タイトル: | 特許公報(B2)_ジアゾニウム種を用いてカーボンナノチューブを誘導体化する方法及びその組成物 |
出願番号: | 2002560970 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 1/32,C07C 15/56,C07C 17/00,C07C 25/22,C07C 41/30,C07C 43/21,C07C 51/347,C07C 63/49,C07C 67/343,C07C 69/76,C07C 201/12,C07C 205/06,C07C 329/10,C08K 5/00,C01B 31/02,B82B 1/00,B82B 3/00 |
ツアー,ジェイムズ・エム バー,ジェフリー・エル ヤン,ジピン JP 4308527 特許公報(B2) 20090515 2002560970 20020129 ジアゾニウム種を用いてカーボンナノチューブを誘導体化する方法及びその組成物 ウィリアム・マーシュ・ライス・ユニバーシティ 501105635 社本 一夫 100089705 増井 忠弐 100076691 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 戸水 辰男 100077506 ツアー,ジェイムズ・エム バー,ジェフリー・エル ヤン,ジピン US 60/264,784 20010129 US 60/272,903 20010302 US 60/316,501 20010831 US 60/316,521 20010831 20090805 C07C 1/32 20060101AFI20090716BHJP C07C 15/56 20060101ALI20090716BHJP C07C 17/00 20060101ALI20090716BHJP C07C 25/22 20060101ALI20090716BHJP C07C 41/30 20060101ALI20090716BHJP C07C 43/21 20060101ALI20090716BHJP C07C 51/347 20060101ALI20090716BHJP C07C 63/49 20060101ALI20090716BHJP C07C 67/343 20060101ALI20090716BHJP C07C 69/76 20060101ALI20090716BHJP C07C 201/12 20060101ALI20090716BHJP C07C 205/06 20060101ALI20090716BHJP C07C 329/10 20060101ALI20090716BHJP C08K 5/00 20060101ALI20090716BHJP C01B 31/02 20060101ALN20090716BHJP B82B 1/00 20060101ALN20090716BHJP B82B 3/00 20060101ALN20090716BHJP JPC07C1/32C07C15/56C07C17/00C07C25/22C07C41/30C07C43/21C07C51/347C07C63/49C07C67/343C07C69/76 AC07C201/12C07C205/06C07C329/10C08K5/00C01B31/02 101FB82B1/00B82B3/00 C07C 39/02 C07C 39/12 C07C 43/20 C07C 63/00 C07C 69/76 C07C 211/43 C07C 205/06 C07C 309/72 C07C 321/24 CAplus(STN) 国際公開第00/017101(WO,A1) 米国特許第06128214(US,A) 特開平06−179802(JP,A) 特表2004−522142(JP,A) K.F.Kelly et al.,Insight into the mechanism of sidewall functionalization of single-walled nanotubes: an STM study,Chemical Physics Letters,1999年,Vol.313,P.445-450 J. Chen et al.,Large On-Off Ratios and Negative Differential Resistance in Molecular Electronic Device,Science,1999年,Vol.286,p.1550-1552 54 US2002002562 20020129 WO2002060812 20020808 2004530646 20041007 32 20050126 関 美祝 本発明は、アメリカ航空宇宙局から与えられた助成第NASA−JSC−NCC 9−77号;全米科学財団から与えられた助成第NSR−DMR−0073046号;及びDARPA/ONRから与えられた助成第N00014−99−1−0406号による研究に関連してなされた。 発明の分野 本発明は、広義にはカーボンナノチューブに関する。特に、本発明は、ジアゾニウム化合物を用いたカーボンナノチューブの誘導体化及び誘導体化カーボンナノチューブのための使用に関する。 発明の背景 フラーレンは、六角形及び五角形で配置されたsp2混成炭素のみで構成される閉じたかご形分子である。フラーレン(例えば、C60)は、蒸発した炭素から凝縮によって製造された閉じた回転楕円体のかご形として最初に同定された。フラーレンチューブは、蒸発した炭素から回転楕円体のフラーレンを製造する炭素アーク法において陰極上の炭素堆積物中に生成する。Ebbesen et al. (Ebbesen I), "Large-Scale Synthesis Of Carbon Nanotubes," Nature, Vol. 358, p. 220 (July 16, 1992)及びEbbesen et al., (Ebbesen II), "Carbon Nanotubes," Annual Review of Materials Science, Vol. 24, p. 235 (1994)。このようなチューブを、本明細書においてカーボンナノチューブと呼ぶ。こうした方法で製造したカーボンナノチューブの多くは、多層ナノチューブ、すなわち、同軸円筒に類似したカーボンナノチューブであった。7層までを有するカーボンナノチューブが従来技術において説明されている。Ebbesen II; Iijima et al., "Helical Microtubules Of Graphitic Carbon," Nature, Vol. 354, p. 56 (November 7, 1991)。 1991年以来、カーボンナノチューブ、より詳細には単層カーボンナノチューブの操作を容易にし、このようなナノチューブの溶解度を向上させ、ナノチューブを複合体形成により適用しやすくするために、このようなナノチューブの誘導体化に対して大きな関心が寄せられてきた。これは、単層カーボンナノチューブが、化学及び材料部門における近年のより驚くべき発見のうちの1つだからである。ナノチューブは、非常に大きな強度、極端なアスペクト比を有し、優れた熱及び電気の導体である。ナノチューブの多数の潜在的な用途が仮定されており、工業的利用に向けてある程度の進歩がなされつつある。従って、単層カーボンナノチューブ並びに多層カーボンナノチューブの化学修飾が幾つかの用途にとっては必要であろう。例えば、このような用途は、エレクトロニクス用途のために表面上に修飾ナノチューブ、例えば単層カーボンナノチューブの集合を可能にするために;複合体中のホストマトリックスとの反応を可能にするために;及び検知用途のためにナノチューブ、例えば単層カーボンナノチューブと結合した様々な官能基の存在を可能にするために;ナノチューブに諸部分をグラフトすることを必要とすることがある。 カーボンナノチューブの製造及び物理的性質に関する報告及び総説は数多く存在するが、ナノチューブの化学的操作に関する報告はあまり発表されていない。カルボキシル基(carboxylic group)を用いてナノチューブ末端を官能基化する報告(Rao, et al., Chem. Commun., 1996, 1525-1526; Wong, et al., Nature, 1998, 394: 52-55)、次いでチオール結合を介してこれを金粒子に係留(tether)するためのさらなる操作の報告(Liu, et al., Science, 1998, 280: 1253-1256)がある。Haddon及び共同研究者ら(Chen, et al., Science, 1998, 282:95-98)は、チューブの末端表面にオクタデシルアミン基を付加し、次にナノチューブ側壁にジクロロカルベン類を付加することで、比較的に少量(〜2%)ではあるが単層カーボンナノチューブを溶媒和することを報告している。 単層カーボンナノチューブの共有結合側壁誘導体化における成功は範囲が限定されており、側壁の反応性は、黒鉛の底面の反応性と比較されている。Aihara, J. J. Phys. Chem. 1994, 98, 9773-9776。単層カーボンナノチューブの直接側壁官能基化に至る実行可能な経路は高温でのフッ素化であり、この方法は、本出願の譲受人に共通に譲渡された同時係属出願であり、2001年3月16日に出願され、Margraves et al.に付与された米国特許出願第09/810,390号、“Chemical Derivatization Of Single-Wall Carbon Nanotubes To Facilitate Solvation Thereof; And Use Of Derivatized Nanotubes To Form Catalyst-Containing Seed Materials For Use In Making Carbon Fibers”において開示されている。こうした官能基化ナノチューブを、ヒドラジンを用いて処理することで脱フッ素化するかまたはアルキルリチウム反応剤のような強い求核剤と反応させることができる。フッ素化ナノチューブは様々な官能基化材料に至る機会を十分に提供するかもしれないが、2段階プロトコール及び官能基が有機リチウム試薬に耐えられないことが、上述の方法をカーボンナノチューブの特定の最終使用に適合しないものにしてしまうことがある。