タイトル: | 特許公報(B2)_アレルギー性疾患検査方法 |
出願番号: | 2002553487 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12Q 1/02,C12Q 1/37,C12Q 1/68,G01N 33/15,G01N 33/50,A61K 31/711,A61K 39/395,A61K 45/00 |
大谷 則子 片岡 慶子 吉田 寧 杉田 雄二 出原 賢治 JP 4155561 特許公報(B2) 20080718 2002553487 20011221 アレルギー性疾患検査方法 国立大学法人佐賀大学 504209655 清水 初志 100102978 新見 浩一 100128048 大谷 則子 片岡 慶子 吉田 寧 杉田 雄二 出原 賢治 JP 2000396166 20001226 20080924 C12N 15/09 20060101AFI20080904BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20080904BHJP C12Q 1/37 20060101ALI20080904BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20080904BHJP G01N 33/15 20060101ALI20080904BHJP G01N 33/50 20060101ALI20080904BHJP A61K 31/711 20060101ALN20080904BHJP A61K 39/395 20060101ALN20080904BHJP A61K 45/00 20060101ALN20080904BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/02C12Q1/37C12Q1/68 AG01N33/15 ZG01N33/50 ZA61K31/711A61K39/395 DA61K45/00 BIOSIS/WPI(DIALOG) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq SwissProt/PIR/GeneSeq PubMed JSTPlus(JDreamII) 日本免疫学会総会・学術集会記録,2000年 9月26日,Vol.30,p.31 検査と技術,2000年12月 1日,Vol.28,No.13,p.1563-1566 臨床免疫,2000年12月25日,Vol.34,No.6,p.504-811 6 JP2001011287 20011221 WO2002052006 20020704 77 20041126 冨永 みどり 技術分野本発明は、アレルギー性疾患の検査方法に関する。背景技術気管支喘息は、多因子性の病気(multifactorial diseases)と考えられている。つまり気管支喘息は多くの異なる遺伝子の発現の相互作用によって起こり、これらの個々の遺伝子の発現は、複数の環境要因によって影響を受ける。このため、気管支喘息を起こす特定の遺伝子を解明することは、非常に困難であった。しかし現在、気管支喘息は、気道における慢性の炎症性疾患として位置付けられている。そして気管支喘息の病態形成には、気道粘膜や気管支平滑筋におけるアレルギー反応の密接な関与が指摘されている。したがって、気管支喘息の診断においては、これらの組織におけるアレルギー反応の状態を把握することが重要な課題である。また気管支喘息の治療においては、アレルギー反応の制御が課題となる。一方、アレルギー性疾患には、変異や欠損を有する遺伝子の発現や、特定の遺伝子の過剰発現や発現量の減少が関わっていると考えられている。病気に関して遺伝子発現が果たしている役割を解明するためには、遺伝子が発症にどのように関わり、薬剤などの外的な刺激が遺伝子発現をどのように変化させるのかを理解する必要がある。さて、気管支喘息の患者の多くに、IgE抗体の産生亢進を伴うアトピー素因が見られる。気管支喘息には、多様な原因が考えられているが、アトピー素因が多くの患者において過敏症の原因となっていることは疑いを入れない。喘息発作の気道閉塞の機序には、気管支平滑筋の収縮、あるいは気道粘膜の浮腫や気道内分泌亢進が予想されている。このような気道の変化には、病因アレルゲンへの曝露による気道でのI型アレルギー反応が重要な役割を果たしている。近年、IL−4及びIL−13が気管支喘息の発症に重要な役割を持っていることが示唆されている。したがって、たとえば気道上皮細胞や気管支平滑筋において、IL−4やIL−13によって発現レベルが変化する遺伝子は、気管支喘息に関連していると考えられる。しかし、このような考えかたに基づいて、IL−4やIL−13によって特異的に発現レベルが変化する遺伝子の単離についての報告は無い。さて、現在アレルギー性疾患の診断においては、一般に、問診、家族歴、そして本人の既往症の確認が重要な要素となっている。またアレルギーをより客観的な情報に基づいて診断するために、血液を試料とする試験方法や、アレルゲンに対する患者の免疫学的な応答を観察する方法も実施されている。前者の例として、アレルゲン特異的IgE測定、白血球ヒスタミン遊離試験、あるいはリンパ球幼若化試験等が挙げられる。アレルゲン特異的IgEの存在は、そのアレルゲンに対するアレルギー反応の証明である。しかし患者によっては、必ずしもアレルゲン特異的なIgEを検出できるとは限らない場合もある。また、その測定原理上、診断に必要なアレルゲンの全てに対して、試験を実施しなければならない。白血球ヒスタミン遊離試験やリンパ球幼若化試験は、免疫システムのアレルゲンに対する反応をin vitroで観察する方法である。これらの方法は、操作が煩雑である。一方、患者を実際にアレルゲンに接触させたときに観察される免疫応答をアレルギーの診断に役立てる方法(後者)も公知である。ブリック・テスト、スクラッチ・テスト、パッチ・テスト、皮内反応、あるいは誘発試験等が、この種の試験に含まれる。これらの試験では、患者のアレルギー反応を直接診断することができる反面、実際に被検者をアレルゲンに曝露する侵襲性の高い検査であると言うことができる。この他、アレルゲンに関わらず、アレルギー反応の関与を証明するための試験方法も試みられている。たとえば、血清IgE値が高値である場合、その患者にはアレルギー反応が起きていると推定することができる。血清IgE値は、アレルゲン特異IgEの総量に相当する情報である。アレルゲンの種類に関わらずIgEの総量を決定することは容易であるが、非アトピー型気管支炎等の疾患を持つ患者では、IgEが低値となる場合がある。したがって、患者に対する危険が少なく、しかも診断に必要な情報を容易に得ることができる、アレルギー性疾患のマーカーが提供されれば有用である。このようなマーカーは、アレルギー性疾患の発症に深く関与していると考えられるので、診断のみならず、アレルギー症状のコントロールにおいても、重要な標的となる可能性がある。発明の開示本発明は、特にアレルギー性疾患の検査を可能とする指標の提供を課題とする。さらに、本発明は該指標に基づく、アレルギー性疾患の検査方法およびアレルギー性疾患治療薬候補化合物のスクリーニング方法を提供することを課題とする。IL−4とIL−13がアレルギー反応に深く関与していることは、いくつかの報告により示唆されている。たとえばIL−4(Yssel,H and Groux,H:Int.Arch.Allergy Immunol.,121;10−18,2000)や、STAT6(Akimoto,T.et al.:J.Exp.Med.,187,1537−1542,1998)をノックアウトしたマウスでは、気道過敏性が消失する。モデルマウスにおいては、IL−13がIgE産生やTh2型に関係なく喘息様病態の形成に関与している(Wills−Karp,M.et al.:Science,282,2258−2261,1998;Grunig,G.et al.:Science,282,2261−2263,1998;Zhu,Z.et al.:J.Clin.Invest.,103,779−788,1999)。またヒト気道上皮細胞、気管支平滑筋に、IL−4受容体及びIL−13受容体が高発現している(Heinzmann,A.et al.:Hum.Mol.Genet.,9:549−559,2000)。このことから、これらの組織はIL−4及びIL−13の標的細胞と思われる。一方、IL−4受容体α及びIL−13に存在するSNPが、アレルギー疾患の遺伝的要因の1つであることが示された(Mitsuyasu,H.,et al.:Nature Genet.,19,119−120,1998;Mitsuyasu,H.,et al.:J.Immunol.,162:1227−1231,1999;Kruse,S.,et al.:Immnol.,96,365−371,1999;Heinzmann,A.et al.:Hum.Mol.Genet.,9:549−559,2000)。更に、可溶型IL−4受容体αによりIL−4あるいはIL−13の作用を阻害することが気管支喘息の治療として有効であることも示された(Borish,L.C.et al.:Am.J.Respir.Crit.Care Med.,160:912−922,1999)。以上のように、IL−4とIL−13には、特に呼吸器症状を中心とするアレルギー反応との深い関係が示唆されている。つまりIL−4及びIL−13によるシグナル伝達経路を構成する遺伝子は、アレルギー反応に深い関連性を有する遺伝子と言える。したがって、これらの遺伝子を単離し、アレルギー反応との関連性を明らかにすることにより、アレルギー性疾患治療の新たな標的を見出すことができる。