゴニストは泌尿器疾患における頻尿症状を抑制することが示唆された。製剤例1以下の各成分を常法により混合した後打錠して、一錠中に50mgの活性成分を含有する錠剤100錠を得た。・18:3−LPA(1−リノレノイルリゾホスファチジン酸)・・・5.0g・カルボキシメチルセルロースカルシウム(崩壊剤) ・・・・・0.2g・ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤) ・・・・・0.1g・微結晶セルロース ・・・・・4.7g製剤例2以下の各成分を常法により混合した後、溶液を常法により滅菌し、5mlずつアンプルに充填し、常法により凍結乾燥し、1アンプル中20mgの活性成分を含有するアンプル100本を得た。・18:3−LPA ・・・・・2.0g・マンニトール ・・・・・ 20g・蒸留水 ・・・・1000ml【配列表】【図面の簡単な説明】図1は、LPAおよび対照化合物であるフェニレフリンによる雌性ラット尿道の収縮を表わすグラフである。図2は、LPAおよび対照化合物であるフェニレフリンによる雄性ラット前立腺の収縮を表わすグラフである。図3は、抗EDG−2ペプチド血清のラット尿道LPA収縮に対する効果を表わすグラフである。図4は、雄性ラット尿道におけるLPAによる収縮に対するメチル3−({4−[4−({[1−(2−クロロフェニル)エトキシ]カルボニル}アミノ)−3−メチル−5−イソキサゾリル]ベンジル}スルファニル)プロパノエート(化合物A)の収縮抑制作用を表わすグラフである。図5は、雄性ラットにおける化合物Aの尿道内圧降下作用を表わすグラフである。図6は、ラットにおけるLPAの静脈内投与による頻尿惹起作用を示すチャートである。 抗EDG−2ペプチド血清、一般式(1)[式中、R1は、置換基を有してもよい、アルキル基、アリール基、複素環式基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、またはハロゲン原子を表わし、 R2は、置換基を有してもよい、アルキル基、アリール基、複素環式基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、またはハロゲン基を表わし、 R3は、水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化アルキル基を表わし、 R4は、(a)置換基を有してもよい、フェニル基、アリール基、または複素環式基、(b)置換あるいは無置換のアルキル基、および(c)置換あるいは無置換のアルケニル基からなる群から選択される基を表わし、Xは酸素原子または硫黄原子を表わす。但し、R3とR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって5〜10員環構造を形成してもよく、また、R3が水素原子である場合、R4はメチル基を除く基を表わす。]で示される化合物およびその塩からなる群より選択されるLPA受容体アンタゴニストを含有することを特徴とする、排尿困難、尿閉、頻尿、夜間頻尿、排尿痛および前立腺肥大症からなる群より選択される泌尿器疾患の治療および/または予防剤。 尿道および/または前立腺弛緩剤である請求項1記載の治療および/または予防剤。 一般式(1)で示される化合物が、メチル 3−({4−[4−({[1−(2−クロロフェニル)エトキシ]カルボニル}アミノ)−3−メチル−5−イソキサゾリル]ベンジル}スルファニル)プロパノエートである請求項1記載の治療および/または予防剤。 LPA受容体がEDG−2、EDG−4またはEDG−7である請求項1記載の治療および/または予防剤。 LPA受容体がEDG−2である請求項4記載の治療および/または予防剤。 EDG−2アンタゴニストが、一般式(1)(式中、すべての記号は請求項1と同じ意味を表わす。)で示される化合物またはその塩である請求項5記載の治療および/または予防剤。 一般式(1)で示される化合物がメチル 3−({4−[4−({[1−(2−クロロフェニル)エトキシ]カルボニル}アミノ)−3−メチル−5−イソキサゾリル]ベンジル}スルファニル)プロパノエートである請求項6記載の治療および/または予防剤。 抗EDG−2ペプチド血清、一般式(1)で示される化合物およびその塩からなる群より選択されるLPA受容体アンタゴニストと、塩酸テラゾシン、塩酸ブナゾシン、ウラピジル、塩酸タムスロシン、メシル酸ドキサゾシン、塩酸プラゾシン、インドラミン、ナフトピジル、塩酸アルフゾシン、AIO−8507L、塩酸オキシブチニン、塩化ベタネコール、塩酸プロピベリン、臭化プロパンテリン、臭化メチルベナクチジウム、臭化ブチルスコポラミン、酒石酸トルテロジン、塩化トロスピウム、Z−338、UK−112166−04、KRP−197、ダリフェナシン、YM−905、フィナステリド、GI−998745、オキセンドロン、酢酸オサテロンおよびビカルタミドから選択される少なくとも1種である他の泌尿器系疾患治療剤との組み合わせからなる請求項1記載の治療および/または予防剤。 抗EDG−2ペプチド血清、一般式(1)で示される化合物およびその塩からなる群より選択されるLPA受容体アンタゴニストと他の泌尿器疾患治療剤を単一製剤中に含有する請求項8記載の治療および/または予防剤。 抗EDG−2ペプチド血清、一般式(1)で示される化合物およびその塩からなる群より選択されるLPA受容体アンタゴニストと他の泌尿器疾患治療剤とを別々の薬剤として投与することを特徴とする請求項8記載の治療および/または予防剤。 他の泌尿器疾患治療剤が、塩酸テラゾシン、塩酸ブナゾシン、ウラピジル、塩酸タムスロシン、メシル酸ドキサゾシン、塩酸プラゾシン、インドラミン、ナフトピジル、塩酸アルフゾシン、およびAIO−8507Lから選択される少なくとも1種である請求項8記載の治療および/または予防剤。 他の泌尿器疾患治療剤が、塩酸オキシブチニン、塩化ベタネコール、塩酸プロピベリン、臭化プロパンテリン、臭化メチルベナクチジウム、臭化ブチルスコポラミン、酒石酸トルテロジン、塩化トロスピウム、Z−338、UK−112166−04、KRP−197、ダリフェナシン、およびYM−905から選択される少なくとも1種である請求項8記載の治療および/または予防剤。 他の泌尿器疾患治療剤が、フィナステリドおよびGI−998745から選択される少なくとも1種である請求項8記載の治療および/または予防剤。 他の泌尿器疾患治療剤が、オキセンドロン、酢酸オサテロンおよびビカルタミドから選択される少なくとも1種である請求項8記載の治療および/または予防剤。