側壁修飾における他の試みは、かなりの黒鉛質または非晶質炭素汚染物の存在によって妨げられた。Chen, Y. et al., J. Mater Res. 1998 13, 2423-2431。 従って、融通性がある(すなわち、1段階アプローチ及びナノチューブの特定の最終使用に適合するもの)と思われる、ナノチューブの高い官能基化度(degree of functionalization)への直接的なアプローチを開発することが望ましいと思われる。このような使用は、ナノチューブの非常に大きな強度、極端なアスペクト比、並びに優れた熱及び電気伝導特性を利用する用途を含む。 従って、本発明の目的は、直接的で融通性がありナノチューブの最終使用及び用途に適合する化学を利用して、カーボンナノチューブ、特に単層カーボンナノチューブの側壁及びエンドキャップを誘導体化する方法を提供することにある。 発明の要約 本発明は、カーボンナノチューブの新規な化学修飾方法を取り入れる。このような方法は、ジアゾニウム種を用いた多層及び単層カーボンナノチューブ(小直径(約0.7nm)単層カーボンナノチューブを含む)の誘導体化を含む。本方法は、カーボンナノチューブの側辺及び末端への様々な有機化合物の化学的付着を可能にする。こうした化学修飾ナノチューブは、ポリマー複合体における用途、分子電子用途、及びセンサー装置における用途を有する。本誘導体化方法は、電気化学誘起反応、熱誘起反応(ジアゾニウム化合物のインシトゥ発生によってまたは予備形成したジアゾニウム化合物によって)、及び光化学誘起反応を含む。誘導体化は、ナノチューブの分光学的特性のかなりの変化を引き起こす。推定官能性度(estimated degree of functionality)は、官能性部分を帯びるナノチューブ中の20〜30個の炭素毎に約1である。 電気化学誘起法は、ナノチューブの集合体の例えば1枚の“バッキーペーパー(bucky paper)”またはマット(これを銀ペースト被覆鰐口クリップを用いて保持し、ジアゾニウム塩と支持電解質塩とのアセトニトリル溶液中に浸漬し、その間にナノチューブの集合体に電位(典型的には負電位)を与えることができる)を利用する手順を含む。このような方法によって、分子ワイヤ(例えば、オリゴ(フェニレンエチニレン)分子ワイヤ)及び分子電子装置もナノチューブに共有結合で付着された。これは、ワイヤ様ナノチューブと分子ワイヤの及びワイヤ様ナノチューブと分子電子装置の一体化を表す。 このような電気化学的方法を、ナノチューブの部位選択的化学的官能基化に適用されるように適合させることができる。その上、これは、ナノチューブ表面の異なる位置への2つ以上の異なる化学的官能性の制御された付着に対処する。 熱誘起法は、有機溶媒混合物中のカーボンナノチューブの分散系を、反応性ジアゾニウム種に至る前駆体を用いて処理する手順を含む。この前駆体を次にインシトゥで反応性種に変換し、その熱分解はカーボンナノチューブへの化学的付着を生じる。このような方法は、拡張性(scalability)という利点を有し、潜在的に不安定なジアゾニウム化合物、すなわちカーボンナノチューブと反応する種を単離し貯蔵する必要性を避けると考えられている。 その上、熱誘起法はまた、予備形成したジアゾニウム種を利用する手順を含む。反応性種は、予め作製し、単離し、混合物に加えることができる。さらなる変形例としては、プロセスの温度(雰囲気温度並びにより高い温度及びより低い温度)、反応物の比、及び様々な有機溶媒の変形例が挙げられる。 光化学誘起法は、熱誘起反応と同様であるが、ただし、光化学的方法(熱的方法ではない)を利用してジアゾニウム種の分解を引き起こし、これは、カーボンナノチューブへの諸部分の化学的付着を生じる。 適切な化学基を用いて修飾した場合、ナノチューブはポリマーマトリックスと化学的に相溶性があり、ナノチューブの特性(例えば、機械的強度)が全体として複合材料の特性に移行することを可能にする。これを実現するために、修飾カーボンナノチューブをポリマー材料と十分に混合する(物理的にブレンドする)ことができ、及び/または、希望するなら、雰囲気温度または高温で反応させることができる。こうした方法を利用して、官能性をナノチューブに付加することができ、ナノチューブは、ホストポリマーマトリックスと、または直接に2本のチューブ自体の間でさらに共有結合しよう。 ポリマーマトリックスの化学構造の多数の変形例が存在し、これはすなわちポリエチレン、様々なエポキシ樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート等である。一般に、可能な複合材料は、化学修飾ナノチューブ及び熱可塑性物質、熱硬化性物質、エラストマー等を用いて製造できる可能性がある。また、ナノチューブに付着することができる化学基において可能な多数の変形例が存在する。具体的な基は、所望の個々のポリマーマトリックスとの相溶性を向上させるように、希望するなら、ホスト材料との化学結合を引き起こすように選択されよう。 その上、適切な化学基を用いて修飾した場合、ナノチューブをポリマー成長の発生体(generator)として使用できる。すなわち、ナノチューブは、カーボンナノチューブが化学的に包含されるような複合材料も生じると思われる重合プロセスの活性部分である可能性がある官能基を用いて誘導体化されると思われる。 例示的な具体例の説明ジアゾニウム種を用いたカーボンナノチューブの電気化学的誘導体化 アリールジアゾニウム塩は電子欠損オレフィン類と反応することが知られており、これは、メーヤワイン反応として知られている。Obushak, M. D., et al., Tett. Lett. 1998, 39, 9567-9570。このような溶液相反応において、ジアゾニウム塩の分解は典型的には金属塩の例えば塩化銅(I)によって触媒され、反応性アリールラジカルを与える。場合によっては、反応は、アリールカチオンによって進行すると考えられている。このタイプの化学は、電気化学的に還元されたアリールジアゾニウム塩のグラフト化による炭素表面の修飾に成功裏に適用されている。Delamar, M., et al., Carbon 1997, 35, 801-807; Allongue, P., et al., J. Am Chem. Soc. 1997, 119, 201-207; Ortiz, B., et al., J. Electro. Chem. 1998, 455, 75-81; Saby, C., et al., Langmuir 1997, 13, 6805-6813; Delamar, M, et al., J. Am. Chem. Soc. 1992, 114, 5883-5884。還元は、炭素表面に共有結合で付着したアリールラジカルを与えることができる。この手法は、高規則性熱分解黒鉛(highly ordered pyrolitic graphite)(HOPG)及びグラッシーカーボン(GC)電極の両方に適用されている。 塩化メチレン及びアセトニトリルは水素化カルシウムから蒸留した。ジメチルホルムアミドは蒸留し、モレキュラーシーブ上で貯蔵した。テトラヒドロフランはナトリウム/ベンゾフェノンケチルから蒸留した。全ての他の試薬は市販のものを入手し、さらに精製すること無く使用した。 カーボンナノチューブ:小直径(約0.7nm)単層カーボンナノチューブの製造方法は、Smalley, et al.によって開発された。Nikolaev, P., et al., Chem. Phys. Lett. 1999, 313, 91-97。この方法は、本出願の譲受人に共通に譲渡された同時係属出願であり、2001年4月27日に出願され、Smalley et al.に付与された米国特許出願第09/830,642号、“Gas-Phase Nucleation and Growth of Single-Wall Carbon Nanotubes from High Pressure CO”において開示されており、これを本明細書において参考のために引用する。この材料は、現在市販されている(カーボン・ナノテクノロジーズInc.(Carbon Nanotechnologies Inc.)、HiPco材料)。こうしたナノチューブの直径はC60のものとほぼ同じなので、こうしたナノチューブは、典型的にはレーザー−オーブン法によって製造されるより大きな直径のチューブと比較して向上された反応性を示すと理解されており、というのは、C60の反応性は部分的には湾曲歪み(curvature strain)に帰するとされてきたからである。本発明はまた、多層カーボンナノチューブ及びより大きな直径の単層カーボンナノチューブに関連するが、本方法を証明する実施例の中では上述の小直径ナノチューブを主に利用した。様々なジアゾニウム塩を使用し、これには、ナノチューブの付着後のさらなる仕上げに役立つ部分を提供するものが含まれる。また、記憶及び室温負抵抗を呈することが示されたものと同様のオリゴ(フェニレンエチニレン)分子装置(Chen, J. et al., App. Phys. Lett. 2000, 77, 1224-1226)は、ナノチューブに付着された。 以下の実施例、並びに、本明細書において説明する他の実施例は、本発明をさらに示すために提出するものであり、本発明の範囲を過度に限定するものと解釈するべきではない。 A.実施例1〜11 電気化学的誘導体化の実験の場合、懸濁液のろ過によって形成した1枚のバッキーペーパーを3電極セル中の作用電極として使用し、ジアゾニウム塩と電解質とを含むアセトナイトライト溶液中に浸漬させた。ジアゾニウム塩は恐らくバッキーペーパーの表面でアリールラジカルに還元し、それに続いてナノチューブに共有結合で付着した。単層カーボンナノチューブの伝導率は十分に調べられている。一般に、アリールジアゾニウム塩は、様々な官能基を許容する条件下で容易に作製される。従って、本明細書において説明する方法は、広く様々なジアゾニウム塩を用いたナノチューブの官能基化を可能にし、ジアゾニウム塩には、ナノチューブへの付着後のさらなる仕上げのための化学的手段(chemical handles)を提供するものが含まれる。 