本発明者らは、このような考えかたに基づいて、ヒト気管支上皮細胞をIL−4及びIL−13で処理したときに、発現レベルに変化を示す遺伝子を探索すれば、アレルギー反応に関連する遺伝子を単離することができるのではないかと考えた。同様のアプローチにより、IL−4やIL−13の処理によって発現レベルが変化する遺伝子の単離を試みた報告もある(Wang et al.,Immunology 2000,Seattle,May 12−16,2000)。しかし公知の探索方法においては、解析に用いた細胞のロット数が少ない上、発現レベルの変化の幅が明らかでないので、IL−4やIL−13の刺激に対する特異性が期待できない。そこで本発明者らは、IL−4やIL−13の刺激に対してより特異的に応答する遺伝子を単離するために、解析の対象とする細胞のロット数を増やし、更に発現レベルの変動が2倍以上に及ぶものを選択した。次にこうして選択された遺伝子の、IL−4やIL−13で刺激した気道上皮細胞における発現レベルが有意に上昇することを確認した。以上のような知見に基づいて、本発明者らは、アレルギー性疾患に対して密接な関連を有する以下の6つの遺伝子の存在を明らかにすることに成功した。カルボキシペプチダーゼM(carboxypeptidase M)カテプシンC(cathepsin C)エンドセリンA受容体(endothelin−A receptor)骨芽細胞特異因子2[osteoblast specific factor 2(OSF2os)]DD96(MAP17)[DD96(MAP17)]およびCYP1B1[dioxin−inducible cytochrome P450(CYP1B1)]以上の知見に基づいて本発明者らは、これらの遺伝子、並びにこれらの遺伝子によってコードされる蛋白質を指標とすることによって、アレルギー性疾患の検査が可能となることを見出し本発明を完成した。また本発明者らは、これらの遺伝子の発現レベル、あるいはこれらの遺伝子によってコードされる蛋白質の活性を指標とすることによって、アレルギー性疾患の治療薬をスクリーニングできることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の検査方法、並びにスクリーニング方法に関する。〔1〕次の工程を含む、アレルギー性疾患の検査方法。a)被検者の生体試料における、カルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの遺伝子の発現レベルを測定する工程b)健常者の生体試料における前記遺伝子の発現レベルと比較する工程〔2〕アレルギー性疾患が気管支喘息である、〔1〕に記載の検査方法。〔3〕遺伝子の発現レベルを、cDNAのPCRによって測定する〔1〕に記載の検査方法。〔4〕遺伝子の発現レベルを、前記遺伝子によってコードされる蛋白質の検出によって測定する〔1〕に記載の検査方法。〔5〕カルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの遺伝子の塩基配列を含むポリヌクレオチド、またはその相補鎖に相補的な塩基配列を有する少なくとも15塩基の長さを有するオリゴヌクレオチドからなる、アレルギー性疾患検査用試薬。〔6〕カルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの蛋白質のアミノ酸配列を含むペプチドを認識する抗体からなる、アレルギー性疾患検査用試薬。〔7〕次の工程を含む、アレルギー性疾患の治療薬のスクリーニング方法。(1)カルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの遺伝子、および/またはこれらの遺伝子と機能的に同等ないずれかの遺伝子を発現する細胞に候補化合物を接触させる工程(2)前記遺伝子の発現レベルを測定する工程、(3)対照と比較して前記遺伝子の発現レベルを低下させる化合物を選択する工程〔8〕細胞が株化気道上皮細胞である〔7〕に記載の方法。〔9〕次の工程を含む、アレルギー性疾患の治療薬のスクリーニング方法。(1)被験動物に候補化合物を投与する工程、(2)被験動物の生体試料におけるカルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの遺伝子、および/またはこれらの遺伝子と機能的に同等ないずれかの遺伝子の発現強度を測定する工程、および(3)対照と比較して前記遺伝子の発現レベルを低下させる化合物を選択する工程〔10〕次の工程を含む、アレルギー性疾患の治療薬のスクリーニング方法。(1)カルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの遺伝子、および/またはこれらの遺伝子と機能的に同等ないずれかの遺伝子の転写調節領域と、この転写調節領域の制御下に発現するレポーター遺伝子を含むベクターを導入した細胞と候補物質を接触させる工程、(2)前記レポーター遺伝子の活性を測定する工程、および(3)対照と比較して前記遺伝子の発現レベルを低下させる化合物を選択する工程〔11〕次の工程を含む、アレルギー性疾患の治療薬のスクリーニング方法。(1)カルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの蛋白質、および/またはこれらの蛋白質と機能的に同等ないずれかの蛋白質と候補物質を接触させる工程、(2)前記蛋白質の活性を測定する工程、および(3)対照と比較して前記蛋白質の活性を低下させる化合物を選択する工程〔12〕〔7〕、〔9〕、〔10〕、および〔11〕のいずれかに記載のスクリーニング方法によって得ることができる化合物を有効成分として含有する、アレルギー性疾患の治療薬。〔13〕カルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの遺伝子、またはその一部のアンチセンスDNAを主成分として含む、アレルギー性疾患の治療薬。〔14〕カルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの蛋白質に結合する抗体を主成分として含む、アレルギー性疾患の治療薬。〔15〕カルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの遺伝子、および/またはこれらの遺伝子と機能的に同等ないずれかの遺伝子の気道上皮細胞における発現強度を上昇させたトランスジェニック非ヒト脊椎動物のアレルギー性疾患のモデル動物としての使用。〔16〕カルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの遺伝子の塩基配列、またはその相補配列にハイブリダイズする少なくとも15塩基の長さを有するポリヌクレオチドと、カルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの遺伝子の塩基配列からなる遺伝子を発現する細胞からなる、アレルギー性疾患の治療薬候補化合物をスクリーニングするためのキット。〔17〕カルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの蛋白質のアミノ酸配列を含むペプチドを認識する抗体と、カルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの遺伝子の塩基配列からなる遺伝子を発現する細胞からなる、アレルギー性疾患の治療薬候補化合物をスクリーニングするためのキット。あるいは本発明は、〔7〕、〔9〕、〔10〕、および〔11〕のいずれかに記載のスクリーニング方法によって得ることができる化合物を投与する工程を含む、アレルギー性疾患の治療方法に関する。さらに本発明は、〔7〕、〔9〕、〔10〕、および〔11〕のいずれかに記載のスクリーニング方法によって得ることができる化合物の、アレルギー性疾患の治療のための医薬組成物の製造における使用に関する。加えて本発明は、前記遺伝子に対するアンチセンスDNA、または前記蛋白質に結合する抗体を投与する工程を含むアレルギー性疾患の治療方法に関する。また本発明は、前記遺伝子に対するアンチセンスDNA、または前記蛋白質に結合する抗体の、アレルギー性疾患の治療のための医薬組成物の製造における使用に関する。なおこれら6つの遺伝子は、いずれもその存在が明らかにされている遺伝子である。6つの遺伝子の塩基配列と、それによってコードされるアミノ酸配列を以下の配列番号に記載した。本発明におけるこれら6つの遺伝子について、既に明らかにされている有用性を以下に示す。以下に示すとおり、いずれの遺伝子もIL−4やIL−13に応答して気道上皮細胞で発現が増強することは知られていない。カルボキシペプチダーゼM:カルボキシペプチダーゼMについては、特に有用性についての報告は無い。カテプシンC:カテプシンCのホモログが単球およびマクロファージ疾患の診断薬、あるいは治療薬として有用であることが示されている。また、II型コラーゲンの治療薬や診断薬としての使用も報告されている。エンドセリンA受容体:エンドセリンの測定と、エンドセリンに対するアンタゴニストのスクリーニングに利用できることが示されている。あるいはエンドセリン関連病態の阻害剤に利用できることが報告されている。骨芽細胞特異因子2:骨代謝の診断薬、あるいは腫瘍マーカーとしての利用が報告されている。更に、DNAやモノクローナル抗体については、胸部、大腸、あるいは胃腸の癌に対する治療剤としての用途も示されている。また心臓、肺、並びに炎症疾患の阻害剤、診断薬、あるいは治療薬としての使用も知られている。DD96(MAP17):DD96(MAP17)の5’−ESTは、診断、法医学、遺伝子治療及び染色体マッピングに用いうることが報告されている。