本調査において使用する精製済みの単層ナノチューブ(下文ではSWNT−p)は、非晶質炭素汚染物または他の外来の炭素汚染物をほとんど含まなかった。ナノチューブの精製手法を、下記により詳細に検討する。SWNT−pが非晶質炭素汚染物または他の外来の炭素汚染物をほとんど含まないという事実は重要であり、というのは、このような材料の存在は、以前の誘導体化の努力が成功かどうかを決定する能力の妨げになることがあったからである。(不純物が無いことは、反応の操作性に関して行った初期の実証においては論点となっていたが、上述の反応は未精製の不純な多層及び単層カーボンナノチューブに対して効果があり、すなわち反応は、精製プロセスの無い場合でさえも効果があることに特に注意されたい。)加えて、残留鉄含量(気相成長手法から生じた触媒)は、電子マイクロプローブ分析(EMPA)によって<1原子%だった(約0.3原子%)。SWNT−pを誘導体化するために使用したジアゾニウム塩を図1に示す。化合物1〜7及び11は、ニトロソニウムテトラフルオロボレートをジアゾ化試薬として使用して、対応するアニリン誘導体から周知の方法によって製造した(Kosynkin, D.; Tour, J. M. Org. Lett. 2000)。化合物8を、Kosynkin, D., et al., Org. Lett. 2001, 3, 993-995において報告されている方法を使用して製造した。化合物9及び10を、図2に表すスキームに従って製造した。こうした化合物のキャラクタリゼーションを、下記にさらに検討する。こうした化合物とSWNT−pとの反応はSWNT−X[式中、それぞれx=1〜9及び11〜12である。]を発生した。 本調査において使用する小直径単層カーボンナノチューブを、一酸化炭素を原料とし、鉄カルボニルを触媒として使用して、気相接触手法によって製造した。Nikolaev, P., et al., Chem. Phys. Lett. 1999, 313, 91-97;米国特許出願第09/830,642号。(こうしたカーボンナノチューブは、現在市販されている。カーボン・ナノテクノロジーズInc.、HiPco材料)。未精製の製造材料を空気酸化によって150℃で12時間精製し、続いて、アルゴン中、800℃で6時間アニールした。この材料を濃塩酸(60mL中の約30mg)中で音波処理し、ろ過し、水及び2−プロパノールを用いて長時間洗浄し、真空下で乾燥した。こうした試料の純度は、SEM、TEM、及びEMPAによって実証された。 バッキーペーパー:誘導体化のためにバッキーペーパーを作用電極として使用することは、幾つかの類のない問題を提起する。電気化学的方法の最中の供給源とバッキーペーパーとの間の電気的接触が問題となる。この状況は、バッキーペーパーを保持するために使用する鰐口クリップにコロイド銀ペーストを施用することによって改良することができる。また、反応の成功は、作用電極として用いるバッキーペーパーの品質に少なくとも部分的には依存すると考えられている。従って、バッキーペーパーを形成するためのろ過の前に目に見える微粒子をほとんどまたは全く含まない懸濁液を実現することは助けになった。 アニリン誘導体のジアゾ化のための一般的な手順:ニトロソニウムテトラフルオロボレートの一部分(1.2モル当量)をグローブボックス中で秤取し、密封した。グローブボックスから取り出した後、アセトニトリルを加え(3mL/1mmolのアニリン)、溶液を−30℃に冷却した。撹拌しながら、アセトニトリル(約1mL/mmol)中のアニリン誘導体(1モル当量)の溶液を滴下した(下記を参照されたい)。場合によっては、無水塩化メチレンを、アニリン誘導体の共溶媒として使用した。完全に加えた後、撹拌を30分間続け、この時点で冷浴を除去した。合計で1時間撹拌した後、溶液を2倍の体積のエーテルを用いて希釈し、撹拌した。沈殿物をろ過によって集め、エーテルを用いて洗浄した。 4−ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート(1): 4−クロロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート(2): 4−フルオロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート(3): 4−tert−ブチルベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート(4):4−tert−ブチルアニリンをアセトニトリルと無水塩化メチレンとの1:1混合物中に溶解させ、その後ニトロソニウムテトラフルオロボレートに加えた。 4−ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート(5): 4−メトキシカルボニルベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート(6): 4−テトラデシルベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート(7):4−テトラデシルアニリンをアセトニトリルと無水塩化メチレンとの1:1混合物中に溶解させ、その後ニトロソニウムテトラフルオロボレートに加えた。 2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチルp−トルエンススルホネート(13):水酸化ナトリウム(3.65g、91.3mmol)及びトリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル(10.0g、60.9mmol)を、テトラヒドロフランと水(それぞれ140mL、20mL)との混合物中に溶解させた。溶液を氷浴中で冷却した。20mLのテトラヒドロフラン中のトルエンスルホニルクロリド(12.76g、67.0mmol)の溶液を徐々に加えた。溶液を0℃で3時間撹拌し、次に50mLの氷水中に注いだ。混合物を、塩化メチレンを用いて数回抽出した。合わせた有機層を、希HCl、次にブラインを用いて洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。ろ過後、溶媒を減圧での蒸留によって除去して、16.6gの生成物(収率86%)を与えた。 4−{2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル}ニトロベンゼン(14):13の一部分(9.0g、28.3mmol)を50mLのジメチルホルムアミド中に溶解させた。炭酸カリウム(11.75g、85.0mmol)及び4−ニトロフェノール(3.82g、27.5mmol)を加えた。溶液を80℃で16時間撹拌した。室温に冷却した後、溶液を水中に注ぎ、塩化メチレンを用いて3回抽出した。合わせた有機層を、水、次にブラインを用いて洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、溶媒を減圧での蒸留によって除去した。クロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン:酢酸エチル、1:2)を用いて、生成物(5.71g、収率73%)を単離した。 4−{2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル}アニリン(15):14の一部分(5.77g、20.2mmol)を40mLの酸性エタノール中に溶解させ、触媒量の炭素担持10%パラジウムを加えた。混合物を、パール装置(Parr apparatus)(60psi、70℃)上で3時間水素化した。混合物を次にセライト(Celite)上でろ過し、エタノールを用いて洗浄した。固体重炭酸ナトリウムを加え、混合物を2時間撹拌し、次にろ過した。溶媒を減圧での蒸留によって除去して、茶色の油状物(5.0g、収率98%)を残した。 4−{2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル}ベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート(9):化合物15に、ジアゾ化に関して上記に説明した手順を施した。生成物は結晶質ではなく、むしろ、操作が困難な暗赤色の粘着性の材料だった。残留分をエーテルと3回混合し、溶媒を傾瀉した。この材料は、1H NMRによると十分に純粋であり、さらに精製もキャラクタリゼーションもすること無く使用した(2.17g、収率52%)。 化合物10:磁気撹拌子を有するねじ蓋付き管に、Boc2O(17.6g、80.6mmol)、4−アミノチオフェノール(10.0g、80.6mmol)、トリエチルアミン(13.5mL、96.7mmol)、150mLのジクロロメタン、及びN,N−ジメチルアミノピリジン(4.92g、40.3mmol)を加えた。管を窒素でフラッシングし、ねじ蓋を取り付けた。溶液を室温で24時間間撹拌した。溶液を次に75mLずつの水を用いて3回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、次いでろ過し、濃縮した。残留分に、ヘキサン:酢酸エチル(1.5:1)を溶離剤として使用してシリカ上でクロマトグラフィーを行った。生成物を透明な油状物として単離し、これを放置して結晶化させた(16.16g、94%)。 化合物11:−20℃に冷却した500mLの丸底フラスコに、6.74mLのBF3OEt2(171.9mmol)を加えた。これに、30mLのTHF中に溶解させた10(3.0g、225.3mmol)の溶液を、10分間にわたって加えた。これに、20mLのTHF中の亜硝酸t−ブチル(5.59mL、103.12mmol)の溶液を加えた。溶液を撹拌し、40分間にわたって0℃に温め、この時点で400mLの低温エーテルを加えた。沈殿物をろ過によって集めて、4.14g(96%)の所望の生成物を得た。 4−ヒドロキシカルボニルフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート(12):この化合物を、一般的な手順(上記を参照されたい)に従って製造した。スルホランを、4−アミノ安息香酸の共溶媒として使用した。 SWNT−pの電気化学的誘導体化のための一般的な手順:電気化学的誘導体化の実験のために使用した装置は、Ag/AgNO3参照電極及び白金ワイヤ対電極を有する3電極セルだった。1枚のバッキーペーパー(1〜2mg)を作用電極として使用した。0.2μMのPTFE(47mm、サルトリウス(Sartorius))膜上での1,2−ジクロロベンゼン懸濁液のろ過によって、バッキーペーパーを作製した。真空下で乾燥した後、紙を膜から剥がし取り、誘導体化において使用するために断片を切り取った。コロイド銀ペースト(テッドペラInc.(Ted Pella, Inc.))を用いて予め処理した鰐口クリップを用いてバッキーペーパーを保持し、ジアゾニウム塩(SWNT−1〜SWNT−7及びSWNT−9の場合には0.5mM;SWNT−8の場合には0.01M)とテトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(0.05M)とのアセトニトリル溶液中に浸漬させた。鰐口クリップ自体を浸漬させないように注意した。−1.0Vの電位を30分間与えた。実験の間中、光を排除するように注意し、溶液を通して窒素を通気した。反応後、バッキーペーパーのうち溶液中に浸漬させなかった部分を切り取って、残りをアセトニトリル中に24時間浸漬し、次にアセトニトリル、クロロホルム、及びエタノールを用いて洗浄した。乾燥した後、この材料をアセトニトリル中で20分間音波処理し、ろ過し、再度アセトニトリル、2プロパノール、及びクロロホルムを用いて洗浄した。反応生成物を、室温、真空下で乾燥し、その後キャラクタリゼーションした。ジアゾニウム塩を用いない対照実験は、上述の条件はナノチューブに影響しないことを確認し、これはUV/vis/NIR、ラマン、及びTGAによって実証された。 他の塩及びパラメータ:修飾のために非常に様々なアリールジアゾニウム塩を本発明の方法において利用することができる。加えて、加えた電位、与えた電位の持続時間、溶媒、及び支持電解質のようなパラメータは変化し得る。その上、アルキル、アルケニル及びアルキニル付加を、本発明の方法のために使用できる可能性がある。 B.キャラクタリゼーション 走査型電子顕微鏡法(SEM)による実験を、加速電圧50,000Vでフィリップス ESEM XL−30(Phillips ESEM XL-30)上で実行した。この器械はEDAX検出器を備えた。TEMイメージングのための試料を、THFから、銅支持体表面の200メッシュのレース状炭素格子(lacey carbon grid)上に滴下乾燥(drop dried)した。加速電圧は100K.Vだった。782nmでの励起を用いて、固体試料に関するラマンスペクトルを、レニショウ・ラマスコープ(Renishaw Ramascope)上で収集した。UV/Vis/NIR吸収スペクトルを、島津 UVPC−3101(Shimadzu UVPC-3101)上で、複光束モードで溶媒対照標準を用いて収集した。FT−IRスペクトルを、減衰全反射率(ATR)アクセサリを使用して収集した。TGAデータを、アルゴン中、TAインスツルメンツ SDT−2960(TA Instruments SDT-2960)上で収集した。AFMによる実験を、タッピングモードでディジタルマルチモードSPM(Digital Multi-mode SPM)上で実行した。こうした実験のための試料を、音波処理によって分散させ、新たに劈開した雲母基板表面にスピンコーティングした。EMPAによる実験を、カメカ SX−50(Cameca SX-50)上で実行した。器械を校正し、データを各試料の幾つかの異なる箇所で測定した。こうした箇所の平均を下記に報告する。NMRデータを、ブルーカー・アバンス 400(Bruker Avance 400)上で収集した。化学シフトをTMSから低磁場にppm単位で報告し、溶媒を基準とした。融点は補正していない。 電子構造及び光学的性質:単層カーボンナノチューブの電子構造及び光学的性質は十分に調査されている。Liang, W. Z., et al., J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 11129-11137; Jost, O., et al., App. Phys. Lett. 1999, 75, 2217-2219; Wu, J., et al., App. Phys. Lett. 2000, 77, 2554-2556。SWNT−p及びSWNT−1のUV/VIS/NIR吸収スペクトルを図3に示す。SWNT−pのスペクトルにおける特徴(ファンホーベバンド)は状態密度(DOS)の特異性(singularities)が原因となっており、このスペクトル領域においては、半導性ナノチューブ中のバンドギャップ遷移に帰する。こうした特徴の幅は、様々な直径及びキラル指数(chiral indices)を有するチューブから生じた特徴の重なり合いが原因である。こうした遷移はSWNT−1の場合にはもはや明白ではなく、スペクトルは本質的に特徴がない。SWNT−2〜SWNT−7及びSWNT−11〜SWNT−12の吸収スペクトルは同様であり、明白な特徴を有しない。SWNT−8(図4)及びSWNT−9のスペクトルは多少明白な特徴を保持したが、こうした特徴はSWNT−pと比較してかなり減少していた。吸収スペクトルにおける構造の喪失は、ナノチューブのかなりの電子の摂動及び拡張πネットワークの破壊(disruption of the extended π network)を示す。この効果は、ナノチューブ壁またはエンドキャップへの単純な吸着ではなく共有結合官能基化と非常に良く一致する。 ラマン分光法:単層カーボンナノチューブのラマン分光法も、理論的にかつ実験的に十分に開発されている。Richter, E., et al., Phys. Rev. Lett. 1997, 79, 2738-2740; Rao, A. M, et al., Science 1997, 275, 187-191; Li, H. D., et al., App. Phys. Lett. 2000, 76, 2053-2055。SWNT−pのラマンスペクトル(図5A)は2つの強いバンドを示す;すなわち動径ブリージング(radial breathing)(ωrは〜230cm-1)及び接線(tangential)(ωtは〜1590cm-1)モードである。動径ブリージングモードにおいて見られる多数のピークは、恐らく試料中のチューブ直径の分布が原因である。約1290cm-1に中心があるより弱いバンド(ωd)は、ナノチューブ壁の六角形の骨格中の無秩序(disorder)またはsp3混成炭素に帰する。850cm-1の小さなバンドもまたこうした小直径ナノチューブに特徴的であるが、その分子的起源は確かではない。SWNT−1のスペクトル(図5B)はかなり異なる。特に、無秩序モードの相対強度ははるかに大きい。これは、共有結合した部分をナノチューブ骨格に導入した結果であり、ここではかなりの量のsp2炭素がsp3混成に転換している。他の官能基化材料のラマンスペクトルは、SWNT−pと比較して同様の修飾を示すが、程度は異なる。無秩序モードの周波数及び主要なバンドの相対強度を表1に示す。 全ての場合に、無秩序モードの周波数にはかなりの変化はないが、このモードの強度は、他の2つのモードの強度と比較して増大していた。大部分の場合に、接線モードの強度も動径ブリージングモードと比較して増大し、全強度はより低い。場合によっては、官能基化後に収集したラマンスペクトルは、動径ブリージングモード領域内部のピークの相対強度の変化を明らかにした。例えば、SWNT−p及びSWNT−4の場合のこの領域におけるラマンスペクトルを図6に示す。 赤外分光法:赤外分光法(FT−IR、ATR)も使用して、誘導体化材料の幾つかのキャラクタリゼーションを行った。SWNT−4のスペクトル(図7A)は、約2950cm-1でのt−ブチル部分からのかなりのC−H伸縮を明確に示す。SWNT−6のスペクトル(図7B)においては、1731cm-1(前駆体ジアゾニウム塩においては1723cm-1)でのカルボニル(CO)伸縮が、2900cm-1の領域における小さなC−H伸縮モードと共に明瞭である。 電子マイクロプローブ分析:電子マイクロプローブ分析(EMPA)による実験は、SWNT−2の場合の2.7原子%の塩素(4箇所の平均)及びSWNT−3の場合の3.5原子%のフッ素(5箇所の平均)を明らかにした。こうしたパーセントは、SWNT−2の場合のCR0.036及びSWNT−3の場合のCR0.05[式中、Cはナノチューブ骨格中の炭素であり、Rは官能基化部分である。]の推定化学量論に対応する。従って、ナノチューブ中の20〜30個の炭素毎に約1個が官能性部分を帯びる。 熱重量分析:SWNT−2の熱重量分析(TGA)(図8)においては、アルゴン下で600℃に加熱すると約25%の総重量損失が観察された。SWNT−2のTGAの後、図9に見られるようにラマンスペクトルはほぼSWNT−pのものに復帰した。この復帰は、官能部分の除去を示し、ナノチューブは影響を受けていないままであると考えられている。このような除去の場合に、EMPAデータから推定した化学量論は約25%の重量損失を予測する。従って、上述の図同士は優れた一致を見せている。SWNT−3の場合のTGA及びEMPAデータも良好な一致を見せている。SWNT−pは、同じ温度プロフィールの後に、約5%の重量損失を被っている。残りの材料(実行しなかったSWNT−8を除く)の場合のTGAデータ及び推定化学量論を表2に示す。 表2は、こうした化合物の官能性度は、40個の炭素原子に対して少なくとも約1個の部分、典型的には30個の炭素原子に対して少なくとも約1個の部分であることを表す。推定官能性度は、官能性部分を帯びるナノチューブ中の20〜30個の炭素毎に約1である。 走査型電子顕微鏡法及び透過型電子顕微鏡法:不十分な分解能が原因となって、走査型電子顕微鏡法(SEM)による反応生成物の分析では、官能基化に関してもSWNT−pからのかなりの変化に関しても何らかの明白な証拠は明らかにならなかった。SWNT−4の透過型電子顕微鏡法(TEM)イメージングは、官能基化が原因のかなりの変化を明らかにした。