CYP1B1:腎臓癌や緑内障の診断マーカーとして利用できることが示されている。本発明において、アレルギー性疾患(allergic disease)とはアレルギー反応の関与する疾患の総称である。より具体的には、アレルゲンが同定され、アレルゲンへの曝露と病変の発症に深い結びつきが証明され、その病変に免疫学的な機序が証明されることと定義することができる。ここで、免疫学的な機序とは、アレルゲンの刺激によって白血球細胞が免疫応答を示すことを意味する。アレルゲンとしては、ダニ抗原や花粉抗原等を例示することができる。代表的なアレルギー性疾患には、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、あるいは昆虫アレルギー等を示すことができる。アレルギー素因(allergic diathesis)とは、アレルギー性疾患を持つ親から子に伝えられる遺伝的な因子である。家族性に発症するアレルギー性疾患はアトピー性疾患とも呼ばれ、その原因となる遺伝的に伝えられる因子がアトピー素因である。喘息は、アトピー性疾患のうち、特に呼吸器症状を伴う疾患に対して与えられた総称である。本発明のアレルギー性疾患の検査方法は、被検者の生体試料におけるカルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2(OSF2os)、DD96(MAP17)、およびCYP1B1で構成される群から選択されるいずれかの遺伝子の発現レベルを測定し、健常者の測定値と比較する工程を含む。両者の比較の結果、健常者よりも発現が亢進している場合には、被検者がアレルギー性疾患であると判定される。本発明において、アレルギー性疾患の指標とすることができる前記6種の遺伝子を指標遺伝子と言う。指標遺伝子は、特に断らない限り、上記6つの遺伝子から選択された1つまたは複数の任意の遺伝子を示す用語として用いられる。本発明に基づくアレルギーの検査方法において、発現レベルや活性を測定する対象となる指標遺伝子は、前記6つの指標遺伝子から選択される。したがって6種の遺伝子のうちのいずれか1つの遺伝子について、発現レベルや活性を測定することにより、本発明に基づく検査を行うことができる。更に本発明においては、これらの遺伝子を複数個組み合わせて測定することによって検査精度を高めることができる。気管支喘息患者は、ヘテロジーニアス(不均一)な集団なので、複数の遺伝子を指標とすることにより、より確実な診断を行うことができる。具体的には、指標遺伝子の少なくとも1つ、望ましくは2以上、より望ましくは3以上、更に望ましくは4乃至5種類以上の指標遺伝子を組み合わせることができる。本発明において、指標遺伝子の発現レベルとは、これらの遺伝子のmRNAへの転写、並びに蛋白質への翻訳を含む。したがって本発明によるアレルギー性疾患の検査方法は、前記遺伝子に対応するmRNAの発現強度、あるいは前記遺伝子によってコードされる蛋白質の発現レベルの比較に基づいて行われる。本発明におけるアレルギー性疾患の検査における指標遺伝子の発現レベルの測定は、公知の遺伝子解析方法にしたがって実施することができる。具体的には、たとえばこの遺伝子にハイブリダイズする核酸をプローブとしたハイブリダイゼーション技術、または本発明の遺伝子にハイブリダイズするDNAをプライマーとした遺伝子増幅技術等を利用することができる。本発明の検査に用いられるプローブまたはプライマーは、前記指標遺伝子の塩基配列に基づいて設定することができる。前記指標遺伝子の塩基配列は公知である。各指標遺伝子の塩基配列のGenBank登録番号を実施例に示した。なお一般に高等動物の遺伝子は、高い頻度で多型を伴う。また、スプライシングの過程で相互に異なるアミノ酸配列からなるアイソフォームを生じる分子も多く存在する。多型やアイソフォームによって塩基配列に変異を含む遺伝子であっても、前記指標遺伝子と同様の活性を持ち、アレルギーに関与する遺伝子は、いずれも本発明の指標遺伝子に含まれる。プライマーあるいはプローブには、前記指標遺伝子の塩基配列からなるポリヌクレオチド、またはその相補鎖に相補的な少なくとも15ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを利用することができる。ここで「相補鎖」とは、A:T(RNAの場合はU)、G:Cの塩基対からなる2本鎖DNAの一方の鎖に対する他方の鎖を指す。また、「相補的」とは、少なくとも15個の連続したヌクレオチド領域で完全に相補配列である場合に限られず、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上の塩基配列上の相同性を有すればよい。塩基配列の相同性は、BLAST等のアルゴリズムにより決定することができる。このようなポリヌクレオチドは、指標遺伝子を検出するためのプローブとして、また指標遺伝子を増幅するためのプライマーとして利用することができる。プライマーとして用いる場合には、通常、15bp〜100bp、好ましくは15bp〜35bpの鎖長を有する。また、プローブとして用いる場合には、指標遺伝子(またはその相補鎖)の少なくとも一部若しくは全部の配列を有し、少なくとも15bpの鎖長のDNAが用いられる。プライマーとして用いる場合、3’側の領域は相補的である必要があるが、5’側には制限酵素認識配列やタグなどを付加することができる。なお、本発明における「ポリヌクレオチド」は、DNAあるいはRNAであることができる。これらポリヌクレオチドは、合成されたものでも天然のものでもよい。また、ハイブリダイゼーションに用いるプローブDNAは、通常、標識したものが用いられる。標識方法としては、例えば次のような方法を示すことができる。なお用語オリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのうち、重合度が比較的低いものを意味している。オリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに含まれる。・DNAポリメラーゼIを用いるニックトランスレーションによる標識・ポリヌクレオチドキナーゼを用いる末端標識・クレノーフラグメントによるフィルイン末端標識(Berger SL,Kimmel AR.(1987)Guide to Molecular Cloning Techniques,Method in Enzymology,Academic Press;Hames BD,Higgins SJ(1985)Genes Probes:A Practical Approach.IRL Press;Sambrook J,Fritsch EF,Maniatis T.(1989)Molecular Cloning:a Laboratory Manual,2nd Edn.Cold Spring Harbor Laboratory Press)・RNAポリメラーゼを用いる転写による標識(Melton DA,Krieg,PA,Rebagkiati MR,Maniatis T,Zinn K,Green MR.(1984)Nucleic Acid Res.,12,7035−7056)・放射性同位体を用いない修飾ヌクレオチドをDNAに取り込ませる方法(Kricka LJ.(1992)Nonisotopic DNA Probing Techniques.Academic Press)ハイブリダイゼーション技術を利用したアレルギー性疾患の検査は、例えば、ノーザンハイブリダイゼーション法、ドットブロット法、DNAマイクロアレイを用いた方法などを使用して行うことができる。さらには、RT−PCR法等の遺伝子増幅技術を利用することができる。RT−PCR法においては、遺伝子の増幅過程においてPCR増幅モニター法を用いることにより、本発明の遺伝子の発現について、より定量的な解析を行うことが可能である。PCR遺伝子増幅モニター法においては、両端を互いの蛍光を打ち消し合う異なった蛍光色素で標識したプローブを用い、検出対象(DNAもしくはRNAの逆転写産物)にハイブリダイズさせる。PCR反応が進んでTaqポリメラーゼの5’−3’エクソヌクレアーゼ(exonuclease)活性により同プローブが分解されると二つの蛍光色素が離れ、蛍光が検出されるようになる。この蛍光の検出をリアルタイムに行う。検出対象についてコピー数の明らかな標準試料について同時に測定することにより、PCR増幅の直線性のあるサイクル数で目的試料中の検出対象のコピー数を決定する(Holland,P.M.et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276−7280;Livak,K.J.et al.,1995,PCR Methods and Applications 4(6):357−362;Heid,C.A.et al.,Genome Research 6:986−994;Gibson,E.M.U.et al.,1996,Genome Research 6:995−1001)。PCR増幅モニター法においては、例えば、ABI PRISM7700(PEバイオシステムズ社)を用いることができる。また本発明のアレルギー性疾患の検査方法は、前記指標遺伝子によりコードされる蛋白質を検出することにより行うこともできる。以下、本明細書において、前記指標遺伝子によりコードされる蛋白質を指標蛋白質と記載する。このような検査方法としては、例えば、これら指標蛋白質に結合する抗体を利用したウェスタンブロッティング法、免疫沈降法、ELISA法などを利用することができる。この検出に用いる前記指標蛋白質に結合する抗体は、当業者に周知の技法を用いて得ることができる。本発明に用いる抗体は、ポリクローナル抗体、あるいはモノクローナル抗体(Milstein C,et al.,1983,Nature 305(5934):537−40)であることができる。例えば、指標蛋白質に対するポリクローナル抗体は、抗原を感作した哺乳動物の血液を取り出し、この血液から公知の方法により血清を分離する。ポリクローナル抗体としては、ポリクローナル抗体を含む血清を使用することができる。あるいは必要に応じてこの血清からポリクローナル抗体を含む画分をさらに単離することもできる。また、モノクローナル抗体を得るには、上記抗原を感作した哺乳動物から免疫細胞を取り出して骨髄腫細胞などと細胞融合させる。こうして得られたハイブリドーマをクローニングして、その培養物から抗体を回収しモノクローナル抗体とすることができる。指標蛋白質の検出には、これらの抗体を適宜標識して用いればよい。また、この抗体を標識せずに、該抗体に特異的に結合する物質、例えば、プロテインAやプロテインGを標識して間接的に検出することもできる。具体的な検出方法としては、例えば、ELISA法を挙げることができる。抗原に用いる蛋白質もしくはその部分ペプチドは、例えば該遺伝子もしくはその一部を発現ベクターに組込み、これを適当な宿主細胞に導入して、形質転換体を作成し、該形質転換体を培養して組み換え蛋白質を発現させ、発現させた組み換え蛋白質を培養体または培養上清から精製することにより得ることができる。あるいは、これらの遺伝子によってコードされるアミノ酸配列、あるいは全長cDNAによってコードされるアミノ酸配列の部分アミノ酸配列からなるオリゴペプチドを化学的に合成し、免疫原として用いることもできる。更に本発明においては、指標遺伝子の発現レベルのみならず、生体試料における指標蛋白質の活性を指標として、アレルギー性疾患の検査を行うこともできる。指標蛋白質の活性とは、各蛋白質が備える生物学的な活性を言う。前記指標蛋白質の活性の検出は、公知の方法に基づいて行うことができる。カルボキシペプチダーゼ M(Tan,F.;Chan,S.J.;Steiner,D.F.;Schilling,J.W.;Skidgel,R.A.;Molecular cloning and sequencing of the cDNA for human membrane−bound carboxypeptidase M:comparison with carboxypeptidases A,B,H,and N.J.Biol.Chem.264:13165−13170,1989.)はヒトの胎盤のcDNAライブラリーよりクローニングされ、Open reading frameが1317bpで、439アミノ酸をコードしている。膜結合型carboxypeptidaseとして多くの組織や培養細胞に発現している。単球からマクロファージに分化するときに発現していることが報告されているが、アレルギー性疾患との関連は知られていない。カルボキシペプチダーゼMは、塩基性アミノ酸のC末端を特異的に切断するプロテアーゼである。したがって、この酵素反応に基づいて、生物学的にカルボキシペプチダーゼMの活性を測定することができる。なお塩基性アミノ酸としては、アルギニンやリジンが挙げられる。カテプシンC(Paris,A.;Strukelj,B.;Pungercar,J.;Renko,M.;Dolenc,I.;Turk,V.:Molecular cloning and sequence analysis of human preprocathepsin C.FEBS Lett.369:326−330,1995.)は、ジペプチジルペプチダーゼIとも呼ばれる動物細胞において見出されるプロテアーゼの一つである。その代表的な基質は、グリシル−L−フェニルアラニンアミドである。したがって、カテプシンCの生物学的な活性は、当該基質化合物の消化活性を測定することによって知ることができる。なおカテプシンCは、pH5付近ではアミド結合の加水分解を、pH7付近では別の基質分子のアミノ基を受容体とする移転反応を触媒することが知られている。エンドセリンA受容体(Maggi,M.;Barni,T.;Fantoni,G.;Mancina,R.;Pupilli,C.;Luconi,M.;Crescioli,C.;Serio,M.;Vannelli,G.B.;Expression and biological effects of endothelin−1 in human gonadotropin−releasing hormone−secreting neurons.J.Clin.Endocr.Metab.85:1658−1665,2000)は、受容体蛋白質であることから、これらの受容体に結合することができるリガンドの結合によって細胞内にシグナルを伝達することが、各蛋白質の生物学的な活性と言うことができる。リガンドの結合によるシグナル伝達は、細胞のカルシウム濃度の上昇、シグナル伝達の結果として引き起こされる細胞の形態の変化等を指標として検出することができる。骨芽細胞特異因子2(OSF2os;Horiuchi K,Amizuka N,Takeshita S,Takamatsu H,Katsuura M,Ozawa H,Toyama Y,Bonewald LF,Kudo A.;Identification and characterization of a novel protein,periostin,with restricted expression to periosteum and periodontal ligament and increased expression by transforming growth factor beta.J Bone Miner Res.1999 Jul;14(7):1239−49.)は、90kDaのタンパク質である。alternative splicingによるC末側の長さの違いで、4つの転写物の存在が明らかにされている。現在はperiostinと呼ばれている。骨に発現しており、肺にも少し発現している。骨形成において、細胞接着に関与していると考えられる。TGFβで誘導されるbetaig−h3に高いホモロジーがあり、periostin自身も初代骨芽細胞においてTGFβで誘導される。骨特異的遺伝子の発現増強を指標として検出できる。DD96(Kocher O,Comella N,Tognazzi K,Brown LF.;Identification and partial characterization of PDZK1:a novel protein containing PDZ interaction domains.Lab Invest.1998 Jan;78(1):117−25.)は、17KDの膜結合型タンパク質をコードする腎臓からクローニングされた遺伝子である。MAP17とも呼ばれ、ガン細胞や、角化細胞、上皮細胞に発現が認められているが、まだ詳しい機能はわかっていない。CYP1B1(Sutter,T.R.;Tang,Y.M.;Hayes,C.L.;Wo,Y.−Y.P.;Jabs,E.W.;Li,X.;Yin,H.;Cody,C.W.;Greenlee,W.F.:Complete cDNA sequence of a human dioxin−inducible mRNA identifies a new gene subfamily of cytochrome P450 that maps to chromosome 2.J.Biol.Chem.269:13092−13099,1994)は、ダイオキシン誘導性P450の一つである。ダイオキシン類の代謝に関わるP450は、ダイオキシンの分子構造における環の水酸化・開裂、脱ハロゲン化、グルクロン酸抱合などに関与している。中でもCYP1B1は、2,3,7,8−TCDDを代謝する代謝酵素である。代謝産物としてCl脱離のOH化が挙げられる。したがって、この酵素活性を指標として、CYP1B1を酵素的に検出することができる。本発明の検査方法においては、通常、被検者の生体試料を試料とする。生体試料としては、気道上皮細胞等を用いることができる。気道上皮細胞を得る方法は公知である。すなわち、気管支鏡下において、かんしを用いて物理的に剥離させ採取することができる。得られた試料は、凍結させたり、ホルマリン固定させたり、培地に入れて培養することによって調製できる。また本発明における生体試料としては、血液、喀痰、鼻粘膜分泌物、気管支肺胞洗浄液、肺擦が細胞などを用いることもできる。これらの生体試料の採取方法についても、公知である。生体試料が気道上皮細胞等の細胞である場合には、ライセートを調製すれば、前記蛋白質の免疫学的な測定のための試料とすることができる。あるいはこのライセートからmRNAを抽出すれば、前記遺伝子に対応するmRNAの測定のための試料とすることができる。生体試料のライセートやmRNAの抽出には、市販のキットを利用すると便利である。あるいは、血液、鼻粘膜分泌物、並びに気管支肺胞洗浄液のような液状の生体試料においては、必要に応じて緩衝液等で希釈して蛋白質や遺伝子の測定のための試料とすることができる。気道上皮細胞における指標遺伝子の発現レベルの測定値は、公知の方法によって補正することができる。補正により、細胞における遺伝子の発現レベルの変化を比較することができる。測定値の補正は、気道上皮細胞に発現し、かつ細胞の状態に関わらず発現レベルが大きく変動しない遺伝子(ハウスキーピング遺伝子)の発現レベルの測定値に基づいて、本発明において指標とすべき遺伝子の発現レベルの測定値を補正することによって行われる。本発明における指標遺伝子は、IL−4あるいはIL−13で刺激された複数の気道上皮細胞株において発現量の増加を示した。