SWNT−pの像(図10A)においては、ナノチューブ壁は本質的に清浄で均一であり、黒鉛質炭素のオーバーコーティングは存在しない。SWNT−4の像(図10B)は、チューブの側壁表面に寸法約2〜6オングストロームの隆起(bumps)が存在することを明らかにした。こうした隆起はほぼ全ての個々のチューブ表面及びロープの外面の表面に見られる。とはいえ、分解能は、これがロープ内部に隠れたチューブ壁表面に存在するかどうか決定するのに十分ではない。こうした特徴は官能基化の結果である。 溶解度:単層カーボンナノチューブの溶解度は、本発明の当業者には重要な関心事である。非誘導体化小直径ナノチューブのために極めて適用可能な3種の溶媒は、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、及び1,2−ジクロロベンゼンである。SWNT−4は、有機溶媒中へのかなり改良された溶解度を提供することが見い出された唯一の材料だった。SWNT−pの場合にテトラヒドロフラン(THF)中への溶解度が全く欠如していることとは対照的に、SWNT−4は、この溶媒中に幾分可溶であることさえ見い出された。約30分間の音波処理の後、THF溶液は、約50mgL-1のSWNT−4を含み、目に見える微粒子を有しないことが見い出された。36時間後、若干の目に見える微粒子が存在したが、溶媒は依然としてほぼ黒色だった。この暗色は少なくとも数週間保持された。ジメチルホルムアミド、クロロホルム、及び1,2−ジクロロベンゼン中への溶解度もまた改良され、懸濁液はSWNT−pの場合よりもはるかに迅速に形成され、より高い濃度が実現可能だった。溶解度のこの改良は、恐らくかさばったtert−ブチル基のブロッキング効果が原因であり、これはナノチューブの“ロープ化”にとって必要な密接を阻害する可能性があると考えられている。 SWNT−5及びSWNT−8はジメチルホルムアミド中により可溶であるが、他の溶媒(テトラヒドロフラン、トルエン、2−プロパノール、二硫化炭素)中への溶解度は改良されなかったことが見い出された。水及び他の水素結合溶媒(hydrogen bonding solvent)の中への改良された溶解度を達成しようとして、SWNT−9を製造した。しかしながら、この官能基化はかなり逆の結果を有した。SWNT−9は水中にまたは水/0.2%トリトンX中に分散可能ではなかった。SWNT−9をジメチルホルムアミド中に懸濁させる際にはかなりの困難が生じた。 強健性(Robustness):官能基化の強健性を評価し、単純な挿入または吸着を妨げようとして、SWNT−1を様々な条件にさらした。この材料を、雰囲気温度及び45℃の両方で10分間、クロロホルム及び1,2−ジクロロベンゼンの両方の中で音波処理し、ろ過し、分光学的に再調査して、識別できる変化は観察されなかった。加えて、SWNT−1を1,2−ジクロロベンゼン中で10分間音波処理してチューブを分散させ、次に75℃で3時間撹拌した。ろ過及び洗浄後に、分光学的変化は観察されなかった。 SWNT−3をアセトニトリル中でさらに音波処理し、続いてろ過及び洗浄した後に、再調査した。フッ素含量は、3.5原子%(上記を参照されたい)と比較して3.6原子%であり、従って実験限界の範囲内である。 C.誘導体化機構 理論によって束縛されることを意図するものではないが、本明細書において説明する官能基化は恐らく、図11に示されるものと同様の仕方で開始すると考えられている。還元によって恐らくは発生するアリールラジカルはナノチューブと反応することができ、さらに反応できるか或いは溶媒または何らかの不純物若しくは酸素によってクエンチできる隣接するラジカルを残す。最初のアリールラジカルが二量化するかまたは溶媒から水素原子を引抜く傾向は、反応が望まれるナノチューブの表面でラジカルが発生するという事実によって最小になる。反応はアリールカチオンによって進行するかもしれないが、機構は最終生成物とは無関係であることに注意されたい。 本明細書において、ジアゾニウム塩還元が銅または何らかの他の金属によって触媒される溶液相方法ではなく、電気化学的方法を利用するという1つの主要な利点が存在する。ナノチューブはかなり低濃度で溶液中に存在すると思われるので、アリールラジカルは恐らく何らかの他の種によってクエンチされると思われる。この場合のナノチューブの二量化もまた、固体状態においては移動度が欠如するので、起こる可能性は低い。ジアゾニウム種を用いたカーボンナノチューブの熱誘導体化 アリールジアゾニウム種を用いた誘導体化は、電気化学誘起反応に限定されない。すなわち、溶液中でのアリールジアゾニウムテトラフルオロボレート塩を用いた単層カーボンナノチューブの直接処理及びアルキルナイトライトを用いたジアゾニウムのインシトゥ発生の両方は、官能基化の有効な手段である。ジアゾニウム種のインシトゥ発生は、この方法は、潜在的に不安定であるかまたは感光性のアリールジアゾニウム種を単離し貯蔵する必要性を避けることができるという点で利点を有する。熱反応の最中に利用される温度は最大約200℃、典型的には最大約60℃であると思われる。場合によっては、予備形成したジアゾニウム塩を用いた直接処理は、中程度の温度でまたは室温でさえも有効であることが観察されており、反応は、室温未満の温度で観察される可能性があることが予想される。 A.実施例12〜17 本調査において使用するナノチューブを再度、Smalley, et al.によって開発された気相接触法によって製造したが、これは現在市販されている(カーボン・ナノテクノロジーズInc.、HiPco材料)。製造材料を、湿り空気中250℃で24時間酸化することによって精製し、次に、濃塩酸中、室温で24時間撹拌した。得られた材料を、多量の水、次に10%水性重炭酸ナトリウム、最後にさらに水を用いて洗浄した。真空下で乾燥した後、材料を官能基化反応のために使用した。 反応順序を図12に示す。典型的な実験においては、〜8mgの単層カーボンナノチューブを、10分間、10mLの1,2−ジクロロベンゼン(ODCB)中で音波処理した。この懸濁液に、5mLのアセトニトリル中のアニリン誘導体(2.6mmol、約4当量/molの炭素)の溶液を加えた。隔膜で蓋をした反応管(エースガラス、#8648−03(Ace Glass, #8648-03))に移し、窒素を用いて10分間通気した後、4.0mmolの亜硝酸イソアミルを素早く加えた。隔膜を除去し、テフロンねじ蓋に替え、懸濁液を60℃で約15時間撹拌した。利用した系が理由となって、発生した窒素によって容器中にかなりの圧力が生じた。これは、最初の3時間の間、〜30分毎に通気させるためにある程度蓋を回して緩めることで軽減された。 〜45℃に冷却した後、懸濁液を、30mLのジメチルホルムアミド(DMF)を用いて希釈し、テフロン(0.45μM)膜上でろ過し、DMFを用いて長時間洗浄した。DMF中で繰り返し音波処理し、DMFを用いてさらに洗浄することで、材料を精製した。 B.キャラクタリゼーション 官能基化ナノチューブ材料16〜19及び21は、上記に説明した電気化学的方法によって誘導体化した材料に関して報告されているものに類似した、かなり変更された分光学的特性を示した。例えば、18(図13)のUV/vis/NIR吸収スペクトルは、ファンホーベ特異点のほぼ完全な喪失を示す。構造のこの喪失はπ系の破壊に特徴的であり、再度、ナノチューブの共有結合修飾を示す。図14に表すラマンスペクトルにおいては、散乱光の全強度はより低く、3つの主要なモードの相対強度は変更されている。 約1590cm-1の接線モードと比較して、動径ブリージングモード(約250cm-1)の強度は低下し、無秩序モード(1290cm-1)の強度はかなり増大している。無秩序モードの相対強度の増大は、ナノチューブ骨格中のsp3混成炭素の数の増大に帰することができ、官能基化度の大まかな尺度(crude measure)として採用することができる。加えて、先に検討したように、ナノチューブに付着した官能基化フェニル部分を、アルゴン雰囲気中で加熱することで除去することができ、従って熱重量分析(thermal gravimetric analysis)(TGA)は官能基化度の定量的推定を提供する。16〜19をアルゴン雰囲気中で600℃に加熱すると、実測重量損失値は次の通りであり、電気化学的手法によって製造した同じ材料に関して先に報告した値を丸括弧内に示す:16:26%(30%)、17:25%(27%)、18:26%(31%)、19:23%(26%)、21(電気化学的手法によっては製造しなかった)。材料20は、たとえ上述の部分を電気化学的手法によって成功裏に付着することができるとしても、分光学的特性の同様の変化もTGAにおけるかなりの質量損失も示さなかった。エステルを帯びた材料18は成功裏に製造され、これは、原則として、加水分解によってカルボン酸部分に至る機会を与える。 熱的方法によって実現可能な官能基化度を、本発明の電気化学的方法によって得られるものと比較することは非常に興味深い。実験13〜18を、大過剰のアニリン誘導体(すなわち、先に検討し報告した電気化学の実施例において使用したジアゾニウムテトラフルオロボレート塩の量と同等の量のジアゾニウム種を提供するのに十分なもの)を用いて実行した。従って、こうした実施例13〜18はこのような共通点がある。 材料16の場合、直接的な比較を電子マイクロプローブ分析によって利用できる。この分析は、97原子%の炭素に対して2.2原子%の塩素という値を与えた。電気化学的手法によって製造した同様の材料を分析したところ、96原子%の炭素に対して(上記を参照されたい)2.7原子%の塩素を有した。 TGAデータも、熱的方法の相対的効率に対するさらなる洞察を与える。例えば、19の場合の質量損失は、官能基化されるナノチューブ中の37個の炭素中の推定1に対応し、これに対して電気化学的方法によって実現されるものは34中1の比だった。従って、同等の材料(SWNT−5)の場合に、熱的手法はその有効性が電気化学的方法と同等であると考えられている。条件の最適化は、より高い官能基化度を提供できる可能性があると考えられている。実測効力は、単層カーボンナノチューブの特性をかなり変更するのに十分であり、下記に検討する架橋済み材料及び複合体形成のような多数の用途にとって恐らく満足なものとなろう。 