従って、指標遺伝子の発現レベルを指標として、気管支喘息などのアレルギー性疾患の検査を行うことができる。本発明におけるアレルギー性疾患の検査とは、たとえば以下のような検査が含まれる。気管支喘息の症状を示しながら、一般的な検査ではアレルギー性疾患と判定できない患者であっても、本発明に基づく検査を行えばアレルギー性疾患の患者であることが容易に判定できる。より具体的には、アレルギー性疾患が疑われる症状を示す患者における指標遺伝子の発現の上昇は、その症状の原因がアレルギー性疾患である可能性が高いことを示している。気管支喘息には、アレルギー反応が原因となっているものと、そうでないものがある。両者の治療方法はまったく異なるので、いずれの原因によって気管支喘息の症状がもたらされているのかを診断することは、治療上、たいへん重要な工程である。本発明の検査方法は、気管支喘息の原因の特定において、きわめて重要な情報を提供することができる。あるいは、アレルギー症状が改善に向かっているのかどうかを判断するための検査が可能となる。本発明の指標遺伝子は、IL−4あるいはIL−13で刺激された気道上皮細胞で発現量の増加を示した。気道上皮組織は気管支喘息において、顕著な病変を示す組織である。したがって、アレルギー反応を強力に誘導するサイトカインであるIL−4あるいはIL−13で刺激された気道上皮細胞において発現が変動する遺伝子は、治療効果の判定に有用である。より具体的には、アレルギー性疾患と診断された患者における指標遺伝子の発現の上昇は、アレルギーの症状が進行している可能性が高いことを示している。また本発明は、指標遺伝子の気道上皮細胞における発現レベルを上昇させたトランスジェニック非ヒト動物のアレルギー性疾患モデル動物としての使用に関する。アレルギー性疾患モデル動物は、気管支喘息における生体内の変化を明らかにするために有用である。更に、本発明のアレルギー性疾患モデル動物は、アレルギー性の気管支喘息の治療薬の評価に有用である。本発明によって、IL−4あるいはIL−13の刺激によって気道上皮細胞における前記指標遺伝子の発現レベルが、上昇することが明らかとなった。したがって、気道上皮細胞においてこれら遺伝子、またはこれらの遺伝子と機能的に同等な遺伝子の発現レベルを人為的に増強した動物は、アレルギー性疾患のモデル動物として利用することができる。なお気道上皮細胞における発現レベルの上昇とは、気道組織全体における標的遺伝子の発現レベルの上昇を含む。すなわち、前記遺伝子の発現レベルを上昇させるのは気道上皮のみである場合のみならず、気道組織全体において、あるいは全身性に前記遺伝子の発現レベルが上昇している場合を含む。本発明において機能的に同等な遺伝子とは、各指標遺伝子によってコードされる蛋白質において明らかにされている活性と同様の活性を備えた蛋白質をコードする遺伝子である。機能的に同等な遺伝子の代表的なものとしては、トランスジェニック動物が本来備えている、その動物種における指標遺伝子のカウンターパートを挙げることができる。あるいは前記指標タンパク質のアミノ酸配列に対して、たとえば90%以上、望ましくは95%以上、更に望ましくは99%以上の相同性を有するタンパク質をコードする遺伝子は、前記指標遺伝子と機能的に同等な遺伝子として示すことができる。また、実施例において用いたカルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして増幅することができる遺伝子であって、IL−4やIL−13で刺激した気道上皮細胞における発現レベルが有意に上昇する蛋白質をコードする遺伝子も、機能的に同等な遺伝子である。IL−4あるいはIL−13の刺激によって発現が増加する遺伝子は、これらのサイトカインによるシグナル伝達の経路上にある遺伝子と言うことができる。言いかえれば、IL−4あるいはIL−13の刺激が、これらの遺伝子の発現の増強を通じて、アレルギー症状となって現れていると考えられる。つまり、IL−4あるいはIL−13の刺激によって発現が増加する遺伝子は、気道上皮におけるアレルギーの病態形成において重要な役割を果たす遺伝子と言える。したがって、この遺伝子の発現を抑制したり、あるいは活性を阻害する薬剤は、アレルギーの治療において、単にアレルギー症状を改善するのみならず、アレルギーの病態形成の本質的な原因を取り除く作用が期待できる。以上のように、IL−4あるいはIL−13で刺激した気道上皮細胞において発現が増加する遺伝子には重要な意味がある。そのため、この遺伝子の発現レベルを上昇させることによって得ることができるトランスジェニック動物をアレルギー性疾患モデル動物として使用し、遺伝子の役割や、遺伝子を標的とする薬剤を評価することには大きな意義がある。また本発明によるアレルギー性疾患モデル動物は、後に述べるアレルギー性疾患の治療または予防のための医薬品のスクリーニングに加えて、アレルギー性疾患のメカニズムの解明、さらにはスクリーニングされた化合物の安全性の試験に有用である。たとえば本発明によるアレルギー疾患モデル動物が気管支喘息を発症したり、何らかのアレルギー性疾患に関連した測定値の変化を示せば、それを回復させる作用を持った化合物を探索するスクリーニングシステムが構築できる。本発明において、発現レベルの上昇とは、目的とする遺伝子が外来遺伝子として導入され強制発現している状態、あるいは宿主が備える遺伝子の転写と蛋白質への翻訳が増強されている状態、並びに翻訳産物である蛋白質の分解が抑制された状態のいずれかを意味する。遺伝子の発現レベルは、たとえば実施例に示すような定量的なPCRにより確認することができる。また翻訳産物であるタンパク質の活性は、正常な状態と比較することにより確認することができる。代表的なトランスジェニック動物は、目的とする遺伝子を導入し強制発現させた動物である。この他のトランスジェニック動物には、たとえば遺伝子のコード領域に変異を導入し、その活性を増強したり、あるいは分解されにくいアミノ酸配列に改変した動物などを示すことができる。アミノ酸配列の変異には、置換、欠失、挿入、あるいは付加を示すことができる。その他、遺伝子の転写調節領域に変異を導入することにより、本発明の遺伝子の発現そのものを調節することもできる。特定の遺伝子を対象として、トランスジェニック動物を得る方法は公知である。すなわち、遺伝子と卵を混合してリン酸カルシウムで処理する方法や、位相差顕微鏡下で前核期卵の核に、微小ピペットで遺伝子を直接導入する方法(マイクロインジェクション法、米国特許第4873191号)、胚性幹細胞(ES細胞)を使用する方法などによってトランスジェニック動物を得ることができる。その他、レトロウィルスベクターに遺伝子を挿入し、卵に感染させる方法、また、精子を介して遺伝子を卵に導入する精子ベクター法等も開発されている。精子ベクター法とは、精子に外来遺伝子を付着またはエレクトロポレーション等の方法で精子細胞内に取り込ませた後に、卵子に受精させることにより、外来遺伝子を導入する遺伝子組換え法である(M.LavitranoetらCell,57,717,1989)。本発明のアレルギー性疾患モデル動物として用いるトランスジェニック動物は、ヒト以外のあらゆる脊椎動物を利用して作成することができる。具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ミニブタ、ヤギ、ヒツジ、あるいはウシ等の脊椎動物において様々な遺伝子の導入や発現レベルを改変されたトランスジェニック動物が作り出されている。更に本発明は、アレルギー性疾患治療薬候補化合物のスクリーニング方法に関する。本発明において、指標遺伝子は、いずれもIL−4あるいはIL−13で刺激した気道上皮細胞において有意に発現レベルが上昇している。したがって、これらの遺伝子の発現レベルを低下させることができる化合物を選択することによって、アレルギー性疾患の治療薬を得ることができる。本発明において遺伝子の発現レベルを低下させる化合物とは、遺伝子の転写、翻訳、タンパク質の活性発現のいずれかのステップに対して阻害的に作用する作用を持つ化合物である。本発明のアレルギー性疾患治療候補化合物のスクリーニング方法は、in vivoで行なうこともin vitroで行うこともできる。このスクリーニングは、たとえば以下のような工程にしたがって実施することができる。なお本発明のスクリーニング方法における指標遺伝子とは、先に指標遺伝子として挙げたものに加え、それらの遺伝子と機能的に同等ないずれかの遺伝子を含む。(1)被験動物に、候補化合物を投与する工程、(2)被験動物の生体試料における前記指標遺伝子の発現レベルを測定する工程、(3)対照と比較して、指標遺伝子の発現レベルを低下させる化合物を選択する工程本発明のスクリーニング方法における被験動物としては、たとえばヒトの指標遺伝子を強制発現させたトランスジェニック動物からなるアレルギー性疾患モデル動物を利用することができる。発現ベクターに使用するプロモーターとして、適当な薬剤等の物質により転写が調節されるプロモーターを用いれば、該物質の投与によってトランスジェニック動物における外来性の指標遺伝子の発現レベルを調整することができる。このようにして指標遺伝子を強制発現させたモデル動物に薬剤候補化合物を投与し、モデル動物の生体試料における指標遺伝子の発現に対する化合物の作用をモニターすることにより、指標遺伝子の発現レベルに与える薬剤候補化合物の影響を検出することができる。被験動物の生体試料における指標遺伝子の発現レベルの変動は、前記本発明の検査方法と同様の手法によってモニターすることができる。更にこの検出の結果に基づいて、指標遺伝子の発現レベルを低下させる薬剤候補化合物を選択すれば、薬剤候補化合物をスクリーニングすることができる。より具体的には、被験動物から、生体試料を採取し、前記指標遺伝子の発現レベルを対照と比較することにより、本発明によるスクリーニングを実施することができる。生体試料としては、平滑筋細胞、角化細胞、鼻粘膜上皮細胞、腸上皮細胞、リンパ球、マスト細胞、好酸球、好塩基球、あるいは好中球等を利用することができる。これらの生体試料の採取方法、および調製方法は公知である。このようなスクリーニングにより、指標遺伝子の発現に様々な形で関与する薬剤を選択することができる。具体的には、たとえば次のような作用点を持つ薬剤候補化合物を見出すことができる。指標遺伝子の発現をもたらすシグナル伝達経路の活性化、指標遺伝子の転写活性の上昇、指標遺伝子の転写産物の安定化もしくは分解の阻害等、また、in vitroでのスクリーニングにおいては、例えば、指標遺伝子を発現する細胞に候補化合物を接触させ、これら遺伝子の発現レベルを低下させる化合物を選択する方法が挙げられる。このスクリーニングは、たとえば以下のような工程にしたがって実施することができる。(1)指標遺伝子を発現する細胞に候補化合物を接触させる工程(2)指標遺伝子の発現レベルを測定する工程、(3)対照と比較して、指標遺伝子の発現レベルを低下させる化合物を選択する工程本発明において、指標遺伝子を発現する細胞は、指標遺伝子を適当な発現ベクターに挿入し、該ベクターを適当な宿主細胞に導入することにより得ることができる。利用できるベクター、および宿主細胞は、本発明の遺伝子を発現し得るものであればよい。宿主−ベクター系における宿主細胞としては、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞等が例示でき、それぞれ利用できるベクターを適宜選択することができる。ベクターの宿主への導入方法としては、生物学的方法、物理的方法、化学的方法などを示すことができる。生物学的方法としては、例えば、ウイルスベクターを使用する方法、特異的受容体を利用する方法、細胞融合法(HVJ(センダイウイルス)、ポリエチレングリコール(PEG)、電気的細胞融合法、微少核融合法(染色体移入))が挙げられる。また、物理的方法としては、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、ジーンパーティクルガン(gene gun)を用いる方法が挙げられる。化学的方法としては、リン酸カルシウム沈殿法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、プロトプラスト法、赤血球ゴースト法、赤血球膜ゴースト法、マイクロカプセル法が挙げられる。指標遺伝子を発現する細胞として、ヒト肺がん細胞A549やヒト気管支上皮細胞BEAS−2Bは、本発明のスクリーニング方法に好適である。これらの細胞は、ATCCより購入することができる。本発明のスクリーニングの方法は、まず前記細胞株に候補化合物を添加する。その後、該細胞株における指標遺伝子の発現レベルを測定し、該遺伝子の発現レベルを低下させる化合物を選択する。なお本発明のスクリーニング方法において、指標遺伝子の発現レベルは、これらの遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルのみならず、対応するmRNAを検出することにより比較することもできる。mRNAによって発現レベルの比較を行うには、タンパク質試料の調製工程に代えて、先に述べたようなmRNA試料の調製工程を実施する。mRNAやタンパク質の検出は、先に述べたような公知の方法によって実施することができる。さらに本発明の開示に基づいて本発明の指標遺伝子の転写調節領域を取得し、レポーターアッセイ系を構築することができる。レポーターアッセイ系とは、転写調節領域の下流に配置したレポーター遺伝子の発現量を指標として、該転写調節領域に作用する転写調節因子をスクリーニングするアッセイ系をいう。すなわち本発明は、次の工程を含む、アレルギー性疾患治療薬候補化合物のスクリーニング方法であって、指標遺伝子がカルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、CYP1B1、およびこれらの遺伝子と機能的に同等な遺伝子からなる群より選択されるいずれかの遺伝子である方法に関する。(1)指標遺伝子の転写調節領域と、この転写調節領域の制御下に発現するレポーター遺伝子を含むベクターを導入した細胞と候補物質を接触させる工程、(2)前記レポーター遺伝子の活性を測定する工程、および(3)対照と比較してレポーター遺伝子の発現レベルを低下させる化合物を選択する工程転写調節領域としては、プロモーター、エンハンサー、さらには、通常プロモーター領域に見られるCAATボックス、TATAボックス等を例示することができる。またレポーター遺伝子としては、CAT(chloramphenicol acetyltransferase)遺伝子、ルシフェラーゼ(luciferase)遺伝子、成長ホルモン遺伝子等を利用することができる。本発明における指標遺伝子には、既に転写調節領域が明らかにされているものも少なくない。あるいは本発明における指標遺伝子の転写調節領域を、次のようにして取得することもできる。すなわち、まず本発明で開示した指標遺伝子の塩基配列に基づいて、BACライブラリー、YACライブラリー等のヒトゲノムDNAライブラリーから、PCRまたはハイブリダイゼーションを用いる方法によりスクリーニングを行い、該cDNAの配列を含むゲノムDNAクローンを得る。得られたゲノムDNAの配列を基に、本発明で開示したcDNAの転写調節領域を推定し、該転写調節領域を取得する。得られた転写調節領域を、レポーター遺伝子の上流に位置するようにクローニングしてレポーターコンストラクトを構築する。得られたレポーターコンストラクトを培養細胞株に導入してスクリーニング用の形質転換体とする。この形質転換体に候補化合物を接触させ、レポーター遺伝子の発現を制御する化合物のスクリーニングを行うことができる。in vitroでの本発明によるスクリーニング方法として、指標蛋白質の活性に基づくスクリーニング方法を利用することもできる。すなわち本発明は、次の工程を含む、アレルギー性疾患の治療薬のスクリーニング方法であって、指標遺伝子がカルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、CYP1B1、およびこれらの遺伝子と機能的に同等な遺伝子からなる群から選択されるいずれかの遺伝子である方法に関する。(1)指標遺伝子によってコードされる蛋白質と候補物質を接触させる工程、(2)前記蛋白質の活性を測定する工程、(3)対照と比較して前記蛋白質の活性を低下させる化合物を選択する工程、本発明における指標蛋白質であるカルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1が備える各活性は既にのべた。これらの活性を指標として、その活性を阻害する活性を有する化合物をスクリーニングすることができる。このようにして得ることができる化合物は、カルボキシペプチダーゼM、カテプシンC、エンドセリンA受容体、骨芽細胞特異因子2、DD96(MAP17)、およびCYP1B1の働きを抑制する。その結果、気道上皮細胞において発現が誘導された指標蛋白質の阻害を通じて、気管支喘息発作を制御することができる。これらスクリーニングに用いる被検候補化合物としては、ステロイド誘導体等既存の化学的方法により合成された化合物標品、コンビナトリアルケミストリーにより合成された化合物標品のほか、動・植物組織の抽出物もしくは微生物培養物等の複数の化合物を含む混合物、またそれらから精製された標品などが挙げられる。本発明による各種のスクリーニング方法に必要な、ポリヌクレオチド、抗体、細胞株、あるいはモデル動物は、予め組み合わせてキットとすることができる。より具体的には、たとえば指標遺伝子を発現する細胞と、これらの指標遺伝子の発現レベルを測定するための試薬とで構成される。指標遺伝子の発現レベルを測定するための試薬としては、たとえば少なくとも1つの指標遺伝子の塩基配列を含むポリヌクレオチド、若しくはその相補鎖に相補的な塩基配列を有する少なくとも15塩基の長さを有するオリゴヌクレオチドが用いられる。あるいは、少なくとも1つの指標蛋白質のアミノ酸配列を含むペプチドを認識する抗体を試薬として用いることができる。これらのキットには、標識の検出に用いられる基質化合物、細胞の培養のための培地や容器、陽性や陰性の標準試料、更にはキットの使用方法を記載した指示書等をパッケージしておくこともできる。本発明のスクリーニング方法によって選択される化合物は、アレルギー性疾患の治療薬として有用である。あるいは、指標遺伝子の発現を抑制することができる、アンチセンスDNAも、アレルギー性疾患の治療薬として有用である。更に、指標遺伝子によってコードされる蛋白質を認識する抗体が、アレルギー性疾患の治療薬として有用である。本発明のアレルギー性疾患の治療薬は、前記スクリーニング方法によって選択された化合物を有効成分として含み、生理学的に許容される担体、賦形剤、あるいは希釈剤等と混合することによって製造することができる。本発明のアレルギー性疾患の治療剤は、アレルギー症状の改善を目的として、経口、あるいは非経口的に投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、乳剤、あるいは懸濁剤等の剤型を選択することができる。注射剤には、皮下注射剤、筋肉注射剤、あるいは腹腔内注射剤等を示すことができる。また、投与すべき化合物がタンパク質からなる場合には、それをコードする遺伝子を遺伝子治療の手法を用いて生体に導入することにより、治療効果を達成することができる。治療効果をもたらすタンパク質をコードする遺伝子を生体に導入し、発現させることによって、疾患を治療する手法は公知である。