本発明の熱反応は、本発明の電気化学的方法とほぼ同程度に有効であり、とはいえ、特定の点で、この熱反応は実行がより簡単であり、拡張性を得るためにより適合可能であることが見い出された。 予備形成したジアゾニウム種を使用して、ナノチューブの化学的誘導体化も成功裏に実行できることに再度注意されたい。ジアゾニウム種は、予め作製し、単離し、混合物に加えることができる。次に誘導体化を熱的に誘起することができる。さらなる変形例としては、プロセスの温度(雰囲気温度並びにより高い温度及びより低い温度)、反応物の比、及び様々な有機溶媒の変形例が挙げられる。ジアゾニウム種を用いたカーボンナノチューブの光化学誘導体化 実施例18:アリールジアゾニウム種を用いた誘導体化もまた、光化学的に誘起することができる。光化学反応を、実施例2において作製し利用したものと同じジアゾニウム種である4−クロロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートを利用して実行した。上に述べたように、1,2−ジクロロベンゼン中のSWNT−pの懸濁液を音波処理によって生成した。この懸濁液に、最小のアセトニトリル中に溶解させたジアゾニウム塩の一部分を加えた。得られた混合物を、約254nm(紫外光源)の励起波長を用い、光化学反応装置のチャンバ内部にある間に撹拌した。光化学誘起反応のための光源は任意の波長としてよく、典型的には紫外または可視波長である。この反応を図15に表す。生成した材料は、全ての点で本発明の電気化学的手法によって製造したSWNT−2と同様だった。 この実験は、ジアゾニウム塩の反応は、ナノチューブへの共有結合付着を生じることをさらに裏付けるものである。ジアゾニウム種を用いたカーボンナノチューブの制御された部位特異的官能基化 本発明の電気化学誘起反応を利用することで、特定の部位でナノチューブを誘導体化するために制御することができる。既存の技術(M. S. Fuhrer, et. al., "Crossed Nanotube Junctions" Science, 288, 21 April 2000, page 494; Yu Huang, et. al., "Directd Assembly of One-Dimensional Nanostructures into Functional Networks" Science, 291, 26 January 2001, page 630; Yi Cui, et al. "Functional Nanoscale Electronics Devices Assembled Using Silicon Nanowire Building Blocks" Science, 291, 2 February 2001, p 851)を使用して、ナノチューブのクロスバー構造を作製することができ、この構造においては1本のナノチューブを基板に固定し、第2のナノチューブは有限の距離だけ上方に懸濁させる。両方のナノチューブは個々に電気的に対処することができる。2本のチューブに反対の電位を与えることで、上部のチューブを変形させ、下側のチューブと本質的に接触させる。本明細書において使用する“接触”は、実際の物理的接触、及び、物質が分子及び電子の規模で互いに影響を与えるかもしれない無限小の距離の範囲内に物質が接近すること(ファンデルワールス接触と呼ぶ)の両方を意味する。 この変形は、重要な2つの特徴を生じる。第1に、湾曲歪みが反応性に及ぼす影響に関して現在理解されていることに基づくと、上部のチューブは物理的に変形し、変形の箇所で潜在的により高い化学反応性を生じる。この特徴は、ジアゾニウム塩との反応の電気化学的手法による接合部での選択的官能基化を可能にすると思われる。第2に、より高い電位がチューブ間の“交差”の箇所で実現される。 本発明においては、交差ナノチューブの接合部の直接官能基化は、交差ポイントドメインでの官能基化を可能にすると思われる対向する末端において相互作用基(interacting group)を有するα,ω−ビス(ジアゾニウム)塩またはモノジアゾニウム塩の存在下で、ナノチューブの末端に電位を与えることによって実行できる(従来技術において周知のように)。 ナノチューブの任意のクロスバーアレイは、上述の方法によって官能基化できる可能性がある。例えば、ナノチューブのクロスバー構造は、パターン形成した基板上の流体の流れによって、またはポスト間の直接チューブ成長によって、または何らかの他の方法によって作製されよう。その上、本明細書において説明するジアゾニウム塩集合体は、チューブアレイの集合方法に関わらず、直交するチューブ上に電圧を用いてジアゾニウム溶液中で生じる可能性がある。ジアゾニウム塩の存在下でナノチューブに電位を与えることは、交差ポイントドメインでの官能基化を可能にすると思われる。 ジアゾニウム種は、接合部に存在する電位によって指向されて、ナノチューブの表面と反応し、従って接合部に官能分子装置を置く。交差ポイントでの装置の官能性は重要なので、部位特異的官能基化は、分子電子用途におけるナノチューブの使用を可能にするかもしない。交差ナノチューブは従って、分子スイッチ及び分子ワイヤとして機能する分子、並びに他の役割において及び一般に従来技術において周知の使用において機能する分子を含む官能基化分子に直接に対処する方法を提供する。 その上、この方法は、ナノチューブの交差ポイントへの様々な分子の付着に、すなわち、ナノチューブ表面の異なる位置への2つ以上の異なる化学的官能性の制御された付着に対処すると思われる。これは、第1のジアゾニウム塩の溶液中に存在する間に指定された組の位置に電位を与え、次に、第2のジアゾニウム塩の溶液に移動させ、他の位置等で電位を与えることで実行されると思われる。加えて、部位特異的官能基化は、個々の分子または分子の基を、従来技術において周知のように金属接触パッドまたは他の接触手段によって電気的に対処することを可能にしよう。電子的な面で興味深いまさにこのような分子がSWNT−8中に取り入れられている。ポリマー複合材料中の化学修飾カーボンナノチューブの用途 ポリマー及びポリマー/複合材料は、構造材料及び様々な他の用途のために広く使用されている。本明細書において開示する方法を使用して製造される誘導体化カーボンナノチューブを既存のポリマーマトリックスと組み合わせて使用して、新規なポリマー/複合材料を生成することができる。一般に、可能な複合材料は、化学修飾ナノチューブ及び熱可塑性物質、熱硬化性物質、エラストマー等を用いて製造できる可能性がある。ポリマーマトリックスの化学構造の多数の変形例が存在し、これはすなわちポリエチレン、様々なエポキシ樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート等である。また、ナノチューブに付着することができる化学基において可能な多数の変形例が存在する。従って、所望の特定のポリマー/複合材料の特性を向上させるように、特定のポリマー及び特定の部分を選択することが可能である。 従って、ポリマー/複合材料は、向上した強度及び/または伝導率のようなかなり向上した特性を有しよう。そして、適切な化学基を用いて修飾した場合、ナノチューブはポリマーマトリックスと化学的に相溶性があり、ナノチューブの特性(特に、機械的強度)が全体として複合材料の特性に移行することを可能にしよう。典型的には、これを実現するために、修飾カーボンナノチューブをポリマー材料と十分に混合する(物理的にブレンドする)ことができ、雰囲気温度または高温で反応させることができる。 熱硬化性物質:カーボンナノチューブが多数の箇所でポリマー(熱硬化性物質)と化学的に結合しているようなポリマー/複合材料を形成するのが望ましいことがある。例えば、これを、例としてエポキシ樹脂を利用して行うことができる。エポキシ樹脂は、典型的には特定の比で混合された2つの部分で構成される。得られた混合物を次にある時間にわたって硬化(harden)、または“硬化(cure)”して、接着剤または構造材料にする。2つの部分は、エポキシ部分(図16では“A”と名付けられ、この場合にはビスフェノール−Aとエピクロロヒドリンとの反応によって得られる)及び硬化剤(図16では“B”と名付けられる)である。硬化剤は、エポキシ部分中に繰り返して生じる化学基と反応する化学基を含む。すなわち、硬化済みまたは架橋済みの樹脂は、A(具体的に、末端エポキシド官能性)とB(具体的に、末端アミン官能性)との反応から生じる。エポキシ部分及び硬化剤の両方は多数の反応性基を含むので、硬化済み材料(図16では“C”と名付けられる)に強度を与える多数の化学結合を有する“架橋済み”材料が生成される。反応の結果は、高度に架橋済みの熱硬化性材料である。 A及びBの両方の部分の化学構造が大きく変化し得る広く様々な市販のエポキシ成分が存在する。例えば、硬化剤は、ジアミン、ポリメルカプタン、フェノール含有材料等に基づいてよく、また、ポリマーでよい。化学修飾カーボンナノチューブをこのタイプの系に加えることは、ナノチューブ自体の強度が理由となって、得られた材料の強度を大きく増大させよう。ナノチューブは、エポキシ部分または硬化剤部分と相溶性がある基を用いて化学修飾することができる。例えば、図17に示すような修飾ナノチューブを製造することができる。(図において、影を付けた円筒はカーボンナノチューブを表す)。 このように修飾されたカーボンナノチューブは、硬化剤部分またはエポキシ部分と十分に混合されよう。得られた材料は次に第2の部分と十分に混合され、個々の系に依存して雰囲気温度または高温で反応するかまたは硬化しよう。図18(手書きの線はポリマーマトリックスを概略で表す)に示すように、得られた複合材料は次に、例えばアリール−チオエーテル結合を介して、硬化剤によるのみならず修飾カーボンナノチューブによって架橋されよう。 こうしたタイプの材料を、図17の実施例によって例示する様々な修飾カーボンナノチューブを使用して製造することができる。従って、ポリマーマトリックスとナノチューブとの間の結合は、エーテル、チオエーテル、アミン、塩橋(例えば、アミン含有ホストポリマー中のSWNT−11)または他の結合である可能性がある。ナノチューブと囲繞するポリマーマトリックスとの間の直接化学結合は、ナノチューブの強度特性が複合材料自体に移行することを可能にするだろうということが理解されている。また、ナノチューブによる材料特性の向上は、このような直接化学結合以外の要因によって引き起こされるかもしれないことに注意されたい。例えば、官能基化によって可能になったポリマーマトリックス内部のナノチューブの改良された分散が、向上を可能にするかもしれない。 ナノチューブと囲繞するポリマーマトリックスとの間の化学結合に加えて、チオフェノール誘導体化ナノチューブの場合には、ナノチューブ自体の間の化学的相互作用が存在しよう。図19に示すように、ナノチューブ間のジスルフィド結合の形成は、材料をさらに強化するのに役立とう。ジスルフィド結合をさらに還元(例えば、化学的に)して、再度非架橋チューブを提供することができる。従って、これはステルス様架橋(stealth-like crosslinking)である。実際に、このような架橋済みナノチューブは、幾つかの用途のために、他に依存せずに向上された強度を有する材料(enhanced strength material)となろう。 別の可能性は、例えば、図21に示す、硬化剤部分ではなくエポキシ部分と相溶性がある化学基を用いたカーボンナノチューブの修飾である。このようにして誘導体化したナノチューブの取り入れから生じる材料は、再度、硬化剤及び化学修飾ナノチューブの両方によって架橋し、化学的に結合した三次元網目構造であると思われる。 修飾カーボンナノチューブとポリマーマトリックスとの間の他の特定の化学的相互作用もまた可能である。例えば、水素結合相互作用に基づく系を図22に示す。このタイプの相互作用は、拡張三次元網目構造中にあると思われ、再度、複合材料にナノチューブの強度を与える。 本発明において説明する電気化学的方法を利用して、図20に表す誘導体化ナノチューブを製造した。これから、チオールの脱保護の工程であると考えられているものを、1,2−ジクロロベンゼン中のトリフルオロ酢酸を用いて処理することで実行した(酸加水分解)。他に、この工程を、ジメチルホルムアミド中のトリフルオロ酢酸を用いて処理することで、または175℃でまたは約175℃での熱分解によって実行できる可能性がある。再度、図20に表すように形成された官能基化ナノチューブは、例えばエポキシ樹脂と、また、架橋剤として働く遊離チオール基(SH)と、化学的に反応すると思われる。 熱可塑性物質:熱硬化性物質の他に、誘導体化ナノチューブを熱可塑性物質のために利用することができる。熱硬化性物質の場合と同様に、誘導体化ナノチューブはポリマーマトリックスと化学的に結合してもしなくてもよい。誘導体化ナノチューブとポリマーマトリックスとの間の適度な化学的付着を許容し、同時に熱可塑性特性(具体的には、かなりの分解無しに材料を加熱及び再形成する能力)を保持できる可能性があることが理解されている。上記に言及したように、カーボンナノチューブとポリマーとの物理的ブレンドを、誘導体化方法によって(具体的には、ナノチューブをホストポリマーとより相溶性があるようにするかまたはホストポリマー中により可溶にすることによって)向上させることができる。 例えば、ポリマー/複合材料含有純粋(及び非誘導体化)単層カーボンナノチューブは、ポリマーが特定の向上された伝導特性を有すると思われるので、望ましいことがある。しかしながら、純粋な非誘導体化カーボンナノチューブは、ポリマー中に十分に分散しないことがある。特定の部分を用いてナノチューブを誘導体化することによって、誘導体化ナノチューブは十分に分散する可能性がある。ナノチューブの誘導体化は恐らくナノチューブの伝導率に影響したかもしれない(従ってポリマー/複合体の伝導率を生じさせよう)ので、分散後にナノチューブから官能基を除去するために誘導体化方法を逆転させることが望ましいことがある。このようにして、材料の伝導率を回復することができる。これは、誘導体化を逆転させる任意の方法によって、例えばポリマー/複合材料の温度を官能基が解離する温度に上昇させることで行うことができる。典型的には、この温度は少なくとも約250℃であるようである。 A.実施例19〜25 その上、熱可塑性物質も、誘導体化カーボンナノチューブを利用して形成してよい。官能基は、必ずしもポリマーと化学的に結合するわけではないが、さらなる強度をポリマー/複合材料に与えるであろうチューブからの物理的伸長(physical extension)(樹木の枝のように)となると思われる。この向上は、ナノチューブの長手方向にポリマーマトリックスの摩擦を増大させ、滑りを低減するナノチューブ表面のラフニング効果(roughening effect)が原因かもしれない。従来技術において理解されているように、このような効果は、望ましいナノチューブ特性が複合材料に移行することをさらに可能にすると思われる。 上記に検討した方法を利用して、以下の官能基化単層カーボンナノチューブを製造した: [式中、ナノチューブ炭素当りの官能基の比でn=20当り1〜40当り1である。] この誘導体化材料(17)を、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)中に様々な濃度で分散させた。得られた複合材料の引張強さ、引張弾性率、及び破損までの歪みの%(% strain-to-failure)のデータを次に収集した。こうした実施例の結果を表3に表す。 全体として、官能基化ナノチューブを有するポリマー/複合材料の引張特性のかなりの改良が存在する。初期の状態のHIPSポリマーとHIPS及び非官能基化ナノチューブの複合体との両方にまさる改良が存在する。 重合:その上、カーボンナノチューブを含むポリマーは、重合することができるかまたは重合を開始することができる官能基を用いてカーボンナノチューブを誘導体化することで形成できる。一旦官能基が付着したら、標準的な重合手法を次に用いて、インシトゥで官能基からポリマーを成長させることができる。すなわち、ナノチューブに付着した官能基を、ポリマー成長の発生体として使用できる可能性がある。このような標準的な重合手法は、適切な基がナノチューブと結合した場合、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、縮合重合、開環重合、メタセシス重合、または開環メタセシス(ROMP)重合のような標準的な周知のタイプのいずれとすることもできる可能性がある。例えば、図23は、官能基である4−アミノフェニルを用いて誘導体化され、それに続いてスチレンを用いて重合して、官能基からポリマーを成長させたカーボンナノチューブの例を表す。従って、ナノチューブに付着した官能基は、ナノチューブが化学的に包含されるような複合材料を生じると思われる重合の化学的に活性な部分であると思われる。 本明細書において開示し、主張する組成物及び方法の全ては、本開示を考慮して、過度の実験を行うことなく成し得るものであり、また実行し得るものである。好適な具体例の点から本発明の組成物及び方法を説明したが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書において説明する組成物及び方法に並びに方法の工程または工程の順序において変形例を適用してよいことは当業者には明白であろう。特に、化学的にかつ生理学的に関連する特定の物質を、本明細書において説明する物質の代わりに用いてよく、同じかまたは同様の結果が実現されると思われることは明白であろう。当業者には明白な全てのこのような類似の置換及び修正は、添付の請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲及び概念の範囲内にあるとみなされる。単層カーボンナノチューブを誘導体化するために使用する特定のアリールジアゾニウム塩の構造を示す。図1に表す化合物9及び11を製造するために利用するスキームを示す。(A)SWNT−p及び(B)SWNT−1の場合のジメチルホルムアミド中の吸収スペクトルを示す。(A)SWNT−p及び(B)SWNT−8の場合のジメチルホルムアミド中の吸収スペクトルを示す。(A)SWNT−p及び(B)SWNT−1の場合の782nmでの励起を用いて固体試料から得たラマンスペクトルを示す。(A)SWNT−4及び(B)SWNT−pの場合の動径ブリージングモード領域におけるラマンスペクトルを示す。(A)SWNT−4及び(B)SWNT−6の場合の誘導体化ナノチューブの赤外スペクトル(減衰全反射率)を示す。SWNT−10の場合のアルゴン中の熱重量分析データを示す。TGA後の(A)SWNT−p、(B)SWNT−2、及び(C)SWNT−2の場合のラマンスペクトルを示す。(A)SWNT−p及び(B)SWNT−4の場合の高分解能TEM像を示す。目盛用の横棒は、両方の像に適用される。炭素表面上へのアリールジアゾニウム塩の電気化学的グラフト化を示す。ジアゾニウム種のインシトゥ発生による単層カーボンナノチューブの誘導体化の反応順序、及び反応において用いる官能基化フェニル部分の例を示す。(A)SWNT−p及び(B)18の場合のジメチルホルムアミド中の吸収スペクトルを示す。16、17、及び19の場合のスペクトルは同様であり、明白な構造はほとんどまたは全く無い。20を製造するための順序から得た材料のスペクトルは、SWNT−pの場合に示されるものと本質的に同等だった。(A)SWNT−p及び(B)17の場合の782nmでの励起を用いて固体試料から得たラマンスペクトルを示す。16、18、及び19のラマンスペクトルは同様であるが、ピーク強度の比は様々に異なる。全てのこうした場合に、無秩序モードの相対強度は増大する。20を製造するための順序から得た材料のスペクトルは、SWNT−pの場合に示されるものと本質的に同等だった。単層カーボンナノチューブの光化学誘導体化の反応順序を示す。エポキシ樹脂を含む部分の例を示す。熱硬化性樹脂のエポキシ部分との反応性がありかつ硬化剤部分との相溶性がある基を用いて化学修飾されたナノチューブの例を示す。カーボンナノチューブ含有複合材料の概略表現であり、手書きの線は、化学修飾カーボンナノチューブによって架橋され、熱硬化性複合材料を生成するポリマーマトリックスを表す。ジスルフィド結合を介して架橋した化学修飾カーボンナノチューブの表現を示す。チオフェノール部分を用いて化学修飾したナノチューブの製造を示す。