あるいはアンチセンスDNAは、適当なプロモーター配列の下流に組み込み、アンチセンスRNA発現ベクターとして投与することができる。この発現ベクターをアレルギー疾患患者のT細胞へ導入すれば、これらの遺伝子のアンチセンスを発現し、当該遺伝子の発現レベルの低下によってアレルギーの治療効果を達成することができる。T細胞への発現ベクターの導入としては、in vivo、あるいはex vivoで行う方法が公知である。投与量は、患者の年齢、性別、体重および症状、治療効果、投与方法、処理時間、あるいは該医薬組成物に含有される活性成分の種類などにより異なるが、通常成人一人あたり、一回につき0.1mgから500mgの範囲で、好ましくは0.5mgから20mgの範囲で投与することができる。しかし、投与量は種々の条件により変動するため、上記投与量よりも少ない量で充分な場合もあり、また上記の範囲を超える投与量が必要な場合もある。なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。発明を実施するための最良の形態以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。[実施例1]DNAマイクロアレイを使った候補遺伝子の選択1.正常ヒト気管支上皮細胞の培養とIL−4あるいはIL−13刺激Clonetics社より販売している正常ヒト気管支上皮細胞を3ロット購入した(8F1756,8F1548,8F1805)。1バイヤル中に入っている5x105細胞を未刺激、IL−4刺激、IL−13刺激用に3等分し(1.67x105/75cm2flask)、SABM培地(Clonetics社)にて培地交換しながら約8−10日間培養した。その際に培地にBPE(ウシ脳下垂体抽出液)、Hydrocortisone,hEGF,Epinephrine,Transferrin,Insulin,Retinoic Acid,BSA−FAF,Triiodothyronine,GA−1000(Gentamicin/Amphotericin−B)を添付のプロトコールに従い添加した。細胞はサイトカイン刺激前に、PBSで洗浄後、添加因子を除いたSABMに交換した。そこにIL−4(10ng/ml),IL−13(50ng/ml)を添加し(両者ともPeprotech社製)、24時間培養した。経時変化(0,6,12,24,48時間)を観察する場合も同様に行った。2.正常ヒト気管支上皮細胞の他のサイトカイン刺激ロット8F1548の細胞を用い、1と同様に培養した。IL−4やIL−13に代えて、50ng/mlのTNFα、IL−1β、IL−5、IL−6、およびIL−9(すべてPeprotech社製)を加え、24時間培養した。3.GeneChip用RNAの調製上記のように処理した気道上皮細胞をIsogen(日本ジーン;和光純薬)に溶解し、この溶液から、Isogenに添付されているプロトコルに従ってRNAを分離した。クロロホルムを加え、攪拌遠心して水層を回収した。次にイソプロパノールを加え、攪拌遠心して沈殿の全RNAを回収した。4.GeneChip用のcDNA合成lot 8F1756の細胞より調製した全RNA 5μgから、T7−(dT)24(Amersham Pharmacia社)をプライマーとして、Affymetrix社のExpression Analysis Technical Manualの方法に従いSuperscript II Reverse Transcriptase(Life Technologies社)を用いて逆転写し1本鎖cDNAを作製した。T7−(dT)24プライマーは、以下のようにT7プロモーターの塩基配列にd(T)24を付加した塩基配列からなる。T7−(dT)24プライマー(配列番号:1)次に、Expression Analysis Technical Manualに従い、DNA Ligase,DNA polymerase I及びRNase Hを加え、2本鎖cDNAを合成した。cDNAをフェノール・クロロホルム抽出後、Phase Lock Gelsに通し、エタノール沈澱し精製した。さらに、BioArray High Yield RNA Transcription Labeling Kitを用い、ビオチンラベルしたcRNAを合成した。RNeasy Spin column(QIAGEN)を用いてcRNAを精製し、熱処理により断片化した。そのうち12.5μgのcRNAをExpression Analysis Technical Manualに従いHybridization Cocktailに加えた。これをアレイに入れ、45℃16時間ハイブリダイゼーションした。アレイを洗浄した後、Streptavidin Phycoerythrinを加え染色した。洗浄後、normalヤギIgGとビオチン化ヤギIgGの抗体混合液をアレイに加えた。さらに、蛍光強度を増強する目的で、再度Streptavidin Phycoerythrinを加え染色した。洗浄後、スキャナーにセットし、GeneChip Softwareにて解析した。5.GeneChip解析GeneChip解析ソフトであるSuiteを用いてデータ解析を行った。Absolute analysisで、Average Intensity(1)とBackground Average(2)を調べ、(1)から(2)を引いた、未刺激、IL−4刺激、またはIL−13刺激の3つの平均を補正値(Scale Factor)としてComparison Analysisを行った。まず、Absolute Analysisを行い1個のチップデータの解析をした。プローブセットのパーフェクトマッチとミスマッチの蛍光強度を比較して、positiveとnegativeを決定した。Pos Fraction,Log Avg,Pos/Negの値から判定されるAbsolute CallであるP(present)、A(absent)、およびM(marginal)の3区分の判定をした。Pos Fraction;Positiveなペアの割合。Log Avg;パーフェクトマッチとミスマッチのプローブセルの蛍光強度比の対数の平均Pos/Neg;Positiveペア数とNegativeペア数の比また、それぞれの遺伝子において、パーフェクトマッチとミスマッチのプローブセルの蛍光強度の差の平均値であるAverage Difference(Avg Diff)も計算した。次に2つのデータを比較解析(Comparison Analysis)した。未刺激とIL−4刺激あるいは未刺激とIL−13刺激で比較し、発現レベルの差を以下のようにランキングした。Inc/Dec,Inc Ratio,Dpos−Dneg Ratio,Log Avg Ratio Changeの値から判定されるDifference CallであるI,D,MI,MD,NCの5区分の判定をした。Inc:IL−4刺激あるいはIL−13刺激と未刺激の対応するプローブペアについてIL−4刺激あるいはIL−13刺激の方が増加していると判定されたペア数。Dec:IL−4刺激あるいはIL−13刺激の方が減少していると判定されたペア数。Inc/Dec:Incと判定されたペア数とDecと判定されたペア数の比。Inc Ratio:Incと判定されたペア数/実際に使用されたペア数。Dpos/Dneg Ratio:Pos ChangeからNeg Changeを引いた数と実際に使用されたペア数の比Pos Change:IL−4刺激あるいはIL−13刺激のAbsolute AnalysisでPositiveなペア数と未刺激のAbsolute AnalysisでPositiveなペア数の差。Neg Change:IL−4刺激あるいはIL−13刺激のAbsolute AnalysisでNegativeなペア数と未刺激のAbsolute AnalysisでNegativeなペア数の差Log Avg Ratio Change:IL−4刺激あるいはIL−13刺激と未刺激のAbsolute AnalysisでのLog Avgの差。増加:I(Increased)、減少:D(Decreased)、わずかに増加:MI(Marginally Increased)、わずかに減少:MD(Marginally Decreased)、および変化無し:NC(no change)また、未刺激とIL−4刺激あるいは未刺激とIL−13刺激のAbsolute AnalysisでのAvg Diffの比であるFold Changeの値でIL−4刺激、またはIL−13刺激によって発現変動(増強あるいは減少)が認められる遺伝子として選抜した。気道上皮細胞のLot別の発現遺伝子の絞込みの結果を表1に示した。表中、「[Diff Call]で増加或は減少」とは、IL−4刺激、またはIL−13刺激によって発現レベルに差が見られた遺伝子の数を示す。発現レベルに差が見られた遺伝子には、前記ランキングにおいて、わずかに増加(またはわずかに減少)と判定された遺伝子を含む。各ロットごとに、IL−4とIL−13の両方に共通して差が見られた遺伝子の数を、「変動共通遺伝子」として示した。更に、「[Fold Change]」として、2倍以上の増減(>2或は<−2)、および3倍以上の増減(>3或は<−3)が見られた遺伝子の数をそれぞれ示した。その結果、IL−4刺激およびIL−13刺激のいずれにおいても、2倍以上の発現レベルの増大が見られ、かつ2ロット以上に共通に増大が見られた遺伝子として、以下の6種の遺伝子が選抜された。これらの遺伝子は、アレルギー関連サイトカインである、IL−4およびIL−13のいずれの刺激によっても発現レベルが2倍以上に増大する、アレルギーに密接に関連した遺伝子である。カルボキシペプチダーゼM(carboxypeptidase M)カテプシンC(cathepsin C)エンドセリンA受容体(endothelin−A receptor)骨芽細胞特異因子2[osteoblast specific factor 2(OSF2os)]DD96(MAP17)[DD96(MAP17)]およびCYP1B1[dioxin−inducible cytochrome P450(CYP1B1)][実施例2]候補遺伝子の発現レベルの確認実施例1で選択された6種類の各遺伝子の発現量を定量的に確認するために、培養気道上皮細胞(Clonetics社)を用いて更にABI 7700による定量的PCRを行った。培養細胞としては、8F1756、8F1548、および8F1805の3つのロットを用いた。ABI 7700による測定に用いたプライマーおよびTaqManプローブは、各遺伝子の配列情報に基づいてPrimer Express(PEバイオシステムズ)により設計した。TaqManプローブの5’末端はFAM(6−carboxy−fluorescein)で、また3’末端はTAMRA(6−carboxy−N,N,N’,N’−tetramethylrhodamine)で標識されている。各遺伝子のフォワードプライマー(F)、リバースプライマー(R)、およびTaqManプローブ(TP)に用いたオリゴヌクレオチドの塩基配列は、以下に示すとおりである。各指標遺伝子の塩基配列に対応するGenbankのアクセッション番号を、名称に続けて()内に示した。カルボキシペプチダーゼM(j04970)カテプシンC(x87212)エンドセリンA受容体(d11151)骨芽細胞特異因子2(d13666)DD96(MAP17)(u21049)CYP1B1(u03688)前述の方法で抽出した全RNAをDNase(ニッポンジーン)処理した。その後、randam hexamer(GIBCO BRL)をプライマーとして逆転写したcDNAを鋳型とした。コピー数を算出する標準曲線のために両プライマーで増幅される塩基配列領域を含むプラスミドクローンを各々の遺伝子について準備し、その段階希釈を鋳型として反応を行った。PCR増幅のモニタリングのための反応液の組成は表2に示した。また、試料中のcDNA濃度の差を補正するため、補正用内部標準としてβ−アクチン(β−actin)遺伝子、およびグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)遺伝子について同様の定量解析を行い、それら遺伝子のコピー数を基に補正して、目的遺伝子のコピー数を算出した。βアクチン、あるいはGAPDH測定用のプライマーとプローブは、TaqMan β−actin Control Reagents(PEバイオシステムズ)に添付のものを用いて行った。塩基配列は以下の通りである。βアクチンにより補正した各遺伝子の発現量(copy/5ng RNA)を図1〜図6に示す。βアクチンフォーワードプライマー(配列番号:20)βアクチンリバースプライマー(配列番号:21)βアクチンTaqManプローブ(配列番号:22)GAPDHフォーワードプライマー(配列番号:23)GAPDHリバースプライマー(配列番号:24)GAPDH TaqManプローブ(配列番号:25)FAM:6−carboxy−fluoresceinTAMRA:6−carboxy−N,N,N’,N’−tetramethylrhodamine定量的PCRの結果、実施例1で選択した6つの遺伝子の気道上皮細胞における発現レベルは、いずれもIL−4あるいはIL−13刺激によって、3つの異なる気道上皮細胞において2倍以上に上昇した。これらの結果に基づいて、気道上皮細胞では、IL−4やIL−13に応答して、これらの指標遺伝子の発現レベルが上昇することが予測された。アレルギー反応との密接な関連が知られているIL−4やIL−13の刺激によって、本発明の指標遺伝子は、異なるロットの気管支上皮細胞で共通の挙動を示す。したがって、本発明の指標遺伝子は、アレルギー反応の進行を制御する重要な遺伝子であると考えられる。産業上の利用の可能性本発明により、IL−4あるいはIL−13で刺激した気道上皮細胞において発現が増加する遺伝子が見出された。IL−4あるいはIL−13で刺激した気道上皮細胞において発現が高まる遺伝子は、気管支喘息におけるアレルギー症状の本質的な原因となっている可能性が高い。したがって本発明によって提供された指標遺伝子は、気管支喘息がアレルギー症状によってもたらされたものかどうかを確実に知ることができる有用な指標となる。アレルギーによってもたらされた気管支喘息を確実に診断できることにより、的確な治療方法を早期に選択することができる。IL−4あるいはIL−13は、アレルギー反応を増強する重要な因子である。したがって、これらの因子の刺激に伴って発現が増加する遺伝子は、アレルギー症状の病態形成において重要な役割を果たしていると考えられる。しかも本発明によって提供された指標遺伝子は、いずれも複数の気道上皮細胞で、明確な発現の増強が見られた。IL−4あるいはIL−13の刺激に伴う遺伝子の発現レベルの変動に着目した研究は初めてではない。しかし、本発明によって提供される遺伝子は、いずれも、ここで述べたような厳しいクライテリアによって見出されたアレルギー関連遺伝子である。したがって、本発明の指標遺伝子は、類似のアプローチによって得られた公知のアレルギー関連遺伝子に比べて、アレルギー反応における重要な役割を果たしている遺伝子であると考えられる。なぜなら、本発明の指標遺伝子は、異なる細胞において、常にIL−4あるいはIL−13の刺激に鋭敏に応答している。このことは、アレルギー反応に本発明の指標遺伝子が欠かせない存在であることを裏付けている。このように、本発明の指標遺伝子は、いずれもその発現亢進が病態と結びついていることから、それを抑えることがアレルギー性疾患の治療戦略のターゲットとなるとともに、そのような新しい治療法におけるモニタリングのための新しい臨床診断指標としての有用性が期待できる。本発明によって提供された指標遺伝子は、アレルゲンの種類に関わらず、簡便にその発現レベルを知ることができる。したがって、アレルギー反応の病態を総合的に把握することができる。また本発明によるアレルギーの検査方法は、生体試料を試料としてその発現レベルを解析することができるので、患者に対する侵襲性が低い。しかも遺伝子発現解析に関しては、微量サンプルによる高感度な測定が可能である。遺伝子解析技術は、年々ハイスループット化、低価格化が進行している。したがって本発明によるアレルギーの検査方法は、近い将来、ベッドサイドにおける重要な診断方法となることが期待される。この意味でこれらの病態関連遺伝子の診断的価値は高い。【配列表】【図面の簡単な説明】図1は、IL−4およびIL−13、あるいはその他のサイトカインで刺激した培養気管支上皮細胞におけるカルボキシペプチダーゼM遺伝子の発現レベルを測定した結果を示すグラフ。左側がβ−アクチン遺伝子で補正した結果、そして右側がGAPDH遺伝子で補正した結果である。上段のグラフは対照(左)に対するIL−4(中央)およびIL−13(右)で刺激した場合の、相対的な発現レベル(relativeratio of control)を各細胞ロットごとに示したグラフである。中段は処理後から0、6、12、24、および48時間後の発現レベルの経時的な変化を示したグラフである。横軸の数字が培養時間を示す。下段は、その他のサイトカインで処理した場合の、24時間後の発現レベルの動きを示したグラフである。図2は、IL−4およびIL−13、あるいはその他のサイトカインで刺激した培養気管支上皮細胞におけるカテプシンC遺伝子の発現レベルを測定した結果を示すグラフ。各グラフは、いずれも図1と同様の内容を示す。図3は、IL−4およびIL−13、あるいはその他のサイトカインで刺激した培養気管支上皮細胞におけるエンドセリンA受容体遺伝子の発現レベルを測定した結果を示すグラフ。各グラフは、いずれも図1と同様の内容を示す。図4は、IL−4およびIL−13、あるいはその他のサイトカインで刺激した培養気管支上皮細胞における骨芽細胞特異因子遺伝子の発現レベルを測定した結果を示すグラフ。各グラフは、いずれも図1と同様の内容を示す。図5は、IL−4およびIL−13、あるいはその他のサイトカインで刺激した培養気管支上皮細胞におけるDD96(MAP17)遺伝子の発現レベルを測定した結果を示すグラフ。各グラフは、いずれも図1と同様の内容を示す。図6は、IL−4およびIL−13、あるいはその他のサイトカインで刺激した培養気管支上皮細胞におけるCYP1B1遺伝子の発現レベルを測定した結果を示すグラフ。各グラフは、いずれも図1と同様の内容を示す。 次の工程を含む、アレルギー性疾患の検査方法。a)被検者の生体試料における、配列番号:32の塩基配列もしくは配列番号:33のアミノ酸配列で特定される骨芽細胞特異因子2(ペリオスチン)遺伝子の発現レベルを測定する工程b)健常者の生体試料における前記遺伝子の発現レベルと比較する工程 アレルギー性疾患が気管支喘息である、請求項1に記載の検査方法。 遺伝子の発現レベルを、cDNAのPCRによって測定する請求項1に記載の検査方法。 遺伝子の発現レベルを、前記遺伝子によってコードされる蛋白質の検出によって測定する請求項1に記載の検査方法。 配列番号:32に記載された骨芽細胞特異因子2(ペリオスチン)遺伝子の塩基配列を含むポリヌクレオチド、またはその相補鎖に相補的な塩基配列を有する少なくとも21塩基の長さを有するオリゴヌクレオチドからなる、アレルギー性疾患検査用試薬。 配列番号:33に記載された骨芽細胞特異因子2(ペリオスチン)蛋白質のアミノ酸配列を含むペプチドを認識する抗体からなる、アレルギー性疾患検査用試薬。