図16に表すように、熱硬化性樹脂の硬化剤部分との反応性がありかつ樹脂のエポキシ部分との相溶性があるペンダントエポキシ基を用いて化学修飾されたカーボンナノチューブの製造を示す。ポリ(メタクリル酸メチル)及び化学修飾カーボンナノチューブに基づき、水素結合モチーフ(破線によって示す)基づく複合材料の例を示す。ナノチューブからポリマーを成長させるための重合プロセスにおいて使用する化学修飾ナノチューブの例を示す。 カーボンナノチューブの側壁を誘導体化する方法であって:(a)複数のカーボンナノチューブを選択すること、ここで、前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブからなる群から選択され、;(b)前記複数のカーボンナノチューブとアリールジアゾニウム種とを反応させて、アリール部位で官能化された誘導体化カーボンナノチューブを形成すること、ここで、前記反応は、電気化学的反応、熱反応及び光化学反応からなる群から選択される方法を含む、;を含む方法。 前記複数のカーボンナノチューブは複数の単層カーボンナノチューブである、請求項1に記載の方法。 前記誘導体化カーボンナノチューブを溶媒中に分散させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。 前記アリールジアゾニウム種を予備形成することをさらに含む、請求項2に記載の方法。 (a)アリールジアゾニウム種の前駆体と前記複数の単層カーボンナノチューブとを混合することと;(b)前記アリールジアゾニウム種を発生させることと;をさらに含む、請求項2に記載の方法。 前記複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブの集合体であり、前記方法は、(a)前記集合体を、前記アリールジアゾニウム種を含む溶液中に浸漬させることと、(b)前記集合体に電位を与えることと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。 前記電位は負電位である、請求項6に記載の方法。 前記溶液は支持電解質種をさらに含む、請求項6に記載の方法。 前記アリールジアゾニウム種はアリールジアゾニウム塩を含む、請求項2に記載の方法。 前記誘導体化カーボンナノチューブの炭素原子と結合したアリール部位の量は、前記カーボンナノチューブの40個の炭素原子に対してアリール部位少なくとも約1個の比率である、請求項2に記載の方法。 前記誘導体化カーボンナノチューブの炭素原子と結合したアリール部位の量は、前記カーボンナノチューブの30個の炭素原子に対してアリール部位少なくとも約1個の比率である、請求項2に記載の方法。 前記反応工程は、最大約200℃の温度での熱反応を含む、請求項2に記載の方法。 前記反応工程は、最大約60℃の温度での熱反応を含む、請求項2に記載の方法。 前記誘導体化カーボンナノチューブからアリール部位の少なくとも一部を除去することをさらに含む、請求項2に記載の方法。 前記除去工程は、前記誘導体化カーボンナノチューブを少なくとも約250℃の温度に加熱することを含む、請求項14に記載の方法。 前記反応工程は、紫外光源を使用する光化学反応を含む、請求項2に記載の方法。 前記反応工程は、可視光源を使用する光化学反応を含む、請求項2に記載の方法。 前記アリールジアゾニウム種の前駆体は、アニリン誘導体であり、前記アリールジアゾニウム種は、ナイトライトを用いて発生する、請求項5に記載の方法。 前記アリール部位は、前記誘導体化カーボンナノチューブと共有結合し、前記アリール部位は、分子スイッチ、分子ワイヤ、及び分子電子装置からなる群から選択される役割として機能する、請求項2に記載の方法。 (a)複数のカーボンナノチューブを選択することと;(b)前記複数のカーボンナノチューブとアリールジアゾニウム種とを反応させて、アリール部位で官能化された誘導体化カーボンナノチューブを形成することと;を含む方法によって製造された生産物。 (a)アリール部位で官能化された複数の誘導体化単層カーボンナノチューブを提供すること、ここで、前記のアリール部位で官能化された複数の誘導体化単層カーボンナノチューブは、アリールジアゾニウム種を用いて誘導体化され、;(b)アリール部位で官能化された複数の誘導体化単層カーボンナノチューブを溶媒中に溶かすこと、ここで、前記の、アリール部位で官能化された誘導体化単層カーボンナノチューブは、前記溶媒中に分散される、;を有する方法によって製造された単層カーボンナノチューブの溶液。 アリール部位で官能化された誘導体化カーボンナノチューブ、ここで、前記誘導体化カーボンナノチューブは、アリールジアゾニウム種を用いて誘導体化され、前記アリール部位は、分子スイッチ、分子ワイヤ、及び分子電子装置からなる群から選択される役割として機能する;を含む生産物。 前記誘導体化カーボンナノチューブは誘導体化単層カーボンナノチューブである、請求項22に記載の生産物。 前記アリール部位は、分子ワイヤを含み、該分子ワイヤは分子電子装置に有効に接続する、請求項23に記載の生産物。 前記アリール部位は、オリゴ(フェニレンエチニレン)分子ワイヤを含む分子ワイヤを含む、請求項23に記載の生産物。 カーボンナノチューブを誘導体化する方法であって:(a)カーボンナノチューブの集合体を選択することと;(b)前記集合体を、アリールジアゾニウム種を含む溶液中に浸漬させることと;(c)前記集合体に電位を与えて、前記集合体と前記アリールジアゾニウム種とを電気化学的に反応させることと;を含む方法。 前記カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブである、請求項26に記載の方法。 前記集合体は単層カーボンナノチューブのクロスバー構造である、請求項27に記載の方法。 アリール部位を前記集合体に結合することをさらに含む、請求項27に記載の方法。 前記アリール部位は、分子スイッチ及び分子ワイヤからなる群から選択される役割として機能する、請求項29に記載の方法。 分子電子装置を前記集合体に有効に接続することをさらに含む、請求項27に記載の方法。 (a)単層カーボンナノチューブの集合体を選択することと;(b)前記集合体を、アリールジアゾニウム種を含む溶液中に浸漬させることと;(c)前記集合体に電位を与えて、前記集合体と前記アリールジアゾニウム種とを電気化学的に反応させることと;を含む方法によって製造された生産物。 (a)アリールジアゾニウム種を利用してカーボンナノチューブを誘導体化し、アリール部位で官能化されたカーボンナノチューブを製造することと;(b)前記誘導体化カーボンナノチューブをポリマー中に分散させることと;を含む、ポリマー材料の製造方法。 前記カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブである、請求項33に記載の方法。 前記アリール部位は前記ポリマーと化学的に結合する、請求項34に記載の方法。 前記アリール部位は前記ポリマーと化学的に結合しない、請求項34に記載の方法。 前記アリール部位の少なくとも一部を分散工程後に除去することをさらに含む、請求項34に記載の方法。 除去工程は、前記誘導体化カーボンナノチューブ及び前記ポリマーを少なくとも約250℃の温度に加熱することを含む、請求項37に記載の方法。 硬化剤を前記ポリマー中に分散させることをさらに含む、請求項34に記載の方法。 前記ポリマーは前記硬化剤を含む、請求項39に記載の方法。 前記硬化剤は、前記誘導体化カーボンナノチューブ及び前記ポリマーの分散体中に分散される、請求項39に記載の方法。 前記硬化剤は、ジアミン、ポリメルカプタン、及びフェノール含有材料からなる群から選択される物質を含む、請求項39に記載の方法。 前記アリール部位はエポキシ部分と反応し、硬化に悪影響を及ぼす、請求項34に記載の方法。 前記ポリマーは前記エポキシ部分を含む、請求項43に記載の方法。 前記誘導体化カーボンナノチューブ、前記硬化剤及び前記ポリマーの分散体を硬化することをさらに含む、請求項39に記載の方法。 (a)アリールジアゾニウム種を利用して誘導体化された誘導体化カーボンナノチューブと;(b)前記誘導体化カーボンナノチューブが分散するポリマーと;を含むポリマー材料。 前記カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブである、請求項46に記載のポリマー材料。 前記誘導体化カーボンナノチューブ及び前記ポリマーは架橋されている、請求項47に記載のポリマー材料。 (a)アリール部位を用いてカーボンナノチューブを誘導体化して、誘導体化カーボンナノチューブを形成することにおいて、(i)前記カーボンナノチューブは、アリールジアゾニウム種を利用して誘導体化され;(ii)前記アリール部位は重合することができることと;(b)前記誘導体化カーボンナノチューブを重合して、前記アリール部位からポリマーを成長させることと;を含む、ポリマー材料の製造方法。 前記カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブである、請求項49に記載の方法。 重合工程は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、縮合重合、開環重合、メタセシス重合、及び開環メタセシス(ROMP)重合からなる群から選択される手法を含む、請求項50に記載の方法。 (a)アリール部位を用いてカーボンナノチューブを誘導体化して、誘導体化カーボンナノチューブを形成することにおいて、(i)前記カーボンナノチューブは、アリールジアゾニウム種を利用して誘導体化され;(ii)前記アリール部位は重合することができることと;(b)前記誘導体化カーボンナノチューブを重合して、前記アリール部位からポリマーを成長させることと;を含む方法によって製造されたポリマー材料。 前記カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブである、請求項52に記載のポリマー材料。 重合工程は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、縮合重合、開環重合、メタセシス重合、及び開環メタセシス(ROMP)重合からなる群から選択される手法を含む、請求項53に記載のポリマー材料。